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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/69 20060101AFI20240709BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240709BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K8/69
A61K8/02
A61K8/36
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/19
A61Q5/06
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019114015
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020023474
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018143850
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福積 京子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓介
(72)【発明者】
【氏名】松帆 絵里加
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033121(JP,A)
【文献】国際公開第2018/023077(WO,A1)
【文献】特表2016-525514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と界面活性剤とハイドロフルオロオレフィンとを含む原液と、圧縮ガスとからなり、
前記ハイドロフルオロオレフィンの沸点が5~30℃であり、
前記圧縮ガスは、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05以下である低溶解性圧縮ガスを含み、
前記ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを、原液中、3~70質量%含、発泡性組成物。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、10~70質量%である、請求項1記載の発泡性組成物。
【請求項3】
前記原液は、アニオン性界面活性剤を含む、請求項1または2記載の発泡性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性組成物に関する。より詳細には、本発明は、発泡性が優れ、キメ細かく、塗り伸ばしやすいフォームを形成する発泡性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出後に発泡し、フォームを形成する発泡性組成物が知られている。特許文献1には、水、界面活性剤、炭素数5~7の脂肪族炭化水素、窒素ガス等の低溶解性圧縮ガスを含む泡沫状エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-207256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、容器内では炭素数5~7の脂肪族炭化水素が窒素ガスを若干溶かし込んでおり、外部に吐出されると炭素数5~7の脂肪族炭化水素の揮散とともに膨張することで泡沫を形成する。しかしながら、この泡沫は、発泡性が低い。そのため、特許文献1に記載の発明によって得られるフォームは、塗布しにくく、塗り伸ばしにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、発泡性が優れ、キメ細かく、塗り伸ばしやすいフォームを形成することのできる発泡性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)水と界面活性剤とハイドロフルオロオレフィンとを含む原液と、圧縮ガスとからなり、前記ハイドロフルオロオレフィンの沸点が5~30℃である、発泡性組成物。
【0008】
このような構成によれば、発泡性組成物は、液化石油ガス等の液化ガス(35℃において圧力が0.2MPaを超えるもの)を使用していないにもかかわらず、圧縮ガスによって押し出された吐出物は、ハイドロフルオロオレフィンを含む原液に溶解している圧縮ガスが大気中に吐出されることによって溶解量が低下して微細な泡となり、この微細な泡の発生により特定沸点のハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されて充分に発泡する。また、得られるフォームは、キメ細かく、塗り伸ばしやすい。
【0009】
(2)前記ハイドロフルオロオレフィンは、前記原液中、3~70質量%含まれる、(1)記載の発泡性組成物。
【0010】
このような構成によれば、発泡性組成物は、より発泡性が優れ、キメ細かく、冷たいフォームを形成しやすい。
【0011】
(3)前記ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである、(1)または(2)記載の発泡性組成物。
【0012】
このような構成によれば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、温度上昇に伴う圧力上昇が小さい。そのため、発泡性組成物は、より安全性が高い。
【0013】
(4)前記圧縮ガスは、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05以下である低溶解性圧縮ガスを含む、(1)~(3)のいずれかに記載の発泡性組成物。
【0014】
このような構成によれば、発泡性組成物は、低溶解性圧縮ガス(たとえば窒素ガス等)を用いているため、吐出された原液内でより微細な気泡が発生しやすく、キメ細かいフォームが得られやすい。
【0015】
(5)前記原液は、アニオン性界面活性剤を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の発泡性組成物。
【0016】
このような構成によれば、発泡性組成物は、より発泡性が優れ、キメ細かなフォームを形成しやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡性が優れ、キメ細かく、塗り伸ばしやすいフォームを形成することのできる発泡性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<発泡性組成物>
本発明の一実施形態の発泡性組成物は、水と界面活性剤とハイドロフルオロオレフィンとを含む原液と、圧縮ガスとからなる。ハイドロフルオロオレフィンの沸点は、5~30℃である。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(原液)
原液は、水と界面活性剤とハイドロフルオロオレフィンとを含む。
【0020】
・水
水は、溶媒として用いられる。水が含まれることにより、発泡性組成物は、吐出されるとフォームを形成することができ、頭髪や腕等の適用箇所において塗り拡げやすい。
【0021】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0022】
水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、原液中、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、水は、原液中、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は、優れた発泡性を示し、かつ、後述するハイドロフルオロオレフィンを適切な量となるよう配合しやすい。
【0023】
・界面活性剤
界面活性剤は、ハイドロフルオロオレフィンを原液中に乳化させる乳化剤として配合される。また、界面活性剤は、外部に吐出されたときに、原液中に溶解していた圧縮ガスが微細な気泡となって分散し、この気泡の発生によって原液中に乳化していたハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されて、原液を発泡させてフォームを形成する等の目的で配合される。
【0024】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ミリスチン酸やステアリン酸などの脂肪酸とトリエタノールアミンやカリウムなどのアルカリのケン化物、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸カリウム、ラウリルリン酸ナトリウムなどのアルキルリン酸塩、POEラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、POEラウリルエーテル酢酸カリウム、POEラウリルエーテル酢酸ナトリウム、POEトリデシルエーテル酢酸カリウム、POEトリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN-アシルグリシン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-DL-アラニントリエタノールアミンなどのN-アシルアラニン塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのアシルアラニン塩などのアミノ酸型アニオン性界面活性剤;POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸POEセチルエーテル、イソステアリン酸POEラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタン、トリイソステアリン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタインなどのアルキルベタイン;ヤシ酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)、コカミドプロピルヒドロキシスルタインなどの脂肪酸アミドプロピルベタインなどのベタイン型;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルイミダゾール型;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル-β-アラニンなどのアミノ酸型;ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシドなどのアミンオキシド型などの両性界面活性剤等である。界面活性剤は併用されてもよい。
【0025】
これらの中でも、界面活性剤は、ハイドロフルオロオレフィンを乳化しやすく、得られる発泡性組成物の発泡性が良好となり、かつ、キメが細かく、しっかりとしたフォームを形成し得る点から、アニオン性界面活性剤、アミノ酸型アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0026】
界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は、泡立ちが優れ、かつ、べたつきにくく使用感がよい。
【0027】
・ハイドロフルオロオレフィン
ハイドロフルオロオレフィン、容器内では微細な乳化粒子となって水と乳化しており、かつ、圧縮ガスを溶解する。ハイドロフルオロオレフィンは、外部に吐出されると気化して原液を発泡させる。
【0028】
ハイドロフルオロオレフィンは沸点が5~30℃であり、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(沸点19℃、HFO-1233zd(E))が好ましい。沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンは、他のハイドロフルオロオレフィン(たとえばトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点-19℃)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点-29℃)等)と比べて、沸点が高い。そのため、発泡性組成物が吐出された場合であっても、沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンは通常瞬時には気化しないため発泡性は悪いが、容器内ではハイドロフルオロオレフィンに溶解している圧縮ガスが大気中に吐出されることにより溶解量が低下して微細な気泡となり、気泡の発生に伴ってハイドロフルオロオレフィンの気化が促進される。このときハイドロフルオロオレフィンは原液中で微細な粒子となって乳化しているため、発泡してキメ細かいフォームを形成する。また、フォームはハイドロフルオロオレフィンの気化熱により効率よく冷却されて冷たくなりやすい。さらに、ハイドロフルオロオレフィンとして1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが使用されることにより、発泡性組成物は、温度上昇に伴う圧力上昇が起こりにくく、より安全性が高い。
【0029】
また、沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~30℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、水と安定した乳化物を形成しやすく、発泡性組成物は、より優れた発泡性を示し、冷たいフォームを形成しやすい。
【0030】
・任意成分
原液は、上記水、界面活性剤、ハイドロフルオロオレフィンのほかに、適宜、有効成分、アルコール、単糖類、水溶性高分子、油剤、パウダー等の任意成分を含んでもよい。
【0031】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルアミド-アクリル酸ヒドロキシアルキル-メタクリル酸アルキルアミノアルキル共重合体などの両性型樹脂、およびたとえばアクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂などのスタイリング剤;l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピルなどの害虫忌避剤;クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤等である。
【0032】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすく、かつ、発泡性組成物は、有効成分によって発泡性が低下しにくい。
【0033】
アルコールは、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。また、アルコールは、発泡性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0034】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0035】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、アルコールを配合することによる効果が得られやすく、かつ、発泡性組成物は、アルコールによって発泡性が低下しにくい。
【0036】
単糖類は、発泡性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0037】
単糖類は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類は、エリスリトール、アラビトール、ガラクチトール、グルシトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール;エリトリトール、D-エリトロース、D-トレオースなどのテトロース類;D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リキソース、D-リボース、D-キシルロース、L-キシルロース、D-リブロース、L-リブロースなどのペントース類;D-アルトロース、L-アルトロース、D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-グルコース、D-タロース、D-マンノース、L-ソルボース、D-タガトース、D-プシコース、D-フルクトース、D-マンノースなどのヘキソース類などである。
【0038】
単糖類が配合される場合、単糖類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類の含有量は、原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、単糖類の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。単糖類の含有量が上記範囲内であることにより、単糖類を配合することによる効果が得られやすい。
【0039】
水溶性高分子は、発泡性組成物の発泡性を高くする目的や、フォームの保持力、硬さ、弾性、伸展性等を調整する等の目的で好適に配合される。
【0040】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム4)、塩化ジメチルジアクリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリオクタニウム7)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム10)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム22)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリオクタニウム24)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム39)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液(ポリクオタニウム51)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(ポリクオタニウム52)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム61)、メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ナトリウム(ポリクオタニウム65)などのカチオン性ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0041】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、原液の粘度が高くなり過ぎず、発泡性が低下しにくい。
【0042】
油剤は、得られるフォームの肌触りを良くしたり、櫛通りを良くする等の目的で好適に配合される。
【0043】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ジメチコン、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素油;ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルなどのエステル油;オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等である。
【0044】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、油剤を配合することによる効果が得られやすい。また、発泡性組成物は、発泡性が低下しにくく、かつ、乾燥性が低下しにくく、べたつきが生じにくい。
【0045】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0046】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0047】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、発泡性組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりが生じにくい。
【0048】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、上記界面活性剤、任意成分を水や温水に添加して水性基材を調製し、これにハイドロフルオロオレフィンを添加することにより調製され得る。
【0049】
(圧縮ガス)
圧縮ガスは、原液を加圧して外部に吐出する噴射剤として配合される。また、圧縮ガスは、原液に一部が溶解することにより、発泡性組成物が外部に吐出された際に、溶解していた圧縮ガスが微細な気泡となり、ハイドロフルオロオレフィンの気化を促進させ、原液を発泡させてフォームを形成する発泡剤として作用する。
【0050】
圧縮ガスは、特に、容器内で原液中に乳化している沸点5~30℃のハイドロフルオロオレフィンにも溶解することにより、外部に吐出された際に飽和溶解量の低下に伴って微細な気泡となり、ハイドロフルオロオレフィンの気化を促進する。その結果、圧縮ガスは、原液をキメ細かいフォーム状に発泡させることができる。
【0051】
圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。これらの中でも、圧縮ガスは、低温での安定性に優れ、特に吐出された際には微細な気泡となってハイドロフルオロオレフィンの気化を促進し、よりキメ細かいフォームを形成しやすい点から、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05以下で、さらには0.03以下ある低溶解性圧縮ガスを含むことが好ましい。このような低溶解性圧縮ガスは、窒素(オストワルド係数:0.0141)、空気(オストワルド係数:0.0167)、酸素(オストワルド係数:0.0283)、水素(オストワルド係数:0.0194)等である。また、低溶解性圧縮ガスは、上記した原液に含まれる界面活性剤がアニオン性界面活性剤である場合に使用されることが好ましい。界面活性剤としてアニオン性界面活性剤が含まれ、かつ、圧縮ガスとして低溶解性圧縮ガスが使用されることにより、発泡性組成物は、低温時の安定性に優れ、より発泡性が優れ、キメ細かなフォームを形成しやすい。また、発泡性組成物は、窒素ガス等の低溶解性圧縮ガスを用いているため、より安全性が高い。
【0052】
なお、本実施形態の発泡性組成物は、上記圧縮ガスを噴射剤として含み、液化石油ガス等の液化ガスは含まない。このように、発泡性組成物は、液化石油ガス等の液化ガス(35℃において圧力が0.2MPaを超えるもの)を使用していないにもかかわらず、吐出物中に溶解している圧縮ガスが微細な気泡となって発生し、これにより特定の沸点を有するハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されて、吐出された発泡性組成物が充分に発泡する。このような発泡性組成物は、吐出直後の泡密度(g/mL、25℃)が0.01~0.09g/mLであることが好ましく、さらに、0.015~0.08g/mLであることがより好ましい。
【0053】
なお、本実施形態の発泡性組成物は、35℃において圧力が0.2MPa以下の高揮発性成分であれば、併用されてもよい。高揮発性成分を含有することにより、発泡性組成物は、発泡した状態で吐出された泡がさらにゆっくりと増大する。このような高揮発性成分は、たとえば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのシス体であるHFO-1233zd(Z)、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテル、イソペンタン、ノルマルペンタン、およびこれらの混合物等である。特に、ハイドロフルオロオレフィンよりも圧縮ガスの溶解量が少ないイソペンタンやノルマルペンタンなどの脂肪族炭化水素を用いることにより、吐出時の揮発が抑制されてゆっくりと増大しやすい。
【0054】
高揮発性成分が配合される場合、高揮発性成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、高揮発性成分の含有量は、原液中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、高揮発性成分の含有量は、原液中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。高揮発性成分の含有量が上記範囲内であることにより、発泡した状態で吐出された泡がさらにゆっくりと増大する効果が得られやすい。このような泡は吐出直後から30秒後の泡密度の変化率が-0.002~-0.02g/mLであることが好ましく、さらに、-0.005~-0.018g/mLであることがより好ましい。
【0055】
圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.2MPa以上となるよう充填されることが好ましく、0.3MPa以上となるよう充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.8MPa以下となるよう充填されることが好ましく、0.7MPa以下となるよう充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、圧縮ガスが原液に適度に溶解し、吐出された際には気泡が発生しやすく、発泡性組成物は、優れた発泡性を示しやすく、かつ、吐出時に飛び散りにくい。
【0056】
発泡性組成物全体の説明に戻り、発泡性組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、発泡性組成物は、上記原液を容器本体内に充填し、容器本体にエアゾールバルブを取り付けて密封し、エアゾールバルブから圧縮ガスを充填し、圧縮ガスを溶解させることにより製造し得る。
【0057】
<吐出製品>
本発明の一実施形態の吐出製品は、上記した発泡性組成物が充填され、圧縮ガスにより原液を加圧して吐出する、吐出製品である。なお、本発明の吐出製品は、圧縮ガスにより原液を加圧して吐出することのできる構成を備えていればよく、このような構成は特に限定されない。そこで、本実施形態では、一例として、発泡性組成物と圧縮ガスとが充填された容器本体と、容器本体に取り付けられたバルブ機構とを主に備える吐出製品について説明する。
【0058】
(容器本体)
容器本体は、原液および圧縮ガスが充填される容器である。容器本体は、上部に開口を有する有底筒状の耐圧容器である。開口は、原液を充填するための充填口であり、後述するバルブ機構により閉止される。
【0059】
容器本体の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、耐圧ガラス等である。また、原液が分離せず均一な状態を維持できる場合は二重容器を用いることができる。
【0060】
二重容器は、外部容器と、その内部に収容される可撓性を有する内部容器とからなる。外部容器は、前述の容器本体と同じ材質を用いることができ、内部容器はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどガス透過性を有する合成樹脂を用いることができる。内部容器内に原液を充填し、外部容器と内部容器の間に圧縮ガスが充填される。圧縮ガスは内部容器を透過して原液に溶解する。なお、外部容器と内部容器の間に原液を充填し、内部容器内に圧縮ガスを充填してもよい。この場合も、圧縮ガスは内部容器を透過して原液に溶解する。
【0061】
(バルブ機構)
バルブ機構は、容器本体の開口を閉止して密封するための部材である。また、バルブ機構は、ハウジングと、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムを収容する。ステムは、略円筒状の部位であり、吐出時にハウジング内に取り込まれた発泡性組成物が通過するステム内通路が形成されている。ステム内通路の下端近傍には、ハウジング内の空間とステム内通路とを連通するステム孔が形成されている。ステムの上端には、発泡性組成物を吐出するための吐出部材が取り付けられる。ステムラバーは、ステム孔の周囲に取り付けられ、ハウジングの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバーは、円盤状の部材であり、非吐出時において、内周面をステムのステム孔が形成された外周面と密着させて、ステム孔を閉止する。
【0062】
(吐出部材)
吐出部材は、発泡性組成物を吐出するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。吐出部材は、ノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。ノズル部は、略円筒状の部位であり、発泡性組成物が通過する吐出通路が形成されている。吐出通路の先端には開口(吐出孔)が形成されている。吐出孔からは、発泡性組成物が吐出される。吐出孔の数および形状は特に限定されない。吐出孔は、複数であってもよい。また、吐出孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0063】
本実施形態の吐出製品は、吐出部材が押し下げられると、バルブ機構のステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体内と外部とが連通する。容器本体内と外部とが連通すると、容器本体の気相部分に主に存在する圧縮ガスの圧力によって、原液の液面が押圧される。これにより原液は、ハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、吐出部材に送られ、その後、吐出孔から吐出される。
【実施例
【0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0065】
(実施例1)
以下の処方(単位:質量%)に従って、ハイドロフルオロオレフィンを含まない水性基材1を調製し、90gの水性基材1と、10gのハイドロフルオロオレフィン(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HFO-1233zd(E))とを混合して原液を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから窒素ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.6MPa(25℃)に調整した。
【0066】
<水性基材1>
精製水 65.4
ミリスチン酸(*1) 4.6
ステアリン酸(*2) 2.4
メチルパラベン 0.1
POE(2)セチルエーテル(*3) 1.0
ソルビトール(*4) 5.0
トリエタノールアミン 20質量%水溶液 21.5
合計 100.0(質量%)
*1:ルナック MY-98(商品名)、花王(株)製
*2:精製ステアリン酸 550V(商品名)、花王(株)製
*3:NIKKOL BC-2(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*4:ソルビトール花王(商品名)、花王(株)製
【0067】
(実施例2~6、比較例1~4)
水性基材1およびハイドロフルオロオレフィンの種類および配合比率、圧縮ガスの種類、圧縮ガスの有無を表1または表2に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、原液を調製し、容器本体に充填した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例7)
以下の処方(単位:質量%)に従って、ハイドロフルオロオレフィンを含まない水性基材2を調製し、80gの水性基材2と、20gのハイドロフルオロオレフィン(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HFO-1233zd(E))とを混合して原液を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから窒素ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.6MPa(25℃)に調整した。
【0071】
<水性基材2>
精製水 96.9
メチルパラベン 0.1
POEヤシ油脂肪酸ソルビタン(*5) 1.0
POE(20)ステアリルエーテル(*6) 1.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(*7) 1.0
合計 100.0(質量%)
*5:NIKKOL TL-10(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*6:NIKKOL BS-20(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*7:アミゾール CDE(商品名)、川研ファインケミカルズ(株)製
【0072】
(実施例8~12)
水性基材2およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率、圧縮ガスの種類を表3に記載の処方に変更した以外は、実施例7と同様の方法により、原液を調製し、容器本体に充填した。
【0073】
【表3】
【0074】
実施例1~12および比較例1~4において調製した発泡性組成物を用いて、以下の評価方法により、泡密度、フォームの状態、圧力上昇、低温時の吐出状態を評価した。結果を表4に示す。
【0075】
<泡密度>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、満注量25mLのカップに吐出して泡で満たし、泡の重量を測定して泡密度(g/mL)を算出した。
【0076】
<フォームの状態>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、手のひら上に1g吐出し、フォームの状態を評価した。
(評価基準)
◎1:吐出物は、非常にキメが細かく、半球状で冷たいフォームを形成した。
◎2:吐出物は、非常にキメが細かく、半球状でやや冷たいフォームを形成した。
○1:吐出物は、キメがやや粗いが、半球状で冷たいフォームを形成した。
○2:吐出物は、キメがやや粗いが、半球状でやや冷たいフォームを形成した。
△:吐出物は、発泡性が弱く、丘状のフォームを形成した。
×:吐出物は、ほとんど発泡しなかった。
【0077】
<圧力上昇>
55℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品の圧力を測定し、25℃の圧力と比較した。
(評価基準)
◎:25℃の圧力との差が0.2MPa以下であった。
○:25℃の圧力との差が0.2MPaを超え、0.4MPa以下であった。
×:25℃の圧力との差が0.4MPaを超えた。
【0078】
<低温時の吐出状態>
5℃の冷蔵庫に3日間保管した吐出製品を用いて、吐出状態を評価した。
(評価基準)
◎:吐出製品は、スムーズに吐出でき、吐出物は、半球状~丘状のフォームを形成した。
○1:吐出製品は、発泡性組成物が硬くなって吐出しにくかったが、吐出物は、半球状~丘状のフォームを形成した。
○2:吐出製品は、スムーズに吐出でき、吐出物は、丘状のフォームを形成した。
×1:吐出製品は、吐出できたが、吐出物は、ほとんど発泡しなかった。
×2:吐出製品は、吐出できなかった。
【0079】
【表4】
【0080】
表4に示されるように、実施例1~12の吐出製品は、25℃での泡密度が小さく、キメが細かく、立体的で冷たいフォームを形成した。圧縮ガスとして窒素(低溶解性ガス)を使用した実施例1~5、7、9、11の吐出製品は圧力上昇が0.2MPa以下であり非常に小さく高温時の安全性に優れていると考えられた。また脂肪酸のケン化物を含む実施例1~5の吐出製品は窒素を使用することで低温時の吐出状態も優れている。脂肪酸のケン化物を含まない実施例7~12は、炭酸ガスを使用することで低温時の吐出状態に優れている。一方、圧縮ガスを含まない比較例1の吐出製品は、低温時に吐出できなかった。また、沸点が-19℃であるハイドロフルオロオレフィンを用いた比較例2の吐出製品は高温時の圧力上昇が大きかった。さらに、沸点が27.8℃である炭化水素を用いた比較例3~4の吐出製品は25℃での発泡性が弱く、低温時には吐出物が発泡しなかった。
【0081】
(実施例13)
以下の処方(単位:質量%)に従って、ハイドロフルオロオレフィンを含まない水性基材3を調製し、80.0gの水性基材3と、15.0gのイソペンタンと、5.0gのハイドロフルオロオレフィン(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HFO-1233zd(E))とを混合して原液を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから窒素ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.6MPa(25℃)に調整した。
【0082】
<水性基材3>
精製水 33.9
ミリスチン酸(*1) 4.6
ステアリン酸(*2) 2.4
POE(2)セチルエーテル(*3) 1.0
メチルパラベン 0.1
ソルビトール(*4) 5.0
グリセリン 10.0
トリエタノールアミン 10質量%水溶液 43.0
合計 100.0(質量%)
【0083】
(実施例14、比較例5)
水性基材3、イソペンタンおよびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表5に記載の処方に変更した以外は、実施例13と同様の方法により、原液を調製し、容器本体に充填した。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例13~14および比較例5において調製した発泡性組成物を用いて、以下の評価方法により、泡密度、フォームの経時変化を評価した。結果を表6に示す。
【0086】
<泡密度>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、満注量25mLのカップに吐出して泡で満たし、泡の重量を測定して吐出直後、吐出30秒後、吐出60秒後、吐出90秒後、吐出120秒後の泡密度(g/mL)を算出した。
【0087】
<フォームの経時変化>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、吐出直後の泡と指でせん断を加えた吐出30秒後の泡を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:吐出物は、吐出直後に非常にキメが細かく、半球状で冷たいフォームを形成し、指でせん断を加えると、ゆっくり発泡して徐々に大きくなった。
△:吐出物は、吐出直後に発泡性が弱く、丘状のフォームを形成し、指でせん断を加えると、ゆっくり発泡して徐々に大きくなった。
×:吐出物は、吐出直後にほとんど発泡せず、指でせん断を加えても発泡しなかった。
【0088】
【表6】
【0089】
表6に示されるように、実施例13~14の吐出製品は、吐出物のキメが細かく、半球状で冷たいフォームを形成し、指でせん断を加えるとゆっくりと発泡した。比較例5の吐出製品は、発泡性が弱く、指でせん断を加えなければ発泡しなかった。
【0090】
(実施例15)
以下の処方(単位:質量%)に従って、ハイドロフルオロオレフィンを含まない水性基材4を調製し、80.0gの水性基材4と、5.0gのメチルパーフルオロブチルエーテルと、15.0gのハイドロフルオロオレフィン(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HFO-1233zd(E))とを混合して原液を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから圧縮ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.6MPa(25℃)に調整した。
【0091】
<水性基材4>
ラウリルリン酸(*8) 25.0
ポリクオタニウムー52(*9) 1.0
トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタン(*10) 0.5
コカミドプロピルベタイン(*11) 3.0
ソルビトール(*4) 10.0
メチルパラベン 0.1
精製水 50.4
ジプロピレングリコール(*12) 10.0
合計 100.0(質量%)
*8:プライオリーB300D(商品名)、花王(株)製
*9:ソフケアKG-301W(商品名)、花王(株)製
*10:レオドールIS399C(商品名)、花王(株)製
*11:レボン2000HG(商品名)、三洋化成工業(株)製
*12:DPG-RF(商品名)、(株)ADEKA製
【0092】
【表7】
【0093】
実施例15において調製した発泡性組成物を用いて、以下の評価方法により、泡密度、フォームの経時変化を評価した。結果を表8に示す。
【0094】
<泡密度>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、満注量25mLのカップに吐出して泡で満たし、泡の重量を測定して吐出直後、吐出30秒後、吐出60秒後、吐出90秒後、吐出120秒後の泡密度(g/mL)を算出した。
【0095】
<フォームの経時変化>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した吐出製品を用いて、吐出直後の泡と指でせん断を加えた吐出30秒後の泡を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:吐出物は、吐出直後に非常にキメが細かく、半球状で冷たいフォームを形成し、指でせん断を加えると、ゆっくり発泡して徐々に大きくなった。
△:吐出物は、吐出直後に発泡性が弱く、丘状のフォームを形成し、指でせん断を加えると、ゆっくり発泡して徐々に大きくなった。
×:吐出物は、吐出直後にほとんど発泡せず、指でせん断を加えても発泡しなかった。
【0096】
【表8】
【0097】
表8に示されるように、実施例15の吐出製品は、吐出直後に非常にキメが細かく、半球状で冷たいフォームを形成し、指でせん断を加えると、ゆっくり発泡して徐々に大きくなった。