IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社桑原の特許一覧

特許7517747服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム
<>
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図1
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図2
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図3
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図4
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図5
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図6
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図7
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図8
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図9
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図10
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図11
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図12
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図13
  • 特許-服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240709BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N23/04 340
G06T7/00 350B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023085240
(22)【出願日】2023-05-24
【審査請求日】2023-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503446420
【氏名又は名称】株式会社桑原
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 竜典
(72)【発明者】
【氏名】後川 欣英
(72)【発明者】
【氏名】油井 一博
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 知彦
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/017611(WO,A1)
【文献】特開2022-013217(JP,A)
【文献】特開平06-265485(JP,A)
【文献】特開平11-023494(JP,A)
【文献】特開2011-196778(JP,A)
【文献】特開2015-075341(JP,A)
【文献】中国実用新案第213779923(CN,U)
【文献】中国実用新案第207198062(CN,U)
【文献】米国特許第06453003(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06N 20/00 - G06N 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
服飾・雑貨に含まれる異物を検知する服飾・雑貨用異物検知装置であって、
前記服飾・雑貨を搬送する搬送路と、
前記搬送路上の前記服飾・雑貨に第1方向と第2方向からX線を照射するX線源と、
前記搬送路の下側に設けられて前記第1方向からのX線を受ける上流側センサと、
前記上流側センサよりも搬送下流側かつ前記搬送路の下側に設けられて前記第2方向からのX線を受ける下流側センサと、
AI検査モデルファイルを記憶するファイル記憶部と、
前記AI検査モデルファイルを利用して、前記上流側センサからの第1撮像データに基づいて異物を検出、または前記下流側センサからの第2撮像データに基づいて異物を検出する異物検出部と、
前記第1撮像データに基づく第1映像を表示する第1モニタと、
前記第1モニタに並設されかつ前記第1撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第1異物表示を前記第1映像に重ねて表示する第1結果モニタと、
前記第1モニタを視認できる場所から視認できる場所に設けられかつ前記第2撮像データに基づく第2映像を表示する第2モニタと、
前記第2モニタに並設されかつ前記第2撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第2異物表示を前記第2映像に重ねて表示する第2結果モニタと、
前記異物検出部が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する異物情報メモリと、を有し、
前記AI検査モデルファイルは、標準異物サンプル画像データに基づいて生成された初期モデルファイルまたは、前記異物情報メモリによって記憶された情報と前記第1撮像データと前記第2撮像データに基づいて前記初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルであり、
前記第1モニタと前記第1結果モニタは、前記X線源を収容する本体の搬送上流側に並設され、
前記第2モニタと前記第2結果モニタは、前記本体の搬送下流側に並設される服飾・雑貨用異物検知装置。
【請求項2】
服飾・雑貨に含まれる異物を検知する服飾・雑貨用異物検知装置であって、
前記服飾・雑貨を搬送する搬送路と、
前記搬送路上の前記服飾・雑貨に第1方向と第2方向からX線を照射するX線源と、
前記第1方向からのX線を受ける第1センサと、
前記第2方向からのX線を受ける第2センサと、
AI検査モデルファイルを記憶するファイル記憶部と、
前記AI検査モデルファイルを利用して、前記第1センサからの第1撮像データに基づいて異物を検出、または前記第2センサからの第2撮像データに基づいて異物を検出する異物検出部と、
前記第1撮像データに基づく第1映像を表示する第1モニタと、
前記第1モニタに並設されかつ前記第1撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第1異物表示を前記第1映像に重ねて表示する第1結果モニタと、
前記第1モニタを視認できる場所から視認できる場所に設けられかつ前記第2撮像データに基づく第2映像を表示する第2モニタと、
前記第2モニタに並設されかつ前記第2撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第2異物表示を前記第2映像に重ねて表示する第2結果モニタと、
前記異物検出部が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する異物情報メモリと、を有し、
前記AI検査モデルファイルは、標準異物サンプル画像データに基づいて生成された初期モデルファイルまたは、前記異物情報メモリによって記憶された情報と前記第1撮像データと前記第2撮像データに基づいて前記初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルであり、
前記標準異物サンプル画像データは、
樹脂製でかつ多面体のサンプル保持体の中に異物サンプルを挿入し、
前記搬送路に載置されて服飾・雑貨が搭せられる樹脂製のトレーもしくは前記トレーと同じ材質のサンプル用トレーに前記サンプル保持体を第1面が下になるように置き、前記サンプル保持体にX線を照射し、
前記サンプル保持体を第2面が下になるように前記トレーもしくは前記サンプル用トレーに置き、前記サンプル保持体にX線を照射し、
前記サンプル保持体を第3面が下になるように前記トレーもしくは前記サンプル用トレーに置き、前記サンプル保持体にX線を照射し、
前記X線を受けるセンサからの信号に基づいて少なくとも3方向の前記異物サンプルの情報を異物情報として取得したものである、服飾・雑貨用異物検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記服飾・雑貨用異物検知装置であって、
前記AI検査モデルファイルは、モデルファイル作成プログラムを利用して外部装置によって生成される、服飾・雑貨用異物検知装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の前記服飾・雑貨用異物検知装置であって、
前記第1異物表示または前記第2異物表示は、異物の周囲を覆う枠であり、かつ点滅表示される、服飾・雑貨用異物検知装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の前記服飾・雑貨用異物検知装置であって、
前記異物検出部による前記第1撮像データに基づく前記異物の前記検出、または前記第2撮像データに基づく前記異物の前記検出は、前記第1撮像データまたは前記第2撮像データを領域分割することでピクセルにて表す画像を取得し、前記画像内における前記異物として検出した連続する複数のピクセル数が閾値を超える際に前記異物が有りと判定される、服飾・雑貨用異物検知装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の前記服飾・雑貨用異物検知装置を含む異物検知システムであって、
外部装置から前記AI検査モデルファイルがアップロードされるサーバと、
前記サーバから前記AI検査モデルファイルがダウンロードされて前記AI検査モデルファイルを前記服飾・雑貨用異物検知装置の前記ファイル記憶部に書き込む書込み手段を有する、服飾・雑貨用異物検知装置の異物検知システム。
【請求項7】
服飾・雑貨に含まれる異物を検知する異物検知システムであって、
搬送される前記服飾・雑貨にX線を照射して撮像データを得るX線検査装置と、
前記撮像データからAI検査モデルファイルを利用して異物を検出する異物検出手段と、
前記撮像データに基づく映像を表示する映像モニタと、
前記撮像データから検出された異物の場所に関連する異物表示を前記映像に重ねて表示する結果モニタと、
異物検出部が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する異物情報メモリと、を有し、
前記AI検査モデルファイルは、外部装置によって生成された初期モデルファイル、または前記外部装置によって前記初期モデルファイルが更新された基本モデルファイルであって、
前記基本モデルファイルは、前記異物情報メモリによって記憶された情報と前記撮像データに基づいて前記初期モデルファイルが更新されることで生成され、
前記X線検査装置は、前記搬送される前記服飾・雑貨に第1方向と第2方向からX線を照射するX線源と、前記第1方向からのX線を受ける上流側センサと、前記上流側センサよりも搬送下流側に設けられて前記第2方向からのX線を受ける下流側センサを有し、
前記撮像データは、前記上流側センサからのX線に基づいて得られた第1撮像データと、前記下流側センサからのX線に基づいて得られた第2撮像データを有し、
前記映像モニタは、前記第1撮像データに基づく前記映像を表示する第1映像モニタと、前記第2撮像データに基づく前記映像を表示する第2映像モニタを有し、
前記結果モニタは、前記第1撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第1異物表示を前記第1映像に重ねて表示する第1結果モニタと、前記第2撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第2異物表示を前記第2映像に重ねて表示する第2結果モニタを有し、
前記第1映像モニタと前記第1結果モニタは、前記X線検査装置の上流側に並設され、
前記第2映像モニタと前記第2結果モニタは、前記X線検査装置の下流側に並設される異物検知システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服飾または雑貨に異物が含まれている否かを検知する異物検知装置に関する。あるいは異物を検知する異物検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
服飾は、例えば靴や鞄などの装身具や衣類などである。雑貨は、日常生活に使用する小物などである。従来から、服飾・雑貨等の被検査物に含まれる異物を検知する異物検知装置が知られている。異物検知装置は、例えば、被検査物を搬送する搬送路とX線検査装置を有する。X線検査装置は、搬送路上の被検査物に上方向からX線を照射するX線源と、上方向からのX線を受けるセンサを有する。異物検知装置は、センサからの撮像データに基づく画像を表示するモニタを備える。作業者は、モニタに表示された画像を目視して、被検査物に異物が有るか否かを判断する。このようにして、被検査物に含まれる異物を検知する。
【0003】
しかしモニタに表示された画像に映し出される異物を作業者の目視に頼って検知すると、異物の有無の検知精度が低いことがあった。例えば、被検査物に異物が有るのに異物が無いと作業者が判断してしまう、若しくは被検査物に異物が無いのに異物が有ると作業者が判断してしまうことがあった。そこで特許文献1に開示されているように学習モデルを利用した異常検査システムも開発されている。例えば、異物の部分を黒色にし、その他の部分を白色にするマスク画像を利用したり、異物の無い背景画像を利用したりすることで、異物検出の精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7034529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本開示でも異物を高い精度で検知ができる、あるいは検知精度を高めるための学習を容易にすることのできる服飾・雑貨用異物検知装置および異物検知システムを提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴は、服飾・雑貨に含まれる異物を検知する衣類・雑貨用異物検知装置に関する。異物検知装置は、衣類・雑貨を搬送する搬送路を有する。搬送路上の服飾・雑貨にX線源が第1方向と第2方向からX線を照射する。第1方向からのX線を第1センサが受ける。第2方向からのX線を第2センサが受ける。AI検査モデルファイルをファイル記憶部が記憶する。異物検出部がAI検査モデルファイルを利用して、第1センサからの第1撮像データに基づいて異物を検出、または第2センサからの第2撮像データに基づいて異物を検出する。第1モニタが第1撮像データに基づく第1映像を表示する。第1結果モニタが第1モニタに並設されかつ第1撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第1異物表示を第1映像に重ねて表示する。第2モニタが第1モニタを視認できる場所から視認できる場所に設けられかつ第2撮像データに基づく第2映像を表示する。第2結果モニタが第2モニタに並設されかつ第2撮像データにおいて検出された異物の場所に関連する第2異物表示を第2映像に重ねて表示する。入力手段は、異物検出部が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される。異物情報メモリは、入力手段からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する。AI検査モデルファイルは、標準異物サンプル画像データに基づいて生成された初期モデルファイルまたは、異物情報メモリによって記憶された情報と第1撮像データと第2撮像データに基づいて初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルである。
【0007】
そのため服飾・雑貨に対して2方向から照射するX線に基づいて異物の有無が検知される。したがって1方向から照射するX線に基づいて異物の有無を検知する場合と比較すると、検知する異物の見落としや過検知を抑制できる。さらに、第1映像と、第1異物表示が重ねて表示された第1映像が並んで表示されるため、これら2つの第1映像を見比べることができる。そのため、第1モニタおよび第1結果モニタを比べることで異物検出部による異物の見落とし、および過検知を作業者が容易にできる。このことは第2映像においても同様である。さらに、異物検出部は、初期モデルファイル、または初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルを備えている。基本モデルファイルは、異物を見落としまたは過検知した第1撮像データまたは第2撮像データに基づいて学習(更新)されるため、以降において、同じ異物の見落としまたは過検知が抑制される。したがって、異物の有無の検知精度が向上する。また、学習も簡便にできる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、AI検査モデルファイルは、モデルファイル作成プログラムを利用して外部装置によって生成される。そのため、検知精度の高いAI検査モデルファイルを生成できる。また、外部装置によって生成されるため、AI検査モデルファイルの生成にあたって異物検知装置のユーザの関与を抑制できる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、第1異物表示または第2異物表示は、異物の周囲を覆う枠であり、かつ点滅表示される。そのため、第1結果モニタまたは第2結果モニタを監視する作業者による異物の見落としを抑制できる。
【0010】
本開示の他の特徴によると、異物検出部は、第1撮像データまたは第2撮像データを領域分割することでピクセルにて表す画像を取得する。そして異物検出部は、画像内における異物として検出した連続する複数のピクセル数が閾値を超える際に異物として検出する。そのため、異物検出部による異物の有無の検知を簡便に実施できる。
【0011】
本開示の他の特徴は、服飾・雑貨用異物検知装置に利用する異物サンプルの情報を取得する異物情報として取得する方法に関する。異物情報取得方法では、樹脂製でかつ多面体のサンプル保持体の中に異物サンプルを挿入する。次に、搬送路に載置されて服飾・雑貨が搭せられる樹脂製のトレーもしくはトレーと同じ材質のサンプル用トレーにサンプル保持体を第1面が下になるように置く。そしてサンプル保持体にX線を照射する。次に、サンプル保持体を第2面が下になるようにトレーもしくはサンプル用トレーに置く。そしてサンプル保持体にX線を照射する。次に、サンプル保持体を第3面が下になるようにトレーもしくはサンプル用トレーに置く。そしてサンプル保持体にX線を照射する。次に、X線を受けるセンサからの信号に基づいて少なくとも3方向の異物サンプルの情報を異物情報として取得する。
【0012】
そのため、異物情報メモリに記憶する異物情報は、多面体の少なくとも3面を利用することで、少なくとも3方向からの視点で記憶される。したがって、異物情報メモリに記憶する異物情報が迅速かつ簡便に得られる。かくして異物情報に基づく異物検知の精度が向上する。
【0013】
本開示の他の特徴によると、服飾・雑貨用異物検知装置を含む異物検知システムは、外部装置からAI検査モデルファイルがアップロードされるサーバを有する。書込み手段は、サーバからAI検査モデルファイルがダウンロードされてAI検査モデルファイルを服飾・雑貨用異物検知装置のファイル記憶部に書き込む。
【0014】
そのため、サーバに記憶のAI検査モデルファイルを更新すると、服飾・雑貨用異物検知装置のファイル記憶部に記憶のAI検査モデルファイルを更新できる。したがって、服飾・雑貨用異物検知装置の設置場所に出向くことなく、服飾・雑貨用異物検知装置に記憶のAI検査モデルファイルをサーバを介して更新できる。ゆえに、AI検査モデルファイルの更新を簡便に実施できる。
【0015】
本開示の他の特徴によると、異物検知システムは、服飾・雑貨にX線を照射して撮像データを得るX線検査装置を有する。異物検出手段は、撮像データからAI検査モデルファイルを利用して異物を検出する。映像モニタは、撮像データに基づく映像を表示する。結果モニタは、撮像データから検出された異物の場所に関連する異物表示を映像に重ねて表示する。入力手段は、異物検出部が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される。異物情報メモリは、入力手段からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する。AI検査モデルファイルは、外部装置によって生成された初期モデルファイル、または外部装置によって初期モデルファイルが更新された基本モデルファイルである。基本モデルファイルは、異物情報メモリによって記憶された情報と撮像データに基づいて初期モデルファイルが更新されることで生成される。
【0016】
そのため異物検出部は、初期モデルファイル、または初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルを備えている。基本モデルファイルは、異物を見落としまたは過検知した撮像データに基づいて学習(更新)されるため、以降において、同じ異物の見落としまたは過検知が抑制される。したがって、異物の有無の検知精度が向上する。また、学習も簡便にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】異物検知システムの構成概略図である。
図2】服飾・雑貨用異物検知装置の正面図である。
図3】服飾・雑貨用異物検知装置を含む異物検知システムのブロック図である。
図4】サンプル保持体とトレーの斜視図である。
図5】第1面を上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図6】第2面を上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図7】第3面を上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図8】第4面を上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図9】第5面を上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図10】第6面上にしたサンプル保持体を用いた異物サンプルのX線画像である。
図11】異物をピクセルにて表した画像であり、異物無しの判定例を示している。
図12】異物をピクセルにて表した画像であり、異物有の判定例を示している。
図13】異物検知の作業手順を説明するフローチャート図である。
図14】異物検知時の第1結果モニタに表示された画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態を図面を参照して下記に詳しく説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが、同じ機能を有する同じ要素を意味する。本発明の一つの実施の形態を図1~17にしたがって説明する。以下の説明にあたって上下、左右の方向は、各図に示す上下、左右の方向である。
【0019】
[異物検知システム1]
図1、2に示すように異物検知システム1は、被検査物である服飾・雑貨に異物が混入されているか否かを検出するシステムである。被検査物の服飾は、例えばシャツ90などの衣類、靴、鞄、手袋である。雑貨は、日用品に利用するものであって、文房具などである。異物検知システム1は、異物検知装置2とサーバ30を備える。異物検知装置2は、X線検査装置2aと、X線検査装置2aに隣接しX線検査装置2aからのデータに基づいて異物を検出する第1ワークステーション11と、映像モニタ・入力手段でもある表示・入力部9を有する。第1ワークステーション11は、通信回線33を介してサーバ30と接続される。また、異物検知システム1は、異物の有無を所定のツールで学習させるための第2ワークステーション40を有する。第2ワークステーション40は、アップロード等の必要時に第3通信回線33を介してサーバ30と接続される。
【0020】
[X線検査装置2a]
図1、2に示すようにX線検査装置2aは、横長の直方体状をなす下側筐体3と、下側筐体3上に設けられ上方へ突出する上側筐体3dを備える。下側筐体3の右側面には、被検査物を受け入れる入口3aが設けられる。下側筐体3の左側面には、被検査物を送り出す出口3bが設けられる。入口3aと出口3bは、鉛製のカーテン(図示しない)でそれぞれ覆われている。
【0021】
図2、3に示すように下側筐体3の内部には、入口3aと出口3bに亘って搬送路5が設けられる。搬送路5は、搬送ベルト5aと、搬送ベルト駆動部5bと、搬送ベルト制御部5cを備える。搬送路5の上流側(入口3a側)には、搬送ベルト5aと同一の高さ位置となるように第1ピンコンベヤ5dが設けられる。搬送路5の下流側(出口3b側)には、搬送ベルト5aと同一の高さ位置となるように第2ピンコンベヤ5eが設けられる。これによりシャツ90を載せたトレー91は、第1ピンコンベヤ5d、搬送ベルト5a、第2ピンコンベヤ5eの順にスムーズに搬送される。搬送ベルト制御部5cが制御部7から指令を受け、搬送ベルト駆動部5bの動作を制御する。搬送ベルト駆動部5bが搬送ベルト5aを駆動させる。
【0022】
図2に示すようにX線検査装置2aには、照射部6が収納されている。照射部6は、X線を照射するX線源6a、第1発光部6b、第1受光部6c、第2発光部6d、第2受光部6eおよび照射制御部6fを備える。図3に示す照射制御部6fは、X線を照射するX線照射時間や、X線強度など細かな設定を含む指令を制御部7から受け、X線源6aから照射されるX線を制御する。
【0023】
図2に示すようにX線源6aは、鉛直下方である第1方向aと、鉛直下方に対して所定の角度θ(5~30°で、例えば20°)傾斜した第2方向bにX線を発する。なおX線源6aは、第1方向aのX線源と第2方向bのX線源を別個に備えても良いし、1つであっても良い。そのためシャツ90は、2方向(第1方向a、第2方向b)からのX線が照射される。第1方向aのX線を第1発光部6bが受けて発光する。
【0024】
第2方向bのX線を第2発光部6dが受けて発光する。第1発光部6bと第2発光部6dが発する光を図3に示す受光部6c、6eが受ける。受光部6c、6eは、受光した光の量に応じた信号(第1撮像データ、第2撮像データ)を制御部7に発信する。第1発光部6b、第1受光部6cが、第1センサに相当する。第2発光部6d、第2受光部6eが、第2センサに相当する。
【0025】
図3に示すようにX線検査装置2aには、制御部7、記憶部8、制御盤4、警報装置19が設けられている。X線検査装置2aは、制御部7により中央管理され、各構成要素は制御部7の指令に基づいて実行される。制御部7は、1つまたは複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を有し記憶部8に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、様々の情報処理、制御処理を実行する。
【0026】
図3に示す記憶部8は、制御部7が実行する様々の情報処理、制御処理のプログラムを記憶する。制御部7は、照射部6、搬送路5、表示・入力部9等と電気的に接続される。制御盤4は、上側筐体3dの表面の上部に設けられている。制御盤4は、電流計4b、電圧計4c、各種のスイッチ4dを備えている。作業者80は、電流計4bおよび電圧計4cを目視でき、各種のスイッチ4dを操作できる。
【0027】
図1に示すように警報装置19は、上側筐体3dの上面に設けられている。警報装置19は、例えばライトであって、X線の漏洩時、X線検査装置2aの扉の閉め忘れ、カバーの脱落、入口3a、出口3bの鉛製のカーテンの欠損等を検出すると所定の光を発する。あるいはスピーカであって、所定の音声、警告音を発する。警報装置19は、作業者80の正面に位置するため、警報装置19が発する光、音声および警告音を作業者80が見落とし、聞き逃しすることを抑制できる。制御部7は、搬送路5、照射部6、記憶部8、制御盤4とそれぞれ電気的に接続されている。
【0028】
図3に示すように表示・入力部9は、複数、例えば4つのモニタを備える。例えば、第1モニタ9a、第1結果モニタ9b、第2モニタ9c、第2結果モニタ9dを備える。これら各モニタ9a~9dは、タッチ操作を受け入れるタッチ式のモニタであって、表示機能と入力機能(画面のタッチを受け入れる機能)を備える。第1モニタ9aと第2モニタ9c、第1結果モニタ9bと第2結果モニタ9dは、第1ワークステーション11と電気的に接続されている。。
【0029】
図1に示すように第1モニタ9aは、上側筐体3dの右側部の下方にアーム状の取付部材9eを介して取り付けられる。第1結果モニタ9bは、上側筐体3dの右側部の上方にアーム状の取付部材9eを介して取り付けられる。そのため、第1モニタ9aと第1結果モニタ9bは、上下に並設されている。第2モニタ9cは、上側筐体3dの左側部の下方にアーム状の取付部材9eを介して取り付けられる。第2結果モニタ9dは、上側筐体3dの左側部の上方にアーム状の取付部材9eを介して取り付けられる。そのため、第2モニタ9cと第2結果モニタ9dは、上下に並設されている。また、各モニタ9a~9dは、同一の画面サイズである。
【0030】
そのため、作業者80は大きく目線移動することなく、第1モニタ9aと第1結果モニタ9bに映し出される映像を見比べることができる。したがって、両モニタ9a、9bに映し出される映像を簡便に見比べることができる。このことは、第2モニタ9cと第2結果モニタ9dにおいても同様である。第1モニタ9aと第2モニタ9cは、第1受光部6c、第2受光部6eからの信号に基づいたX線画像を表示する。第1結果モニタ9bと第2結果モニタ9dは、第1ワークステーション11の制御部12の画像生成部13が生成したシャツ90のX線画像を表示する。作業者80は、4つの9a~9dを同時に視認できる。
【0031】
なお、第1モニタ9a、第1結果モニタ9bは、2つの独立したモニタで構成されることなく、1つのモニタで上下または左右に画面を2分割に表示しても構わない。このことは、第2モニタ9c、第2結果モニタ9dにおいても同様である。また、第1モニタ9a~第2結果モニタ9dは、4つの独立したモニタで構成されることなく、1つのモニタで上下左右に画面を4分割に表示しても構わない。
【0032】
[第1ワークステーション11]
図1に示す第1ワークステーション11は、X線検査装置2aからの画像データ(第1撮像データ、第2撮像データ)を解析するものである。第1ワークステーション11は、解析装置本体11aを備える。解析装置本体11aへの入力は、第1モニタ9a、第2モニタ9cの入力機能により実施される。図3に示すように、第1ワークステーション11は、制御部12、異物情報メモリ17、記憶部21、送受信部23(受信手段)を備える。第1ワークステーション11は、制御部12により中央管理され、各構成要素は制御部12の指令に基づいて実行される。
【0033】
図3に示す制御部12は、1つまたは複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を有し記憶部21に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、様々の情報処理、制御処理を実行する。また、制御部12は、画像生成部13、異物検出部14(異物検出手段)、異物表示付与部20、AI動作結果データ生成付与手段22、書込み手段24を備える。画像生成部13は、X線検査装置2aの第1受光部6c、第2受光部6eからの信号(第2撮像データ)を受信して、X線照射画像を生成する。
【0034】
図3に示す異物検出部14は、演算部15と、ファイル記憶部25を備える。演算部15は、1つまたは複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を有しAI検査モデルファイル16を読み出して実行する。ファイル記憶部25には、AI検査モデルファイル16が記憶されている。AI検査モデルファイル16は、異物検知を行うAI頭脳ファイルであり、標準異物サンプル画像データに基づいて生成された初期モデルファイルに、第1撮像データと第2撮像データから、第2ワークステーション40を操作するオペレータにより選択された画像ファイル群に基づいて追加学習し生成されたAI検査モデルファイルファイルである。AI検査モデルファイル16は、モデルファイル作成プログラムを利用して第2ワークステーション40によって生成される。AI検査モデルファイル16には、第1撮像データおよび第2撮像データ等の画像データを含まれない。
【0035】
異物検出部14は、第1受光部6cからの第1撮像データまたは第2受光部6eからの第2撮像データとファイル記憶部25のAI検査モデルファイル16に基づいて異物を検出する。異物情報メモリ17は、異物検出部14が異物を見落としまたは異物を過検知した第1撮像データまたは第2撮像データを記憶する。第1撮像データまたは第2撮像データは、画像データとAI動作結果データを含む。AI動作結果データは、画像ファイル名、AI検査モデルファイル名、閾値、検査ラベル、塊ピクセル数、検出した塊の外接矩形、検査タイプ(0:アパレル、1:靴)、検査結果(0:OK、1:NG)、異物有無(0:異物なし、1:異物あり)、検査速度(msec)、検査除外エリア(左端、上部、右端、下部からのオフセット値)等の情報を含む。
【0036】
図3に示す異物表示付与部20は、異物検出部14により異物が検出された第1撮像データまたは第2撮像データにおいて、異物に関連するように異物の周囲を覆い、好ましくは点滅表示する四角枠状の第1異物表示92、第2異物表示(図示しない)をそれぞれ付与する。これら両異物表示92には、所定の色(赤、黄等)が付される。そのため、作業者80は撮像データの中から異物を容易に認識できる。
【0037】
図3に示す記憶部21は、制御部12が実行する様々の情報処理、制御処理のプログラムを記憶する。送受信部23は、インターネットを経由して(第3通信回線33を介して)制御部12とサーバ30を信号の送受信を可能に電気的に接続する。なお送受信部23は、信号の送受信を有線に限らず、無線で行っても良い。AI動作結果データ生成付与手段22は、異物の見落としや過検知が生じた画像データ(第1撮像データ、第2撮像データ)を区別するAI動作結果データ(異物有無(0:異物なし、1:異物あり)など)を生成付与する。
【0038】
図3に示す書込み手段24は、サーバ30からの送受信部23を介した信号に基づいてAI検査モデルファイル16をファイル記憶部25に書き込む(記憶させる)。制御部12は、記憶部21、異物情報メモリ17、送受信部23とそれぞれ電気的に接続されている。第1ワークステーション11は、第1通信回線31、第2通信回線32を介してX線検査装置2a、表示・入力部9とそれぞれ電気的に接続されている。第2通信回線32は、例えば4本のディスプレイケーブルおよびUSBケーブルである。
【0039】
[サーバ30]
図1に示すようにサーバ30は、インターネット回線(第3通信回線33)を通じて例えばX線検査装置2aと異なる場所(例えば、クラウド上)に設定される。サーバ30は、サーバ本体30aのみを備える。サーバ30は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えば汎用のコンピュータである。サーバ30は、第1ワークステーション11に記憶する異物検出部14のAI検査モデルファイル16を保存可能である。
【0040】
サーバ30は、以下の3つの機能(第1機能~第3機能)を有する。第1機能は、第1ワークステーション11の動作の認証機能である。すなわち、異物検知システム1の管理者に許可された所定のユーザのみが第1ワークステーション11を使用できるようにサーバ30に認証機能を備える。
【0041】
第2機能は、第2ワークステーション40で生成されたAI検査モデルファイル16がアップロードされ、アップロードされたAI検査モデルファイル16をインターネット経由(第3通信回線33)で第1ワークステーション11にダウンロードする機能である。すなわち、第1ワークステーション11にAI検査モデルファイル16を遠隔インストールできる機能である。これにより、AI検査モデルファイル16を簡便に更新(バージョンアップ)できる。
【0042】
第3機能は、第1ワークステーション11のAI動作結果データを共有できる機能である。AI動作結果データとは、画像ファイル名、AI検査モデルファイル名、閾値、検査ラベル、塊ピクセル数、検出した塊の外接矩形、検査タイプ(0:アパレル、1:靴)、検査結果(0:OK、1:NG)、異物有無(0:異物なし、1:異物あり)、検査速度(msec)、検査除外エリア(左端、上部、右端、下部からのオフセット値)等の情報を含むファイルで、第1撮像データおよび第2撮像データに、AI動作結果データが所定のファイル形式(例えば、CSV形式)で生成され、異物を見落としまたは過検知した際に、作業者80が第1結果モニタ9bまたは第2結果モニタ9dにタッチすることで、そのAI動作結果データの一部として異物見落としまたは過検知した記録が保存される。すなわち、この第3機能は、AI動作結果データを所定のファイル形式(例えば、CSV形式)で収集する機能である。これにより、X線検査装置2aの作業者80が見落としまたは過検知と判定した第1撮像データおよび第2撮像データのみを簡便に特定できる。また、例えば1か月あたりの見落としまたは過検知の数を簡便に把握できる。また、異物の見落としまたは過検知の履歴を簡便に把握できる。また、これらの結果をインターネット上で共有できる。
【0043】
[第2ワークステーション40]
第2ワークステーション40は、X線検査装置2a、第1ワークステーション11とは異なる場所(遠方)に配置されており、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えば汎用のコンピュータである。第2ワークステーション40は、AIモデルファイル作成プログラムを有する。AIモデルファイル作成プログラムとは、異物検知を行うAI頭脳ファイルであるAI検査モデルファイルを、第1撮像データおよび第2撮像データによりAI学習またはAI追加学習し、ファイル生成またはファイル更新生成するプログラムである。
【0044】
初期モデルファイルは、第2ワークステーション40を操作するオペレータの操作により、モデルファイル作成プログラムを利用して標準異物サンプル画像データに基づいて生成される。標準異物サンプル画像データは、後述する取得方法によって外部で作成され、例えばHDD等の記憶媒体に記憶させたものを取り込んで取得する。オペレータは、初期モデルファイルを生成する際、使用する標準異物サンプル画像データを自身の経験や知見に基づいて選択し、この選択した標準異物サンプル画像データのみを使用する。
【0045】
基本モデルファイルは、第2ワークステーション40を操作するオペレータの操作により、モデルファイル作成プログラムを利用して第1撮像データおよび第2撮像データに基づいてAI検査モデルファイルを随時更新して生成される。ここでの第1撮像データおよび第2撮像データは、異物を見落としまたは過検知したものである。第1撮像データおよび第2撮像データは、外部で作成され、例えばHDD等の記憶媒体(この例では、第1ワークステーション11の異物情報メモリ17)に記憶させたものを取り込んで取得する。また、オペレータは、基本モデルファイルを生成する際、使用する第1撮像データおよび第2撮像データを自身の経験や知見に基づいて選択し、選択した第1撮像データおよび第2撮像データのみを使用する。
【0046】
このようにオペレータ自身の経験や知見に基づいた画像データのみを使用してAI検査モデルファイル16を生成するため、生成されるAI検査モデルファイル16の異物の検知精度が向上する。また基本モデルファイルは、初期モデルファイルを更新(学習)したAI検査モデルファイルである。そのため、以降において、この基本モデルファイルを使用して異物を検査すると、同一の異物を見落としまたは過検知することがない。したがって、新たに基本モデルファイルを更新生成するごとに、異物の検知精度が向上する。この基本モデルファイルの新たな生成を、定期的(例えば、1か月ごと)に行う。すなわち、定期的に基本モデルファイルを学習(再学習)する。なお、第2ワークステーション40とサーバ30を統合して1つのワークステーションとして稼働させても構わない。
【0047】
[標準異物サンプル画像の取得方法(異物サンプル情報取得方法)]
標準異物サンプル画像の取得手順を説明する。予め、図4に示すように予め採取したサンプル保持体51を準備する。サンプル保持体51は、例えば1辺が4cm程度の直方体状のメラミンスポンジである。あるいは多面体のスポンジ、発泡樹脂体でも構わない。異物のサンプルの一例として、割れたクリップ50が挙げられる。異物のサンプルは、優先順位を付けて学習させることが好ましい。これにより学習をし忘れることを防止できる。例えば、ガラス片、針、カッターの刃、安全ピン、釘、ねじ等、異物混入で人体へ影響があると思われる異物を第1優先に学習させる。工場のミスで混入、あるいは作業者のうっかりミスによる混入するもの、例えばはさみ、ペン、パッキンテープ等を第2優先に学習させる。大きさの小さい異物、例えば砂粒等を第3優先に学習させる。
【0048】
図4に示すようにサンプル保持体51は、第1面52から内部に向けてスリット58が形成されている。次に、サンプル保持体51のスリット58にクリップ50を挿し込む。サンプル保持体51をトレー91(トレー91と同じ材質のサンプル用トレー)に載せる。サンプル保持体51の6面にX線をそれぞれ照射して、X線照射画像をそれぞれ取得するために、まず、サンプル保持体51の第1面52が上、すなわち第2面53が下になるようにサンプル保持体51をトレー91に載せ、第1面52からX線を照射する。
【0049】
同様に、サンプル保持体51の第2面53、第3面54、第4面55、第5面56、第6面57が上、すなわち第1面52、第4面55、第3面54、第6面57、第5面56が下になるようにサンプル保持体51をトレー91にそれぞれ載せ、第2面53、第3面54、第4面55、第5面56、第6面57からX線をそれぞれ照射する。すると、図5~10に示すように、6枚のX線照射画像が取得される。なお、X線照射画像にサンプル保持体51そのものが映り込み難いので、6方向からの鮮明なX線照射画像を取得できる。この取得した6枚のX線照射画像を品目(この場合、クリップ50)に対応付けて第2ワークステーション40に記憶させる。
【0050】
このようにして標準異物サンプル画像を取得できる。なお、検知したい異物ごとに、この標準異物サンプル画像を取得しておく。また、同一種類の異物であっても、形状、サイズ等が異るものを、さらに品目を区別して第2ワークステーション40に記憶させておく。そうすると、数千点~数万点の標準異物サンプル画像が出来上がる。
【0051】
[AI動作結果データの生成付与]
異物検出部14において異物の検知を行う際、異物が見落としまたは過検知される場合がある。その場合、異物が見落としまたは過検知された第1撮像データおよび第2撮像データ(画像データ)に対して、AI動作結果データの一部として、異物有無(0:異物なし、1:異物あり)が記録される。この異物有無(0:異物なし、1:異物あり)記録は、作業者80による第1結果モニタ9b、第2結果モニタ9dの画面のタッチ操作にて行われる。例えば、異物検出部14に異物が見落としまたは過検知された場合、作業者80は第1結果モニタ9b、第2結果モニタ9dの画面をタッチする。すると、このタッチした画面に対応する画像データに付与されるAI動作結果データの一部にAI動作結果データ生成付与手段22によって付与される。
【0052】
このAI動作結果データが付与された画像データが異物情報メモリ17に蓄積される。この異物情報メモリ17は、例えばHDD等であるため、この異物情報メモリ17を外部装置である第2ワークステーション40に搬送して接続できる。第2ワークステーション40でAI動作結果データが付与された画像データが読み取られ、読み取られた画像データのうち、第2ワークステーション40のオペレータが選別したものだけが、基本モデルファイルの生成に使用(ピックアップ)される。
【0053】
[異物検知の作業手順]
次に、図13を参照して異物検知の作業手順を説明する。この異物検知として、シャツ90に混入された異物を検知する例を説明する。作業者80は、異物検知装置2を起動させる(S1)。なお、サーバ30は、通常、常時起動している。次に、作業者80は、第1ワークステーション11からサーバ30にアクセスして認証を得る(S2)。作業者80には、予め、アクセスするための、ID、パスワード等がサブスクリプション契約等で付与されている。
【0054】
初期設定の際、あるいは更新が必要な際に、作業者80は、サーバ30から最新のAI検査モデルファイル16を第1ワークステーション11にダウンロードする(S3)。ダウンロードされた最新のAI検査モデルファイル16は、第1ワークステーション11の異物検出部14のファイル記憶部25に書込み手段24により書き込み記憶される。更新が不要な場合は、S3の工程はスキップされる。次に、作業者80は、制御盤4を操作して搬送ベルト5aを起動させる(S4)。次に、作業者80は、シャツ90を載せたトレー91を第1ピンコンベヤ5dに置く(S5)。
【0055】
図1,13を参照するように、次に作業者80は、トレー91を第1ピンコンベヤ5dから搬送ベルト5a(搬送路上)へ載せる(S6)。次に、作業者80は、シャツ90を載せたトレー91をX線検査装置2aの入口3aから搬入する(S7)。搬送ベルト5aによってトレー91がX線源6aの下方に到達すると、シャツ90に第1方向aと第2方向bからX線がそれぞれ照射される(S8)。それぞれ照射されたX線は、シャツ90を透過し、搬送ベルト5aの下方にある両発光部6b、6dに到達する。
【0056】
両発光部6b、6dは、その到達したX線の量に応じてそれぞれ発光する。第1受光部6c、第2受光部6eは、その発光した光をそれぞれ受光する。
【0057】
第1モニタ9aには、第1受光部6cから受光した光の量に応じた信号に基づいて第1方向aからのシャツ90のX線照射画像(第1映像)が表示される(S9)。この画像には、異物としてクリップ50が表示される。そのため作業者80は、クリップ50が表示されたX線照射画像を見ることができる。したがって作業者80は、シャツ90に混入されているクリップ50を認識できる(S10)。
【0058】
同様に、第2モニタ9cには、第1受光部6cから受光した光の量に応じた信号に基づいて第2方向bからのシャツ90のX線照射画像(第2映像)が表示される(S9)。この画像には、異物として20°傾斜した状態のクリップ50が表示される。そのため作業者80は、20°傾斜した状態のクリップ50が表示されたX線照射画像を見ることができる。したがって作業者80は、シャツ90に混入されている20°傾斜した状態のクリップ50を認識できる(S10)。
【0059】
同時に、制御部12の画像生成部13は、両受光部6c、6eで受光した光からシャツ90のX線照射画像をそれぞれ生成する。そして、制御部12の異物検出部14は、X線照射画像から異物の有無を検知する。この場合、異物検出部14は、クリップ50を認識するため、異物表示付与部20がクリップ50の周囲を囲う第1異物表示92、第2異物表示を付与する。
【0060】
なお、異物検出部14は、第1撮像データまたは第2撮像データを領域分割することでピクセルにて表す画像を取得し、画像内における異物として検出した連続する複数のピクセル数が閾値を超える際に異物として検出する。取得したピクセルにて表す画像において、縦、横、斜めで繋がるものを1つの塊とみなす。例えば、閾値を「5」と設定する。なお、閾値は、任意に設定変更可能である。
【0061】
すると、図11に示されるようなピクセル60の塊は、「4」つのピクセル60を有する。すなわち、ピクセル60が「4」である。この場合、異物検出部14は、ピクセル60の数が閾値より小さいので異物無と判定する。一方、図12に示されるようなピクセル60の塊は、「7」つのピクセル60を有する。すなわち、ピクセル60が「7」である。この場合、異物検出部14は、ピクセル60の数が閾値より大きいので異物有と判定する。このようにして異物検出部14は異物の有無を検出する。異物検出部14は、上記の判定に加え、ピクセル60の塊の形状で異物か否かの判定をしても良い。
【0062】
第1結果モニタ9bには、第1方向aからのシャツ90のX線照射画像が表示される(S9)。この画像には、異物としてクリップ50が表示される。その際、クリップ50の周囲を囲うように第1異物表示92が付与されている(図14参照)。そのため作業者80は、第1異物表示92が付与されたX線照射画像を見ることができる。したがって作業者80は、第1異物表示92の点滅表示に気づくため、シャツ90に混入されているクリップ50を確実に認識できる(S10)。なお、第1結果モニタ9bに表示されるX線照射画像は、第1モニタ9aに表示されるX線照射画像に第1異物表示92を付与したものである。
【0063】
同様に、第2結果モニタ9dには、第2方向bからのシャツ90のX線照射画像が表示される(S9)。この画像には、異物として20°傾斜した状態のクリップ50が表示される。その際、クリップ50の周囲を囲うように第2異物表示が付与されている。そのため作業者80は、第2異物表示が付与されたX線照射画像を見ることができる。したがって作業者80は、第2異物表示の点滅表示に気づくため、シャツ90に混入されているクリップ50を確実に認識できる(S10)。なお、第2結果モニタ9dに表示されるX線照射画像は、第2モニタ9cに表示されるX線照射画像に第2異物表示を付与したものである。
【0064】
次に、搬送ベルト5aに載せられたトレー91が異物検知装置2の出口3bから排出される(S11)。作業者80は、シャツ90を取り出して異物を確認する(S12)。これら一連の作業により、作業者80は、シャツ90に混入された異物を検知できる。
【0065】
また、上述した一連の作業において、第1モニタ9aに異物としてのクリップ50が表示されているにも関わらず、第1結果モニタ9bに第1異物表示92が付与されていない場合も考えられる。すなわち、異物検出部14が異物を見落としている場合も考えられる。その場合、作業者80は、上述したように第1結果モニタ9bの画面をタッチする(入力する)。すると、第1ワークステーション11のAI動作結果データ生成手段22は、このタッチに対応した第1撮像データにAI動作結果データファイルを生成付与する。この生成付与されたAI動作結果データファイルと第1撮像データが異物情報メモリ17に蓄積される。
【0066】
これとは逆に、シャツ90に異物が混入されていないのにも関わらず、異物検出部14が間違って異物として検出し、異物表示付与部20が第1異物表示92を付与する場合も考えられる。すなわち、異物検出部14が異物を過検知している場合も考えられる。その場合、作業者80は、上述したように第1結果モニタ9bの画面をタッチする(入力する)。すると、第1ワークステーション11のAI動作結果データ付与手段22は、このタッチに対応した第1撮像データにAI動作結果データを生成付与する。この生成付与されたAI動作結果データが付与および第1撮像データが異物情報メモリ17に蓄積される。これら蓄積された第1撮像データは、定期的に(例えば1か月ごとに)第2ワークステーション40へ搬送される。
【0067】
なお、第1モニタ9aと第2モニタ9cでは、X線源6aからのX線の照射角度が20°相違したX線照射画像が表示されている。そのため、第1モニタ9aでは見えなかった異物が第1結果モニタ9bで見えることもあり、その逆もある。したがって、異物の見落としを抑制できる。このことは、第1結果モニタ9bと第2結果モニタ9dにおいても同様である。
【0068】
また、X線検査装置2aにおいて、X線の照射に関する電圧は所定値に設定される。この電圧を変えることで、例えば256階層のグレースケールのレンジが変わる。閾値の変更時に、電圧による差が少なくなるような電圧が好ましい。ブライトネス変更では、グレースケールのレンジが変わらない。そのため、画面の明るさは、電圧の調整では行わない。例えば第1所定電圧以下では、プラスチックなど金属以外の異物と衣類が折り重なった部分のグレースケール値の差が少なくなる。第1所定電圧より高い第2所定電圧では、ブライトネス調整によっては、画像がホワイトアウトすることがある。また、X線の照射強度が高いとX線センサの寿命が短くなることがある。
【0069】
第1異物表示92、第2異物表示の点滅の有無および色は、作業者80の目が疲れないように任意に設定可能である。警報装置19が報知する光、音声、警告音は、ON-OFFの設定可能である。異物検出部14の異物の判定に領域分割を使用する。縦横斜めで異物として検出した隣接したピクセル数に閾値を設定し、異物検出部14はそのピクセル数(閾値)で異物判定の処理を実行する。
【0070】
異物検知装置2は、服飾・雑貨等の対象物を選択可能となっている。選択した対象物に応じてAI検査モデルファイル16を読み出す構成でもよい。対象物は1つでも複数でもよい。検査対象別に選べるAIの選定を行ってよい。X線照射画像のコントラストを変更すると作業者80が見やすくなる。X線ラインセンサの境界の調整も可能である。サーバ30により各種のX線照射画像のファイル管理を行い、X線検査用の報告書の作成機能を備えている。AIで異物の位置情報を判定する。第1モニタ9a、第1結果モニタ9bの2画面のうち下画面で異物を特定し、白黒の画面上であるため、形状等の把握がしやすくなっている。
【0071】
第1ワークステーション11のサブスクリプション契約の認証に期限を設けても構わない。また、第1ワークステーション11のメンテナンス期限を設定しても構わない。認証システム、サーバ30、基本モデルファイルのバージョンアップが可能である。
【0072】
6面体のサンプル保持体51(樹脂保持体)は、直方体であり、3.2cm×4cm×4cm程度でもよい。サンプル保持体51にスリット58を付け異物を挿している。6面からX線をそれぞれ照射することで、6方向からのデータを得ることができる。ポリエチレンまたはウレタントレイとサンプル保持体51はX線画像上で似た映像である。そのため、うっすらと線が現れる程度でAI学習には影響がない。X線検査で発見すべき異物を作成し、もしくは現物を調達してサンプル保持体51の中に埋め込む。サンプル保持体51に異物を入れ撮影すると1つの異物で6つの形状の撮影ができる(面積の違う異物が得られる)。
【0073】
基本モデルファイルを再学習するときに、実際の作業で検知不良、異物の検知をしたもの、正常なものを(AI)で学習し補正する。補正時に、AIで学習した精度確認のために、作成した異物の優先度の高いものを使用し、検知精度低下がないか確認する。作成した異物の優先度は、現場の頻度、人体への危険度で順位をつける。AIの学習優先度で、初期モデルファイルのみ異物リストを作成する。基本となるNG(混入の可能性のある異物全般)と、OK(全く混入のない衣料品)を学習させた初期モデルを作成する。例えば、40,000件ほどの画像を検査し、その中で発生した過検知や見逃しなどを追加で学習させておく。初期モデル学習に順位を付けておく。はさみ、ペン、パッキンテープは高い順位とする。ジーパンを加工する際に利用する砂粒は低い順位とする。学習データを利用してプログラムを実行する。
【0074】
AIの初期モデルファイルの学習として、異物混入で、人体に危害を与える可能性が高い標準異物を学習させておく。工場の事故で発生するものまで実施する。作業者のうっかりによる異物混入を学習した物の順番で学習させておく。学習順位は、検出したい異物の優先順位から決定し、優先順位の高い上位の異物検出物の学習忘れを回避する。AIの学習手順と優先度において、優先度高、優先度中がある場合、優先度高は、AI学習済みである。優先度高に対する影響を排除するために、優先度中の学習の条件等の変更を行い、検知精度を上げるように進める。これらの操作を繰り返し行うことで、AI初期モデルファイルとする。
【0075】
基本モデルファイルは、初期モデルファイルを実際の検査作業で使用し初期モデルファイルの改編をモデルファイル作成プログラムで行ったファイルである。基本モデルファイルは、実際の検査作業を実施して生成された第1撮像データと第2撮像データから、モデルファイル作成プログラムのオペレータが選択した学習データを元に生成され、実際に発生した異物をデータとしてAIに学習させ精度をあげたものである。実際の検査作業で見逃しが発生した場合を想定すると、画像(見逃し画像)で異物Aを見逃す。1.現物の正常画像数枚、異物Aの画像(見逃し画像)で、AIの学習を行う。2.学習後、異物Aの検知が可能かを確認する。3.異物サンプルの優先度高から、AI学習後の検知精度の確認を行う。学習した異物以外の精度低下がないかの確認のため3の工程は、人工異物の優先度高から実施することができ、AIの学習後の、誤作動の確認に用いることができる。
【0076】
追加学習にあたっては、第1方向のX線照射画像、第2方向のX線照射画像の両方とも見逃した場合を「見逃し」とする。今の検査モデルは、粒状の小さな異物はかなり検出精度が高くなる。しかし、逆に大きな異物(釘、ネジ、カッター片)は形によっては見逃しが発生することもある。これは正常品として学習している服の付属品(ボタン、ホック、ファスナー、バックル)が写る角度によっては大きな異物に近い形をしている場合が多々あるためである。
【0077】
大きな異物は、第1モニタ9a、第2モニタ9cで一目でわかるので万が一の見逃しも受け入れる。AIは人目につきにくい小さな異物に強いというアプローチである。品目で色分け表示も可能である。例えばシャツ90のボタン数を検出しボタン忘れ防止にも適用可能である。またハイヒール内の釘が折れていないかの確認にも適用可能である。この場合、釘の正常状態を判定すればよく、閾値を設けることで判別可能である。
【0078】
異物・混入とは、検査対象製品に混入した不要物のことである。過検知とは、本来問題のない部分にAIが異物反応を見せることである。すなわち、本来問題のない部分にAIが異物反応を見せることを指している。見逃しとは、異物が混入しているにもかかわらずAIが見つけられなかったことである。AIモデル(プログラム、異物情報、閾値を含む)とは、学習済み状態のAIの頭脳部分を保存したものである。学習ツールを使い、X線画像を使って「異物」部分や「正常」部分を学習させた結果を出力したファイルも記憶できる。内部的にはどの画像のどの部分を学習したかも記憶している。
【0079】
以上のような異物検知システム1によれば、シャツ90に対して第1方向aと第2方向bの2方向から照射するX線に基づいて異物の有無が検知される。したがって1方向から照射するX線に基づいて異物の有無を検知する場合と比較すると、検知する異物の見落としや過検知を抑制できる。さらに、第1方向aからのシャツ90のX線照射画像と、このX線照射画像に第1異物表示92が重ねて表示されたX線照射画像が上下に並んで表示されるため、これら2つのX線照射画像見比べることができる。そのため、第1モニタ9aおよび第1結果モニタ9bを比べることで異物検出部14による異物の見落とし、および過検知を作業者80が容易にできる。このことは第2方向bからのシャツ90のX線照射画像においても同様である。さらに、異物検出部14は、初期モデルファイル、または初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルを備えている。基本モデルファイルは、異物を見落としまたは過検知した第1撮像データまたは第2撮像データに基づいて学習(更新)されるため、以降において、同じ異物の見落としまたは過検知が抑制される。したがって、異物の有無の検知精度が向上する。また、学習も簡便にできる。
【0080】
さらに、AI検査モデルファイル16は、モデルファイル作成プログラムを利用して第2ワークステーション40によって生成される。そのため、検知精度の高いAI検査モデルファイルを生成できる。また、第2ワークステーション40によって生成されるため、AI検査モデルファイル16の生成にあたって異物検知装置2のユーザの関与を抑制できる。
【0081】
さらに、第1異物表示92または第2異物表示は、異物の周囲を覆う枠であり、かつ点滅表示される。そのため、第1結果モニタ9bまたは第2結果モニタ9dを監視する作業者80による異物の見落としを抑制できる。
【0082】
さらに、異物検出部14は、第1方向aからのX線照射画像または第2方向bからのX線照射画像を領域分割することでピクセルにて表す画像を取得する。そして異物検出部14は、画像内における異物として検出した連続する複数のピクセル数が閾値を超える際に異物として検出する。そのため、異物検出部14による異物の有無の検知を簡便に実施できる。
【0083】
さらに、服飾・雑貨用異物検知装置2に利用する標準異物サンプル画像データを取得する異物情報取得方法に関する。異物情報取得方法では、樹脂製でかつ6面体のサンプル保持体51の中に異物サンプル(例えばクリップ50)を挿入する。次に、搬送路5に載置されてシャツ90が載せられる樹脂製のトレー91にサンプル保持体51を第1面52が下になるように置く。そしてサンプル保持体51にX線を照射する。次に、サンプル保持体51を第2面が下になるようにトレー91に置く。そしてサンプル保持体51にX線を照射する。次に、サンプル保持体51を第3面が下になるようにトレー91に置く。そしてサンプル保持体51にX線を照射する。次に、X線を受ける両受光部6c、6eからの信号に基づいて少なくとも3方向の異物サンプルの情報を取得する。そのため、異物サンプルの情報は、6面体の少なくとも3面を利用することで、少なくとも3方向からの視点で記憶される。したがって、異物サンプルの情報が迅速かつ簡便に得られる。かくして異物サンプルの情報に基づく異物検知の精度が向上する。
【0084】
さらに、服飾・雑貨用異物検知装置を含む異物検知システム1は、第2ワークステーション40からAI検査モデルファイル16がアップロードされるサーバ30を有する。書込み手段24は、サーバ30からAI検査モデルファイル16がダウンロードされてAI検査モデルファイル16を服飾・雑貨用異物検知装置2のファイル記憶部25に書き込む。そのため、サーバ30に記憶のAI検査モデルファイル16を更新すると、異物検知装置2のファイル記憶部25に記憶のAI検査モデルファイル16を更新できる。したがって、異物検知装置2の設置場所に出向くことなく、異物検知装置2に記憶のAI検査モデルファイル16をサーバ30を介して更新できる。ゆえに、AI検査モデルファイル16の更新を簡便に実施できる。
【0085】
本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0086】
添付の図面を参照して詳細に上述した実施形態は、本発明の代表例であって本発明を限定するものではありません。詳細な説明は、本教示の様々な態様を作成、使用および/または実施するために、当業者に教示するものであって、本発明の範囲を限定するものではありません。更に、上述した各付加的な特徴および教示は、改良された服飾・雑貨用異物検知装置2を提供するため、別々にまたは他の特徴および教示と一緒に適用および/または使用され得るものである。
【0087】
実施形態では、所定の角度θとして、例えば、20°を説明した。これに替えて、5~30°の範囲であれば構わない。また実施形態では、第1方向aと第2方向bのX線源6aは、同一構成である(一体部材から成る)場合を説明した。これに替えて、これらのX線源6aは、別構成でも構わない。また実施形態では、サンプル保持体51が6面体を説明した。これに替えて、サンプル保持体51は、多面体であれば何面体でも構わない。
【0088】
また実施形態では、異物検知装置2は、X線検査装置2aと、第1ワークステーション11と、表示・入力部9を有する形態を説明した。その際、X線検査装置2aと第1ワークステーション11が別構成である形態を説明した。これに替えて、X線検査装置2aと11が同一構成でも構わない。例えば別構成であれば、既存のX線検査装置2aに第1ワークステーション11を後付けして異物検知システム1を構築できる。また同一構成であれば、X線検査装置2aに第1ワークステーション11を組み込むことができる。したがって第1ワークステーション11の別置きが不要となり、簡便な構成となる。
【0089】
また実施形態では、標準異物サンプル画像の取得手順として、サンプル保持体51の第1面52~第6面57が上になるようにサンプル保持体51をトレー91に載せ、第1面52~第6面57からX線をそれぞれ照射した。これに替えて、サンプル保持体51の第1面52~第6面57が下になるようにサンプル保持体51をトレー91に載せ、その反対面からX線をそれぞれ照射しても構わない。またX線を照射する方向は、6方向に限ることなく、少なくとも3方向でよい。
【符号の説明】
【0090】
1 異物検知システム
2 異物検知装置
5 搬送路
6a X線源
6b 第1発光部(第1センサ)
6c 第1受光部(第1センサ)
6d 第2発光部(第2センサ)
6e 第2受光部(第2センサ)
9a 第1モニタ
9b 第1結果モニタ
9c 第2モニタ
9d 第2結果モニタ
11 第1ワークステーション
14 異物検出部
22 AI動作結果データ生成付与手段
25 ファイル記憶部
30 サーバ30
40 第2ワークステーション(外部装置)
90 シャツ
a 第1方向
b 第2方向
【要約】
【課題】異物を高い精度で検知ができる、あるいは検知精度を高めるための学習を容易にすることのできる異物検知装置を提供することを課題とする。
【解決手段】異物検出部14はファイル記憶部25に記憶のAI検査モデルファイル16を利用して、第1センサ6b、6cからの第1撮像データまたは第2センサ6d、6eからの第2撮像データに基づいて異物を検出する。異物検出部14が異物を見落としまたは異物を過検知した際に作業者によって操作される入力手段9と、入力手段9からの信号に基づいて異物の見落としまたは異物の過検知の情報を記憶する異物情報メモリ17を有する。AI検査モデルファイル16は、標準異物サンプル画像データに基づいて生成された初期モデルファイルまたは、異物情報メモリ17によって記憶された情報と第1撮像データと第2撮像データに基づいて初期モデルファイルを更新した基本モデルファイルである。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14