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  • 特許-表示装置及び表示装置の駆動方法 図1
  • 特許-表示装置及び表示装置の駆動方法 図2
  • 特許-表示装置及び表示装置の駆動方法 図3
  • 特許-表示装置及び表示装置の駆動方法 図4
  • 特許-表示装置及び表示装置の駆動方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20240709BHJP
   G09G 3/30 20060101ALI20240709BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240709BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240709BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240709BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240709BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/30 J
G09G3/20 622Q
G09G3/20 622R
G09G3/20 611F
G09G3/20 623U
G09G3/20 624B
G09G3/20 650E
G09G3/20 650J
G09F9/30 365
H05B33/14 A
H10K59/12
H05B33/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021574496
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045490
(87)【国際公開番号】W WO2021153008
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020010835
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】近 千秋
(72)【発明者】
【氏名】谷川 昇
(72)【発明者】
【氏名】西岡 隆文
(72)【発明者】
【氏名】橋柿 光一
(72)【発明者】
【氏名】関内 季宣
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-240687(JP,A)
【文献】特開平07-175452(JP,A)
【文献】特開2004-118162(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103500(WO,A1)
【文献】特開2010-271366(JP,A)
【文献】特開2001-100710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20
G09G 3/3233
G09G 3/30
G09F 9/30
H10K 59/12
H05B 33/02
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線及び前記データ線によって画素が指定される画素部とを有する表示装置であって、
隣接する複数の走査線に対して1ラインの画像データが同時に表示され、
時間的に連続するNフレーム及び(N+1)フレーム間で、同時に表示される画像データが異なるものとされると共に、画像データが1ラインシフトされるようになされ、
前記Nフレーム及び(N+1)フレームの少なくとも一方の最終の走査線の画像データを非表示とするようにした表示装置。
【請求項2】
通常表示されるエリアの外側にマージンエリアを設定し、前記最終の走査線が前記マージンエリアを形成するものである請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
発光素子を消光状態とするスイッチング素子を駆動することによって、前記最終の走査線の画像データを非表示とするようにした請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光素子がOLEDであって、前記OLEDのアノード及びカソード間と並列に前記スイッチング素子を接続するようにした請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
入力画像データがフレームレートの変換されたプログレッシブ信号であり、
前記プログレッシブ信号は、奇数ラインの画像データからなるNフレームの画像データと、偶数ラインの画像データからなる(N+1)フレームの画像データを含み、
前記Nフレーム及び前記(N+1)フレームの一方の最終の走査線の画像データが任意のデータとされている請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線及び前記データ線によって画素が指定される画素部とを有する表示装置の駆動方法であって、
隣接する複数の前記走査線に対して1ラインの画像データが同時に表示され、
時間的に連続するNフレーム及び(N+1)フレーム間で、同時に表示される画像データが異なるものとされると共に、画像データが1ラインシフトされるようになされ、
前記Nフレーム及び(N+1)フレームの少なくとも一方の最終の前記走査線の画像データを非表示とするようにした表示装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、アクティブマトリクス型の表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として有機発光ダイオード(以下、OLED(Organic Light Emitting Diode)という)素子などを用いた表示装置が知られている。表示装置では、垂直走査回路からの走査線(ゲート線)と、水平走査回路からのデータ線(信号線)との交差箇所に対して、発光素子やトランジスタなどを含む画素回路が画素に対応して設けられる。画素回路に対して、画素の階調レベルに応じた電位のデータ信号が当該トランジスタのゲートに印加されると、当該トランジスタは、ゲート・ソース間の電圧に応じた電流を発光素子に対して供給し、発光素子が階調レベルに応じた輝度で発光する。
【0003】
特許文献1には、より高いフレームレートを実現するために、隣接する複数の走査線を同時に駆動する方法が記載されている。例えば2本の走査線を同時駆動することで、1フレーム分の走査に必要な時間が1/2に短縮化される。例えば1水平ライン期間につき隣接する2本の走査線を同時駆動する。すなわち、1番目の水平ライン期間にはライン1とライン2の同時駆動、2番目の水平ライン期間にはライン3とライン4の同時駆動、3番目の水平ライン期間にはライン5とライン6の同時駆動という方法が考えられる。この駆動方法は、視覚的な劣化を生じるので、特許文献1に記載の発明は、1水平ライン期間に複数の走査線(ライン)を同時駆動して走査を行うと共に、フレーム周期に応じた周期で同時駆動する上記複数の走査線の組み合わせを変更するものとしている。例えば、同時駆動する走査線の組み合わせを「1・2」「3・4」「5・6」・・・とする状態と、「1」「2・3」「4・5」・・・とする状態とで変更するといったものである。
【0004】
特許文献2には、特許文献1に記載のようなフレームレートの変換処理を実現する構成の一例が記載されている。例えば、奇数ラインのライン画像L1,L3,L5を含む画像に基づいてライン画像L1を、表示装置の1,2ライン目に、同じ水平期間内に書き込み、ライン画像L3を、表示装置の3,4ライン目に、同じ水平期間内に書き込み、その他のライン画像についても同様に書き込むように制御を行い、表示装置は、その制御に基づいて表示画像を表示する。また、偶数ラインのライン画像L2,L4,L6を含む画像に基づいて、表示装置の1ライン目に、例えば黒情報(輝度情報が0)を書き込み、ライン画像L2を、EL表示部の2,3ライン目に、同じ水平期間内に書き込み、ライン画像L4を、表示装置の4,5ライン目に、同じ水平期間内に書き込み、その他のライン画像についても同様に書き込むように制御を行い、表示装置は、その制御に基づいて表示画像を表示する。
【0005】
このようにして、表示装置では、フレーム画像Fの奇数ラインのライン画像Lに基づいて、2ラインごとに走査駆動が行われ、表示画像Dが表示されるとともに、補間処理により生成されたフレーム画像Fiの偶数ラインのライン画像Lに基づいて、フレーム画像Fに係る走査駆動と1ラインずらして、2ラインごとの走査駆動が行われ、表示画像Diが表示される。そして、表示画像Dおよび表示画像Diは、交互に表示される。これにより、観察者は、表示画像D,Diの平均画像を観察することとなる。互いに1ラインずれた表示画像Dと表示画像Diとを、交互に表示するようにしたので、垂直解像度の低下を抑えることができる。本明細書では、このように、二行同時走査を行なうと共に、2行の位置の1行ずらし(1行シフト)を行なうような駆動方法をマルス駆動と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-271365号公報
【文献】特開2013-250505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、表示画像を生成する送信側(ホスト側)に対して表示装置が接続されている。従来では、表示装置側でフレーム変換処理を行なうようにしているので、表示装置が大規模なメモリ、回路を持つことが必要とされていた。その結果、表示装置の額縁を狭くすることが難しい問題が生じた。また、OLEDにおいて、パネルの焼きつきを防止するために、一定時間ごとに表示画像を自動的に移動させて表示する機能(ピクセルシフト)が知られている。ピクセルシフトのためには、垂直方向及び/又は水平方向に通常の表示エリアより広い(1から数画素分)マージンエリアが設定される。このマージンエリアに対して出力される画素として黒レベルの画像データが必要とされる。従来では、送信側において黒レベルのデータを挿入する処理を行なう必要があった。
【0008】
したがって、本技術は、マルス駆動を行なうために、表示装置側に大規模なメモリ、回路を持つことが不要とでき、また、黒レベルのデータを挿入する処理を不要とできる表示装置及び表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術は、複数の走査線と、複数のデータ線と、走査線及びデータ線によって画素が指定される画素部とを有する表示装置であって、
隣接する複数の走査線に対して1ラインの画像データが同時に表示され、
時間的に連続するNフレーム及び(N+1)フレーム間で、同時に表示される画像データが異なるものとされると共に、画像データが1ラインシフトされるようになされ、
Nフレーム及び(N+1)フレームの少なくとも一方の最終の走査線の画像データを非表示とするようにした表示装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本技術を適用することができるアクティブマトリクス型駆動回路を備える有機EL表示装置のブロック図である。
図2図2は、本技術の一実施形態の概略的構成を示すブロック図である。
図3図3は、表示装置の駆動方法の説明に用いる略線図である。
図4図4は、本技術を適用することができる画素回路の構成例を示す接続図である。
図5図5は、本技術の一実施形態における画素回路の駆動方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施形態は、本技術の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本技術の範囲は、以下の説明において、特に本技術を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の構成要素を示しており、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
本技術は、図1に示すアクティブマトリクス型駆動回路を備える有機EL表示装置1(電気光学装置)に適用することができる。表示装置1は、表示パネル1Aと表示パネル1Aの動作を制御する制御回路とを備える。
【0013】
表示装置1には、デジタルの画像データがデータ同期信号に同期して供給される。画像データは、表示パネル1Aで表示すべき画像の画素の階調レベルを例えば8ビットで規定するデータである。また、同期信号とは、垂直同期信号、水平同期信号、及び、クロック信号を含む信号である。制御回路は、同期信号に基づいて、各種制御信号を生成し、これを表示パネル1Aに対して供給する。また、制御回路は電圧生成回路を含む。電圧生成回路は、表示パネル1Aに対して、各種電位を供給する。さらに、制御回路は、画像データに基づいて、アナログの映像信号を生成する。
【0014】
図1に示すように、表示パネル1Aは、半導体基板例えばシリコン基板上に垂直走査回路(走査線駆動回路)2、水平走査回路(データ線駆動回路)3及び画素部4を形成している。画素部4に対して垂直走査回路2からの複数の走査線が水平方向に延長され、水平走査回路3からの複数のデータ線が垂直方向に延長されている。垂直方向に延びるデータ線と水平方向に延びる走査線に対して画素回路がマトリクス状に接続されている。画素回路には、R(赤)、G(緑)、青(B)の三原色の画素に対応する画素回路(サブ画素回路)が設けられている。これら3画素がカラー画像の1ドットを表現する。
【0015】
上述した垂直走査回路2は、アドレス走査方式でもって垂直走査を行なう。すなわち、表示制御回路からの走査線アドレス情報にしたがって任意の走査線を適宜に選択するようになされている。本技術の一実施形態では、隣接する2本以上例えば2本の走査線が同時に選択されるようになされている。このような駆動によって、2走査線同時走査(2行同時駆動、又は2行同時書き込み)を行なうことができる。
【0016】
図2は、送信側及び受信側を含む構成の概略的ブロック図である。画像データがフレームレート変換部21に供給され、フレームレートが2倍とされると共に、ライン間引きがなされる。例えば毎秒60フレームのプログレッシブ画像データからN番目のフレーム(単にNフレームと称する)と(N+1)番目のフレーム(単に(N+1)フレームと称する)が形成される。Nフレームは、奇数番目のラインの画像データから構成され、(N+1)フレームは、偶数番目のラインの画像データから構成されている。フレームレート変換部21は、例えばフレームメモリを有している。なお、フレームレート変換処理の方法としては、上述したものに限らず他の方法が可能である。例えば入力データの連続する二つのフレームを使用して出力データの補間フレームを作成するようにしてもよい。
【0017】
図3Aに示すように、元の960ラインの映像データ(第1ラインの映像データから第960ラインの映像データ)から奇数番目のライン(1,3,5,...,959)のデータからなる480本の走査線のデータと481番目の走査線のデータ(960ラインのデータ)からなるNフレームの画像が形成される。同様に、元の960ラインの映像データ(第1ラインの映像データから第960ラインの映像データ)から偶数番目のライン(2,4,6,...,960)のデータからなる480走査線のデータと481番目の走査線のデータ(任意のデータ)からなる(N+1)フレームの画像が形成される。481番目の走査線のデータは、ピクセルシフトのマージンエリアを構成する走査線のデータである。
【0018】
Nフレームと(N+1)フレームは、元の画像データのフレームレートの2倍のフレームレート(毎秒120フレーム)を有する。従来では、送信側において、任意データとして黒レベルのデータを挿入するようにしていたが、本技術の一実施形態では、そのような処理が不要とされる。なお、図3は、走査線の番号とそこに配置(表示)される画像データのライン番号の関係を示すもので、画像の水平方向の長さを無視したものである。
【0019】
かかるフレームレートが変換された映像データが送信装置22から受信装置23に対して送信される。送信装置22及び受信装置23は、映像を送り出す側と表示装置側の間のインターフェースを構成する。受信装置23の出力映像データが表示制御部24を介して上述した表示装置1に供給される。
【0020】
表示装置1では、表示制御部24の制御のもとで、マルス駆動(2走査線同時駆動)を行なう。図3Bに示すように、マルス駆動は、2走査線同時駆動を行なうと共に、2走査線の位置の1走査線ずらし(1走査線シフト)を行なう。Nフレームにおいて、第1走査線が指定され、第1走査線に第1ラインの映像データが表示される。次の第2走査線以下の走査線に対しては、2走査線同時駆動を行なう。すなわち、第3ラインの映像データが第2番目及び第3番目の走査線によって同時に表示される。以下、2走査線同時駆動がなされ、第960番目の走査線には、(N+1)フレームの最終ライン(第960ライン)の映像データが表示される。
【0021】
次の(N+1)フレームでは、1走査線ずらしを行なわないで、2走査線同時駆動を行なう。すなわち、第2ラインの映像データが第1番目及び第2番目の走査線に同時に表示され、次の第4ラインの映像データが第3番目及び第4番目の走査線に同時に表示される。以下同様に、各偶数ラインの映像データが2走査線同時に表示される。第959番目及び第960番目の走査線には、(N+1)フレームの最終ライン(第960ライン)の映像データが表示される。さらに、第961番目の走査線(マージンエリアに含まれる走査線)には、任意データが配置される。マルス駆動は、パネル応答速度を2倍とすることができる。さらに、画像の垂直方向の解像感を向上させることができる。
【0022】
このように(N+1)フレームの第961番目の走査線に任意データを配置して、黒レベルのデータを挿入しなくても、表示装置1において黒を表示するようにした構成について説明する。
【0023】
図4は、表示装置1の画素部4の1画素の画素回路4aの一例の構成を示す。画素回路4aは、垂直走査回路2からの第1信号線5、第2信号線6及び第3信号線7と、水平走査回路3からのデータ線8とに接続されている。画素回路4aは、4つのトランジスタ(駆動トランジスタTD、トランジスタT1、トランジスタT2、トランジスタT3)とを有する。例えば4つのトランジスタとして、Pチャネル型のトランジスタが用いられている。
【0024】
駆動トランジスタTDは、ソースがトランジスタT2を介して給電線41に接続され、ドレインはOLEDのアノードに接続され、OLEDに流れる電流を制御する。給電線41には、高電位の電源(VDD)が給電される。OLEDのカソードは、電源の低位側となる電位VSSに保たれている電源線42に接続される。
【0025】
トランジスタT1(第1トランジスタ)は、ゲートが第1信号線5に接続され、ソース及びドレインの一方がデータ線8に接続され、他方が駆動トランジスタTDのゲートに接続されている。トランジスタT1は、書込み走査信号WSに応じてデータ線電位(階調電位)を駆動トランジスタTDのゲートに書込む。
【0026】
トランジスタT2(第2トランジスタ)は、ゲートが第2信号線6に接続され、ソース及びドレインの一方が給電線41に接続され、他方が駆動トランジスタTDのソースに接続され、駆動トランジスタTDへの電源供給を制御する。
【0027】
トランジスタT3(第3トランジスタ)は、ゲートが第3信号線7に接続され、ソース及びドレインの一方が駆動トランジスタTDのドレイン及びOLEDのアノードに接続され、他方が電源線42に接続される。電源線42は、低電位の電源(VSS)に設定される。なお、トランジスタT3のドレインとOLEDのカソードを同じ電源線に接続するようにしてもよい。
【0028】
各画素回路4aにおいて、OLEDの発光輝度を駆動トランジスタTDによって制御される電流で制御している。そのため、各画素回路4aにおいて駆動トランジスタTDのしきい値電圧がばらつくと画素ごとに発光輝度がばらつくことになり、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれてしまう。そこで、駆動トランジスタTDのしきい値電圧のばらつきに起因する発光輝度のばらつきを低減する、しきい値電圧補正動作を線順次走査に併せて行なっている。
【0029】
この駆動トランジスタTDのしきい値電圧補正のための期間は、しきい値電圧補正準備期間としきい値電圧補正期間とで構成されている。しきい値電圧補正準備とは、駆動トランジスタTDのゲート電圧を初期化するとともに、駆動トランジスタTDのソース電圧を初期化することを指している。しきい値電圧補正とは、駆動トランジスタTDのゲート・ソース間電圧を駆動トランジスタTDのしきい値電圧に近づける補正動作を指している。しきい値電圧補正期間内において書込み電圧を基準電圧から信号電圧に切り替えて信号書き込み期間に移行する。
【0030】
画素を黒表示状態とするには、通常、データ線8に黒表示電位を書き込む。本技術の一実施形態では、信号AZをローレベルとする。その結果、トランジスタT3がオン状態となり、OLEDに駆動電流が流れなくなり、黒表示状態とすることができる。したがって、黒表示電位を書き込む処理は不要である。
【0031】
図5は、水平同期信号HSYNCと、Nフレームの映像データと、(N+1)フレームの映像データと、Nフレームの駆動信号AZと、(N+1)フレームの駆動信号AZとを示している。受信側からの映像データには、Nフレームと(N+1)フレームを識別する情報が付加されている。(N+1)フレームの最終ラインのデータは、任意データである。この任意データを表示する場合には、駆動信号AZがローレベルの状態を保持する。その結果、トランジスタT3がオン状態のままとなり、OLEDが消光状態となる。このような駆動方法によって、黒データを書き込む処理を不要とできる。
【0032】
次に、実施形態等や応用例に係る電気光学装置を適用した電子機器について説明する。電気光学装置は、画素が小サイズで高精細な表示の用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウント・ディスプレイ、スマートメガネ、スマートフォン、デジタルカメラの電子式ビューファインダー等の表示装置に適用することができる。
【0033】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。例えば表示装置の垂直方向の走査線数などの数値は、一例であって、他の走査線数であってもよい。また、ピクセルシフトのために複数の走査線を増加してもよい。さらに、水平方向にピクセルシフトを行なうようにしてもよい。
【0034】
なお、本技術は、以下のような構成も採ることができる。
(1)
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線及び前記データ線によって画素が指定される画素部とを有する表示装置であって、
隣接する複数の走査線に対して1ラインの画像データが同時に表示され、
時間的に連続するNフレーム及び(N+1)フレーム間で、同時に表示される画像データが異なるものとされると共に、画像データが1ラインシフトされるようになされ、
前記Nフレーム及び(N+1)フレームの少なくとも一方の最終の走査線の画像データを非表示とするようにした表示装置。
(2)
通常表示されるエリアの外側にマージンエリアを設定し、前記最終の走査線が前記マージンエリアを形成するものである(1)に記載の表示装置。
(3)
発光素子を消光状態とするスイッチング素子を駆動することによって、前記最終の走査線の画像データを非表示とするようにした(1)又は(2)に記載の表示装置。
(4)
前記発光素子がOLEDであって、前記OLEDのアノード及びカソード間と並列に前記スイッチング素子を接続するようにした(3)に記載の表示装置。
(5)
入力画像データがフレームレートの変換されたプログレッシブ信号であり、
前記プログレッシブ信号は、奇数ラインの画像データからなるNフレームの画像データと、偶数ラインの画像データからなる(N+1)フレームの画像データを含み、
前記Nフレーム及び前記(N+1)フレームの一方の最終の走査線の画像データが任意のデータとされている(1)から(3)のいずれかに記載の表示装置。
(6)
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線及び前記データ線によって画素が指定される画素部とを有する表示装置の駆動方法であって、
隣接する複数の前記走査線に対して1ラインの画像データが同時に表示され、
時間的に連続するNフレーム及び(N+1)フレーム間で、同時に表示される画像データが異なるものとされると共に、画像データが1ラインシフトされるようになされ、
前記Nフレーム及び(N+1)フレームの少なくとも一方の最終の前記走査線の画像データを非表示とするようにした表示装置の駆動方法。
【符号の説明】
【0035】
1・・・有機EL表示装置、2・・・垂直走査回路
3・・・水平走査回路、4・・・画素部、4a・・・画素回路
8・・・データ線、TD・・・駆動トランジスタ
OLED・・・発光素子、21・・・フレームレート変換部
24・・・表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5