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  • 特許-物品取り出しシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】物品取り出しシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018178721
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020049558
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岳
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】菊地 牧子
【審判官】渋谷 善弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-1009(JP,A)
【文献】特開2014-79824(JP,A)
【文献】特開2007-313624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ積みされた1以上の物品および該物品の周囲に配置される周辺物の3次元画像を取得する3次元画像取得部と、
前記物品を保持可能なツールを先端に備えるロボットと、
前記3次元画像取得部により取得された前記3次元画像に基づいて、前記物品を認識し、認識された前記物品の前記ツールによる取り出し位置を算出する取り出し位置算出部と、
該取り出し位置算出部により算出された前記取り出し位置が、前記周辺物あるいは他の前記物品との関係で取り出し可能か否かを判定する判定部と、
該判定部により取り出し不可能と判定された場合にその旨を報知する報知部と、
前記ロボットおよび前記ツールの3次元モデルを生成する3次元モデル生成部と、
前記3次元画像取得部により取得された前記3次元画像および前記3次元モデル生成部により生成された前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを任意の視点に設定可能に表示する表示部と、
前記ロボットを手動で動作させる操作部とを備え、
前記3次元モデル生成部が、前記操作部による前記ロボットの動作に伴って、前記表示部に表示される前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを前記ロボットの動作に一致させるよう生成する物品取り出しシステム。
【請求項2】
前記操作部による前記ロボットの動作後に、前記3次元画像を更新する請求項1に記載の物品取り出しシステム。
【請求項3】
前記ツールと前記物品との接触を検出する接触検出部を備え、
該接触検出部により接触が検出されたときに、前記3次元画像取得部が前記3次元画像の再取得を行う請求項1または請求項2に記載の物品取り出しシステム。
【請求項4】
前記報知部により報知された際の前記3次元画像と、前記報知された際に前記物品を取り出し可能にするための前記操作部による前記ロボットの動作履歴とを対応づけて記憶したデータベースを構築する請求項1から請求項3のいずれかに記載の物品取り出しシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品取り出しシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の物品がコンテナ内にバラ積み状態で積載されている状態から、センサにより物品を認識して、ロボットの手先に取り付けられたエンドエフェクタにより、認識された物品の取り出しを行う物品取り出しシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の物品取り出しシステムは、検出位置姿勢に近く、かつ、コンテナとエンドエフェクタとが干渉しない位置姿勢を計算して、その姿勢での取り出しを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5144785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において試みる位置姿勢は最適な位置姿勢ではないため、取り出しに失敗することが多いという不都合がある。
本発明は、取り出し不可能と判定された物品の取り出しを可能にする物品取り出しシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、バラ積みされた1以上の物品および該物品の周囲に配置される周辺物の3次元画像を取得する3次元画像取得部と、前記物品を保持可能なツールを先端に備えるロボットと、前記3次元画像取得部により取得された前記3次元画像に基づいて、前記物品を認識し、認識された前記物品の前記ツールによる取り出し位置を算出する取り出し位置算出部と、該取り出し位置算出部により算出された前記取り出し位置が、前記周辺物あるいは他の前記物品との関係で取り出し可能か否かを判定する判定部と、該判定部により取り出し不可能と判定された場合にその旨を報知する報知部と、前記ロボットおよび前記ツールの3次元モデルを生成する3次元モデル生成部と、前記3次元画像取得部により取得された前記3次元画像および前記3次元モデル生成部により生成された前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを任意の視点に設定可能に表示する表示部と、前記ロボットを手動で動作させる操作部とを備え、前記3次元モデル生成部が、前記操作部による前記ロボットの動作に伴って、前記表示部に表示される前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを前記ロボットの動作に一致させるよう生成する物品取り出しシステムである。
【0006】
本態様によれば、3次元画像取得部により、バラ積みされた1以上の物品および周辺物の3次元画像が取得され、取り出し位置算出部により、3次元画像に基づいて物品が認識されかつ取り出し位置が算出される。算出された取り出し位置の情報に基づいてロボットの作動によりツールの姿勢および位置が調整され、ツールによる物品の取り出しが行われる都度に、判定部により取り出し可能か否かが判定される。取り出し可能と判定された場合には、ツールによる取り出しが行われ、取り出し不可能と判定された場合には、報知部によりその旨が報知される。
【0007】
取り出し不可能な旨が報知されることにより、作業者が介入して、取り出し不可能な物品の荷姿を取り出し可能な状態に修正することが可能となる。すなわち、取り出し不可能なままロボットによる作業が終了してしまうことを防止することができる。
【0008】
上記態様においては、前記ロボットおよび前記ツールの3次元モデルを生成する3次元モデル生成部と、前記3次元画像取得部により取得された前記3次元画像および前記3次元モデル生成部により生成された前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを表示する表示部と、前記ロボットを手動で動作させる操作部とを備え、前記3次元モデル生成部が、前記操作部による前記ロボットの動作に伴って、前記表示部に表示される前記ロボットおよび前記ツールの前記3次元モデルを前記ロボットの動作に一致させるよう生成する
【0009】
この構成により、通知を受けた作業者は、表示部に表示された物品および周辺物の3次元画像と、ロボットおよびツールの3次元モデルとを見ながら操作部を操作して、表示部内において、取り出し不可能と判定された物品にツールを近接させる。これにより、現実のロボットも操作部による操作に応じて動作させられて現実の物品にツールを近接させる。そして、表示部内において、ツールを物品に接触させることにより、現実の物品にツールを接触させて物品の荷姿を取り出し可能な状態に修正することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記ツールと前記物品との接触を検出する接触検出部を備え、該接触検出部により接触が検出されたときに、前記3次元画像取得部が前記3次元画像の再取得を行ってもよい。
この構成により、表示部内においてツールを物品に近接させて両者を接触させると、現実のツールと物品とが接触して接触検出部により接触が検出される。この状態で3次元画像取得部が3次元画像を再取得するので、接触により変更された物品の荷姿を、再取得された3次元画像によって確認することができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記報知部により報知された際の前記3次元画像と、前記報知された際に前記物品を取り出し可能にするための前記操作部による前記ロボットの動作履歴とを対応づけて記憶したデータベースを構築してもよい。
この構成により、判定部により取り出し不可能と判定された際の3次元画像と、その際に物品を取り出し可能にするためのロボットの動作履歴とが対応づけられてデータベースが構築される。十分なデータベースが構築された後には、機械学習により、3次元画像を取得するだけで、取り出し不可能な物品を取り出し可能にするロボットの動作を自動生成することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取り出し不可能と判定された物品の取り出しを可能にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る物品取り出しシステムを示す全体構成図である。
図2図1の物品取り出しシステムの画像処理装置を示すブロック図である。
図3図1の物品取り出しシステムの3次元カメラにより取得された3次元画像の一例を示す図である。
図4図3の3次元カメラにより取得された3次元画像にロボットおよびツールの3次元モデルを併せて表示した画像例を示す図である。
図5図1の物品取り出しシステムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る物品取り出しシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る物品取り出しシステム1は、図1に示されるように、コンテナYの上方に下向きに配置され、コンテナY内にバラ積み状態に収容された多数の物品Xおよびコンテナ(周辺物)Yの3次元画像を取得する3次元カメラ(3次元画像取得部)2と、画像処理装置3と、ロボット4と、ロボット4の制御装置5と、制御装置5に備えられた教示操作盤(操作部)6と、モニタ(表示部、報知部)7とを備えている。
【0015】
ロボット4は、例えば、多関節型ロボットであり、先端に物品Xを保持可能なツールSを備えている。ツールSは任意のものでよいが、例えば、物品Xを吸着可能な吸着パッドを備えるハンドである。
【0016】
画像処理装置3は、図2に示されるように、3次元カメラ2により取得された3次元画像を処理して各物品Xを認識し、認識された物品XのツールSによる取り出し位置を算出する取り出し位置算出部8と、取り出し位置算出部8により算出された取り出し位置が、コンテナYあるいは他の物品Xとの関係で取り出し可能か否かを判定する判定部9とを備えている。
画像処理装置3はプロセッサにより構成されている。
【0017】
例えば、図3に示されるように、物品Xが同一形状の円柱部材である場合に、取り出し位置算出部8は、ツールSであるハンドの吸着パッドにより吸着する位置を取り出し位置として、図3に+マークで示すように、物品Xの端面の中心位置を算出する。
判定部9は、1以上の物品Xについて取り出し位置が算出された端面に隣接する空間に、周囲のコンテナYや他の物品X等が近接することによって、ツールSであるハンドを挿入できる十分なスペースが存在するか否かによって、取り出し可能か否かを判定する。
【0018】
例えば、図3に示す例では、斜線を付した物品Xの取り出し位置が算出された端面に隣接する空間には、比較的近い位置にコンテナYが近接しているため、ツールSであるハンドを挿入するための十分なスペースを確保できず、取り出し不可能であると判定される。
画像処理装置3による算出結果および判定結果は、制御装置5に送られる。制御装置5は、取り出し可能と判定された物品Xについて、取り出し位置算出部8により算出された取り出し位置が配置される物品Xの端面に面直にハンドの吸着パッドが近接させられる姿勢にロボット4を制御する。そして、ハンドの吸着パッドによって端面を吸着させ、コンテナY内から物品Xを取り出して、外部に搬送する。
【0019】
取り出し可能と判定された全ての物品Xの取り出しが終了した場合には、3次元カメラ2により3次元画像が再度取得され、新たに取得された3次元画像について、画像処理装置3により取り出し位置の算出、取り出し可能か否かの判定および取り出し可能な物品Xの取り出しが繰り返される。判定の結果、取り出し可能な物品Xが存在せず、取り出し不可能な物品Xが残っている場合には、画像処理装置3は、モニタ7にその旨を表示(報知)する。
【0020】
報知方法は任意でよいが、例えば、取り出し不可能な物品Xが存在することを文字または音声で報知し、あるいは、モニタ7に表示される3次元画像上において、取り出し不可能な物品Xの色を変えて表示すればよい。これにより取り出し不可能な物品Xが存在することを作業者に報知することができる。
【0021】
また、画像処理装置3は、ロボット4およびツールSの3次元モデルを生成する3次元モデル生成部10を備えている。画像処理装置3は、制御装置5に接続され、制御装置5から、現実のロボット4の各軸の角度情報、現実のハンドの動作情報が入力される。3次元モデル生成部10は、図4に示されるように、制御装置5から入力される各軸の角度情報およびハンドの動作情報に基づいて、ロボット4およびツールSの3次元モデルを現実のロボット4およびツールSと同じ位置および姿勢となるように生成してモニタ7に出力する。
【0022】
教示操作盤6は、作業者により操作される。作業者が教示操作盤6を操作することにより、手動でロボット4を動作(ジョグ送り)させることができる。教示操作盤6の操作により現実のロボット4をジョグ送りすると、モニタ7上のロボット4の3次元モデルも同一位置に動作する。
【0023】
作業者は、モニタ7に表示されている物品XおよびコンテナYの3次元画像を見ながらロボット4を動作させ、ツールSの3次元モデルを3次元画像上の取り出し不可能な物品Xに近接させる。そして、ツールSによって物品Xを押し、あるいは吸着パッドによって他の面を吸着して物品Xに力を加えることにより、物品Xを移動させ、取り出し可能な荷姿に変更する。
【0024】
なお、ロボット4、ツールSまたは制御装置5に、ツールSと物品Xとの接触を検出する接触検出部(図示略)を設け、接触が検出された時点で3次元カメラ2により再度、3次元画像を取得することにしてもよい。これにより、ツールSにより力を加えることによって移動した後の物品Xの荷姿をモニタ7上において確認することができる。
接触検出部としては、接触検出用のセンサ、力センサ、あるいは、ロボット4のモータの電流変化の検出によって接触を検出するものを採用すればよい。
【0025】
取り出し不可能と判定された全ての物品Xに対して、上記処理を行った後に、再度取得された3次元画像を用いて、取り出し位置の検出および取り出し可能か否かの判定を行って、取り出し可能な物品Xを取り出すことができる。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る物品取り出しシステム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る物品取り出しシステム1を用いてコンテナY内にバラ積みされた物品Xを取り出すには、まず、図5に示されるように、コンテナYの上方に下向きに配置された3次元カメラ2によってコンテナYおよび全物品Xの3次元画像を取得する(ステップS1)。次いで、画像処理装置3の取り出し位置算出部8により、1以上の物品Xを認識し(ステップS2)、その取り出し位置を算出する(ステップS3)。
【0027】
そして、取り出し位置が算出された一の物品Xについて、判定部9により、取り出し可能か否かの判定が行われ(ステップS4)、取り出し可能である場合には、例えばフラグAが付され(ステップS5)、取り出し不可能である場合には、例えばフラグBが付される(ステップS6)。取り出し位置が算出された全ての物品Xについて判定が終了したか否かが判定され(ステップS7)、終了していない場合には、次の物品XについてステップS4からステップS7の工程が繰り返される(ステップS8)。
【0028】
取り出し位置が算出された全ての物品Xについて判定が終了した場合には、フラグAが付された物品Xが存在するか否かが判定され(ステップS9)、存在する場合には、ロボット4が作動させられて、フラグAが付された物品XについてのコンテナYからの取り出しが行われる(ステップS10)。フラグAが付された全物品Xが取り出されたか否かが判定され(ステップS11)、取り出されていない場合にはステップS10からの工程が繰り返される。
【0029】
フラグAが付された全物品Xが取り出された場合には、ステップS1からの工程が繰り返される。
ステップS9において、フラグAが付された物品Xが存在しない場合には、フラグBが付された物品Xが存在するか否かが判定され(ステップS12)、存在する場合には、モニタ7にその旨が報知される(ステップS13)。フラグBを付した物品Xが存在しない場合には、処理は終了する。
【0030】
このように、本実施形態に係る物品取り出しシステム1によれば、取り出し不可能な物品Xが存在する場合に、その旨がモニタ7に報知されるので、取り出し不可能な物品Xが取り出されないまま処理が終了してしまうことを防止することができる。
また、取り出し不可能な物品Xがある場合に、作業者が教示操作盤6を操作して、ロボット4を動作させ、モニタ7に表示された3次元画像とロボット4の3次元モデルとにより干渉を確認しながら、取り出し不可能な物品Xの荷姿を取り出し可能に変更することができる。
【0031】
なお、本実施形態によれば、報知部としてモニタ7を例示したが、これに限定されるものではなく、音声、光、振動等任意の報知方法によって報知してもよい。
また、本実施形態においては、物品Xを検出するための3次元カメラ2により取得された3次元画像をロボット4の3次元モデルとともにモニタ7に表示することとしたが、これに代えて、3次元画像に対して任意の視点を設定して、モニタ7またはVRゴーグルにロボット4の3次元モデルとともに表示してもよい。3次元カメラ2は検出用のものとは別の専用のものを用いてもよいし、他方向から撮影することにより取得された複数の2次元画像を合成して3次元画像情報を得てもよい。
【0032】
また、手首先端に2次元カメラを搭載しておき、接触検出部により接触が検出された場合に、2次元カメラにより取得された2次元画像をリアルタイム表示することにしてもよい。
【0033】
また、報知部であるモニタ7により取り出し不可能な物品Xが存在する旨が報知されたときに、取り出し不可能な物品Xを含む3次元画像と、その後に作業者により実施されたロボット4をジョグ送りすることによる物品Xの荷姿の変更処理におけるロボット4およびツールSの動作履歴とを対応づけて記憶したデータベースを構築することにしてもよい。
これにより、取り出し不可能な物品Xを含む3次元画像が与えられたときに、例えば、機械学習により、取り出し可能な荷姿に変更するためのロボット4の動作を発生させることが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 物品取り出しシステム
2 3次元カメラ(3次元画像取得部)
4 ロボット
6 教示操作盤(操作部)
7 モニタ(表示部、報知部)
8 取り出し位置算出部
9 判定部
10 3次元モデル生成部
S ツール
X 物品
Y コンテナ(周辺物)
図1
図2
図3
図4
図5