(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】金融商品取引管理装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q40/04
(21)【出願番号】P 2023177784
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317010521
【氏名又は名称】株式会社マネースクエアHD
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】相葉 斉
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-013516(JP,A)
【文献】特開2015-191494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0206332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品の取引を行う顧客と、該顧客の前記金融商品の取引を管理する金融商品取引業者との間で前記金融商品の取引を行わせる金融商品取引管理装置であって、
前記顧客の指示に基づいて前記金融商品の注文を行うための顧客注文情報を生成する顧客注文情報生成手段と、
前記顧客注文情報生成手段が生成した前記顧客注文情報のうち、
未約定であると共に所定の条件において約定する見込みのある前記注文の前記顧客注文情報について
、前記未約定の買いの前記注文と前記未約定の売りの前記注文とに対して相互に所定の演算
を行う処理と、該
所定の演算の結果を出力する
処理とを行う約定見込注文処理手段とを備え、
該約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報により取引が行われる
、前記未約定であると共に前記約定する見込みのある前記注文について、前記注文を約定させる手段における、前記約定する見込みのある前記注文を約定させる処理を行うと共に、該注文を約定させる処理とは別の処理として、前記約定以前に、該注文が約定されることで発生する約定量の情報
を出力する
ことを特徴とする金融商品取引管理装置。
【請求項2】
前記約定量の情報は、所定の注文の数量の情報であることを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項3】
前記金融商品の相場価格の情報を取得する相場価格情報取得手段を備え、
約定見込注文処理手段は、前記相場価格情報取得手段が取得した前記金融商品の前記相場価格を前記所定の条件として前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項4】
前記顧客注文情報に基づいて前記注文を約定させる処理を行う約定情報処理手段を備え、
前記約定見込注文処理手段は、前記約定情報処理手段における前記注文を約定させる以前のタイミングで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項5】
前記顧客注文情報を記録する顧客注文情報記録手段を備え、
前記約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報記録手段に記録された前記顧客注文情報のうち、前記所定の条件に適合する前記顧客注文情報について前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項6】
前記顧客注文情報記録手段には
、買い注文の前記顧客注文情報
と売り注文の前記顧客注文情報とが記録され、
前記約定見込注文処理手段は、
前記顧客注文情報記録手段に記録された前記買い注文の前記顧客注文情報、及び/又は、前記顧客注文情報記録手段に記録された前記売り注文の前記顧客注文情報を、所定の条件に適合する前記買い注文の前記顧客注文情報、及び/又は、所定の条件に適合する前記顧客注文情報記録手段に記録された前記売り注文の前記顧客注文情報と相殺させることで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする請求項5に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項7】
前記約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報記録手段に記録された、一度で約定する基準を満たす価格帯の前記買い注文の前記顧客注文情報と前記売り注文の前記顧客注文情報とを相殺させることで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする請求項6に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至7の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の金融商品の取引の管理及び支援を行う技術に関する。本発明は、各種の金融商品の取引を管理及び支援する装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
株式、債券、投資信託、不動産投資信託、コモディティ(商品)、外国為替、株価指数、暗号資産(仮想通貨)、等、相場価格が変動する各種の金融商品の取引方法として、成行注文(注文発注時点の相場価格で取引を行う注文形態)や指値注文(相場価格が予め指定された価格になった時点で取引を行う形態)等が知られている。この取引方法によって顧客と銀行等との金融機関と取引を、金融商品の取引業者(以下「取引業者」と称する。)が行う場合、取引業者がカバー取引を行う場合がある。このカバー取引とは、銀行等と顧客との間で締結された金融商品の取引において発生したポジションを相殺する取引のことである。取引業者が、顧客から引き受けた取引と反対の取引を銀行等に対しカバー取引として行うことで、為替変動のリスクヘッジが可能になる。
【0003】
従来、これらの注文形態、例えば指値注文による取引を、カバー取引を含む形でコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。この発明においては、為替取引等の通貨取引において、通貨取引指標の実勢値を定期的に取得し、予め受け付けられた通貨取引指標に関する指定値と取得された実勢値とに基づいて、実勢値で通貨取引を締結するか否かを仮決定する。そして、実勢値での通貨取引を締結することが仮決定された場合、通貨取引に関するカバー取引の締結の可否を確認し、カバー取引の締結が可能であると確認された場合、カバー取引を締結し、仮決定された通貨取引を締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の発明で取引業者が金融商品の取引を行う場合、取引業者は、相場価格に一致した金融商品を約定させる顧客との取引と、約定に基づく銀行等とのカバー取引とを行う必要が生ずる。この場合の取引は、まず顧客との取引が行われ、その取引の結果に基づいてカバー取引が行われる。しかし、相場価格は時々刻々と変化するため、顧客との取引とカバー取引との時間差が大きくなることは、金融商品の約定価格とカバー取引を行う際の取引価格との価格差が大きくなる可能性が増大し、取引業者が実質的な損失を被るリスクが増大する。そのため、金融商品の約定とカバー取引との時間差は小さいことが望ましい。しかし、特許文献1に記載の発明においては、顧客との取引で約定したそれぞれの金融商品のデータをコンピュータシステムを構成するディーリングを行う装置に逐次送る。ディーリングを行う装置は、その金融商品のデータに基づいて逐次カバー取引を行う。そのため、短時間に大量の約定が発生した場合、処理対象となる金融商品のデータ量が膨大になり、約定からカバー取引までに要する時間が必然的に長大化する。このため、特許文献1に記載の発明においては、取引量の増大に依存して取引業者が実質的な損失を被るリスクが大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい金融商品の取引を実現できる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金融商品の取引を行う顧客と、該顧客の前記金融商品の取引を管理する金融商品取引業者との間で前記金融商品の取引を行わせる金融商品取引管理装置であって、前記顧客の指示に基づいて前記金融商品の注文を行うための顧客注文情報を生成する顧客注文情報生成手段と、前記顧客注文情報生成手段が生成した前記顧客注文情報のうち、未約定であると共に所定の条件において約定する見込みのある前記注文の前記顧客注文情報について、前記未約定の買いの前記注文と前記未約定の売りの前記注文とに対して相互に所定の演算を行う処理と、該所定の演算の結果を出力する処理とを行う約定見込注文処理手段とを備え、該約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報により取引が行われる、前記未約定であると共に前記約定する見込みのある前記注文について、前記注文を約定させる手段における、前記約定する見込みのある前記注文を約定させる処理を行うと共に、該注文を約定させる処理とは別の処理として、前記約定以前に、該注文が約定されることで発生する約定量の情報を出力することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記約定量の情報は、所定の注文の数量の情報であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記金融商品の相場価格の情報を取得する相場価格情報取得手段を備え、約定見込注文処理手段は、前記相場価格情報取得手段が取得した前記金融商品の前記相場価格を前記所定の条件として前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記顧客注文情報に基づいて前記注文を約定させる処理を行う約定情報処理手段を備え、前記約定見込注文処理手段は、前記約定情報処理手段における前記注文を約定させる以前のタイミングで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記顧客注文情報を記録する顧客注文情報記録手段を備え、前記約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報記録手段に記録された前記顧客注文情報のうち、前記所定の条件に適合する前記顧客注文情報について前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記顧客注文情報記録手段には、買い注文の前記顧客注文情報と売り注文の前記顧客注文情報とが記録され、前記約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報記録手段に記録された前記買い注文の前記顧客注文情報、及び/又は、前記顧客注文情報記録手段に記録された前記売り注文の前記顧客注文情報を、所定の条件に適合する前記買い注文の前記顧客注文情報、及び/又は、所定の条件に適合する前記顧客注文情報記録手段に記録された前記売り注文の前記顧客注文情報と相殺させることで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記約定見込注文処理手段は、前記顧客注文情報記録手段に記録された、一度で約定する基準を満たす価格帯の前記買い注文の前記顧客注文情報と前記売り注文の前記顧客注文情報とを相殺させることで前記約定量の情報を抽出するための演算を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、プログラムであって、コンピュータを請求項1乃至7の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、顧客注文情報により取引が行われる注文について、注文が約定されることで発生する約定量の情報を約定以前に出力する。約定に対応して行われるカバー取引に必要な約定量の情報を、約定処理自体に必要なデータより小さいデータとして形成してカバー取引を行える。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい金融商品の取引を実現できる金融商品取引管理装置を提供できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、約定量の情報は、所定の注文の数量の情報であることにより、約定した注文の情報からデータ量の小さい数値の情報のみを用いてカバー取引を行うことができる。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい金融商品の取引を実現できる金融商品取引管理装置を高い確実性をもって提供できる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、金融商品の取得された相場価格に基づいて約定量の情報を取得することにより、任意の相場価格に対応する金融商品の約定量の情報をもとにカバー取引を行うことができる。そのため、特定の時間帯の相場価格において約定した金融商品について、小さいデータによってカバー取引を行える。これにより、相場価格に対応する金融商品のカバー取引を、取引量の多少にかかわらず小さいリスクで行うことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、注文を約定させる以前のタイミングで約定量の情報を抽出するための演算を行うことにより、金融商品を約定させる処理を行う以前にカバー取引を行うことを可能にできる。これにより、迅速なカバー取引を行い、リスクの小さい金融商品の取引を実現できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、記録された顧客注文情報のうち、所定の条件に適合する顧客注文情報について約定量の情報を抽出するための演算を行うことにより、顧客ごとの注文について、小さいデータによるカバー取引を行える。これにより、顧客ごとの金融商品の取引について、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい取引を実現できる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、顧客注文情報記録手段に記録された、所定の条件に適合する買い注文の顧客注文情報、及び/又は、売り注文の顧客注文情報と相殺させることで約定量の情報を抽出する。これにより、予め記録された買い注文の数量と売り注文の数量とを相殺させ、カバー取引を行う注文を少なくし、小さいデータ量による、リスクの小さい金融商品の取引を確実に行うことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、一度で約定する基準を満たす価格帯の買い注文の顧客注文情報と売り注文の顧客注文情報とを相殺させて約定量の情報を抽出する。そして、特定の価格帯に存在する、カバー取引に必要な約定量の情報を相殺後の小さいデータ量として抽出できる。これにより、カバー取引を行う注文を少なくし、小さいデータ量による、リスクの小さい金融商品の取引を確実に行うことができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、本発明を、多様なコンピュータや多様なコンピュータシステムにおいて構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態の金融商品取引管理システム及び金融商品取引管理装置のシステム構成図及び機能ブロック図である。
【
図2】同上金融商品取引管理装置における、買い・売りの顧客注文情報から相殺情報を生成してカバー取引を行う状態を示す概念図である。(a1)注文管理装置における、買い・売りの顧客注文情報からサマリー情報を生成する状態を示す概念図である。(a2)サマリー情報を生成する際に用いられる、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報の概念図である。(b1)ディーリング装置においてサマリー情報から相殺情報を生成する状態を示す概念図である。(b2)ディーリング装置で処理されるサマリー情報の概念図、生成される相殺情報の概念図である。
【
図3】同上金融商品取引管理システム及び金融商品取引管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の実施の形態]
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[システム構成]
図1乃至
図3に、この発明の実施の形態を示す。
【0026】
図1は、この実施の形態の金融商品取引管理システム及び金融商品取引管理装置のシステム構成図及び機能ブロック図である。同図に示すとおり、金融商品取引管理システム1Aは、金融商品取引管理装置1と、n個(n≧1)のクライアント端末2
1,2
2,・・・2
nと、銀行システム3とを備えている。金融商品取引管理装置1とクライアント端末2
1,2
2,・・・2
nと銀行システム3とは、WAN(Wide Area Network)としてのネットワーク4を介して相互に交信可能である。この実施の形態の金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱う。
【0027】
金融商品取引管理装置1は、金融商品の取引を業務とする金融商品取引業者(以下単に「取引業者」と称する。)が管理し運用するサーバコンピュータであり、Webサーバ機能、大容量のデータを保存するデータベース機能を備えている。なお、ここでの「金融商品」とは、相場価格が変動し、売買取引が可能な金融に関する商品であり、たとえば外国為替がこれに該当する。ただし、金融商品取引管理装置1が扱う金融商品は、外国為替以外のどのようなものでもよい。
【0028】
クライアント端末21,22,・・・,2nは、金融商品の売買を行う、「顧客」としての個人又は法人が所持し使用する、データ通信機能を有する通信端末である。例えば、クライアント端末21,22,・・・,2nは、パーソナルコンピュータ、携帯電話端末等が該当する。なお、「顧客」は、主として取扱業者との間で金融商品の売買取引を行う個人又は法人である。
【0029】
図1には図示しないが、金融商品取引管理装置1、クライアント端末2
1,2
2,・・・,2
n、銀行システム3、それぞれハードウェア構成を備える。このハードウェア構成は、例えば、少なくとも1のCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、及び、CPUの作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)、起動用ブートプログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)である。また例えば、このハードウェア構成は、各種プログラムやデータ等が記録されるハードディスク等の補助記憶装置、データの送受信に用いる通信インターフェース等である。補助記憶装置には、OS(Operating System)用プログラム、各種アプリケーションプログラム、データベースに記録されたデータ等が記録されており、これらのプログラムやデータはCPUの演算処理により、ハードウェア資源と協働して各種機能を実現する。
【0030】
なお、金融商品取引管理装置1、銀行システム3は、1のサーバコンピュータによって形成されていても、複数のネットワークコンピュータシステムによって形成されていてもよい。また、金融商品取引管理装置1、銀行システム3は、クラウドコンピュータシステム等、ネットワーク4上に分散配置された複数のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0031】
図1に示すとおり、クライアント端末2
1には、マウスやキーボード等各種指示を入力するために用いられる操作部21、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり操作部21から入力された各種指示等や各種画像を表示する表示部22を有している。クライアント端末2
1の操作部21と表示部22は、指やタッチペン等のポインティングデバイスの接触位置の座標情報等に基づいて各種入力を行う、タッチパネル式のディスプレイとして構成されていてもよい。図示しないが、クライアント端末2
2,・・・2
nも同様の操作部と表示部とを備える。なお、クライアント端末2
1,2
2,・・・2
nは同じ構成を持つので、以下、区別する必要がある場合を除き、クライアント端末2と記載する。
【0032】
銀行システム3は、銀行等、取引業者に対してカバー取引を行う業者の扱うコンピュータシステムであり、ネットワークサーバ、データベースサーバの機能を備える。銀行システム3は、機能手段として、金融商品取引管理装置1との間でカバー取引を行う「取引実行手段」としての取引実行部31を備える。
【0033】
[金融商品取引管理装置の詳細]
図1に示す通り、金融商品取引管理装置1は、注文管理装置40とディーリング装置50とを備える。注文管理装置40は、主にクライアント端末2とデータや信号の送受信を行い、クライアント端末2を使用する顧客からの注文を受ける処理や、顧客に対する約定した注文を報告する処理等を行う。ディーリング装置50は、主に銀行システム3とデータや信号の送受信を行い、銀行システム3との間で、金融商品の約定に伴うカバー取引を行うための処理等を行う。注文管理装置40とディーリング装置50とは、別個のコンピュータシステムによって形成されてもよいし、同一のコンピュータシステムによって形成されてもよい。
【0034】
注文管理装置40は、上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段を備える。この機能手段は、例えば
図1に示す、「顧客注文情報生成手段」としての顧客注文情報生成部41、「約定見込注文処理手段」としての約定見込注文処理部42、「相場価格情報取得手段」としての相場価格情報取得部43、「約定情報処理手段」としての約定情報処理部44、「顧客注文情報記録手段」としての顧客注文情報記録部45である。
【0035】
顧客注文情報生成部41は、顧客の指示に基づいて前記金融商品の注文を行うための顧客注文情報を生成する。
【0036】
約定見込注文処理部42は、顧客注文情報生成部41が生成した顧客注文情報のうち、所定の条件において約定する見込みのある注文の顧客注文情報について所定の演算を行い、該演算の結果を出力する。
【0037】
相場価格情報取得部43は、金融商品取引管理装置1にて扱う金融商品の相場価格の情報を取得する。相場価格情報取得部43は、取得した相場価格の情報に対し、注文管理装置40で用いるために必要な処理と管理を行う。相場価格情報取得部43は、ネットワーク4を介した継続的な相場情報の取得等により、金融商品の相場価格の情報を継続的かつ定期的に取得し、取得した相場価格の情報を記録し管理する。
【0038】
約定情報処理部44は、顧客注文情報に基づいて前記注文を約定させる処理を行う。具体的には、約定情報処理部44は、注文情報生成部16が生成した顧客注文情報に基づく顧客注文を約定させる処理、及び、約定させた顧客注文の情報を顧客のクライアント端末2に送るための処理を行う。なお、ここでの「約定」とは、顧客の注文に基づいて金融商品の売買を成立されるための各種の手続並びに処理のことをいう。この実施の形態において約定が成立すると、外国為替の売買が行われる。また、約定情報処理部44は、約定が成立すると、クライアント端末2の表示部22に約定が成立した旨の文字情報等を表示させ、また、売買価格に基づいてクライアント端末の銀行口座の出入金処理を行う。
【0039】
顧客注文情報記録部45は、データベースであり、金融商品取引管理装置1にて用いられるデータを記録する。この実施の形態における顧客注文情報記録部45はリレーショナルデータベースによって形成するが、例えばオブジェクトデータベース等、大量のデータの記録や書換えに適したものであればどのような形式を用いてもよい。顧客注文情報記録部45には、注文テーブル、取引者の口座が存在する金融機関、口座名、残高等の情報を定義する顧客口座情報テーブル、取引される通貨の組合せ等に関する情報を定義する通貨ペア注文条件テーブル、シーケンス番号テーブルが記録されている(各テーブルは図示せず)。
【0040】
ディーリング装置50は、上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段として、サマリー情報管理部51、カバー取引部52を備える。
【0041】
サマリー情報管理部51は、約定見込注文処理部42において生成されたサマリー情報511を取得し、記録する。
【0042】
カバー取引部52は、サマリー情報管理部51が取得したり記録されたサマリー情報511に基づいて、銀行システム3に対してカバー取引を実行するための各種処理を行う。
【0043】
[顧客注文情報からサマリー情報・相殺情報を生成してカバー取引を行う原理]
図2は、この実施の形態の金融商品取引管理装置1における、顧客注文情報からサマリー情報・相殺情報を生成してカバー取引を行う原理を模式的に示す図である。
図2の(a1)は、注文管理装置における、買い・売りの顧客注文情報からサマリー情報を生成する状態を示す概念図である。
図2の(a2)は、注文管理装置においてサマリー情報を生成する際に用いられる、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報の概念図である。
図2の(b1)は、ディーリング装置においてサマリー情報から相殺情報を生成する状態を示す概念図である。
図2の(b2)は、ディーリング装置で処理されるサマリー情報の概念図、生成される相殺情報の概念図である。
【0044】
この実施の形態の注文管理装置40の約定見込注文処理部42は、複数の顧客の注文に基づいて顧客注文情報生成部41が生成した顧客注文情報に基づいて、約定見込注文処理を行う。
【0045】
この実施の形態においては、顧客注文情報として、たとえば指値注文の注文情報が記録されている。例えば、
図2に模式的に示すように、顧客注文情報記録部45には、複数の顧客注文情報、たとえば、「買い注文の顧客注文情報」としての買いの顧客注文情報451、「売り注文の顧客注文情報」としての売りの顧客注文情報452が記録されている。買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報とも、複数の注文価格(たとえば、米ドル/日本円の場合、1ドル90.90円、1ドル91.00円・・・1ドル99.90円、1ドル100.00円・・・など)の注文の発注や約定等の取引を電子的に行うデータである。
【0046】
買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452は、それぞれ、金融商品取引管理装置1が複数の顧客から受領した複数の顧客注文に関する情報である。ただし、買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452の一方又は双方が一の顧客から注文されたもののみでもよい。また、買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452のうち一方又は双方が一つの顧客注文のみでもよい。
【0047】
買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452は、注文価格の情報の他に、注文した顧客を特定する情報、発注日時や約定日時を示す情報、発注状態や約定状態等を示す情報等を属性情報として含むことが考えられる。
【0048】
図1に示す約定見込注文処理部42は、
図2に示す買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452のうち、「買い注文の顧客注文情報」としての、約定が想定される買いの顧客注文情報4511、「売り注文の顧客注文情報」としての、約定が想定される売りの顧客注文情報4521を抽出する。
図2では、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521の一例として、顧客に対して2Wayプライスとして(特定の相場価格に対して)相違する買いの注文価格(Ask)と売りの注文価格(Bid)として提示される注文を示している。この2Wayプライスは、取引が行われる金融商品の現在の買値(Ask)と現在の売値(Bid)の両方を示し、この実施の形態では、この2Wayプライスが「一度で約定する基準を満たす価格帯」を形成する。
【0049】
なお、この実施の形態において「一度で約定する基準を満たす価格帯」は、特定の時間や特定の時間帯に顧客が売買取引を行ったり、金融商品取引管理装置1において買い注文と売り注文とを相殺させる処理を行える注文を構成できる一又は複数の価格であればどのようなものでもよい。たとえば、特定の時刻や時間帯における金融商品の同一の買い注文の価格と売り注文の価格(売り注文も買い注文も1ドル100.00円、1ドル101.00円、1ドル102.00円、・・・など)であってもよい。
【0050】
図2に示す模式図には、記載簡略化のため、「一度で約定する基準を満たす価格帯」としての2Wayプライスを1種類(1ドル99.00円-100.00円(bid-ask)の相場価格)のみ示す。ただし、実際の運用の際は、通常、複数種類の「一度で約定する基準を満たす価格帯(たとえば1ドル100.01円-101.00円、1ドル101.01円-102.00円、1ドル102.01円-103.00円、・・・など)」が設定される。
【0051】
また、複数の「一度で約定する基準を満たす価格帯」は原則的には全て同じ値幅であることが想定されるが、必ずしもこれのみに限定されない。例えば、「一度で約定する基準を満たす価格帯」は、買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452に設定された約定価格を変動させるトレール幅の情報や約定時のスリッページの情報などに依存して、取引開始後に個別に変動するように構成されていてもよい。
【0052】
約定見込注文処理部42は、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521のそれぞれのうち、カバー取引に必要な情報を抽出する。具体的には、約定見込注文処理部42は、買い・売りの顧客注文情報4511,4521のそれぞれから、「約定量の情報」を抽出する。この実施の形態において「約定量の情報」及び「注文の数量の情報」である。
図2には、約定が想定される買いの顧客注文情報4511として、1ドル100.00円の注文情報が3つ(1,000通貨、2,000通貨、7,000通貨の3つ)が抽出された状態を示している。また、
図2には、売りの顧客注文情報4521として、約定が想定される売りの顧客注文情報4521として、1ドル99.00円の注文情報が2つ(10,000通貨、10,000通貨の2つ)が抽出された状態を示している。
【0053】
約定見込注文処理部42は、これらの約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521に基づいてサマリー情報511を生成する。このサマリー情報511は、約定が想定される買いの顧客注文情報4511の注文数量の総和(10,000通貨)、約定が想定される売りの顧客注文情報4521の注文数量の総和(20,000通貨)を有する。サマリー情報511に含まれる注文数量の総和の情報(買いの10,000通貨、売りの20,000通貨)は、上述の「約定量の情報」及び「注文の数量の情報」を形成する。
【0054】
約定見込注文処理部42は、生成されたサマリー情報511をディーリング装置50に伝達させる処理を行う。ディーリング装置50はサマリー情報511に含まれる買い注文の注文数量と売り注文の注文数量を相殺する。ここでは、サマリー情報511に含まれる買い注文の注文数量10,000通貨と売り注文の注文数量20,000通貨とを相殺した、売りの注文数量10,000通貨を「約定量の情報」及び「注文の数量の情報」としての相殺情報512として算出する。ディーリング装置50のカバー取引部52は、この相殺情報512をカバー取引の情報として銀行システム3に送る。銀行システム3の取引実行部31は、この相殺情報512に基づいてカバー取引を行う。
【0055】
なお、注文管理装置40の約定情報処理部44は、約定見込注文処理部42におけるサマリー情報511の生成とは別に、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521を用いた約定処理を行う。これにより、サマリー情報511、相殺情報512を用いたカバー取引とは別に、注文情報の約定処理を行う。
【0056】
なお、この実施の形態において、約定見込注文処理部42におけるサマリー情報511の生成、及びカバー取引部52による相殺情報512を用いたカバー取引は、約定情報処理部44における注文情報の約定処理と同時か、約定処理よりも前に行われるように設定される。カバー取引を約定処理以前に行うことで、カバー取引のタイミングが注文の約定よりも遅延してしまうことにより取引業者が損失を被るリスクを軽減できる。また、サマリー情報511や相殺情報512のデータ量は、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521よりも小さいデータ量になるように生成する。サマリー情報511や相殺情報512のデータ量を小さくすることで、カバー取引のためのデータの送受信や銀行システム3の取引実行部31におけるデータ処理に要する時間を短くすることができる。これにより、カバー取引のタイミングが注文の約定よりも遅延してしまい、取引業者が損失を被ってしまうリスクを軽減できる。
【0057】
このように、サマリー情報511を形成し、さらに相殺情報512を用いてカバー取引を行うことにより、金融商品の約定を行う際のカバー取引を行うタイミングが遅延する事態を抑止できる。そして、取引業者が損失を被るリスクを軽減できる。
【0058】
なお、この実施の形態では、約定見込注文処理部42がサマリー情報511を生成し、サマリー情報管理部51が相殺情報512を生成しているが、この構成と処理のみには限定されない。たとえば、約定見込注文処理部42が、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521から相殺情報512を生成してもよい。また、サマリー情報管理部51がサマリー情報511から相殺情報512を生成せず、カバー取引部52がサマリー情報511を用いて銀行システム3とのカバー取引を行ってもよい。このような構成以外でも、ディーリング装置50のカバー取引部52が、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521よりもデータ量が小さい情報を用いて、約定処理以前にカバー取引を行える構成や処理であれば、どのようなものでもよい。
【0059】
なお、サマリー情報511や相殺情報512の生成の元となる買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452は、主として指値注文の取引を行うための情報である。ただし、指値注文以外の注文、例えば、相場価格が特定の価格になったのを契機に成行注文の発注と約定を行うトリガー成行注文や、通常の成行注文であってもよい。
【0060】
[処理手順]
図3は、この実施の形態の金融商品取引管理システム及び金融商品取引管理装置における処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいてこの実施の形態における処理手順を説明する。
【0061】
まず、金融商品取引管理装置1の顧客注文情報生成部41が、金融商品の買いや売りの取引を行うための買いや売り注文情報を生成し、顧客注文情報記録部45に買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452として記録しておく。この状態で、金融商品取引管理装置1による金融商品の取引が開始され、
図3に示す処理手順が開始される。
【0062】
金融商品取引管理装置1の相場価格情報取得部43は、金融商品の相場情報を継続的に取得する(ステップS1)。約定見込注文処理部42と約定情報処理部44は、相場価格情報取得部43が取得した金融商品の相場価格を継続的に監視する。
【0063】
約定見込注文処理部42と約定情報処理部44は、相場価格が、顧客注文情報記録部45に記録された、一度で約定する基準を満たす価格帯のいずれかに一致するか否かを確認する。すなわち、約定見込注文処理部42と約定情報処理部44は、相場価格が、特定の2Wayプライスを構成する買いの顧客注文情報451と売りの顧客注文情報452とに一致するか否かを確認する。
【0064】
相場価格が、顧客注文情報記録部45に記録された買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452のうち、特定の2Wayプライスを構成するものに一致した場合を考える(ステップS2の“Yes”)。この場合、約定見込注文処理部42と約定情報処理部44は、該当する買い・売りの顧客注文情報451,452を、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521として抽出する。
【0065】
例えば、特定の時点で1ドル99.00円-100.00円(bid-ask)の相場価格が2Wayプライスとして抽出され、顧客注文情報記録部45に1ドル100.00円の買い(Ask)の顧客注文情報451、1ドル99.00円の売り(Bid)の顧客注文情報452が記録されているとする。約定見込注文処理部42と約定情報処理部44は、これら1ドル100.00円の買いの顧客注文情報451、1ドル99.00円の売りの顧客注文情報452を、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521として抽出する。
【0066】
約定見込注文処理部42は、抽出された、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521からサマリー情報511を生成する(ステップS3)。
【0067】
具体的には、約定見込注文処理部42は、約定が想定される買いの顧客注文情報4511から注文の数量の情報(
図2に示す、1ドル100.00円の「買い」における1,000通貨、2,000通貨、7,000通貨)を抽出する。また約定見込注文処理部42は、約定が想定される売りの顧客注文情報4521から注文の数量の情報(
図2に示す、1ドル90.00円の「売り」における10,000通貨、10,000通貨)を抽出する。約定見込注文処理部42は、これらの情報に基づいてサマリー情報511を生成する。
【0068】
注文管理装置40の約定見込注文処理部42は、生成されたサマリー情報511をディーリング装置50に伝達する。具体的には、約定見込注文処理部42は、注文管理装置40とディーリング装置50とのデバイス間通信等によってサマリー情報511をディーリング装置50に送信する。
【0069】
ディーリング装置50のサマリー情報管理部51は、取得したサマリー情報511を記憶手段(図示せず)に記録するとともに、一度で約定する基準を満たす、約定が想定される価格帯の買いの顧客注文情報4511と約定が想定される売りの顧客注文情報4521とを相殺させる処理を行う。具体的には、サマリー情報管理部51は、サマリー情報511に含まれる相殺情報512を生成する(ステップS4)。
【0070】
図2の例においては、サマリー情報管理部51は、買い注文の注文数量10,000通貨と売り注文の注文数量20,000とを相殺した、売り注文の注文数量10,000通貨を相殺情報512として算出する(ステップS4)。ディーリング装置50のカバー取引部52は、この相殺情報512をカバー取引の情報として銀行システム3に送る。銀行システム3の取引実行部31は、この相殺情報512に基づいてカバー取引を行う(ステップS5)。
【0071】
ステップS2の“Yes”ののち、注文管理装置40の約定情報処理部44は約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521を用いて、対応する買い・売りの注文を約定させる処理を行う(ステップS6)。具体的には、約定情報処理部44は約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521による注文を約定させる処理を行い、注文を行った顧客のクライアント端末2の表示部22に、注文が約定したことを表示させる。なお、ステップS6の約定情報処理部44による処理は、ステップS3-ステップS5の処理によるカバー取引とは別の処理として行う。
【0072】
なお、ステップS2において、該当する買い・売りの顧客注文情報451,452が存在する場合(ステップS2の“No”)、約定見込注文処理部42によるサマリー情報511の生成や相殺情報512によるカバー取引(ステップS3-S5)は行われない。この場合(ステップS2の“No”)、約定情報処理部44による買い・売りの顧客注文情報の約定のみが行われる(ステップS6)。この、ステップS2の“No”に該当する場合としては、例えば、顧客注文情報記録部45に約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521が記録されていない場合が考えられる。また例えば、成行注文の買い注文を行う注文情報のみ、成行注文の売り注文を行う注文情報のみに基づいて、注文の発注や約定を行う場合が考えられる。
【0073】
[実施の形態が適用される取引形態例(1:概説)]
この実施の形態の金融商品取引管理システム1A及び金融商品取引管理装置1は、顧客注文情報記録部45に買いの顧客注文情報451、売りの顧客注文情報452が記録される形態の取引に適用されることが考えられる。例えば、金融商品取引管理装置1において、指値注文の取引や、逆指値注文の取引や、トリガー成行注文の取引を行う場合に、この実施の形態を適用することが考えられる。
【0074】
金融商品取引管理装置1を用いて指値注文や逆指値注文やトリガー成行注文を行う場合、注文の発注や約定を行う以前に買い・売りの顧客注文情報451,452を生成し記録しておくことができる。また、記録された買い・売りの顧客注文情報451,452からサマリー情報511や相殺情報512を生成してカバー取引を行うことで、約定させる注文のカバー取引に要する時間を短くしてリスクを小さくできる。
【0075】
[実施の形態が適用される取引形態例(2:具体例)]
上記(1)に概説した、金融商品取引管理装置1において指値注文の取引やトリガー成行注文の取引を行う場合としては、例えば下記[具体例1]-[具体例3]に示すような取引が考えられる。[具体例1]-[具体例3]は、全て指値注文であってもよいし、全てトリガー成行注文であってもよいし、指値注文とトリガー成行注文が混合していてもよい。また、取引を行うための顧客注文情報が複数生成される場合、全ての取引を開始する前に全ての顧客注文情報が生成されてもよいし、少なくとも一部の顧客注文情報が取引開始後の所定のタイミングや任意のタイミングで生成されてもよい。
【0076】
[具体例1:トラップトレード]
これは、同一種類の複数の金融商品について、複数の注文価格に一度に設定した複数の買い注文や、複数の注文価格に一度に設定した複数の売り注文によって発注と約定とを行わせる取引方法である。一度に設定した複数の買い注文や複数の売り注文は、それぞれ同一の注文金額で、注文同士の値幅が同一に設定されることが考えられるが、少なくとも一部の注文金額や少なくとも一部の注文同士の値幅が他と相違してもよい。それらの買い注文や売り注文のうちの少なくとも一部が、第一注文と、第一注文の約定によって発注される第二注文と(イフダン注文。以下単に「イフダン注文」と称する。)を構成して、1回のイフダン注文を行うように構成してもよい。
【0077】
[具体例2:トラップリピートイフダン]
これは、同一種類の複数の金融商品について、第一注文と第二注文とのイフダン注文の組み合わせを複数設定して取引を行う方法である。ここでは、第一注文とそれに対応する第二注文とが約定すると、約定した第一注文に対応する新たな第一注文と約定した第二注文に対応する新たな第二注文とによるイフダン注文が繰り返し行われる。設定される第一注文同士の値幅と第二注文同士の値幅は原則一定であり、設定されるそれぞれの第一注文と対応するそれぞれの第二注文との利幅も原則一定である。ただし、少なくとも一部の値幅や少なくとも一部の値幅が他の値幅や他の利幅と相違するように設定されていてもよい。
【0078】
[具体例3:らくトラ]
これは、「トラップリピートイフダン」としての取引を行うための第一注文や第二注文を、所定の上限価格や所定の下限価格との間に設定する取引方法である。上限価格や下限価格の間に複数の第一注文や複数の第二注文を設定する場合、第一注文や第二注文のうち最高値のものを上限価格に一致させたり最安値のものを下限価格に設定させたりしてもよい。また、第一注文や第二注文の最安値のものを下限価格に一致させ、逆に第二注文や第一注文の最高値のものを上限価格に一致させてもよい。また、上限価格と下限価格の中間の価格に、全ての第一注文の注文価格の平均値や全ての第二注文の注文価格の平均値や全ての第一注文及び全ての第二注文の注文価格の平均値を一致させてもよい。
【0079】
なお、上記[具体例1]-[具体例3]はこの実施の形態の適用の例であり、上記[具体例1]-[具体例3]以外のいかなる取引形態でも、この実施の形態の金融商品取引管理装置1を適用できる。
【0080】
また、上記[具体例1]-[具体例3]では、なお、イフダン注文の第一注文が買い注文、第二注文が売り注文の場合について説明したが、これに限定されず、イフダン注文の第一注文が売り注文、第二注文が買い注文の場合にも適用可能である。
【0081】
[作用効果]
以上、この実施の形態においては、買い・売りの顧客注文情報451,452により取引が行われる注文について、注文が約定されることで発生する「約定量の情報」としてのサマリー情報511や相殺情報512を約定以前に出力する。そして、約定に対応して行われるカバー取引に必要なサマリー情報511や相殺情報512を、約定処理自体に必要な買い・売りの顧客注文情報451,452のデータより小さいデータとして形成してカバー取引を行える。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、取引量の多少にかかわらず、金融商品の約定を行う際にカバー取引を行うタイミングが遅延する事態を抑止して、リスクの小さい取引を実現できる。
【0082】
この実施の形態においては、「約定量の情報」は、サマリー情報511や相殺情報512に含まれる注文の数量の情報であることにより、約定した注文の情報からデータ量の小さい数値の情報のみを用いてカバー取引を行うことができる。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい金融商品の取引を実現できる金融商品取引管理装置を高い確実性をもって提供できる。
【0083】
この実施の形態においては、金融商品の取得された相場価格に基づいてサマリー情報511や相殺情報512に含まれる「約定量の情報」を取得することにより、任意の相場価格に対応する金融商品の約定量の情報をもとにカバー取引を行うことができる。そのため、特定の時間帯の相場価格において約定した金融商品について、小さいデータによってカバー取引を行える。これにより、相場価格に対応する金融商品のカバー取引を、取引量の多少にかかわらず小さいリスクで行うことができる。
【0084】
この実施の形態においては、注文を約定させる以前のタイミングでサマリー情報511や相殺情報512に含まれる「約定量の情報」を抽出するための演算を行うことにより、金融商品を約定させる処理を行う以前にカバー取引を行うことを可能にできる。これにより、迅速なカバー取引を行い、リスクの小さい金融商品の取引を実現できる。
【0085】
この実施の形態においては、顧客注文情報記録部45に記録された買い・売りの顧客注文情報451,452のうち、所定の条件に適合する、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521についてサマリー情報511や相殺情報512に含まれる「約定量の情報」を抽出するための演算を行う。この演算の結果により、顧客ごとの注文について、小さいデータによるカバー取引を行うことが可能になる。これにより、顧客ごとの金融商品の取引について、取引量の多少にかかわらずリスクの小さい取引を実現できる。
【0086】
この実施の形態においては、顧客注文情報記録部45に記録された、買い・売りの顧客注文情報451,452のうち、所定の条件に適合する、約定が想定される買い・売りの顧客注文情報4511,4521に基づくサマリー情報511に含まれる買い・売りの注文量を相殺させることで相殺情報512に含まれる注文数量を抽出する。これにより、予め記録された買い注文の数量と売り注文の数量とを相殺させ、カバー取引を行う注文を少なくし、小さいデータ量による、リスクの小さい金融商品の取引を確実に行うことができる。
【0087】
この実施の形態においては、一度で約定する基準を満たす価格帯である、所定の相場価格に対応する、約定が想定される買いの顧客注文情報4511の注文数量と、約定が想定される売りの顧客注文情報4521の注文数量とを相殺させて相殺情報512の注文数量の情報を抽出する。そして、特定の価格帯に存在する、カバー取引に必要な約定量の情報を相殺後の小さいデータ量として抽出できる。これにより、カバー取引を行う注文を少なくし、小さいデータ量による、リスクの小さい金融商品の取引を確実に行うことができる。
【0088】
[その他]
上記実施の形態においては、いわゆるOCO注文であってもよい。また、相場が一次中断後再開したときにいわゆる「板寄せ方式」、つまり、相場中断から再開までの価格帯にイフダン注文の第二注文(又は第一注文)が存在する場合、その第二注文に対応する第一注文(又はその第一注文に対応する第二注文)で買い・売りの顧客注文情報451,452を約定させる構成であってもよい。この「板寄せ方式」とは、相場中断から再開までの価格帯にイフダン注文の第二注文(又は第一注文)が存在する場合に適用される。この場合、その第二注文に対応する第一注文(又はその第一注文に対応する第二注文)を相場中断時の注文価格から相場再開時の注文価格に変更して取引を行う。
【0089】
上記実施の形態においては、金融商品として外国為替を取扱うものとしたが、これに限定されず、例えば株式、債券、投資信託、不動産投資信託、コモディティ(商品)、暗号資産(仮想通貨)、等、どのような金融商品を取扱う金融商品取引システムにおいて本発明を適用してもよい。
【0090】
上記実施の形態においては、金融商品取引管理システム1Aが1つの金融商品取引管理装置1を備えた構成として説明した。しかし、これに限らず、複数の金融商品取引管理装置によって構成し、そのうちの少なくとも一部の金融商品取引管理装置がいわゆる取引所に設けられている構成であってもよい。
【0091】
上記実施の形態においては、「約定量の情報」と「注文の数量の情報」をサマリー情報511に含まれる注文の数量の情報や相殺情報512などとしたが、これに限定されない。例えば、「約定量の情報」が注文の数量の情報以外の金融商品の約定対象の分量や計測単位などであってもよい。
【0092】
上記実施の形態においては、金融商品取引管理装置1において、カバー取引のための処理(ステップS2の“Yes”-ステップS6)と顧客注文を約定させる処理とを別系統の処理として行ったが、これに限定されない。即ち、金融商品取引管理装置1において、カバー取引のための処理と顧客注文を約定させる処理を同系統の処理で行ってもよい。
【0093】
上記実施の形態においては、全ての機能手段が金融商品取引管理装置1に設けられた構成としたが、これらのうちの少なくとも一部の構成がクライアント端末2に設けられた構成であってもよい。
【0094】
上記実施の形態においては、金融商品取引管理システム1Aをネットワークコンピュータシステムのクライアント・サーバシステムにおいて実現した。しかし、クライアント・サーバシステムを構成しないパーソナルコンピュータ等の各種コンピュータや、携帯端末やタブレット等の各種通信端末・携帯情報端末において金融商品取引管理システム1Aと同じ機能を実現させることもできる。この際、金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aのシステム構成の少なくとも一部をコンピュータプログラムとして構成し、当該プログラムを各種コンピュータや各種通信端末・携帯情報端末に実装することで実現させることも可能である。
【0095】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
1A・・・金融商品取引管理システム
1・・・金融商品取引管理装置
41・・・顧客注文情報生成部(顧客注文情報生成手段)
42・・・約定見込注文処理部(約定見込注文処理手段)
43・・・相場価格情報取得部(相場価格情報取得手段)
44・・・約定情報処理部(約定情報処理手段)
45・・・顧客注文情報記録部(顧客注文情報記録手段)
451・・・買いの顧客注文情報(買い注文の顧客注文情報)
452・・・売りの顧客注文情報(売り注文の顧客注文情報)
4511・・・約定が予想される買いの顧客注文情報(買い注文の顧客注文情報)
4521・・・約定が予想される売りの顧客注文情報(売り注文の顧客注文情報)
511・・・サマリー情報(約定量の情報、注文の数量の情報)
512・・・相殺情報(約定量の情報、注文の数量の情報)
【要約】
【課題】取引量の多少にかかわらずリスクの小さい金融商品の取引を実現できる金融商品取引管理装置を提供する。
【解決手段】金融商品取引管理装置は、顧客の指示に基づいて金融商品の注文を行うための買い・売りの顧客注文情報451,452を生成する顧客注文情報生成部と、買い・売りの顧客注文情報451,452のうち、所定の条件において約定が予想される買い・売りの顧客注文情報4511,4521について所定の演算を行い、演算の結果を出力する約定見込注文処理部42とを備え、約定見込注文処理部42は、約定が予想される買い・売りの顧客注文情報4511,4521について、注文が約定されることで発生するサマリー情報511、相殺情報512を約定以前に出力する。
【選択図】
図2