IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アウグスト リュッゲベルク ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーの特許一覧

特許7517769研磨ディスク及びこのような研磨ディスクの使用
<>
  • 特許-研磨ディスク及びこのような研磨ディスクの使用 図1
  • 特許-研磨ディスク及びこのような研磨ディスクの使用 図2
  • 特許-研磨ディスク及びこのような研磨ディスクの使用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】研磨ディスク及びこのような研磨ディスクの使用
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/08 20060101AFI20240709BHJP
   B24D 7/04 20060101ALI20240709BHJP
   B24D 11/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B24D5/08
B24D7/04
B24D11/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021540573
(86)(22)【出願日】2019-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2019050836
(87)【国際公開番号】W WO2020147922
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】510270063
【氏名又は名称】アウグスト リュッゲベルク ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ゲールマン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘン フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ アヒム
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー ファビアン
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-315063(JP,A)
【文献】特開昭56-152584(JP,A)
【文献】特開昭52-033191(JP,A)
【文献】特公昭48-022518(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/08
B24D 7/04
B24D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-研磨層(2)、
-前記研磨層(2)を強化し安定化させる第1補強布地(6)、
-前記研磨層(2)を強化し安定化させる第2補強布地(8)、を有し、
前記研磨層(2)は、
--結合剤(3)により結合された砥粒(4)で形成され、
--研磨層直径Dを有し、
--第1外側面(5)及び第2外側面(7)を形成し、
前記第1補強布地(6)は、
--前記第1外側面(5)において前記研磨層(2)の前記結合剤(3)内に埋め込まれており、
--第1布地直径DA1を有し、ここで0.8・D≦DA1≦Dであり、
前記第2補強布地(8)は、
--前記第2外側面(7)において前記研磨層(2)の前記結合剤(3)内に埋め込まれており、
--第2布地直径DA2を有し、ここで0.8・D≦DA2≦Dである、
研磨ディスクにおいて、
少なくとも1つの強化布地(W~W)が研磨ディスク(1)を強化し安定化させるために前記補強布地(6,8)の少なくとも1つに配置されており、
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)が、前記研磨ディスク(1)のクランプ領域(11)内に及び荒削り用に使用可能な内側作業領域(13)内に配置されており、
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)が、前記研磨ディスク(1)の、切断用に使用可能な外側作業領域(14)に配置されておらず
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)がそれぞれの直径Dを有し、ここで、D<DA1及びD<DA2である、ことを特徴とする研磨ディスク。
【請求項2】
研磨ディスク(1)の回転軸(M)の方向における前記補強布地(6,8)の間の前記研磨層(2)には、補強布地及び強化布地が無い、ことを特徴とする請求項1に記載の研磨ディスク。
【請求項3】
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)が、前記少なくとも1つの補強布地(6,8)に対して前記研磨層(2)から離れた側に配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ディスク。
【請求項4】
少なくとも1つの強化布地(W,W)が前記第1補強布地(6)に配置されており、少なくとも1つの強化布地(W,W)が前記第2補強布地(8)に配置されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項5】
複数の強化布地(W~W)が、研磨ディスク(1)の回転軸(M)の方向において前記少なくとも1つの補強布地(6,8)に配置されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項6】
次の式がそれぞれの直径Dに当てはまる:
0.35・D≦D≦0.65・D、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項7】
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)が、厚さdを有する前記研磨ディスク(1)の補強領域(15)と、厚さdを有する前記研磨ディスク(1)の無補強領域(16)を画定し、
以下の式が当てはまる:0.95≦d/d≦1.05、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項8】
研磨ディスク(1)は最大厚さdを有し、
以下の式が当てはまる:2mm≦d≦7mm、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項9】
研磨ディスク(1)は最大厚さdを有し、
以下の式が当てはまる:0.8mm≦d≦4mm、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項10】
前記補強布地(6,8)の1つに割り当てられた前記少なくとも1つの強化布地(W,W及びW,W)が、合計で、それぞれの単位面積当たり重量Gを有し、
以下の式が当てはまる:50g/m≦G≦500g/m、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項11】
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)がそれぞれの糸幅bを有し、
以下の式が当てはまる:0.1mm≦b≦1.8mm、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項12】
前記少なくとも1つの強化布地(W~W)がそれぞれの値Rを有し、
それぞれの値Rに以下の式が当てはまり:
=Rxi+Ryi
xi=bxi・nxi/lxi
yi=byi・nyi/lyi
ここで、bxiは、横糸の糸幅であり、
xi/lxiは、x方向における長さlxiに対する横糸の数であり、
yiは、経糸の糸幅であり、
yi/lyiは、y方向における長さlyiに対する経糸の数であり、
以下の式が当てはまる:0.2≦R≦1.2、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項13】
研磨ディスク(1)をグラインダーにクランプするためのクランプリング(10)を有する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の研磨ディスク。
【請求項14】
切削速度(v)が、少なくとも80m/sである、荒削り用及び切断用の請求項1~13のいずれか一項に記載の研磨ディスク(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブル部分に従う研磨ディスク(grinding disk)に関する。さらに、本発明は、荒削り(rough machining)及び/又は切断(cutting off)のためのこのような研磨ディスクの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、手でガイドされるアングルグラインダー(ディスクサンダー)による荒削りのために使用される研磨ディスクが知られている。研磨ディスクは、結合剤により接着された砥粒で形成された、内側及び外側補強布地により強化された研磨層(grinding layer)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】EP1543923A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、荒削り及び/又は切断の際に改良された特性を有する研磨ディスクを創出することである。特に、研磨ディスクは、高めの回転速度及び高めの切削速度(cutting speed)で使用できなければならず、高めの研削性能(grinding performance)及び/又は切断性能(cutting-off performance)を実現しなければならない。さらに、研磨ディスクは荒削り及び/又は切断のために使用できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を備えた研磨ディスクによって解決される。研磨ディスクは、グラインダーを取り付けるための中央開口を有する。少なくとも1つの付加的な布地(織物)又は少なくとも1つの強化布地(stiffening fabric)を少なくとも1つの補強布地(reinforcing fabric)に配置することにより、そのそれぞれが補強布地より小さい直径Dを有し、研磨ディスクは中央開口の周りの領域を強化され、安定化される。少なくとも1つの付加的な布地のために、研磨層内にある内側補強布地の数及び/又は重量、特にガラス重量が、研磨ディスクの剛性及び安定性に影響を与えずに減少され得る。少なくとも1つの布地は、研磨層に面する少なくとも1つの補強布地の側に及び/又は研磨層から離れた少なくとも1つの補強布地の側に配置されている。幾つかの布地が補強布地の1つ又はそれぞれの補強布地に配置される場合、これら布地はしたがって、研磨層に面する補強布地又はそれぞれの補強布地の側に及び/又は研磨層から離れた補強布地又はそれぞれの補強布地の側に配置されている。補強布地に関連する布地はそれに応じて、研磨層に面する側に及び/又は研磨層から離れた側に配置されている。少なくとも1つの布地は特に、研磨ディスクの回転軸と同軸に及び/又は中央開口と同軸に配置されている。特に、少なくとも1つの布地は少なくとも1つの補強布地のすぐ隣に配置されている。好ましくは、少なくとも1つの布地は少なくとも1つの補強布地に当接する。研磨層内にある及び/又は研磨ディスクの作業領域内にある補強布地の数及び/又は重量、特にガラス重量を減少させることで、荒削り中及び/又は切断中の研削性能及び/又は切断性能が改善される。さらには、比較的高い回転速度で研磨ディスクを使用することができ、それにより荒削り中及び/又は切断中の研削性能及び/又は切断性能が追加的に改善される。研磨ディスクは直線状又はクランク状に構成される。
【0006】
少なくとも1つの付加的な布地は、中央開口の周りの中央領域を補強し、それで研磨層直径Dに実質的に一致する布地直径を有する補強布地の数が減少する。研磨ディスクの作業領域における補強布地の減少した数又は割合は、荒削り中及び/又は切断中の研磨ディスクの特性、特に研削性能及び/又は切断性能を改善する。
【0007】
第1補強布地及び/又は第2補強布地は、特にガラス繊維布地と解釈される。好ましくは、第1補強布地の直径DA1に以下の式が当てはまる:DA1≧0.9・D、特にDA1≧0.95・D、特にDA1≧0.99・D。さらに、以下の式が好ましくは第2補強布地の直径DA2に当てはまる:DA2≧0.9・D、特にDA2≧0.95・D、特にDA2≧0.99・D。特に、以下の式が当てはまる:DA1=DA2=D
【0008】
少なくとも1つの布地は、第1補強布地及び/又は第2補強布地と同一に及び/又は異なって形成されている。少なくとも1つの布地は、第1補強布地及び/又は第2補強布地より小さめのメッシュサイズ(網目サイズ)、大きめのメッシュサイズ及び/又は同じメッシュサイズを有する。複数の布地が同一に及び/又は異なって形成されている。特に、少なくとも1つの布地はガラス繊維布地として形成されている。添え字iはそれぞれの布地Wを指定し、Dはそれぞれの布地の直径を指定する。第1補強布地上に配置される布地の数は、第2補強布地上に配置される布地の数と等しい又は異なる。
【0009】
研磨層内にある補強布地の減少した数及び/又は減少した重量、特にガラス重量のために、荒削りを対象としている研磨ディスクは特に、比較的小さめの厚さで形成され、それによりそれは切断にも適し、良好な切断性能を有する。
【0010】
少なくとも1つの付加的な布地及び高めの剛性のために、研磨ディスクの振動又はフラッタリングが防がれ、よって特に切断を対象とした研磨ディスクにより凸凹の切断が回避される。これと、比較的高めの回転速度での使用が、切断性能をかなり改善する。さらには、研磨ディスクはカーブ切断を可能にする、というのも少なくとも1つの付加的な布地が、補強布地の少なくとも1つを、アングルグラインダーの締結手段、例えばナットでの屈曲に起因する中央開口の領域での過度の変形から保護するからである。
【0011】
請求項2に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。研磨層が研磨層内にある補強布地を有しない、すなわち外側面に配置された補強布地の間に中央の補強布地を有しないという事実のために、研磨ディスクの作業領域内の補強布地の割合が低い。内側補強布地は、第1補強布地と第2補強布地の間に配置された補強布地であって、少なくとも0.8・Dの布地直径を有する補強布地であると理解される。少なくとも1つの研磨層には、直径Dを有する少なくとも1つの布地が配置されてもよく、それは補強布地から距離を置いて、特にそれに対して中央に配置される。好ましくは、補強布地の間の研磨層には布地が無く、それで補強布地も付加的な布地も、第1補強布地と第2補強布地の間に配置されない。
【0012】
請求項3に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。少なくとも1つの布地が、研磨層から離れた少なくとも1つの補強布地の側に配置されていることにより、研磨ディスクは一方で補強され、他方で少なくとも1つの補強布地は少なくとも1つの布地によって保護される。
【0013】
請求項4に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。少なくとも1つの布地を第1補強布地に及び第2補強布地に配置することで、研磨ディスクは両方の外側面にて補強され、強化される。少なくとも1つの布地は、第1補強布地又は第2補強布地の研磨層から離れた側に及び/又は研磨層に面する側に配置されている。
【0014】
請求項5に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。好ましくは、複数の布地が第1補強布地に配置されており、複数の布地が第2補強布地に配置されている。好ましくは、複数の布地は、研磨層から離れる第1補強布地及び/又は第2補強布地の側にのみ配置される。
【0015】
請求項6に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。それぞれの直径Dは、それぞれの布地が中央開口のまわりの中央領域又はクランプ領域を強化することを保証し、実質的に外側作業領域まで延びない。好ましくは、全ての布地は同じ直径Dを有する。
【0016】
請求項に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。少なくとも1つの布地がクランプ領域内に配置されており、それを中央開口の周りで補強する。少なくとも1つの布地は特に、切断用に使用可能な外側作業領域に配置されていない。特に、少なくとも1つの布地は、荒削り用に使用可能な内側作業領域に配置されている。好ましくは、研磨ディスクは、クランプ領域、内側作業領域及び外側作業領域を有する。内側作業領域は、半径方向においてクランプ領域と外側作業領域の間に配置されている。少なくとも1つの布地は好ましくは、クランプ領域に及び少なくとも部分的に内側作業領域に延びる一方、少なくとも1つの布地は外側作業領域に延びない。これはクランプ領域を強化する。荒削りは、内側作業領域及び/又は外側作業領域によって高い研削性能で実施される。切断は、外側作業領域によって高い切断性能で行われる。内側作業領域及び外側作業領域は例えば、アングルグラインダーのアングルヘッドによって予め決定され、それは研磨ディスクが内側作業領域での切断のために使用されるのを防止する。
【0017】
請求項に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。研磨層直径Dの全体にわたって実質的に一様な厚さdを有する研磨ディスクにより、研磨ディスクの作業領域は影響を受けない。好ましくは、d=d=dであり、ここでdは作業領域における研磨層の一様な厚さを示す。
【0018】
請求項に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。作業領域における研磨ディスクの厚さdのために、荒削りを対象とする研磨ディスクは切断にも適する。よって、研磨ディスクは、荒削りの際に高い研削性能を有し、切断の際に高い切断性能を有する。ゆえに、荒削り研磨ディスクは切断のためにも使用できる。
【0019】
請求項に従う研磨ディスクは、切断の際の改良された特性を保証する。切断を対象とする研磨ディスクは、比較的高い回転速度で、したがって高い切削速度で使用でき、それにより切断性能が改良される。したがって、研磨ディスクは特に切断研磨ディスクとして使用される。研磨ディスクはまた粗削り用にも使用できる。
【0020】
請求項10に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。少なくとも1つの布地の高めの単位面積当たり重量Gが、研磨ディスクの安定性及び剛性を増加させる。しかしながら、単位面積当たり重量Gは、布地含量のために研削性能又は切断性能の低下を避けるのに十分低い。単位面積当たり重量Gは、サイド当たり、すなわち補強布地当たりに、それぞれの補強布地に配置された布地のために決定される。1つの布地だけが補強布地の1つに又は片面に配置される場合、単位面積当たり重量Gはこの布地の単位面積当たり重量に一致する。他方で、複数の布地が補強布地の1つに又は片面に配置される場合、単位面積当たり重量Gはこれら布地の単位面積当たり重量の合計である。例えば、2つの布地が第1補強布地に配置され、2つの布地が第2補強布地に配置される場合、第1の単位面積当たり重量が、第1補強布地に配置された布地の単位面積当たり重量の合計として決定され、第2の単位面積当たり重量が、第2補強布地に配置された布地の単位面積当たり重量の合計として決定される。それぞれの合計の単位面積当たり重量は応力領域にある。例えば、以下の式が、第1補強布地又は第2補強布地に関連する少なくとも1つの布地のそれぞれの合計の単位面積当たり重量Gに当てはまる:150g/m≦G≦350g/m、特に250g/m≦G≦300g/m。添え字jは少なくとも1つの布地が割り当てられたそれぞれの補強布地6,8を指定する。
【0021】
請求項11に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。少なくとも1つの布地の高めの糸幅bが、研磨ディスクの安定性及び剛性を増加させる。しかしながら、糸幅は、それぞれの布地を関連する補強布地での研磨層又は研磨ディスクに埋め込むことを可能にするのに十分低い。添え字iはそれぞれの布地を指定する。
【0022】
請求項12に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。値Rはそれぞれの布地の開放性の尺度である。添え字iはそれぞれの布地を指定する。高めの値Rが、研磨ディスクの安定性及び剛性を増加させる。しかしながら、値Rは十分低く、それぞれの布地を研磨ディスクに埋め込むことを可能にする。切断性能又は研削性能は、研磨ディスクの作業領域における布地の量によって影響を受けない。以下の式がRに当てはまる:
【0023】
=Rxi+Ryi
ここで
xi=bxi・nxi/lxi
yi=byi・nyi/lyi
【0024】
ここで、bxi、byiはそれぞれ、x方向及びy方向における糸幅又は糸のウェブ幅であり、
xi、nyiはそれぞれ、x方向及びy方向における糸の数又はウェブの数であり、
yiは、経糸18の糸幅を示し、
xi、lyiは、x方向及びy方向における長さである。
【0025】
請求項13に従う研磨ディスクは、荒削り及び/又は切断の際の改良された特性を保証する。クランプリングは中央開口を形成する。クランプリング又は関連する穴は、結合剤、特に樹脂の流れの間トーチスタンドのボルトによって生成される。クランプリングは、クランプ領域及び/又は中央開口を付加的に強め、強化する。クランプリングは特に鋼鉄リングとして理解される。
【0026】
本発明の1つの別な目的は、荒削り及び/又は切断の際に改善された特性を有する研磨ディスクの使用を可能にすることである。
【0027】
この目的は、請求項14に従う研磨ディスクを使用することで達成される。好ましくは、研磨ディスクは、荒削り用及び/又は切断用に使用される。改良された安定性のために、研磨ディスクは、高めの回転速度及び高めの切削速度で使用できる。これは研削性能又は切断性能を増加させる。研磨ディスクの使用における更なる利点に関しては、既に記載した本発明に従う研磨ディスクの利点を参照されたい。
【0028】
本発明のさらなる特徴、利点及び詳細は実施形態の以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】補強布地及び付加的な布地を備えた本発明に従う研磨ディスクの断面図を示す図である。
図2図1の研磨ディスクの分解図を示す図である。
図3】付加的な布地の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示される研磨ディスク1は、手で保持されるアングルグラインダーで使用するためのものである。研磨ディスク1は、結合剤3により接着された砥粒4で形成される研磨層2を有する。結合剤3は例えばフェノール樹脂である。研磨層2は、研磨ディスク1の公称直径に一致する研磨層直径Dを有する。
【0031】
第1補強布地6が研磨層2内に第1外側面5に埋め込まれている。対応的に、第2補強布地8が研磨層2内に第2外側面7に埋め込まれている。第1補強布地6は、研磨層直径Dに一致する第1布地直径DA1を有する。対応的に、第2補強布地8は、研磨層直径Dに一致する第2布地直径DA2を有する。補強布地6,8は例えばガラス繊維布地として理解される。
【0032】
研磨ディスク1は、付加的な布地W,W,W及びWを有する。布地W及びWは、研磨層2から離れた第1補強布地6の側に配置されており、研磨層2に埋め込まれているのに対して、布地W及びWは、研磨層2から離れた第2補強布地8の側に配置されており、研磨層2に埋め込まれている。
【0033】
研磨ディスク1は、アングルグラインダーに取り付けるための中央開口9を有する。中央開口9は研磨ディスク1の回転軸Mを定める。アングルグラインダーにクランプするために、研磨ディスク1は、中央開口9に配置されたクランプリング10を有する。クランプリング10は例えば、鋼鉄リングと理解される。クランプリング10は第1外側面5にて布地Wと当接し、研磨層2に接続している。
【0034】
研磨ディスク1は円形の形状をしている。補強布地6,8及び/又は布地W~Wは回転軸Mと同軸に配置されている。補強布地6,8及び/又は布地W~Wは環状である。
【0035】
布地W~Wはそれぞれの直径D~Dを有する。これら布地は一般にWで指定され、対応する直径はDで指定され、i=1,2,3,4である。添え字iはそれぞれの布地Wを特定する。次の式がそれぞれの直径Dに当てはまる:D<DA1及びD<DA2。特に、次の式がそれぞれの直径Dに当てはまる:0.25・D≦D≦0.75・D、特に0.3・D≦D≦0.7・D、及び特に0.35・D≦D≦0.65・D。好ましくは、D=D=D=Dが当てはまる。
【0036】
研磨層2には、補強布地6,8の間にさらなる補強布地がなく、それで研磨層2には特に研磨層2内の中央に配置された補強布地がない。好ましくは、研磨層2にはまた補強布地6,8の間にさらなる付加的な布地もない。
【0037】
研磨ディスク1は、回転軸Mに対して半径方向にクランプ領域11と、クランプ領域11を取り囲む作業領域12を形成する。作業領域12は回転軸Mに対して半径方向に内側作業領域13及びそれを取り囲む外側作業領域14に分割されている。作業領域12、すなわち内側作業領域13及び外側作業領域14は環状である。布地W~Wが延在する範囲まで、内側作業領域13は半径方向に延在する。クランプ領域11及び内側作業領域13はしたがって、布地W~Wが配置されている補強領域15を形成する。他方で、外側作業領域14は、付加的な布地W~Wのない無補強領域16を形成する。外側作業領域14は好ましくはワークピースを切断するのに使用される一方、内側作業領域13及び外側作業領域14はワークピースを荒削りするために使用される。
【0038】
補強領域15は厚さdを有するのに対し、無補強領域16は厚さdを有する。研磨ディスク1は回転軸Mに対して半径方向に実質的に一定の厚さを有し、ここで、0.95≦d/d≦1.05、特に0.99≦d/d≦1.01、特に0.995≦d/d≦1.005である。研磨ディスク1の厚さdは、厚さd及びdの最大値から生じる。好ましくは次の式が当てはまる:d=d=d
【0039】
ワークピースを荒削りするための研磨ディスク1の好ましい使用において、以下の式が好ましくは厚さdに当てはまる:2mm≦d≦7mm、特に3mm≦d≦6mm、特に4mm≦d≦5mm。ワークピースを切断するための研磨ディスク1の好ましい使用において、以下の式が好ましくは厚さdに当てはまる:0.8mm≦d≦4mm、特に1.2mm≦d≦3.2mm、特に1.6mm≦d≦2.5mm。
【0040】
図3は一般的に、布地Wの構造を示す。布地Wは、y方向に延びる複数の横糸17とそれと交差してx方向に延びる複数の経糸18を有する。それぞれの布地Wは例えばガラス繊維布地と理解される。
【0041】
横糸17は糸幅bxiを有するのに対し、経糸18は糸幅byiを有する。糸幅bxi又はbyiはウェブ幅とも呼ばれる。糸幅bxiに対して、以下の式が好ましくは当てはまる:0.1mm≦bxi≦1.8mm、特に0.3mm≦bxi≦1.5mm、特に1mm≦bxi≦1.2mm。糸幅byiに対して、以下の式が好ましくは当てはまる:0.1mm≦byi≦1.8mm、特に0.3mm≦byi≦1.5mm、特に1mm≦byi≦1.2mm。糸幅bxi及びbyiを一般的に糸幅bとも称する。それぞれの布地Wの糸幅bxi及びbyiは同じであっても及び/又は異なっていてもよい。さらに、複数の布地Wの糸幅bxi及びbyiは互いに同じであってもよく、及び/又は互いに異なっていてもよい。
【0042】
それぞれの布地Wは、布地Wの開放性を特徴付ける値Rを有する。以下の式がそれぞれの値Rに当てはまる。
【0043】
=Rxi+Ryi (1)
ここで
xi=bxi・nxi/lxi (2)
yi=byi・nyi/lyi (3)
【0044】
方程式(2)及び(3)において、
xiは、横糸17の糸幅を示し、
xi/lxiは、x方向における長さlxiに対する横糸17の数を示し、
yiは、経糸18の糸幅を示し、
yi/lyiは、y方向における長さlyiに対する経糸18の数を示す。
【0045】
それぞれの布地Wの値Rxi及びRyiは、同じであっても異なってもよい。布地Wの値Rxi及びRyiは、互いに同じであっても異なってもよい。複数の布地Wの値Rは、同じであっても異なってもよい。以下の式が好ましくは値Rに当てはまる:0.2≦R≦1.2、特に0.3≦R≦1。
【0046】
布地W及びWは第1補強布地6に割り当てられており、合計で、第1の単位面積当たり重量Gを有する。対応的に、布地W及びWは第2補強布地8に割り当てられており、合計で、第2の単位面積当たり重量Gを有する。それぞれの単位面積当たり重量は一般的に、Gで示され、添え字jは布地W,W又はW,Wが割り当てられた、それぞれの補強布地6,8を又は研磨層2のそれぞれの外側面を示す。添え字jに対して、以下の式が当てはまる:j=1,2。それぞれの合計の単位面積当たり重量Gに対して、以下の式が好ましくは当てはまる:50g/m≦G≦500g/m、特に75g/m≦G≦450g/m、特に100g/m≦G≦400g/m。単位面積当たり重量Gは同じであっても及び/又は異なってもよい。個々の布地Wの単位面積当たり重量は同じであっても及び/又は異なってもよい。
【0047】
研磨ディスク1の操作モード及び使用は以下の通りである:
【0048】
付加的な布地W~Wは研磨ディスク1を補強、強化し、それにより研磨ディスク1は、荒削り及び/又は切断の際に比較的高めの回転速度及び高めの切削速度vで操作できる。切削速度vは、研磨ディスク1の外周で又は研磨層直径Dにおいて少なくとも80m/s、特に少なくとも90m/s、特に少なくとも100m/sである。これは、研削性能及び/又は切断性能を増大させる。
【0049】
研磨ディスク1が切断研磨ディスク(cut-off grinding disk)として設計されるとき、付加的な布地W~Wは高い回転速度又は高い切断速度vでの振動又はフラッタリングを防止する。研磨ディスク1が切断研磨ディスクとして設計されるとき、特にそれはまた湾曲切断を可能にする、というのもアングルグラインダーの締結手段上で曲げられるときに補強布地6が布地W及びWによって保護されるからである。
【0050】
研磨ディスク1が荒削り研磨ディスク(rough grinding disk)として設計されるとき、付加的な布地W~Wは、研磨層2内の付加的な補強布地の数を補強布地6,8の間で減少させる。これは、比肩し得る安定性及び剛性によって研削性能を増大させる、というのも作業領域12内の付加的な補強布地が研削性能又は研削特性に悪影響を有するからである。さらに、荒削り研磨ディスクを比較的薄く作製することが可能であり、それでそれは切断用にも使用できる。例えば、外側作業領域14が切断用に使用できるのに対して、内側作業領域13及びさらには外側作業領域14は荒削り用に使用できる。
【0051】
概して:
研磨ディスク1の好ましい構造は、ラベル/N・布地W/補強布地6/研磨層2/補強布地8/N・布地W/ラベル/クランプリング10である。研磨ディスク1は、クランプ領域11においてクランク状に構成されてもよい。付加的な布地Wは、第1補強布地6及び/又は第2補強布地8より細かいメッシュ状及び/又はより粗いメッシュ状であってもよく、及び/又はそれと同じメッシュサイズを有してもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 研磨層
3 結合剤
4 砥粒
5 第1外側面
6 第1補強布地
7 第2外側面
8 第2補強布地
A1 第1布地直径
A2 第2布地直径
~W 布地
図1
図2
図3