(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2022098178
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真基
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06556020(US,B1)
【文献】特開2010-037011(JP,A)
【文献】米国特許第05995001(US,A)
【文献】特開2019-161931(JP,A)
【文献】特開2004-069573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを搭載した車両本体と、
前記バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、
前記バッテリのバッテリ電圧に対応した前記バッテリの残量を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、
を備える産業車両であって、
前記複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、
前記制御部は、
前記大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、
前記第1検出部で前記大電力装置の駆動を検出した場合、前記大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出して前記バッテリ電圧を補正する補正処理を行い、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる補正処理部と、
前記モータの駆動および駆動停止を検出する第2検出部と、を備え
、
前記補正処理部は、前記モータの駆動停止および前記大電力装置の駆動停止が予め設定された第1時間以上継続している第1条件と、前記第1条件を満たした後に前記大電力装置が駆動停止から駆動に切換わる第2条件と、前記第2条件を満たした後に前記モータの駆動停止および前記大電力装置の駆動が予め設定された第2時間以上継続している第3条件とを満たした場合に、前記補正電圧を算出する
ことを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記補正処理部は、
前記モータが駆動停止でかつ前記大電力装置が駆動停止の状態の前記バッテリ電圧に相当する第1電圧から、前記第3条件を満たした状態の前記バッテリ電圧に相当する第2電圧を差し引いて前記補正電圧を算出する
ことを特徴とする請求項
1に記載の産業車両。
【請求項3】
バッテリを搭載した車両本体と、
前記バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、
前記バッテリのバッテリ電圧に対応した前記バッテリの残量を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、
を備える産業車両であって、
前記複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、
前記制御部は、
前記大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、
前記第1検出部で前記大電力装置の駆動を検出した場合、前記大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出して前記バッテリ電圧を補正する補正処理を行い、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる補正処理部と、を備え、
前記補正処理部は、前記大電力装置が駆動から駆動停止に切換わった場合、前記補正処理を行っていない前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる
ことを特徴とす
る産業車両。
【請求項4】
バッテリを搭載した車両本体と、
前記バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、
前記バッテリのバッテリ電圧に対応した前記バッテリの残量を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、
を備える産業車両であって、
前記複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、
前記制御部は、
前記大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、
前記第1検出部で前記大電力装置の駆動を検出した場合、前記大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出して前記バッテリ電圧を補正する補正処理を行い、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる補正処理部と、を備え、
前記補正処理部は、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に相当する補正バッテリ電圧と、前記バッテリを0.2C放電した時の前記バッテリ電圧に相当する0.2C放電電圧とを比較し、前記0.2C放電電圧が前記補正バッテリ電圧よりも小さい場合に、前記補正バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる
ことを特徴とす
る産業車両。
【請求項5】
バッテリを搭載した車両本体と、
前記バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、
前記バッテリのバッテリ電圧に対応した前記バッテリの残量を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、
を備える産業車両であって、
前記複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、
前記制御部は、
前記大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、
前記第1検出部で前記大電力装置の駆動を検出した場合、前記大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出して前記バッテリ電圧を補正する補正処理を行い、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる補正処理部と、を備え、
前記大電力装置は、熱線ガラスおよび/またはヒーターを含む
ことを特徴とす
る産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉛バッテリと、鉛バッテリの電力で駆動するモータ(走行用モータおよび荷役用モータ)と、鉛バッテリのバッテリ電圧に応じて鉛バッテリの残量を表示するインジケータとを備えるフォークリフトが知られている。
【0003】
図6に示すように、モータが力行動作を行うと鉛バッテリのバッテリ電圧は降下し、モータが回生動作を行うとバッテリ電圧は上昇する。力行動作により降下したバッテリ電圧は、モータを駆動停止させると数分かけて徐々に復帰する一方、回生動作により上昇したバッテリ電圧は、モータを駆動停止させると1秒以内に復帰する。
【0004】
上記の特性を有する鉛バッテリのバッテリ電圧(実測値)をそのまま鉛バッテリの残量に対応させると、モータが力行動作/回生動作を行うたびに残量は変化するので、インジケータの表示が不安定になる。このため、従来のフォークリフトでは、0.2C放電電圧Vcを定義し、この0.2C放電電圧Vcを用いてバッテリ電圧を設定している。具体的には、0.2C放電電圧Vc<バッテリ電圧(実測値)の場合(ただし、回生動作の開始~回生動作の停止後1秒間は除く。)のみ、バッテリ電圧(実測値)に応じた残量を表示させ、それ以外は0.2C放電電圧Vcに応じた残量を表示させることで、インジケータの表示を安定させている。
【0005】
なお、0.2C放電電圧Vcは、鉛バッテリを0.2Cのレートで放電(5時間で100%放電)させると、バッテリ容量とは無関係に、15000秒でバッテリ電圧が48.5[V]から44.0[V]に一定の傾き(0.0003V/秒)で降下する特性から導き出したものである。
【0006】
図7(A)に、インジケータの一例を示し、
図7(B)にインジケータの点灯状態とバッテリ電圧との対応関係を示す。
図7(B)のバッテリ電圧は、上記のとおり、0.2C放電電圧Vcを用いて設定したものである。また、
図7(A)のインジケータは、「2点灯」の状態である。
【0007】
ところで、フォークリフトには、前面、側面、後面にガラス窓を有するキャビン付きのフォークリフトが存在する(例えば、特許文献1参照)。ガラス窓としては、曇りや結露を防ぐために熱線ガラスが用いられる。フォークリフトの運転席には、熱線ガラスをON/OFFさせるスイッチが設けられる。
【0008】
熱線ガラスは消費電力が大きいため、熱線ガラスをONさせると鉛バッテリのバッテリ電圧が降下し、熱線ガラスをOFFさせると降下したバッテリ電圧が復帰(上昇)する。
図8に、熱線ガラスのON/OFFと
図7(A)に示したインジケータの点灯状態の時間変化との関係を示す。
図8において、直線Aは熱線ガラスがOFF時の点灯状態の時間変化を示したもの、直線Bは熱線ガラスがON時の点灯状態の時間変化を示したもの、直線Cは熱線ガラスがON時の正確な(本来の稼働時間を反映させた)点灯状態の時間変化を示したものである。
【0009】
図8に示すように、熱線ガラスをONさせると鉛バッテリのバッテリ電圧が約0.7[V]降下し、熱線ガラスをOFFさせると降下したバッテリ電圧が約0.7[V]上昇する。例えば、インジケータが「F点灯」の状態で熱線ガラスをONさせると、インジケータは「9点灯」または「8点灯」の状態になる。
【0010】
また、熱線ガラスをONさせた状態でインジケータが「枠点灯」の状態になるまでフォークリフトを稼働させ、「枠点灯」の状態になったタイミングで熱線ガラスをOFFさせると、インジケータは「2点灯」の状態になる。本来、「2点灯」の状態に相当する残量分だけフォークリフトを稼働させることができるが、直線Bで示すようにインジケータが「枠点灯」の状態になると、フォークリフトのオペレータは、これ以上フォークリフトを稼働させることができないと誤認してしまう。
【0011】
すなわち、熱線ガラスのように消費電力が大きい大電力装置を備えるフォークリフトでは、正確な(本来の稼働時間を反映させた)バッテリの残量表示ができないという問題がある。その結果、オペレータは稼働時間が短くなったと誤認してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、正確なバッテリの残量表示が可能なフォークリフト等の産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る産業車両は、
バッテリを搭載した車両本体と、
前記バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、
前記バッテリのバッテリ電圧に対応した前記バッテリの残量を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、
を備える産業車両であって、
前記複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、
前記制御部は、
前記大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、
前記第1検出部で前記大電力装置の駆動を検出した場合、前記大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出して前記バッテリ電圧を補正する補正処理を行い、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させる補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、大電力装置の駆動により降下した電圧(補正電圧)を算出してバッテリ電圧を補正する補正処理を行い、補正処理後のバッテリ電圧に対応したバッテリの残量を表示部に表示させるので、正確なバッテリの残量表示が可能となる。
【0016】
前記産業車両において、
前記制御部は、前記モータの駆動および駆動停止を検出する第2検出部を備え、
前記補正処理部は、前記モータの駆動停止および前記大電力装置の駆動停止が予め設定された第1時間以上継続している第1条件と、前記第1条件を満たした後に前記大電力装置が駆動停止から駆動に切換わる第2条件と、前記第2条件を満たした後に前記モータの駆動停止および前記大電力装置の駆動が予め設定された第2時間以上継続している第3条件とを満たした場合に、前記補正電圧を算出するよう構成できる。
【0017】
前記産業車両において、
前記補正処理部は、
前記モータが駆動停止でかつ前記大電力装置が駆動停止の状態の前記バッテリ電圧に相当する第1電圧から、前記第3条件を満たした状態の前記バッテリ電圧に相当する第2電圧を差し引いて前記補正電圧を算出するよう構成できる。
【0018】
前記産業車両において、
前記補正処理部は、前記大電力装置が駆動から駆動停止に切換わった場合、前記補正処理を行っていない前記バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させるよう構成できる。
【0019】
前記産業車両において、
前記補正処理部は、前記補正処理後の前記バッテリ電圧に相当する補正バッテリ電圧と、前記バッテリを0.2C放電した時の前記バッテリ電圧に相当する0.2C放電電圧とを比較し、前記0.2C放電電圧が前記補正バッテリ電圧よりも小さい場合に、前記補正バッテリ電圧に対応した前記残量を前記表示部に表示させるよう構成できる。
【0020】
前記産業車両において、
前記大電力装置は、熱線ガラスおよび/またはヒーターを含むよう構成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正確なバッテリの残量表示が可能なフォークリフト等の産業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの表示部および表示制御部を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの動作モードの状態遷移図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの残量表示制御の第1の流れを示すフロー図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの残量表示制御の第2の流れを示すフロー図である。
【
図6】モータの状態とバッテリ電圧との関係を示す図である。
【
図7】(A)インジケータの一例を示す図である。(B)インジケータの点灯状態とバッテリ電圧の対応関係を示す図である。
【
図8】熱線ガラスのON/OFFと
図7(A)に示したインジケータの点灯状態の時間変化との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る産業車両の実施形態について説明する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態に係るフォークリフト1(本発明の「産業車両」に相当)の側面図を示す。フォークリフト1は、リーチタイプのバッテリフォークリフトであって、車体フレームを含む車両本体2と、車両本体2の前部に設けられたマスト装置3と、マスト装置3に沿って昇降するフォーク4とを備える。
【0025】
フォークリフト1は、図示していないが、マスト装置3およびフォーク4を含む荷役装置を動作させるための荷役用モータと、荷役用モータを駆動(力行動作/回生動作)させる荷役用インバータと、荷役用インバータを制御する荷役制御部と、車両本体2を前進または後進させるための走行用モータと、走行用モータを駆動(力行動作/回生動作)させる走行用インバータと、走行用インバータを制御する走行制御部とを備える。荷役用モータおよび走行用モータは、本発明の「モータ」に相当する。
【0026】
フォークリフト1は、バッテリ5(本実施形態では、鉛バッテリ)と、車両本体2の後部に設けられた運転席と、バッテリ5および運転席を覆うキャビン6とを備える。
【0027】
バッテリ5は、荷役用インバータを介して荷役用モータに電力供給を行うとともに、走行用インバータを介して走行用モータに電力供給を行う。例えば、荷役用モータの力行動作を行うとバッテリ5のバッテリ電圧は降下し、荷役用モータの回生動作を行うとバッテリ電圧は上昇する。力行動作により降下したバッテリ電圧は、荷役用モータを駆動停止させると数分かけて徐々に復帰(上昇)する一方、回生動作により上昇したバッテリ電圧は、荷役用モータを駆動停止させると1秒以内に復帰(降下)する(例えば、
図6参照)。走行用モータについても、同様である。
【0028】
なお、本実施形態では、荷役用モータが力行動作を行い、走行用モータが回生動作を行っている場合(または、荷役用モータが回生動作を行い、走行用モータが力行動作を行っている場合)、バッテリ5のバッテリ電圧が降下しているのであれば、本発明のモータ(荷役用モータと走行用モータとを一括りにした本発明のモータ)は力行動作を行っているものとし、バッテリ5のバッテリ電圧が上昇しているのであれば、本発明のモータは回生動作を行っているものとする。
【0029】
キャビン6の前面、側面、後面には、熱線ガラス7(本発明の「大電力装置」に相当)が設けられている。熱線ガラス7は、ガラス内に熱線を配置したものであり、熱線にバッテリ5の電力を供給することで、ガラスの曇りや結露を防ぐことができる。フォークリフト1の運転席には、熱線ガラス7にバッテリ5の電力を供給するためのスイッチが設けられている。スイッチをONさせると、熱線ガラス7に電力が供給され、熱線ガラス7が駆動(ON)する一方、スイッチをOFFさせると、熱線ガラス7への電力供給が遮断され、熱線ガラス7が駆動停止(OFF)する。
【0030】
フォークリフト1の運転席には、熱線ガラス7に連動してON/OFFするヒーター(本発明の「大電力装置」に相当)が設けられている。本実施形態では、熱線ガラス7のスイッチをONさせると、熱線ガラス7に連動してヒーターが駆動(ON)し、熱線ガラス7のスイッチをOFFさせると、熱線ガラス7に連動してヒーターが駆動停止(OFF)する。
【0031】
フォークリフト1には、バッテリ5の電力で駆動する複数の電力駆動装置(例えば、LEDランプ等)が設けられているが、そのうち本発明の「大電力装置」に相当するのは、本実施形態では、熱線ガラス7とヒーターだけである。
【0032】
図2に示すように、フォークリフト1は、表示部8と、表示制御部9(本発明の「制御部」に相当)とを備える。表示部8は、バッテリ5のバッテリ電圧に対応したバッテリ5の残量を表示するインジケータを含む。表示制御部9は、表示部8に対して残量表示制御を行う。
【0033】
表示制御部9は、電圧検出部10と、第1検出部11と、第2検出部12と、記憶部13と、補正処理部14とを備える。表示制御部9は、例えば、各種センサとマイコン等のデジタル回路とで構成される。
【0034】
電圧検出部10は、バッテリ5のバッテリ電圧(例えば、端子間電圧)を検出し、検出したバッテリ電圧の電圧値を記憶部13に記憶させる。第1検出部11は、熱線ガラス7のスイッチのON/OFFを検出することで、熱線ガラス7のON/OFFを検出する。第2検出部12は、モータ(荷役用モータおよび走行用モータ)の駆動/駆動停止を検出する。また、第2検出部12は、モータのトルク等を検出することで、モータの力行動作/回生動作を検出する。
【0035】
記憶部13は、少なくともバッテリ5のバッテリ電圧を記憶するとともに、0.2C放電電圧Vcの放電特性に関するデータを記憶する。0.2C放電電圧Vcの放電特性に関するデータとは、バッテリ5を0.2Cのレートで放電(5時間で100%放電)させると、バッテリ5の容量とは無関係に、15000秒でバッテリ電圧が48.5[V]から44.0[V]に一定の傾き(0.0003V/秒)で降下する特性に関するデータである。
【0036】
補正処理部14は、フォークリフト1の動作モードを設定し、所定の条件を満たした場合にバッテリ電圧を補正する補正処理を行い、補正処理後のバッテリ電圧に対応した残量を表示部8に表示させる。また、補正処理部14は、0.2C放電電圧Vcに関するデータに基づいて、バッテリ電圧およびモータの力行動作/回生動作の時間(フォークリフト1の稼働時間)等から0.2C放電電圧Vcを算出する。
【0037】
図3に、フォークリフト1の動作モードの状態遷移図を示す。本実施形態では、動作モードとして、稼働中(モード1)、停止中(モード2)および待機中(モード3)のモードが存在する。
【0038】
電源投入されたフォークリフト1の動作モードは、稼働中(モード1)となる。モード1のフォークリフト1において、モータの駆動停止が1分以上継続し、かつ熱線ガラス7のOFFが1分以上継続しているという第1条件を満たすと、動作モードは停止中(モード2)に遷移する。第1条件の上記1分は、本発明の「第1時間」に相当する。
【0039】
モード2のフォークリフト1において、熱線ガラス7がOFFからONに切換わるという第2条件を満たすと、動作モードは待機中(モード3)に遷移する。一方、モード2のフォークリフト1において、第2条件を満たすことなく、モータが駆動停止から駆動に切換わると、動作モードは稼働中(モード1)に遷移する。
【0040】
モード3のフォークリフト1において、モータの駆動停止が100ms以上継続し、かつ熱線ガラス7のONが100ms以上継続しているという第3条件を満たすと、補正処理部14がバッテリ電圧を補正するための補正電圧を算出し、動作モードは稼働中(モード1)に遷移する。一方、モード3のフォークリフト1において、第3条件を満たすことなく、モータが駆動停止から駆動に切換わるか、または熱線ガラス7がONからOFFに切換わると、補正電圧が算出されることなく、動作モードは稼働中(モード1)に遷移する。第3条件の上記100msは、本発明の「第2時間」に相当する。本発明の「第1時間」および/または「第2時間」は、適宜変更することができる。
【0041】
図4および
図5に、表示制御部9が行う残量表示制御の流れを示す。表示制御部9に電源が投入されると、表示制御部9は残量表示制御を開始させる。
【0042】
表示制御部9が残量表示制御を開始させると、電圧検出部10は、バッテリ5のバッテリ電圧Vn(=V1)を検出して記憶部13に記憶させ(S101)、補正処理部14は、動作モードの判定を行う(S102)。
【0043】
動作モードが稼働中(モード1)の場合、補正処理部14は、モータの駆動停止が1分以上継続し、かつ熱線ガラス7のOFFが1分以上継続しているという第1条件を満たすか否かの判定を行う(S103)。第1条件を満たす場合(S103でYES)、補正処理部14により動作モードが停止中(モード2)に変更されて(S104)、
図5「A」(S113以降)へ続く。第1条件を満たさない場合(S103でNO)、動作モードは稼働中(モード1)のまま、
図5「A」(S113以降)へ続く。
【0044】
図5に示す一連の制御(S113~S116)の後、
図4「B」からステップS101の状態に移行すると、電圧検出部10は、バッテリ5のバッテリ電圧Vn(=V2)を検出して記憶部13に記憶させ(S101)、補正処理部14は、動作モードの判定を行う(S102)。
【0045】
動作モードが停止中(モード2)の場合、補正処理部14は、熱線ガラス7がOFFからONに切換わるという第2条件を満たすか否かの判定を行う(S105)。第2条件を満たす場合(S105でYES)、補正処理部14により動作モードが待機中(モード3)に変更されて(S106)、
図5「A」(S113以降)へ続く。第2条件を満たさない場合(S105でNO)、第2検出部12は、モータが駆動停止か否かを判定する(S107)。
【0046】
モータが駆動停止の場合(S107でYES)、補正処理部14は、OFF電圧Voの設定を行う(S108)。OFF電圧Voは、モータが駆動停止でかつ熱線ガラス7がOFFの状態の時にステップS101で取得した最新のバッテリ電圧Vn(=V2)であり、本発明の「第1電圧」に相当する。補正処理部14は、OFF電圧Voとしてバッテリ電圧Vn(=V2)を設定し、
図5「A」(S113以降)へ続く。モータが駆動停止ではない場合(S107でNO)、補正処理部14により動作モードが稼働中(モード1)に変更されて(S109)、
図5「A」(S113以降)へ続く。
【0047】
図5に示す一連の制御(S113~S116)の後、再び
図4「B」からステップS101の状態に移行すると、電圧検出部10は、バッテリ5のバッテリ電圧Vn(=V3)を検出して記憶部13に記憶させ(S101)、補正処理部14は、動作モードの判定を行う(S102)。
【0048】
動作モードが待機中(モード3)の場合、補正処理部14は、モータの駆動停止が100ms以上継続し、かつ熱線ガラス7のONが100ms以上継続しているという第3条件を満たすか否かの判定を行う(S110)。第3条件を満たす場合(S110でYES)、補正処理部14は、補正電圧Vdを算出する(S111)。補正電圧Vdは、本発明の「第1電圧」に相当するOFF電圧Voから、本発明の「第2電圧」に相当する第3条件を満たした状態の時にステップS101で取得した最新のバッテリ電圧Vnを差し引くことで算出される。ここでは、補正電圧Vd=Vo-Vn=V2-V3となる。
【0049】
補正電圧Vdを算出した補正処理部14は、動作モードを稼働中(モード1)に変更する(S112)。第3条件を満たさない場合(S110でNO)、すなわち、モータが駆動停止から駆動に切換わるか、または熱線ガラス7がONからOFFに切換わった場合、補正処理部14は、補正電圧Vdを算出することなく、動作モードを稼働中(モード1)に変更する(S112)。その後、
図5「A」(S113以降)へ続く。
【0050】
図5「A」からステップS113の状態に移行すると、第1検出部11は、熱線ガラス7がONしているか否かを判定する(S113)。熱線ガラス7がONの場合(S113でYES)、補正処理部14は、バッテリ5の残量算出用のバッテリ電圧Vn’を補正バッテリ電圧とする(S114)。補正バッテリ電圧は、ステップS101で取得した最新のバッテリ電圧Vnに、ステップS111で算出した最新の補正電圧Vdを加算したものである。熱線ガラス7がOFFの場合(S113でNO)、補正処理部14は、残量算出用のバッテリ電圧Vn’をリセットし、バッテリ電圧Vn’をステップS101で取得した最新のバッテリ電圧Vnとする。すなわち、バッテリ電圧Vn’を補正バッテリ電圧とした場合、Vn’=Vn+Vdとなり、バッテリ電圧Vn’をリセットした場合、Vn’=Vnとなる。
【0051】
なお、ステップS114において、補正処理部14が補正電圧Vdを取得していない場合は、補正バッテリ電圧=Vnとしてもよいし、補正電圧Vdのデフォルト値(例えば、0.7[V])が設定されているのであれば、補正バッテリ電圧=デフォルト値としてもよい。
【0052】
次いで、補正処理部14は、バッテリ電圧Vn’と0.2C放電電圧Vcとを比較してバッテリ5の残量を算出し、表示部8にバッテリ5の残量を表示させる(S116)。具体的には、補正処理部14は、0.2C放電電圧Vc<バッテリ電圧Vn’の場合(ただし、モータの回生動作の開始~回生動作の停止後1秒間は除く。)、ステップS114またはステップS115で設定したバッテリ電圧Vn’に応じてバッテリ5の残量を算出する。上記以外の場合、補正処理部14は、バッテリ電圧Vn’を0.2C放電電圧Vcとし、0.2C放電電圧Vcに応じてバッテリ5の残量を算出する。なお、記憶部13には、
図7(B)に示すような表示部8の点灯状態とバッテリ電圧Vn’との対応関係を示すデータが格納されているものとする。
【0053】
本実施形態に係るフォークリフト1によれば、熱線ガラス7(およびヒーター)の駆動により降下した電圧(補正電圧Vd)を算出してバッテリ電圧Vnを補正する補正処理を行い、補正処理後のバッテリ電圧Vn’(=Vn+Vd)に対応したバッテリ5の残量を表示部8に表示させるので、正確な(本来の稼働時間を反映させた)な残量表示が可能となる。
【0054】
以上、本発明に係る産業車両の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本発明に係る産業車両は、バッテリを搭載した車両本体と、バッテリの電力で駆動するモータおよび複数の電力駆動装置と、バッテリのバッテリ電圧に対応したバッテリの残量を表示する表示部と、表示部を制御する制御部と、を備える産業車両であって、複数の電力駆動装置は、消費電力が所定の閾値を超える大電力装置を含み、制御部は、大電力装置の駆動および駆動停止を検出する第1検出部と、第1検出部で大電力装置の駆動を検出した場合、大電力装置の駆動により降下した電圧に相当する補正電圧を算出してバッテリ電圧を補正する補正処理を行い、補正処理後のバッテリ電圧に対応した残量を表示部に表示させる補正処理部と、を備えるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0056】
例えば、本発明の大電力装置は、熱線ガラスだけでもよいし、ヒーターだけでもよいし、熱線ガラスやヒーター以外のものでもよい。
【0057】
上記実施形態では、残量表示制御により表示制御部9が自動的にバッテリ電圧を補正していたが、本発明に係る産業車両は、手動制御の機能をさらに備えていてもよい。手動制御の場合、大電力装置の駆動により降下する電圧(降下電圧)を予め測定し、上記降下電圧を制御部に記憶させておき、オペレータが運転席に設けられた手動制御のスイッチをオンさせることで、大電力装置の駆動時に上記降下電圧に基づいてバッテリ電圧が補正される構成でもよい。
【0058】
本発明の産業車両について、上記実施形態ではリーチタイプのバッテリフォークリフトで説明したが、カウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトでもよいし、その他のタイプのバッテリフォークリフトでもよい。また、本発明の産業車両は、フォークリフト以外のものでもよく、例えば、搬送車、建設機械、または農業機械でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 フォークリフト
2 車両本体
3 マスト装置
4 フォーク
5 バッテリ
6 キャビン
7 熱線ガラス
8 表示部
9 表示制御部
10 電圧検出部
11 第1検出部
12 第2検出部
13 記憶部
14 補正処理部