(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240709BHJP
F16H 59/12 20060101ALI20240709BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240709BHJP
B60K 26/04 20060101ALI20240709BHJP
G05G 1/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60L15/20 J
F16H59/12
B60L9/18 J
B60K26/04
G05G1/02 A
(21)【出願番号】P 2019100528
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 悠
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-322110(JP,A)
【文献】特開2013-184669(JP,A)
【文献】特開2018-046733(JP,A)
【文献】特開2010-120597(JP,A)
【文献】特開2018-143023(JP,A)
【文献】実開昭60-134030(JP,U)
【文献】特開2018-057145(JP,A)
【文献】特開平06-296307(JP,A)
【文献】特開2015-194213(JP,A)
【文献】特開2014-064620(JP,A)
【文献】特開2018-020621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B62K 1/00 - 11/14
F16H 59/12
B60K 25/00 - 28/16
G05G 1/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源である電動モータと、
制御装置と、
運転者によって押し操作される
前進スイッチ及び後進スイッチと、
運転者によって操作される
モータ駆動スイッチ及びアクセルと
を有し、
前記制御装置は、車両の前進駆動を許容する前進モードと、車両の後進駆動を許容する後進モードとを有し、
前記制御装置は、
前記後進スイッチに対して押し操作がなされておらず、且つ前記前進スイッチに対して押し操作がされたときに前記前進モードを選択し、前記
後進スイッチに対して押し操作が維持されている期間において前記後進モードを選択し、
前記制御装置は、
前記前進モードが選択されており、且つ前記アクセルに対して操作がなされた場合には車両を前進駆動させ、前記後進モードが選択されており、且つ前記
モータ駆動スイッチに対して操作がなされた場合に
は車両を後進駆動
させ、
前記制御装置は、
前記前進スイッチに対する押し操作が解除された後も、前記前進モードの選択を維持し、前記
後進スイッチに対する押し操作が
解除された場合に
は、前記後進モードの選択を自動的に解除する
電動車両。
【請求項2】
車両の駆動源である電動モータと、
制御装置と、
運転者によって操作される第1操作部材と、
運転者によって操作される第2操作部材と
を有し、
前記制御装置は、車両の前進駆動を許容する前進モードと、車両の後進駆動を許容する後進モードとを有し、
前記制御装置は、前記第1操作部材に対する操作と前記第2操作部材に対する操作とが所定時間以上にわたって継続したときに、前記後進モードを選択し
て車両を待機させ、
前記制御装置は、前記後進モードが選択されており、且つ
前記第1操作部材及び前記第2操作部材に対する操作が解消された後で前記第2操作部材に対して操作がなされた場合に車両を後進駆動
させ、
前記制御装置は、車両の後進駆動の後、前記第2操作部材に対す
る操作がなくなった場合に、前記後進モードの選択を自動的に解除する
電動車両。
【請求項3】
前記後進モードの選択は、車速が閾値より低い場合に許容される
請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記制御装置は、車両の前進駆動と後進駆動の双方が許容されないスタンバイモードをさらに有し、
前記制御装置は、前記後進モードの選択を解除したときに、前記スタンバイモードに移行する
請求項1乃至3のいずれかに記載の電動車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記前進モードにおいては前記電動モータを第1の方向に駆動
させ、前記後進モードにおいては前記電動モータを前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に駆動
させる
請求項1乃至4のいずれかに記載の電動車両。
【請求項6】
前記モータ駆動スイッチは、運転者によって押し操作されるスイッチであり、
前記制御装置は、前記後進モードにおける前記モータ駆動スイッチに対する押し操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行する
請求項1に記載の電動車両。
【請求項7】
前記後進スイッチと前記モータ駆動スイッチは、離れて配置されている
請求項1に記載の電動車両。
【請求項8】
前記後進スイッチは、ステアリングバーの右部又は左部の一方に設けられ、
前記モータ駆動スイッチは、ステアリングバーの右部又は左部の他方に設けられている
請求項7に記載の電動車両。
【請求項9】
前記第2操作部材は、運転者によって押し操作されるスイッチであり、
前記制御装置は、前記後進モードにおける前記第2操作部材に対する押し操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行する
請求項
2に記載の電動車両。
【請求項10】
前記第1操作部材と前記第2操作部材は、離れて配置されている
請求項
2に記載の電動車両。
【請求項11】
前記第1操作部材は、ステアリングバーの右部又は左部の一方に設けられ、
前記第2操作部材は、ステアリングバーの右部又は左部の他方に設けられている
請求項
10に記載の電動車両。
【請求項12】
前記第1操作部材は、ブレーキレバーである
請求項2に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は後進駆動が可能な電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、後進駆動を許容する後進モードを有する車両が開示されている。
【0003】
特許文献1の車両では、後進スイッチを所定時間にわたって押すことによって、運転モードが後進モードに設定される。後進モードの最中に、後進スイッチが押されると後進駆動が実行され、アクセルグリップが操作されると前進駆動が実行される。前進駆動の結果、前方への車速が閾値を超えると、後進モードが自動的に解除される。
【0004】
特許文献2の車両では、シフトアップスイッチとシフトダウンスイッチとが同時に押されると、運転モードが後進モード(文献2において「リバースモード」)に設定される。後進モードの最中に、シフトダウンスイッチが操作されると前進駆動が実行され、シフトアップスイッチが操作されると後進駆動が実行される。後進モードの最中に、シフトアップスイッチとシフトダウンスイッチとが再び同時に押されると、運転モードが通常モードに戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-120597号公報
【文献】特開2015-194213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2で設定されているモード変更条件によると、後進モードの最中に運転者が何も操作しない状態がしばらく続いとき、運転者は現在の運転モードが後進モードにあるのか否かを迷う可能性がある。そこで、本開示の目的の一つは、後進駆動の後に電動車両が未だ後進モードにあるのか否かについて、運転者が迷うことを防ぐことにある。
【0007】
また、本開示の別の目的は、車両の後進駆動における車体の姿勢安定性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示で提案する電動車両の一例は、車両の駆動源である電動モータと、制御装置と、運転者によって操作される第1操作部材と、運転者によって操作される第2操作部材とを有している。前記制御装置は、車両の前進駆動を許容する前進モードと、車両の後進駆動を許容する後進モードとを有している。前記制御装置は、前記第1操作部材と前記第2操作部材とに対して所定の操作がなされた場合に、前記後進モードを選択して車両を後進駆動する。前記制御装置は、車両の後進駆動の後、前記第1操作部材と第2操作部材とに対する操作がなくなった場合に、前記後進モードの選択を自動的に解除する。この電動車両によると、後進駆動の後に、電動車両が未だ後進モードにあるのか否かについて運転者が迷うことを防ぐことができる。
【0009】
(2)(1)の電動車両において、前記後進モードの選択は、車速が閾値より低い場合に許容されてよい。これによると、車速が十分に下がった後に後進モードが選択され得る。
【0010】
(3)(1)又は(2)の電動車両において、前記制御装置は、車両の前進駆動と後進駆動の双方が許容されないスタンバイモードをさらに有してよい。前記制御装置は、前記後進モードの選択を解除したときに、前記スタンバイモードに移行してよい。これによると、後進モードが終了した後に、車両が急に前進することを防ぐことができる。
【0011】
(4)(1)乃至(3)のいずれかの電動車両において、前記制御装置は、前記前進モードにおいては前記電動モータを第1の方向に駆動し、前記後進モードにおいては前記電動モータを前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に駆動してよい。これによると、1つの電動モータで前進駆動と後進駆動とが実現できるので、車両の部品数を低減できる。
【0012】
(5)(1)乃至(4)のいずれかの電動車両において、前記制御装置は、前記第1操作部材に対する操作が維持されている期間において前記後進モードを選択してよい。これによると、後進モードが選択されている期間を運転者が容易に把握できるようになる。
【0013】
(6)(5)の電動車両において、前記制御装置は、前記後進モードにおける前記第2操作部材に対する操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行してよい。これによると、車両の後進駆動がなされる期間を運転者が容易に把握でき、車両の微妙な位置調整が運転者にとって容易となる。
【0014】
(7)(1)乃至(6)のいずれかの電動車両において、前記第1操作部材と前記第2操作部材は、離れて配置されてよい。これによると、車両の後進駆動の最中に、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0015】
(8)(7)の電動車両において、前記第1操作部材は、ステアリングバーの右部又は左部の一方に設けられてよい。前記第2操作部材は、前記ステアリングバーの右部又は左部の他方に設けられてよい。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバーの右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0016】
(9)(1)乃至(8)のいずれかの電動車両において、前記制御装置は、前記第1操作部材に対して操作がなされた場合に前記後進モードを選択してよい。前記後進モードにおいて前記第2操作部材に対して操作がなされた場合に車両の後進駆動を実行してよい。前記第1操作部材は、ステアリングバーの左部に設けられ、前記第2操作部材は、前記ステアリングバーの右部に設けられてよい。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバーの右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0017】
(10)(1)乃至(9)のいずれかの電動車両において、前記制御装置は、前記第1操作部材に対する操作と前記第2操作部材に対する操作とが所定時間以上にわたって継続したときに、前記後進モードを選択してよい。これによると、後進駆動に係る電動車両の操作性が確保され得る。
【0018】
(11)(10)の電動車両において、前記制御装置は、前記後進モードにおける前記第2操作部材に対する操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行してよい。
【0019】
(12)(10)の電動車両において、前記第1操作部材は、ブレーキレバーであってよい。これによると、車両の部品数の増加を抑えることができる。
【0020】
(13)本開示で提案する電動車両の他の例は、車両の駆動源である電動モータと、制御装置と、ステアリングバーの右部又は左部の一方に設けられている第1操作部材と、ステアリングバーの右部又は左部の他方に設けられている第2操作部材と、を有している。前記制御装置は、少なくとも前記第1操作部材が操作されている状態で少なくとも前記第2操作部材の操作を受けたときに、車両の後進駆動を開始する。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバーの右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0021】
(14)(13)の電動車両において、前記制御装置は、前記第1操作部材が操作されている状態で前記第2操作部材に対する操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行してよい。これによると、車両の後進駆動の微調整が可能となる。例えば第1操作部材を操作しながら第2操作部材を断続的に操作することによって、車両の後進駆動を断続的に行うことができる。その結果、車両の微妙な位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示で提案する電動車両の一例である電動二輪車を示す側面図である。
【
図2】電動二輪車のステアリングバーの平面図である。
【
図3】電動二輪車の構成要素を示すブロック図である。
【
図6】後進スイッチが押されたときに制御装置が実行する処理を示すフロー図である。
【
図7】前進スイッチが押されたときに制御装置が実行する処理を示すフロー図である。
【
図8】電動二輪車の他の例の構成要素を示すブロック図である。
【
図9】
図8で示す電動二輪車が有する制御装置のモード遷移を示す図である。
【
図10】
図8で示す電動二輪車において、ブレーキレバーが操作され且つ後進スイッチがオンされたときに制御装置が実行する処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態による電動車両について説明する。本開示では、電動車両の一例として、電動二輪車1について説明する。本開示は、電動四輪車や、電動三輪車、電動の雪上車などに適用されてもよい。
【0024】
[車両の全体構成]
図1に示すように、電動二輪車1は駆動輪である後輪5と、後輪5を駆動する電動モータ6とを有している。電動モータ6のトルク(回転)は、減速機構(不図示)や、伝達部材(例えば、チェーンやベルト、シャフトなど)などを介して後輪5に伝えられる。電動二輪車1は電動モータ6に供給する電力を蓄えるバッテリ8を有している。バッテリ8は車体に対して脱着可能に構成されていてもよい。電動二輪車1の例では、バッテリ8は車体の中央部に配置され、電動モータ6はバッテリ8の下方に配置されている。バッテリ8はバッテリケース9に収容されている。バッテリ8や電動モータ6のレイアウトは、
図1に示す例に限られず、適宜変更されてよい。
【0025】
図1に示すように、電動二輪車1はその前部にフロントフォーク3と、フロントフォーク3に下端で支持されている前輪2とを有している。フロントフォーク3は、車体フレーム7の最前部で支持されているステアリングシャフトを中心として回転可能である。電動二輪車1は、その後部に、運転者が跨がることのできるシート13を有している。
【0026】
フロントフォーク3の上端にはステアリングバー40が固定されている。
図2で示すように、ステアリングバー40の中央部に表示装置50が設けられている。ステアリングバー40の右部には、アクセルグリップ31と、右スイッチユニット40Rと、ブレーキレバー45とが設けられている。ステアリングバー40の左部には、ブレーキレバー44と、左スイッチユニット40Lとが設けられている。ブレーキレバー44・45のうち一方は前輪2用のブレーキ装置に接続され、ブレーキレバー44・45のうち他方は後輪5用のブレーキ装置に接続される。スイッチユニット40R・40Lには、運転者が走行モードを選択するためのスイッチ(後述する前進スイッチ41及び後進スイッチ42)や、ヘッドライトのオン/オフを切り換えるためのスイッチ(不図示)などを含む複数のスイッチが設けられている。
【0027】
図2で示すように、電動二輪車1の例において、表示装置50は、現在の動作モードに応じて点灯するモードインジケータ51を有している。後述するように、電動二輪車1は、その動作モードとして、前進駆動が許容される前進モードと、後進駆動が許容される後進モードと、前進モードと後進モードの双方が規制されているスタンバイモードとを有している。モードインジケータ51は、例えば現在の動作モードが後進モードであるときに、予め設定された形態で点灯し、運転者にその旨を通知する。モードインジケータ51は、例えばLED(Light Emitting Diode)によって構成される。
図2の例において、モードインジケータ51は左右方向で細長い形状であるが、その形状は適宜変更されてよい。電動二輪車1は、モードインジケータ51に代えて、或いは、モードインジケータ51とともに、後進モードにおいて音を発するスピーカーを有してもよい。
【0028】
図2で示すように、表示装置50は、車速を表示する車速領域52aと、バッテリ8の残量を表示するバッテリ残量領域52bと、現在の動作モードを示すモード案内領域52cとを有している。表示装置50は、数字や、文字、記号を表示可能な表示パネル52(例えば、液晶表示装置)を有している。各領域52a・52b・52cは、例えば、表示パネル52に規定された領域である。モード案内領域52cは、現在の動作モード(上述した前進モード又は後進モード)を表示する。電動二輪車1は、前進モードのなかに複数のモードを有してもよい。例えば、電動モータ6が出力するトルクの大きさが異なる3つのモード(エコモード・スタンダードモード・パワーモード)を、電動二輪車1は有してもよい。この場合、モード案内領域52cでは、後進モードだけでなく、これら3つのモードが表示されてもよい。
【0029】
[制御装置、スイッチ、及びセンサ]
図3で示すように、電動二輪車1は制御装置20とモータ駆動装置11とを有している。モータ駆動装置11はインバータを有し、バッテリ8から受ける電力を利用して、制御装置20から受ける指令値(電流指令値)に応じた電力を電動モータ6に供給する。制御装置20はCPU(Central Processing Unit)や、記憶装置22などを有している。制御装置20は、それぞれがCPUや記憶装置22などを含み、互いに通信可能な複数の制御装置によって構成されてもよい。制御装置の機能の一部はFPGA(Field Programmable Gate Array)によって実現されてもよい。制御装置20は電動モータ6を制御する。制御装置20は電動モータ6の駆動により、電動二輪車1の前進と後進とを実現する。運転者は、例えば駐車スペースにおいて、電動二輪車1の後進を利用することによって電動二輪車1の位置を微妙に調整できる。制御装置20は、前進モードにおいて電動モータ6を順方向に駆動し、後進モードにおいて電動モータ6を逆方向に駆動する。このように1つの電動モータ6によって前進駆動と後進駆動の双方が実現されるので、車両の部品数が低減され得る。
【0030】
制御装置20は表示装置50と接続されており、表示装置50で表示する情報を表示装置50に送信する。上述したように、表示装置50は、モードインジケータ51や、車速領域52a、モード案内領域52c、バッテリ残量領域52bなどを有している。したがって、制御装置20は、後述する車速センサ15(
図3参照)で検知した車速や、現在の動作モードを表示装置50に送信する。また、制御装置20は、バッテリ8が内蔵するコントローラからバッテリ8の残量情報を受け、これを表示装置50に送信する。
【0031】
図3で示すように、電動二輪車1は、前進スイッチ(スタートスイッチ)41と、後進スイッチ42と、モータ駆動スイッチ43と、車速センサ15と、アクセル操作センサ31aと、サイドスタンドスイッチ14aと、右ブレーキレバースイッチ45aと、左ブレーキレバースイッチ44aと、を有している。制御装置20は、これらのセンサ及びスイッチが出力する信号を受け、この信号に基づいてモード変更の成否を判断する。
【0032】
後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、例えばステアリングバー40(
図2参照)に設けられるボタンであり、ボタン操作(押し操作と、押しの解除)に応じた信号を制御装置20に入力する。例えば、各スイッチ42・43を押すとオン信号が出力され、各スイッチ42・43の押しを解除すると、オフ信号が出力される。後において説明するように、制御装置20は、この2つのスイッチ42・43の操作に起因して、電動二輪車1を後進駆動させる。また、後において詳説するように、この2つのスイッチ42・43は左右方向において大きく離れて配置されている。
【0033】
前進スイッチ41も、例えばステアリングバー40(
図2参照)に設けられるボタンであり、ボタン操作(押し操作と、押しの解除)に応じた信号を出力する。例えば、前進スイッチ41を押すとオン信号が出力され、前進スイッチ41の押しを解除すると、オフ信号が出力される。前進スイッチ41は、例えば右側のスイッチユニット40R(
図2参照)に設けられるが、左側のスイッチユニット40Lに設けられてもよい。
【0034】
車速センサ15は車速に応じた信号(例えば、前輪2の回転速度に応じた信号)を出力し、制御装置20はこの信号を利用して車速を算出する。
【0035】
アクセル操作センサ31aはアクセルグリップ31に設けられ、アクセルグリップ31の操作量(アクセルグリップ31の回転位置)に応じた信号を出力する(以下では、アクセルグリップ31の操作量を「アクセル操作量」と称する)。
【0036】
右ブレーキレバースイッチ45aは、右ブレーキレバー45の操作に応じた信号(例えば、オン信号とオフ信号)を出力し、左ブレーキレバースイッチ44aは、左ブレーキレバー44の操作に応じた信号(例えば、オン信号とオフ信号)を出力する。ブレーキレバースイッチ44a・45aは、ブレーキレバー44・45に設けられてもよいし、ブレーキ装置に設けられてもよい。
【0037】
電動二輪車1は、電動二輪車1を立った状態で支持するためのサイドスタンド14(
図1参照)を有している。サイドスタンドスイッチ14aは、サイドスタンド14の位置(地面で立った位置、地面から離れた位置)に応じた信号を出力する。
【0038】
[制御装置の処理]
図4で示すように、制御装置20は、その機能として、モード選択部21Aと、モータ制御部21Bと、表示制御部21Cを有している。モータ制御部21Bは、前進駆動制御部21cと、後進駆動制御部21dとを有している。これらの機能は、記憶装置22に記録されているプログラムを実行するCPUや、FPGAによって実現される。
【0039】
図5で示すように、制御装置20は、その動作モードとして、前進モードと、後進モードと、スタンバイモードとを有している。モード選択部21Aは、上述したセンサやスイッチの信号に基づいて、3つのモードの中から現在のモードを選択する。上述したように、前進モードは車両の前進駆動が許容されるモードであり、後進モードは車両の後進駆動が許容されるモードである。スタンバイモードでは、車両の前進駆動と後進駆動の双方が規制される。したがって、スタンバイモードにおいてアクセルグリップ31が操作されても、制御装置20はその操作に応じた指令値をモータ駆動装置11に出力しない。また、スタンバイモードにおいてモータ駆動スイッチ43に対して押し操作がなされても、制御装置20はその操作に応じた指令値をモータ駆動装置11に出力しない。
【0040】
[前進モード]
車両の電源スイッチ(不図示)がオンされた直後は、モード選択部21Aはスタンバイモードを選択する。
図5で示すように、スタンバイモードにおいて前進スイッチ41に対してオン操作(すなわち、押し操作)が加えられると、モード選択部21Aは、前進モードを選択する。モード選択部21Aは、前進スイッチ41に対する押しが解除された後も、前進モードを維持する。
【0041】
スタンバイモードから前進モードへの移行には、(i)「前進スイッチ41がオンされる」に加えて、以下の(ii)~(iv)のうちの1又は複数が条件とされてもよい。すなわち、(i)が満たされ、且つ、(ii)~(iv)のうちの1又は複数が満たされた場合にだけ、モード選択部21Aは前進モードを選択してもよい。
(ii)車速が閾値以下である。(閾値は、例えば0km/hに近い値である。)
(iii)アクセル操作量が閾値以下である。(閾値は、例えば0%に近い値である。)
(iv)ブレーキレバー44・45の少なくとも一方が操作されている。
【0042】
モード選択部21Aは、予め設定された前進モードの終了条件が満たされた時に、前進モードの選択を解除する。例えば、サイドスタンド14が立てられたときに、モード選択部21Aは前進モードを終了し、スタンバイモードを選択する。
【0043】
前進駆動制御部21cは、前進モードにおいて電動モータ6を制御する。具体的には、前進駆動制御部21cは、車速センサ15とアクセル操作センサ31aとを通してそれぞれ検知される車速とアクセル操作量とに基づいて、電動モータ6を制御する。記憶装置22に、電動モータ6に供給するべき電力(指令値)をアクセル操作量と車速とに対応づけるマップが予め格納される。前進駆動制御部21cは、このマップを参照し、センサ15・31aで検知した車速とアクセル操作量とに対応する指令値をモータ駆動装置11に出力する。
【0044】
[後進モード]
図5で示すように、前進モードとスタンバイモードのいずれかにおいて後進スイッチ42に対してオン操作(すなわち、押し操作)が加えられると、モード選択部21Aは後進モードを選択する。電動二輪車1の例では、後進スイッチ42に対する押し操作が維持されている期間においてのみ、モード選択部21Aは後進モードを選択する。すなわち、後進スイッチ42に対する押し操作が加えられると同時に後進モードが開始する。後進スイッチ42に対する押しが解除されると同時に、後進モードの選択が解除される。このような処理によると、後進モードが選択されている期間を、運転者が容易に把握できるようになる。
【0045】
後述するモータ駆動スイッチ43に対する押し操作が解除された場合でも、後進スイッチ42に対する押し操作が維持されている限り、モード選択部21Aは後進モードを維持する。そのため、例えば、後進スイッチ42に押し操作を加えながらモータ駆動スイッチ43を断続的に操作することによって、後進駆動を断続的に行うことができる。その結果、例えば駐車スペースにおいて、電動二輪車1の微妙な位置調整を行うことができる。
【0046】
電動二輪車1の例においては、モード選択部21Aは、後進モードの選択を解除すると、前進モードではなく、スタンバイモードを選択する。これによると、後進モードが終了した後に、車両が急に前進することを防ぐことができる。例えば、運転者が意図せずアクセルグリップ31を回転させた状態で後進スイッチ42に対する押しを解除した瞬間に車両が前進駆動を開始することを、防ぐことができる。
【0047】
なお、他のモード(前進モードとスタンバイモード)から後進モードへの移行には、(v)「後進スイッチ42に押し操作が加えられている」に加えて、以下の(vi)~(vii)のうちの1又は複数が条件とされてもよい。すなわち、(v)が満たされ、且つ、(vi)~(viii)のうちの1又は複数が満たされた場合にだけ、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい。
(vi)車速が閾値以下である。(閾値は、例えば0km/hに近い値である。)
(vii)アクセル操作量が閾値以下である。(閾値は、例えば0%に近い値である。)
(viii)サイドスタンド14が立てられていない。
このように、アクセル操作量や車速についての条件が設定されることによって、制御装置20は車速や電動モータ6のトルクが十分に下がった後に、後進モードを選択することとなる。
【0048】
後進モードにおいてモータ駆動スイッチ43に対してオン操作(押し操作)が加えられると、後進駆動制御部21dは電動モータ6を駆動させて、電動二輪車1の後進駆動を実行する。電動二輪車1の例では、後進モード(すなわち、後進スイッチ42に対して押し操作が加えられている状態)においてモータ駆動スイッチ43に対する押し操作が維持されている期間においてのみ、後進駆動制御部21dは電動二輪車1の後進駆動を実行する。したがって、後進モードにおいて、モータ駆動スイッチ43に対する押し操作が加えられると同時に、電動二輪車1の後進駆動が開始する。また、モータ駆動スイッチ43に対する押しが解除されると同時に、電動二輪車1の後進駆動が停止する。これによると、車両の後進駆動が実行される期間を運転者が容易に把握でき、車両の微妙な位置調整が運転者にとって容易となる。なお、モータ駆動スイッチ43に対する押し操作が維持されているものの、後進スイッチ42に対する押し操作が解除された場合、制御装置20は後進モードの選択を解除し、電動二輪車1の後進駆動を終了する。
【0049】
後進駆動の停止には、(x)「モータ駆動スイッチ43の押しが解除された」だけでなく、(xi)「後方への車速が閾値を超えた。」が条件とされてもよい(ここで閾値は、例えば0.5~3km/hである。)。すなわち、(x)と(xi)のうちのいずれか一方が満たされた場合に、後進駆動制御部21dは後進駆動を停止してもよい。
【0050】
後進駆動制御部21dは、前進駆動制御部21cとは反対方向に電動モータ6を回転させることによって、電動二輪車1を後進させる。後進駆動制御部21dは、電動モータ6のトルクが一定になるように制御してよい。例えば、後進駆動制御部21dは、モータ駆動装置11から電動モータ6に供給する電力の指令値として予め決められた値をモータ駆動装置11に出力してもよい。これとは異なり、後進駆動制御部21dは、車速が一定になるように、車速センサ15で検知する車速に基づいて電動モータ6を制御してもよい。後進駆動制御部21dの制御は、ここで説明する例に限られない。例えば、後進モードにおいて電動モータ6が出力するトルクは、一定でなくてもよい。例えば、後進駆動制御部21dは、モータ駆動スイッチ43の押し操作の開始からの経過時間に応じて、電動モータ6が出力するトルクを漸減させてもよい。
【0051】
このように、2つのスイッチ42・43に対して所定の操作(押し操作)が加えられたときに、制御装置20は後進モードを選択し、電動二輪車1を後進駆動する。すなわち、後進駆動のためには、2つのスイッチ42・43の操作が求められる。そのため、運転者が意図しない後進駆動を防ぐことができる。また、後進駆動の後、スイッチ42・43に対する操作(押し操作、より詳細には後進スイッチ42の操作)がなくなったときには、後進モードの選択が自動的に解除される。このため、電動二輪車1が未だ後進モードにあるのか否かについて運転者が迷うことを防ぐことができる。ここで「後進モードの選択が自動的に解除される」とは、いずれかのスイッチに対するオン操作(例えば、押し操作)がなくても、制御装置20が後進モードの選択を解除するという意味である。
【0052】
なお、モード選択部21Aと後進駆動制御部21dの処理は、ここで説明する例に限られない。例えば、後進駆動制御部21dは、モータ駆動スイッチ43が押された時点から所定時間に亘って後進駆動を継続し、所定時間が経過したときに後進駆動を停止してもよい。この場合、運転者はモータ駆動スイッチ43を連続的に押すことで、所定時間を超えて後進駆動を継続できる。また、モード選択部21Aは、後進スイッチ42ではなく、他の1又は複数の操作部材が操作されているときに、後進モードを選択してもよい。
【0053】
後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、例えば、モーメンタリ式のスイッチである。すなわち、各スイッチ42・43は、それらの可動部を初期位置に向けて付勢する弾性部材を有している。運転者が弾性部材の力に抗して可動部を押している間、スイッチ42・43はオン状態となる。運転者が可動部から指を放すと、可動部が弾性部材の力により初期位置に戻り、スイッチ42・43はオフ状態となる。スイッチ42・43の可動部は、例えば、スイッチ42・43が設けられる面に対して垂直な方向に押すことのできるボタンである。これとは異なり、可動部は、スイッチ42・43が設けられる面と平行な方向にスライド可能であってもよい。さらに他の例として、後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、表示装置の画面に表示されるボタンであってもよい。
【0054】
後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、左右方向で離れて配置されるのが望ましい。こうすることで、後進駆動の最中に、互いに離れた2つの位置を運転者が支持することとなるので、車体の姿勢安定性が向上され得る。電動二輪車1の例において、後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、左右方向におけるステアリングバー40の中心を挟んで、互いに反対側に配置されている。後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43との間に、表示装置50が位置している。こうすることで、運転者がステアリングバー40の右部と左部とを支持することとなるので、車体の姿勢安定性が向上され得る。電動二輪車1の例では、
図2で示すように、後進スイッチ42はステアリングバー40の左部(具体的には、左スイッチユニット40L)に設けられ、モータ駆動スイッチ43はステアリングバー40の右部(具体的には、右スイッチユニット40R)に設けられる。電動二輪車1の例とは反対に、後進スイッチ42がステアリングバー40の右部に設けられ、モータ駆動スイッチ43がステアリングバー40の左部に設けられてもよい。
【0055】
[表示制御]
表示制御部21Cは、現在選択されているモードを表示装置50で表示する。
図2で示すように、表示装置50は、例えばモード案内領域52cとモードインジケータ51とを有している。後進モードが選択されているとき、表示制御部21Cは、予め設定された形態(例えば、警告色である赤)でモードインジケータ51を点灯させ、「後進」を表すマークをモード案内領域52cに表示する。前進モード或いはスタンバイモードが選択されているとき、表示制御部21Cはモードインジケータ51を消灯したり、或いは、後進モードとは異なる形態でモードインジケータ51を点灯させる。また、前進モードが選択されているとき、表示制御部21Cは、例えば、「前進」を表すマークをモード案内領域52cに表示する。上述したように前進モードが複数のモード(例えば、エコモード、スタンダードモード、パワーモード)を有している場合、表示制御部21Cはそのモードを表すマークをモード案内領域52cに表示してもよい。
【0056】
[処理の流れ]
図6は後進モードにおける処理の例を示すフロー図である。同図に示す処理は後進スイッチ42が押されたときに開始する。
【0057】
後進スイッチ42にオン操作(押し操作)が加えられると、車速が0km/hに近い閾値より小さいか否かをモード選択部21Aが判断する(S101)。ここで、車速が閾値以上である場合、制御装置20は
図6で示す処理を終了する。S101において車速が閾値より小さい場合、モード選択部21Aは後進モードを選択する(S102)。このとき、表示制御部21Cは、後進モードが選択されたことを表示装置50(具体的には、モードインジケータ51とモード案内領域52c)で表示する。次に、後進駆動制御部21dはモータ駆動スイッチ43にオン操作(押し操作)が加えられているか否か判断する(S103)。モータ駆動スイッチ43にオン操作が加えられた時には、後進駆動制御部21dは電動モータ6を逆方向に回転させて、電動二輪車1の後進駆動を実行する(S104)。そして、モード選択部21Aは、後進スイッチ42に依然としてオン操作が加えられているか否かを判断する(S105)。後進スイッチ42に依然としてオン操作が加えられている場合、制御装置20はS103に戻り、再び以降の処理を実行する。S103においてモータ駆動スイッチ43にオン操作が加えられていない場合、後進駆動制御部21dによる電動モータ6の駆動が実行されることなく、モード選択部21Aは、後進スイッチ42にオン操作が加えられているか否かを判断する(S105)。S105において後進スイッチ42のオン操作が解除されているとき、モード選択部21Aは後進モードの選択を解除し、スタンバイモードを選択する(S106)。このとき、表示制御部21Cは、スタンバイモードが選択されたことを表示装置50で表示する。そして、制御装置20は処理を終了する。
【0058】
図7は前進モードにおける処理の例を示すフロー図である。同図に示す処理は前進スイッチ41が押されたときに開始する。
【0059】
前進スイッチ41にオン操作(押し操作)が加えられると、モード選択部21Aは現在のモードがスタンバイモードであるか否かを判断する(S201)。S201において現在のモードがスタンバイモードではない場合、制御装置20は処理を終了する。S201において現在のモードがスタンバイモードである場合、モード選択部21Aは前進モードを選択し、記憶装置22に記録されている前進モードフラグをオンに設定する(S202)。このとき、表示制御部21Cは、前進モードが選択されたことを表示装置50(具体的には、モードインジケータ51及びモード案内領域52c)で表示する。次に、前進駆動制御部21cは通常の走行制御を行う。すなわち、前進駆動制御部21cは車速センサ15とアクセル操作センサ31aとを通してそれぞれ検知される車速とアクセル操作量とに基づいて、電動モータ6を制御する(S203)。そして、モード選択部21Aは、前進モードの終了条件が満たされたか否かを判断する(S204)。例えば、モード選択部21Aは、サイドスタンドスイッチ14aの出力に基づいてサイドスタンド14が立てられたか否か、及び、後進スイッチ42にオン操作が加えられたか否かを判断する。S204において前進モードの終了条件が満たされた場合、モード選択部21Aは前進モードの選択を解除し、記憶装置22に記録されている前進モードフラグをオフに設定し(S205)、制御装置20は前進モードに係る処理を終了する。S204において前進モードの終了条件が満たされていない場合、モード選択部21Aは前進モードを維持し、前進駆動制御部21cは通常の走行制御を継続する(S203)。
【0060】
[他の例]
図8は本開示で提案する電動車両の変形例による電動二輪車の構成を示すブロック図である。
図9は、この変形例におけるモード遷移を表す図である。これらの図において、
図3等で示した要素(部品及び装置)と同じ要素について、同一符号を付している。以下では、
図3等で示した例とは異なる点を中心として説明する。説明のない事項は
図3等で示した例と同じであってよい。
【0061】
図8で示すように、ここで示す例の電動二輪車は、上述した後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43に代えて、1つの後進スイッチ142を有している。後進スイッチ142は、例えば、ステアリングバー40の左部(具体的には、左のスイッチユニット40L)に設けられるが、ステアリングバー40の右部(具体的には、右のスイッチユニット40R)に設けられてもよい。後進スイッチ142は、上述した後進スイッチ42と同様、モーメンタリ式のスイッチである。
【0062】
図9で示すように、前進モードとスタンバイモードのいずれかのモードにおいて、後進スイッチ142がオン操作(押し操作)を受けている状態(後進スイッチ142のオン状態)と、左のブレーキレバー44が握られている状態(ブレーキレバースイッチ44aのオン状態)とが所定時間に亘って継続すると、モード選択部21A(
図4参照)は後進モードを選択する。このようにブレーキレバー44の操作を利用することによって、部品数の増加を抑えることができる。
【0063】
後進スイッチ142とブレーキレバー44はステアリングバー40の中心に対して同じ方向(左方)に位置している。左のブレーキレバー44に代えて、右のブレーキレバー45が利用されてもよい。すなわち、後進スイッチ142がオン操作(押し操作)を受けている状態と、右のブレーキレバー45が握られている状態(ブレーキレバースイッチ45aのオン状態)とが所定時間に亘って継続したときに、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい。
【0064】
2つのスイッチ142・44aのオン状態が所定時間に亘って継続した後、それらがオフされたときに、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい。すなわち、2つのスイッチ142・44aのオン状態が所定時間に亘って継続した後、後進スイッチ142の押しが解除され、左のブレーキレバー44の握りが解除されたときに、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい。
【0065】
他のモード(前進モードとスタンバイモード)から後進モードへの移行には、(xv)「後進スイッチ142のオン状態とブレーキレバースイッチ44aのオン状態とが所定時間に亘って継続する」に加えて、以下の(xvi)~(xviii)のうちの1又は複数が条件とされてもよい。すなわち、(xv)が満たされ、且つ、(xvi)~(xviii)のうちの1又は双方が満たされた場合にだけ、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい。
(xvi)車速が閾値以下である。(閾値は、例えば0km/hに近い値である。)
(xvii)アクセル操作量が閾値以下である。(閾値は、例えば0%に近い値である。)
(xviii)サイドスタンド14が立てられていない。
【0066】
後進モードにおいて、後進スイッチ142とブレーキレバースイッチ44aとがオフされた後、後進スイッチ142に再びオン操作(押し操作)が加えられたとき、後進駆動制御部21dは電動モータ6を駆動させて、電動二輪車1の後進駆動を実行する。好ましくは、電動二輪車1の例では、後進モードにおいて後進スイッチ142に対する押し操作が維持されている期間においてのみ、後進駆動制御部21dは電動二輪車の後進駆動を実行する。後進モードにおいて運転者が後進スイッチ142に対する押し操作を解除すると、後進駆動制御部21dは、電動二輪車1の後進駆動を停止し、それと同時に、モード選択部21Aは後進モードの選択を解除し、スタンバイモードを選択する。
【0067】
このように、
図8及び
図9の電動二輪車においても、後進スイッチ142に対する所定の操作(押し操作)とブレーキレバー44に対する所定の操作(握り操作)とがなされたときに、制御装置20は後進モードを選択し、電動二輪車1を後進駆動する。後進スイッチ142の操作とブレーキレバー44の操作とが後進駆動のために求められるので、運転者が意図しない後進駆動を防ぐことができる。また、後進駆動の後、後進スイッチ142に対する所定の操作(押し操作)とブレーキレバー44に対する所定の操作(握り操作)とがなくなったときには、後進モードの選択が自動的に解除される。このため、電動二輪車1が未だ後進モードにあるのか否かについて運転者が迷うことを防ぐことができる。
【0068】
図10は後進モードにおける処理の例を示すフロー図である。同図に示す処理は後進スイッチ142が押されたときに開始する。
【0069】
後進スイッチ142にオン操作(押し操作)が加えられると、モード選択部21A(
図4参照)は車速センサ15で検知される車速が閾値より小さいか否かを判断する(S301)。S301において車速が閾値以上である場合、制御装置20は後進モードに移行することなく、処理を終了する。S301において車速が閾値より小さい場合、モード選択部21Aはブレーキレバースイッチ44aのオン状態と後進スイッチ142のオン状態とが所定時間に亘って継続するまで待機する(S302)。これらのオン状態の継続時間が所定時間に達すると、モード選択部21Aは後進モードを選択し(S303)、記憶装置22に記録されている後進モードフラグをオンに設定する。モード選択部21Aはブレーキレバースイッチ44aのオン状態と後進スイッチ142のオン状態とが所定時間に亘って継続し、それらがオフ状態になったときに、モード選択部21Aは後進モードを選択してもよい(S303)。S303において後進モードが選択された後、後進駆動制御部21d(
図4参照)は、後進スイッチ142に再びオン操作が加えられるまで待機する(S304)。後進スイッチ142にオン操作が加えられると、後進駆動制御部21dは電動モータ6を逆方向に回転させて、電動二輪車の後進駆動を実行する(S305)。そして、後進駆動制御部21dは後進スイッチ142に対するオン操作が解除されたか否かを判断する(S306)。後進スイッチ142に対するオン操作が解除されると、後進駆動制御部21dは電動二輪車の後進駆動を終了し、モード選択部21Aは後進モードの選択を解除する(S307)。このとき、モード選択部21Aは、記憶装置22に記録されている後進モードフラグをオフに設定し、スタンバイモードに移行する。
【0070】
[実施形態まとめ]
(1)以上説明したように、電動二輪車1は、車両の駆動源である電動モータ6と、制御装置20と、運転者によって操作される第1操作部材(後進スイッチ42・ブレーキレバー44)と、運転者によって操作される第2操作部材(モータ駆動スイッチ43・後進スイッチ142)とを有している。制御装置20は、車両の前進駆動を許容する前進モードと、車両の後進駆動を許容する後進モードとを有している。制御装置20は、第1操作部材と第2操作部材とに対して所定の操作(押し操作或いは握り操作)がなされた場合に、後進モードを選択して車両を後進駆動する。制御装置20は、車両の後進駆動の後、第1操作部材と第2操作部材とに対する操作がなくなった場合に、後進モードの選択を自動的に解除する。この電動車両によると、後進駆動の後に、電動車両が未だ後進モードにあるのか否かについて運転者が迷うことを防ぐことができる。
【0071】
(2)後進モードの選択は、車速が閾値より低い場合に許容される。これによると、車速が十分に下がった後に後進モードが選択され得る。
【0072】
(3)制御装置20は、車両の前進駆動と後進駆動の双方が許容されないスタンバイモードを有している。制御装置20は、後進モードの選択を解除したときに、スタンバイモードに移行する。これによると、後進モードが終了した後に、車両が急に前進することを防ぐことができる。
【0073】
(4)制御装置20は、前進モードにおいては電動モータ6を順方向に駆動し、後進モードにおいては電動モータ6を逆方向に駆動する。これによると、1つの電動モータ6で前進駆動と後進駆動とが実現できるので、車両の部品数を低減できる。
【0074】
(5)
図3乃至
図7の例において、制御装置20は、第1操作部材である後進スイッチ42に対する押し操作が維持されている期間において後進モードを選択する。これによると、後進モードが選択されている期間を運転者が容易に把握できるようになる。
【0075】
(6)
図3乃至
図7の例において、制御装置20は、後進モードにおけるモータ駆動スイッチ43に対する操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行する。これによると、車両の後進駆動がなされる期間を運転者が容易に把握でき、車両の微妙な位置調整が容易となる。
【0076】
(7)
図3乃至
図7の例において、後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、離れて配置されている。これによると、車両の後進駆動の最中に、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0077】
(8)
図3乃至
図7の例において、後進スイッチ42は、ステアリングバー40の右部又は左部の一方に設けられ、モータ駆動スイッチ43はステアリングバー40の右部又は左部の他方に設けられている。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバーの右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0078】
(9)
図3乃至
図7の例において、制御装置20は、後進スイッチ42に対して押し操作がなされた場合に後進モードを選択し、後進モードにおいてモータ駆動スイッチ43に対して押し操作がなされた場合に車両の後進駆動を実行してよい。後進スイッチ42は、ステアリングバーの左部に設けられ、モータ駆動スイッチ43は、ステアリングバー40の右部に設けられている。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバーの右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0079】
(10)
図8乃至
図10の例において、制御装置20は、ブレーキレバー44に対する握り操作と後進スイッチ142に対する押し操作とが所定時間以上にわたって継続したときに、後進モードを選択する。これによると、後進駆動に係る電動車両の操作性が確保され得る。
【0080】
(11)
図8乃至
図10の例において、制御装置20は、後進モードにおける後進スイッチ142に対する押し操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行する。
【0081】
(12)
図8乃至
図10の例において、第1操作部材は、ブレーキレバー44である。これによると、車両の部品数の増加を抑えることができる。
【0082】
(13)
図3乃至
図7の例において、電動二輪車1は、車両の駆動源である電動モータ6と、制御装置20と、ステアリングバー40の右部又は左部の一方に設けられている後進スイッチ42と、ステアリングバー40の右部又は左部の他方に設けられているモータ駆動スイッチ43と、を有している。制御装置20は、後進スイッチ42が押し操作を受けている状態でモータ駆動スイッチ43が押し操作を受けたときに、車両の後進駆動を開始する。これによると、車両の後進駆動の最中に、運転者がステアリングバー40の右部と左部とを支持するので、車体の姿勢安定性が向上され得る。
【0083】
(14)
図3乃至
図7の例において、制御装置20は、後進スイッチ42が操作されている状態でモータ駆動スイッチ43に対する操作が維持されている期間において、車両の後進駆動を実行する。これによると、車両の後進駆動の微調整が可能となる。例えば後進スイッチ42を押しながらモータ駆動スイッチ43に対して断続的に押し操作を加えることで、車両の後進駆動を断続的に行うことができる。その結果、車両の微妙な位置調整を行うことができる。
【0084】
[変形例]
なお、本開示で提案する電動車両は、以上説明した電動二輪車1の例に限られない。
【0085】
図3乃至
図7で示した例において、後進スイッチ42とモータ駆動スイッチ43は、ステアリングバー40の左右方向での中心に対して同じ方向に配置されてもよい。
【0086】
第2操作部材は、オン信号とオフ信号だけを出力するモータ駆動スイッチ43ではなく、押し量に応じたアナログ信号を出力する操作部材であってもよい。この場合、制御装置20は、第2操作部材の押し量に応じたトルクを電動モータ6が出力するように、電動モータ6を制御してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 電動二輪車、3 フロントフォーク、6 電動モータ、7 車体フレーム、8 バッテリ、9 バッテリケース、11 モータ駆動装置、13 シート、14 サイドスタンド、14a サイドスタンドスイッチ、15 車速センサ、20 制御装置、21A モード選択部、21B モータ制御部、21C 表示制御部、21c 前進駆動制御部、21d 後進駆動制御部、22 記憶装置、31 アクセルグリップ、31a アクセル操作センサ、40 ステアリングバー、40R・40L スイッチユニット、41 前進スイッチ、42・142 後進スイッチ、43 モータ駆動スイッチ、44・45 ブレーキレバー、44a・45a ブレーキレバースイッチ、50 表示装置、51 モードインジケータ、52 表示パネル、52a 車速領域、52b バッテリ残量領域、52c モード案内領域。