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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240709BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240709BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08L15/00
C08L57/02
C08L91/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020036494
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2020169313
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】16/291,056
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ニハット・アリ・イシトマン
(72)【発明者】
【氏名】クロード・チャールズ・ヤコビー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ・ポンペイ
(72)【発明者】
【氏名】ルイザ・フェルナンダ・ムニョス・メヒア
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・カンツ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ヴェイデルト
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0159147(US,A1)
【文献】特表2011-508815(JP,A)
【文献】特開2001-098036(JP,A)
【文献】特開2003-253051(JP,A)
【文献】特開2000-256515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫性ゴム組成物を含むトレッドを特徴とする空気入りタイヤであって、該加硫性ゴム組成物がエラストマー100重量部を基準(phr)にして、
(A)-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム20~60phr;
(B)95パーセントを超えるcis1,4含有率および-80~-110℃の範囲のTgを有するポリブタジエン40~80phr;ならびに
(C)プロセス油0~20phr;
(D)C5/C9樹脂およびDCPD/C9樹脂からなる群から選択される、30℃を超えるTgを有する樹脂55~80phr;ならびに
(E)シリカ110~160phr
を含む、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記C5/C9樹脂が、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、0~5%の環状化合物、0~10%のスチレン化合物、および0~10%のインデン化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記C5/C9樹脂が、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、2~5%の環状化合物、4~10%のスチレン化合物、および4~10%のインデン化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記C5/C9樹脂が25モルパーセント未満の芳香族性水素含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記C5/C9樹脂が、3~15モルパーセントの間の芳香族性水素含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオール類からなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記プロセス油が、芳香族炭化水素、パラフィン、ナフテン、MES、TDAE、重質ナフテン油および植物油からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記スチレン-ブタジエンゴムの量が20~40phrの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記プロセス油の量が1~20phrの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
タイヤが良好な湿潤横滑り抵抗、低い転がり抵抗および良好な摩耗特性を有することは非常に望ましい。湿潤横滑り抵抗および牽引特性を犠牲にすることなく、タイヤの摩耗特性を改善するのは従来非常に困難であった。これらの性質は、タイヤを製造する際に用いられるゴムの動的粘弾性に大いに依存する。
【0003】
転がり抵抗を減少させてタイヤのトレッド摩耗特性を改善するために、高反発性のゴムが、タイヤトレッドゴムコンパウンドを製造する際に従来から利用されてきた。他方、タイヤの湿潤横滑り抵抗を上げるために、大きいエネルギー損を受けるゴムが、一般にタイヤのトレッドに利用されてきた。これら2つの粘弾性的に一致しない性質のバランスを取るために、様々な種類の合成と天然ゴムの混合物が通常、タイヤトレッドに利用されている。
【0004】
折々には、雪面上で牽引を増進するためのトレッドを有するタイヤが所望される。タイヤトレッドについて、様々なゴム組成物を提案することができる。ここで、難問は、トレッドが低温の冬季条件に対して、特に乗り物の雪上運転に使用することが意図される場合、-20℃でより低い貯蔵弾性率G’を有することにより示されるような、そのようなトレッドゴム組成物の硬化剛性を低減することである。
【0005】
低温(例えば冬季の)性能を増進する一方でそれらの両方の湿潤牽引を維持することについて、そのようなタイヤトレッドゴム組成物を提供するにはかなりの難問を呈すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,342,070号
【文献】国際公開第2007/047943号
【文献】米国特許第7,214,731号
【文献】米国特許第4,704,414号
【文献】米国特許第6,123,762号
【文献】米国特許第6,573,324号
【文献】米国特許第6,608,125号
【文献】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0007】
【文献】the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版
【文献】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【文献】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁
【文献】H. A.Palowskiら、Rubber World、1992年6月
【文献】H. A.Palowskiら、Rubber World、1997年1月
【文献】Rubber & Plastics News、1993年4月26日
【文献】Rubber & Plastics News、1993年5月10日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部を基準(phr)にして
(A)-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約20~約60phr;
(B)95パーセントを超えるcis1,4含有率および-80~-110℃の範囲のTgを有するポリブタジエン約45~約80phr;ならびに
(C)プロセス油0~20phr;
(D)C5/C9樹脂およびDCPD/C9樹脂からなる群から選択される、Tgが30℃を超える樹脂55~80phr;ならびに
(E)シリカ110~160phr
を含む、空気入りタイヤを対象とする。
【0009】
本発明は、タイヤを製造する方法をさらに対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部を基準(phr)にして、
(A)-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約20~約60phr;
(B)95パーセントを超えるcis1,4含有率および-80~-110℃の範囲のTgを有するポリブタジエン約40~約80phr;ならびに
(C)プロセス油0~20phr;
(D)C5/C9樹脂およびDCPD/C9樹脂からなる群から選択される、Tgが30
℃を超える樹脂55~80phr;ならびに
(E)シリカ110~160phr
を含む、空気入りタイヤが開示される。タイヤを製造する方法がさらに開示される。
【0011】
ゴム組成物は、-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するスチレン-ブタジエンゴム20~60phr、あるいは20~45phrを含む。スチレン-ブタジエンゴムは、様々な官能基で官能化されていてもされていなくてもよい。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、アルコキシシラン基および第一級アミン基およびチオール基の少なくとも1つで官能化されている。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、スチレンおよびブタジエンを共重合することにより得られ、スチレン-ブタジエンゴムがポリマー鎖に結合した第一級アミノ基および/またはチオール基ならびにアルコキシシリル基を有することを特徴とする。一実施形態において、アルコキシシリル基はエトキシシリル基である。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは官能化されていない。
【0012】
第一級アミノ基および/またはチオール基は、それがスチレン-ブタジエンゴム鎖に結合している限り、重合開始末端、重合停止末端、スチレン-ブタジエンゴムの主鎖および側鎖のいずれに結合されていてもよい。しかし、ポリマー末端でのエネルギーの消失が抑制されて、ヒステリシス損特性が改善されるので、第一級アミノ基および/またはチオール基は、好ましくは、重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0013】
さらに(コ)ポリマーゴムのポリマー鎖に結合したアルコキシシリル基の含有率は、好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの0.5~200mmol/kgである。含有率は、より好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの1~100mmol/kg、特に好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの2~50mmol/kgである。
【0014】
アルコキシシリル基は、それが(コ)ポリマー鎖に結合している限り、重合開始末端、重合停止末端、(コ)ポリマー鎖の主鎖および側鎖のいずれに結合されていてもよい。しかし、(コ)ポリマー末端からのエネルギーの消失が抑制されてヒステリシス損特性を改善することができるので、アルコキシシリル基は、好ましくは、重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0015】
スチレン-ブタジエンゴムは、炭化水素溶媒中でスチレンおよびブタジエンの重合によって、開始剤として有機アルカリ金属および/または有機アルカリ土類金属を使用し、保護基で保護された第一級アミノ基および/または保護基で保護されたチオール基ならびにアルコキシシリル基を有する停止剤化合物を加えて、重合が実質的に完了した時点でリビングポリマー鎖末端とそれを反応させ、次いで、例えば加水分解または他の好適な手順によるブロック解除を行うアニオン重合によって作製することができる。一実施形態において、米国特許第7,342,070号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを作製することができる。別の実施形態において、国際公開第2007/047943号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを作製することができる。
【0016】
一実施形態において、また、米国特許第7,342,070号に教示されるように、スチレン-ブタジエンゴムは式(I)または(II)のものである。
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、Pは、共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖であり、Rは、1~12炭素原子を有するアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、1~20炭素原子を有するアルキル基、アリル基またはアリール基であり、nは整数1または2であり、mは整数1または2であり、kは整数1または2であるが、ただし、n+m+kは整数3または4である]
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、P、R、RおよびRは、上記に挙げた式Iついて示したのと同一の定義を有し、jは整数1~3であり、hは整数1~3であるが、ただし、j+hは整数2~4である]
保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する停止剤化合物は、当業界で公知である様々な化合物のいずれかであってもよい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、例えばN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどを含んでもよく、1-トリメリルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、N,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0021】
一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、式III
RN-(CHSi(OR’), III
[式中、Rは、窒素(N)原子と組み合わさって、好適な後処理時に第一級アミンを生じる、保護されたアミン基であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリールから選択される、1~18炭素原子を有する基を表し;Xは整数1~20である]
の任意の化合物であってもよい。一実施形態において、少なくとも1個のR’基はエチルラジカルである。第一級アミンを生じる好適な後処理によって、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物とのリビングポリマーの反応の後に続いて、保護基が除去されることを意味する。例えばN,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン中のようなビス(トリアルキルシリル)保護基の場合には、加水分解は、トリアルキルシリル基を除去し、第一級アミンを残すために使用される。
【0022】
一実施形態において、ゴム組成物は、アルコキシシラン基および第一級アミン基またはチオール基で官能化された、約40~約60phrのスチレン-ブタジエンゴムを含む。
アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムは、Japan Synthetic Rubber(JSR)からHPR 340のように市販されている。
【0023】
一実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、国際公開第2007/047943号に開示されている通りであり、アルコキシシラン基およびチオールで官能化され、リビングアニオンポリマーと式IV
(RO) Si-R-S-SiR IV
[式中、Siはシリコンであり;Sは硫黄であり;Oは酸素であり;xは、1、2および3から選択される整数であり;yは、0、1および2から選択される整数であり;x+y=3であり;Rは同一または異なり、(C-C16)アルキルであり;R’は、アリールおよびアルキルアリール、または(C-C16)アルキルである]
によって表わされるシランスルフィド改質剤との反応生成物を含む。一実施形態において、Rは(C-C16)アルキルである。一実施形態において、各R基は、同一または異なり、それぞれは独立して、アルキルC-Cであり、RはC-Cアルキルである。
【0024】
溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、-85℃~50℃の範囲のガラス転移温度を有する。本明細書において言及したエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度またはTgへの言及は、エラストマー組成物の事例の未硬化状態またはことによると硬化状態におけるそれぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度を表わす。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D7426または同等のものに従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として適切に求めることができる。
【0025】
アルコキシシラン基およびチオール基で官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムは、TrinseoからのSprintan SLR 3402のように市販されている。
【0026】
ゴム組成物の別の成分は、95パーセントを超えるcis1,4含有率および-80~-110℃の範囲のTgを有するポリブタジエン、約40~約80phr、あるいは55~80phrである。適切なブタジエンゴムは、例えば、1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製されてもよい。BRは、好都合には、例えば、少なくとも90パーセントのcis1,4含有率および約-90℃~約-110℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とすることができる。適切なブタジエンゴムは、例えば-108℃のTgおよび96%のcis1,4含有率を有する、GoodyearからのBudene(登録商標)1223などのように、市販されている。
【0027】
ゴム組成物は、プロセスオイルを0~20phr、あるいは1~20phr含んでもよい。通常、エラストマーを増量するために使用される増量油として、プロセスオイルが、ゴム組成物に含まれていてもよい。プロセスオイルはまた、ゴム配合時の油の直接添加によってゴム組成物に含まれていてもよい。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に加えられるプロセス油の両方に含まれてもよい。適切なプロセス油は、芳香族炭化水素、パラフィン、ナフテン系、および低PCA油、例えばMES(mild extracted solvate:軽度抽出溶媒和物);、TDAE(treated distillate aromatic extracts:処理留出物芳香族系抽出物);、および重質ナフテン油、ヒマワリ、大豆およびサフラワー油などの植物油、ならびにオレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノレイン酸アルキルおよびパルミチン酸アルキルからなる群から選択される脂肪酸のモノエステルを含む、当業界で公知である様々な油を含む。
【0028】
適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版に見つけることができる。
【0029】
適切なTDAE油は、Klaus Dahleke KGからのTudalen SX500、H&R GroupからのVivaTec 400およびVivaTec 500、ならびにBPからのEnerthene 1849、ならびにRepsolからのExtensoil 1996として利用可能である。油は、油として単独で、または増量したエラストマーの形のエラストマーと一緒に利用可能であることがある。
【0030】
適切な植物油は、例えば一定の不飽和度を含有するエステルの形態である大豆油、ひまわり油およびキャノーラ油を含む。
ゴム組成物は、C5/C9樹脂およびジシクロペンタジエン(DCPD)/C9樹脂から選択される樹脂50~80phr、あるいは55~80phrをさらに含む。
【0031】
一実施形態において、樹脂は、30℃より高いガラス転移温度を有する、C5およびC9炭化水素留分を含むC5/C9炭化水素樹脂である。樹脂についてのTgの適切な測定は、ASTM D6604または同等物によるDSCである。炭化水素樹脂は、時には環球式軟化点と呼ばれ得る、ASTM E28によって測定して0℃~160℃の間の軟化点を有する。
【0032】
適切なC5/C9樹脂は、芳香族、非芳香族成分の両方を含んでもよい。C5/C9樹脂の違いは、主として炭化水素成分が由来する供給原料中のオレフィンによる。C5/C9樹脂は、可変量のピペリレン、イソプレン、モノオレフィン、および非重合性のパラフィン系化合物を含有するC4~C6分画から形成された炭化水素鎖を有する「脂肪族」炭化水素成分を含んでいてもよい。そのようなC5/C9樹脂は、ペンテン、ブタン、イソプレン、ピペリレンに基づき、含まれるシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンの量は少ない。またC5/C9樹脂は、スチレン、キシレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエンおよびインデンなどの芳香族単位から形成されているポリマー鎖を有する「芳香族」炭化水素構造を含んでいてもよい。
【0033】
本発明によると、ゴム配合において使用されるC5/C9樹脂は、ピペリレン、イソプレン、アミレンなどのオレフィン、および環状成分を含む。またC5/C9樹脂は、スチレン成分およびインデン成分などの芳香族オレフィンを含んでいてもよい。
【0034】
ピペリレンは一般に、cis-1,3-ペンタジエン、trans-1,3-ペンタジエン、および混合1,3-ペンタジエンを含むがこれらに限定されないC5ジオレフィンの留分または合成混合物である。一般に、ピペリレンはイソプレンなどの分岐C5ジオレフィンを含まない。一実施形態において、C5/C9樹脂は、40~90%(重量による)、または50~90%、より好ましくは60~90%のピペリレンを有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は70~90%のピペリレンを有する。
【0035】
一実施形態において、C5/C9樹脂は実質上イソプレンを含まない。別の実施形態において、C5/C9樹脂は最大15%のイソプレン、または10%未満のイソプレンを含む。さらに別の実施形態において、C5/C9樹脂は5%未満のイソプレンを含む。
【0036】
一実施形態において、C5/C9樹脂は実質上アミレンを含まない。別の実施形態において、C5/C9樹脂は最大40%のアミレン、または30%未満のアミレン、または25%未満のアミレンを含む。さらに別の実施形態において、C5/C9樹脂は最大10%のアミレンを含む。
【0037】
環状化合物は、一般に、C5およびC6の環状オレフィン、ジオレフィン、およびそれからの二量体の留分または合成混合物である。環状化合物は、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエンおよび1,4-シクロヘキサジエンを含むがこれらに限定されない。好ましい環状化合物はシクロペンタジエンである。ジシクロペンタジエンは、エンド形、エキソ形のいずれであってもよい。環状化合物は、置換されていてもされていなくてもよい。好ましい置換環状化合物は、シクロペンタジエンおよびC1~C40の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、好ましくは1個または複数のメチル基で置換されたジシクロペンタジエンを含む。一実施形態において、C5/C9樹脂は、最大60%の環状化合物または最大50%の環状化合物を含んでもよい。通常の最低限界は、少なくとも約0.1%もしくは少なくとも約0.5%を含むか、または約1.0%の環状化合物を含む。少なくとも1つの実施形態において、C5/C9樹脂は、最大20%の環状化合物、またはより好ましくは最大30%の環状化合物を含んでもよい。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は、約1.0~約15%の環状化合物または約5~約15%の環状化合物を含む。
【0038】
C5/C9樹脂中にあってもよい好ましい芳香族は、スチレン、インデン、スチレンの誘導体、およびインデンの誘導体の1つまたは複数を含む。特に好ましい芳香族オレフィンは、スチレン、アルファメチルスチレン、ベータメチルスチレン、インデン、およびメチルインデン、およびビニルトルエンを含む。芳香族性のオレフィンは、一般に、C5/C9樹脂中に、5~45%、またはより好ましくは5~30%存在する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は10~20%の芳香族オレフィンを含む。
【0039】
スチレン成分は、スチレン、スチレンの誘導体、および置換スチレンを含む。一般に、スチレン成分は、インデン化合物などの縮合環を含まない。一実施形態において、C5/C9樹脂は、最大60%のスチレン成分または最大50%のスチレン成分を含む。一実施形態において、C5/C9樹脂は、5~30%のスチレン成分、または5~20%のスチレン成分を含む。好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は10~15%のスチレン成分を含む。
【0040】
C5/C9樹脂は、15%未満のインデン成分、または10%未満のインデン成分を含んでもよい。インデン成分は、インデンおよびインデンの誘導体を含む。一実施形態において、C5/C9樹脂は5%未満のインデン成分を含む。別の実施形態において、C5/C9樹脂は実質上インデン成分を含まない。
【0041】
好ましいC5/C9樹脂は、160℃で300~800センチポアズ(cP)、またはより好ましくは、160℃で350~650cPの溶融粘度を有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂の溶融粘度は、160℃で375~615cPまたは160℃で475~600cPである。溶融粘度は、Brookfield粘度計によってASTM D6267の「J」型スピンドルを用いて測定することができる。
【0042】
一般に、C5/C9樹脂は、約600g/モルより大きい、または約1000g/モルより大きい重量平均分子量(Mw)を有する。少なくとも1つの実施形態において、C5/C9樹脂は、1650~1950g/モル、または1700~1900g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは、C5/C9樹脂は、1725~1890g/モルの重量平均分子量を有する。C5/C9樹脂は、450~700g/モル、または500~675g/モル、またはより好ましくは520~650g/モルの数平均分子量(Mn)を有していてもよい。C5/C9樹脂は、5850~8150g/モル、またはより好ましくは6000~8000g/モルのz-平均分子量(Mz)を有していてもよい。Mw、MnおよびMzは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0043】
一実施形態において、C5/C9樹脂は、4以下の多分散指数(「PDI」、PDI=Mw/Mn)を有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は2.6~3.1のPDIを有する。
【0044】
好ましいC5/C9樹脂は、約-30℃~約100℃、または約0℃~80℃、または約40~60℃、または45~55℃、またはより好ましくは48~53度(摂氏)のガラス転移温度(Tg)を有する。示差走査熱量測定法(DSC)が、C5/C9樹脂のTgを測定するために使用されてもよい。
【0045】
別の実施形態において、C5/C9樹脂は水素化されていてもよい。
一実施形態において、C5/C9樹脂は、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、0~5%の環状化合物、0~10%のスチレン化合物、および0~10%のインデン化合物を含む
一実施形態において、C5/C9樹脂は、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、2~5%の環状化合物、4~10%のスチレン化合物、および4~10%のインデン化合物を含む
一実施形態において、C5/C9は、約60%(重量による)のピペリレン、約22%のアミレン、約3%の環状化合物、約6%のスチレン、および約6%のインデンを含み、160℃で436cPの溶融粘度;855g/モルのMn;1595g/モルのMw;3713g/モルのMz;1.9のPDI;および47℃のTgをさらに有する。
【0046】
C5/C9樹脂またはDCPD/C9樹脂は、さらに、1H NMRによって測定してその芳香族性水素含有率を特徴とすることができる。一実施形態において、C5/C9樹脂は、25モルパーセント未満の芳香族性水素含有率を有する。一実施形態において、C5/C9樹脂は、3~15モルパーセントの間にある芳香族性水素含有率を有する。
【0047】
有用な炭化水素ポリマー添加剤の例は、ExxonMobil Chemical Companyから市販されているポリマー添加剤のOpperaシリーズであり、Oppera 373を含むがこれらに限定されない。
【0048】
一実施形態において、樹脂はDCPD/C9樹脂である。適切なDCPD/C9樹脂は、約10モルパーセントの芳香族性水素含有率を有するOppera 383として利用可能な水素化DCPD/C9樹脂である。
【0049】
語句「オレフィン性不飽和を含有するゴムまたはエラストマー」は、様々な合成ゴムだけでなく天然ゴムとその様々な未加工および再生形態の両方を含むように意図される。本発明の記載において、「ゴム」、「エラストマー」という用語は、ほかに規定されなかったなら、交換可能に使用されてもよい。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、様々な原料および材料とブレンドまたは混合されたゴムを指すために交換可能に使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合技術の当業者に周知である。
【0050】
加硫性ゴム組成物は、約1100~約160phrのシリカを含んでもよい。
ゴムコンパウンドにおいて使用されてもよい、一般に用いられる珪質顔料は、従来の火成および沈殿させた珪質顔料(シリカ)を含むが、沈殿されたシリカが好ましい。本発明において好ましく用いられる従来の珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られたものなどの沈殿させたシリカである。
【0051】
そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定して、好ましくは1グラム当たり約40~約600平方メートルの範囲、より普通には約50~約300平方メートルの範囲のBET表面積を有することを特徴とすることができる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0052】
また従来のシリカは、通常、約100~約400、より普通には約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。
従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒子寸法を有すると予想されてもよいが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。
【0053】
様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesからの名称210、243、315などを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Rhodiaからの、例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称を有する、入手可能なシリカ、およびDegussa AGから入手可能な、例えば名称VN2およびVN3を有するシリカなどが使用されてもよい。
【0054】
予備疎水化沈降シリカが使用されてもよい。予備疎水化とは、シリカが前処理される、すなわち、予備疎水化沈降シリカが、ゴム組成物へのその添加に先立って少なくとも1個のシランを用いる処理によって疎水化されることを意味する。適切なシランは、アルキルシラン、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシリルポリスルフィドおよびオルガノメルカプトアルコキシシランを含むがこれらに限定されない。代替として、ゴム内で沈降シリカをシリカカップリング剤とインサイチューで反応させる代わりに、前処理シリカをゴムとブレンドする前に、沈降シリカは、例えば、アルコキシオルガノメルカプトシランまたはアルコキシシランおよびアルコキシオルガノメルカプトシランの組み合わせで構成されるシリカカップリング剤で前処理されてもよい。例えば、米国特許第7,214,731号を参照すること。様々な前処理された沈降シリカについて、例えば、米国特許第4,704,414号、第6,123,762号、第6,573,324号を参照すること。適切な前処理または予備疎水化されたシリカはPPGからのAgilon 400として市販されている。
【0055】
加硫性ゴム組成物は、カーボンブラックを約1~約20phr含んでもよい。
一般に用いられるカーボンブラックは、従来の充填剤として使用することができる。カーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収量、および34~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0056】
好ましくは、タイヤ成分で使用されるゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物をさらに含んでもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
Z-Alk-S-Alk-Z V
[式中、Zは、
【0057】
【化3】
【0058】
(式中、Rは、1~4炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8炭素原子のアルコキシまたは5~8炭素原子のシクロアルコキシである)
からなる群から選択され、
Alkは、1~18炭素原子の二価炭化水素であり、
nは2~8の整数である]
を有するものである。
【0059】
本発明に従って使用されてもよい硫黄含有有機ケイ素化合物の特別の例としては、以下のものを含む:3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2”-エチルヘキソキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロネキソキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロペントキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’-ビス(トリ-2”-メチルシクロヘキソキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジt-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(エチルジ-sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシレン)テトラスルフィド、5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド
好ましい硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィドである。最も好ましい化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって式Vに関して、好ましくはZは、
【0060】
【化4】
【0061】
[式中、Rは、2~4炭素原子の、特に好ましくは2炭素原子を有するアルコキシであり;alkは2~4炭素原子の、特に好ましくは3炭素原子を有する二価炭化水素であり;nは、整数2~5、特に好ましくは2および4である]
である。
【0062】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含み、これはMomentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。
【0063】
一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、炭化水素系ジオール(例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール)のS-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]チオオクタノアートとの反応生成物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はMomentive Performance MaterialsからのNXT-Z(商標)である。
【0064】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、DegussaからのSi-363である。
【0065】
ゴム組成物中の式Iの硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤の水準に応じて様々である。概して言えば、式Iの化合物の量は、0.5~20phrの範囲である。好ましくは、量は1~10phrの範囲である。
【0066】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびに加工添加剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な硫黄加硫性の構成要素ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合されることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。好ましくは、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲、好ましくは1~6phrの範囲の量が使用されてもよい。典型的な量の抗酸化剤は約1~約5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁に開示されているものなどであってもよい。典型的な量のオゾン劣化防止剤は約1~5phrを含む。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる典型的な量の脂肪酸は、約0.5~約5phrを含む。典型的な量の酸化亜鉛は約2~約5phrを含む。典型的な量のワックスは約1~約5phrを含む。多くの場合、微晶質のワックスが使用される。典型的な量の釈解剤は約0.1~約1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0067】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の性質を改善するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤は、約0.5~約4phr、好ましくは約0.8~約2.0phrの範囲の合計量で使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の性質を改善するために約0.05~約3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な性質に相乗効果を生み出すと予想されてもよく、どちらかの促進剤の単独使用によって作製されたものより多少良好である。さらに、通常の加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤が使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。好ましくは、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、好ましくはグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物である。
【0068】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、通常、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、通常、従来、「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合され、ここで、通常、先行する非生産的混合段階の混合温度より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知である。ゴム組成物は、熱力学的混合ステップにかけられてもよい。熱力学的混合ステップは、一般に、140℃~190℃の間のゴム温度を生ずるように適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱力学的作業の好適な継続時間は、運転条件および成分の量および性質の関数として変わる。例えば、熱力学的作業は1~20分であってもよい。
【0069】
ゴム組成物は、タイヤのトレッド中に組み込まれてもよい。
本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土木機械用、オフロード用、トラック用タイヤなどであってもよい。好ましくは、タイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。また、タイヤは、ラジアルでもバイアスであってもよいが、ラジアルが好ましい。
【0070】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般に約100℃~200℃の範囲の従来の温度で行なわれる。好ましくは、加硫は、約110℃~180℃の範囲の温度で遂行される。プレスまたは金型での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫プロセスのいずれが使用されてもよい。そのようなタイヤは、そのような技術の当業者に公知であり、容易に明白になる様々な方法によって、構築、成形、成型、硬化することができる。
【0071】
以下の実施例は、説明する目的で提示され、本発明を限定するものではない。部はすべて、ほかに特別に確認されない限り、重量部である。
【実施例
【0072】
この実施例によって、本発明によるゴム組成物の利点を説明する。表1および3に示す調合に従ってゴムコンパウンドを混合した。量はphrで表す。化合物を硬化させ、表2および4に示すような物理的性質について試験した。
【0073】
表1~4は、ポリブタジエンの高い装填率水準を用いるコンパウンド製剤を、高いおよび低い芳香族性水素含有率の牽引樹脂の高い装填率水準と共に含む。低い芳香族性水素C5/C9樹脂を含有する本発明の実施例E1~4は、高い芳香族性水素の牽引樹脂を含有する比較例C1~4と比較して、よりよいタイヤ雪牽引を表す、より低い低温剛性(歪1.5%、-20℃でより低いG’を特徴とする)、低いタイヤ転がり抵抗を表す、より低い室温ヒステリシス(23℃でより高いはね返りを特徴とする)、および同等のタイヤ湿潤牽引を表す、同等の低温ヒステリシス(0℃で同様の反撥性を特徴とする)を示すという点で優れた性質を有する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
主題発明を説明する目的で特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題発明の範囲から離れることなく様々な変更および修正を本明細書において行なうことができることはこの技術の当業者には明白であろう。
[発明の実施形態]
1. 加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、該加硫性ゴム組成物がエラストマー100重量部を基準(phr)にして、
(A)-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約20~約60phr;
(B)95パーセントを超えるcis-1,4含有率および-80~-110℃の範囲のTgを有するポリブタジエン約45~約80phr;ならびに
(C)プロセス油0~20phr;
(D)C5/C9樹脂およびDCPD/C9樹脂からなる群から選択される、Tgが30℃を超える樹脂55~80phr;ならびに
(E)シリカ110~160phr
を含む、空気入りタイヤ。
【0079】
2. C5/C9樹脂が、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、0~5%の環状化合物、0~10%のスチレン化合物、および0~10%のインデン化合物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0080】
3. C5/C9樹脂が、50~90%(重量による)のピペリレン、0~5%のイソプレン、10~30%のアミレン、2~5%の環状化合物、4~10%のスチレン化合物、および4~10%のインデン化合物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0081】
4. C5/C9樹脂が25モルパーセント未満の芳香族性水素含有率を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
5. C5/C9樹脂が、3~15モルパーセントの間の芳香族性水素含有率を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
【0082】
6. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基、ならびに第一級アミンおよびチオール類からなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
【0083】
7. 油が、芳香族、パラフィン、ナフテン、MES、TDAE、重質ナフテン油および植物油からなる群から選択される、1に記載の空気入りタイヤ。
8. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化され、式(1)または(2)によって表わされる、1に記載の空気入りタイヤ。
【0084】
【化5】
【0085】
[式中、Pは、共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖であり、Rは1~12炭素原子を有するアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、1~20炭素原子を有するアルキル基、アリル基またはアリール基であり、nは、整数1または2であり、mは、整数1または2であり、kは、整数1または2であるが、ただし、n+m+kは整数3または4である]
【0086】
【化6】
【0087】
[式中、P、R、RおよびRは、上記に挙げられた式(1)について示したのと同一の定義を有し、jは、整数1~3であり、hは、整数1~3であるが、ただし、j+hは整数2~4である]
9. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムがアルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化され、リビングポリマー鎖と式
RN-(CH-Si-(OR’)
[式中、Rは、窒素(N)原子と組み合わさって、好適な後処理時に第一級アミンを生じる、保護されたアミン基であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリールから選択される、1~18炭素原子を有する基を表し;Xは整数1~20である]
の停止剤との反応生成物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0088】
10. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオールで官能化され、リビングアニオンポリマーと式
(RO) Si-R-S-SiR
[式中、Siはシリコンであり;Sは硫黄であり;Oは酸素であり;xは、1、2および3から選択される整数であり;yは、0、1および2から選択される整数であり;x+y=3であり;Rは同一または異なり、(C-C16)アルキルであり;Rは、アリールおよびアルキルアリール、または(C-C16)アルキルである]
によって表わされるシランスルフィド改質剤との反応生成物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0089】
11. スチレン-ブタジエンゴムの量が20~40phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
12. ポリブタジエン範囲の量が45~80phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
【0090】
13. 油の量が1~20phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
14. 樹脂の量が55~80phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。