(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】鉄道車両用のディスクブレーキ用の可変フレキシビリティボタン付きパッド
(51)【国際特許分類】
F16D 65/097 20060101AFI20240709BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20240709BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F16D65/097 D
B61H5/00
F16D65/092 B
F16D65/092 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019203943
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】102018000010235
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505146010
【氏名又は名称】コフレン エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ・デ・ソッチョ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214629(JP,A)
【文献】特開平07-103269(JP,A)
【文献】実開昭58-173836(JP,U)
【文献】特開2016-186363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61H 1/00-15/00
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用のディスクブレーキ用のパッド(1)であって、
ベースプレート(2)と、
前記ベースプレート(2)に可逆的に固定される複数の摩擦要素(4)と、
それぞれの摩擦要素(4)と前記ベースプレート(2)との間にそれぞれ配置される複数のスペーサー要素(5)と
を具備し、
前記スペーサー要素は、前記ディスクブレーキのディスクの中央部に作用する前記パッドの後部から、前記ディスクブレーキの前記ディスクのより周辺部に作用する前記パッドの前部へと、軸線Xに沿って漸進的にその弾性およびその運動の自由度が増加し、
前記後部から前記前部へと前記軸線Xに沿って、前記スペーサー要素は、漸進的にその運動の自由度が増加し、前記後部から前記前部へと前記軸線Xに沿って、前記スペーサー要素は、(a)各摩擦要素のための二つのディスク(11a)と、(b)各摩擦要素のための二つのベルビルワッシャー(11b)と、(c)各要素のための単一のベルビルワッシャー(11c)と、を連続的に備えることを特徴とするパッド(1)。
【請求項2】
前記摩擦要素(4)のそれぞれが、金属シート(7)と、摩擦材料から作られると共に固定ピン(9)によって前記金属シート(7)に固定されたボタン(8)とから構成され、二つの回転防止ペグ(10)が前記金属シート(7)から突出すると共に前記固定ピン(9)に対して両側に配置され、前記スペーサー要素(5)のそれぞれは、前記固定ピン(9)および/または前記回転防止ペグ(10)によって係合される中央孔を有することを特徴とする請求項
1に記載のパッド。
【請求項3】
その中央孔が前記回転防止ペグ(10)によって係合された二つのディスク(11a)とそれぞれ関連付けられた摩擦要素(4)と、
その中央孔が前記回転防止ペグ(10)によって係合された二つのベルビルワッシャー(11b)とそれぞれ関連付けられた
他の摩擦要素(4)と、
その中央孔が前記固定ピン(9)によって係合された単一のベルビルワッシャー(11c)とそれぞれ関連付けられた
他の摩擦要素(4)と
を具備することを特徴とする請求項
2に記載のパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、2018年11月12日に提出されたイタリア特許出願番号第102018000010235号の優先権を主張する(その全開示はこの参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0002】
本発明は鉄道車両用のディスクブレーキ用のパッドに関する。
【背景技術】
【0003】
よく知られているように、ディスクブレーキは大きな応力にさらされ、理想的な制動作用を得るためには、パッドからディスクへと制動力が良好に伝達されなければならない。
【0004】
長い間、製造業者は、単一の大型摩擦要素の代わりに、複数の小型摩擦要素を含むパッドを使用してきた。この点に関して採用された解決策の一つによれば、各パッドは、実質的に、主ベースプレートと、このベースプレートに可逆的に固定された複数の摩擦要素とからなる。各摩擦要素は、金属シートと、この金属シートに不可逆的に固定された摩擦ボタンとから構成される。
【0005】
鉄道車両用のディスクブレーキ用のパッドは、制動に関してディスクに有効な圧力をかける必要があることに加えて、制動作用中の低ノイズを保証する必要もある。低ノイズは、ますます、使用されるディスクブレーキを選択する際の識別要因となりつつある。
【0006】
当業者であればすぐに理解できるように、上記の要求は、それを用いてパッドが製造されるコンポーネントおよび摩擦要素がディスクに圧力をかける方法と密接に関連している。
【0007】
古くから解決策が知られており、それは、それぞれがベースプレートとそれぞれの摩擦要素との間に配置された複数の弾性要素の使用を伴う。この解決策によれば、同じパッドの弾性要素は全て同じであるため、可変半径方向速度での異なる領域におけるディスクの異なる一時的な変形が考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この解決策は、制動時のノイズ低減に関して大幅な改善をもたらしたが、鉄道業界では、さらなるノイズ低減が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は特定のパッド解決策を提供し、その技術的特徴は、制動ノイズのさらなる低減を保証し、同時に高い制動効率を実現することである。
【0010】
本発明の主題は、鉄道車両用のディスクブレーキ用のパッドであり、その本質的な特徴は請求項1に記載されており、その好ましいかつ/または補助的な特徴は請求項2~7に記載されている。
【0011】
本発明は、添付図面を参照して、単なる説明のための非限定的な例として提供される実施形態の以下の説明を熟読することで最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるパッドの、より明瞭にするために一部を透明化した、上から見た斜視図である。
【
図2】
図1のパッドの、一部を透明化した、底面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面において、参照符号1は、全体として、本発明によるパッドを示す。
【0014】
パッド1は、背面にパッド1をディスクブレーキの構造体に固定するための「ダブテール」固定要素3を備えるベースプレート2と、可逆的にベースプレート2に固定されると共に制動作用を発揮するためにブレーキのディスクに圧力を加えるように配置された複数の摩擦要素4と、この摩擦要素4とベースプレート2との間に配置された一つ以上のスペーサー5と、以下でより詳細に説明するように、それぞれの摩擦要素4を可逆的にベースプレート2に対してロックするように設計されたロックスプリング6とを備える。
【0015】
図3によれば、摩擦要素4のそれぞれは、金属シート7と、摩擦材料から作られると共に固定ピン9によって不可逆的に金属シート7に対して固定されたボタン8とから構成される。二つの回転防止ペグ10が金属シート7から突出し、固定ピン9に対して両側に配置される。
【0016】
固定ピン9は周方向の溝を有し、そしてロックスプリング6によって係合されるように設計される。
【0017】
図3によれば、ベースプレート2には、摩擦要素4の各固定部分の領域に三つの貫通孔が存在し、これらを介して摩擦要素5はベースプレート2に対して結合される。特に、三つの貫通孔は中央孔と二つの側方孔である。中央孔は側方孔よりも大きな直径を有する。
【0018】
パッド1が組み立てられたとき、固定ピン9は中央孔(ここで、それはそれぞれのロックスプリング6の作用によりロックされる)に係合し、一方、二つの回転防止ペグ10のそれぞれはそれぞれの側方孔に係合する。
【0019】
より具体的には、図示されるパッドは、パッドの長手方向延長軸線Xに沿って非直線的に配置された五つの摩擦要素4を備える。
【0020】
スペーサー要素5のいくつかは、明らかな弾力性を有し、異なる弾性を有する。特に、図面に示すパッドのスペーサー要素5は、パッドの後部に配置された二つのそれぞれの摩擦要素5の四つのそれぞれの回転防止ペグ10を囲むように配置された四つのディスク要素11aと、パッドの中央部に配置された二つのそれぞれの摩擦要素5の四つのそれぞれの回転防止ペグ10を囲むように配置された四つのベルビルワッシャー11bと、パッドの前部に配置されたそれぞれの摩擦要素5のそれぞれの固定ピン9を囲むように配置されたベルビルワッシャー11cとを備える。特に、ベルビルワッシャー11cは、二つのベルビルワッシャー11bよりも高い弾性を有している。
【0021】
上記により、本発明による解決策は、同じパッドの摩擦要素がブレーキのディスクに作用する際の異なる圧力(スペーサー要素の異なる弾性)にあることは明らかである。
【0022】
驚くべきことに、本発明の発明者は、異なる圧力でブレーキのディスクに作用する摩擦要素を含むパッドは、ブレーキ作用の効率を危険にさらすことなく、制動ノイズを著しく低減することを見出した。
【0023】
その順序に関係なく、弾性の異なるスペーサー要素の使用によってノイズ低減効果が得られることが判明しているが、パッドのスペーサー要素5の弾性が長手方向軸線Xに沿って連続的に変化する場合に、より顕著な効果が得られることも判明している。
【0024】
実際、上記の例によれば、スペーサー要素11a,11bおよび11cの弾性は、パッドの後部から前部に向かって連続的に増加する。
【0025】
ここに示す例のパッドでは、後部はブレーキの中央部に作用するものであり、一方、前部はブレーキのディスクのより周辺部に作用するものである。
【0026】
最後に、パッドの摩擦要素がその動作に関して自由度を有する場合、制動効果およびノイズの両方の点でさらなる改善を実現できることが判明した。このため、ベルビルワッシャーの存在が好ましい。ベルビルワッシャーは、ワッシャー自体の凸部の頂点の周りを摩擦要素が移動できるような形状を有している。
【0027】
これに関して、同じパッドの摩擦要素が異なる運動の自由度を有する場合、ノイズに関してさらなる改善が実現されることも判明した。このために、この実施例のパッドは、それぞれ二つのベルビルワッシャー11bと関連付けられているために、二つのディスク11aと関連付けられた二つの摩擦要素よりも大きな運動の自由度を有する二つの摩擦要素と、単一のベルビルワッシャー11cと関連付けられているために、二つのベルビルワッシャー11bと関連付けられた二つの摩擦要素よりも大きな運動の自由度を有する摩擦要素とを具備する。
【符号の説明】
【0028】
1 パッド
2 ベースプレート
3 固定要素
4 摩擦要素
5 摩擦要素(スペーサー要素)
6 ロックスプリング
7 金属シート
8 ボタン
9 固定ピン
10 回転防止ペグ
11a ディスク(スペーサー要素)
11b ベルビルワッシャー(スペーサー要素)
11c ベルビルワッシャー(スペーサー要素)