(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9794 20170101AFI20240709BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240709BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240709BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/23
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/42
A61K8/44
A61K8/63
A61K8/73
A61K8/92
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2019231937
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 千絵
(72)【発明者】
【氏名】伏見 葵
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-191441(JP,A)
【文献】特開2012-131756(JP,A)
【文献】特開2004-269397(JP,A)
【文献】特開2001-302440(JP,A)
【文献】特開2006-265214(JP,A)
【文献】特開2005-220098(JP,A)
【文献】Extra Rich Powder, ID# 6278309,Mintel GNPD[online],2019年01月,[検索日2023.08.01],<URL:http://www.gnpd.com>
【文献】Skin-Clearing Loose Powder Foundation, ID# 5978315,Mintel GNPD[online],2018年09月,[検索日2023.08.01],<URL:http://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油剤 0.5~10質量%、及び(B)粉体 80~99質量%を含有し、
成分(A)中に(A1)油溶性コメヌカ抽出物を含み、
成分(A)は、さらに、ダイマー酸エステル、ホホバ種子油、直鎖又は分岐鎖の炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上を含み、
成分(B)は、セルロース、コーンスターチ、ポリ乳酸、ラウロイルリシンから選ばれる1種又は2種以上を含み、
(A1)油溶性コメヌカ抽出物の全組成中の含有量が、0.1~5質量%であり、その含有割合(A1)/(A)が、0.05~0.6である、粉末化粧料。
【請求項2】
成分
(A)が、ダイマー酸ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を含む請求項
1記載の粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末化粧料において、滑らかで柔らかい感触を得るために、エラストマーのような弾性のある球状樹脂粉末や、良好な滑沢性を有する窒化ホウ素などを配合することが検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、これらの粉体を多く配合すると、粉っぽくパサついた感触になったり、成型性が悪くなって衝撃で割れやすくるため、粉末化粧料において、滑らかで柔らかい感触と、耐衝撃性を両立させることは困難であった。
また、粉末化粧料において、特有の粉っぽい感触を解消するために多量の油剤を配合すると、ケーキングが生じやすいという課題があった。
一方、コメヌカ油を製造する際、副生成物として生じる脱臭スカムから得られる抽出物である油溶性コメヌカ抽出物は、保湿効果に優れたものであることが知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、このような植物抽出物は、結晶性が高いものが多いため、固形粉末化粧料には配合しにくいと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-293106号公報
【文献】特開2015-229656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粉っぽさがなく、滑らかで柔らかい感触で、しっとり感が得られる粉末化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、保湿性に優れた油溶性コメヌカ抽出物に着目し、鋭意検討を重ねたところ、粉末化粧料中に含まれる油剤中に油溶性コメヌカ抽出物を特定の割合で配合した場合に、粉末化粧料であるにも関わらず、塗布時に摩擦を感じず滑らかで、粉が肌に吸い付き、塗布後の肌がつるんと柔らかくなったような、特有の感触が得られることを見出し、発明を完成した。
【0006】
本発明は、(A)油剤及び(B)粉体を含有し、
成分(A)中に(A1)油溶性コメヌカ抽出物を含み、その含有割合(A1)/(A)が、0.05~0.6である、粉末化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉末化粧料は、塗布時に摩擦を感じず滑らかで、粉が肌に吸い付き、塗布後の肌がつるんと柔らかくなり、しっとりとして、粉っぽさもないものである。また、耐衝撃性に優れるとともに、使用中にケーキングも生じない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)の油剤は、(A1)油溶性コメヌカ抽出物を含むものである。
成分(A1)の油溶性コメヌカ抽出物は、米糠から抽出される油溶性液体であり、米糠から得られる米油、又は米糠から米油を精製する過程で副生する油溶性成分が挙げられる。このうち、米糠から米油を精製する過程で副生する油溶性成分が好ましく、具体的には、米糠から米油を精製する過程の脱臭工程において副生する米油脱臭留出物あるいは該米油脱臭留出物をケン化処理したものが好ましい。油溶性コメヌカ抽出物としては、抽出後に合成処理やバイオ処理が施されていないものが好ましい。なお、油溶性コメヌカ抽出物としては、米糠以外に米胚芽からの抽出物が含まれていてもよい。
これらの米糠から米油を精製する過程で副生する油溶性成分には、スクワレン、トコトリエノール、トコフェロール、植物ステロール等が含まれることが知られている。
成分(A1)の油溶性コメヌカ抽出物は、特開2005-255746号公報に記載の方法で製造したものを用いることができ、また、ライストリエノール(築野食品工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0009】
成分(A1)の油溶性コメヌカ抽出物は、滑らかで柔らかい感触で、しっとりとして、粉っぽさもなく、使用中のケーキングが生じない点から、成分(A)の油剤中の含有割合(A1)/(A)が、0.05以上であり、0.08以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.6以下であり、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましい。また、成分(A1)の油溶性コメヌカ抽出物は、成分(A)中の含有割合(A1)/(A)が、0.05~0.6であり、0.08~0.5が好ましく、0.1~0.4がより好ましい。
【0010】
また、成分(A1)の油溶性コメヌカ抽出物は、なめらかで柔らかい感触で、しっとりとして、粉っぽさもなく、使用中のケーキングが生じない点から、全組成中の含有量が、0.1~12質量%であることが好ましく、0.15~8質量%がより好ましく、0.2~5質量%がさらに好ましい。
一般に、しっとりした感触を出す場合、組成物中の油性成分の量は多くなり、ケーキング等の成型性の問題が生じやすい傾向にあるが、本発明のように成分(A1)を含む場合には少量含有する場合であっても、なめらかで柔らかく、しっとりした感触が極めて高いため、なめらかで柔らかく、しっとりした、粉っぽさのない感触と、使用中のケーキング抑制の両立がより一層実現しやすくなる。
【0011】
また、成分(A)の油剤は、化粧料がより肌になじむ点から、さらに、(A2)ダイマー酸エステルを含むのが好ましい。
成分(A2)のダイマー酸エステルとしては、ダイマー酸とアルコールのエステル体などが挙げられ、ダイマージリノール酸のエステル体が好ましく、ダイマージリノール酸とダイマージオールとのエステル体がより好ましい。また、ダイマー酸又はダイマージリノール酸のエステル部分としては、ベヘニル、イソステアリル、ステアリル、セチル、フィトステリルから選ばれる1種又は2種以上の部分を含むことが好ましく、ベヘニル、イソステアリル、ステアリル、セチル、フィトステリルから選ばれる2種以上の部分を含むことがより好ましい。さらに具体的には、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル等が挙げられ、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)が好ましく、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)がより好ましい。
【0012】
また、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)として、「Plandool-S、-H」、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)として、「LUSPLAN PI-DA」、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルとして、「LUSPLAN DD-DA」、ダイマージリノール酸ジリノレイル(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)として、「Plandool-G」、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイルとして、「LUSPLAN DD-IS」(以上、日本精化社製)等の市販品を用いることができる。
【0013】
成分(A2)のダイマー酸エステルは、肌へのなじみ、しっとり感を与える点から、成分(A)の油剤中の含有割合(A2)/(A)が、0.2以上であるのが好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35がさらに好ましく、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.45以下がさらに好ましい。また、成分(A2)のダイマー酸エステルは、成分(A)中の含有割合(A2)/(A)が、0.2~0.6であるのが好ましく、0.3~0.5がより好ましく、0.35~0.45がさらに好ましい。
【0014】
また、成分(A2)のダイマー酸エステルは、肌へのなじみが良く、しっとり感を与える点から、全組成中の含有量が、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~8質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0015】
成分(A)において、成分(A1)及び(A2)以外の油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、液状、ペースト状、固形状のいずれでも良い。
成分(A)の油剤は、肌にしっとり感を付与し、肌上にしっかりと残す点から、不揮発性であるのが好ましい。
液状の油剤としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、ワセリン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソブチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸ジ2-へチルヘキシル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸オクチルドデシル、グリセリン脂肪酸エステル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-ヘチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリメリト酸トリトリデシル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、メトキシケイヒ酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、炭酸プロピレン等のエステル油;セチルジメチルブチルエーテル、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルエーテル等のエーテル油;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数10~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を有する高級アルコール;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン、フッ素変性シリコーン等のフッ素油;フェノキシエタノール、トコフェロールなどが挙げられる。
【0016】
固形状の油剤としては、例えば、キャンデリラワックス、ライスワックス、サンフラワーワックス、カルナウバロウ、木ロウ等の植物性ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、セレシン等の石油系ワックス;硬化ひまし油、水素添加ホホバ油、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、シリコーンワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンワックス、合成ミツロウ等の合成ワックス;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等の脂肪酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、水添ジリノレイルアルコール等の高級アルコールなどが挙げられる。
【0017】
成分(A)の油剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、しっとりして、粉っぽさが無く、使用中にケーキングしにくい点から、成分(A1)(及び(A2))を含む全合計含有量は、全組成中に、0.5質量%以上であるのが好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.5~20質量%であるのが好ましく、2~15質量%がより好ましく、4~10質量%がさらに好ましい。
【0018】
成分(B)の粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、板状粉体、球状粉体等のいずれでも良い。
板状粉体における板状とは、形状が狭義の板状の他、薄片状等の形状の粉体も含まれる。
かかる板状粉体としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母等の雲母;板状酸化亜鉛、板状酸化チタン、板状酸化セリウム、硫酸バリウム、タルク、板状カオリン、セリサイト、板状シリカ、板状ヒドロキシアパタイト、板状セラミックスパウダー、板状アルミナ、板状窒化ホウ素、板状ポリメチルメタクリレートパウダー、板状酸化鉄、アルミニウム、板状ガラス末等の板状無機粉体の他、ポリエチレン等の樹脂粉末、ラウロイルリシン等のアミノ酸粉体などの板状有機粉体が挙げられる。
これらのうち、肌への密着感、塗布時のなめらかさの観点から、板状有機粉体が好ましく、アミノ酸の板状粉体がより好ましく、ラウロイルリシンの板状粉体がさらに好ましい。
【0019】
球状粉体における球状とは、真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸がある球状粉体等であっても良い。
かかる球状粉体としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、シリカ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の無機球状粉体;ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂等の有機球状粉体などが挙げられる。
【0020】
また、セルロース及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、コーンスターチ、澱粉、果実の殻等の天然高分子及びその誘導体、ポリ乳酸などの生分解性粉体が挙げられる。
【0021】
さらに、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更に、炭酸マグネシウム、カーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料、カルミン等の天然色素などの着色顔料が挙げられる。
【0022】
成分(B)の粉体は、そのまま用いることができ、粉の肌なじみをより一層良くする観点から、粉体をさらに親水化処理して用いることができ、また、塗布後の崩れにくさをより一層向上する点からは、粉体をさらに、疎水化処理、親水化処理して用いることができ、疎水化処理して用いるのが好ましい。
疎水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されず、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、4級アンモニウム塩、アミノ酸系化合物、レシチン、アルキルアルコキシシラン、油剤、有機チタネート等の表面処理剤の1種又は2種以上を用い、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
また、親水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されず、植物系高分子、微生物系高分子、動物系高分子、セルロース系高分子、アルギン酸系高分子、ビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、アクリル系高分子、無機ケイ酸系化合物等の処理を行えばよい。
【0023】
成分(B)としては、肌でののびや、なじみが良好になる点から、生分解性粉体、有機板状粉体から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、セルロース、コーンスターチ、ポリ乳酸、ラウロイルリシンから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、コーンスターチ、ラウロイルリシンを含むのがさらに好ましい。
【0024】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、粉末化粧料としての適度なしっとり感やさらさら感を与える点から、含有量は、全組成中80質量%以上であるのが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に80~99質量%であるのが好ましく、85~98質量%がより好ましく、90~95質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明において、化粧料中に成分(B)として生分解性粉体又は有機板状粉体から選ばれる1種又は2種以上を含む場合、塗布時のなめらかさや肌への密着感の観点から、生分解性粉体、有機板状粉体の含有量は、それぞれ、全組成物中1~10質量%であるのが好ましく、2~8質量%がより好ましい。
【0026】
本発明の粉末化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤などを含有することができる。
【0027】
本発明の粉末化粧料は、通常の方法に従って製造することができ、乾式で製造しても湿式で製造しても良い。例えば、成分(B)の粉体成分を混合・粉砕した後、成分(A)を含む油成分を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕し、粉砕物を、容器に充填して、押圧して成型することにより、固形粉末化粧料を得ることができる。
本発明の粉末化粧料は、例えば、ボディーパウダーや、プレストパウダー、ルースパウダー、フェイスパウダー、パウダーファンデーション、ほほ紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料などとして好適である。
【実施例】
【0028】
実施例1~5、比較例1~2
表1に示す組成の固形粉末化粧料(ボディーパウダー)を製造し、塗布時の摩擦感のなさ、塗布後の肌の柔らかさ、塗布後の肌の吸い付くようなしっとり感、塗布後の肌の粉感のなさ、打型表面の固化を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0029】
(製造方法)
粉体成分(B)を、ヘンシェルミキサーを用いて均一混合し、これに成分(A)を含むその他の成分を加えて更に混合した後、アトマイザーを用いて粉砕し、ふるいを通した。さらに得られた混合物を金皿に充填して押圧し、粉末化粧料(ボディーパウダー)を得た。
【0030】
(評価方法)
5名の専門パネラーが、各ボディーパウダーを肌に塗布したとき、塗布時のなめらかさ(摩擦感のなさ)、塗布後の肌の柔らかさ、塗布後の肌の吸い付くようなしっとり感、塗布後の肌の粉感のなさ、塗布具(パフ)で10往復した後の打型表面の固化について、以下の基準で評価した。結果を5名の平均値で示した。
【0031】
(1)塗布時のなめらかさ(摩擦感のなさ):
5;摩擦感をほとんど感じない。
4;摩擦感をあまり感じない。
3;摩擦感がやや感じない。
2;摩擦感をやや感じる。
1;摩擦感を感じる。
【0032】
(2)塗布後の肌の柔らかさ:
5;塗布後の肌がとても柔らかい。
4;塗布後の肌が柔らかい。
3:塗布後の肌がやや柔らかい。
2:塗布後の肌があまり柔らかくない。
1;塗布後の肌が柔らかくない。
【0033】
(3)塗布後の肌の吸い付くようなしっとり感:
5;塗布後の肌が吸い付くようにとてもしっとりする。
4;塗布後の肌が吸い付くようにしっとりする。
3:塗布後の肌がややしっとりする。
2:塗布後の肌があまりしっとりしない。
1;塗布後の肌がしっとりしない。
【0034】
(4)塗布後の肌の粉感のなさ:
5;塗布後の肌が粉っぽくない。
4;塗布後の肌があまり粉っぽくない。
3;塗布後の肌がやや粉っぽくない。
2;塗布後の肌がやや粉っぽい。
1;塗布後の肌が粉っぽい。
【0035】
(5)塗布具(パフ)で10往復した後の打型表面の固化:
5;塗布具(パフ)で10往復した後、打型表面は固化しない。
4;塗布具(パフ)で10往復した後、打型表面はほとんど固化しない。
3;塗布具(パフ)で10往復した後、打型表面はあまり固化しない。
2;塗布具(パフ)で10往復した後、打型表面はやや固化する。
1;塗布具(パフ)で10往復した後、打型表面は固化する。
【0036】