(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電子機器、装着ユニットおよび通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20240709BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240709BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04B1/59
G06K7/10 100
H04N1/00 885
H04N1/00 C
(21)【出願番号】P 2020033391
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】坂入 滋高
(72)【発明者】
【氏名】砂川 寛行
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-306558(JP,A)
【文献】特開2007-096482(JP,A)
【文献】特開2009-163540(JP,A)
【文献】特開2009-217380(JP,A)
【文献】特開2002-009660(JP,A)
【文献】特開2003-150916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
G06K 7/10
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と通信可能なタグを有する装着ユニットが装着される電子機器であって、
前記タグと通信するタグ通信部と、
前記タグ通信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に前記タグを遷移させるコマンドを前記タグ通信部から前記タグへ送信させて前記タグを前記特定状態とし、
非特定コマンド送信要求を前記タグ通信部へ送信することで前記タグへ前記タグ通信部から非特定コマンドを送信させ、前記非特定コマンド送信要求を送信してから前記タグからの応答がない時間、および前記非特定コマンドに対する前記タグからの応答信号を受信した場合の当該応答信号の内容に基づき、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性が正常であるか否かを判断し、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
特定コマンド送信要求を前記タグ通信部へ送信することで前記タグへ前記タグ通信部から前記特定コマンドを送信させ、前記特定コマンド送信要求を送信してから前記特定コマンドに対する前記タグからの応答信号を受信するまでの時間および前記特定コマンドの指示通りの処理が行われたか否かに基づき、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性が正常であるか否かを判断し、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
外部と通信可能なタグを有する装着ユニットが装着される電子機器であって、
前記タグと通信するタグ通信部と、
前記タグ通信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に前記タグを遷移させるコマンドを前記タグ通信部から前記タグへ送信させて前記タグを前記特定状態とし、
前記タグへ前記タグ通信部から非特定コマンドを送信させ、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記タグへ前記タグ通信部から前記特定コマンドを送信させ、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
電子機器に装着される装着ユニットであって、
前記電子機器と通信するタグを備え、
前記タグは、前記電子機器からのコマンドに従って特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態になり、前記特定状態において、前記電子機器から送信された非特定コマンドを受信したときは正常には応答せず、前記電子機器から送信された前記特定コマンドを受信したときは正常に応答し、
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする装着ユニット。
【請求項4】
前記タグは、前記電子機器からの供給電力が制限された状態において自力電力で動作することを特徴とする請求項
3に記載の装着ユニット。
【請求項5】
電子機器に装着された装着ユニットのタグを特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に遷移させ、
前記電子機器の制御部からタグ通信部に非特定コマンド送信要求を送信し、前記非特定コマンド送信要求を受信した前記タグ通信部から前記タグへ非特定コマンドを送信し、前記制御部が前記非特定コマンド送信要求を送信してから前記タグからの応答がない時間、および前記非特定コマンドに対する前記タグからの応答信号を前記制御部が受信した場合の当該応答信号の内容に基づき、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性が正常であるか否かを判断し、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記制御部から前記タグ通信部に特定コマンド送信要求を送信し、前記特定コマンド送信要求を受信した前記タグ通信部から前記タグへ前記特定コマンドを送信し、前記制御部が前記特定コマンド送信要求を送信してから前記特定コマンドに対する前記タグからの応答信号を受信するまでの時間および前記特定コマンドの指示通りの処理が行われたか否かに基づき、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性が正常であるか否かを判断し、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする通信方法。
【請求項6】
電子機器に装着された装着ユニットのタグを特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に遷移させ、
前記電子機器のタグ通信部から前記タグへ非特定コマンドを送信し、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記タグ通信部から前記タグへ前記特定コマンドを送信し、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、装着ユニットおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置等の電子機器において、インク等の消耗品を保持する装着ユニットを装着して使用するものがある。
【0003】
このような電子機器で使用される装着ユニットとして、消耗品に関する情報等を記憶したRFIDタグ等のタグを搭載したものがある。この装着ユニットを用いる電子機器には、タグとの間で情報の送受信が可能なタグ通信部が設けられている。この電子機器では、装着ユニットが装着されると、装着ユニットのタグとタグ通信部との間で通信が行われ、タグから情報が読み取られるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような電子機器のタグ通信部と装着ユニットのタグとの間では、さまざまなコマンドおよび応答信号がやり取りされる。
【0006】
これに対し、装着ユニットのタグが、全コマンドのうちの一部である特定コマンドにのみ正常に応答する状態がある。
【0007】
例えば、何らかの理由により電子機器からタグに供給される電力が制限された状態になった場合でも、重要なコマンドは通信できるように、タグが重要なコマンドである特定コマンドにのみ正常に応答する状態とすることがある。
【0008】
このような状態では、重要なコマンドである特定コマンドの通信を行うため、タグとタグ通信部との間の通信の安定化が望まれる。この通信が不安定である場合には、電子機器の信頼性の低下を招く。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、信頼性を向上できる電子機器、装着ユニットおよび通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、外部と通信可能なタグを有する装着ユニットが装着される電子機器であって、前記タグと通信するタグ通信部と、前記タグ通信部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に前記タグを遷移させるコマンドを前記タグ通信部から前記タグへ送信させて前記タグを前記特定状態とし、前記タグへ前記タグ通信部から非特定コマンドを送信させ、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、前記タグへ前記タグ通信部から前記特定コマンドを送信させ、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする電子機器が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、電子機器に装着される装着ユニットであって、前記電子機器と通信するタグを備え、前記タグは、前記電子機器からのコマンドに従って特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態になり、前記特定状態において、前記電子機器から送信された非特定コマンドを受信したときは正常には応答せず、前記電子機器から送信された前記特定コマンドを受信したときは正常に応答することを特徴とする装着ユニットが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、電子機器に装着された装着ユニットのタグを特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に遷移させ、前記電子機器のタグ通信部から前記タグへ非特定コマンドを送信し、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、前記タグ通信部から前記タグへ前記特定コマンドを送信し、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする通信方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、電子機器と通信するタグを備え、前記電子機器に装着される装着ユニットにおける通信方法であって、前記タグが、前記電子機器からのコマンドに従って特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態になり、前記特定状態において、前記電子機器から送信された非特定コマンドを受信したときは正常には応答せず、前記電子機器から送信された前記特定コマンドを受信したときは正常に応答することを特徴とする通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子機器の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】通信確認処理を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷装置(電子機器に相当)1は、印刷部2と、操作パネル3と、4つのタグ通信部4と、4つの装着部5と、制御部6とを備える。
【0019】
印刷部2は、搬送部(図示せず)により搬送される用紙に印刷を行う。印刷部2は、4つのインクジェットヘッド11を備える。
【0020】
インクジェットヘッド11は、用紙にインクを吐出して画像を形成する。4つのインクジェットヘッド11は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。
【0021】
操作パネル3は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル3は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部と、液晶表示パネル等を有する表示部(いずれも図示せず)とを備える。
【0022】
タグ通信部4は、後述するインクカートリッジ(装着ユニットに相当)21のRFIDタグ(タグに相当)22と通信する。タグ通信部4は、装着部5に装着されたインクカートリッジ21のRFIDタグ22からの情報の読み取りおよびRFIDタグ22への情報の書き込みを無線通信によって行うリーダライタ装置である。タグ通信部4は、4つの装着部5のそれぞれに1つずつ対応して設けられ、対応する装着部5に近接して配置されている。
【0023】
装着部5は、インクカートリッジ21が交換可能に装着される部分である。各装着部5に1つずつインクカートリッジ21が装着可能である。装着部5は、4つのインクジェットヘッド11のそれぞれに1つずつ対応して設けられ、対応するインクジェットヘッド11が吐出する色のインクを保持するインクカートリッジ21が装着される。4つの装着部5は、印刷装置1において、並列して配置されている。
【0024】
インクカートリッジ21は、印刷装置1で印刷に使用されるインクを保持している。また、インクカートリッジ21は、外部と通信可能なRFIDタグ22を有する。インクカートリッジ21が装着部5に装着されると、当該装着部5に対応するタグ通信部4と、装着部5に装着されたインクカートリッジ21のRFIDタグ22とが通信可能になる。
【0025】
RFIDタグ22は、インクカートリッジ21に固有のUID(識別子)、インクカートリッジ21が保持するインクの粘度や表面張力等を示すインク物性情報、インク残量情報等の各種の情報を記憶するメモリ(図示せず)を有する。RFIDタグ22は、タグ通信部4から送信される各種のコマンドに従ってメモリからの情報の読み出し等を行い、タグ通信部4に応答信号を送信する。
【0026】
RFIDタグ22には、印刷装置1から電力が供給される。RFIDタグ22は、タグ通信部4との間で通信を行うのに十分な電力が印刷装置1から供給されている状態である通常状態では、印刷装置1から供給される電力により動作する。通常状態では、RFIDタグ22は、すべてのコマンドに応答する。
【0027】
RFIDタグ22は、印刷装置1からの供給電力が制限された状態である電力制限状態(特定状態に相当)となることがある。例えば、RFIDタグ22は、何らかの不具合等により、印刷装置1からの供給電力が通常状態よりも少なくなることで、電力制限状態となることがある。また、RFIDタグ22は、印刷装置1がスリープ状態になったことや、印刷装置1からのコマンドにより、電力制限状態の1つであるスリープ状態になることがある。ここで、電力制限状態は、印刷装置1からの供給電力がない状態を含む。
【0028】
RFIDタグ22は、電力制限状態では、特定コマンドにのみ正常に応答する。特定コマンドは、印刷装置1からRFIDタグ22への供給電力が通常状態よりも少なく制限されている状態でも通信したい重要なコマンドである。特定コマンドとしては、印刷装置1がインクカートリッジ21のUIDを取得するためのUID取得コマンド等がある。
【0029】
RFIDタグ22は、電力制限状態では、自力電力で動作することで、特定コマンドに対する応答を行う。ここで、RFIDタグ22は、電気を貯める機構を有しており、通常状態において電気を貯めている。電力制限状態では、RFIDタグ22は、貯めている電気を用いることで、自力電力で動作することができる。
【0030】
RFIDタグ22は、
図2に示すように、タグ通信部4からのコマンドに従って通常状態とスリープ状態との間で状態遷移が可能になっている。このコマンドによる状態遷移は、後述する通信確認処理において行われる。
【0031】
RFIDタグ22は、通信確認処理において、RFIDタグ22を通常状態からスリープ状態に遷移させるためのスリープ状態遷移コマンドを受信すると、通常状態からスリープ状態へ遷移する。スリープ状態のRFIDタグ22は、特定コマンドには正常に応答する。特定コマンド以外のコマンドである非特定コマンドが送信されたとしても、スリープ状態のRFIDタグ22は、基本的に非特定コマンドには応答しない。RFIDタグ22をスリープ状態から通常状態に遷移させるための通常状態遷移コマンドを受信すると、RFIDタグ22は、スリープ状態から通常状態に戻り、その旨の応答を行う。
【0032】
なお、印刷装置1がスリープ状態になることに伴ってRFIDタグ22がスリープ状態になった場合は、スリープ状態の印刷装置1からコマンドが送信されることはないため、RFIDタグ22がコマンドを受けてそれに応答することもない。
【0033】
制御部6は、印刷装置1全体の動作を制御する。制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0034】
制御部6は、所定のタイミングにおいて、通信確認処理を実行する。通信確認処理は、RFIDタグ22が電力制限状態である場合におけるRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性(通信が正常に行われるか否か)を確認するための処理である。
【0035】
通信確認処理において、制御部6は、スリープ状態遷移コマンドをタグ通信部4からRFIDタグ22へ送信させてRFIDタグ22をスリープ状態とする。この後、制御部6は、RFIDタグ22へタグ通信部4から非特定コマンドを送信させ、この非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に基づき、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認する。また、制御部6は、RFIDタグ22へタグ通信部4から特定コマンドを送信させ、この特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に基づき、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認する。
【0036】
ここで、印刷装置1とインクカートリッジ21との間では、RFIDタグ22が電力制限状態の1つであるスリープ状態における通信性が正常であれば、スリープ状態以外の電力制限状態における通信性も正常であるといえる。このため、通信制確認処理では、RFIDタグ22をスリープ状態として、電力制限状態における通信性の確認を行う。
【0037】
次に、通信確認処理について、
図3のシーケンス図を参照して説明する。
【0038】
通信確認処理は、例えば、インクカートリッジ21の装着時、印刷装置1の電源投入時、印刷装置1の電源遮断時、規定時間ごとの定期的なタイミングに行われる。通信確認処理を行う際は、すべてのインクカートリッジ21のRFIDタグ22とそれぞれに対応するタグ通信部4との間の通信確認処理を行ってもよいし、一部のインクカートリッジ21のRFIDタグ22とそれに対応するタグ通信部4との間の通信確認処理のみを行ってもよい。
【0039】
ここでは、1つのインクカートリッジ21のRFIDタグ22とそれに対応するタグ通信部4との間の通信確認処理として説明する。
【0040】
図3のステップS1において、制御部6は、非特定コマンド送信要求をタグ通信部4に送信する。
【0041】
タグ通信部4は、非特定コマンド送信要求を受信すると、ステップS2において、要求された非特定コマンドをRFIDタグ22に送信する。ここで、非特定コマンドとしては、印刷装置1がインクカートリッジ21のインク残量情報を取得するためのインク残量情報取得コマンド等がある。
【0042】
RFIDタグ22は、非特定コマンドを受信すると、ステップS3において、非特定コマンドに対して応答する。具体的には、RFIDタグ22は、非特定コマンドの内容に応じた応答信号をタグ通信部4に送信する。
【0043】
タグ通信部4は、RFIDタグ22からの応答信号を受信すると、ステップS4において、非特定コマンド送信要求に対する応答として、RFIDタグ22からの応答信号を制御部6に送信する。
【0044】
制御部6は、応答信号を受信すると、ステップS5において、スリープ状態遷移要求をタグ通信部4に送信する。
【0045】
タグ通信部4は、スリープ状態遷移要求を受信すると、ステップS6において、スリープ状態遷移コマンドをRFIDタグ22に送信する。
【0046】
スリープ状態遷移コマンドを受信したRFIDタグ22は、通常状態からスリープ状態へ遷移する。ここで、前述のように、スリープ状態では、RFIDタグ22は、自力電力で動作する。
【0047】
タグ通信部4は、RFIDタグ22にスリープ状態遷移コマンドを送信すると、ステップS7において、スリープ状態遷移要求に対して応答する。具体的には、タグ通信部4は、スリープ状態遷移コマンドをRFIDタグ22に送信したことを通知するための応答信号を制御部6に送信する。
【0048】
制御部6は、応答信号を受信すると、ステップS8において、ステップS2で送信したものと同じ非特定コマンドの送信を要求するための非特定コマンド送信要求をタグ通信部4に送信する。
【0049】
タグ通信部4は、非特定コマンド送信要求を受信すると、ステップS9において、要求された非特定コマンドをRFIDタグ22に送信する。
【0050】
次いで、ステップS10において、制御部6は、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性を確認する。
【0051】
ここで、前述のように、スリープ状態のRFIDタグ22は、基本的に非特定コマンドには応答しない。また、スリープ状態のRFIDタグ22RFIDタグ22から非特定コマンドに対する応答があるとすれば、通常状態のときとは異なる内容の応答になるはずである。すなわち、スリープ状態のRFIDタグ22は、非特定コマンドには、正常には応答しない。
【0052】
そこで、制御部6は、ステップS8で非特定コマンド送信要求を送信してから所定時間以上が経過しても応答がない場合、非特定コマンドに対する応答がないと判断し、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断する。
【0053】
また、制御部6は、ステップS8で非特定コマンド送信要求を送信してから所定時間未満で応答があり、その内容がステップS4で受信した応答信号の内容とは異なる場合も、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断する。
【0054】
非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であれば、RFIDタグ22が確実にスリープ状態へ遷移していると確認できる。
【0055】
ここで、例えば、RFIDタグ22のスリープ状態への遷移が行われておらず、RFIDタグ22が通常状態のままである場合、ステップS8の非特定コマンド送信要求の送信から所定時間未満で、ステップS4で受信した応答信号と同じ内容の応答がある。この場合、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に異常があると判断される。
【0056】
なお、RFIDタグ22のスリープ状態への遷移が行われていないこと以外の異常により、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に異常があると判断されることもある。
【0057】
ステップS10において、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断した場合、制御部6は、電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性が正常であると判断する。非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に異常があると判断した場合、制御部6は、電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性に異常があると判断する。
【0058】
次いで、ステップS11において、制御部6は、特定コマンド送信要求をタグ通信部4に送信する。
【0059】
タグ通信部4は、特定コマンド送信要求を受信すると、ステップS12において、特定コマンドをRFIDタグ22に送信する。
【0060】
RFIDタグ22は、特定コマンドを受信すると、ステップS13において、特定コマンドに対して応答する。具体的には、RFIDタグ22は、特定コマンドの内容に応じた応答信号をタグ通信部4に送信する。
【0061】
タグ通信部4は、RFIDタグ22からの応答信号を受信すると、ステップS14において、特定コマンド送信要求に対する応答として、RFIDタグ22からの応答信号を制御部6に送信する。
【0062】
制御部6は、応答信号を受信すると、ステップS15において、特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性を確認する。具体的には、制御部6は、特定コマンド送信要求の送信からそれに対する応答信号を受信するまでの時間である応答時間が基準時間以内であるか否かを確認するとともに、応答信号の内容に基づき特定コマンドの指示通りの処理が行われたか否かを確認する。
【0063】
応答時間が基準時間以内であり、かつ、特定コマンドの指示通りの処理が行われた場合、制御部6は、特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断する。それ以外の場合には、制御部6は、特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に異常があると判断する。
【0064】
ステップS15において、特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断した場合、制御部6は、電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性が正常であると判断する。特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に異常があると判断した場合、制御部6は、電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性に異常があると判断する。
【0065】
次いで、ステップS16において、制御部6は、通常状態遷移要求をタグ通信部4に送信する。
【0066】
タグ通信部4は、通常状態遷移要求を受信すると、ステップS17において、通常状態遷移コマンドをRFIDタグ22に送信する。
【0067】
通常状態遷移コマンドを受信したRFIDタグ22は、スリープ状態から通常状態へ遷移する。
【0068】
また、RFIDタグ22は、ステップS18において、通常状態遷移コマンドに対して応答する。具体的には、RFIDタグ22は、通常状態へ遷移したことを通知するための応答信号をタグ通信部4に送信する。
【0069】
タグ通信部4は、RFIDタグ22からの応答信号を受信すると、ステップS19において、特定コマンド送信要求に対する応答として、RFIDタグ22からの応答信号を制御部6に送信する。これにより、通信確認処理が終了となる。
【0070】
上述の通信制確認処理において、ステップS10,S15の少なくともいずれかで電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性に異常があると判断した場合、制御部6は、その異常がある旨をユーザに通知するための通知画面を操作パネル3の表示部に表示させる。そして、この際、制御部6は、RFIDタグ22の交換等の、通信を安定化させるための対処を促す表示も行う。
【0071】
以上説明したように、印刷装置1では、通信確認処理において、制御部6は、スリープ状態遷移コマンドをタグ通信部4からRFIDタグ22へ送信させる。RFIDタグ22は、スリープ状態遷移コマンドに従って、電力制限状態の1つであるスリープ状態になる。この後、制御部6は、RFIDタグ22へタグ通信部4から非特定コマンドを送信させ、この非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に基づき、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認する。また、制御部6は、RFIDタグ22へタグ通信部4から特定コマンドを送信させ、この特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性に基づき、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認する。
【0072】
このように、電力制限状態におけるRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認することで、その通信性に異常があればそれを発見し、通信を安定化させるための対処が可能になるので、印刷装置1の信頼性を向上できる。
【0073】
また、電力制限状態における非特定コマンドによる通信性の確認と特定コマンドによる通信性の確認とを行うので、高精度で電力制限状態におけるRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性を確認できる。
【0074】
また、電力制限状態が特定コマンドにのみ正常に応答する状態であるので、電力制限状態でも重要なコマンドの通信を行いたい要求に対応できる。
【0075】
また、電力制限状態のRFIDタグ22が自力電力で動作するので、RFIDタグ22への供給電力不足で通信できなくなることを防止できる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、通信確認処理において、特定コマンドの送信を1回のみ行うものとして説明したが、特定コマンドの送信を複数回行ってもよい。この場合、1回でも特定コマンドに対する応答性に異常があれば、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性に異常があると判断すればよい。通信確認処理におけるスリープ状態遷移コマンドの送信後の非特定コマンドの送信についても同様である。
【0077】
また、上述のように特定コマンドの送信を複数回行う場合において、所定間隔で特定コマンドを所定回数送信し、応答性が正常であるか否かにより、RFIDタグ22が正常品であるか否かを判定するようにしてもよい。この際、特定コマンドを送信する間隔および送信回数は、RFIDタグ22の仕様において応答可能な範囲に応じて設定すればよい。非特定コマンドの送信を複数回行う場合についても同様である。
【0078】
また、上述のように特定コマンドの送信を複数回行う場合において、送信間隔を短くしたり長くしたりして、応答性が正常であるか否かにより、RFIDタグ22が正常品であるか否かを判定するようにしてもよい。非特定コマンドの送信を複数回行う場合についても同様である。
【0079】
また、上述のように特定コマンドの送信を複数回行う場合において、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の電界強度を送信ごとに変化させ、それぞれの応答性が正常であるか否かにより、RFIDタグ22が正常品であるか否かを判定するようにしてもよい。この際、変化させる電界強度の範囲は、RFIDタグ22の仕様において応答可能な範囲に応じて設定すればよい。電界強度の代わりに、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信における周波数、RFIDタグ22のインピーダンス、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の距離、変調方式、変調度等を変化させてもよい。非特定コマンドの送信を複数回行う場合についても同様である。ここで、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の距離は、インクカートリッジ21の装着時に変化するため、このタイミングを利用して、上記の判定のための処理を行うことができる。
【0080】
また、正常品のRFIDタグ22が応答しないコマンドであるイレギュラーコマンドを送信し、そのイレギュラーコマンドに対する応答性が正常であるか(応答しないか)否かにより、RFIDタグ22が正常品であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
上述したRFIDタグ22が正常品であるか否かを判定する処理は、通信確認処理とは別に任意のタイミングで行ってもよい。
【0082】
また、上述した実施の形態では、電力制限状態のRFIDタグ22が自力電力で動作するものとしたが、電力制限状態でも通信可能な程度の電力が印刷装置1から供給されている場合には、印刷装置1からの供給電力でRFIDタグ22が動作するようにしてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、RFIDタグ22にスリープ状態遷移コマンドを送信する前に、非特定コマンドを送信し、スリープ状態遷移コマンドの送信後において、スリープ状態遷移コマンドの送信前に送信したものと同じ非特定コマンドを送信した。そして、スリープ状態遷移コマンドの送信後に送信した非特定コマンドに対して応答があった場合に、その応答の内容と、スリープ状態遷移コマンドの送信前に送信した非特定コマンドに対する応答の内容とが異なるか否かを判断した。
【0084】
しかし、スリープ状態遷移コマンドの送信後に送信する非特定コマンドに対応する応答の内容を事前に把握していれば、スリープ状態遷移コマンドの送信前における非特定コマンドの送信は省略可能である。この場合、非特定コマンド送信要求を送信してから所定時間未満で応答があり、その内容が非特定コマンドに対応する応答の内容とは異なる場合、非特定コマンドに対するRFIDタグ22の応答性が正常であると判断すればよい。
【0085】
また、インクカートリッジ21の装着時に上述の通信確認処理を行い、通信性が正常であると確認されると、次のような課金処理を行うようにしてもよい。
【0086】
まず、制御部6は、インクカートリッジ21のRFIDタグ22から当該インクカートリッジ21を使用可能な機種を示す機種情報を取得する。次いで、制御部6は、取得した機種情報に基づき、当該インクカートリッジ21が印刷装置1で使用可能か否かを判断する。
【0087】
当該インクカートリッジ21が印刷装置1で使用可能と判断した場合、制御部6は、インクカートリッジ21のRFIDタグ22から当該インクカートリッジ21の課金形態を示す課金形態情報を取得する。次いで、制御部6は、取得した課金形態情報に基づき、当該インクカートリッジ21の課金形態がネットワークでの課金であるか否かを判断する。
【0088】
当該インクカートリッジ21の課金形態がネットワークでの課金であると判断した場合、制御部6は、ネットワーク上のサーバ装置に当該インクカートリッジ21の代金の支払いを要求する。
【0089】
代金の支払いの要求を受信したサーバ装置は、インクカートリッジ21の代金の支払いを行い、代金の支払いが終了したことを印刷装置1の制御部6へ通知する。
【0090】
インクカートリッジ21の代金の支払いが終了したとの通知を受信すると、制御部6は、当該インクカートリッジ21を用いた印刷を可能とする。
【0091】
これにより、インクカートリッジ21の使用開始ごとに当該インクカートリッジ21の代金が支払われるので、代金の変更に迅速に対応できる。例えば、インクカートリッジ21の代金の低下の恩恵を即座に受けることができる。
【0092】
また、上述した実施の形態では、RFIDタグ22が、電力制限状態が特定コマンドにのみ正常に応答する状態(特定状態)である場合について説明したが、特定コマンドにのみ正常に応答する状態は電力制限状態に限らない。例えば、RFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信方式としてFM変調方式とAM変調方式とを切替可能な構成において、RFIDタグ22が一方の通信方式でタグ通信部4と通信を行う状態を、特定コマンドにのみ正常に応答する状態としてもよい。
【0093】
また、RFIDタグ22が特定コマンドにのみ正常に応答する状態(特定状態)として、複数種類の状態があってもよい。
【0094】
また、通信制確認処理において、
図10のステップS10で電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性に異常があると判断した場合、それ以降の処理を省略して通信確認処理を終了してもよい。すなわち、ステップS10で電力制限状態のRFIDタグ22とタグ通信部4との間の通信性が正常であると判断した場合に、それ以降の処理を行うようにしてもよい。
【0095】
また、通信制確認処理において、特定コマンドによる通信性の確認を非特定コマンドによる通信性の確認より先に行ってもよい。
【0096】
また、上述した実施の形態では、インクカートリッジを用いるインクジェット方式の印刷装置を例に説明したが、これに限らず、電子機器と通信可能なタグを有する装着ユニットが装着される電子機器であれば本発明は適用可能である。例えば、タグが取り付けられた紙管にマスター(孔版原紙)が巻かれたものを装着ユニットとして用いる孔版印刷装置にも本発明は適用可能である。
【0097】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0098】
(付記1)
外部と通信可能なタグを有する装着ユニットが装着される電子機器であって、
前記タグと通信するタグ通信部と、
前記タグ通信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に前記タグを遷移させるコマンドを前記タグ通信部から前記タグへ送信させて前記タグを前記特定状態とし、
前記タグへ前記タグ通信部から非特定コマンドを送信させ、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記タグへ前記タグ通信部から前記特定コマンドを送信させ、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする電子機器。
【0099】
(付記2)
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする付記1に記載の電子機器。
【0100】
(付記3)
電子機器に装着される装着ユニットであって、
前記電子機器と通信するタグを備え、
前記タグは、前記電子機器からのコマンドに従って特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態になり、前記特定状態において、前記電子機器から送信された非特定コマンドを受信したときは正常には応答せず、前記電子機器から送信された前記特定コマンドを受信したときは正常に応答することを特徴とする装着ユニット。
【0101】
(付記4)
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする付記3に記載の装着ユニット。
【0102】
(付記5)
前記タグは、前記電子機器からの供給電力が制限された状態において自力電力で動作することを特徴とする付記4に記載の装着ユニット。
【0103】
(付記6)
電子機器に装着された装着ユニットのタグを特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態に遷移させ、
前記電子機器のタグ通信部から前記タグへ非特定コマンドを送信し、前記非特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認し、
前記タグ通信部から前記タグへ前記特定コマンドを送信し、前記特定コマンドに対する前記タグの応答性に基づき、前記タグと前記タグ通信部との間の通信性を確認することを特徴とする通信方法。
【0104】
(付記7)
前記特定状態は、前記電子機器から前記タグへの供給電力が制限された状態であることを特徴とする付記6に記載の通信方法。
【0105】
(付記8)
電子機器と通信するタグを備え、前記電子機器に装着される装着ユニットにおける通信方法であって、
前記タグが、前記電子機器からのコマンドに従って特定コマンドにのみ正常に応答する特定状態になり、前記特定状態において、前記電子機器から送信された非特定コマンドを受信したときは正常には応答せず、前記電子機器から送信された前記特定コマンドを受信したときは正常に応答することを特徴とする通信方法。
【符号の説明】
【0106】
1 印刷装置
2 印刷部
3 操作パネル
4 タグ通信部
5 装着部
6 制御部
11 インクジェットヘッド
21 インクカートリッジ
22 RFIDタグ