(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】欠陥抑制が増強された酸性研磨組成物および基板を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240709BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240709BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240709BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020009923
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2023-01-10
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グオ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520547(JP,A)
【文献】特表2010-541203(JP,A)
【文献】特開2018-170505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期成分として:
水;
正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子;
0.0001~0.1wt%の式(I):
【化7】
[式中、R
1は、nが1または2であるとき、(C
1-C
4)アルキルから選択され;R
2は、メトキシ、エトキシまたはメトキシエチレンオキシであり;そして、nは、0、1または2であることができる]を有するアルコキシシランコハク酸無水物;
pH<7;
任意選択的に、pH調整剤;
任意選択的に、第四級アンモニウム化合物;および
任意選択的に、殺生物剤
を含む、
窒化ケイ素または酸化ケイ素と窒化ケイ素との組み合わせの誘電体材料を含む基板を研磨するための酸性化学機械研磨組成物。
【請求項2】
初期成分として:
水;
0.1~40wt%の量の正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒;
0.00075~0.006wt%の量の式(I)のアルコキシシランコハク酸無水物;
2~6.5のpH;
任意選択的に、pH調整剤;
任意選択的に、第四級アンモニウム化合物;および
任意選択的に、殺生物剤
を含む、請求項1に記載の酸性化学機械研磨組成物。
【請求項3】
式(I)を有するアルコキシシランコハク酸無水物が、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-メチルジメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-ジメチルエトキシシリルプロピルコハク酸無水物;3-トリス-(メトキシエチレンオキシ)-シリルプロピルコハク酸無水物;3-メチルビス-(メトキシエチレンオキシ)-シリルプロピルコハク酸無水物;および3-ジメチルメトキシエチレンオキシシリルプロピルコハク酸無水物からなる群より選択される、請求項1
または2に記載の酸性化学機械研磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、良好な誘電体除去速度を備え、欠陥低減が増強された酸性研磨組成物および基板を研磨する方法を対象とする。より具体的には、本発明は、良好な誘電体除去速度を備え、欠陥低減が増強された酸性研磨組成物および基板を研磨する方法であって、酸性研磨組成物が正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子および選ばれたアルコキシシランコハク酸無水物化合物を含み、二酸化ケイ素および窒化ケイ素の誘電体を含む基板上の欠陥の低減を増強させ、誘電体の少なくとも一部を基板から除去する、酸性研磨組成物および基板を研磨する方法を対象とする。
【0002】
発明の背景
集積回路および他の電子デバイスの組立において、導電材料、半導体材料および誘電体材料の複数層が、半導体ウェーハの表面に堆積されるかまたは表面から除去される。導電材料、半導体材料および誘電体材料の薄層を、いくつかの堆積技術によって堆積させることができる。最新の加工プロセスにおける一般的な堆積技術は、スパッタリングとしても知られている物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)、および電気化学めっき法(ECP)を含む。
【0003】
材料の層が連続的に堆積および除去されるにつれて、ウェーハの最上表面は非平面になる。後続の半導体加工(例えば、金属被覆)はウェーハが平坦面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、粗面、凝集した材料、結晶格子の損傷、掻き傷(scratch)および汚染された層または材料のような、望ましくない表面形態および表面欠陥を除去するのに有用である。
【0004】
化学機械平坦化、または化学機械研磨(CMP)は、半導体ウェーハのような基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェーハはキャリアアセンブリ上に取り付けられ、CMP装置内で研磨パッドと接触して配置される。このキャリアアセンブリは、ウェーハに制御可能な圧力を与え、ウェーハを研磨パッドに押し付ける。このパッドは、外部駆動力によってウェーハに対して相対的に移動(例えば、回転)する。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)または他の研磨溶液が、ウェーハと研磨パッドとの間に提供される。したがって、ウェーハ表面は、パッド表面およびスラリーの化学的および機械的作用によって研磨および平坦化される。
【0005】
ある特定の高度なデバイス設計では、研磨プロセス全体および製品歩留まり%の改善のために、使用時点(POU)における、より少ない砥粒wt%での良好な二酸化ケイ素および窒化ケイ素除去効率の提供だけでなく、掻き傷欠陥の低減も提供する、研磨組成物が要求されている。半導体デバイス上の構造のサイズが縮小し続けるにつれて、平坦化および研磨誘電体材料の欠陥低減のために、かつて許容可能であった性能基準は、許容不可となりつつある。かつて許容可能と考えられていた掻き傷は、今日では歩留まりを制限するようになっている。
【0006】
したがって、掻き傷のような欠陥を最小限に抑えながら、望ましい平坦化効率、均一性および誘電体除去速度を示す、研磨組成物および研磨方法に対するニーズがある。
【0007】
発明の概要
本発明は、初期成分として:
水;
正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子;
式(I):
【化1】
[式中、R
1は、nが1または2であるとき、(C
1-C
4)アルキルから選択され;R
2は、メトキシ、エトキシまたはメトキシエチレンオキシであり;そして、nは、0、1または2であることができる]を有するアルコキシシランコハク酸無水物化合物;
pH<7;および
任意選択的に、pH調整剤、第四級アンモニウム化合物および殺生物剤から選択される1以上の添加物を含む、酸性化学機械研磨組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、初期成分として:
水;
0.1~40wt%の正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒;
0.0001~0.1wt%の式(I):
【化2】
[式中、R
1は、nが1または2であるとき、(C
1-C
4)アルキルから選択され;R
2は、メトキシ、エトキシまたはメトキシエチレンオキシであり;そして、nは、0、1または2であることができる]を有するアルコキシシランコハク酸無水物化合物;
2~6.5のpH;および
任意選択的に、pH調整剤、第四級アンモニウム化合物および殺生物剤から選択される1以上の添加物を含む、酸性化学機械研磨組成物を提供する。
【0009】
本発明はさらに、
二酸化ケイ素、窒化ケイ素またはそれらの組み合わせの誘電体材料を含む基板を提供する工程;
酸性化学機械研磨組成物を提供する工程:
研磨表面を備えた化学機械研磨パッドを提供する工程;
化学機械研磨パッドの研磨表面と基板との間の界面に0.69~34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせる工程;および
酸性化学機械研磨組成物を、化学機械研磨パッド上、酸性化学機械研磨パッドと基板との間の界面またはその近くに分注する工程を含み;
基板が研磨され、かつ、誘電体材料の一部が研磨除去される、基板の化学機械研磨のための方法であって、
前記酸性化学機械研磨組成物が、初期成分として:
水;
正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子;
式(I):
【化3】
[式中、R
1は、nが1または2であるとき、(C
1-C
4)アルキルから選択され;R
2は、メトキシ、エトキシまたはメトキシエチレンオキシであり;そして、nは、0、1または2であることができる]を有するアルコキシシランコハク酸無水物化合物:
pH<7;および
任意選択的に、pH調整剤、第四級アンモニウム化合物および殺生物剤から選択される1以上の添加物含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の酸性化学機械研磨組成物および方法は、増強された欠陥の低減、並びに良好な二酸化ケイ素および窒化ケイ素除去速度を可能にする。
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して使用される場合、以下の略語は、文脈が別途指示しない限り、以下の意味を有する:℃=セ氏温度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;μ=μm=ミクロン;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;nm=ナノメートル;min=分;rpm=毎分回転数;lbs=ポンド;kg=キログラム;wt%=重量パーセント;RR=除去速度;Si=ケイ素;Si3N4=窒化ケイ素;DEAMS=(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、98%(Gelest Inc., Morrisville, PA);TMOS=オルトケイ酸テトラメチル;TMAH=水酸化テトラメチルアンモニウム;TEA=テトラエチルアンモニウム;およびEDA=エチレンジアミン;PS=本発明の研磨スラリー;CS=比較研磨スラリー。
【0012】
用語「化学機械研磨」または「CMP」は、化学的および機械的な力だけによって基板が研磨されるプロセスを指し、基板に電気バイアスが印加される電気化学機械研磨(ECMP)とは区別される。用語「TEOS」は、オルトケイ酸テトラエチル[Si(OC2H5)4]の分解から形成される酸化ケイ素を意味する。用語「組成物」および「スラリー」は、本明細書全体を通して互換的に使用される。用語「アルキレン」は、「アルカンジイル」という有機基に関する最近の化学用語と同義である。用語「ハロゲン化物」は、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物を意味する。用語「a」および「an」は、単数形と複数形の両方を指す。全ての百分率は、別途記載のない限り重量百分率である。全ての数値範囲は両端を含み、かつ、そのような数値範囲が論理上合計して100%になるように制約される場合を除き、あらゆる順序で組み合わせ可能である。
【0013】
本発明の酸性化学機械研磨組成物および方法は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素またはそれらの組み合わせを含む誘電体材料を含む基板を研磨するのに有用であり、かつ、誘電体材料に対する改善された研磨欠陥性能を有するのに有用である。本発明の酸性化学機械研磨組成物は、水;誘電体材料上の欠陥および掻き傷を低減するための式(I):
【化4】
[式中、R
1は、変数nが1または2であるとき、(C
1-C
4)アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、好ましくは、メチルまたはエチル、より好ましくは、メチルから選択され;R
2は、メトキシ、エトキシまたはメトキシエチレンオキシ、好ましくは、メトキシおよびエトキシ、より好ましくはエトキシであり;そして、変数nは、0、1または2であることができる;式中、R
1およびR
2は、Siに共有結合しており;そして、n=0であるとき、R
2だけがSiに共有結合している]を有するアルコキシシランコハク酸無水物化合物;pH<7;および、任意選択的に、pH調整剤、第四級アンモニウム化合物および殺生物剤から選択される1以上の添加物を含有する(好ましくは、それらからなる)。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される用語「改善された研磨欠陥性能」は、式(I)を有するアルコキシシランコハク酸無水物化合物を本発明の酸性化学機械研磨方法のために使用される酸性化学機械研磨組成物に含めることを通して得られる欠陥性能を説明するための用語であり、少なくとも以下の式が満たされることを意味する:
X<X0(式I)
[式中、Xは、実施例に示される研磨条件下で測定された場合の、本発明の方法において使用される物質を含有する酸性化学機械研磨組成物での欠陥(すなわち、CMP/フッ化水素(HF)後の掻き傷)であり;そして、X0は、(+)正のゼータ電位を有するシリカ砥粒だけが存在する同一条件下で得られた欠陥(すなわち、CMP/フッ化水素後の掻き傷)である]
【0015】
式(I)の典型的な好ましいアルコキシシランコハク酸無水物化合物は、以下からなる:
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R2=メトキシ、そして、n=0);
3-メチルジメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=メトキシ、そして、n=1);
3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=メトキシ、そして、n=2);
3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R2=エトキシ、そして、n=0);
3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=エトキシ、そして、n=1);
3-ジメチルエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=エトキシ、そして、n=2);
3-トリス-(メトキシエチレンオキシ)-シリルプロピルコハク酸無水物(R2=メトキシエチレンオキシ、そして、n=0);
3-メチルビス-(メトキシエチレンオキシ)-シリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=メトキシエチレンオキシ、そして、n=1);および
3-ジメチルメトキシエチレンオキシシリルプロピルコハク酸無水物(R1=メチル、R2=メトキシエチレンオキシ、そして、n=2)。
【0016】
本発明の最も好ましいアルコキシシランコハク酸無水物は、式(II)を有する3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物である:
【化5】
【0017】
本発明の酸性化学機械研磨方法において使用される酸性化学機械研磨組成物は、初期成分として、0.0001~0.1wt%の式(I)または式(II)を有するアルコキシシランコハク酸無水物、好ましくは、0.00075~0.006wt%、より好ましくは、0.003~0.006wt%の式(I)または式(II)を有するアルコキシシランコハク酸無水物を含有する。
【0018】
本発明の化学機械研磨方法において使用される化学機械研磨組成物に含有される水は、好ましくは、付随する不純物を制限するために脱イオンされた水および蒸留された水の少なくとも一方である。
【0019】
本発明の酸性化学機械研磨方法において使用される酸性化学機械研磨組成物は、0.1~40wt%の正味の正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒;好ましくは、1~25wt%、より好ましくは、1~12wt%、最も好ましくは、1~3wt%の正味正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有する。正味の正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒は、動的光散乱技術(DLS)によって測定された場合に、好ましくは、<200nm;より好ましくは、75~150nm;最も好ましくは、100~150nmの平均粒径を有する。
【0020】
本発明の酸性化学機械研磨組成物において、提供される酸性化学機械研磨組成物は、初期成分として、正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子を含み、該コロイダルシリカ砥粒粒子は窒素含有化合物を含む。そのような窒素含有化合物は、コロイダルシリカ砥粒粒子内に組み込まれても、コロイダルシリカ砥粒粒子の表面上に組み込まれてもよく、または、本発明の化学機械研磨組成物が、初期成分として、窒素含有化合物が正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子内に組み込まれ、かつ、窒素含有化合物がコロイダルシリカ砥粒粒子の表面上にも組み込まれた、組み合わせを有する、コロイダルシリカ砥粒粒子を含有することができる。
【0021】
窒素含有化合物を含むコロイダルシリカ砥粒粒子は、市販されているか、または、化学文献およびコロイダルシリカ砥粒粒子の文献に記載されている通りに当業者が調製することができる。窒素含有化合物を含む市販のコロイダルシリカ粒子の例は、KLEBOSOL(商標)1598-B25表面修飾コロイダルシリカ粒子(AZ Electronics Materials製、The Dow Chemical company, Midland, MIから入手可能);およびFUSO(商標)BS-3(Fuso Chemical Co., Ltd., Osaka, Japan)である。そのようなコロイダルシリカ砥粒粒子は、好ましくは、当業者に周知のストーバープロセスによって調製される。
【0022】
本発明の酸性化学機械研磨組成物は、窒素含有化合物なしのコロイダルシリカ砥粒粒子と混合された、窒素含有化合物を含む正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子を有することができる。本発明を実施するために適した砥粒は、DEAMS表面修飾FUSO BS-3(商標)砥粒スラリー(1wt%シリカに対して80ppm DEAMS)およびKLEBOSOL(商標)1598-B25スラリー(AZ Electronics Materials製、The Dow Chemical companyから入手可能)を含むが、それらに限定されない。また、そのような砥粒の混合物を使用することもできる。
【0023】
好ましくは、本発明の正のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒粒子は、窒素含有化合物を(コロイダルシリカ砥粒粒子の表面上、コロイダルシリカ砥粒粒子内、またはその組み合わせに)含み、該窒素含有化合物には、一般式:
R3R4R5R6N+(III)
[式中、R3、R4、R5およびR6は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C7-C12)アリールアルキルおよび(C6-C10)アリールから選択される]を有するアンモニウム化合物が含まれるが、それらに限定されない。そのような化合物群は、1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい。アンモニウム化合物を含有するそのようなコロイダルシリカ砥粒は、当技術分野において公知の方法または文献における方法から調製することができる。
【0024】
そのような窒素含有アンモニウム化合物の例は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウムおよびジエチルジメチルアンモニウムである。
【0025】
窒素含有化合物はまた、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンまたは第四級アミンのようなアミノ基を有する化合物を含むこともできるが、それらに限定されない。そのような窒素含有化合物はまた、リジン、グルタミン、グリシン、イミノ二酢酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリンおよびトレオニンのような1~8個の炭素原子を有するアミノ酸を含むこともできる。
【0026】
様々な実施態様において、本発明のコロイダルシリカ砥粒粒子中のシリカに対する当該化学種のモル比は、好ましくは、0.1%超10%未満である。
【0027】
アミノシラン化合物は、本発明の化学機械研磨組成物のコロイダルシリカ砥粒粒子の表面または内部に組み込むための最も好ましい窒素含有化合物である。そのようなアミノシラン化合物は、第一級アミノシラン、第二級アミノシラン、第三級アミノシラン、第四級アミノシランおよびマルチポーダル(例えば、ダイポーダル)アミノシランを含むが、それらに限定されない。アミノシラン化合物は、実質的にあらゆる好適なアミノシランを含むことができる。本発明を実施するために使用できるアミノシランの例は、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、ジエチルアミノメチルトリアルコキシシラン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリアルコキシシラン)、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノプロピルトリアルコキシシラン)、アミノプロピルトリアルコキシシラン、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン)、トリアルコキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N-(トリアルコキシシリルエチル)ベンジル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、(ビス(メチルジアルコキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)尿素、ビス(3-(トリアコキシシリル)プロピル)-エチレンジアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(N-トリアルコキシシリルプロピル)ポリエチレンイミン、トリアルコキシシリルプロポイルジエチレントリアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、4-アミノブチル-トリアルコキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシランおよびそれらの混合物である。当業者は、アミノシラン化合物が、水性媒体中で通常加水分解される(または部分的に加水分解される)ことを容易に認識する。したがって、アミノシラン化合物について言及することによって、アミノシランまたはその加水分解された(または部分的に加水分解された)化学種もしくは縮合された化学種をコロイダルシリカ砥粒粒子に組み込むことができることが理解される。
【0028】
様々な実施態様において、コロイダルシリカ砥粒粒子中のシリカに対するアミノシラン化学種のモル比は、好ましくは、0.1%超10%未満である。
【0029】
砥粒粒子内に組み込まれた窒素含有化合物を含むコロイダルシリカ砥粒粒子は、好ましくは、TMOSおよびTEOSのような有機アルコキシシランがシリカ合成の前駆体として使用され、窒素含有化合物が触媒として使用される、ストーバープロセスによって調製される。前駆体としてのTMOSおよびTEOSは、水性アルカリ性環境中で加水分解および縮合を受ける。アルカリ性pHを維持するために使用される触媒は、アンモニア、TMAH、TEAおよびEDAのような窒素含有化学種であるが、それらに限定されない。対イオンとして、これらの窒素含有化合物は、粒子成長の間にコロイダルシリカ砥粒粒子の内部に必然的に捕捉され、その結果、砥粒粒子の内部に組み込まれた窒素含有化合物を含むコロイダルシリカ砥粒粒子が生じる。粒子内に組み込まれた窒素含有化合物を含む市販のコロイダルシリカ砥粒粒子の例は、FUSO BS-3(商標)コロイダルシリカ砥粒粒子のようなFUSO(商標)から入手可能な粒子である。
【0030】
提供される酸性化学機械研磨組成物は任意選択的に、初期成分として、pH調整剤を含有する。そのようなpH調整剤は、ジカルボン酸を含み、ここでのジカルボン酸は、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、それらの塩またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。より好ましくは、提供される酸性化学機械研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸を含有し、ここでのジカルボン酸は、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、それらの塩およびそれらの混合物からなる群より選択される。さらにより好ましくは、提供される酸性化学機械研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸を含有し、ここでのジカルボン酸は、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、それらの塩およびそれらの混合物からなる群より選択される。最も好ましくは、提供される酸性ケミカルメカニカル研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸、コハク酸またはそれらの塩を含有する。そのようなジカルボン酸は、所望の酸性pHを維持するために、酸性化学機械研磨組成物に含まれる。
【0031】
本発明の酸性化学機械研磨方法において使用される酸性化学機械研磨組成物は、<7、好ましくは、2~6.5、より好ましくは、3~6、最も好ましくは、4~5のpHを有する。酸性化学機械研磨組成物を所望の酸性pH範囲で維持するための最も好ましいpH調整剤は、コハク酸である。
【0032】
本発明の酸性化学機械研磨組成物は任意選択的に、1以上の第四級アンモニウム化合物を含む。そのような第四級アンモニウム化合物には、一般式(IV):
【化6】
[式中、R
7は、飽和または不飽和(C
1-C
15)アルキル、(C
6-C
15)アリールおよび(C
6-C
15)アラルキル、好ましくは、(C
2-C
10)アルキル、より好ましくは、(C
2-C
6)アルキル、さらにより好ましくは、-(CH
2)
6-および-(CH
2)
4-、最も好ましくは、-(CH
2)
4-から選択され;式中、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12およびR
13は、各々独立して、水素、飽和または不飽和(C
1-C
15)アルキル、(C
6-C
15)アリール、(C
6-C
15)アラルキルおよび(C
6-C
15)アルカリル、好ましくは、水素および(C
1-C
6)アルキル、より好ましくは、水素およびブチル基、最も好ましくは、ブチルから選択され;そして、アニオンは、カチオンの(2+)電荷を中和する対アニオンであり、アニオンは、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸または酢酸イオンであり、好ましくは、アニオンは、水酸化物またはハロゲン化物イオンであり、より好ましくは、アニオンは、水酸化物イオンである]を有する化合物が含まれるが、それらに限定されない。本発明の酸性化学機械研磨組成物は任意選択的に、初期成分として、0.001~1wt%、より好ましくは、0.1~1wt%、最も好ましくは、0.1~0.3wt%の式(I)を有する化合物を含む。最も好ましくは、式(IV)を有する化合物は、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物である。
【0033】
酸性化学機械研磨組成物は任意選択的に、KORDEX(商標)MLX(9.5~9.9%メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5%水および≦1.0%関連反応生成物)、または、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの有効成分を含有するKATHON(商標)ICP III(各々、The Dow Chemical Company製)[KATHON(商標)およびKORDEX(商標)は、The Dow Chemical Companyの商標である]のような殺生物剤を含有することができる。当業者に公知の通り、そのような殺生物剤を、通常用いられる量で本発明の酸性化学機械研磨組成物に含めることができる。
【0034】
本発明の酸性化学機械研磨方法において研磨される基板は、二酸化ケイ素を含む。基板中の二酸化ケイ素は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、プラズマエッチング済みオルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)、熱酸化物、非ドープケイ酸ガラス、高密度プラズマ(HDP)酸化物を含むが、それらに限定されない。
【0035】
本発明の酸性化学機械研磨方法において研磨される基板は任意選択的に、窒化ケイ素をさらに含む。基板中の窒化ケイ素は、存在する場合、Si3N4のような窒化ケイ素材料を含むが、それらに限定されない。
【0036】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨パッドは、当技術分野において公知の任意の好適な研磨パッドであることができる。当業者は、本発明の方法において使用するために適切な化学機械研磨パッドを選択することを理解している。より好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨パッドは、織布研磨パッドおよび不織布研磨パッドから選択される。さらにより好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨パッドは、ポリウレタン研磨層を含む。最も好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨パッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層およびポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。好ましくは、提供される化学機械研磨パッドは、研磨表面上に少なくとも1つの溝を有する。
【0037】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨組成物が、提供される化学機械研磨パッドの研磨表面上、化学機械研磨パッドと基板との間の界面またはその近くに分注される。
【0038】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学機械研磨パッドと基板との間の界面に0.69~34.5kPaのダウンフォースで研磨される基板の表面に垂直に動的接触を生じさせる。
【0039】
二酸化ケイ素、窒化ケイ素またはそれらの組み合わせを含む基板を研磨する方法において、研磨は、毎分93~113回転数のプラテン速度、毎分87~111回転数のキャリヤ速度、125~300mL/minの酸性化学機械研磨組成物流量、200mmの研磨機上21.4kPaの公称ダウンフォースで行われ;そして、化学機械研磨パッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層およびポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。
【0040】
以下の実施例は、本発明を例証することを意図しているが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0041】
以下の実施例では、別途指示しない限り、温度および圧力の条件は、周囲温度および標準圧力である。
【0042】
研磨除去速度実験を8インチ膜付きウェーハで実施した。全ての実施例にApplied Materials Mirra(登録商標)研磨機を使用した。全ての研磨実験を、AMAT Reflexion IC1000ポリウレタン研磨パッドまたはVisionPad 6000(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)を使用して、34.5kPa(5psi)のダウンフォース、125mL/minの酸性化学機械研磨組成物流量、93rpmのテーブル回転速度および87rpmのキャリア回転速度で実施した。除去速度は、KLA-Tencor FX200計測ツールを使用して、研磨の前後の膜厚を測定することによって決定した。実施例に報告される欠陥性能は、フッ化水素研磨後洗浄(「Pst HF」)後に走査型電子顕微鏡を使用して決定した。Pst-HF洗浄後のTEOSウェーハは全て、KLA-Tencorから入手可能なSurfscan(登録商標)SP2欠陥検査システムを使用して検査した。ウェーハ上のその座標を含む欠陥情報をKLARF(KLA Results File)に記録し、次にこれを、KLA-Tencorから入手可能なeDR-5200欠陥点検システムに転送した。100個の欠陥画像のランダム試料を選択して、DR-5200システムによって再検討した。これらの100個の画像を、様々な欠陥タイプ、例えば、ひびり模様(chatter mark、掻き傷)、粒子およびパッドくずに分類した。これらの100個の画像からの分類結果に基づいて、ウェーハ上の掻き傷の総数を決定した。
【0043】
実施例1
化学機械研磨組成物
以下の化学機械研磨組成物は、研磨スラリーであり、下の表1に開示される成分および量を含むように調製した。pHのさらなる調整なしに、成分を残部である脱イオン水と合わせた。pHをコハク酸水溶液で維持した。
【0044】
【0045】
実施例2
TEOS除去速度および欠陥性能
上の実施例1の表1の本発明の化学機械研磨スラリー組成物(PS-3およびPS-4)のTEOS除去速度および欠陥性能を、同じく上の実施例1の表1に開示される比較スラリー(CS-2)のTEOS除去速度および欠陥性能と比較した。AMAT Reflexion IC1000ポリウレタン研磨パッドを使用して基板を研磨した。性能結果は、下の表2である。
【0046】
【0047】
本発明の酸性化学機械研磨組成物は、対照配合物とは対照的に、二酸化ケイ素誘電体材料の欠陥および掻き傷を大幅に低減した。加えて、本発明の酸性化学機械研磨組成物は、二酸化ケイ素誘電体材料の欠陥および掻き傷を低減させながら、なお良好なTEOS RRを有していた。
【0048】
実施例3
TEOS除去速度および欠陥性能
化学機械研磨スラリー組成物のTEOS除去速度および欠陥性能を、上の実施例1の表IからのCS-3およびPS-5で繰り返した。VisionPad 6000(商標)ポリウレタン研磨パッドを使用して基板を研磨した。他の全ての研磨条件およびパラメーターは、上の実施例2と同じであった。性能結果は、下の表3である。
【0049】
【0050】
上の実施例2と同様に、本発明の酸性化学機械研磨組成物は、対照配合物とは対照的に、二酸化ケイ素絶縁材料の欠陥および掻き傷の大幅な低減を示した。加えて、本発明の酸性化学機械研磨組成物は、なお良好なTEOS RRを有していた。
【0051】
実施例4
TEOSおよびSiN除去速度
研磨除去速度実験を8インチ膜付きウェーハで実施した。全ての実施例にApplied Materials Mirra(登録商標)研磨機を使用した。全ての研磨実験を、VisionPad 6000(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)を使用して、34.5kPa(5psi)のダウンフォース、125mL/minの化学機械研磨スラリー組成物流量、93rpmのテーブル回転速度および87rpmのキャリア回転速度で実施した。除去速度は、KLA-Tencor FX200計測ツールを使用して、研磨の前後の膜厚を測定することによって決定した。研磨結果を下の表4に示す。
【0052】
【0053】
トリエトキシシリルプロピル-コハク酸無水物を導入することで、良好なTEOSおよびSi3N4除去速度が可能になるが、トリエトキシシリルプロピル-コハク酸無水物は、ターゲットとなるTEOS除去速度には小さな影響しか及ぼさないと思われ、Si3N4除去速度の上昇はわずかであった。