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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電池セルの容量算出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/387 20190101AFI20240709BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20240709BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240709BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240709BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/396
G01R31/392
H01M10/44 Z
H01M10/48 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023530731
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2022010048
(87)【国際公開番号】W WO2023038262
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120059
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジフーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テスー
(72)【発明者】
【氏名】バエ、キョウン ミン
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113253140(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109164398(CN,A)
【文献】特表2020-509723(JP,A)
【文献】特開2013-188100(JP,A)
【文献】特開2000-150001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサと、
前記少なくとも一つのプロセッサを通じて実行される少なくとも一つの命令を格納するメモリと、を含み、
前記少なくとも一つの命令は、
複数の電池セルを含む電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出するようにする命令と、
前記電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出するようにする命令と、
第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令と、
第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令と、
前記第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて前記第2電池セルの容量を算出するようにする命令と、を含む、電池セルの容量算出装置。
【請求項2】
前記複数の電池セルは直列接続されて前記電池モジュール内に含まれる、請求項1に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項3】
前記第1電池セルは、前記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルである、請求項1に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項4】
前記第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令は、
前記第1電池セルの放電曲線の推移によって前記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、前記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて前記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項5】
前記第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令は、
前記第1電池セルの充電曲線の推移によって前記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、前記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて前記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項6】
前記第2電池セルの容量は、
前記電池モジュールの放電容量、前記導出された前記第2電池セルの追加放電可能容量、前記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて計算される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項7】
前記第2電池セルは、前記電池モジュール内の全電池セルのうち前記第1電池セルを除く残りのセルのうちのいずれか一つである、請求項3に記載の電池セルの容量算出装置。
【請求項8】
複数の電池セルを含む電池モジュールで各電池セルの容量を算出する方法であって、
前記電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出するステップ;
前記電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出するステップ;
第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するステップ;
第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するステップ;及び
前記第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて前記第2電池セルの容量を算出するステップを含む、電池セルの容量算出方法。
【請求項9】
前記複数の電池セルは直列接続されて前記電池モジュール内に含まれる、請求項8に記載の電池セルの容量算出方法。
【請求項10】
前記第1電池セルは、前記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルである、請求項8または9に記載の電池セルの容量算出方法。
【請求項11】
前記第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するステップは、
前記第1電池セルの放電曲線の推移によって前記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、前記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて前記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出するステップを含む、請求項8または9に記載の電池セルの容量算出方法。
【請求項12】
前記第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するステップは、
前記第1電池セルの充電曲線の推移によって前記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、前記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて前記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出するステップを含む、請求項8または9に記載の電池セルの容量算出方法。
【請求項13】
前記第2電池セルの容量を算出するステップは、
前記電池モジュールの放電容量、前記導出された前記第2電池セルの追加放電可能容量、前記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて前記第2電池セルの容量を計算するステップを含む、請求項8または9に記載の電池セルの容量算出方法。
【請求項14】
前記第2電池セルは、前記電池モジュール内の全電池セルのうち前記第1電池セルを除く残りのセルのうちのいずれか一つである、請求項8または9に記載の電池セルの容量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの容量算出装置及び方法に関し、より具体的には、電池モジュール内に含まれた複数の電池セルのそれぞれの容量をより正確に算出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な携帯用電子機器の需要が増加し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池などの開発が本格化するにつれて、繰り返し充放電可能な高性能電池に関する研究が活発に進められている。特に、電気自動車、エネルギー貯蔵システムなどに使用される電池は、高出力及び大容量の電力を充電又は放電するために電池セル(battery cell)を複数個接続して電池モジュールを構成することができる。
【0003】
電池をエネルギー源として使用する装置又はシステムにおいて、電池の制御技術は非常に重要となるが、かかる制御技術の一つとして、電池の残存容量を用いて電池に対する充電及び放電を制御することにより、当該装置又はシステムの運用効率を高めることができる。
【0004】
一方、複数個の電池セルが直列に接続されて構成された電池モジュールの場合、退化や電圧のばらつきが多く発生した電池セルによって全電池モジュールの容量が決定され、それ以外の残りのセルに対しては正確な電池容量がわからないという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題点を解決するための本発明の目的は、電池モジュール内のすべてのセルの残存容量を推定して各電池セルの退化状態を正確に診断できるように電池セルの容量算出装置を提供することにある。
【0006】
上記のような問題点を解決するための本発明の別の目的は、電池セルの容量算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一実施例に係る電池セルの容量算出装置は、少なくとも一つのプロセッサ;上記少なくとも一つのプロセッサを通じて実行される少なくとも一つの命令を格納するメモリを含み、上記少なくとも一つの命令は、複数の電池セルを含む電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出するようにする命令;上記電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出するようにする命令;第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令;第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令;及び上記第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて上記第2電池セルの容量を算出するようにする命令を含むことができる。
【0008】
このとき、上記複数の電池セルは直列接続されて上記電池モジュール内に含まれることができ、上記第1電池セルは、上記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルであってよい。
【0009】
ここで、上記第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令は、第1電池セルの放電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、上記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含むことができる。
【0010】
また、上記第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令は、上記第1電池セルの充電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、上記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含むことができる。
【0011】
上記第2電池セルの容量は、上記モジュールの放電容量、上記導出された上記第2電池セルの追加放電可能容量、上記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて計算されることができる。
【0012】
上記第2電池セルは、上記モジュール内の全電池セルのうち上記第1電池セルを除く残りのセルのうちのいずれか一つであってよい。
【0013】
上記別の目的を達成するための本発明の実施例に係る電池セルの容量算出方法は、上記電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出するステップ;上記電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出するステップ;第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するステップ; 第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するステップ;上記第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて上記第2電池セルの容量を算出するステップを含むことができる。
【0014】
このとき、上記複数の電池セルは直列接続されて上記電池モジュール内に含まれることができ、上記第1電池セルは、上記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルであってよい。
【0015】
上記第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するステップは、上記第1電池セルの放電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、上記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出するステップを含むことができる。
【0016】
上記第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するステップは、上記第1電池セルの充電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、上記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出するステップを含むことができる。
【0017】
上記第2電池セルの容量を算出するステップは、上記モジュールの放電容量、上記導出された上記第2電池セルの追加放電可能容量、上記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて上記第2電池セルの容量を計算するステップを含むことができる。
【0018】
上記第2電池セルの容量は、上記モジュールの放電容量、上記導出された上記第2電池セルの追加放電可能容量、上記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて計算されることができる。
【0019】
上記第2電池セルは、上記モジュール内の全電池セルのうち上記第1電池セルを除く残りのセルのうちのいずれか一つであってよい。
【発明の効果】
【0020】
上記のような本発明の実施例によれば、複数の電池セルが直列に接続された電池モジュール内のすべてのセルの残存容量を推定することができる。
【0021】
それによって、電池モジュールに含まれた各電池セルの退化状態を正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】通常の電池モジュールの構成図である。
図2】直列に接続された多数の電池セルの充放電動作時の電圧変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例によって最低放電容量セルの挙動グラフから各電池セルの追加放電可能容量を導出する概念を示す。
図4】本発明の実施例によって最低充電容量セルの挙動グラフから各電池セルの追加充電可能容量を導出する概念を示す。
図5】本発明の一実施例に係る電池セル容量の推定結果を実測値と比較して示すグラフである。
図6】本発明の実施例に係る電池セルの容量算出装置の構成図である。
図7】本発明の実施例に係る電池セルの容量算出方法の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、種々の変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳しく説明しようとする。ところが、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されたい。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用している。
【0024】
第1、第2、A、Bなどの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されることができるが、上記構成要素は、上記用語によって限定されてはいけない。上記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されることができ、同様に第2の構成要素も第1の構成要素と命名されることができる。「及び/又は」という用語は、関連して記載された複数の項目の組み合わせ又は関連して記載された複数の項目のうちのある項目を含む。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか「接続されて」いると言及されたときには、当該他の構成要素に直接的に連結されているか又は接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されたい。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるとか「直接接続されて」いると言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないことと理解されたい。
【0026】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加可能性をあらかじめ排除しないことと理解されたい。
【0027】
別に定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含め、ここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味としては解釈されない。
【0028】
以下、本発明に係る好ましい実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、通常の電池モジュールの構成図である。
【0030】
通常、電池モジュール10は、相互直列に接続される複数の電池セル41を含む。図1には、N個の電池セルが直列接続されて電池モジュールを構成している。電池セル(cell)は、エネルギーを貯蔵する役割を果たす電池の最小単位である。電池が適用される装置、システム又は環境によって、電池セルの直/並列の組み合わせが電池モジュール(module)を成し、多数の電池モジュールが電池ラック(Rack)又は電池パック(pack)を構成することができる。
【0031】
このとき、電池パックは、直列接続された複数の電池セルのみを含むのではなく、バスバー、ケーブル、リレー、制御回路など電池パックの充放電のための様々な部品を含むことができる。
【0032】
一方、同一のパック内に配置されて使用される電池セルといっても、各セルは時間が経過するにつれて退化の程度が異なることがあり、それによって電池セルの電圧のばらつきが互いに異なることがある。このとき、弱いセルは、負荷がかかれば、強いセルよりもエネルギーが早く消尽し、充電時には充電容量の少ない弱いセルが、強いセル等よりも先に充電され、過充電状態で長く残っているようになるという問題が発生し得る。また、放電時には、弱いセルが先に放電されて、より強いセルの影響を受けるおそれがある。
【0033】
図2は、直列に接続された多数の電池セルの充放電動作時の電圧変化を示すグラフである。
【0034】
図2のグラフの各曲線は、一つの電池セルの時間による電圧変化を示す。各曲線別に第1時間区間21は充電が起こる区間を、第2時間区間22は放電が起こる区間を示す。
【0035】
このとき、充電上限電圧は電池セルを安全に充電するための最大電圧であって、あらかじめ設定されたものであってもよい。また、放電下限電圧は電池セルを安全に放電するための最小電圧であって、あらかじめ設定されたものであってよい。
【0036】
図2を参照すれば、点線で示す線が、退化が最も多く生じた電池セルの電圧挙動である。退化が最も多く生じた電池セルが最も先に充電上限電圧に達し、この瞬間、モジュール内の全電池セルに対する充電動作が全部中断される。放電時には逆に、退化が最も多く進行した電池セルの放電が最も早く進行され、当該電池セルの電圧が放電下限電圧に最も先に達するようになる。このとき、当該電池セルだけでなく、他の電池セルに対する放電動作も中断される。
【0037】
すなわち、退化が最も多く進行した電池セルの容量によって全電池モジュールの容量が決定される。言い換えれば、モジュール内の複数の電池セルが直列に接続された場合、当該モジュールの容量は、電池セルのうち最も多く退化した1個の電池セルの容量と等しくなる。
【0038】
ここで、残りの電池セルに対しては、充電上限電圧又は放電下限電圧に達するまで充電又は放電がなされなかったため、当該電圧に達するまでどの程度充放電容量に余裕があるのか正確に把握できないという問題が発生する。
【0039】
図3は、本発明の実施例によって最低放電容量セルの挙動グラフから各電池セルの追加放電可能容量を導出する概念を示す。
【0040】
図3において、曲線300は、最低放電容量セルの時間による挙動を示す。ここで、最低放電容量セルは、モジュール内で退化が最も多く進行したセルであってよい。曲線310において、Pd地点の上方の線に該当する部分は、モジュール内で電池セルのうち最低放電容量セルを除くセルのうちのいずれか一つの電池セルに対する放電挙動を示す。
【0041】
このとき、本発明においては、モジュール内のセルのうち最低放電容量セルを除くセルのうちの一つである第1電池セルの実際放電ラインで放電が止まる地点、すなわち、図3においてPd地点で電圧が低くなる方向に延長する仮想の曲線(図3で点線で示す)を生成する。このとき、第1電池セルに対する仮想の放電曲線は、最低放電容量セルの放電曲線300のパターンと等しく設定される。すなわち、第1電池セルに対する仮想の放電曲線は、時間が経過するにつれて、Pd地点から電池セルの電圧が下降する方向に進行し、最低放電容量セルの放電曲線300を時間軸にシフトさせたラインと等しく設定されることができる。図3の実施例においては、点線で示す第1電池セルに対する仮想の放電曲線を外挿された電圧挙動と表現した。ここで、最低放電容量セルの放電曲線300から第1電池セルに対する仮想の放電曲線が時間軸にシフトされた時間分に該当する放電量が、追加放電可能な容量であってよい。
【0042】
図4は、本発明の実施例によって最低充電容量セルの挙動グラフから各電池セルの追加充電可能容量を導出する概念を示す。
【0043】
図4において、曲線400は、最低充電容量セルの時間による充電挙動を示す。ここで、最低充電容量セルは、モジュール内で退化が最も多く進行したセルであってよい。曲線410において、Pc地点の下方の線に該当する部分が、モジュール内で電池セルのうち最低充電容量セルを除くセルのうちのいずれか一つの電池セルに対する充電挙動を示す。
【0044】
このとき、本発明においては、モジュール内のセルのうち最低放電容量セルを除くセルのうちの一つである第1電池セルの実際充電曲線で充電が止まる地点、すなわち、図4においてPc地点で電圧が上昇する方向に延長する仮想の線(図4で点線で示す)を生成する。このとき、第1電池セルに対する仮想の充電曲線は、最低充電容量セルの充電曲線400パターンと等しく設定される。すなわち、第1電池セルに対する仮想の充電曲線は、時間が経過するにつれて、Pc地点から電池セルの電圧が上昇する方向に進行し、最低充電容量セルのライン400を時間軸にシフトさせた曲線と等しく設定されることができる。図4の実施例においては、点線で示す第1電池セルに対する仮想の充電曲線を外挿された電圧挙動と表現した。ここで、最低充電容量セルのライン400から第1電池セルに対する仮想の充電曲線が時間軸にシフトされた時間分に該当する充電量が、追加充電可能な容量であってよい。
【0045】
図3及び図4を通じて説明した方法を通じて、追加放電可能容量及び追加充電可能容量を導出すれば、各電池セルの容量を算出することができる。各セルの容量は、下記(数1)式のように定義されることができる。
【0046】
[数1]
モジュール内の各セルの個別容量=モジュール放電容量+追加放電可能容量+追加充電可能容量×充放電効率
【0047】
ここで、各セルの個別容量は、当該セルが充電上限電圧まで充電されて放電下限電圧まで放電されると仮定した時に出力できる電気量(Ah)を意味することができる。また、充放電効率は、モジュール放電容量をモジュール充電容量で割った値と定義することができる。
【0048】
図5は、本発明の一実施例に係る電池セル容量の推定結果を実測値と比較して示すグラフである。
【0049】
図5において、電池セルが12個直列接続されて構成されたモジュールにおいて、各電池セルの充放電曲線を用いて上述したような方法で算出した個別電池セルの容量を示すのがライン51である。また、ライン53は、モジュールを分解して電池セルの容量を個別的に測定した値を示すものである。
【0050】
ライン51とライン53は、平均1%の誤差があり、最大3%水準まで誤差が発生することを確認することができる。すなわち、実際に測定した電池セルの容量と本発明によって推定した電池セルの容量との間で大きな差がないことが分かる。よって、本発明に係る電池セル容量算出方法によれば、電池モジュールを分解して測定しなくても、実際の電池セルの退化状態を正確に判断できることを確認することができる。
【0051】
図6は、本発明の実施例に係る電池セルの容量算出装置の構成図である。
【0052】
図6を参照すれば、電池セルの容量算出装置は、メモリ100、プロセッサ200、送受信装置300、及び記憶装置600を含むことができる。電池セルの容量算出装置に含まれたそれぞれの構成要素100、200、300、600は、バス(bus)700によって接続されて互いに通信を行うことができる。
【0053】
本発明に係る電池セルの容量算出装置は、電池システムの一部又は別途配置された電池管理システム(BMS)であるか、電池管理システムに含まれる形態で実現されることができる。
【0054】
上記メモリ100及び記憶装置600は、揮発性記憶媒体及び非揮発性記憶媒体のうち少なくとも一つから構成されることができる。例えば、メモリ100及び記憶装置600は、読み出し専用メモリ(read only memory, ROM)及びランダムアクセスメモリ(random access memory, RAM)のうちの少なくとも一つから構成されることができる。
【0055】
メモリ100は、プロセッサ200によって実行される少なくとも一つの命令を含むことができる。プロセッサ200は、中央処理装置(central processing unit, CPU)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(graphics processing unit, GPU)、又は本発明の実施例に係る方法が行われる専用のプロセッサを意味することができる。
【0056】
プロセッサ200は、メモリ100に格納された少なくとも一つのプログラム命令(program command)を実行することができる。
【0057】
ここで、上記少なくとも一つの命令は、複数の電池セルを含む電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出するようにする命令;上記電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出するようにする命令;第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令;第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令;及び上記第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて上記第2電池セルの容量を算出するようにする命令を含むことができる。
【0058】
ここで、上記複数の電池セルは直列接続されて上記電池モジュール内に含まれることができ、第1電池セルは、上記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルであってよい。
【0059】
上記第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出するようにする命令は、第1電池セルの放電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、上記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含むことができる。
【0060】
上記第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出するようにする命令は、第1電池セルの充電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、上記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出するようにする命令を含むことができる。
【0061】
このとき、第2電池セルの容量は、上記モジュールの放電容量、上記導出された上記第2電池セルの追加放電可能容量、上記第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて計算されることができる。
【0062】
メモリ100又は記憶装置600は、プロセッサによって算出された各電池セル及び電池モジュールの充電曲線、放電曲線に関する情報を記憶することができる。
【0063】
図7は、本発明の実施例に係る電池セルの容量算出方法の動作フロー図である。
【0064】
図7に示す電池セルの容量算出方法は、複数の電池セルを含む電池モジュールで各電池セルの容量を算出する方法に関し、電池セルの容量算出装置によって行われることができる。このとき、電池セルの容量算出装置は、BMS(Battery Management System)であってよい。このとき、複数の電池セルは直列接続されて上記電池モジュール内に含まれることができる。
【0065】
図7を参照すれば、電池セルの容量算出装置は、電池モジュール内に含まれた各電池セルの放電曲線を導出することができる(S711)。電池セルの容量算出装置はまた、電池モジュール内に含まれた各電池セルの充電曲線を導出することができる(S712)。
【0066】
その後、第1電池セルの放電曲線の推移によって第2電池セルの追加放電可能容量を算出することができる(S721)。より具体的に、第1電池セルの放電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大放電される電圧まで第2電池セルの放電曲線を延長させ、上記第1電池セルの放電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの放電曲線の延長部分を導出することができる。
【0067】
ここで、第1電池セルは、上記電池モジュール内の複数の電池セルのうち退化が最も多く進行した電池セルであってよい。
【0068】
また、第1電池セルの充電曲線の推移によって第2電池セルの追加充電可能容量を算出することができる(S722)。より具体的に、第1電池セルの充電曲線の推移によって上記第1電池セルが最大充電される電圧まで第2電池セルの充電曲線を延長させ、上記第1電池セルの充電曲線を時間軸にシフトさせて上記第2電池セルの充電曲線の延長部分を導出することができる。
【0069】
図示の便宜上、ステップ711、ステップ712、ステップ721、ステップ722の順に示すが、ステップ711、ステップ712は同時に行われてもよく、その実行順序が逆になっても構わない。ステップ721、ステップ722も同様である。 但し、ステップ721はステップ711の後に行われなければならず、ステップ722はステップ712の後に行われなければならない。
【0070】
第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量が算出されれば、算出された第2電池セルの追加放電可能容量及び追加充電可能容量に基づいて第2電池セルの容量を計算することができる(S730)。より具体的に、第2電池セルの容量は、モジュールの放電容量、導出された上記第2電池セルの追加放電可能容量、第2電池セルの追加充電可能容量、及び充放電効率に基づいて計算されることができる。このとき、充放電効率は、電池モジュールの放電容量をモジュール充電容量で割った値と示すことができる。
【0071】
本発明の一部の側面は、装置の文脈で説明されたが、それは、対応する方法による説明も示すことができ、ここで、ブロック又は装置は、方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法の文脈で説明された側面は、対応するブロック又はアイテム又は対応する装置の特徴で示すことができる。方法ステップのいくつか又は全部は、例えばマイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ又は電子回路のようなハードウェア装置によって(又は用いて)行われることができる。いくつかの実施例において、最も重要な方法ステップの一つ以上は、このような装置によって行われることができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更できることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0073】
10:電池モジュール
300:最低放電容量セルの放電曲線
400:最低充電容量セルの充電曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7