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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】RFタグ及び透明アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20240709BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01Q1/38
G06K19/077 280
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020022792
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129214
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 布士人
(72)【発明者】
【氏名】小松 和磨
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091556(JP,A)
【文献】特表2014-501465(JP,A)
【文献】特開2019-061697(JP,A)
【文献】特開2011-205635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に配設されたアンテナ部と、
前記透明基材上に配設され、前記アンテナ部と電気的に接合される接合部と、
前記接合部上で、前記接合部と導電性粒子により電気的に接合される半導体素子と、を備え、
前記アンテナ部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第1導電性パターンにより構成され、
前記接合部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第2導電性パターンにより構成され、
前記接合部の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、
前記可視光透過率T2は、前記アンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値を有し、
前記導電性粒子の平均粒径Dが、3μm以上100μm以下であり、
前記平均粒径D、前記接合部における第2導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W 4 、及び導電性パターンを構成する導電性細線の厚さH 2 は、下式(1)を満たす、
(W 4 2 /4 < (D/2) 2 -(D/2-H 2 2 (1)
RFタグ。
【請求項2】
前記開口幅W4は、1.0μm以上10μm以下である、
請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記開口幅W4は、前記アンテナ部における第1導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W2よりも小さく、
前記開口幅W2は、60μm以上300μm以下である、
請求項1又は2に記載のRFタグ。
【請求項4】
前記接合部に形成される第2導電性パターンの単位面積当たりの占有面積率A2は、前記アンテナ部に形成される第1導電性パターンの単位面積当たりの占有面積率A1よりも大きく、
前記占有面積率A2は、30%以上80%以下であり、
前記占有面積率A1は、0.5%以上10%以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項5】
前記接合部と半導体素子とが、前記導電性粒子を含む異方性導電性接着剤により電気的に接合されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項6】
前記接合部における第2導電性パターンの形成されていない開口部は、前記導電性粒子の平均粒子径よりも狭い開口幅W4を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項7】
透明基材と、
前記透明基材上に配設されたアンテナ部と、
前記透明基材上に配設され、前記アンテナ部と導電性粒子により電気的に接合される接合部と、を備え、
前記アンテナ部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第1導電性パターンにより構成され、
前記接合部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第2導電性パターンにより構成され、
前記接合部の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、
前記可視光透過率T2は、前記アンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値を有し、
前記導電性粒子の平均粒径Dが、3μm以上100μm以下であり、
前記平均粒径D、前記接合部における第2導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W 4 、及び導電性パターンを構成する導電性細線の厚さH 2 は、下式(1)を満たす、
(W 4 2 /4 < (D/2) 2 -(D/2-H 2 2 (1)
透明アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグ及びこれに用いられる透明アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
透明アンテナが様々な場面で用いられている。透明アンテナとしては、例えば、自動車において、テレビ電波やFM電波等の各種電波、カーナビゲーションシステムに用いられるGPS(Global Positioning System)衛星からの位置座標情報に関する電波等を受信するためのアンテナとして、フロントガラス等に設置されるフィルムアンテナが知られている。
【0003】
また、フィルムアンテナは、輸送、搬送、製造、廃棄物管理、郵便物の追跡、航空機での手荷物照合、及び有料道路の通行料金管理を含む、多くの産業において幅広く使用される無線周波数識別(RFID)で使用される。RFタグは、供給元から顧客に、及び顧客のサプライチェーンを通じて、配送を追跡するために有用である。このようなフィルムアンテナは、アンテナを微細化された導電性パターンにより形成することで、導電性パターンの不可視性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-66610号公報
【文献】特開2011-91788号公報
【文献】特開2017-175540号公報
【文献】特開2003-209421号公報
【文献】特開2016-105624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載のように、導電性パターンの微細化により、その不可視性が向上する。しかしながら、導電性パターンが微細化すると、アンテナを構成する導電性パターンとこれに電気的に接続されるICチップ等の半導体素子との接合が困難になる場合がある。
【0006】
ここで、例えば、特許文献4では、ICチップの接合に際し、事前にICチップの周囲に子アンテナパターンを形成しICチップラベルを生成する。その後、子アンテナパターンが、基材上に形成された親アンテナパターンと導通するように接合を行う。しかしながら、ICチップと周囲に設ける子アンテナパターンの視認性が高く、得られるRFタグの意匠性が低下する場合があった。
【0007】
一方、例えば、特許文献5では、異方性導電ペースト(ACP)を用いて、ICチップとアンテナを構成する導電性パターンとを接合することが記載されている。ACPは、導電性粒子を含有する。ACPは、当該導電性粒子により電子部品同士を接合した状態で、接合面に対して面外方向(接合面に垂直な方向)の導電性を実現することを特徴とし、面内方向(接合面に平行な方向)の導電性は示さない。
【0008】
ここで、線幅5μm以下の導電性パターンでアンテナが構成された場合、ACPによりアンテナと半導体素子と電気的に接合させるためには、導電性パターン上に導電性粒子が位置する必要がある。ここで、導電性粒子の粒径と導電性パターンの線幅が同程度であると、導電性パターンの形成されていない開口部に導電性粒子が位置する確率が高まり、結果として、ACPによる導電接合が困難となる。
【0009】
また、上記導電接合の課題に対応するために、半導体素子との接合部のみを導電性パターンとせず、金属面とすればよいが、形成した金属面の視認性が高まる。その場合、半導体素子の配設面の裏面側からの観察において、金属面が輝点と観察され、外観上好ましくない。これは、透明基材表面に金属面を形成すると、透明基材と接している面は、非常に平滑な金属面となり、正反射性が増加するために、反射光において周囲よりも目立つ輝点となると推察される。透明アンテナは、用途上、透明基材の両面から視認される場合が多いため、特に好ましくない。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、半導体素子との電気的接合を良好にし、裏面からの半導体素子との接合部の不可視性に優れる、RFタグ及びこれに用いられる透明アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1]
透明基材と、
前記透明基材上に配設されたアンテナ部と、
前記透明基材上に配設され、前記アンテナ部と電気的に接合される接合部と、
前記接合部上で、前記接合部と電気的に接合される半導体素子と、を備え、
前記アンテナ部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第1導電性パターンにより構成され、
前記接合部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第2導電性パターンにより構成され、
前記接合部の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、
前記可視光透過率T2は、前記アンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値を有する、
RFタグ。
[2]
前記接合部における第2導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W4は、1.0μm以上10μm以下である、
[1]に記載のRFタグ。
[3]
前記開口幅W4は、前記アンテナ部における第1導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W2よりも小さく、
前記開口幅W2は、60μm以上300μm以下である、
[1]又は[2]に記載のRFタグ。
[4]
前記接合部に形成される第2導電性パターンの単位面積当たりの占有面積率A2は、前記アンテナ部に形成される第1導電性パターンの単位面積当たりの占有面積率A1よりも大きく、
前記占有面積率A2は、30%以上80%以下であり、
前記占有面積率A1は、0.5%以上10%以下である、
[1]~[3]のいずれか1項に記載のRFタグ。
[5]
前記接合部と半導体素子とが、導電性粒子により電気的に接合される、
[1]~[4]のいずれか1項に記載のRFタグ。
[6]
前記接合部と半導体素子とが、前記導電性粒子を含む異方性導電性接着剤により電気的に接合されている、
[5]に記載のRFタグ。
[7]
前記接合部における第2導電性パターンの形成されていない開口部は、前記導電性粒子の平均粒子径よりも狭い開口幅W4を有する、
[5]又は[6]に記載のRFタグ。
[8]
前記導電性粒子の平均粒径Dが、3μm以上100μm以下であり、
前記平均粒径D、前記開口幅W4、及び導電性パターンを構成する導電性細線の厚さH2は、下式(1)を満たす、請求項4~6のいずれか1項に記載のRFタグ。
(W42/4 < (D/2)2-(D/2-H22 (1)
[9]
透明基材と、
前記透明基材上に配設されたアンテナ部と、
前記透明基材上に配設され、前記アンテナ部と電気的に接合される接合部と、を備え、
前記アンテナ部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第1導電性パターンにより構成され、
前記接合部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第2導電性パターンにより構成され、
前記接合部の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、
前記可視光透過率T2は、前記アンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値を有する、
透明アンテナ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナ部と半導体素子との電気的接合を良好にし、裏面からの半導体素子との接合部の不可視性に優れる、RFタグ及びこれに用いられる透明アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係るRFタグ100の概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係るRFタグ100の概略構成を示す側面図である。
図3図3は、集電部12、接合部121、及びアンテナ部13の概略構成を示す、図1のS1a部分の拡大図である。
図4図4は、アンテナ部13を構成する第1パターン131を示す、図3のS1部分の拡大図である。
図5図5は、第1パターン131の別形態を示す概略図である。
図6図6は、接合部121を構成する第2導電性パターン1211を示す、図3のS2部分の拡大図である。
図7図7は、アンテナ部及び接合部の別形態を示す概略構成図である。
図8図8は、集電部12、接合部121、及びアンテナ部13の概略構成を示す、図7のS1b部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
本実施形態に係るRFタグは、透明基材と、当該透明基材上に配設されたアンテナ部と、当該透明基材上に配設され、当該アンテナ部と電気的に接合される接合部と、当該接合部上で当該接合部と電気的に接合される半導体素子と、を備える。
アンテナ部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第1導電性パターンにより構成される。
接合部が、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第2導電性パターンにより構成される。
加えて、前記接合部の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、可視光透過率T2は、前記アンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値を有する。
【0016】
以上の構成を有することで、本実施形態に係るRFタグは、アンテナ部と半導体素子との電気的接合を良好にし、裏面からの半導体素子との接合部の不可視性に優れる。
【0017】
[RFタグ]
「RFタグ」とは、「Radio Frequencyタグ」の略称である。なお、RFタグは、電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFIDタグ等、他の名称で呼称されることもある。この実施形態でいう「RFタグ」は、対応するリーダとともに用いられ、リーダとの間で非接触にてデータを送信または送受信できるものをいう。かかる非接触の送信または送受信は、好ましくは電波によって行われる。なお、リーダは、ライタ(書き込み)を兼ねていてもよい。本実施形態では、電池を内蔵しておらず、リーダ・ライタから受信した電波をエネルギー源として動作するパッシブタグであるRFタグ100を示すが、本実施形態のRFタグ100は、さらに電池(不図示)を内蔵し、その電力を送受信や内部回路用電源として使用するアクティブタグや、その他センサやセンサの電源としての電池を内蔵するセミパッシブタグであってもよい。なお、本実施形態においてRFタグとは、アンテナを有することにより特定の周波数の送受信が可能であるものをいう。したがって、ICタグと呼ばれるものであっても上記構成を満たすものであれば、本実施形態におけるRFタグに含まれる。
【0018】
図1は、本実施形態に係るRFタグ100の概略構成図である。図2は、本実施形態に係るRFタグ100の概略構成を示す側面図である。RFタグ100は、第1主面及び第2主面を有する透明基材11と、透明基材11の第1主面上に配設されたアンテナ部13と、アンテナ部13と電気的に接続する集電部12と、透明基材11の第1主面上に配設された接合部121と、接合部121上で、接合部121と電気的に接合される半導体素子14と、を備える。半導体素子14は、導電性接着層15を介して、接合部121と接合する。集電部12は、アンテナ13部と電気的に接続されるものであり、アンテナ部13が所定の周波数に応答して発生した電気を、半導体素子14に向かって集電する部分をいう。また、接合部121は、集電部12のうち、半導体素子14と接合する部分をいう。以下、集電部12とその接合部121を区別する必要がなく、両方に関するものに関しては、「集電部12(接合部121)」と表記することがある。また、単に「集電部12」と記載する場合であっても、集電部12における接合部121以外の部分を意味するものではない。
【0019】
図3は、集電部12、接合部121、及びアンテナ部13の概略構成を示す、図1のS1a部分の拡大図である。図3に示すように、ループタイプの集電部12は、ループの先端が対向した接合部121を有する。接合部121は、集電部12の先端であって、半導体素子14と接合する場所である。
【0020】
なお、本実施形態における透明アンテナは、第1主面及び第2主面を有する透明基材11と、透明基材11の第1主面上に配設されたアンテナ部13と、透明基材11の第1主面上に配設された接合部121とを有する。
【0021】
<半導体素子>
半導体素子14としては、特に限定されないが、記憶素子等の集積回路が挙げられる。半導体素子14は、RFタグ100の用途に応じて公知のものを用いることができる。半導体素子14の構成は、特に制限されないが、例えば、記憶部、電源整流部、受信部、制御部、及び送信部などの機能部を有する。
【0022】
<アンテナ部>
図4は、アンテナ部13を構成する第1パターン131を示す、図3のS1部分の拡大図である。アンテナ部13は、第1パターン131と、開口部132とを有する。第1パターン131は、0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する導電性細線を有する。当該線幅の導電性細線を有することで、第1パターン131における導電性細線が視認できなくなる。第1パターン131は、アンテナ部13が所定の周波数に応答するよう、その外縁形状が設計される。第1パターン131を構成する導電性細線は、アンテナ部13の領域内で互いに電気的に導通する。また、第1パターン131は、例えば、導電性細線により構成されるグリッドである。グリッドの単位形状は、特に限定されないが、例えば、三角形、四角形、六角形等が挙げられる。図4には、単位形状が四角形であるグリッドが示されている。図5は、第1パターン131の別形態を示す概略図である。当該別形態においては、単位形状が六角形であるグリッドを有する。
【0023】
導電性細線は、金属細線であることが好ましい。金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0024】
(第1パターンの線幅W1
第1パターンを構成する導電性細線の線幅W1は、好ましくは0.25μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上4.0μm以下であり、さらに好ましくは、1.0μm以上3.0μm以下である。導電性細線の線幅W1を当該範囲とすることで第1パターンを構成する導電性細線が目視できなくなり、アンテナ部の視認性を低減させることができる。本実施形態の線幅W1とは、透明基材11の第1パターン131が配された面側から、導電性細線を透明基材11の表面上に投影したときの導電性細線の線幅をいう。
【0025】
(厚さH1
第1導電性パターンを構成する導電性細線の厚さH1は、好ましくは10nm以上1,000nm以下であり、より好ましくは50nm以上あり、さらに好ましくは75nm以上である。導電性細線の厚さH1が10nm以上であることにより、導電性がより向上する傾向にある。他方、導電性細線の厚さH1が1,000nm以下であることにより、広い視野角において視認性が抑制される。
【0026】
(アスペクト比)
導電性細線の線幅W1に対する導電性細線の厚さH1で表されるアスペクト比(W1/H1)は、好ましくは0.05以上1.00以下である。アスペクト比の下限は、より好ましくは0.08以上、さらに好ましく0.10以上である。アスペクト比が0.05以上であることにより、透過率を低下させることなく、導電性をより向上できる傾向にある。
【0027】
(ピッチP1
導電性パターン131のピッチP1は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。導電性パターン131のピッチP1が5μm以上であることで、良好な透過率を得ることができる。また、導電性パターン131のピッチP1は、好ましくは1,000μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下である。導電性パターン131のピッチP1が1,000μm以下であることにより、導電性をより向上できる傾向にある。なお、導電性パターン131の正方形のグリッドパターンである場合には、線幅1μmの導電性パターン131のピッチP1を200μmとすることにより、開口率99%とすることができる。なお、ピッチP1は、線幅W1と導電性細線間の距離の和を意味する。
【0028】
(占有面積率A1
占有面積率A1は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは2%以上である。占有面積率A1を当該値以上とすることで、アンテナ部の導電性がより向上する傾向にある。また、占有面積率A1は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下である。占有面積率A1を当該値以下とすることにより、透明アンテナの可視光透過率がより向上する傾向にある。
【0029】
なお、パターンにおける「占有面積率」とは、透明基材上の第1パターンが形成されている領域について以下の式で算出することができる。
占有面積率(%)=(第1パターンの占める面積/透明基材の第1パターンが形成されている領域の面積)×100
【0030】
開口部132の開口幅W2は、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは60μm以上であり、さらに好ましくは70μm以上である。当該範囲とすることで、アンテナ部13の視認性をより抑制することができる。開口部132の開口幅W2は、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。アンテナ部13の電気抵抗を減らし、アンテナの機能をより良好にすることができる。「開口幅」とは、開口部の短手方向の幅を意味する。なお、開口が正方形である場合には、いずれか一辺の幅である。
【0031】
(アンテナ部の可視光透過率T1
アンテナ部13の可視光透過率T1は、好ましくは80%以上99.0%以下であり、より好ましくは85%以上95%以下である。可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の透過率を算出することで測定することができる。可視光透過率T1が、80%以上であることで、アンテナ部の視認性をより抑制することができ、85%以上であると、透明基材との透過率差が少なくなり、アンテナ部が視認されにくくなる。また、可視光透過率T1が、99%以下とすることで、アンテナ部のパターンによる導電性を維持することが可能であり、95%以下であると、良好な導電性を確保しやすくなり、工業生産上好ましい。
【0032】
アンテナ部13の可視光透過率T1は、第1パターンの線幅を小さくしたり、開口率を向上させたりすることにより、より向上する傾向にある。
【0033】
(アンテナ部の面抵抗率)
アンテナ部13の面抵抗率は、好ましくは0.1Ω/sq以上1,000Ω/sq以下であり、より好ましくは0.1Ω/sq以上500Ω/sq以下であり、さらに好ましくは0.1Ω/sq以上300Ω/sq以下であり、よりさらに好ましくは0.1Ω/sq以上200Ω/sq以下であり、さらにより好ましくは0.1Ω/sq以上100Ω/sq以下であり、さらにより好ましくは0.1Ω/sq以上20Ω/sq以下であり、さらにより好ましくは0.1Ω/sq以上10Ω/sq以下である。面抵抗率が低いほど電力損失が抑制される傾向にあり、アンテナとしての感度を高めることができる。
【0034】
面抵抗率の測定方法に関して、先ず、透明アンテナのアンテナ部から第1パターン131が全面に配された部分を矩形状に切り出して、測定サンプルを得る。得られた測定サンプルからJIS K 7194:1994に準拠した四端子法により面積抵抗率Rs(Ω/sq)を測定することができる。面積抵抗率の測定に用いられる抵抗率計としては、例えば、「ロレスターGP」(製品名、三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0035】
面抵抗率は、導電性細線の同一の占有面積率でも、アスペクト比(厚さ)の増加にともない、低下する傾向にある。また、導電性細線を構成する金属材料種の選択によっても調整することが可能である。
【0036】
(アンテナ部のヘイズ)
アンテナ部13のヘイズは、好ましくは0.01%以上5.00%以下である。ヘイズの上限は、より好ましくは4.00%以下であり、さらに好ましくは3.00%以下である。ヘイズの上限が5.00%以下であれば、可視光に対する導電性フィルムの曇りを十分に低減できる。本明細書におけるヘイズは、JIS K 7136:2000のヘイズに準拠して測定することができる。
【0037】
<集電部>
図1に示すように、集電部12は、ループ形状を有していてもよい。集電部121は、好ましくは0.25μm以上5.0μm以下の線幅を有する第3導電性パターンにより構成される。ここで、本実施形態における第3導電性パターンは、後述の第2導電性パターン1211と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0038】
<接合部>
図1に示すように、接合部121は、アンテナ部13との接続を容易にするため、ループ形状を有していてもよい。半導体素子14は、本実施形態に係るRFタグ100の接合部121で、異方性導電性接着剤により接続される。異方性導電性接着剤は、導電性接着層16を構成する。異方性導電性接着剤については後ほど詳細に説明する。
【0039】
(接合部の可視光透過率T2
接合部121の可視光透過率T2は、30%以上80%以下であり、且つ、可視光透過率T2は、アンテナ部13の可視光透過率T1よりも小さい値を有する。当該範囲とすることで、半導体素子との電気的接合を良好にし、裏面からの半導体素子との接合部の不可視性に優れるRFタグを提供することができる。接合部121の可視光透過率T2は、好ましくは75%以下であり、より好ましくは70%以下である。接合部121の可視光透過率T2は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは45%以上である。可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の透過率を算出することで測定することができる。
【0040】
接合部121の可視光透過率T2は、第2導電性パターン1211の配線密度を調整することで、上記の範囲とすることができる。
【0041】
可視光透過率T1と可視光透過率T2との差(T1-T2)は、好ましくは45%以上60%以下であり、より好ましくは50%以上57%以下であり、さらに好ましくは53%以上55%以下である。差(T1-T2)を当該範囲とすることで、アンテナ部と半導体素子との電気的接合をより向上させることができる。
【0042】
図6は、接合部121を構成する第2導電性パターン1211を示す、図3のS2部分の拡大図である。接合部121は、第2導電性パターン1211と、開口部1212とを有する。第2導電性パターン1211を構成する導電性細線は、アンテナ部13の領域内で互いに電気的に導通することが好ましい。また、第2導電性パターン1211は、例えば、導電性細線により構成されるグリッドである。グリッドの単位形状は、特に限定されないが、例えば、三角形、四角形、六角形等が挙げられる。
【0043】
導電性細線は、金属細線であることが好ましい。金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0044】
(第2導電性パターンの線幅W3
第2導電性パターンを構成する導電性細線の線幅W3は、好ましくは0.25μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上4.0μm以下であり、さらに好ましくは、1.0μm以上3.0μm以下である。導電性細線の線幅W3を当該範囲とすることで第2導電性パターンを構成する導電性細線が目視できなくなり、接合部121の視認性を低減させることができる。本実施形態の線幅W3とは、透明基材11の第2導電性パターン1211が配された面側から、導電性細線を透明基材11の表面上に投影したときの導電性細線の線幅をいう。
【0045】
(厚さH2
第2導電性パターンを構成する導電性細線の厚さH2は、好ましくは10nm以上1,000nm以下であり、より好ましくは50nm以上あり、さらに好ましくは75nm以上である。導電性細線の厚さH1が10nm以上であることにより、導電性がより向上する傾向にある。他方、導電性細線の厚さH2が1,000nm以下であることにより、広い視野角において視認性が抑制される。
【0046】
(アスペクト比)
導電性細線の線幅W3に対する導電性細線の厚さH2で表されるアスペクト比(W3/H2)は、好ましくは0.05以上1.00以下である。アスペクト比の下限は、より好ましくは0.08以上、さらに好ましく0.10以上である。アスペクト比が0.05以上であることにより、透過率を低下させることなく、導電性をより向上できる傾向にある。
【0047】
(ピッチP2
第2導電性パターン1211のピッチP2は、好ましくは1.0μm以上でありより好ましくは1.2μm以上である。第2導電性パターン1211のピッチP2が1.0μm以上であることで、ACPとの導電性を維持しつつ、良好な透過率を得ることができる。また、第2導電性パターン1211のピッチP2は、好ましくは7.0μm以下であり、より好ましくは4.0μm以下である。第2導電性パターン1211のピッチP2が7.0μm以下であることにより、導電性をより向上できる傾向にある。なお、ピッチP2は、線幅W3と導電性細線間の距離の和を意味する。
【0048】
(占有面積率A2
接合部121に形成される第2導電性パターン1211の単位面積当たりの占有面積率A2は、後述するアンテナ部13に形成される第1導電性パターン131の単位面積当たりの占有面積率A1よりも大きいことが好ましい。このような関係にあることで、アンテナ部13の可視光透過率を高くしながら、半導体素子との電気的接合を良好にすることができる。
【0049】
占有面積率A2は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、よりさらに好ましくは70%以上である。占有面積率A2を当該値以上とすることで、半導体素子との電気的接合をより良好にさせられる傾向にある。また、占有面積率A2は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは75%以下である。占有面積率A2を当該値以下とすることにより、裏面からの半導体素子との接合部の不可視性をより向上させることができる傾向にある。
【0050】
接合部121と、半導体素子14とが、導電性粒子により電気的に接合される場合、開口部1212は、導電性粒子の平均粒子径よりも狭い開口幅W4を有することが好ましい。「開口幅」とは、開口部の短手方向の幅を意味する。なお、開口が正方形である場合には、いずれか一辺の幅である。開口部1212が少なくとも短手方向の幅が導電性粒子の平均粒子径よりも狭いと、導電性粒子が、導電性パターン1211を構成する導電性細線と接触するため、接合部121と半導体素子14との電気的接合が良好になる。
【0051】
接合部121における第2導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W4は、アンテナ部13における第1導電性パターンの形成されていない開口部の開口幅W2よりも小さいことが好ましい。これにより、接合部121と半導体素子14との電気的接合がより良好になる。
【0052】
開口部1212の開口幅W4は、好ましくは0.75μm以上であり、より好ましくは0.90μm以上である。当該範囲とすることで、接合部の視認性をより抑制することができる。開口部1212の開口幅W4は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは6.0μm以下である。接合部121と半導体素子14との電気的接合をより良好にすることができる。
【0053】
図7は、アンテナ部及び接合部の別形態を示す概略構成図である。図7に示すように、2以上の領域に分割されたアンテナ部13と、当該アンテナ部13の中心部に接合部121を設けてもよい。
【0054】
図8は、集電部12、接合部121、及びアンテナ部13の概略構成を示す、図7のS1b部分の拡大図である。図8において、集電部12は2以上の先端が対向した接合部121を有する。なお、図8では、台形状の集電部12を示すが、集電部12の形状はこれに制限されない。一例として、図8における集電部12は、平面視において半導体素子の投影面積と同等~数倍の面積を有し、接合部121に半導体素子14が接合された際に、集電部12がほぼおおわれるものが好ましい。この場合、集電部12は実質的に接合部121のみで構成されているともいえる。
【0055】
<異方性導電性接着剤>
異方性導電性接着剤は、その形態は特に限定されないが、例えばフィルム状、ペースト状、液体状のいずれであってもよい。
【0056】
異方性導電性接着剤は、導電性粒子を含有する。接合する金属配線の間に導電性粒子が挟まれることで、接続面に対して垂直方向は、電気的に接合される。一方で、接続面の面方向側については、結着樹脂中に導電性粒子が浮いた状態で存在することなり、電気的には接合されない。本実施形態に係るRFタグ100は、接合部121を有することで、異方性導電性接着剤を用いた場合であっても、電気的接続を良好に行うことができる。つまり、導電性細線の線幅が狭くなり、開口部の面積割合が増加すると、導電性微粒子が開口部に存在する確率が高くなり、電気的な接合が不良となる可能性が高くなる。接合部の可視光透過率T2を40%以上70%以下とし、可視光透過率T2をアンテナ部の可視光透過率T1よりも小さい値とすることで、導電性微粒子が導電性配線の位置に存在する確率が高くなり、電気的な接合が良好となる確率が高まる。
【0057】
異方性導電性接着剤は、導電性粒子を含有してもよい。導電性粒子としては、特に限定されないが、例えば、表面を金属でコーティングした樹脂粒子、金属粒子、合金粒子等が挙げられる。金属としては、特に限定されないが、例えば、スズ、ビスマス、銅、銀、アンチモン、インジウム、亜鉛、チタンが挙げられる。合金としては、特に限定されないが、例えば、前述の金属の中から2種類以上を含む合金が挙げられる。
【0058】
導電性粒子の平均粒子径Dは、好ましくは1.0μm以上100μm以下であり、より好ましくは2.0μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは3.0μm以上30μm以下である。導電性粒子の平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定し、体積分率における累積体積頻度が最小粒子径から計算して50%になる粒子径(メジアン径)である。粒子径測定装置は、レーザー回折法による粒子径測定装置による測定であってもよく、導電粒子の平均粒子径により、適宜選択される。レーザー回折法による粒子径測定装置においても、導電粒子の平均粒子径は、体積分率における累積体積頻度が最小粒子径から計算して50%になる粒子径(メジアン径)を採用する。
【0059】
導電性粒子の含有量は、異方性導電性接着剤の全量に対して、好ましくは15質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは17質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以上25質量%以下である。
【0060】
異方性導電性接着剤は、結着樹脂を含有してもよい。結着樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、飽和物であってもよく、不飽和物であってもよい。
【0061】
結着樹脂の含有量は、異方性導電性接着剤の全量に対して、好ましくは8質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以上25質量%以下である。
【0062】
異方性導電性接着剤は、不飽和二重結合を有する付加重合性樹脂を含有していてもよい。付加重合性樹脂は、好ましくは1分子内に2つ以上の不飽和二重結合を有する樹脂である。付加重合性樹脂としては、例えば、重量平均分子量が800以上であり、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する付加重合性樹脂である。付加重合性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、及びシリコンアクリレート樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。付加重合性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000以上10000以下であり、より好ましくは1200以上5000以下である。
【0063】
付加重合性樹脂の含有量は、異方性導電性接着剤に対して、好ましくは5質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
【0064】
異方性導電性接着剤は、不飽和二重結合を有する低融点モノマーを含有していてもよい。異方性導電性接着剤は、得られる異方性導電性接着剤の接着強度及び塗布性をより向上させる観点から、付加重合性樹脂及び低融点モノマーの両方を含有することが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。低融点モノマーは、1分子内に1つ以上の不飽和二重結合を有する、25℃で液体のモノマーである。低融点モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0065】
低融点モノマーの含有量は、異方性導電性接着剤の全量に対して、好ましくは15質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上40質量%以下である。
【0066】
異方性導電性接着剤は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等の有機過酸化物が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0067】
重合開始剤の含有量は、異方性導電性接着剤の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上7質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上4質量%以下である。
【0068】
異方性導電性接着剤は、その他、チクソ剤、有機フィラー等を含んでいてもよい。
【0069】
接合部に異方性導電性接着剤を塗布して、半導体素子を熱圧着することで、半導体素子と、接合部とを電気的に接合することができる。
【0070】
<式(1)>
導電粒子の平均粒径Dが、3μm以上10μm以下であり、平均粒径D、開口幅W4、及び厚さH2は、下式(1)を満たすことが好ましい。
(W42/4 < (D/2)2-(D/2-H22 (1)
当該式(1)を満たすことで、半導体素子との電気的接合をより確実にすることができる。
【0071】
<透明基材>
透明基材の「透明」とは、可視光透過率が、好ましくは80%以上であることをいい、より好ましくは90%以上であることをいい、さらに好ましくは95%以上であることをいう。ここで、可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定することができる。
【0072】
透明基材の材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス等の透明無機基材;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の透明有機基材が挙げられる。このなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、又はポリエチレンナフタレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、導電性フィルムを製造するための生産性(コスト削減効果)がより優れ、また、透明基材と金属細線との密着性がより向上する傾向にある。また、ポリイミドを用いることにより、導電性フィルムの耐熱性がより向上する傾向にある。さらに、ポリエチレンナフタレートを用いることにより、透明基材と金属細線との密着性がより優れる傾向にある。
【0073】
透明基材は、1種の材料からなるものであっても、2種以上の材料が積層されたものであってもよい。また、透明基材が2種以上の材料が積層された多層体である場合には、該透明基材は有機基材又は無機基材同士が積層されたものであっても、有機基材及び無機基材が積層されたものであってもよい。
【0074】
透明基材の厚さは、好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0075】
<中間層>
本実施形態のRFタグ100は、透明基材と導電部の間に中間層を有していてもよい。該中間層は、透明基材と導電部の金属細線との密着性の向上に寄与しうる。
【0076】
中間層に含まれる成分としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素化合物(例えば、(ポリ)シラン類、(ポリ)シラザン類、(ポリ)シルチアン類、(ポリ)シロキサン類、ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、塩化ケイ素、ケイ素酸塩、ゼオライト、シリサイド等)、アルミニウム化合物(例えば、酸化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えばフッ化マグネシウム)等が挙げられる。この中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、及びフッ化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このような成分を用いることにより、導電性フィルムの透明性及び耐久性がより向上する傾向にあり、導電性フィルムを製造するための生産性(コスト削減効果)がより優れる。中間層は、PVD、CVDなどの気相成膜法や、上記中間層に含まれる成分が分散媒に分散した中間体形成組成物を塗布、乾燥する方法により成膜することができる。中間体形成組成物は、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、結着剤等を含有してもよい。
【0077】
中間層の厚さは、好ましくは0.01μm以上500μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは0.10μm以上200μm以下である。中間層の厚みが0.01μm以上であることで、中間層と金属細線の密着性が発現され、中間層の厚みが500μm以下であれば透明基材の可撓性が担保できる。
【0078】
中間層を透明基材上に積層することで、プラズマ等の焼成手段でインク中の金属成分を焼結させる際に、プラズマ等によって金属細線パターン部で被覆されていない箇所の透明基材のエッチングを防ぐことができる。
【0079】
さらにこの中間層は静電気による金属細線パターンの断線を防ぐために、帯電防止機能を持っていることが好ましい。中間層が帯電防止機能を有するために、中間層は導電性無機酸化物及び導電性有機化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。導電性有機化合物としては、例えば、導電性の有機シラン化合物、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール等が挙げられる。これらの中でも、導電性の有機シラン化合物が好ましい。
【0080】
中間層の体積抵抗率は100Ωcm以上100000Ωcm以下であることが好ましく、1000Ωcm以上10000Ωcm以下であることがより好ましく、2000Ωcm以上8000Ωcm以下であることがさらにより好ましい。中間層の体積抵抗率が100000Ωcm以下であることで、帯電防止機能を発現することができる。また中間層の体積抵抗率が100Ωcm以上であることで金属細線パターン間の電気伝導が好ましくないタッチパネル等の用途に好適に用いることができる。体積抵抗率は、中間層内の導電性無機酸化物や導電性有機化合物等の帯電防止機能を発揮する成分の含有量により調整することができる。例えば、プラズマ耐性の高い酸化ケイ素(体積比抵抗1014Ω・cm以上)と導電性有機化合物である有機シラン化合物を中間層に含む場合、導電性の有機シラン化合物の含有量を増やすことで体積抵抗率を低下することができる。一方で、酸化ケイ素の含有量を増やすことで体積抵抗率は増加するが高いプラズマ耐性を有するため薄膜にすることができ、光学的特性を損なうことがない。
【0081】
[透明アンテナの製造方法]
透明アンテナは、例えば、透明基材上に上述の透明アンテナのパターンを形成することで得られる。透明アンテナの製造方法は、特に制限されないが、例えば、透明基材上に金属成分を含むインクを用いてパターンを形成するパターン形成工程と、当該パターンを焼成して金属細線を形成する焼成工程と、を有する方法が挙げられる。また、本実施形態の透明アンテナの製造方法は、パターン形成工程に先立ち、透明基材の表面に中間層を形成する中間層形成工程を含んでもよい。
【0082】
(中間層形成工程)
中間層形成工程は、透明基材の表面に中間層を形成する工程である。中間層の形成方法としては、特に制限されないが、例えば、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)などの気相成膜法により、透明基材表面に蒸着膜を形成する方法;透明基材表面に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥することで塗膜を形成する方法が挙げられる。
【0083】
中間層形成用組成物は、上記中間層に含まれる成分として例示した成分あるいはその前駆体と、溶剤とを含み、必要に応じて、界面活性剤、分散剤、結着剤等を含有してもよい。
【0084】
(パターン形成工程)
パターン形成工程は、金属成分を含むインクを用いてパターンを形成する工程である。パターン形成工程は、所望の金属細線パターンの溝を有する版を用いる有版印刷方法であれば特に限定されないが、例えば、転写媒体表面にインクをコーティングする工程と、インクをコーティングした転写媒体表面と、凸版の凸部表面とを対向させて、押圧、接触して、凸版の凸部表面に転写媒体表面上のインクを転移させる工程と、インクをコーティングした転写媒体表面と透明基材の表面とを対向させて、押圧、接触して、転写媒体表面に残ったインクを透明基材の表面に転写する工程とを有する。なお、透明基材に中間層が形成されている場合には、中間層表面にインクが転写される。
【0085】
≪インク≫
上記パターン形成工程に用いられるインクは、金属成分と溶剤を含み、必要に応じて、界面活性剤、分散剤、還元剤等を含んでもよい。金属成分は、金属粒子としてインクに含まれていてもよいし、金属錯体としてインクに含まれていてもよい。なお、ここでいう金属成分に含まれる金属元素種としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0086】
金属粒子を用いる場合、その平均一次粒径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。また、金属粒子の平均一次粒径の下限は特に制限されないが、1nm以上が挙げられる。金属粒子の平均一次粒径が100nm以下であることにより、得られる金属細線の線幅をより細くすることができる。なお、本実施形態において「平均一次粒径」とは、金属粒子1つ1つ(所謂一次粒子)の粒径をいい、金属粒子が複数個集まって形成される凝集体(所謂二次粒子)の粒径である平均二次粒径とは区別される。
【0087】
金属粒子としては、酸化銅等の金属酸化物や金属化合物、コア部が銅でありシェル部が酸化銅であるようなコア/シェル粒子の態様であってもよい。金属粒子の態様は、分散性や焼結性の観点から、適宜決めることができる。
【0088】
インク中、金属粒子の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下である。インク中の金属粒子の含有量がインク組成物の全質量に対して1質量%以上あれば、導電性を有する金属細線パターンを得ることができ、40質量%以下であれば、インクを金属細線パターン状に印刷することができる。
【0089】
界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤を用いることにより、転写媒体(ブランケット)へのインクのコーティング性、コーティングされたインクの平滑性が向上し、より均一な塗膜が得られる傾向にある。なお、界面活性剤は、金属成分を分散可能であり、かつ焼成の際に残留しにくいよう構成されていることが好ましい。
【0090】
インク中、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。インク中の界面活性剤の含有量がインク組成物の全質量に対して0.01質量%以上あれば、インクのコーティング性、コーティングされたインクの平滑性を向上させることができ、10質量%以下であれば、抵抗が低い金属細線パターンを得ることができる。
【0091】
また、分散剤としては、特に制限されないが、例えば、金属成分に非共有結合又は相互作用をする分散剤、金属成分に共有結合をする分散剤が挙げられる。非共有結合又は相互作用をする官能基としてはリン酸基を有する分散剤が挙げられる。このような分散剤を用いることにより、金属成分の分散性がより向上する傾向にある。
【0092】
インク中、分散剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。インク中の分散剤の含有量がインク組成物の全質量に対して0.1質量%以上あれば、金属粒子が分散されたインクを得ることができ、30質量%以下であれば、抵抗が低い金属細線パターンを得ることができる。
【0093】
さらに、溶剤としては、モノアルコール及び多価アルコール等のアルコール系溶剤;アルキルエーテル系溶剤;炭化水素系溶剤;ケトン系溶剤;エステル系溶剤などが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、1種以上で併用されても良い。たとえば、炭素数10以下のモノアルコールと炭素数10以下の多価アルコールとの併用などが挙げられる。このような、溶剤を用いることにより、転写媒体(ブランケット)へのインクのコーティング性、転写媒体から凸版へのインクの転移性、転写媒体から透明基材へのインクの転写性、及び金属成分の分散性がより向上する傾向にある。なお、溶剤は、金属成分を分散可能であり、かつ焼成の際に残留しにくいよう構成されていることが好ましい。
【0094】
インク中、溶媒の含有量は、上述の金属粒子、界面活性剤、分散剤等の成分の残部であるが、例えば、インク組成物の全質量に対して、好ましくは50質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上80質量%以下である。インク中の溶媒の含有量がインク組成物の全質量に対して50質量%以上あれば、インクを金属細線パターン状に印刷することができ、99質量%以下であれば、導電性を有する金属細線パターンを得ることができる。
【0095】
なお、焼成中に発生するこれらの分解ガス等により金属細線中の空隙量を調整するという観点から、インクに含まれる上記成分の含有量を適宜調整することができる。
【0096】
(焼成工程)
焼成工程は、パターンを焼成して金属細線を形成する工程であり、これにより、インクを塗布したパターンと同様の金属細線パターンを有する導電部を得ることができる。焼成は、金属成分が融着して、金属成分焼結膜を形成することができる方法であれば特に制限されない。焼成は、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、加熱触媒、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザーなどを用いて行ってもよい。得られる焼結膜が酸化されやすい場合には、非酸化性雰囲気中において焼成することが好ましい。また、インクに含まれ得る還元剤のみで金属酸化物等が還元されにくい場合には、還元性雰囲気で焼成することが好ましい。
【0097】
非酸化性雰囲気とは酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気であり、不活性雰囲気と還元性雰囲気がある。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオンや窒素等の不活性ガスで満たされた雰囲気である。また、還元性雰囲気とは、水素、一酸化炭素等の還元性ガスが存在する雰囲気を指す。これらのガスを焼成炉中に充填して密閉系としてインクの塗布膜(分散体塗布膜)を焼成してもよい。また、焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流しながら塗布膜を焼成してもよい。塗布膜を非酸化性雰囲気で焼成する場合には、焼成炉中を一旦真空に引いて焼成炉中の酸素を除去し、非酸化性ガスで置換することが好ましい。また、焼成は、加圧雰囲気で行なってもよいし、減圧雰囲気で行なってもよい。
【0098】
焼成温度は、特に制限されないが、好ましくは20℃以上400℃以下であり、より好ましくは50℃以上300℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上200℃以下である。焼成温度が400℃以下であることにより、耐熱性の低い基板を使用することができるので好ましい。また、焼成温度が20℃以上であることにより、焼結膜の形成が十分に進行し、導電性が良好となる傾向にあるため好ましい。なお、得られる焼結膜は、金属成分に由来する導電性成分を含み、そのほか、インクに用いた成分や焼成温度に応じて、非導電性成分を含みうる。
【0099】
この中でも、金属成分の拡散、凝集を調整し、これにより金属細線中の空隙量を調整する観点から、焼成時のエネルギーとしては、例えば、熱、プラズマ、電子線や光源を用いることが好ましく、フラッシュランプアニールを用いることが好ましい。また、同様の観点から、焼成時間は、好ましくは100μsec~50msecであり、より好ましくは800μsec~10msecであり、1msec~2.4msecである。なお、必要に応じて、フラッシュランプアニールを複数回用いて焼成してもよい。
【0100】
また、上述の観点に加え金属成分の融着を促進でき、より高い導電性を有する導電性フィルムが得られるため、プラズマによる焼成方法を用いることがより好ましい。同様の観点から、プラズマの出力は好ましくは0.5kW以上であり、より好ましくは0.6kW以上であり、さらに好ましくは0.7kW以上である。プラズマの出力の上限値は、特に制限はなく、使用する透明基材や中間層に損傷がない範囲であればよい。また焼成時間の下限値はプラズマ出力に依るが、生産性の観点から上限値は好ましくは1000sec以下であり、より好ましくは600sec以下である。なお、必要に応じて、プラズマ焼成を複数回用いて焼成してもよい。
【0101】
各機能部と本実施形態のRFタグ100がパッシブ型である場合の動作の一例について説明する。まず、RFタグ100のアンテナ部13が、リーダ・ライタからの電波を受信し、電磁誘導などにより起電力が発生する。そして、この起電力によりRFタグ100の半導体素子14が起動する。その際、電源整流部は、アンテナ部13に入力された交流を直流に変換し、半導体素子14の回路に電源を供給する。また、これと並行して、受信部は、リーダ・ライタから受信した搬送波を信号列に復調し、信号列を制御部に送る。制御部は、受信部から受け取った信号列に従って、記憶部への情報のリード/ライトや、情報処理結果を信号列として送信部へ受け渡す。ここで、記憶部は、商品情報など、RFタグの用途に応じて様々な情報を記憶する。最後に、送信部は、制御部から受け取った信号列を搬送波に変調し、アンテナ部13から送信する。そして、リーダ・ライタのアンテナがその搬送波を受信し、情報処理を行う。なお、本実施形態においてRFIDとは、RFタグとリーダ・ライタからなるシステムをいう。
【0102】
本実施形態のRFタグ100が利用可能な周波数帯は、特に制限されないが、例えば、LF帯(中波帯):120~130kHz、HF帯(短波帯):13.56MHz、UHF帯(極超短波):900MHz帯、マイクロ波:2.45GHz帯が挙げられる。アンテナ部13のタイプは、利用する周波数帯に応じて適宜調整することができる。例えば、HF帯を利用する場合には、ループタイプのアンテナを使用し、UHF帯を利用する場合には、ダイポールタイプのアンテナを使用することができる。
【0103】
本実施形態のRFタグ100が利用可能な送受信方式としては、上記電波方式に限定されず、送信側・受信側それぞれが持つコイルに高周波を印加し、生じる相互誘導に情報を載せる電磁結合方式や、アンテナ近傍に発生する磁界に情報を載せ、情報のやりとりを行う電磁誘導方式を用いてもよい。
【実施例
【0104】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0105】
〔実施例1〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)を透明基材として用いて、一方の面上に酸化ケイ素ナノ粒子と導電性の有機シラン化合物を含む組成物を塗布し、乾燥して、酸化ケイ素を含有した厚さ50nmの中間層を形成し、基材Aとして用いた。
【0106】
次いで、粒子径21nmの酸化第一銅ナノ粒子20質量部と、分散剤(ビッグケミー社製、製品名:Disperbyk-145)4質量部と、界面活性剤(セイミケミカル社製、製品名:S-611)1質量部と、エタノール75質量部とを混合・分散し、酸化第一銅ナノ粒子の含有割合が20質量%のインクを調製した。
【0107】
そして、転写媒体表面にインクを塗布し、インクが塗布された転写媒体表面と導電性パターンの溝を有する版を対向させて、押圧、接触して、版の凸部表面に転写媒体表面上の一部のインクを転移させた。その後、残ったインクがコーティングされた転写媒体表面と基材Aとを対向させて、押圧、接触させ、基材Aの上に所望のアンテナ部及び接合部の形状を有する導電性パターンのインクを転写させた。次いで、NovaCentrix社製Pulseforge1300を用いて室温環境下で導電性パターン状のインク(分散体塗布膜)をフラッシュランプアニールにより焼成した。なお、アンテナ部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W1:3.0μm、開口幅W2:60μmとし、可視光透過率T1が84%であり、接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:1.0μm、開口幅W4:3.0μmとし、可視光透過率T2が52%であった。
また、アンテナ部は、図7に示すような長辺方向の幅49mm、短辺方向の幅10mmの長方形状の2つの導電性パターンが、短辺が対向するように2mmの間隔で設けられ、また、2つの導電性パターンの間に形成される接合部間のギャップを150μmとしたダイポールアンテナである。
【0108】
上記のようにして得られた透明アンテナの接合部に、導電性粒子の平均粒径30μmの異方性導電性ペーストを用いて半導体素子を接合して、RFタグを得た。
得られたRFタグの放射特性を測定した結果、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた。
【0109】
〔実施例2〕
接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:2.0μm、開口幅W4:5.0μmとし、可視光透過率T2が47%としたこと以外は、実施例1と同様にして、RFタグを得た。
得られたRFタグは、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた。
【0110】
〔実施例3〕
接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:2.0μm、開口幅W4:8.0μmとし、可視光透過率T2が59%としたこと以外は、実施例1と同様にして、RFタグを得た。
得られたRFタグは、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた。
【0111】
〔実施例4〕
接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:2.0μm、開口幅W4:3.0μmとし、可視光透過率T2が33%としたこと以外は、実施例1と同様にして、RFタグを得た。
得られたRFタグは、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた。
【0112】
〔比較例1〕
接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:1.0μm、開口幅W4:60μmとし、可視光透過率T2が89%としたこと以外は、実施例1と同様にして、RFタグを得た。
得られたRFタグは、920MHzにおいて、通信応答せず、アンテナ特性は得られなかった。アンテナ部とICチップとの導通不足が推定された。
【0113】
〔比較例2〕
接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W3:5.0μm、開口幅W4:2.0μmとし、可視光透過率T2が7.0%としたこと以外は、実施例1と同様にして、RFタグを得た。
得られたRFタグは、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた。
しかし、裏面から観察したところ、チップ接合部は、輝点として観察され、拡大観察では、金属光沢が明瞭に観察された。
【表1】
【符号の説明】
【0114】
100…RFタグ、11…透明基材、12…集電部、121…接合部、13…アンテナ部、15…導電性接着層、131…第1パターン、1211…第2パターン、132,1212…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8