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特許7517818電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム用冷却モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム用冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20240709BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240709BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240709BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240709BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240709BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20240709BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240709BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240709BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/6569
B60L50/64
B60L58/26
B60K1/04 Z
B60K11/04 G
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019230718
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2020115447
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】102018000020902
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】523058504
【氏名又は名称】マレッリ ヨーロッパ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフランコ ロ リート
(72)【発明者】
【氏名】ナザリオ ベラート
(72)【発明者】
【氏名】ラズバン-バシル デジ
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0052960(US,A1)
【文献】特開2015-156347(JP,A)
【文献】特開2013-030403(JP,A)
【文献】特開2008-232592(JP,A)
【文献】特開2015-141887(JP,A)
【文献】特開2013-178966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6557
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/625
H01M 10/6569
H01M 50/20
B60L 50/64
B60L 58/26
B60K 1/04
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム(1)用の冷却モジュール(3)であって、
前記冷却モジュール(3)は、平行六面体の形状を有し、冷却液を収容するために設計されている循環室(5)を内部に有するように、内部が中空の熱交換器プレート(4)を備え、
前記熱交換器プレート(4)は、該熱交換器プレート(4)の前壁(6)を通り、前記冷却液が前記循環室(5)に流入することができるように設計されている入口(12)を有し、
前記熱交換器プレート(4)は、該熱交換器プレートの後壁(7)を通り、前記前壁(6)に平行かつ反対側にあり、前記冷却液が前記循環室(5)から流出することができるように設計されている出口(13)を有し、
前記熱交換器プレート(4)は、互いに平行かつ反対側にあり、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に対して、及び前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)に対して直角な第1の側壁(8)及び第2の側壁(9)を有し、
前記冷却モジュール(3)は複数の接触面要素(15)を備え、該複数の接触面要素(15は、前記熱交換器プレート(4)の前記循環室(5)内部に配置され、波のような形状であり、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に、及び前記後壁(7)に平行に向けられ、1つの列(16)と隣接する列(16)との間がゼロ以外の距離で、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)と前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)との間に配置され、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に、及び前記後壁(7)に平行に向けられた列(16)内に配置される、冷却モジュール(3)において、
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)から前記熱交換器プレート(4)の中心に向けて次第に増加し、前記熱交換器プレート(4)の前記中心から前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)に向けて次第に減少している、ことを特徴とする冷却モジュール(3)。
【請求項2】
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は列(16)ごとに異なり、それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、2つの隣接する列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数と異なる、請求項1に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項3】
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、前記熱交換器プレート(4)の前記中心に対して対称的に変動する、請求項1又は2に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項4】
前記接触面要素(15)のいくつかの列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)とだけ一体化し、それらは前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)から離間されており、前記接触面要素(15)の残りの列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)とだけ一体化し、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)から離間されている、請求項1、2又は3に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項5】
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と一体化している前記接触面要素(15)の前記列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)と一体化している前記接触面要素(15)の対応する列(16)に対して整列し、対面している、請求項4に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項6】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に対して置かれ、かつ固定されている連続した谷部(17)、及び前記熱交換器プレート(4)のもう一方の前記側壁(9、8)からゼロ以外の距離で配置される連続した頂部18を有し、
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と一体化している前記接触面要素(15)の前記頂部(18)と前記熱交換器プレート(4)前記第2の側壁(9)と一体化している前記接触面要素(15)の前記頂部(18)との間の距離(H1)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)との間の距離(H2)の20~45%、好ましくは35%と等しい、請求項5に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項7】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部の波長が常に一定であり、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)との間の距離(H2)の55~70%、好ましくは62%と等しい、請求項1~6の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項8】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部が、最初の半波長が最後の半波長の振幅よりも小さい振幅を有する非対称形状をそれぞれ有する、請求項1~7の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項9】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、それぞれの頂部(18)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記頂部(18)を有し、それぞれの前記接触面要素(15)の前記波状部が、連続した平板パネルから構成されており、
前記頂部(18)と後続の前記平板パネルとの間に画定される角度(α)が20°よりも小さく、
前記頂部(18)と直前の前記平板パネルとの間に画定される角度(β)が60°よりも小さい、請求項1~8の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項10】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、それぞれの谷部(17)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記谷部(17)を有し、
それぞれの前記接触面要素(15)の前記波状部は、それぞれの頂部(18)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の前記側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記頂部(18)を有し、
それぞれの前記頂部(18)が前記谷部(17)よりも長い伸長部分を有する、請求項1~9の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項11】
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部が、連続した平板パネルから構成されている、請求項1~10の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項12】
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)に、及び前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)に固定されている平坦な発熱体(19)を備え、該発熱体(19)は、ジュール効果による熱を発生させるために、電流が流れるように設計されている、請求項1~11の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項13】
前記発熱体(19)は、前記循環室(5)の反対側の、前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)の外側表面に固定されている、請求項12に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項14】
前記発熱体(19)が、昇温するにつれて電気抵抗が増大するPTCサーミスタである、請求項12又は13に記載の冷却モジュール(3)。
【請求項15】
電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム(1)であって、
平行六面体の形状を有し、互いに並列に、かつ、平行に配置される、複数の充電式電気化学蓄電池(2)と、
平行六面体の形状を有し、前記充電式電気化学蓄電池(2)と交互配置される、複数の冷却モジュール(3)と、を備えた電気エネルギー貯蔵システム(1)において、
それぞれの前記冷却モジュール(3)が請求項1~14の何れか一項によって製造されることを特徴とする、電気エネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項16】
前記複数の冷却モジュール(3)を備え、前記冷却液が流れるように設計された冷却回路を含み
前記冷却回路は相変化材料を内部に組み込み、該相変化材料は、前記冷却液から液圧的に隔てられ、かつ前記冷却液と熱的につながり合う少なくとも一つの区画に収容されている、請求項15に記載の電気エネルギー貯蔵システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2018年12月21日に出願された伊国特許出願第102018000020902号明細書からの優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム用冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4には、車両用の充電式電池パックが記載されている。電池パックは、平行六面体の形状を有する(即ち、扁平な)複数の充電式電気化学蓄電池を備え、連続して並んで配置される。更に、電池パックは、平行六面体の形状(即ち、扁平な)を有し、蓄電池と交互配置される、複数の冷却モジュールを備える。それぞれの冷却モジュールは、冷却液を強制循環させるための水圧回路が得られた金属プレートによって(したがって、熱伝導性材料によって)形成される。
【0004】
特許文献5及び特許文献6では、電池と交互配置されている複数の冷却モジュールを備える電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システムが記載されている。それぞれの冷却モジュール3は、平行六面体の形状を有し、冷却液と、熱交換器プレートの循環室内部に配置され、波のような形状であり、熱交換器プレートの前壁に、及び後壁に平行に向けられ、1つの列と隣接する列との間がゼロ以外の距離で、熱交換器プレートの前壁と熱交換器プレートの後壁との間に配置される列内に配置されている、複数の接触面要素とを収容するために設計された循環室を内部に有するように、内部が中空の熱交換器プレートを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/186020(A1)号
【文献】国際公開第2013/139908(A1)号
【文献】独国特許出願公開第102012200400(A1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2337141(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/052960(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/198372(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷却モジュールによって、容積及び重量を増大させることなく冷却の効率及び効果を増大することができ、同時に実装が容易でかつ安価な、電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム用冷却モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載のとおり、冷却モジュールは電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システムに提供される。
【0008】
特許請求の範囲は、本開示の不可欠な部分を形成している、本発明の好ましい実施形態を記載するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで、これらのいくつかの非限定的な実施形態を図示する添付の図面を参照しながら本発明を説明する。
図1図1は電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システムの斜視図である。
図2図2図1の貯蔵システムの冷却モジュールの斜視図である。
図3図3は本発明の一部ではない図2の冷却モジュールの側面図である。
図4図4図2の冷却モジュールの線IV-IVによる断面図である。
図5図5図2の冷却モジュールの拡大された尺度の接触面要素の断面図である。
図6図6図3の冷却モジュールの代替案の線IV-IVによる断面図である。
図7図7は本発明の目的である図2の冷却モジュールの更なる代替案の側面図である。
図8図8は代替的実施形態による図5の接触面要素の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1では、参照符号1は電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム1を全体として示している。
【0011】
貯蔵システム1は、平行六面体の形状を有し、互いに並列し、互いに平行に配置される複数の充電式電気化学蓄電池2と、平行六面体の形状を有し、充電式電気化学蓄電池2と交互配置されている、複数の冷却モジュール3とを備える。換言すれば、貯蔵システム1は、冷却モジュール3と交互配置される一連の充電式電気化学蓄電池2によって形成される「サンドイッチ」である。
【0012】
図2及び4に図示されているように、それぞれの冷却モジュール3は、平行六面体の形状を有し、冷却液を収容するために設計されている循環室5(図4において図示される)を内部に有するように、内部が中空である熱交換器プレート4を備える。
【0013】
熱交換器プレート4は平行六面体の形状を有し、互いに平行かつ反対側にある前壁6及び後壁7、互いに平行かつ反対側にあり、壁6及び7に対して直角な2つの側壁8及び9、互いに平行かつ反対側にあり、壁6~9に対して直角な上壁10及び下壁11を有する。
【0014】
それぞれの熱交換器プレート4は、熱交換器プレート4の前壁6によって得られ、冷却液が循環室5に流入することができるように設計されている入口12を有し、更に、熱交換器プレート4は、熱交換器プレート4の後壁7によって得られ、冷却液が循環室5から流出することができるように設計されている出口13を有する。添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、2つの開口12及び13は互いに整列し、反対側にある。
【0015】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの熱交換器プレート4は、貯蔵システム1を密集させるタイロッドを嵌入するために使用される、4つの貫通孔14を有する。
【0016】
図3及び4に図示されるように、それぞれの冷却モジュール3は、熱交換器プレート4の循環室5内部に配置され、波のような形状であり、熱交換器プレート4の前壁6に、及び後壁7に平行に向けられ、1つの列16と隣接する列16との間がゼロ以外の距離で(即ち、それぞれの列16が隣接する列16と離間して)、熱交換器プレート4の前壁6と熱交換器プレート4の後壁7との間に配置されている列16内に配置される、複数の接触面要素15を備え、接触面要素15の列16は、熱交換器プレート4の前壁6に、及び後壁7に平行に向けられている。添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、列16間のピッチ(即ち、1つの列16と隣接する列16との間の距離)は、一定、つまりすべての列16で等しく、図示されていない異なる実施形態によれば、列16間のピッチ(即ち、1つの列16と隣接する列16との間の距離)は変動し、中央領域ではより小さく(狭く)、周辺領域(即ち、開口12及び13の近傍)ではより大きい(広い)。
【0017】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの列16を構成する接触面要素15の数は列16ごとに変動し、図示されていない異なる実施形態によれば、それぞれの列16を構成する接触面要素15の数は一定である(即ち、すべての列16で等しい)。
【0018】
図3に図示されている実施形態では、それぞれの列16を構成する接触面要素15の数は、2つから3つの間で周期的に変動している(即ち、3つの接触面要素15によって形成される列16は2つの接触面要素15によって形成される列16の後に続きかつ先行する)。図7に図示されている異なる実施形態によれば、それぞれの列16を構成する接触面要素15の数は、熱交換器プレート4の前壁6から熱交換器プレート4の中心に向けて段階的に増加し、熱交換器プレート4の中心から熱交換器プレート4の後壁7に向けて段階的に減少している。特に、それぞれの列16を構成する接触面要素15の数は、熱交換器プレート4の中心に対して対称的に変動している。それぞれの列16を構成する接触面要素15の数のこの変動(前壁6から中心に向けての段階的な増加、及び中心から後壁7に向けての段階的な減少)によって、循環室5内部を流れる冷却液と接触面要素15との間で高い熱交換を得ることが可能となり、同時に、循環室5を通る冷却液の流れによって引き起こされる圧力降下の減少が生じる。
【0019】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、すべての接触面要素15は互いに完全に同一であり、この解決方法によって製造のコスト及び複雑性が低減されるが、他方では、様々な列16の立体構造が変化する可能性を制限する。図示されていない異なる実施形態によれば、接触面要素15は互いにすべて等しくなく、例えばそれらの長さ、幅及び/又は高さが区別される。
【0020】
図4に図示されているように、それぞれの接触面要素15は、熱交換器プレート4の対応する側壁8又は9とだけ(典型的には溶接によって)一体化している。特に、接触面要素15のいくつかの列16(列16の半分)は、熱交換器プレート4の側壁8とだけ一体化して(溶接されて)おり、したがって熱交換器プレート4の側壁9に接しておらず(即ち、それらは側壁9から所与の距離にある)、接触面要素15の残りの列16(列16の残りの半分)は、熱交換器プレート4の側壁9とだけ一体化して(溶接されて)おり、したがって熱交換器プレート4の側壁8に接していない(即ち、それらは側壁8から一定の距離にある)。接触面要素15のこの配置により、循環室5内部を流れる冷却液と接触面要素15との間での熱交換に不利益を被らせることなく、循環室5を通る冷却液の流れによって引き起こされる負荷損失を低減することができる。
【0021】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の列16は、熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の対応する列16と整列し、対面している。換言すれば、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の列16の一組は完全に同一であり、熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の列16の一組に対して、鏡像のように配置されている。図示されていない異なる実施形態によれば、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の列16は、熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の対応する列16と整列しておらず、対面していない。特に、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の列16は、熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の列16の間に配置される。
【0022】
図5に図示されているように、それぞれの(前述したように波のような形状をしている)接触面要素15の波状部は、熱交換器プレート4の側壁8又は9に対して置かれ、固定されている連続した谷部17、及び熱交換器プレート4のもう一方の側壁9又は8からゼロ以外の距離で(かつ、熱交換器プレート4のもう一方の側壁9又は8に対面し、固定されている、対応する接触面要素15の頂部18からゼロ以外の距離で)配置される連続した頂部18を有する。
【0023】
図4に図示されている好ましい実施形態によれば、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の頂部18と熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の頂部18との間の距離H1は、熱交換器プレート4の側壁8と熱交換器プレート4の側壁9との間の距離H2(即ち、熱交換器プレート4の厚みH2)の20~45%、好ましくは35%と等しい。換言すれば、循環室5の中央領域には接触面要素15がなく(即ち、接触面要素15が係合しない)、熱交換器プレート4の厚みH2の(即ち、熱交換器プレート4の側壁8と熱交換器プレート4の側壁9との間の距離H2の)20~45%と等しい厚みH1(即ち、熱交換器プレート4の側壁8と一体化している接触面要素15の頂部18と熱交換器プレート4の側壁9と一体化している接触面要素15の頂部18との間の距離H1)を有する。
【0024】
図5に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの接触面要素15の谷部17と頂部18との間の距離H3(即ち、それぞれの接触面要素15の厚みH3)は、熱交換器プレート4の側壁8と熱交換器プレート4の側壁9との間の距離H2の(即ち、熱交換器プレート4の厚みH2の)25~35%、好ましくは30%と等しい。
【0025】
図5に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの接触面要素15の波状部の波長λは常に一定であり、熱交換器プレート4の側壁8と熱交換器プレート4の側壁9との間の距離H2の(即ち、熱交換器プレート4の厚みH2の)55~70%、好ましくは62%と等しい。
【0026】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの接触面要素15の波状部は、非対称形状をそれぞれ有し、最初の半波長が最後の半波長の振幅よりも小さい振幅を有する。
【0027】
添付の図に図示されている好ましい実施形態によれば、それぞれの接触面要素15の波状部は、それぞれの頂部18が平坦であり、かつ熱交換器プレート4の側壁8及び9に平行となるように、平坦化されたそれぞれの頂部18を有し、同様に、それぞれの接触面要素15の波状部は、それぞれの谷部17が平坦であり、かつ熱交換器プレート4の側壁8及び9に平行となるように、平坦化されたそれぞれの谷部17を有する。
【0028】
図8に図示されている実施形態によれば、それぞれの接触面要素15の波状部は、連続した平板パネルから構成されており、本実施形態では、頂部18と後続のパネルとの間に画定される角度αが20°よりも小さく、頂部18と直前のパネルとの間に画定される角度βが60°よりも小さいことが好ましい。
【0029】
図8に図示されている実施形態によれば、それぞれの頂部18は谷部17よりも長い伸長部分を有し、一方で、図5に図示されている実施形態では、それぞれの頂部18が谷部17よりも短い伸長部分を有する。換言すれば、それぞれの頂部18は、谷部17に対して異なる伸長部分を有する。
【0030】
上記で記載した接触面要素15の立体構造により、循環室5内部を流れる冷却液と接触面要素15との間での熱交換に不利益を被らせることなく、循環室5を通って流れる冷却液によって引き起こされる負荷損失を低減することができる。
【0031】
図2に図示されているように、それぞれの冷却モジュール3は、熱交換器プレート4の側壁8に、及び熱交換器プレート4の側壁9に固定されている平坦な発熱体19を備え、ジュール効果による熱を発生させるために、電流が流れるように設計されている。異なる実施形態によれば、平坦な発熱体19は熱交換器プレート4の一方の側だけに配置される。即ち、平坦な発熱体19は熱交換器プレート4の側壁8だけに固定されるか、又は熱交換器プレート4の側壁9だけに固定される。
【0032】
図2に図示されている好ましい実施形態によれば、発熱体19は、循環室5の反対側の熱交換器プレート4の側壁8及び9の外側表面に固定されている(したがって、発熱体19は循環室5内に収容されている冷却液によって濡れていない)。図示されていない異なる実施形態によれば、発熱体19は、熱交換器プレート4の側壁8及び9の内側表面に固定され、したがって、冷却液と直接接触して循環室5内部に配置される。
【0033】
好ましい実施形態によれば、発熱体19は、昇温するにつれて電気抵抗が増大するPTCサーミスタである(即ち、発熱体19の端部に同じ電圧が印加されるため、それらが昇温するにつれて発熱体19によって発生される熱が減少する)。
【0034】
冷却モジュール3は、冷却液の循環を行い、冷却液と直接接触しない相変化材料(PCM)をそれらの内側に組み込む冷却回路の一部である(即ち、それらは冷却液から液圧的に隔てられた空洞に収容され、その壁が冷却液によって濡れている)。
【0035】
相変化材料は、相転移現象を利用して入って来るエネルギーの流れを吸収し、大量のエネルギーを蓄積して一定温度を維持する潜熱蓄熱材料である。相変化材料は室温では固体であるが、後者が上昇し、材料に応じて変化する特定閾値を超えるとき、それらは熱(液化からの潜熱)を蓄積することによって液化する。同様に、温度が降下するときに相変化材料は固化し、熱(固化からの潜熱)を放出する。
【0036】
このように、冷却回路に組み込まれる相変化材料は、車両が動いているときに熱エネルギーを蓄積し(熱を除去することを助け、したがって冷却機能を実行し)、車両が静止しているときに熱エネルギーを放出する。
【0037】
例えば、相変化材料(液圧的で冷却液から隔てられた空洞に差し込まれる)として、パラフィンワックス、又はパラフィンワックスと発泡金属との混合物を使用することができる。それらの化学組成に応じて、相変化材料は5℃~80℃に含まれる融解温度を有することができる。
【0038】
本明細書で記載される実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなく互いに組み合わせることができる。
【0039】
上記に記載された冷却モジュール3は、多数の利点を有する。
【0040】
第一に、上記に記載された冷却モジュール3によって、高い冷却効率、及び高い冷却効果を得ることができる。
【0041】
その上、上記に記載された冷却モジュール3は、寸法及び重量が低減されている。
【0042】
そして、上記に記載された冷却モジュール3は、実装が容易であり、かつ安価である。
本発明の構成(態様)として、以下に示すものがある。
[構成1]
電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム(1)用の冷却モジュール(3)であって、
前記冷却モジュール(3)は、平行六面体の形状を有し、冷却液を収容するために設計されている循環室(5)を内部に有するように、内部が中空の熱交換器プレート(4)を備え、
前記熱交換器プレート(4)は、該熱交換器プレート(4)の前壁(6)を通り、前記冷却液が前記循環室(5)に流入することができるように設計されている入口(12)を有し、
前記熱交換器プレート(4)は、該熱交換器プレート4の後壁(7)を通り、前記前壁(6)に平行かつ反対側にあり、前記冷却液が前記循環室(5)から流出することができるように設計されている出口(13)を有し、
前記熱交換器プレート(4)は、互いに平行かつ反対側にあり、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に対して、及び前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)に対して直角な第1の側壁(8)及び第2の側壁(9)を有し、
前記冷却モジュール(3)は複数の接触面要素(15)を備え、該複数の接触面要素(15)は、前記熱交換器プレート(4)の前記循環室(5)内部に配置され、波のような形状であり、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に、及び前記後壁(7)に平行に向けられ、1つの列(16)と隣接する列(16)との間がゼロ以外の距離で、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)と前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)との間に配置され、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)に、及び前記後壁(7)に平行に向けられた列(16)内に配置される、冷却モジュール(3)において、
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、前記熱交換器プレート(4)の前記前壁(6)から前記熱交換器プレート(4)の中心に向けて次第に増加し、前記熱交換器プレート(4)の前記中心から前記熱交換器プレート(4)の前記後壁(7)に向けて次第に減少している、ことを特徴とする冷却モジュール(3)。
[構成2]
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は列(16)ごとに異なり、それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、2つの隣接する列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数と異なる、構成1に記載の冷却モジュール(3)。
[構成3]
それぞれの列(16)を構成する前記接触面要素(15)の数は、前記熱交換器プレート(4)の前記中心に対して対称的に変動する、構成1又は2に記載の冷却モジュール(3)。
[構成4]
前記接触面要素(15)のいくつかの列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)とだけ一体化し、それらは前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)から離間されており、前記接触面要素(15)の残りの列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)とだけ一体化し、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)から離間されている、構成1、2又は3に記載の冷却モジュール(3)。
[構成5]
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と一体化している前記接触面要素(15)の前記列(16)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)と一体化している前記接触面要素(15)の対応する列(16)に対して整列し、対面している、構成4に記載の冷却モジュール(3)。
[構成6]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に対して置かれ、かつ固定されている連続した谷部(17)、及び前記熱交換器プレート(4)のもう一方の前記側壁(9、8)からゼロ以外の距離で配置される連続した頂部(18)を有し、
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と一体化している前記接触面要素(15)の前記頂部(18)と前記熱交換器プレート(4)前記第2の側壁(9)と一体化している前記接触面要素(15)の前記頂部(18)との間の距離(H1)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)との間の距離(H2)の20~45%、好ましくは35%と等しい、構成5に記載の冷却モジュール(3)。
[構成7]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部の波長が常に一定であり、前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)と前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)との間の距離(H2)の55~70%、好ましくは62%と等しい、構成1~6の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成8]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部が、最初の半波長が最後の半波長の振幅よりも小さい振幅を有する非対称形状をそれぞれ有する、構成1~7の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成9]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、それぞれの頂部(18)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記頂部(18)を有し、それぞれの前記接触面要素(15)の前記波状部が、連続した平板パネルから構成されており、
前記頂部(18)と後続の前記平板パネルとの間に画定される角度(α)が20°よりも小さく、
前記頂部(18)と直前の前記平板パネルとの間に画定される角度(β)が60°よりも小さい、構成1~8の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成10]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部は、それぞれの谷部(17)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記谷部(17)を有し、
それぞれの前記接触面要素(15)の前記波状部は、それぞれの頂部(18)が平坦であり、かつ前記熱交換器プレート(4)の前記側壁(8、9)に平行となるように、平坦化されたそれぞれの前記頂部(18)を有し、
それぞれの前記頂部(18)が前記谷部(17)よりも長い伸長部分を有する、構成1~9の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成11]
それぞれの前記接触面要素(15)の波状部が、連続した平板パネルから構成されている、構成1~12の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成12]
前記熱交換器プレート(4)の前記第1の側壁(8)に、及び前記熱交換器プレート(4)の前記第2の側壁(9)に固定されている平坦な発熱体(19)を備え、該発熱体(19)は、ジュール効果による熱を発生させるために、電流が流れるように設計されている、構成1~11の何れか一項に記載の冷却モジュール(3)。
[構成13]
前記発熱体(19)は、前記循環室(5)の反対側の、前記熱交換器プレート(4)の側壁(8、9)の外側表面に固定されている、構成12に記載の冷却モジュール(3)。
[構成14]
前記発熱体(19)が、昇温するにつれて電気抵抗が増大するPTCサーミスタである、構成12又は13に記載の冷却モジュール(3)。
[構成15]
電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム(1)であって、
平行六面体の形状を有し、互いに並列に、かつ、平行に配置される、複数の充電式電気化学蓄電池(2)と、
平行六面体の形状を有し、前記充電式電気化学蓄電池(2)と交互配置される、複数の冷却モジュール(3)と、を備えた電気エネルギー貯蔵システム(1)において、
それぞれの前記冷却モジュール(3)が構成1~14の何れか一項によって製造されることを特徴とする、電気エネルギー貯蔵システム(1)。
[構成16]
電気駆動車両のための電気エネルギー貯蔵システム(1)であって、
平行六面体の形状を有し、互いに並列し、かつ、平行に配置されている、複数の充電式電気化学蓄電池(2)と、
冷却液を循環させるために設計され、平行六面体の形状を有し、前記充電式電気化学蓄電池(2)と交互配置される複数の冷却モジュール(3)を備え、前記冷却液が流れるように設計された冷却回路と、を備えた電気エネルギー貯蔵システム(1)において、
前記冷却回路は相変化材料を内部に組み込み、該相変化材料は、前記冷却液から液圧的に隔てられ、かつ前記冷却液と熱的につながり合う少なくとも一つの区画に収容されていることを特徴とする、電気エネルギー貯蔵システム(1)。
【符号の説明】
【0043】
1 貯蔵システム
2 蓄電池
3 冷却モジュール
4 熱交換器プレート
5 循環室
6 前壁
7 後壁
8 側壁
9 側壁
10 上壁
11 下壁
12 入口
13 出口
14 貫通孔
15 接触面要素
16 列
17 谷部
18 頂部
19 発熱体
H1 距離
H2 距離
H3 距離
λ 波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8