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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】注文システムおよび注文方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023207139
(22)【出願日】2023-12-07
【審査請求日】2023-12-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507408501
【氏名又は名称】インヴァスト証券株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠規
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-034514(JP,A)
【文献】特開2016-076151(JP,A)
【文献】特開2005-317043(JP,A)
【文献】特開2011-070418(JP,A)
【文献】特開2005-018724(JP,A)
【文献】初心者でも安心、高度な戦略も可能「トライオート」徹底活用!,月刊「FX攻略.com」,日本,株式会社シンセイ,2014年05月21日,第7巻,第7号,第8-15頁
【文献】インヴァスト証券・トライオートFXの「仕掛け」で利益を出す秘訣を大公開!,月刊「FX攻略.com」,日本,株式会社シンセイ,2015年03月20日,第8巻,第5号,第8-11頁
【文献】FXの新しい勝ち方は自動売買+裁量取引,月刊「FX攻略.com」,日本,株式会社シンセイ,2016年02月20日,第9巻,第4号,第6-11頁
【文献】インヴァスト証券「オートパイロット」機能で寝ている間に簡単取引!,ネットマネー,日本,株式会社産経新聞出版,2016年06月23日,第11巻,第8巻,第49頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品の注文に係る売りまたは買い、注文するタイミングを決める売りシグナルまたは買いシグナルを判定する基になるテクニカル指標、および、数量を含む注文設定を受け付ける注文設定受付部と、
所定のタイミングで市場価格を基に算出された前記テクニカル指標を基に当該テクニカル指標に対応した判定基準を用いて売りシグナルおよび買いシグナルの発生を繰り返し判定して生成するシグナル生成部と、
前記売りシグナルが生成されたら、売りの前記注文設定について、前記所定のタイミングでの前記金融商品の終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注し、
前記買いシグナルが生成されたら、買いの前記注文設定について、前記終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注し、
前記売りシグナルの後に前記買いシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の売り注文を取り消し、
前記買いシグナルの後に前記売りシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の買い注文を取り消す注文部と、を備える
注文システム。
【請求項2】
前記金融商品の価格が、発注済みの買い注文の注文価格に達すれば、当該注文を約定し、
前記金融商品の価格が、発注済みの売り注文の注文価格に達すれば、当該注文を約定する取引部をさらに備える
請求項1に記載の注文システム。
【請求項3】
前記注文設定は、
決済後の再エントリー条件であるフォロー値を含み、
前記注文部は、
前記フォロー値を含む注文設定に対応する注文の決済後に、フォロー値に対応した注文を発注する
請求項1に記載の注文システム。
【請求項4】
前記注文設定は、
決済後の再エントリー条件であるカウンター値を含み、
前記注文部は、
前記カウンター値を含む注文設定に対応する注文の決済後に、カウンター値に対応した注文を発注する
請求項1に記載の注文システム。
【請求項5】
記注文部は、
前記売りシグナルの後に前記買いシグナルが生成されたら、売りの前記注文設定に係るフォロー値に対応する注文を停止し、
前記買いシグナルの後に前記売りシグナルが生成されたら、買いの前記注文設定に係るフォロー値に対応する注文を停止する
請求項に記載の注文システム。
【請求項6】
記注文部は、
前記売りシグナルの後に前記買いシグナルが生成されたら、売りの前記注文設定に係るカウンター値に対応する注文を停止し、
前記買いシグナルの後に前記売りシグナルが生成されたら、買いの前記注文設定に係るカウンター値に対応する注文を停止する
請求項に記載の注文システム。
【請求項7】
前記テクニカル指標は、単純移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表、DMI、MACD、RSI、ストキャスティックス、モメンタムのうちの何れかである
請求項1に記載の注文システム。
【請求項8】
前記注文設定が含むテクニカル指標は、複数であり、
前記シグナル生成部は、
複数の前記テクニカル指標を基に売りシグナルおよび買いシグナルを生成し、
前記注文部は、
前記注文設定が、複数の前記テクニカル指標の前記売りシグナルまたは前記買いシグナルと一致すれば、前記注文を発注する
請求項1に記載の注文システム。
【請求項9】
注文設定算出部を備える注文端末を備え、
前記注文設定算出部は、
前記注文システムの利用者が入力した、前記金融商品の注文に係る売りまたは買い、前記テクニカル指標、および前記数量を受け付け、
当該金融商品の注文に係る売りまたは買い、当該テクニカル指標、および当該数量を含む前記注文設定を、前記注文設定受付部に送信する
請求項1に記載の注文システム。
【請求項10】
前記注文設定算出部は、
前記注文の本数と、前記注文価格の最大値と最小値の差であるレンジ幅とを受け付け、
最大値と最小値の差が前記レンジ幅以下となる前記注文の本数分の注文価格を算出し、
前記注文の本数分の、前記終値と前記注文価格との差額を算出し、
当該差額を含む注文設定を、前記注文設定受付部に送信し、
前記注文部は、
前記終値と前記差額を基に前記注文価格を算出する
請求項に記載の注文システム。
【請求項11】
注文システムが、
金融商品の注文に係る売りまたは買い、注文するタイミングを決める売りシグナルまたは買いシグナルを判定する基になるテクニカル指標、および、数量を含む注文設定を受け付けるステップと、
所定のタイミングで市場価格を基に算出された前記テクニカル指標を基に当該テクニカル指標に対応した判定基準を用いて売りシグナルおよび買いシグナルの発生を繰り返し判定して生成するステップと、
前記売りシグナルが生成されたら、売りの前記注文設定について、前記所定のタイミングでの前記金融商品の終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注するステップと、
前記買いシグナルが生成されたら、買いの前記注文設定について、前記終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注するステップと、
前記売りシグナルの後に前記買いシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の売り注文を取り消すステップと、
前記買いシグナルの後に前記売りシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の買い注文を取り消すステップと、を実行する
注文方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクニカル指標を参照して売りまたは買いの注文を行う注文システムおよび注文方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人投資家が株式やETF(Exchange-Traded Fund)、FX(Foreign Exchange)などの金融取引を自動的に行うシステムが提供されている。売りまたは買いの注文を出すタイミングの判定を支援する技術として特許文献1に記載の金融商品売買支援装置がある。この金融商品売買支援装置は、金融商品の銘柄を識別する識別情報に対応付けて、金融商品の終値および終値の日付を取得して、価格データベースに格納する価格データ取得部と、価格データベースを参照し、予め定められた日数における終値の複数の移動平均線、予め定められた上昇率または下降率で価格が変動した終値を結んだ折れ線、予め定められた日数における終値の複数の順位相関係数、および、予め定められた日数における終値の移動平均、高値及び安値を用いた足、遅行線および先行線を含む指標を算出し、識別情報および日付に対応付けて指標格納部に格納する指標算出部と、識別情報で識別される金融商品の、特定の日付について、順位相関係数に基づいた順位相関係数線、および、足に基づいた価格動向転換点がそれぞれ予め定められた条件を満たすか否かを、指標格納部に格納された指標を参照して判断する条件判断部と、指標を日付に対応付けたチャートを表示するとともに、条件判断部により条件を満たすと判断された場合に、金融商品の売買を促すシグナルをチャートにおける特定の日付に対応付けて表示する表示部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6089140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の金融商品売買支援装置を用いることで、売りや買いの判断がチャート上で行うことができるようになる。しかしながら、売り買いの注文は投資家である利用者が行うため、テクニカル指標による売買シグナルが発出(発生)するタイミングに合わせて注文しようとすると頻繁にチャートを閲覧する必要があり不便である。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、テクニカル指標を参照して、売買シグナルが発出するタイミングでの注文を可能とする注文システムおよび注文方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明に係る注文システムは、金融商品の注文に係る売りまたは買い、注文するタイミングを決める売りシグナルまたは買いシグナルを判定する基になるテクニカル指標、および、数量を含む注文設定を受け付ける注文設定受付部と、所定のタイミングで市場価格を基に算出された前記テクニカル指標を基に当該テクニカル指標に対応した判定基準を用いて売りシグナルおよび買いシグナルの発生を繰り返し判定して生成するシグナル生成部と、前記売りシグナルが判定されたら、売りの前記注文設定について、前記所定のタイミングでの前記金融商品の終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注し、前記買いシグナルが判定されたら、買いの前記注文設定について、前記終値を基に算出される注文価格、前記数量の注文を発注し、前記売りシグナルの後に前記買いシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の売り注文を取り消し、前記買いシグナルの後に前記売りシグナルが生成されたら、発注済みの未約定の買い注文を取り消す注文部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テクニカル指標を参照して、売買シグナルが発出するタイミングでの注文を可能とする注文システムおよび注文方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る注文システムの構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る注文端末の画面遷移図である。
図3】本実施形態に係るウェルカム画面の画面構成図である。
図4】本実施形態に係る銘柄選択画面の画面構成図である。
図5】本実施形態に係る注文設定画面の画面構成図である。
図6】本実施形態に係る注文設定条件領域に表示される注文設定条件画面の画面構成図である。
図7】本実施形態に係る注文設定領域に表示される注文設定画面の画面構成図である。
図8】本実施形態に係るチャート領域に表示されるチャート画面の画面構成図である。
図9】本実施形態に係る注文端末の機能ブロック図である。
図10】本実施形態に係る価格サーバの機能ブロック図である。
図11】本実施形態に係る取引サーバの機能ブロック図である。
図12】本実施形態に係る注文設定データベースのデータ構成図である。
図13】本実施形態に係る注文データベースのデータ構成図である。
図14】本実施形態に係る注文設定生成処理のフローチャートである。
図15】本実施形態に係るシグナル生成処理のフローチャートである。
図16】本実施形態に係るシグナル処理のフローチャートである。
図17】本実施形態に係る取引処理のフローチャートである。
図18】本実施形態に係る取引処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪注文システムの概要≫
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)における金融商品の注文システムを説明する。注文システムは、利用者である投資家から買いの注文を出すタイミングを示す買いシグナル、および売りの注文を出すタイミングを示す売りシグナルの判定に用いられるテクニカル指標、足種、数量、利確幅などを含む注文設定の条件(注文設定条件)を受け付ける。以下、買いシグナルおよび売シグナルを総称して、売買シグナルまたは単にシグナルと記す。
【0009】
注文システムは、注文設定条件を基に注文設定を生成する。注文設定の数量や利確幅は、注文設定条件にある数量や利確幅である。注文設定の価格(エントリー価格)は、買いまたは売りのシグナルが発生したときの価格(終値)と、最高価格と最低価格との差であるレンジ幅(単位はpips)から算出される。
【0010】
注文システムは、注文設定条件の足種に応じた周期で売買シグナルを判定する(売買シグナル発生の当否を算出する)。予め設定した買いシグナルが発生すれば注文システムは、買いの注文設定について終値を基に価格(注文価格)を算出して注文を発注(後記する取引サーバにて注文登録)し、予め設定した売りシグナルが発生すれば注文システムは、売りの注文設定について終値を基に価格を算出して注文を発注する。
【0011】
このような注文システムを利用することで投資家は、予め設定した売買シグナルが発生したタイミングで注文システムが注文するので、自身で注文する手間がなく、望ましいタイミングで注文することができるようになる。またシグナルが反転したときに(売りシグナルから買いシグナル、または買いシグナルから売りシグナル)反転前の未約定の新規注文(発注/登録済みの注文)が取り消され、相場の逆転による損失を抑制することを期待できる。
【0012】
≪注文システムの構成≫
図1は、本実施形態に係る注文システム100の構成を示す図である。注文システム100は、注文端末200、価格サーバ300、および取引サーバ400を含んで構成される。注文端末200、価格サーバ300、および取引サーバ400は、ネットワークを介して通信可能である。
【0013】
注文端末200は、利用者である投資家が操作する端末であり、投資家の指示により注文設定を生成して取引サーバ400に送信する。価格サーバ300は、売買シグナルの発生を確認し、発生すればシグナルを取引サーバ400に送信する。取引サーバ400は、受信したシグナルに応じて注文設定に対応した注文を発注(登録)する。また取引サーバ400は、市場の価格に応じて発注(登録)済みの注文を約定したり、約定済みの注文を決済したりする。
【0014】
≪注文システムの操作≫
注文端末200、価格サーバ300、および取引サーバ400の構成を説明する前に、利用者の注文端末200に対する操作を説明する。図2は、本実施形態に係る注文端末200の画面遷移図である。注文端末200の画面は、ウェルカム画面510(後記する図3参照)、銘柄選択画面520(後記する図4参照)、注文設定画面530(後記する図5参照)の順に遷移する。
【0015】
≪注文システムの操作:ウェルカム画面≫
図3は、本実施形態に係るウェルカム画面510の画面構成図である。ウェルカム画面510において投資家は、金融商品の自動売買注文を設定する手法(設定ツール)を選択する。設定ツールとして「ビルダー」「チャートメイク」「テクニカルビルダー」がある。本実施形態において投資家は「テクニカルビルダー」の「始める」ボタン518を押下して「テクニカルビルダー」を選択する。すると画面は、銘柄選択画面520(後記する図4参照)に遷移する。
【0016】
≪注文システムの操作:銘柄選択画面≫
図4は、本実施形態に係る銘柄選択画面520の画面構成図である。銘柄選択画面520において投資家は、売買する金融商品の銘柄を選択する。銘柄選択画面520において領域521にある「FX」ボタンが押下されてFXが選択され、領域522に通貨ペアが表示されている。投資家は、売買する通貨ペアを選択して「ロジック設定へ」ボタン523を押下する。すると画面は、注文設定画面530(後記する図5参照)に遷移する。
【0017】
≪注文システムの操作:注文設定画面≫
図5は、本実施形態に係る注文設定画面530の画面構成図である。注文設定画面530は、注文設定条件領域531(後記する図6参照)、チャート領域532(後記する図8参照)、および注文設定領域533(後記する図7参照)を含む。以下に各領域に表示される画面を説明する。
【0018】
≪注文設定画面:注文設定条件≫
図6は、本実施形態に係る注文設定条件領域531(図5参照)に表示される注文設定条件画面550の画面構成図である。投資家はチャート領域532に表示される金融商品の価格チャート(後記する図8参照)を参照しながら、注文設定条件画面550で注文設定条件を設定する。以下、注文設定条件を説明する。
【0019】
「売買シグナル」では、売りシグナルまたは買いシグナルが選択される。売りシグナルなら売り注文の条件を、買いシグナルなら買い注文の条件を設定することになる。図6では買いシグナルが選択されている。
【0020】
「足種」は、4時間足、8時間足および日足から選択可能である。選択された4時間足、8時間足または日足が算出されるタイミングで後記する「インジケータ1」「インジケータ2」で選択されたテクニカル指標が算出され、売買シグナルが判定される。
【0021】
「インジケータ1」では、売買シグナルを算出する際に参照されるテクニカル指標が選択される。テクニカル指標としては、単純移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表、DMI(Directional Movement Index)、MACD(Moving Average Convergence and Divergence)、RSI(Relative Strength Index)、ストキャスティックス、モメンタムなどがある。図6では「単純移動平均線」が選択されている。
「インジケータ2」では、2つの売買シグナルを組み合わせて注文を出すタイミングを決定する場合に、2つ目のテクニカル指標が選択される。図6では2つ目のテクニカル指標は選択されていない。テクニカル指標および売買シグナルについては後記する。
【0022】
「反対シグナルで決済」がONならば、「売買シグナル」で指定した「売」または「買」とは逆のシグナルが出た場合に、未約定の新規注文(発注済みの注文)が取消され、約定した(売ったまたは買った)金融商品を成行で決済する。例えば買いシグナルが出て買い注文を出して買った金融商品は、売りシグナルが出たときに売られて決済される。図6において「反対シグナルで決済」はONになっている。
「反対シグナルで決済」がOFFならば、「売買シグナル」で指定した「売」または「買」とは逆のシグナルが出た場合に、未約定の新規注文が取消され、約定した金融商品を、後記する利確幅または損切幅に応じて決済する。
【0023】
「レンジ幅」は、売買シグナルが出て複数の注文をする際の価格の範囲(幅)である。単位はpipsであり、例えばUSD/JPYの場合は100pips=1円である。レンジ幅の範囲内になるようにエントリー価格が設定される。
【0024】
「本数」は、注文の数である。
「数量」は、1つの注文における、売るまたは買う数量である。数量は、例えばUSD/JPYの場合、何米ドルを売るか買うかを示す。
【0025】
「利確幅」は、決済するときの利益を示し、単位はpipsである。例えば「利確幅」で100pipsを指定して米ドルを買った場合、1米ドルが1円上がって(1円の円安)利益が出たタイミングで買った米ドルを売って決済する。
「損切幅」では、損切りの当否、および損切りするときの損切幅を指定する。図6では「損切幅」はOFFであり、損切幅は指定されていない。
【0026】
「フォロー値」には、決済後の次の注文について順張り方向の価格の差額を指定する。例えばUSD/JPYで価格が150円、利確幅が100pips、フォロー値が50pipsの買い注文ならば、151円で決済し、価格が151.5円になったときに買いの注文が発注される。
「カウンター値」には、決済後の次の注文について逆張り方向の価格の差額を指定する。例えばUSD/JPYで価格が150円、利確幅が100pips、フォロー幅が-50pipsの買い注文ならば、151円で決済し、価格が150.5円になったときに買いが発注される。
フォロー値およびカウンター値は、決済後の再度発注する再エントリーの条件を示す。
【0027】
注文設定条件画面550で注文設定条件を設定した後に投資家が「ロジック追加」ボタン558を押下すると、注文設定領域533(図5参照)に注文設定の内容が表示される。
【0028】
≪注文設定画面:注文設定≫
図7は、本実施形態に係る注文設定領域533(図5参照)に表示される注文設定画面570の画面構成図である。注文設定画面570の注文設定タブ571には、注文設定条件画面550(図6参照)で設定された注文設定条件に応じた注文設定の内容が表示される。注文設定には、番号、銘柄、売買、数量、エントリー価格、利確幅、損切幅、フォロー値、カウンター値が含まれる。
【0029】
エントリー価格には、注文の価格そのものではなく、売買シグナルが出た時点での終値との価格差が示されている。換言すればエントリー価格は、終値と注文価格との差額を含んでいる。エントリー価格が「スタート価格+500」とは、注文価格が、終値+500(pips)であることを示す。図7に記載の注文設定は、例えば買いシグナル発生時の終値が140円だとすると、価格が145円、143円、141円、139円、および137円の注文を発注することを示している。注文設定条件画面550(図6参照)の「レンジ幅」に指定した1000pips内になっている。
【0030】
注文設定を変更したい場合に投資家は、注文設定条件画面550(図6参照)の注文設定条件を見直して「ロジック追加」ボタン558を押下する。「シミュレーション」ボタン576が押下されると、過去(例えば1~3年前)の価格に基づいて、売買のシミュレーションが実行され、運用成績が出力される。「カートに追加」ボタン577が押下されると、注文設定の内容が保存される。
【0031】
「今すぐ稼働」ボタン578が押下されると、注文設定タブ571に表示される注文設定の内容が取引サーバ400(図1参照)に送信される。価格サーバ300は、足種(図6の「足種」参照)に応じたタイミングでテクニカル指標(図6の「インジケータ1」「インジケータ2」参照)を算出し、売買シグナルが発生したら当該売買シグナルを取引サーバ400に送信する。取引サーバ400は、受信した売買シグナルに対応する注文設定の内容の注文を発注する(後記する注文データベース440(図13参照)に登録する)。なお注文設定のエントリー価格に含まれる「スタート価格」は、終値に読み替えられる。
【0032】
≪注文設定画面:チャート≫
図8は、本実施形態に係るチャート領域532(図5参照)に表示されるチャート画面560の画面構成図である。チャート画面560には、足種(図6の「足種」参照)で指定されたローソク足、およびテクニカル指標(図6の「インジケータ1」参照)が表示される。テクニカル指標は「単純移動平均線」であり、図8では点線で示される短期の単純移動平均線、および破線で示される長期の単純移動平均線が表示される。投資家は、このチャートを参照しながら、注文設定条件画面550(図6参照)の注文設定条件を設定する。
【0033】
≪テクニカル指標および売買シグナル≫
以下に、本実施形態のシグナル生成部312(図10参照)が判定に用いるテクニカル指標、および当該テクニカル指標に係る売買シグナルを説明する。本実施形態で用いられるテクニカル指標としては、単純移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表、DMI、MACD、RSI、ストキャスティックス、モメンタムなどがある。以下では、足種が日足として説明する。4時間足、8時間足の場合には、X日をX回分の4時間または8時間と読み替える。なお売買シグナルの発生の当否は、後記する価格サーバ300(図10参照)のシグナル生成部312が判定する。発生した場合に価格サーバ300は、発生したシグナルを取引サーバ400に送信する。
【0034】
≪テクニカル指標:単純移動平均線≫
単純移動平均線は、過去一定期間の価格を平均して連続させた線である。期間は、日足では例えば5日、20日、25日、75日などが用いられる。単純移動平均線をテクニカル指標に用いる場合、短期の単純移動平均線が長期の単純移動平均線を下から上に突き抜けるときにシグナル生成部312は、市場が上昇トレンドに転換したと判断し、買いシグナルと見なす(判定する)。逆に短期の単純移動平均線が長期の単純移動平均線を上から下に突き抜けるときにシグナル生成部312は、市場が下落トレンドに転換したと判断し、売りシグナルと見なす。
図8において、5月20日に点線で示される短期の単純移動平均線が、破線で示される長期の単純移動平均線を下から上に突き抜けており、シグナル生成部312は買いのシグナルが出たと判定する。
【0035】
≪テクニカル指標:ボリンジャーバンド≫
ボリンジャーバンドは、価格の単純移動平均線と価格の標準偏差(以下σと記す)を組み合わせたテクニカル指標である。価格(終値)が単純移動平均線+2σを下から上に突き抜けたときにシグナル生成部312は、買いシグナルと見なす。価格が単純移動平均線-2σを上から下に突き抜けたときにシグナル生成部312は、売りシグナルと見なす。
【0036】
≪テクニカル指標:一目均衡表≫
一目均衡表は、基準線および転換線を用いて売買シグナルを判断するテクニカル指標である。基準線は、過去26日間における最高値と最安値の中間値を結んだ線であり、中期的な市場のトレンドを示す。転換線は、過去9日間における最高値と最安値の中間値を結んだ線であり、短期的な市場のトレンドを示す。一目均衡表をテクニカル指標に用いる場合にシグナル生成部312は、転換線が基準線を下から上に突き抜けるときに買いシグナルと見なす。逆にシグナル生成部312は、転換線が基準線を上から下に突き抜けるときに売りシグナルと見なす。
【0037】
≪テクニカル指標:DMI≫
DMI(Directional Movement Index、方向性指数)は、当日の高安が前日の高安に比べてどちらが大きいかを見極め、相場の強弱を読むところが特徴であり、価格の変動幅(ボラティリティ)からトレンド分析するために使われるテクニカル指標である。DMIをテクニカル指標に用いる場合にシグナル生成部312は、+DMおよび-DMを用いて+DIと-DIを算出して、売買シグナルを判断する。最初に、+DMと-DMを以下のように算出する。
+DM=当日の最高値-前日の最高値
-DM=前日の最安値-当日の最安値
次に、+DMが負なら+DM=0、
-DMが負なら-DM=0、とする。
さらに、+DM>-DMなら-DM=0、
-DM>+DMなら+DM=0、
-DM=+DMなら+DM=-DM=0、とする。
TR(True Range)は、当日の最高値-当日の最安値、当日の最高値-前日の終値、前日の終値-当日の最安値の、3つの値の最大値である。
【0038】
最後に+DIと-DIを以下のように算出する。
+DI=(所定期間の+DMの合計)/(所定期間のTRの合計)×100
-DI=(所定期間の-DMの合計)/(所定期間のTRの合計)×100
+DIが-DIを下から上に突き抜けるときにシグナル生成部312は、市場が上昇トレンドであると判断し、買いシグナルと見なす。逆に+DIが-DIを上から下に突き抜けるときにシグナル生成部312は、市場が下降トレンドであると判断し、売りシグナルと見なす。
【0039】
≪テクニカル指標:MACD≫
MACD(Moving Average Convergence Divergence、移動平均収束拡散手法)は、2本の指数平滑移動平均線の差であるMACD、およびこれを移動平均化したMACDシグナルを用いて売買シグナルを判断するテクニカル指標である。EMA(Exponential Moving Average、指数平滑移動平均)は、当日の終値を2倍にした移動平均であり、例えば5日のEMAは(1日の終値+2日の終値+3日の終値+4日の終値+5日の終値+5日の終値)/6である。MACDおよびMACDシグナルは、以下のように算出される。
MACD=短期のEMA-長期のEMA
MACDシグナル=MACDのEMA
【0040】
一般的には短期は12日間、長期は26日間であり、MACDシグナルにおける期間は9日間である。MACDがMACDシグナルを下から上に突き抜けるときにシグナル生成部312は、買いシグナルと見なす。逆にMACDがMACDシグナルを上から下に突き抜けるときにシグナル生成部312は売りシグナルと見なす。
【0041】
≪テクニカル指標:RSI≫
RSI(Relative Strength Index)は、買われ過ぎ、売られ過ぎに着目したテクニカル分析の指標である。RSIでは、以下のように算出されるRSIを用いて売買シグナルを判断する。
RSI=(N日間における終値の値上がり幅の合計)×100/(N日間における終値の値上がり幅の合計+N日間における終値の値下がり幅の合計)
Nは14日(14の値上がり幅または値下がり幅を基にRSIを算出)が一般的であるが、これに限らない。RSIが30%以下ならば、シグナル生成部312は売られ過ぎと判断し、買いシグナルと見なす。RSIが70%以上ならば、シグナル生成部312は買われ過ぎと判断し、売りシグナルと見なす。
【0042】
≪テクニカル指標:ストキャスティックス≫
ストキャスティックス(stochastics)は、以下のように算出される%Kおよび%Dを用いて売買シグナルを判断するテクニカル指標である。
%K=(直近の終値-過去N日間の最安終値)×100/(過去N日間の最高終値-過去N日間の最安終値)
%D=%KのM日間単純移動平均
【0043】
Nは9日、Mは3日が一般的だが、これに限らない。%Kが20%以下で、%Dを上回るときにシグナル生成部312は、買いシグナルと見なす。%Kが80%以上で、%Dを下回るときにシグナル生成部312は、売りシグナルと見なす。
【0044】
≪テクニカル指標:モメンタム≫
モメンタム(Momentum)は、相場の勢いや方向性を判断するオシレータ系指標であり、短期的な動きを判断する指標である。モメンタムでは、以下のように算出されるモメンタムを用いて売買シグナルを判断する。
モメンタム=当日の終値-N日前の終値
Nとしては、10日や20日が一般的であるが、これに限らない。モメンタムが0以下から0を上抜けるときにシグナル生成部312は、買いシグナルと見なす。逆にモメンタムが0以上から0未満に下抜けるときにシグナル生成部312は、売りシグナルと見なす。
【0045】
≪注文端末の構成≫
図9は、本実施形態に係る注文端末200の機能ブロック図である。注文端末200はコンピュータであり、制御部210、記憶部220、および入出力部280を備える。入出力部280には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。ディスプレイやキーボード、マウスに替わりタッチパネルディスプレイであってもよい。入出力部280は通信デバイスを備え、取引サーバ400とのデータ送受信が可能である。
【0046】
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部220には、プログラム228が記憶される。プログラム228には、後記する注文設定生成処理(図14参照)の記述が含まれる。
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、操作受付部211、注文設定算出部212、およびシミュレーション部213が備わる。
【0047】
≪注文端末:操作受付部≫
操作受付部211は、キーボードやマウスなどに対する投資家の操作を受け付け、対応する処理を実行する。例えば操作受付部211は、ウェルカム画面510(図3参照)においてテクニカルビルダーにある「始める」ボタン518の押下を受け付けると、画面を銘柄選択画面520(図4参照)に遷移する。また操作受付部211は、注文設定条件画面550(図6参照)におけるボタン操作や数値入力の操作を受け付け、対応する項目(例えば「単純移動平均線」)や数値を設定する。
【0048】
≪注文端末:注文設定算出部≫
注文設定算出部212は「ロジック追加」ボタン558(図6参照)が押下されると、注文設定条件画面550に設定された注文設定条件に応じた注文設定を作成して注文設定画面570(図7参照)の注文設定タブ571に表示する。注文設定算出部212は、エントリー価格を注文設定条件画面550の「レンジ幅」および「本数」を基に算出する。詳しく説明するとエントリー価格は、スタート価格(シグナル発生時の終値)+レンジ幅の1/2から始めて、安くなる方向にレンジ幅/本数の間隔の値となる。図6ではレンジ幅が1000(pips)で本数が5なのでエントリー価格は、スタート価格+500、スタート価格+300、スタート価格+100、スタート価格-100、スタート価格-300となる。
【0049】
≪注文端末:シミュレーション部≫
シミュレーション部213は、注文設定画面570(図7参照)の注文設定タブ571に表示された注文設定の注文を発注した場合のシミュレーションを実行する。詳しく説明するとシミュレーション部213は、現時点から過去の指定の期間までの値動きなどのデータを基に、シミュレーション上での運用成績を算出する。シミュレーション期間は過去3か月、6か月、1年、2年、3年から選択可能である。
【0050】
≪価格サーバの構成≫
図10は、本実施形態に係る価格サーバ300の機能ブロック図である。価格サーバ300はコンピュータであり、制御部310、記憶部320、および通信部380を備える。通信部380は通信デバイスを備え、取引サーバ400とのデータ送受信が可能である。
【0051】
記憶部320は、ROMやRAM、SSDなどの記憶機器を含んで構成される。記憶部320には、プログラム328が記憶される。プログラム328には、後記するシグナル生成処理(図15参照)の記述が含まれる。
制御部310は、CPUを含んで構成され、指標算出部311、およびシグナル生成部312を備える。
【0052】
≪価格サーバ:指標算出部≫
指標算出部311は、足種に応じた所定のタイミングでテクニカル指標を算出する。詳しく説明すると指標算出部311は、4時間足、8時間足、日足に応じて、それぞれ4時間、8時間、1日(市場終了後)のタイミングで、テクニカル指標を算出する。指標算出部311が算出するテクニカル指標は、例えば単純移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表、DMI、MACD、RSI、ストキャスティックス、モメンタムであるが、これらに限定されない。
【0053】
≪価格サーバ:シグナル生成部≫
シグナル生成部312は、テクニカル指標を基に売買シグナルの発生の当否を判定する。シグナルが発生した場合にシグナル生成部312は、当該シグナルを取引サーバ400に送信する。シグナルには、足種や銘柄、終値、テクニカル指標、売り・買いの別などが含まれる。なおシグナル生成部312が、シグナル発生の判定に参照するテクニカル指標は、1つに限定されず、複数のテクニカル指標に基づいて売買シグナルの発生の当否を判定してもよい。例えばシグナル生成部312は、単純移動平均線およびボリンジャーバンドで買いのシグナルが発生した場合に、買いシグナルが発生したと判定してもよい。
【0054】
≪取引サーバの構成≫
図11は、本実施形態に係る取引サーバ400の機能ブロック図である。取引サーバ400はコンピュータであり、制御部410、記憶部420、および通信部480を備える。通信部480は通信デバイスを備え、注文端末200や価格サーバ300とのデータ送受信が可能である。
【0055】
記憶部420は、ROMやRAM、SSDなどの記憶機器を含んで構成される。記憶部420には、注文設定データベース430、注文データベース440、およびプログラム428が記憶される。プログラム428には、後記するシグナル処理(図16参照)や取引処理(図17および図18参照)の記述が含まれる。
【0056】
≪取引サーバ:注文設定データベース≫
図12は、本実施形態に係る注文設定データベース430のデータ構成図である。注文設定データベース430は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)は1つの注文設定を示す。なお注文設定とは、注文端末200から受け付けた注文設定(図7記載の注文設定タブ571参照)に対応する。
【0057】
注文設定データベース430のレコードは、識別情報(図12では「ID」と記載)、銘柄、種別、足種、指標、稼働、数量、エントリー価格、フォロー値、カウンター値などの列(属性)を含む。レコードは、利確幅や損切幅などの属性を含むが、図12には記載していない。
【0058】
各属性の内容は、注文設定画面570(図7参照)とほぼ同様である。注文設定画面570とは異なる属性について以下に説明する。
「識別情報」は注文設定または注文の識別番号である。
「種別」は、注文の売りまたは買いの種別であり、注文設定画面570の「売買」に対応する。
【0059】
「足種」は、テクニカル指標を算出するタイミングを示す足種(図6の「足種」参照)である。
「指標」は、テクニカル指標である。なお図12に記載の「SMA」は単純移動平均線(Simple Moving Average)を示す。
【0060】
「稼働」は、注文設定が待機中(「N」)か、稼働中(「Y」)か、停止中(「S」)かを示す。注文設定が注文設定データベース430に登録された時点では待機中(「N」)だが、シグナルが発生すると稼働中(「Y」)になる。稼働中の注文設定について、反対シグナルが発生すると稼働停止(「S」)となる。稼働停止後にシグナル(順シグナル、「種別」属性にあるシグナル)が発生すると再稼働し稼働中(「Y」)となる。
【0061】
≪取引サーバ:注文データベース≫
図13は、本実施形態に係る注文データベース440のデータ構成図である。注文データベース440は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)は1つの注文を示す。注文が発注されるとは、注文データベース440に注文が登録されるということである。
【0062】
シグナルが発生したときに注文設定(図12参照)に対応する注文が、注文データベース440に登録される。また、登録済みの注文の決済後に、フォロー値またはカウンター値に対応した注文が、注文データベース440に登録される。
【0063】
注文データベース440のレコードは、識別情報(図13では「ID」と記載)、銘柄、種別、数量、価格、利確幅、約定日時、約定価格、決済日時、決済価格、フォロー値、カウンター値、および注文設定の列(属性)を含む。
銘柄、種別、数量は、注文設定データベース430(図12参照)と同様である。
【0064】
価格は、売りまたは買いの価格(注文価格)である。シグナル発生による発注における価格は、シグナル発生時の終値に、注文設定データベース430のエントリー価格を加えた価格である。再エントリーの発注における価格は、決済価格にフォロー値またはカウンター値を加えた価格である。
【0065】
約定日時および約定価格は、約定した日時および価格である。決済日時および決済価格は、決済した日時および価格である。未約定の注文の約定日時および約定価格は、空白(図13では「-」と記載)である。未決済の注文の決済日時および決済価格は、空白である。
【0066】
フォロー値およびカウンター値は、決済後に再エントリーするときのフォロー値およびカウンター値である。
注文設定は、注文に対応する注文設定の識別情報(図12のID参照)である。シグナルの発生による注文の注文設定は、当該シグナルに対応した注文設定の識別情報である。決済後の再エントリーによる注文の注文設定は、決済された注文の注文設定である。
【0067】
図11に戻って制御部410を説明する。制御部410は、CPUを含んで構成され、注文設定受付部411、注文部412、および取引部413が備わる。
【0068】
≪取引サーバ:注文設定受付部≫
注文設定受付部411は、注文端末200から、売りまたは買い、注文するタイミングを決める売りシグナルまたは買いシグナルを判定する基になるテクニカル指標、および、金融商品の注文に係る売りまたは買いの数量を含む注文設定を受け付けて、新規のレコードとして注文設定データベース430(図12参照)に格納する。注文設定受付部411は「稼働」属性を待機中(「N」)とする。
【0069】
≪取引サーバ:注文部≫
注文部412は、注文設定データベース430(図12参照)にある注文設定で、価格サーバ300から受信したシグナルに対応する注文設定の注文を発注する。シグナルに対応する注文設定とは、シグナルに含まれる足種、銘柄、テクニカル指標、売り・買いの別が、注文設定データベース430の足種、銘柄、指標、種別に一致し、かつ稼働が待機中(「N」)または停止中(「S」)である注文設定である。稼働が待機中となるのは、注文設定を受け付けた直後から初めてのシグナルが発生するまである。稼働が停止中となるのは、シグナルが発生し、その後に反対シグナルが発生して、次のシグナル(順シグナル、「種別」属性のシグナル)が発生するまでの間である。
【0070】
反対シグナルとは、足種、銘柄、テクニカル指標は一致するが、売り・買いが逆であるシグナルである。反対シグナルが発生すると注文部412は、稼働中の注文設定を稼働停止し、注文設定に対応する未約定の注文を取り消す。また注文部412は、決済後のフォロー値またはカウンター値に従った再エントリーの注文を発注しない(稼働停止)。なお反対シグナルが発生して稼働停止の後に、次のシグナル(順シグナル、「種別」属性のシグナル)が発生すると注文設定が稼働中となり、注文を発注する。
【0071】
なお発注とは、価格(注文価格)を決定して、注文データベース440(図13参照)に登録することである。注文部412は、シグナルが発生する(シグナルを受信する)と、終値にエントリー価格を加えた価格の注文を発注する。また注文部412は、フォロー値またはカウンター値が設定された注文の決済後に、決済価格にフォロー値またはカウンター値を加えた価格の注文を発注する。
【0072】
≪取引サーバ:取引部≫
取引部413は、注文データベースに登録された未約定の注文のなかで、市場価格が注文の価格(注文価格)に達したものを約定する。例えば取引部413は、市場価格が買いの指値注文の価格(注文価格)以下ならば約定する。
また取引部413は、約定済みで未決済の注文のなかで、約定価格と利確幅が市場価格に合うものを決済する。例えば取引部413は、市場価格が買い注文の約定価格と利確幅の和以上(利益が利確幅以上)ならば決済する。
【0073】
≪注文設定生成処理≫
図14は、本実施形態に係る注文設定生成処理のフローチャートである。図14を参照しながら、注文設定条件画面550(図6参照)および注文設定画面570(図7参照)に係る注文端末200の処理を説明する。
【0074】
ステップS11において操作受付部211は、注文設定条件画面550において投資家の注文設定条件を受け付ける。注文設定条件を終えると投資家は「ロジック追加」ボタン558を押下する。操作受付部211は「ロジック追加」ボタン558の押下を受け付けて、ステップS12に処理を進める。
【0075】
ステップS12において注文設定算出部212は、エントリー価格を算出する。
ステップS13において注文設定算出部212は、ステップS12で算出したエントリー価格ごとにステップS14を繰り返す処理を開始する。
【0076】
ステップS14において注文設定算出部212は、注文設定を生成する。詳しく説明すると注文設定算出部212は、注文設定の内容として銘柄、売買の種別、数量、エントリー価格、利確幅、損切幅、フォロー値、カウンター値などを算出する。エントリー価格を除いた内容は、注文設定条件画面550で設定された内容である。
ステップS15において注文設定算出部212は、ステップS14で生成した注文設定を注文設定画面570の注文設定タブ571に表示する。
【0077】
ステップS16において操作受付部211は、投資家の操作に応じて分岐して処理を進める。操作が注文設定条件画面550の内容を変更する操作であれば(ステップS16→注文設定条件)操作受付部211は、処理をステップS11に戻す。操作が「シミュレーション」ボタン576を押下する操作であれば(ステップS16→シミュレーション)操作受付部211は、処理をステップS17に進める。「カートに追加」ボタン577を押下する操作であれば(ステップS16→カートに追加)操作受付部211は、処理をステップS18に進める。「今すぐ稼働」ボタン578を押下する操作であれば(ステップS16→今すぐ稼働)操作受付部211は、処理をステップS19に進める。
【0078】
ステップS17においてシミュレーション部213は、ステップS14で生成された注文設定の注文をした場合のシミュレーションを実行する。
ステップS18において注文設定算出部212は、ステップS14で生成された注文設定を記憶部220に記憶する。
ステップS19において注文設定算出部212は、ステップS14で生成された注文設定を取引サーバ400に送信する。
【0079】
≪シグナル生成処理≫
図15は、本実施形態に係るシグナル生成処理のフローチャートである。シグナル生成処理は、価格サーバ300において足種に応じて4時間/8時間/日ごと実行される処理である。
【0080】
ステップS31において指標算出部311は、銘柄およびテクニカル指標ごとにステップS32~S35を繰り返す処理を開始する。以下この繰り返す処理における処理対象の銘柄およびテクニカル指標を、それぞれ処理対象銘柄および処理対象テクニカル指標と記す。
【0081】
ステップS32において指標算出部311は、処理対象銘柄の市場価格を取得する。
ステップS33において指標算出部311は、処理対象銘柄の処理対象テクニカル指標を算出する。例えば処理対象テクニカル指標が単純移動平均線ならば指標算出部311は、短期の単純移動平均線および長期の単純移動平均線を算出する。
【0082】
ステップS34においてシグナル生成部312は、ステップS33で算出したテクニカル指標を基に、売りおよび買いのシグナル発生の当否を判定する。シグナル生成部312は、売りまたは買いのシグナルが発生した場合には(ステップS34→あり)処理をステップS35に進める。シグナル生成部312は、シグナルが未発生の場合には(ステップS34→なし)処理をステップS32に戻して次の処理対象銘柄および処理対象テクニカル指標について処理する。
【0083】
ステップS35においてシグナル生成部312は、発生した売りまたは買いのシグナルを取引サーバ400に送信する。なおシグナルには、足種や(処理対象)銘柄、終値、(処理対象)テクニカル指標、売り・買いの別などが含まれる。
【0084】
なお処理対象テクニカル指標は、1つのテクニカル指標とは限らず、複数であってもよく、例えば2つのテクニカル指標であってもよい。複数のテクニカル指標の場合にステップS34においてシグナル生成部312は、当該複数のテクニカル指標それぞれにおいて売りおよび買いのシグナル発生の当否を判定する。例えば、複数のテクニカル指標全てにおいて売りシグナルであれば、当該複数のテクニカル指標で売りシグナルが発生したと判定する。
【0085】
≪シグナル処理≫
図16は、本実施形態に係るシグナル処理のフローチャートである。シグナル処理は、取引サーバ400において価格サーバ300からシグナルを受信した場合に実行される処理である。
【0086】
ステップS41において注文部412は、注文設定データベース430(図12参照)のなかで、受信したシグナルに対応する注文設定を探索する。
ステップS42において注文部412は、受信したシグナルに対応する注文設定があれば(ステップS42→あり)処理をステップS43に進め、なければ(ステップS42→なし)処理をステップS45に進める。なお注文設定がある場合には、本数(図6の「本数」参照)分ある。
【0087】
ステップS43において注文部412は、注文設定のエントリー価格および終値を基に、注文価格を算出する。例えばエントリー価格が「+500」で終値が140円ならば、注文価格は145円である。また注文部412は、「稼働」の属性を稼働中(「Y」)とする。
ステップS44において注文部412は、注文を注文データベース440(図13参照)に登録して、発注する。詳しく説明すると、銘柄、種別、数量、フォロー値およびカウンター値は、注文設定データベース430にある値である。価格は、ステップS43で算出した注文価格である。約定日時、約定価格、決済日時および決済価格は、空白である。注文設定は、注文設定データベース430の識別情報である。
【0088】
ステップS45において注文部412は、注文設定データベース430(図12参照)のなかで、受信したシグナルが反対シグナルとなる注文設定を探索する。受信したシグナルが反対シグナルとなる注文設定とは、次の(1)~(3)を満たす注文設定である。(1)受信シグナルに含まれる足種、銘柄、テクニカル指標が、注文設定の足種、銘柄、指標にそれぞれ一致する。(2)受信したシグナルの売り・買いの別が、注文設定の種別と逆である。(3)稼働が稼働中(「Y」)である。
【0089】
ステップS46において注文部412は、受信したシグナルが反対シグナルとなる注文設定があれば(ステップS46→あり)処理をステップS47に進め、なければ(ステップS46→なし)シグナル処理を終了する。
【0090】
ステップS47において注文部412は、ステップS46で見つかった注文設定に対応する注文で、未約定の注文があれば、当該注文を注文データベース440から注文を取り消す。なお注文設定に対応する注文は、「注文設定」属性を参照すれば識別可能である。
ステップS48において注文部412は、ステップS46で見つかった注文設定の「稼働」の属性を停止中(「S」)とする。
【0091】
≪取引処理≫
図17および図18は、本実施形態に係る取引処理のフローチャートである。取引処理は、取引サーバ400が実行する処理である。
【0092】
ステップS61において取引部413は、ステップS62~S71を繰り返し実行する処理を開始する。
ステップS62において取引部413は、注文データベース440(図13参照)のなかで未約定の注文ごとにステップS63~S65を繰り返す処理を開始する。以下この繰り返す処理の対象となる注文を処理対象注文と記す。
【0093】
ステップS63において取引部413は、処理対象注文の銘柄の市場価格を取得する。
ステップS64において取引部413は、市場価格が処理対象注文の価格(注文価格)に達していれば(ステップS64→YES)処理をステップS65に進め、達していなければ(ステップS64→NO)ステップS63に戻って次の処理対象注文を処理する。なお市場価格が注文価格に達するとは、例えば処理対象注文が買いの指値注文である場合に、市場価格が注文価格以下に達するということであり、また売りの逆指値注文である場合に、市場価格が注文価格以下に達するということである。
ステップS65において取引部413は、処理対象注文を約定して、約定した日時および価格を、注文データベース440の「約定日時」および「約定価格」に格納する。
【0094】
ステップS66において取引部413は、注文データベース440のなかで約定済みで未決済の注文ごとにステップS67~S71を繰り返す処理を開始する。以下この繰り返す処理の対象となる注文を処理対象注文と記す。
【0095】
ステップS67において取引部413は、処理対象注文の銘柄の市場価格を取得する。
ステップS68において取引部413は、処理対象注文と市場価格とが合えば(ステップS68→YES)処理をステップS69に進め、合わなければ(ステップS68→NO)ステップS67に戻って次の処理対象注文を処理する。買いの処理対象注文と市場価格とが合うとは、市場価格が約定価格と利確幅の和以上であるということである。売りの処理対象注文と市場価格とが合うとは、市場価格が約定価格から利確幅を減じた価格以下であるということである。
【0096】
ステップS69において取引部413は、処理対象注文を決済して、決済した日時および価格を、注文データベース440の「決済日時」および「決済価格」に格納する。
ステップS70において注文部412は、処理対象注文に対応する注文設定が稼働中(「Y」)ならば(ステップS70→YES)ステップS71に処理を進め、停止中(「S」)ならば(ステップS70→NO)ステップS67に戻って次の処理対象注文を処理する。なお処理対象注文に対応する注文設定は、「注文設定」の属性で識別できる。
【0097】
ステップS71において注文部412は、処理対象注文の決済価格にカウンター値またはフォロー値を加えた価格を注文価格とする注文を発注する。詳しく説明すると注文部412は、銘柄、種別、数量、利確幅、フォロー値、カウンター値が同じで、価格が決済価格にカウンター値またはフォロー値を加えた価格である注文を、注文データベース440に登録する。
【0098】
≪注文システムの特徴≫
注文システム100は、投資家が予め設定したテクニカル指標を基にしたシグナルが発生したタイミングで、金融商品の注文を行う(注文データベース440に登録する)。投資家自身が注文する必要がなく、売買シグナルが発生するタイミングで注文することができるようになる。注文は1つではなく、レンジ幅で設定した範囲内の価格で複数の注文が可能である。また売買シグナルが反転するまでフォロー値やカウンター値を指定することで繰り返しの注文も可能であり、市場のトレンドに応じた注文が可能になる。またシグナルが反転したときに反転前の未約定の新規注文が取り消され、相場の逆転による損失を抑制することを期待できる。
【0099】
≪変形例:足種およびテクニカル指標≫
上記した実施形態において足種は、4時間足、8時間足、および日足であるが、これに限らない。金融商品に応じて足種は、週足や月足、その他であってもよい。シグナル生成処理(図15参照)は、足種に応じて、例えば週最後や月最後の市場が閉まった後に実行される。
またテクニカル指標についても、上記した実施形態で説明したテクニカル指標とは異なるテクニカル指標であってもよく、売りおよび買いのシグナルの判定が可能なテクニカル指標であればよい。
【0100】
≪変形例:エントリー価格≫
上記した実施形態においてエントリー価格は、終値+レンジ幅の1/2から始めて、安くなる方向にレンジ幅/本数の間隔の値である。これとは異なるエントリー価格であってもよい。例えば間隔がレンジ幅/(本数-1)であってもよい。レンジ幅が1000(pips)で本数が5ならば価格は、スタート価格+500、スタート価格+250、スタート価格、スタート価格-250、スタート価格-500となる。また終値-レンジ幅の1/2から始めて、高くなる方向にレンジ幅/本数の間隔の値であってもよく、スタート価格-500、スタート価格-300、スタート価格-100、スタート価格+100、スタート価格+300であってもよい。
【0101】
≪変形例:注文設定条件≫
上記した実施形態において注文設定条件画面550(図6参照)の値は、投資家が全て設定している。銘柄や過去の当該銘柄の価格に応じて、初期値が設定されてもよい。例えばレンジ幅について、足種が4時間足ならば過去2カ月の変動幅を基に初期値を求めてもよい。また8時間足ならば過去4カ月、日足ならば過去1年の変動幅を基に初期値を求めてもよい。
本数の初期値は、レンジ幅/利確幅であってもよいし、1+レンジ幅/利確幅であってもよい。数量の初期値は、銘柄の最小取引数量であってもよい。
【0102】
≪その他変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。上記した実施形態において注文対象は、FXやETFであるが、株式や債券などの金融商品やコモディティなどであってもよい。
【0103】
上記した実施形態では注文システム100は、注文端末200と価格サーバ300と取引サーバ400とを含んで構成されるが、1つの装置であってもよい。当該装置が注文設定算出部212やシグナル生成部312、注文部412を備え、注文設定条件画面550(図6参照)に含まれる注文設定条件を端末から受け付けるようにしてもよい。当該装置は、注文設定条件を基に注文設定(図7記載の注文設定タブ571参照)を算出し、投資家の確認を得た後に注文登録部313が注文するようにしてもよい。また、価格サーバ300と取引サーバ400とが1つの装置であってもよい。
【0104】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100 注文システム
200 注文端末
211 操作受付部
212 注文設定算出部
213 シミュレーション部
300 価格サーバ
311 指標算出部
312 シグナル生成部
400 取引サーバ
411 注文設定受付部
412 注文部
413 取引部
430 注文設定データベース
440 注文データベース
550 注文設定条件画面
560 チャート画面
570 注文設定画面
571 注文設定タブ
【要約】
【課題】テクニカル指標を参照して、望ましいタイミングでの注文を可能とする。
【解決手段】注文システム100(取引サーバ400)は、金融商品の注文に係る売りまたは買い、注文するタイミングを決める売りシグナルまたは買いシグナルを判定する基になるテクニカル指標、および、数量を含む注文設定を受け付ける注文設定受付部411と、所定のタイミングでテクニカル指標を基に売りシグナルおよび買いシグナルを判定して生成するシグナル生成部312と、売りシグナルが判定されたら、売りの注文設定について、所定のタイミングでの金融商品の終値を基に算出される注文価格、数量の注文を発注し、買いシグナルが判定されたら、買いの注文設定について、終値を基に算出される注文価格、数量の注文を発注する注文部412と、を備える。
【選択図】図11
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