(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】歯科補綴物製造のためのバルクブロック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20240709BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20240709BHJP
A61K 6/15 20200101ALI20240709BHJP
C03C 14/00 20060101ALI20240709BHJP
A61C 13/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C03C10/04
A61K6/836
A61K6/15
C03C14/00
A61C13/10
(21)【出願番号】P 2022575319
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2022009033
(87)【国際公開番号】W WO2022270973
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083051
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049877
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0076881
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516371391
【氏名又は名称】ハス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HASS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】77-14,Gwahakdanji-ro Gangneung-si Gangwon-do 25452,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ムン チャン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ファン スン
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132632(JP,A)
【文献】特表2008-515549(JP,A)
【文献】特開2018-145084(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/20-5/35
5/70-5/88
8/00-13/38
A61K 6/00-6/90
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、
ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、
高分子は全体バルクブロックの重量を基準に20~40重量%で含まれる
構成において、
3点曲げ強度(3-point bending strength)が190~260MPaであり、二軸曲げ強度(Biaxial flexure strength)が180~260MPaであり、ビッカース硬さ(Vickers hardness)が55~135HV0.2であり、弾性係数(Elastic modulus)が20~25GPaであることを特徴とする、補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項2】
前記結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてメタケイ酸リチウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項3】
前記結晶相は、追加結晶相として、リチウムホスフェート、クリストバライト(cristobalite)、トリジマイト(tridymite)、クォーツ(quartz)、ユークリプタイト(eucryptite)、スポジュメン(spodumene)、ヴァージライト(virgilite)、ペタライト(petalite)、及びこれらの混合物の中から選ばれた少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項4】
間接引張強度(Diametral Tensile strength)が70~80MPaであることを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項5】
300nm~800nmの波長範囲で平均光透過度が30~40%であり、水分吸収量が最大32μg/mm
3であることを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項6】
高分子は、ガラスセラミックマトリックスとシラン結合で結合されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項7】
高分子は、不飽和二重結合を含む(メタ)アクリレート系モノマー及びオリゴマーの中から選ばれた硬化性有機物の硬化物であることを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項8】
前記硬化性有機物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ)-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane、Bis-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(Triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)、ジウレタンジメタクリレート(diurethanedimethacrylate、UDMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDM)、ビフェニルジメタクリレート(biphenyldimethacrylate、BPDM)、n-トリルグリシン-グリシジルメタクリレート(n-tolylglycine-glycidylmethacrylate、NTGE)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate、PEG-DMA)、及びオリゴカーボネートジメタクリル酸エステル(oligocarbonate dimethacrylic esters)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものであることを特報とする、請求項
7に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項9】
ガラスマトリックスは、SiO
269.0~75.0重量%、Li
2O12.0~14.0重量%、Al
2O
32.5~10.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K
2O1.1~2.7重量%、Na
2O0.1~0.3重量%及びP
2O
52.0~6.0重量%を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項10】
前記ガラスマトリックスは、Al
2O
32.5~3.5重量%を含むものであることを特徴とする、請求項
9に記載の補綴物製造のためのバルクブロック。
【請求項11】
ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、
ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径0.01~1.0μmのものであり、
高分子は全重量を基準として20~40重量%で含まれるものである
構成において、
3点曲げ強度(3-point bending strength)が190~260MPaであり、二軸曲げ強度(Biaxial flexure strength)が180~260MPaであり、ビッカース硬さ(Vickers hardness)が55~135HV0.2であり、弾性係数(Elastic modulus)が20~25GPaであることを特徴とする、補綴物。
【請求項12】
前記結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてメタケイ酸リチウムをさらに含むことを特徴とする、請求項
11に記載の補綴物。
【請求項13】
前記結晶相は、追加結晶相として、リチウムホスフェート、クリストバライト(cristobalite)、トリジマイト(tridymite)、クォーツ(quartz)、ユークリプタイト(eucryptite)、スポジュメン(spodumene)、ヴァージライト(virgilite)、ペタライト(petalite)、及びこれらの混合物の中から選ばれた少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項
12に記載の補綴物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科補綴物製造のための複合体バルクブロックに関し、機械的特性が向上し、微小漏洩の防止が可能であり、審美的に優れるうえ、機械加工が可能な歯科用補綴素材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている補綴物材料であるポーセリンやメタルなどの場合、歯科産業が発展するにつれて物性や歯の審美性などの問題点が現れ、次第に材料的に市場占有率が減少する傾向にあり、これを代替するために、結晶化ガラスやジルコニアなどの材料に対する占有率が増加している状況である。また、従来から使用されている補綴物の製作方法である熱間加圧成形の場合、補綴物の製作時間が長くかかるという問題があり、現在歯科市場で打ち出しているワンデー補綴物への製作が難しいため、CAD/CAMシステムへの変化が行われている。このような変化を裏付けるために、材料的にも結晶化ガラスの追加的な熱処理なしに加工直後に植立が可能な1:1加工材料の効用性が浮き彫りになっている。
【0003】
もちろん、ジルコニアや結晶化ガラスなどの発展により、審美性が良く且つ高い物性を示す材料が多く使われているが、ほとんどのセラミック素材の場合、加工後に結晶化熱処理過程を経るので、ワンデー補綴物としての使用が容易ではない状況である。
【0004】
また、現在、1:1加工で進行するセラミック素材の場合は、結晶化が既に進行したセラミック素材の使用により加工性が低く、マージン(margin)部分(補綴物と歯との境界部分)における割れ現象が現れるという問題点がある。
【0005】
かかる問題点を解決し、現在歯科市場の要求に応えるために開発されたものが、有機物と無機物とが共に存在する複合体(Composite)である。複合体は、無機物が持っている欠点の一つである脆性という性質を有機物が抑制し、有機物が持っている低強度などの物性を無機物が向上させる役割をする相互補完的材料である。また、複合体は、加工直後に口腔内への植立が可能な1:1加工が可能であるという利点により、持続的に技術が開発されることにより、新しい製品が発売されている。複合体は、現在市販されている製品に応じて、約150~200MPaの強度を有し、加工性も従来の1:1加工が可能なガラスセラミックに比べて優れるという利点を有する。
【0006】
本発明者らは、このような複合体に関連して、韓国特許第10-1682542号において、ガラスセラミックを準備するステップと、前記ガラスセラミックを多孔質化してセラミック多孔体を形成するステップと、前記セラミック多孔体を真空チャンバ内に装入して真空状態で前記セラミック多孔体にポリマーを1次に浸透させる1次浸透ステップと、前記1次浸透したポリマーが完全硬化する前に、前記セラミック多孔体に2次にポリマーを浸透させる2次浸透ステップと、を含み、100~150MPaの二軸曲げ強度を実現することを特徴とする、歯科用ブロックの製造方法を開示した。
【0007】
ここでのガラスセラミックは、長石系ガラスセラミックであって、具体的には、N2O2.0~6.0重量%、SiO260.0~65.0重量%、K2O8.0~15.0重量%、CaO0.5~3.0重量%、BaO0.5~2.0重量%、CeO20.2~1.0重量%、TiO20~0.5重量%、ガラス転移温度及び軟化点を増加させ、結晶化ガラスの化学的耐久性を向上させるためのAl2O316.0~19.0重量%、及び明度及び彩度などの調色に影響を与え且つ蛍光性を示す調色成分0~1.0重量%を含むものであった。
【0008】
また、韓国特許第10-1609291号では、ガラスを粉砕した後、1,400~1,800℃の温度で溶融するステップと、溶融した前記ガラスを冷却した後、粉砕し、粉砕したガラスを875~970℃で結晶化熱処理するステップと、前記結晶化熱処理を行った結晶化ガラスを再粉砕した後、700~840℃の温度で多孔質熱処理を行うステップと、前記多孔質熱処理を行った結晶化ガラスに形成された多孔体にポリマーを浸透させるステップと、を含み、前記1,400~1,800℃の温度で溶融するガラスは、N2O2.0~6.0重量%、SiO260~65.0重量%、K2O8.0~15重量%、CaO0.5~3.0重量%、BaO0.5~2.0重量%、CeO20.2~1.0重量%、TiO20超過~0.5重量%、及びAl2O316.0~19.0重量%を含むことを特徴とする、歯科用ブロックの製造方法を開示している。
【0009】
具体的には、ここでのガラスも長石系ガラスであり、得られたブロックは二軸曲げ強度が100~150MPa程度であることを開示している。
【0010】
一方、韓国特許第10-212202号では、シランカップリング剤を用いた無機物と有機物との化学的結合を用いた複合体の製造方法を開示しているが、具体的には、互いに異なる粘性を有する少なくとも2種の有機物を20~70℃で混合した第1混合物に熱開始剤を添加するステップと、エタノールにアクリル系シランカップリング剤が10~14重量%混合された第2混合物を用いて無機物を表面処理するステップと、前記熱開始剤の添加された第1混合物と、第2混合物によって表面処理された無機物とを混合するステップと、100℃~150℃で熱重合を用いて硬化させるステップと、を含むことを特徴とする、複合体の製造方法を提案した。
【0011】
また、韓国特許第10-2228118号では、結晶化ガラス及び硬化性有機物を含む歯科用複合体組成物において、結晶化ガラスは、その結晶のサイズが平均粒径50~400nmであり、二軸曲げ強度が200~300MPaであり、ビッカース硬さが270~300Hvである歯科用複合体を提供することができる、歯科用複合体組成物を提案した。
【0012】
他の一例として、米国特許第7807227号には、多孔性無機-非金属マトリックス及び第2物質を含む複合材とその製造方法が開示されているが、無機-非金属出発物質を焼結して多孔性無機-非金属マトリックス焼結体を得るステップと、前記多孔質無機-非金属マトリックスの表面にカップリング剤をコーティングして、表面改質された生成物を得るステップと、前記表面改質された多孔質無機-非金属マトリックスに有機物を浸透させるステップと、前記有機物を凝固させるステップと、を含む、複合材料の製造方法であって、これは、等方性複合材料を得るためのものであり、等方性複合材料は、ISO 6 872によって測定された40MPa以上の曲げ強度を有する多孔質無機-非金属マトリックス及び多孔質無機-非金属マトリックスの空隙を少なくとも部分的に充填する有機材料を含み、等方性複合材料は、ISO 10 477に従って測定された25GPa以上の弾性係数、及びISO 6 872に従って測定された100MPa以上の曲げ強度(bending strength)を有すると開示している。
【0013】
日本特許第4636514号には、長期にわたって耐摩耗性や曲げ強度などの機械的強度、耐変色性、耐着色性、審美性を維持することができ、曲げ弾性率(modulus of bending elasticity)、衝撃強さなどに優れるうえ、CAD/CAMシステムによる加工にも適した安価な歯科用材料及びその製造方法を開示しているが、これは、多孔質セラミックスにレジンが含浸されてなる歯科用材料の製造方法であって、(a)網目形成酸化物、中間酸化物、及び、網目修飾酸化物を含有し、平均粒径が3.0~50μmのセラミックス粉末と、バインダーを含む混合物を所定の形状に成型し、(b)前記成型された混合物を焼成し、連通孔を有する多孔質セラミックスブロックを得、(c)前記多孔質セラミックスブロックの連通孔に、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びジルコアルミネート系カップリング剤の中から選ばれた少なくとも1つのカップリング剤を超音波中及び/又は減圧下で浸透させ、連通孔の表面をカップリング処理し、(d)前記カップリング処理された多孔質セラミックスブロックの連通孔に、少なくともエチレン性二重結合を含有するモノマー及び/又はオリゴマーを超音波中及び/又は減圧下で浸透させた後、重合させることを特徴とする、歯科用材料の製造方法である。具体的な一例として、ここでのセラミックス粉末は、網目形成酸化物がSiO2とB2O3、前記中間酸化物がAl2O3、前記網目修飾酸化物がNa2Oとするアルミノシリケート系セラミックス粉末であるものであって、このような多孔質セラミックスの連通孔に樹脂を含浸させることにより、無機材料の充填率を高くすることができるため、長期にわたって耐摩耗性、曲げ強度などの機械的強度、耐変色性、耐着色性、審美性を維持することができ、さらにセラミック内の応力が緩和されるため曲げ弾性率、衝撃強さなどに優れた歯科用材料を提供することができる。これは、CAD/CAMシステムにも適したと記載している。
【0014】
この他にも、歯科用補綴素材である複合体を製造する方法に関連して多数の先行技術文献があるが、歯科補綴物素材への複合体の使用が増加しつつ、優れた製品の研究及び開発を介して持続的に新しい技術が追加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1682542号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1609291号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-2122202号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-2228118号
【文献】米国特許登録第7807227号
【文献】日本特許第4636514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、クラックに対する製品の信頼性(reliablility)が向上し、微小漏洩(microleakage)が少なく、向上した審美感(aesthetics)を与えることができる、ワンデー診療可能な歯科用バルクブロックを提供しようとする。
【0017】
本発明は、特に製造工程上の加工の容易さを付与することができる、ワンデー診療可能な補綴物製造のためのバルクブロックを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、高分子は全体バルクブロックの重量を基準に20~40重量%で含まれる、補綴物製造のためのバルクブロックを提供する。
【0019】
本発明の一実施形態によるバルクブロックにおいて、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてメタケイ酸リチウムをさらに含むことができる。
【0020】
前記一実施形態によるバルクブロックにおいて、結晶相は、追加結晶相として、リチウムホスフェート、クリストバライト(cristobalite)、トリジマイト(tridymite)、クォーツ(quartz)、ユークリプタイト(eucryptite)、スポジュメン(spodumene)、ヴァージライト(virgilite)、ペタライト(petalite)、及びこれらの混合物の中から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
好適な一実施形態による本発明のバルクブロックは、3点曲げ強度(3-point bending strength)が190~260MPa、二軸曲げ強度(Biaxial flexure strength)が180~260MPaであり、ビッカース硬さ(Vickers hardness)が55~135HV0.2であり、弾性係数(Elastic modulus)が20~25GPaであり得る。
【0022】
好適な一実施形態による本発明のバルクブロックは、間接引張強度(Diametral Tensile strength)が70~80MPaであり得る。
【0023】
好適な一実施形態による本発明のバルクブロックは、300nm~800nmの波長範囲で平均光透過度が30~40%であり、水分吸収量が最大32μg/mm3であり得る。
【0024】
好適な実施形態による本発明の歯科補綴物製造のためのバルクブロックにおいて、高分子は、ガラスセラミックマトリックスとシラン結合で結合されたものであり得る。
【0025】
好適な一実施形態による本発明の歯科補綴物製造のためのバルクブロックにおいて、高分子は、不飽和二重結合を含む(メタ)アクリレート系モノマー及びオリゴマーの中から選ばれた硬化性有機物の硬化物であり得る。
【0026】
好適な一実施形態による本発明のバルクブロックにおいて、硬化性有機物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ)-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane、Bis-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(Triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)、ジウレタンジメタクリレート(diurethanedimethacrylate、UDMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDM)、ビフェニルジメタクリレート(biphenyldimethacrylate、BPDM)、n-トリルグリシン-グリシジルメタクリレート(n-tolylglycine-glycidylmethacrylate、NTGE)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate、PEG-DMA)、及びオリゴカーボネートジメタクリル酸エステル(oligocarbonate dimethacrylic esters)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものであり得る。
【0027】
好適な一実施形態による本発明のバルクブロックにおいて、ガラスマトリックスは、SiO269.0~75.0重量%、Li2O12.0~14.0重量%、Al2O32.5~10.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K2O1.1~2.7重量%、Na2O0.1~0.3重量%及びP2O52.0~6.0重量%を含むものであり得る。
【0028】
さらに好適な一実施形態による本発明のバルクブロックにおいて、ガラスマトリックスのAl2O3は2.5~3.5重量%を含むものであり得る。
【0029】
本発明の他の一実施形態では、ガラスセラミックマトリックスは、SiO269.0~75.0重量%、Li2O12.0~14.0重量%、Al2O32.5~10.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K2O1.1~2.7重量%、Na2O0.1~0.3重量%及びP2O52.0~6.0重量%を含むガラス組成物を溶融し、ガラス溶融物を水冷(water quenching)して造粒サイズのガラス成形体を得、これを一次粉砕して最大平均粒径300μm以内のサイズであるガラス粉末を準備するステップと、前記ガラス粉末を、炉(furnace)内の温度を常温から開始して最高温度755~810℃まで30分~6時間結晶化熱処理するステップと、結晶化熱処理された粉末を粉砕して最大平均粒径100μm以内のサイズであるガラスセラミック粉末を製造するステップと、ガラスセラミック粉末を所定の形状に成形するステップと、を含む、補綴物製造のためのバルクブロックの製造方法を提供する。
【0030】
上記の他の一実施形態による製造方法において、ガラス組成物は、Al2O32.5~3.5重量%を含むものであり得る。
【0031】
本発明の他の一実施形態では、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、平均粒径0.01~1.0μmのものであり、高分子は全重量を基準として20~40重量%で含まれるものである、補綴物を提供する。
【0032】
本発明の他の一実施形態による補綴物において、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてメタケイ酸リチウムをさらに含むものであり得る。
【0033】
上記の他の一実施形態において、結晶相は、追加結晶相として、リチウムホスフェート、クリストバライト(cristobalite)、トリジマイト(tridymite)、クォーツ(quartz)、ユークリプタイト(eucryptite)、スポジュメン(spodumene)、ヴァージライト(virgilite)、ペタライト(petalite)、及びこれらの混合物の中から選ばれた少なくとも1種をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明による複合体バルクブロックは、機械的特性が向上し、微小漏洩の防止が可能であり、審美的に優れるうえ、機械加工が可能な歯科用補綴素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックのX線回折分析結果を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックのX線回折分析結果を示すグラフである。
【
図3】本発明の補綴物製造のためのバルクブロックの微細構造及び結晶相サイズを示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】本発明の一実施形態による歯科補綴物製造のためのバルクブロックに対する二軸曲げ強度(Biaxial-flexure strength)測定結果を既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックに対する3点曲げ強度(3-point flexure strength)測定結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミックタイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックに対する間接引張強度(Diametral Tensile strength)測定結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミックタイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter Gmb H & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックを酸エッチング処理又はサンドブラスト処理したものに対してせん断接着強度を評価した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミックタイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックに対して光透過率を測定した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(CRN)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network、PICN)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図9】本発明による補綴物製造のためのバルクブロックに対して光を透過したときに黄やや黄色(yellowish)になる結果を示す写真である。
【
図10】本発明による補綴物製造のためのバルクブロックに対して自然歯と対比して蛍光性を示す結果写真である。
【
図11】本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックに対して耐摩耗性を評価した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(CRN)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製品)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network、PICN)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【
図12】本発明による補綴物製造のためのバルクブロックに対して変色抵抗性を評価した結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
前述した、及び追加の本発明の様相は、添付図面を参照して説明される好適な実施形態によってさらに明らかになるであろう。以下では、本発明のこのような実施形態を介して当業者が容易に理解し再現し得るように詳細に説明する。
【0037】
本発明は、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、加工工程を考慮して、好ましくは、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相としてメタケイ酸リチウムをさらに含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、高分子は、全体バルクブロックの重量を基準に20~40重量%で含まれる、歯科用複合体バルクブロックを提供する。
【0038】
上記及び以下の記載において、主結晶相という用語は、全体結晶相のうちの少なくとも50重量%を占める結晶相と定義され、追加結晶相という用語は、全体結晶相のうち、主結晶相ではない残りの結晶相と定義され得る。
【0039】
結晶相の含有量は、X線回折分析によって算出できるが、一例として2つの多形相aとbからなっている試験片における結晶相aの比率Faは、定量的に下記数式1で表される。
[数式1]
【数1】
【0040】
この値は、2つの結晶相の強度比を測定し且つ整数Kを得ることにより求めることができる。Kは、2つの純粋な多形相の絶対強度比Ioa/Iobであり、標準物質を測定して求める。
【0041】
上記及び以下の記載における主結晶相という用語は、このような方法によって算出された含有量を基準として設定されたものと定義できる。
【0042】
上記及び以下の記載において、バルクブロックは、その形状的制限がなく、一例としてブロック(block)形態、ディスク(disk)形態、インゴット(ingot)形態、シリンダ(cylinder)形態などの多様な形態のバルク体を含むことができるのは言うまでもない。
【0043】
好適な一実施形態によるバルクブロックに対するXRD分析結果グラフは、
図1に示すとおりである。
【0044】
本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックは、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含むものであり、
図1に示すXRD分析結果によれば、ガラスセラミックにおいて、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、純粋な二ケイ酸リチウム結晶相のみがガラスマトリックス内で析出し、その結晶化度が25~45%に達するものであり得る。
【0045】
また、好適な一実施形態によるバルクブロックに対するXRD分析結果グラフは、
図2に示すとおりである。
【0046】
本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックは、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含むものであって、
図2に示したXRD分析結果によれば、ガラスセラミックにおいて、結晶相は、主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がメタケイ酸リチウムを含むものであり、本発明の一実施形態によるガラスセラミックマトリックスは、このような結晶相を含む結晶相がガラスマトリックス内で析出し、その結晶化度が25~45%に達するものであり得る。
【0047】
このように主結晶相が二ケイ酸リチウムであり、追加結晶相がメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックをマトリックスとし、ここに高分子を含むバルクブロックである場合、バルクブロックを製造する上で加工性をより向上させることができるという面で有利であり得る。
【0048】
本発明によるバルクブロックにおいて、追加結晶相としては、リチウムホスフェート、クリストバライト(cristobalite)、トリジマイト(tridymite)、クォーツ(quartz)、ユークリプタイト(eucryptite)、スポジュメン(spodumene)、ヴァージライト(virgilite)、ペタライト(petalite)、及びこれらの混合物の中から選ばれた少なくとも1種を含み得るのは言うまでもない。
【0049】
このような結晶化度を有するガラスセラミックは、補綴物への製作の際に熱処理による透明性の調節及び機械的加工性を考慮して好ましい。
【0050】
上記及び以下の記載において、「結晶化度」は、非晶質のガラスマトリックスに対する結晶相の比率と定義できるが、これは、様々な方法によって求めることができるので、本発明の一実施形態では、X線回折分析器によって自動計算された値である。
【0051】
上記及び以下の記載におけるXRD分析は、X線回折分析器(D/MAX-2500、リガク、日本;Cu Kα(40kV、60mA)、走査速度:6°/分、2θ:10~70(degree)、リガク、日本)を用いて分析した結果として理解されるであろう。
【0052】
このような結晶相は、微結晶への形成が可能であり、これが温度に応じて様々なサイズ及びサイズ分布を示しながら、機械的物性と光透過性を多様に実現することができる特性を有する。
【0053】
また、一例として、
図3には本発明の歯科用複合体バルクブロックに対する走査電子顕微鏡(SEM、JEOL社のJSM-7610F FE-SEM)写真を示したが、その結晶相のサイズが平均粒径0.01~1.0μmである。
【0054】
SEM写真を用いて結晶相粒子の平均サイズを導き出すことができるが、具体的には、SEM写真に対角線又は無作為の直線を描いて直線が通過する結晶相の数を直線の長さで割って倍率を勘案してLinear intercept methodによって求めることができる。
【0055】
上記及び以下の記載における結晶相のサイズはこのような方法に従って算出されたものと理解されるであろう。
【0056】
一方、バルクブロックに存在する高分子は、全体バルクブロックの重量を基準として20~40重量%で含まれることが好ましいが、全体バルクブロックの重量を基準に20重量%未満で高分子を含む場合には、セラミックが持つ脆性により低い加工性をもつため使用に不利さがあり、40重量%超過で高分子を含む場合には、あまり低い物性により破断、摩耗などの問題があり得る。
【0057】
このような本発明による歯科用複合体バルクブロックは、3点曲げ強度(3-point bending strength)が190~260MPaであり、二軸曲げ強度(Biaxial flexure strength)が180~260MPaであり、ビッカース硬さ(Vickers hardness)が55~135HV0.2であり、弾性係数(Elastic modulus)が20~25GPaを満たすことができる。
【0058】
ここで、3点曲げ強度は、ISO 6872に基づいて測定された値である。
【0059】
二軸曲げ強度は、ISO 4049に基づいて測定された値である。
【0060】
ビッカース硬さは、C1327 standard(Mitutoyo microhardness tester、Mitutoyo、Takatsu-ku、日本)に基づいて、15mm×15mm×15mm規格の試験片に対して試験荷重を0.2kgf、保持時間を15秒(sec)にして行った硬度値である。上記及び以下の記載において、HV0.2は、このような方法に従って同一試験片に対して5回繰り返して測定した後、これらの硬度値に対する平均値として定義する。
【0061】
弾性係数は、ASTM E 494の評価方法に基づいて測定した値である。
【0062】
図4は、本発明の一実施形態による複合体バルクブロックに対する二軸曲げ強度(Biaxial-flexure strength)測定結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0063】
図5は、本発明の一実施形態によるバルクブロックに対する3点曲げ強度(3-pointflexure strength)測定結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0064】
図4及び
図5から、本発明によるバルクブロックの場合、従来の様々なタイプの複合体ブロックと比較して優れた強度を示すことが分かる。
【0065】
このような3点曲げ強度、二軸曲げ強度、ビッカース硬さ及び弾性係数を満たす補綴物製造のためのバルクブロックは、補綴物への製作の際にクラックが発生せず、これにより補綴物の機能性を向上させ、破断を予防することができ、審美性を確保することができる。
【0066】
一方、本発明による補綴物製造のためのバルクブロックは、間接引張強度(Diametral Tensile strength)が70~80MPaを満たすことができる。ここで、間接引張強度は、ANSI/ADA 27 Standard Specificationによるものであり、材料物体が半分に分けられる点(物体の直径方向に立てて)に応力荷重又は力を適用することを含む圧縮試験による引張応力を評価したものである。これは、直接引張強度で分子から発生するのと同様に、材料の分子が反対方向に押されながら材料物体の引張応力を測定した間接引張試験結果値である。
【0067】
図6は、本発明の一実施形態によるバルクブロックに対する間接引張強度(Diametral Tensile strength)測定結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0068】
図6に示すように、本発明によるバルクブロックは、従来の様々なタイプの複合体ブロックと対比してより高い引張強度を示す。
【0069】
上述した範囲内で間接引張強度値を満たす本発明による補綴物製造のためのバルクブロックは、微小漏洩発生可能性が少ないので、微小漏洩(microleakage)は、補綴材料と歯との間に微小空間が生じると、この空間に唾液が染み込んで再び外に出る浸透現象であって、このような微小漏洩の発生が増加すると、究極的に辺縁変色(marginal discolorations)が発生する可能性があり、辺縁適合度(marginal adaptation)が低下し、二次う蝕(secondary caries)や治療後の過敏症(postoperative sensitivity)などの問題を引き起こす可能性がある。
【0070】
特に、このような間接引張強度値を有する本発明の補綴物製造のためのバルクブロックは、通常、ハイブリッドブロックが有するボンディング(bonding)の問題を解決することができ、デボンディング(debonding)を減少させることができる。
【0071】
また、本発明によるバルクブロックは、補綴物への製作の際に酸エッチング(acid ecthing、例えば、HF溶液)又はサンドブラスト(sand blasting)後のせん断接着強度(shear bond strength)に共に優れるので、このような向上したせん断接着強度により微小漏洩を減らすことができる。具体的には、本発明に係るバルクブロックは、酸エッチング後又はサンドブラスト後のせん断接着強度が共に10~12MPa程度を実現することができるので、ユーザーのニーズに応じて酸エッチング又はサンドブラスト方法の中から選別して接着を容易に行うことができる。
【0072】
図7は、本発明の一実施形態によるバルクブロックを酸エッチング処理又はサンドブラスト処理したものに対してせん断接着強度(shear bond strength)を評価した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0073】
ポリマー浸透セラミックネットワーク(Polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)の場合は、酸エッチングによって接着力を向上させるが、この場合であっても、せん断接着強度(Shear bond strength)が本発明の場合に比べて劣る結果を示した。
【0074】
特に、本発明による補綴物製造のためのバルクブロックの場合は、コンポジットレジンナノセラミックタイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)と対比してサンドブラスト処理後のせん断接着強度にも優れる結果を示した。
【0075】
ここで、せん断接着強度は、ISO 29022:2013の評価方法に従って測定した値である。
【0076】
このような向上したせん断接着強度の結果から、本発明によるバルクブロックの場合、補綴物への製作の際に微小漏洩をより効果的に減らすことができることを予測することができる。
【0077】
また、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト系結晶相及び二ケイ酸リチウム系結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、高分子は全体バルクブロックの重量を基準として20~40重量%で含まれる、歯科用バルクブロックは、平均光透過度が300~800nmの波長範囲内で30~40%であり、水分吸収量が最大32μg/mm3であり得る。
【0078】
通常、高分子-セラミックスベースのハイブリッド複合体の場合、入射光に対する出射光の透過率が最大30%程度であるのに対し、本発明によるバルクブロックの場合は、ガラスセラミックの結晶相のサイズによりガラスセラミックネットワークにおける吸収及び屈折率を減らすことにより、究極的に平均光透過率を最大40%まで達成することができる。これにより、通常のハイブリッド複合体から製造された歯科修復物に比べて審美性が向上した歯科修復物を提供することができる。
【0079】
特に300~800nmの波長範囲内で特に500nm以下の波長で光透過率が増加するにつれて、補綴物をセメンテーションする過程中でUVやLEDを用いたキュアリング(curing)でその時間を短縮させることができる効果も期待することができる。
【0080】
図8は、本発明の一実施形態によるバルクブロックに対して光透過率を測定した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0081】
図8から確認できるように、本発明の補綴物製造のためのバルクブロックは、300nm~800nmの波長範囲で既存の様々なタイプが複合体ブロックに比べて光透過率が高い結果を示し、特に300nm~400nmの波長範囲で著しく高い光透過率を示した。
【0082】
また、本発明によるバルクブロックは、乳白性(opalescence)を有するので、これは、光を透過したときにやや黄色(yellowish)に見えるもので、これにより審美性を向上させることができるという利点がある。もちろん、蛍光性の面では、他のハイブリッド製品と対等な程度の蛍光性(fluorescence)を実現するのは言うまでもない。
【0083】
図9は、本発明による補綴物製造のためのバルクブロックに対して光を透過したときにやや黄色になる結果を示す写真であり、
図10は、本発明によるバルクブロックに対して自然歯と対比して蛍光性が対等な結果を示す写真である。
【0084】
図9の結果から、本発明によるバルクブロックは、透過された光に対して乳白性を有することを確認することができ、
図10の結果から、蛍光性の面でも自然歯と同様の結果を示すことにより、究極的に補綴物に審美性を与えることができることを予測することができる。
【0085】
エナメルで覆われたすべての自然歯は、固有の乳白性を持っており、反射光には青い光を示し、透過光には黄色の光を帯びる。本発明による補綴物製造のためのバルクブロックは、このような自然歯の乳白性と蛍光性を再現することができることを確認することができる。
【0086】
一方、本発明によるバルクブロックは、水分吸収率が最大32μg/mm3、好ましくは20~32μg/mm3を満たすので、これは、バルクブロック内の高分子から加水分解メタクリル酸の生成を減らすことができるようにし、これにより、歯科修復物の色調安定性(color stability)を向上させることができ、修復能(ability to repair)を向上させることができる。
【0087】
ここで、水分吸収率は、ISO 10477の7.8項(水吸収度&溶解度)方法に従って評価した値である。
【0088】
また、本発明によるバルクブロックは、ブラッシング摩耗度が向上した結果を示すが、これは、バルクブロックのガラスセラミックネットワークを構成する結晶相のサイズが小さいため、バルクブロックにおけるブラッシング摩耗に対する重量損失が減少したと予測することができる。具体的には、ブラッシング200,000回以上でも重量損失が0.8μgを下回る結果を示す。
【0089】
図11は、本発明の一実施形態による補綴物製造のためのバルクブロックに対してブラッシング摩耗量を測定した結果を、既存のコンポジットレジンナノセラミック(composite resin nanoceramic)タイプの製品(商品名LAVA Ultimate、3M ESPE社製)及びポリマー浸透セラミックネットワーク(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG.製)と対比して示すグラフである。
【0090】
摩耗量の評価は、ISO/TR 14569-1:2007(E)standardによるものであり、それぞれの試験片に対してブラッシング回数を数えて測定した値であり、それぞれの複合体ブロックに対して200,000回までブラッシングを行い、50,000回ごとに重量を測定した。100,000回でPICN(polymer infiltrated ceramic network)タイプの製品(商品名Vita Enamic、Vita Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.KG.製)が、本発明によるバルクブロック又は他のタイプの既存の複合体バルクブロックと対比して少ない摩耗量を示したが、200,000回のブラッシングの結果は、本発明による複合体バルクブロックが最も少ない摩耗量を示した。
【0091】
このような結果から、本発明によるバルクブロックは、咀嚼運動において摩耗量が少ない補綴物を提供することができることが分かる。これは、通常の複合体ブロックの場合、セラミックやジルコニアと比較して強度と機械的物性をある程度向上させてきたが、摩耗度の面では限界が存在してきた。しかし、本発明による複合体バルクブロックの場合、このような複合体補綴物の限界を乗り越えることができる摩耗特性を示している。
【0092】
一方、本発明による補綴物製造のためのバルクブロックは、上述した様々な物性値を満足することにより、変色抵抗性も向上することができるが、ISO 6872規格に従って厚さ1.2mm(±0.2mm)、直径16mmのディスク形態で試験片を作製し、これをコーヒー溶液(通常のアメリカーノ200ml)に1週間及び1ヶ月間浸漬した。このとき、溶液入りの筒は、恒温水槽内で保管した後、試験片を取り出して5分間蒸留水で洗浄した後、国際照明委員会のCIE表色系を用いてコーヒー溶液内への浸漬前と後の色差値(ΔE)を算出した。
【0093】
図12は、このような変色抵抗性評価結果を示す表である。
【0094】
本発明の補綴物製造のためのバルクブロックは、1週間浸漬後や1ヶ月浸漬後でもそれぞれΔE値が平均的に0.13及び0.18であり、通常ΔE値が0.5以下である場合、色差を感じられないレベルであるといって変色抵抗性に優れるといえるので、本発明のバルクブロックは、変色抵抗性が高いことが分かる。
【0095】
このように様々な特性値を満たす本発明の補綴物製造のためのバルクブロックは、インレー、オンレー、ベニア、又はクラウンなどの歯科修復物の製造に使用可能であり、特にCAD/CAM加工などの切削加工用に適するため、ワンデー補綴物の製作が可能である。
【0096】
また、本発明によるバルクブロックの場合、微結晶相を有するガラスセラミックベースの複合体ブロックであり、製造過程中に結晶化熱処理条件の変更によって様々なシェード(shade)を実現することができる。
【0097】
また、本発明によるバルクブロックの場合、微結晶相を有するガラスセラミックベースの複合体ブロックであり、製造過程中に結晶化熱処理条件の変更を介して様々なシェード(shade)を実現することができる。
【0098】
一方、本発明の補綴物製造のためのバルクブロックにおいて、高分子は、ガラスセラミックマトリックスとシラン結合で結合されたものであり得る。
【0099】
このようなシラン結合は、ガラスセラミックマトリックスの表面処理によって可能であり、具体的には、ガラスセラミックの表面をエチレン性不飽和二重結合を有する有機官能性シラン化合物で処理し、それに高分子を結合させることにより可能になることができる。
【0100】
より具体的には、有機官能性シランは、メタクリロキシアクリレントリアルコキシシラン(methacryloxyalkylene trialkoxysi lane)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryloxypropyl trimethoxysilane)及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(3-methacryloxypropyl triethoxysilane)よりなる群から選択される少なくとも1種であり得るが、これに限定されない。
【0101】
このような処理方法の一例としては、韓国特許第10-1609291号に記載の方法、韓国特許第10-1682542号に記載の方法、韓国特許第10-2122202号に記載の方法又は韓国特許第10-2228118号に記載の方法などを用いることができる。
【0102】
本発明によるバルクブロック内に含まれる高分子は、不飽和二重結合を含む(メタ)アクリレート系モノマー及びオリゴマーの中から選ばれた硬化性有機物の硬化物であり得るが、具体的な一例として、硬化性有機物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis)[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane、Bis-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(Triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)、ジウレタンジメタクリレート(diurethanedimethacrylate、UDMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDM)、ビフェニルジメタクリレート(biphenyldimethacrylate、BPDM)、n-トリルグリシン-グリシジルメタクリレート(n-tolylglycine-glycidylmethacrylate、NTGE)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate、PEG-DMA)及びオリゴカーボネートジメタクリル酸エステル(oligocarbonate dimethacrylic esters)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものであり得る。
【0103】
このようなモノマー及び/又はオリゴマーのうち、例えば、UDMAやBis-GMAの場合は、粘性が高いため粘性の低いTEGDMAと質量比で5:5~6:4となるように混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0104】
硬化性有機物の場合は、重合反応時に収縮硬化が現れるが、上述したような有機官能性シランにより収縮硬化による物性の変化を最小限に抑える効果も得ることができる。
【0105】
このような有機官能性シランを用いた結晶化ガラスの表面処理は、歯科用複合体という特異性を考慮して有機官能性シランシランをエタノールに希釈した溶液を用いて行われ得るのはもちろんである。
【0106】
このように有機官能性シランによってガラスセラミックの表面を処理し、高分子と結合させて複合体バルクブロックを製造すれば、全体として複合体において無機物の体積%を増加させる役割を果たして二軸曲げ強度及び硬度の向上を図ることができる。
【0107】
一方、硬化性有機物をポリマー形態で架橋結合して硬化させるために開始剤を含むことができるが、開始剤の種類としては、光開始剤と熱開始剤を挙げることができる。本発明において、好ましい開始剤は、熱開始剤であって、光開始剤を含んで光重合した場合に比べて、熱開始剤を含んで熱重合した場合においてより優れた物性の複合体を得ることができる。
【0108】
熱開始剤は、当業界で知られている様々な化合物を使用することができ、一例として、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルベンゾエートなどの公知のペルオキシド類を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0109】
上述した本発明による歯科用補綴物製造のためのバルクブロックを得る上で、好ましくはガラスマトリックスがSiO269.0~75.0重量%、Li2O12.0~14.0重量%、Al2O32.5~10.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K2O1.1~2.7重量%、Na2O0.1~0.3重量%及びP2O32.0~6.0重量%を含むものであってもよく、主結晶相を勘案して、好ましくはAl2O32.5~3.5重量%を含むものであってもよい。
【0110】
このようなガラス組成物は、結晶化生成のために結晶核生成と結晶成長熱処理を経て非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を析出させるが、上述したガラスマトリックスは、結晶核と結晶成長が起こる温度が500℃~880℃に該当する。つまり、最小500℃から結晶核が形成され始め、昇温下に結晶成長が行われ、この結晶成長は、最大880℃で人工歯に使用する上で最も低い光透過性を示す。すなわち、結晶が成長する温度から最大880℃まで透光性が次第に低くなるので、このような結晶成長に着目するとき、高強度を満足しながらも機械加工が可能な加工性を満たす程度に結晶成長させ、これを本発明による歯科用複合体ブロックのガラスセラミックとして用いることができる。
【0111】
このような観点から、本発明による歯科用バルクブロックを構成するガラスセラミックは、SiO269.0~75.0重量%、Li2O12.0~14.0重量%、Al2O32.5~10.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K2O1.1~2.7重量%、Na2O0.1~0.3重量%及びP2O52.0~6.0重量%を含むガラス組成物を溶融し、ガラス溶融物を水冷(water quenching)して造粒サイズのガラス成形体を得、これを一次粉砕して、最大平均粒径300μm以内のサイズであるガラス粉末を準備するステップと、前記ガラス粉末を、炉(furnace)内温度を常温から開始して最高温度755~810℃までにして30分~6時間結晶化熱処理するステップと、結晶化熱処理された粉末を粉砕して、最大平均粒径100μm以内のサイズであるガラスセラミック粉末を製造するステップと、ガラスセラミック粉末を所定の形状に成形するステップと、を含んで得られることが好ましく、前記ガラス組成物は、主結晶相を勘案して、好ましくはAl2O32.5~3.5重量%を含むものであり得る。
<実施例>
【0112】
本発明の複合体バルク体を構成するガラスセラミックを得るための具体的な一実施例は、まず、SiO269.0~75.0重量%、Li2O12.0~14.0重量%、Al2O32.5~3.5重量%、ZnO0.12~0.22重量%、K2O1.1~2.7重量%、Na2O0.1~0.3重量%及びP2O52.0~6.0重量%を含むガラス組成物を秤量して混合する。
【0113】
ガラス組成物として、Li2Oの代わりにLi2CO3を添加することもでき、Li2CO3の炭素(C)成分である二酸化炭素(CO2)は、ガラスの溶融工程でガスとして排出されて抜け出す。また、アルカリ酸化物においてK2O及びNa2Oの代わりにそれぞれK2CO3、Na2CO3を添加してもよく、K2CO3、Na2CO3の炭素(C)成分である二酸化炭素(CO2)は、ガラスの溶融工程でガスとして排出されて抜け出す。
【0114】
混合は、乾式混合工程を用い、乾式混合工程としては、ボールミリング(ball milling)工程などを用いることができる。ボールミリング工程について具体的に考察すると、出発原料をボールミル機(ball milling machine)に装入し、ボールミル機を一定の速度で回転させて出発原料を機械的に粉砕し、均一に混合する。ボールミル機に使用されるボールは、ジルコニアやアルミナなどのセラミック材質からなるボールを使用することができ、すべて同じサイズ又は少なくとも2種のサイズを有するボールを使用することができる。目標する粒子のサイズを考慮して、ボールのサイズ、ミリング時間、ボールミル機の1分当たりの回転速度などを調節する。一例として、粒子のサイズを考慮して、ボールのサイズは1mm~30mm程度の範囲に設定し、ボールミル機の回転速度は50~500rpm程度の範囲に設定することができる。ボールミリングは、目標する粒子のサイズなどを考慮して1~48時間行うことが好ましい。ボールミリングにより、出発原料は、微細なサイズの粒子に粉砕され、均一な粒子サイズを有するうえ、均一に混合される。
【0115】
混合された出発原料を溶融炉に入れ、出発原料入りの溶融炉を加熱して出発原料を溶融させる。ここで、溶融とは、出発原料が固体状態ではなく液体状態の粘性を有する物質状態に変化することを意味する。溶融炉は、高融点を有しながら強度が大きく、溶融物がくっ付く現象を抑制するために接触角が低い物質からなることが好ましく、このために、白金(Pt)、DLC(diamond-like-carbon)、シャモット(chamotte)などの物質からなるか、或いは白金(Pt)又はDLC(diamond-like-carbon)などの物質で表面がコーティングされた溶融炉であることが好ましい。
【0116】
溶融は、1,400~2,000℃で常圧にて1~12時間行うことが好ましい。溶融温度が1,400℃未満である場合には、出発原料が未だ溶融しないことがあり、前記溶融温度が2,000℃を超える場合には、過剰なエネルギーの消費が必要であって経済的ではないので、上述した範囲の温度で溶融させることが好ましい。また、溶融時間があまり短い場合には、出発原料が十分に溶融しないことがあり、溶融時間があまり長い場合には、過剰なエネルギーの消費が必要であって経済的ではない。溶融炉の昇温速度は、5℃/min~50℃/min程度であることが好ましいが、溶融炉の昇温速度があまり遅い場合には、時間が長くかかって生産性に劣り、溶融炉の昇温速度があまり速い場合には、急激な温度上昇により出発原料の揮発量が多くなって結晶化ガラスの物性が良くないことがあるので、上述した範囲の昇温速度で溶融炉の温度を上げることが好ましい。溶融は、酸素(O2)、空気(air)などの酸化雰囲気中で行うことが好ましい。
【0117】
このようなガラス溶融物を所望の形状及び大きさに粉砕するために、ガラス溶融物を水冷(water quenching)して造粒サイズのガラス成形体を得、これを1次粉砕して最大平均粒径300μm以内のサイズのガラス粉末を準備する。
【0118】
このようにして得られたガラス粉末を結晶化熱処理焼成炉に移して目的の結晶化熱処理された粉末を製造する。
【0119】
このとき、結晶化熱処理は、炉内温度を常温から開始して最高温度755~810℃までにして30分~6時間行われ、これにより純粋な二ケイ酸リチウムのみを結晶相として有し、その結晶のサイズが0.01~1.0μmの結晶相を含む、結晶化熱処理された粉末を得ることができる。
【0120】
次に、結晶化熱処理された粉末を粉砕して最大平均粒径100μm以内のサイズのガラスセラミック粉末を製造する。
【0121】
最後に、ガラスセラミック粉末を所定の形状に成形するステップを経ると、本発明の一実施形態によるバルクブロックのガラスセラミックマトリックスを得ることができる。
【0122】
こうして得られた成形物をガラスセラミックマトリックスとして用いて、韓国特許第10-1609291号に記載の方法、韓国特許第10-1682542号に記載の方法、韓国特許第10-2122202号に記載の方法又は韓国特許第10-2228118号に記載の方法などを活用して、本発明によるガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散した結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、高分子は全体バルクブロックの重量を基準に20~40重量%で含まれる、歯科用バルクブロックを製造することができる。
【0123】
得られたバルクブロックは、上述したようにCAD-CAMを用いた加工などによって目的の形状に機械加工されて補綴物に製造できる。
【0124】
機械加工された補綴物は、ガラスセラミックマトリックス及び高分子を含み、ガラスセラミックマトリックスは、非晶質のガラスマトリックスと、該ガラスマトリックスに分散された結晶相と、からなり、結晶相は、主結晶相がリューサイト結晶相及び二ケイ酸リチウム結晶相の中から選ばれた少なくとも1種のものを含み、その平均粒径が0.01~1.0μmであり、高分子は、全重量を基準に20~40重量%で含まれるものであり得る。
【0125】
得られた補綴物は、3点曲げ強度(3-point bending strength)が190~260MPaであり、二軸曲げ強度(Biaxial flexure strength)が180~260MPaであり、ビッカース硬さ(Vickers hardness)が55~135HV0.2であり、弾性係数(Elastic modulus)が20~25GPaを満たすことができる。また、間接引張強度(Diametral Tensile strength)が70~80MPaであり得る。
【0126】
また、得られた補綴物は、300nm~800nmの波長範囲で平均光透過度が30~40%であり、水分吸収量が最大32μg/mm3であり得る。
【0127】
本発明は、図面に示されている一実施形態を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、歯科補綴物製造のためのバルクブロックに関し、機械的特性が向上し、微小漏洩の防止が可能であり、審美的に優れるうえ、機械加工が可能な歯科用補綴素材に関する。