(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】呼気凝縮物デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20240709BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20240709BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240709BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240709BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240709BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N1/02 W
G01N1/22 X
G01N33/48 S
G01N33/483 F
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2019552630
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(86)【国際出願番号】 GB2018050721
(87)【国際公開番号】W WO2018172761
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519337743
【氏名又は名称】エクスハレイション テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ フォンク ニールセン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】松本 隆彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524267(JP,A)
【文献】特表2008-538816(JP,A)
【文献】特開2004-361160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0173731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
A61B5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気凝縮物を収集して分析するカートリッジデバイスであって、対象者からの呼気を凝縮させる凝縮ゾーンを備え、前記凝縮ゾーンが、冷却手段に対して動作可能に接続可能であり、前記
カートリッジデバイスが、
前記凝縮ゾーンとは分離された、被分析物の検出および被分析物の測定を行う1つまたは複数の別の
分離領域を含み、前記カートリッジデバイスが、前記凝縮ゾーンを前記1つまたは複数の
分離領域に接続する流体経路をさらに備え、
前記分離領域の表面が、表面被膜を含み、該被膜が、前記凝縮物を取り込んで組成を決定する試薬を含み、
前記凝縮ゾーンの表面は、主に水である前記凝縮物が、液滴を形成するのではなく、前記表面にわたって膜を形成
可能な
特性を有するものであるカートリッジデバイス。
【請求項2】
前記凝縮ゾーンが、該凝縮ゾーンを少なくとも部分的に覆う蓋を有する、請求項1に記載のカートリッジデバイス。
【請求項3】
凝縮物の有無を検出する分析開始手段を備えた、請求項1または2に記載のカートリッジデバイス。
【請求項4】
前記1つまたは複数の
分離領域が、測定結果の計算の基準となり得る特定の容積を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項5】
前記特定の容積が、最大4μlである、請求項4に記載のカートリッジデバイス。
【請求項6】
前記1つまたは複数の
分離領域が、1回の呼気の凝縮物の体積よりも容積が小さい被分析物検出ゾーンが存在するように、特定の容積を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項7】
前記表面被膜が、1μm~15μmの範囲の厚さを有する、請求項6に記載のカートリッジデバイス。
【請求項8】
前記分離領域が、凝縮ゾーンに対して動作可能に接続された2つ以上の電極を含み、該電極が、異なる電位に保持された、請求項1から7のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項9】
前記2つ以上の電極のうちの2つの間の電位が、可変である、請求項8に記載のカートリッジデバイス。
【請求項10】
前記1つまたは複数の
分離領域の温度が制御される、請求項1から
9のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項11】
前記凝縮物の分析用の前記試薬が、前記凝縮物が前記凝縮ゾーンから
前記分離領域まで通過する間、前記凝縮物に装填される、請求項1から
10のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項12】
前記分離領域が、2~10mmの範囲の外周を有する、請求項1から
11のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項13】
前記分離領域が、5mmの外周を有する、請求項
12に記載のカートリッジデバイス。
【請求項14】
前記分離領域が、75~750μmの高さを有する、請求項1から
13のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項15】
前記分離領域が、100μmの高さを有する、請求項
14に記載のカートリッジデバイス。
【請求項16】
前記分離領域が、チャンバを備え、該チャンバが、5つの面が囲まれ、流体の進入および置換空気の退出のために第6の面が開放された、請求項1から
15のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項17】
送信手段を備えた、請求項1から
16のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【請求項18】
空気が該
カートリッジデバイスから退出し得る孔またはチャネルをさらに備え、該孔またはチャネルが、
前記分離領域を大気と接続する、請求項1から
17のいずれか一項に記載のカートリッジデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類(特に人間ではあるが、馬、犬等の動物も含む)の呼気の分析に用いられるデバイスに関する。このデバイスは特に、肺胞気の分析に用いられ、使用時には、ハウジング内に保持されて呼気凝縮物の収集を補助する。
【背景技術】
【0002】
本出願人に譲渡された過去の出願(特許文献1)においては、呼気の効率的な収集、特に、後続の分析にエラーを引き起こす揮発性成分の損失を最小限に抑えた収集を可能にするデバイスが記載されている。凝縮した呼気サンプルは、分析に利用可能となる。ただし、分析は、デバイスから分離して行う必要があり、これは、その間にサンプル成分が変化して、得られる結果に影響を及ぼし得ることを意味する。
【0003】
従来技術文献である特許文献2は、所定体積のサンプルが得られるまで呼気を凝縮させる方法を記載している。このようにして得られたサンプルは、保管ゾーンから検出ゾーンまで移動する。ただし、この方法には、収集と検出との間の遅延が含まれるため、サンプルの任意固有の不安定性が、最終的に決定される濃度に影響を及ぼすことになる。たとえば、サンプルには乾燥のための十分な時間があり、短寿命種が分解する可能性があるため、外部源による汚染のリスクが存在する。
【0004】
特許文献3は、呼気凝縮物を測定する閉鎖カセットの提供によって部分的に、上記問題に対処する。デバイス内には、緩衝溶液および/またはセンサキャリブレーション溶液が含まれる。ただし、使用される液体試薬の一部は、保存可能期間が限られている。さらに、オペレータは、複数の手動ステップの実行を求められるが、前記液体試薬を使うことが多く、遅延および潜在的なエラーにつながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2173250号明細書
【文献】独国特許出願公開第19951204号明細書
【文献】独国特許出願公開第10137565号明細書
【発明の概要】
【0006】
第1の広範で独立した態様においては、呼気凝縮物を収集して分析するカートリッジデバイスであって、対象者からの呼気を凝縮させる凝縮ゾーンを備え、当該凝縮ゾーンが、冷却手段に対して動作可能に接続可能であり、デバイスが、被分析物の検出および被分析物の測定を行う1つまたは複数の別の分離領域を含み、カートリッジデバイスが、凝縮ゾーンを1つまたは複数の分離領域に接続する流体経路をさらに備えた、カートリッジデバイスが提供される。
【0007】
この構成は、デバイスの統合性によって、オペレータの介入を最小限に抑えられるため、実施される分析の精度および信頼性が向上するとともに、たとえば60秒間に行われた1回分の呼気または短い呼気サイクルによる凝縮物だけが必要となることから、特に都合が良い。また、この構成によれば、如何なる2次汚染またはサンプル喪失の発生リスクも最小限に抑えられる。ある領域を別の領域から空間的に分離することによって、領域を異なる温度および状態に保持することができ、また、分離領域のチャネルおよび検知ゾーンへの自然流路が凝縮物に与えられていることから、オペレータの干渉の必要がないため、最も大きな誤り原因のうちの1つ(手動作業実行時のユーザエラー)が取り除かれる。
【0008】
また、デバイスの統合性により、より複雑な分析デバイスを提供するようにハウジングとともに作用し得る自己完結型の取り外し可能に挿入可能なカートリッジ部としてデバイスを提供可能である。このため、上述のようなデバイスは、分析デバイスの交換可能なカートリッジとして提供されるようになっていてもよい。
【0009】
凝縮ゾーンは、当該凝縮ゾーンを少なくとも部分的に覆う蓋を有するのが好ましい。この構成は、部分的な蓋が凝縮物をデバイス内に保持する助けとなり、呼気凝縮物をチャネルおよび検知ゾーンへと導くため、特に都合が良い。
【0010】
このデバイスは、凝縮物の有無を検出する分析開始手段を備えるのが好ましい。
【0011】
この構成は、凝縮物サンプルの移動と関連付けられた如何なる遅延およびエラーの可能性をも低減する単一の統合デバイスにおいて実行される呼気凝縮物の分析の機能を有効にするため、特に都合が良い。オペレータの関与の必要なく分析を実施するため、別レベルのシステム制御が提供される。
【0012】
1つまたは複数の分離領域が特定の容積を有し、これらの容積に基づいて、測定結果が計算され得るのが好ましい。
【0013】
特定の容積は、最大約4μlであってもよい。
【0014】
1つまたは複数の分離領域は、1回の呼気の凝縮物の体積よりも容積が小さい被分析物検出ゾーンが存在するように、特定の容積を有するのが好ましい。これにより、呼気凝縮物の決定体積の測定が可能となる。
【0015】
分離領域の表面には、凝縮物を取り込んで組成を決定する試薬を含む表面被膜を含むのが好ましい。
【0016】
この構成は、液体試薬をサンプルに添加する必要がなく、希釈エラーが最小限に抑えられ、保存可能期間が長くて製造も容易なデバイスが提供されることを意味するため、特に都合が良い。
【0017】
表面被膜は、1μm~15μmの範囲の厚さを有するのが好ましい。
【0018】
分離領域は、凝縮ゾーンと動作可能に接続され、異なる電位に保持された2つ以上の電極を含むのが好ましい。一対の電極間の電位は、可変であるのがさらに好ましい。電極の使用によって、被分析物の正確な決定が可能となり、さらに、長持ちする分析手段が提供されるため、精度の低下なく、デバイスを長期間にわたって保管可能となる。
【0019】
任意選択として、前記凝縮物には、さらに離散した準備領域において試薬が添加される。
【0020】
これにより、製造および保管中の相互作用、反応、および/または劣化を防止するための適切な物理的分離を除いて、一体的な配合またはデバイス内の準備のための密接触状態での格納がなされる場合に、本質的に配合禁忌となる薬剤および試薬を使用可能となる。
【0021】
1つまたは複数の領域の温度が制御されるのが好ましい。
【0022】
この構成は、デバイスの異なる機能が最もよく作用するには異なる温度が必要であることから、ゾーンを同じ温度または異なる温度に保持可能であり、デバイスの動作中に温度を変更可能であり、また、周囲温度に対してゾーン内の温度を制御可能であるため、特に都合が良い。
【0023】
凝縮物の分析用の試薬は、凝縮物サンプルが凝縮ゾーンから検出ゾーンまで通過する間、凝縮物サンプルに装填されるのが好ましい。これにより、凝縮物内の被分析物の検出および分析が補助される。
【0024】
分離領域は、2~10mmの範囲の外周、特に5mmの外周を有するのが好ましい。
【0025】
分離領域は、約75~750μmの高さ、特に100μmの高さを有するのが好ましい。
【0026】
分離領域は、5つの面が囲まれ、流体の進入および置換空気の退出のために第6の面が開放されたチャンバを備えていてもよい。
【0027】
凝縮物は、液滴ではなく膜を形成するのが好ましい。領域の上記特徴は、膜の形成の助けとなる。膜は流れを制御し、空気がチャンバ内に捕捉されないようにする。これは任意選択として、呼気凝縮物との適当な接触角を有する凝縮ゾーンの表面材料の選択により実現される。20°前後の接触角が好ましい。
【0028】
より効率的なデバイスの提供のため、複数の呼気凝縮物が同時に収集・分析され得るのが好ましい。
【0029】
任意選択として、デバイスは、分析に関する情報を送信して処理・表示することにより、ユーザが結果を精査できるようにするケーブル、Bluetooth(登録商標、RTM)、Wi-Fi接続等の送信手段を備える。これにより、オペレータの介入がさらに最小化されて、手動作業実行時のユーザエラーによる最も大きな誤り原因のうちの1つが取り除かれる。
【0030】
決定値に対する任意の干渉が測定され、最終信号において考慮されるのが好ましい。
【0031】
この構成は、信号のキャリブレーションによって、少ないエラーで正確な結果を得られるため、特に都合が良い。
【0032】
呼気の流量または呼気の凝縮率および呼気の総収集体積を計算できるように、凝縮ゾーンへの電力が決定されるのが好都合である。これには、許容範囲のパラメータを維持するようにデバイスの効率を決定可能であることから、多くの利点がある。また、この体積の使用により、ユーザの呼吸効率を決定することができる。
【0033】
このデバイスは、空気がデバイスから退出し得る孔またはチャネルであり、分離領域を大気と接続することによって、呼気凝縮物が流入した際に空気がデバイスから離れ得るとともに、空気がデバイス内に捕捉されないようにする、孔またはチャネルをさらに備えるのが好ましい。
【0034】
デバイスがより複雑なデバイスの一部である場合、本明細書の他の部分に示す特定の特徴は、当該複雑なデバイスのハウジングの一部として提供されるようになっていてもよい。たとえば、呼気を凝縮ゾーンにガイドする手段は、カートリッジの形態でデバイスの外部にあってもよい。すなわち、ハウジング内では、凝縮ゾーンが前記カートリッジの一部となる。ハウジングは、カートリッジを挿抜するポートを備えていてもよい。
【0035】
カートリッジデバイスは、当該カートリッジデバイスを周囲空気との直接接触から保護して、さもなければサンプルの希釈によって分析を複雑化させる周囲湿気の共凝縮を可能な限り回避するカートリッジ空気シールドを備え得るのが好ましい。
【0036】
カートリッジデバイスは、当該カートリッジデバイスを周囲光から保護して、呼気サンプル中に存在し得る任意の光活性種の破壊を可能な限り回避するカートリッジ光シールドを備え得るのが好ましい。
【0037】
カートリッジデバイスは、呼気温度を測定する温度センサをさらに備えていてもよい。
【0038】
このため、カートリッジデバイスは任意選択として、呼気数、呼気の含水量、呼気の温度、呼気の二酸化炭素レベル、呼気圧等、患者の呼気の物理的および化学的パラメータを測定する。
【0039】
このデバイスは、これらさまざまなセンサをモニタリングし、これらを利用して実時間でユーザにフィードバックを与えることができるため、ユーザは、それぞれの呼吸プロファイルを変調可能である。このフィードバックは、視覚または聴覚等、複数の形態で与え得る。
【0040】
カートリッジデバイスは、十分な凝縮物が収集されたものと判定した場合、カートリッジの電気的な起動および呼気凝縮物の測定によって、呼気凝縮物内の被分析物の濃度を決定できるように構成されていてもよい。
【0041】
任意選択として、アッセイは、液体サンプルによる2つの電極の電気的短絡等、カートリッジ充填条件が満たされた場合に自動的に開始となる。
【0042】
被分析物は任意選択として、酵素反応により電気化学的に活性な分子へと変換され、電気化学的分析により検出される。酵素配合物は、溶解性または不溶性の配合物である。溶解性の配合物によって、1つまたは複数の酵素が凝縮物サンプルに溶け得るとともに、反応が均一相中で進行する。不溶性の配合物の一部として、1つまたは複数の酵素はさらに、ポリマーマトリクス内で任意選択的に結合される。電圧の印加によって電気化学反応が開始となり、後続の電流は、関心被分析物に比例する。
【0043】
カートリッジデバイスのハウジングへの電気的接続は、アッセイ検出、温度モニタリング、温度制御、自動アッセイ開始、または電気化学的検出に割り当てられた複数の接点を通じて行われる。
【0044】
デバイスは、キャリブレーションの詳細およびデバイスの製造時期に関する情報を保持する一意の識別子を有する。このデータは、リーダ装置により読み出して、デバイス全体の精度の向上に使用可能である。
【0045】
チャンバの充填完了が近づくと、呼気膜凝縮物は、銀/塩化銀基準電極における電位の固定および比較的低いインピーダンスのサンプルの提供の両者に必要な塩のパッチを溶解させる。
【0046】
この設計は、サンプルの手動取り扱いがなく、サンプルが偶然の汚染から保護され、サンプルの移動に必要な可動部品が存在し、空気の封入なくサンプルがチャンバにガイドされ得ることを意味する。凝縮されたサンプルは、移送および分析を通じてカートリッジと接触する。
【0047】
任意選択として、試薬の凝縮物への添加は、表面上のサンプルの通過または機能化膜へのサンプルの吸収時における薬剤の呼気凝縮物への最後から2番目の溶解によって実現される。
【0048】
呼気は、呼気膜の凝縮の効率を最大化させるように機能化が最適化された機能化表面上で凝縮される。この表面は、液滴形成を最小限に抑える代わりに、表面全体に膜を形成するように系統的に最適化・特性化されている。好ましくは捕捉空気の排出用の通気口を持たない最終分析チャンバにマイクロ流体チャンバが組み込まれた従来のデバイスとは異なり、本概念においては、液体が進入すると空気が同じルートで離れる。液体は最初にチャンバの底部へとガイドされることから、チャンバが下から上へと充填されるため、気泡は捕捉されない。
【0049】
デバイスは、凝縮物に対する複数の化学的および生化学的ステップを並列または連続的に実行可能となるようにレイアウトされる。
【0050】
緩衝剤、塩、および酵素等、異なる試薬パッチがデバイス内にレイアウトされる。
【0051】
呼気膜凝縮物は、固定容積検知チャンバにガイドされる。溶液は、チャンバに進入すると、連続して酵素および塩に達する。両パッチの溶解は、時間的に異なる可能性もあるし、重なる可能性もある。
【0052】
最終検知チャンバにおいては、分子、巨大分子、イオン等の使用によって、測定用の特定の関心被分析物を検出可能であり、抗原、抗体、RNA、DNA、タンパク質、酵素、イオノフォア等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの生化学反応は、関心被分析物に比例する信号を与えるように設計されている。
【0053】
呼気凝縮物を収集するとともに凝縮物内の物質を決定する本発明に係るデバイスは、少なくとも1つの凝縮ゾーンおよび少なくとも1つの検知ゾーンを含む。これらのゾーンは、任意の必要な浄化またはサンプル強化を受けつつ、凝縮物の検知ゾーンへの移送を促進するように一体化する。膜が大きな面積に集められ、徐々に小さな面積へと狭まることで膜を最終検知ゾーンに集中させるテーパ状の流体レイアウトが存在する。
【0054】
短期間の後、適切なサンプルが検知ゾーンに達したら、当該サンプルに対するアッセイまたは測定が起こり得る。アッセイの開始は、開始条件によって自動化可能であるが、このような条件としては、2つの電極間の電圧の印加、2つの異種電極間に生じる電圧の測定によって生じる電気信号が可能である。
【0055】
別の実施形態においては、凝縮ゾーンの温度を周囲温度に対して設定可能であり、温度の維持に必要な電力は、呼気速度ならびにガス、蒸気、およびエアロゾル相から液体凝縮物相への相変化に必要な電力の両者を示す。多くの生化学、分子生物学、および化学反応が温度の影響を受けやすいため、反応ゾーンは、好ましくは後側に、周囲温度および凝縮ゾーン温度を上回る温度に昇温させる統合ヒータを有する。
【0056】
温度ゾーンの能動的な加熱によって、温度が10~15℃を下回り得る馬小屋等の低温環境においてもアッセイを実行可能となる。
【0057】
このデバイスは、動作に必要なオペレータの介入が最小限に抑えられ、手動作業実行時のユーザエラーによる最も大きな誤り原因のうちの1つが取り除かれたデバイスを提供するように注意深く設計されている。また、このデバイスは、可動部品なしに設計されている。代わりに、サンプルの冷却、ガイド、および準備には、複雑なポンプ方式を伴わない良好な設計および材料科学の組み合わせが用いられる。呼気凝縮物膜は、最終チャンバへとテーパ状の流体レイアウトによってガイドされる。呼気凝縮物膜を流す駆動力は、重力、毛細管力、およびテーパ状チャネルの組み合わせによってもたらされる。また、このデバイスは、複数の試薬をサンプルに導入可能であるが、これらはすべて、乾燥状態でデバイス上に堆積ならびに/または圧縮および保管されるため、保存可能期間の安定性が最適化される。デバイス全体は、凝縮から最終検出までサンプルがデバイスから離れず、サンプル汚染またはサンプル喪失のリスクが取り除かれるように統合されている。同様に、すべての湿潤部品が各アッセイ後に処分可能であることから、サンプル間の2次汚染に関する懸念も取り除かれる。動作時、デバイスは、壁および弁の背後の周囲湿気から保護される。これにより、周囲湿気の共凝縮が抑えられるが、さもなければ呼気凝縮物膜が希釈および汚染されることになる。
【0058】
関心被分析物または測定から直接集められた信号は、検知ゾーン温度、サンプル導電性、周囲温度、呼気流プロファイル、呼気凝縮プロファイル、呼気二酸化炭素プロファイル等、多くの他の信号に対してキャリブレーション可能である。
【0059】
多くの検知ベースのシステムにおいて、最終信号の大きさならびに関心被分析物もしくは測定に対する信号の感度は、同じ製造バッチのセンサ間および異なる製造バッチのセンサに対して変数となり得る。現行システムにおいて、バッチ内およびバッチ間のセンサ多様性によるエラーは、使用時点のデバイスの特性化およびデバイスの製造時に決定されるキャリブレーション係数によっても取り除かれる。最後に、経年劣化に起因するデバイスの感度の如何なる変化も、入力がデバイスの年齢であるキャリブレーション係数によって、キャリブレーション可能である。
【0060】
以下、呼気凝縮物収集・分析デバイスの実施形態を一例としてのみ示す添付の図面に関して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1a】デバイスのレイアウトをさらに示した図である。
【
図1b】デバイスの別の例示的なレイアウトを示した図である。
【
図2】デバイス内にサンプルを保持して流れをガイドする蓋を備えたデバイスの第2の実施形態を示した図である。
【
図4】デバイスの一実施形態のレイアウトを示した図である。
【
図5】デバイスの検知ゾーンのレイアウトの拡大図である。
【
図6】検知チャンバ内に含まれる化学反応の一例を示した図である。
【
図8】デバイスの別のレイアウトを示した図である。
【
図9】デバイスの別のレイアウトを示した図である。
【
図10】生のノイズデータを示したチャートである。
【
図11】電気ノイズスパイクを示したチャートである。
【
図12a】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【
図12b】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【
図12c】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【
図12d】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【
図12e】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【
図12f】周囲空気の凝縮サンプルへの進入を防止する弁機構を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
長年にわたって、人間または動物における生理学的機能障害を決定する呼気の分析が知られている。呼気の成分の有無は、肺機能または細胞機能等、身体の不備を示し得る。このため、より揮発性の成分を含み、さもなければ捕捉されずに分析から漏れてしまう呼気の収集を目的としたデバイスが開発された。多くのデバイスにおいては、呼気がまずは凝縮されて液体または固体の形態となった後、分析される。
【0063】
ただし、分析結果を取得する上で克服する必要がある問題が存在する。多くのデバイスでは、分析を実行する問題がユーザに残されている。凝縮サンプルは、分析が実行された場所から離れた場所への移送が必要となることが多い。ただし、過酸化水素等、特性化が必要な呼気成分の一部は、本質的に不安定なため、任意の分析の実行前にある程度まで分解することになる。遷移中のサンプルの冷却の他、サンプル取得以降の時間に基づく推定値への後方外挿等、この問題を軽減するステップを講じることも可能であるが、これらのステップは実行が難しく、任意特定の結果に対するエラーの限界が上昇する可能性がある。
【0064】
サンプルが取得された現場で直接分析を実行することにより、上記問題の大部分を克服可能であるが、特に動物に関する場合は、任意の建物から少し離れている可能性があるため、分析の問題を伴う。また、キャリブレーションされた試薬を分析者が手元に有することが求められる。
【0065】
本発明は、呼気の収集および分析の両者を行う手持ちのデバイスを提供することによって、上記不都合を軽減しようとする。
【0066】
これを実現するため、広範な一態様において、デバイスはまず、凝縮物を収集器に収集した後、収集器に流体接続された分析装置に対して凝縮物のサンプルを移送することにより、分析装置において、固体分析要素を用いた分析が実行される。固体要素の使用によって、液体試薬のキャリブレーションの必要性および希釈エラーのリスクが取り除かれる。また、このようなデバイスは、従来のデバイスよりも長い保存可能期間を提供するとともに、製造もより容易である。デバイス内の可動部品の数を減らして信頼性を高めるため、凝縮物は、毛細管現象によってデバイス中を移動するのが好ましく、また、任意選択として、機能化表面を使用することにより領域間の流れを増大させる。理想的には、サンプルの凝縮と分析との間が30秒以下であるものとする。
【0067】
より詳細には、呼気が表面上で凝縮されるが、これは任意選択として、任意の機能化の最適化により、凝縮の効率を最大化するとともに、重力下の流れあるいは凝縮ゾーンから提供された統合流体チャネルまでの凝縮物相の流れを最大化するように機能化されている。デバイスは、凝縮物に対する複数の化学的および生化学的ステップを並列または連続的に実行可能となるようにレイアウトされる。提供されるチャネルレイアウトは、分析時に薬剤および試薬が利用される場合、そのために提供された一連の薬剤および試薬ゾーン上をサンプルが流れる場合に、薬剤および試薬が連続してサンプルに添加され得ることを意味する。この構成により、他の試薬の存在下で不安定なものを含めて、不安定な試薬を相互にごく近接して準備または保管可能となるが、相互作用の防止のため、空間的には依然として分離される。デバイス内においては、試薬およびサンプル調節用添加剤を複数の異なる時点で添加することができる。
【0068】
最後に、凝縮物は、それぞれが固定容積を有する1つまたは複数の検知チャンバに進入する。ここで、分析に必要なタンパク質、酵素、巨大分子、界面活性剤、イオン等を含み得るその他任意の試薬は、最終分析点にごく近接または中間近接した乾燥可動性または固定化配合物として存在し得る。このような試薬(抗原、抗体、RNA、DNA、タンパク質、酵素等をさらに含み得る)を用いることにより、最終検知チャンバにおいては、特定の関心被分析物を検出可能である。検出対象の被分析物としては、グルコース、乳酸塩、ケトン、過酸化水素、および酸化窒素が挙げられるが、これらに限定されず、また、直接的に検出されるようになっていてもよいし、間接的に検出されるようになっていてもよい。
【0069】
検出は、電気化学的な実行によって、結果の精度および再現性を向上させるのが好ましい。一実施形態においては、2つの平行電極が設けられ、使用しない時には互いに電気的に隔離される。電極間に液体が存在する状態では、ソフト短絡が発生して、被分析物のレベルの決定に使用し得る測定可能な電気信号が生じる。また、このような信号は、カートリッジへの凝縮物の到達を決定して、さらなる分析ステップを開始するのにも使用可能である。別の実施形態(図示せず)においては、2つ以上の電極が設けられる。
【0070】
使用される試薬は、関心被分析物の濃度に対して既知の関係(比例等)を有する信号を与えるように設計されている。試薬は、適所に乾燥定着した形態、凍結乾燥ビーズの形態、膜の形態、またはその他任意の好適な形態で存在していてもよい。乾燥試薬を使用する利点として、このような試薬は、保管がより安定する傾向にあり、それぞれの濃度がより正確に把握される可能性が高い。試薬は、生物学的に適合したポリマー、巨大生体分子、またはメディエータを含むポリマーブレンド等の膜であってもよい。また、生物学的に適合したポリマー等の他の試薬(たとえば、ポリウレタン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤)が存在していてもよい。メディエータの例として、特に過酸化水素の分析用にフェロシアン化および/またはフェリシアン化カリウムを使用可能である。
【0071】
図6に示す一例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の使用により、過酸化水素を間接的に検出可能である。HRPの還元型が最初に過酸化水素と反応して酸化型を生成する。酸化型はその後、ヘキサシアノ鉄酸カリウム(II)(フェロシアン化カリウム)と反応してヘキサシアノ鉄酸カリウム(III)(フェリシアン化カリウム)を生成する。そして、電流が電極から流れるアンペロメトリ等の電気化学的方法によって、フェリシアン化カリウムが検出される。流れる電流は、生成されるフェリシアン化カリウムの濃度に比例するため、最終的な電流は、サンプル中の最初の過酸化水素濃度と間接的につながっている。フェリシアン化物種の検出に際しては、これが還元されて、フェロシアン化物に戻る。
【0072】
凝縮ゾーンの温度は、周囲温度に対して設定可能である。温度差の維持に必要な電力の利用により、呼気の生成速度を決定することができる。これを実現するため、温度の維持に必要な電力がモニタリングされる。これは、呼気相の液体凝縮物相への変化により生成される熱エネルギーの関数であるため、このエネルギーの測定結果を生成凝縮物の体積に変換することができる。
【0073】
好適な一実施形態においては、凝縮ゾーンの冷却にペルチェ素子が用いられるようになっていてもよい。冷却ゾーン自体の面上の温度は、静的であってもよいし、動的であってもよい。好適な一実施形態において、温度は、10℃前後となるものの、当然のことながら、周囲条件を含むさまざまなパラメータに応じて変化し得る。デバイスの特定の任意選択的な実施形態のように、大気が除外される場合は、5℃前後の低温を使用可能である。
【0074】
製造されるデバイスの統合性によれば、動作に必要なオペレータの介入が最小限に抑えられたデバイスを提供可能であるため、結果から誤り原因が取り除かれる。また、サンプルの準備および分析に可動部品が関わらないことから、得られる結果が改善されるとともに、デバイスの寿命が長くなる。さらに、デバイスは、複数の試薬をサンプルに導入可能であるが、これらすべての試薬が乾燥状態でデバイス内に保管されるため、試薬の保存可能期間が長くなる。最後に、分析中のサンプルは、凝縮の時間と最終検出との間にデバイスから離れないため、サンプルの汚染または喪失のリスクが最小限に抑えられる。さらに、分析の一部として用いられる要素を使用後に処分可能であることからも、2次汚染のリスクが低減される。さらに、デバイスの分析要素は、カートリッジ等の取り外し可能な部分に組み込み可能であるため、デバイスの収集要素の洗浄あるいは使用準備がなされた場合は、新たなカートリッジを挿入して別途使用の準備をすることができる。これにより、異なる対象者の別個の測定を迅速に行うことができ、以前の対象者からの結果が取得されている間に、対象者の分析を行うことができる。あるいは、同じ対象者に対する異なる呼気の測定を互いに比較的近い時間で行うことができる。
【0075】
カートリッジ内の使用可能な液体の体積は、5~40μl、好ましくは10~30μlと見込まれる。
【0076】
分析に際して、関心被分析物または測定から生成された信号は、検知ゾーン温度、サンプル導電性、周囲温度等、多くの他の信号に対してキャリブレーション可能である。したがって、この場合も、バッチ内およびバッチ間のセンサ多様性によるエラーは、使用時点のデバイスの特性化およびデバイスの製造時に決定される係数によって取り除かれる。
【0077】
電極を用いて実行される分析の結果の変動は、サンプル中の塩化物イオンの異なる濃度に起因するが、これを取り除くため、標準的な電極塩化物濃度(通常、飽和溶液)をサンプルにより構成可能である。これは、塩化ナトリウム等の塩化物が外面または内部に添加された表面上を凝縮物が通過することにより実現され得る。これは、たとえば塩化物イオンが容易に拡散し得るゲル層内に存在し得る。したがって、電極から取得される信号は、塩による電極応答をフィルタリング可能であることから、関心被分析物に起因し得る。
【0078】
分析および凝縮ゾーンに適用された冷却の電力使用による信号は、デバイスまたは外部に取り付けられたプロセッサに供給可能であり、当該プロセッサがその後、ユーザが要求するデータを生成する。また、収集された凝縮物および検知チャンバに進入する凝縮物に関する質量平衡計算の実行によって、デバイスは、当該デバイス全体のサンプルの分布を計算するとともに、カートリッジが漏洩または遮断したかを判定可能であり、デバイスに品質確認を組み入れることができる。
【0079】
ここで
図1を参照するが、この図は、統合収集・分析デバイスの第1の実施形態を示している。デバイス(概して、10で参照)は、凝縮ゾーン12を有する
呼気収集部11上に呼気を案内するマウスピース(ここでは図示せず)に対して動作可能につながっている。凝縮ゾーン12は、収集された凝縮
呼気流体の分析を行い得る検知ゾーン13と流体接続されている。当然のことながら、凝縮ゾーン12が最上位となるようにデバイス10が実際に保持されている場合は、検知ゾーン13への流体の流れが重力によって促進される。
図1には示していないものの、凝縮ゾーン12および検知ゾーン13は、1つまたは複数のチャネルによる流体接続によって、制御された流体流を提供する。チャネルの寸法は、デバイス10全体の寸法よりも1桁小さいが、チャネルの機能に応じて変動し得る。さらに、チャネルの寸法は、チャネルの長さに沿って変動し得る。図示しない別の実施形態において、凝縮ゾーンから検知ゾーンまでの流体の流れは、最初に凝縮流体を1つの領域に収集・保持した後、規定の分割量で収集流体の一部を検知ゾーンに流し込むことにより制御される。
【0080】
好適な一実施形態において、デバイス10の全体寸法は、
図4および
図5に示すように、66mm×30mm×5mmである。好適な実施形態において、凝縮ゾーン12および検知ゾーン13はそれぞれ、略円形であるが、多角形状も有し得る。サイズは、使用に適するように変更可能である。凝縮ゾーン12は、デバイス10全体の寸法オーダの大きさの寸法であるのが好ましい。検知ゾーン13は、約2~10mmで、約5mmの外周を有し得る。高さとしては、約75~750μm、特に100μmが可能である。
【0081】
図1aは、デバイス10の特徴をさらに詳しく示している。
呼気は凝縮ゾーン12上で凝縮され、その表面上に膜を形成する。凝縮流体は、当該流体をセンサ要素19に導くチャネル18を介して、毛細管現象により凝縮ゾーン12から出る。図示のセンサ要素19は、カウンタおよび基準電極を組み合わせたものであるが、別個の実施形態においては、別々に位置付け可能である。作用電極20は、セラミックセンサ21の一部として収容されている。セラミックセンサ21の遠位端の電気接点パッド22によって、使用時にデバイス10が嵌合する装置ハウジング上の対応する要素との電気的接続が可能となる。カバー23が設けられている(
図1b)が、これは、当該カバー23の直下にマイクロ流体チャンバを規定する。
【0082】
ハウジング内のデバイス10の正しい位置合わせを補助するため、ハウジングの対応する突起と係合する鍵穴24が設けられている。また、デバイス10のハウジングへの挿入を補助するため、デバイス10の遠位端25は、くさび形状を有する。センサ要素19、セラミックセンサ21、およびカバー23は、エポキシ樹脂固定具26によりデバイス本体に対して適所に保持されるが、機械的手段を含む他の固定手段も利用可能である。
【0083】
別の好適な実施形態において、1つまたは複数のチャネル(図示せず)は、たとえばサンプルがチャネルに流れ込んだ場合に空気をデバイス10から離れさせる手段を有する。この手段の一例は、空気が退出し得る別のチャネルまたは開口部であってもよい。これにより、空気が離れ得るルートを有することから、流体が流れ込んだ際に空気がデバイス10内に捕捉されなくなる。本実施形態の一例を
図4および
図5に示す。
【0084】
別の実施形態において、デバイスは、
図4に示すように、空気退出チャネル60を具備していてもよい。
【0085】
ガスおよび蒸気の混合物を含む呼気をある体積へと凝縮させるため、凝縮ゾーン12には、冷却手段が設けられている。また、検知ゾーン13の構成要素にも、必要に応じて冷却または加熱手段を設けることにより、呼気凝縮物の分析を補助する。たとえば、酵素的に触媒された反応をアッセイが含む場合、通例は、正常な体温前後で反応を実行するのが好都合である。反応温度の昇温に使用可能なヒータの一例は、スクリーン印刷して検知ゾーンに隣接するセンサの背面に固定可能な導電性ストリップである。たとえば電流をストリップに流して抵抗加熱を利用する場合は、ヒータ両端のパルス電圧によって温度を制御可能である。
【0086】
上記の追加または代替として、熱電対センサも具備可能であり、センサに印刷されて当該センサとの密接触を実現するとともに、センサ温度の正確な値を与えるのが好ましい。ただし、外部の温度センサも使用可能である。
【0087】
凝縮ゾーン12のある領域における凝縮物の収集を促進するため、凝縮ゾーン12は、凝縮
呼気を任意選択として当該凝縮ゾーン12の特定領域へと案内する被覆面を有することができ、また、この特定領域は、凝縮ゾーン12の他の領域よりも低温に維持することができる。表面被膜は、疎水性であるのが好ましいが、必要に応じて親水性も可能である。また、油および水の両者が表面から容易に離れるように、疎水性かつ疎油性の被膜を設けることもできる。このような被膜としては、たとえばテフロン(登録商標、RTM)という商標で販売されているペルフルオロポリマー等、当技術分野において既知のものが可能である。被膜の厚さとしては、乾燥させた場合、1μm~15μmの範囲が可能である。被膜は、サンプルと接触した場合に膨張して厚さが増大するようになっていてもよい。
図7は、円形エリアの膜によって、被膜の一例を示している。本実施形態において、膜状被膜が覆う円形エリアの高さは、5μmである。
【0088】
凝縮ゾーン12または検知ゾーン13(
図2参照)の一方または両方はそれぞれ、蓋14または15によって少なくとも部分的に覆うことができる。
図2においては、凝縮ゾーン12の外周の周りに位置付けられた蓋14を示すが、この蓋14は、凝縮ゾーン12内に凝縮物を保持するように作用する。また、凝縮ゾーン12を部分的に覆う蓋14は、収集部11からの
呼気の流出を最小限に抑えるとともに、凝縮ゾーン12との接触で直ぐには凝縮しない
呼気の喪失を制限するように作用する。外周領域間の開放エリアは、凝縮ゾーン12の表面に呼気が達し得るようにする。
【0089】
検知ゾーン13の検知チャンバおよびチャネル上に位置付けられた蓋15は、1つまたは複数のチャネル中およびチャネルに沿ったサンプルのウィッキングも促しつつ、体積の制御およびサンプルの保持を可能にする。サンプルの体積は、蓋の使用により小さく保たれて分析を補助する。また、蓋は、乱流および混合を取り除く。
【0090】
図3は、最初の試薬または他の修飾剤をサンプルに添加して検知ゾーン32における分析を促進する別のサンプル準備ゾーン31を有するデバイス30を示している。また、サンプルの純度は、サンプルが検知ゾーン32を通過して分析領域33に入る前に決定可能である。
【0091】
検知チャンバは任意選択として、サンプルが存在するかを判定するサンプルセンサに対して動作可能に接続されている。また、検知チャンバ内のサンプルのレベルも決定可能である。予め設定されたレベルに達したら、オペレータからの入力なしでアッセイが自動的に開始となるように、レベルセンサが信号を送信する。これにより、分析が始まる時間が短くなる。
【0092】
図8および
図9は、凝縮ゾーン41、51の下方において相互並列(
図8)または直列(
図9)に、検知ゾーン42、52をデバイス40、50内にレイアウト可能な別の実施形態を示している。
【0093】
図10および
図11は、既知および未知の種々源による干渉が生成信号をどの程度歪ませ得るかを示している。好適な実施形態においては、リーダによって、生の信号内のスパイクが最初に識別され、被分析物の濃度の計算の前に、スパイクの寄与が生の信号から取り除かれる。
【0094】
デバイスの別の実施形態(図示せず)において、デバイスは、凝縮ゾーンから検知ゾーンまでの凝縮流体の通過を管理する制御手段を具備する。これにより、既知の制御された状態で、凝縮呼気を分析へと移動可能である。
【0095】
一例としては、凝縮ゾーン、特に凝縮ゾーンと検知ゾーンとの流体接続が非垂直で、おそらくは水平に配向することにより、流体が比較的ゆっくりと、おそらくは不均一に流れるように配向したデバイスで呼気を収集可能である。そして、カートリッジを手動、任意選択として機械的に回転することにより、垂直配向を与えることができる。このプロセスは、サンプルの有無を判定するセンサによって、信号がカートリッジに送られ、回転手段が所要配向へと駆動される点において、自動的に行われ得る。センサがプロセッサを介してアルコール水準器等につながることにより、カートリッジの現在の配向および流体接続を把握することができる。
【0096】
上記の追加または代替として、凝縮ゾーンの振動により凝縮ゾーンにおいて流体を移動させる振動手段を具備可能である。
【0097】
さらに別の実施形態においては、対象者の唾液が凝縮ゾーンに達して呼気サンプルを汚染することを防止する手段が含まれる。唾液は、肺からの空気に存在する量の10~100倍の過酸化水素を含有することが知られている。このような防止手段は、対象者の正常な呼吸と干渉しないようにする必要があり、Tidal Breathing法と称することが多い。防止手段の一選択肢には、回旋状経路と、任意選択として1つまたは複数の弁とを含む。防止手段は、当該防止手段から出た呼気が凝縮ゾーン12へと案内されるように、デバイス10とともに共通のハウジング上に載置可能である。通例、患者が息を吹き込むマウスピースとして形成された防止手段は、装置の衛生および精度の向上のため、使用後に交換可能であるのが好ましい。
【0098】
さらに別の実施形態においては、周囲空気からの湿気が凝縮ゾーンで凝縮するとともに、主として希釈、場合により浮遊汚染物質の導入によってサンプルを汚染することを防止する手段も具備可能である。これを
図12に示す。
【0099】
呼気凝縮物の潜在的な汚染源の1つとして、周囲空気からの湿気の偶発的な凝縮があり、これは、過酸化水素の濃度が制御されない無制御プロセスとなる。
図12a~
図12fに示す弁機構により、周囲空気が容易にペルチェ冷却器へと流れてカートリッジ内で凝縮することが防止される。また、マウスピース120によれば、唾液トラップ、フィルタ、流量制限器、および鼻クリップ等、必要に応じて用いられる付属品の有効利用が可能となる。したがって、付属品の使用の有無または使用される付属品に応じて、複数の動作モードでデバイスを使用可能である。
【0100】
弁およびバッフルの使用により、呼気の大部分は、カートリッジの冷却された凝縮ゾーンの近傍内の通過を強制されるため、呼気蒸気の凝縮の効率が良好となる。弁付きマウスピースは、直接接続または弁を介した接続がなされた1つまたは複数のチャンバを内部に有し得る。開示の実施形態においては、3つのチャンバが存在し、第1のチャンバ121と第2のチャンバ122との間に弁が存在する一方、第2のチャンバ122および第3のチャンバ123は直接接触している。図示の実施形態において、マウスピースは、外部つまみ128によってハウジングに固定することができる。
【0101】
弁のロジックとしては、デバイスが動作していない場合に、すべての弁が常閉となる。吸気に際しては、第3の弁126が開く一方、第1の弁124および第2の弁125は閉じたままである。呼気に際しては、第3の弁126が閉じ、第2の弁125および第1の弁124が開く。デバイスは、呼気凝縮物被分析物の即時分析を可能とするが、この場合、1つまたは複数の常閉弁の背後で周囲空気がカートリッジから締め出される。空気を肺に案内するとともに肺からカートリッジに案内するデバイスは、直列または並列にレイアウトされた1つまたは複数のチャンバを有し得る。
【0102】
本発明に適した弁の一例として、ダイヤフラム弁を挙げることができる。ダイヤフラム弁は、ユーザの吸気時に、一方の弁が開いて空気の流入を可能とする一方、他方の弁が閉じるように使用される。呼気に際しては、弁状態が逆転する。
【0103】
デバイスは、カートリッジの凝縮ゾーンの表面全体に呼気を案内することによって、呼気による蒸気の効率的な凝縮を保証するように設計されている。通常、凝縮物サンプルは、たとえば十分な呼気凝縮物を収集するために60秒間に行われた多くの呼気サイクルに対して形成されることになる。チャンバは、相互の直接接続または弁を介した接続が可能である。呼気サイクルにおいては、空気が肺に流入し得る一方、カートリッジが周囲空気に曝露されないように空気の流れが制御される。その後の呼気に際しては、周囲への排出前に低温ゾーン上を呼気が通過する経路に沿って、呼気が導かれる。弁を慎重に使用することは、表1に示す弁のロジックによって、デバイスの動作または非動作時に周囲空気がカートリッジに直接達しないことを意味する。また、デバイスは、ユーザ、周囲空気、およびデバイス内の空気間の空気/ガス交換を可能にする1つまたは複数のポートを有する。これらのポートは、唾液トラップ、流量制限器、およびフィルタ等の付属品との併用により、複数の作用モードが可能となる。最後に、デバイスは、空気が口のみを通過する呼吸モードを強制するようにユーザの鼻腔を通る空気の流れを防止するデバイスと併用可能である。
【0104】
【0105】
デバイスのさらに別の実施形態においては、呼気の流量をモニタリングすることにより、ユーザまたは管理者が流量を制御したりガイダンスを発したりすることができる。したがって、デバイス内には、流量のセンサ手段が具備されていてもよい。これにより、センサは、視覚的または聴覚的フィードバックを与え得る実時間データを送信するため、許容範囲の境界に納まるように呼吸速度を調整可能である。また、呼吸速度は、診断決定の一部として利用可能である。
【0106】
例示的なデバイスは、以下の3つの動作モードを有していてもよい。
【0107】
モード1:呼気二酸化炭素レベル、呼気流量、呼気含水量、呼気圧等の1つまたは複数の実時間信号から、対象者の状態を分析する。これら信号のうちの1つまたは複数を用いて、ユーザの状態および/またはそれぞれの肺機能を決定する。
【0108】
モード2:収集された呼気凝縮物から、対象者の状態を分析する。この測定は、呼気プロファイル、呼気含水量、呼気二酸化炭素レベル等のパラメータに対して補正可能である。たとえば、二酸化炭素信号の使用により、被分析物の測定濃度から、被分析物の分割濃度を計算することができる。
【0109】
モード3:呼気プロファイルおよび呼気ガス分析全体の背景において呼気凝縮物が報告され得るように、上述の2つのモードを組み合わせることにより、対象者の状態を分析する。
【0110】
別の例示的な実施形態において、マウスピースは、バッフルの配列を採用して、口からのエアロゾルが凝縮ゾーンに達する機会を最小限に抑える。一構成において、マウスピースに入った空気は、90°前後だけ空気の速度を変化させる第1のバッフルと会合する。その後、第2のバッフルが方向を約180°変化させる。このように、口からの大きな液滴が空気流から滴り落ちて、肺からの蒸気を通過させる。
【0111】
カートリッジデバイスは通常、ハウジング内に交換可能に保持されて分析装置を構成するが、このハウジングは、カートリッジデバイスと協調して使用可能な冷却、加熱、処理手段等の特徴を含む。ハウジングは、凝縮に適した温度までカートリッジを冷却するペルチェプレート等の冷却手段を備えていてもよい。あるいは、冷却手段は、カートリッジの一部であってもよい。
【0112】
ハウジングは、それ自体がカートリッジの一部を構成する反応ゾーンを加熱する加熱手段を備えていてもよい。加熱手段は、ハウジング中に配置されるか、または、カートリッジの一部として配置されていてもよい。ハウジングとカートリッジとの間に電気的接続が存在していてもよい。加熱手段は、抵抗ヒータであってもよい。
【0113】
加熱・冷却手段は、呼気凝縮物膜としての凝縮およびその後の膜に対する酵素アッセイの実行の両者を可能にする。さらに、センサが加熱されるようになっていてもよい。センサの能動的な加熱によって、10~15℃未満の環境におけるカートリッジの動作が可能となる。
【0114】
ハウジングは、実質的に蒸気のみがカートリッジに達するように、唾液エアロゾルを蒸気サンプルから除去する一連のバッフルを備えていてもよい。この代替または追加として、一連のバッフルがカートリッジに設けられていてもよい。さらに代替案として、単一のバッフルがハウジングおよびカートリッジのそれぞれに設けられていてもよい。
【0115】
ハウジングは、複雑なデバイスを通る少なくとも2つの流路を提供する弁機構を備えていてもよい。このため、呼気が第1の流路を通って案内され、吸気が第2の流路を通って案内されるようになっていてもよい。
【0116】
ハウジングは、呼気流量を測定する流量センサをさらに備えていてもよい。
【0117】
ハウジングは、呼気の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサをさらに備えていてもよい。
【0118】
ハウジングは、1つまたは複数の湿度センサをさらに備えていてもよい。たとえば、呼気または周囲空気の湿度を検知する2つ以上の湿度センサが存在していてもよい。
【0119】
ハウジングおよび/またはカートリッジ(好ましくは、カートリッジ)は、呼気温度を測定する温度センサをさらに備えていてもよい。
【0120】
ハウジングは、呼気または吸気時の呼気圧を測定する圧力センサをさらに備えていてもよい。
【0121】
ハウジングは、1つもしくは複数のセンサからの情報の外部装置への提供ならびに/または外部源からの電気エネルギーの受電を行う電子インターフェースをさらに備えていてもよい。電子インターフェースは、アナログまたはデジタル形式の情報を提供するようにしてもよい。
【0122】
ハウジングは、データ処理ユニットをさらに備えていてもよい。データ処理ユニットは、アナログ-デジタル変換器を備えていてもよい。ハウジングは、情報またはデータを外部装置に送信する送達手段をさらに備えていてもよい。また、データ格納手段を備え得る。ハウジングは、取り外し可能なデータ格納手段に対する電子インターフェースを備えていてもよい。
【0123】
ハウジングは、ユーザが呼気パラメータ(圧力または流量等)を所望の範囲内に保つのを補助するフィードバックおよび/または命令をユーザに与える音声出力をさらに備えていてもよい。
【0124】
ハウジングは、ディスプレイをさらに備えていてもよい。ディスプレイは、呼吸サイクルに関する情報を実時間または近実時間でユーザに提供するようにしてもよい。ディスプレイは、ユーザが呼気パラメータ(圧力または流量等)を所望の範囲内に保つのを補助するフィードバックおよび/または命令をユーザに与えるようにしてもよい。
【0125】
装置は、任意数の信号を組み合わせて、患者の状態の決定または信号のキャリブレーションを行うことができる。また、デバイスは、規定条件の満足に応答して、弁を開閉することができる(たとえば、二酸化炭素レベル基準が満たされた場合の弁のトリガーによる分割呼気の収集)。
【0126】
装置は、軽量かつ携行可能であるため、持ち上げて口の前に置くことができ、また、電源または第三者デバイスへの物理的な接続なく動作可能である。
【0127】
装置は、強制的な空気操作を必要とする従来のデバイスに対して、患者の受け入れをより大きくするTidal Breathingと併用されるように設計されている。
【0128】
装置は、手動干渉またはユーザもしくは臨床医による介入なく呼気凝縮物を収集して分析するワークフローに含まれる必要なすべての機能を実行することを目的とする。デバイスは、呼気および呼吸と関連付けられた物理的パラメータの実時間検知および分析の両者を有していてもよい。
【0129】
好適な一実施形態において、呼気凝縮物膜は、対象者の口から蛇行経路を通じて完全一体型の装置(すなわち、ハウジングおよびカートリッジ)へと直ちに案内され、呼気の凝縮によって、冷却ゾーン上に呼気膜凝縮物が生じる。得られた凝縮物膜は、毛細管力および重力の組み合わせにより、分割面を横切ってチャンバへと直ちにガイドされる。膜は、チャンバの側面に下方へと追従し、底部から上方にチャンバを充填することによって、チャンバに進入する。最後に、凝縮物は、複数の塩のパッチを溶解させる。呼気膜凝縮物への塩の溶解は、電気的/電気化学的にモニタリングされ、オンボードアッセイ品質管理の一部として、正しい溶解プロファイルが確認される。正しくないプロファイルを使用すると、カートリッジが拒絶される。
【0130】
本発明に係る一概念は、呼気を膜として凝縮させ、呼気凝縮物膜内の被分析物を分析する単一の統合デバイスに関する。デバイスは、手動干渉または臨床医等のユーザによる介入なく呼気凝縮物を収集して分析するワークフローに含まれる必要なすべての機能を実行する。デバイスは、凝縮物を測定する少なくとも1つの検知ゾーンと一体化された呼気凝縮用の少なくとも1つの温度ゾーンを含む。
【0131】
装置の好適な実施形態において、凝縮ゾーンは、短い蛇行流路により患者の口に接続され、口等からのエアロゾルを除外しつつ、肺、特に肺の肺胞部からの蒸気が通過し得るように設計されている。呼気の凝縮の後、膜は、重力および毛細管力の影響下で、5つの面が閉じたチャンバに流れ込む。膜は、チャンバの側面を下方に流れ、底部から上方へとチャンバを効果的に充填する。
【0132】
チャンバの充填完了が近づくと、呼気膜凝縮物は、銀/塩化銀基準電極における電位の固定および比較的低いインピーダンスのサンプルの提供の両者に必要な塩のパッチを溶解させる。