(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 11/08 20060101AFI20240709BHJP
H01Q 1/14 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01Q11/08
H01Q1/14
(21)【出願番号】P 2020050824
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】李 煥仕
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】郷 清二
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06011525(US,A)
【文献】特開2020-005139(JP,A)
【文献】登録実用新案第3030472(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 11/08
H01Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリカルエレメントと、
前記ヘリカルエレメントを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、
前記ヘリカルエレメントが前記ヘリカルエレメントの軸方向の周りで前記保持部材から部分的に露出された状態で、前記ヘリカルエレメントの
前記軸方向に前記ヘリカルエレメントの少なくとも一部分を保持する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記保持部材には、溝が形成されており、
前記ヘリカルエレメントの一部分が前記溝内に位置する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの前記軸方向に並ぶ2つのリブを有し、
前記溝は、前記2つのリブの間の空隙によって画定されている、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記溝の少なくとも一部分の幅が、前記ヘリカルエレメントの線径の100%以上120%以下である、請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記溝の幅が、前記溝の底側から前記溝の開口側に向かうにつれて広がっている、請求項2~4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの外側から前記ヘリカルエレメントを保持する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの前記軸方向に前記ヘリカルエレメントを圧縮可能になっている、請求項1~6までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの上方に位置する上部を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記保持部材の前記上部には、切欠きが設けられている、請求項8に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置は、アンテナエレメントとしてヘリカルエレメントを備えていることがある。ヘリカルエレメントには、形状の安定性が求められる。例えば、ヘリカルエレメントの形状が変動してヘリカルエレメントの巻き部同士が接触すると、ヘリカルエレメントのアンテナ性能が大きく変わる可能性がある。特に、周波数帯域が高くなるほど、ヘリカルエレメントの形状の変動がアンテナ性能へ与える影響は大きくなる。
【0003】
特許文献1には、ヘリカルエレメントを備えるアンテナ装置について記載されている。ヘリカルエレメントは、ヘリカルエレメントの先端及び後端を基板に接続して固定する。
【0004】
特許文献2には、ヘリカルエレメントを樹脂によって封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-278591号公報
【文献】特開2001-308621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1のようにヘリカルエレメントの各巻き部が軸方向に保持されていない場合、ヘリカルエレメントの軸方向におけるヘリカルエレメントの各巻き部等の各部分の移動が起こりやすく、巻き部同士の隙間が変動してヘリカルエレメントのアンテナ性能の変動が生じやすい。また、特許文献2のようにヘリカルエレメントを樹脂で封止した場合、樹脂によるヘリカルエレメントの性能の悪化が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の目的の一例は、ヘリカルエレメントを保持するための樹脂の量を抑えつつ、ヘリカルエレメントの形状の変動を抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
ヘリカルエレメントと、
前記ヘリカルエレメントを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの軸方向に前記ヘリカルエレメントの少なくとも一部分を保持する、アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、ヘリカルエレメントを保持するための樹脂の量を抑えつつ、ヘリカルエレメントの形状の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【
図2】導体板が取り除かれたアンテナ部の斜視図である。
【
図4】
図2に示したアンテナ部の一部分の底面図である。
【
図5】
図2に示したアンテナ部の一部分の断面図である。
【
図6】コイルエレメントを保持部材に組み付ける方法の一例を説明するための図である。
【
図7】コイルエレメントを保持部材に組み付ける方法の一例を説明するための図である。
【
図8】コイルエレメントを保持部材に組み付ける方法の一例を説明するための図である。
【
図9】コイルエレメントを保持部材に組み付ける方法の一例を説明するための図である。
【
図10】変形例1に係るアンテナ装置の斜視図である。
【
図12】変形例2に係るアンテナ装置の斜視図である。
【
図14】変形例3に係るアンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
図2は、導体板300が取り除かれたアンテナ部10の斜視図である。
図3は、
図2に示したアンテナ部10の後面図である。
図4は、
図2に示したアンテナ部10の一部分の底面図である。
図5は、
図2に示したアンテナ部10の一部分の断面図である。
図5では、アンテナ部10ののうち、後述する第2方向Yにおけるアンテナ部10の中心を第2方向Yに垂直な方向に沿って通過する断面が、ハッチングが付された領域として示されている。
【0013】
図1から
図5において、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、それぞれ、アンテナ装置1の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。詳細には、第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、アンテナ装置1の前方向を示している。なお、第1方向Xを示す矢印の方向が図の紙面に垂直な方向に向けられている場合、第1方向Xを示すX付き白丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が第1方向Xの正方向であることを示し、第1方向Xを示す黒丸付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が第1方向Xの正方向であることを示す。後述する第2方向Y及び第3方向Zについても同様である。第1方向Xを示す矢印の反対方向である第1方向Xの負方向は、アンテナ装置1の後方向を示している。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、アンテナ装置1の左方向を示している。第2方向Yを示す矢印の反対方向の第2方向Yの負方向は、アンテナ装置1の右方向を示している。第3方向Zを示す矢印の方向である第3方向Zの正方向は、アンテナ装置1の上方向を示している。第3方向Zを示す矢印の反対方向の第3方向Zの負方向は、アンテナ装置1の下方向を示している。
図1~
図5以降の図についても同様である。
【0014】
ここでいう「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」は、アンテナ装置1が搭載される自動車によって決定される。すなわち、前方向とは、自動車の前進方向であり、後方向とは、自動車の後進方向である。また、左方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの左方向であり、右方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの右方向である。また、上方向とは、自動車の上方向であり、下方向とは、自動車の下方向である。
【0015】
以下、必要に応じて、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zを、それぞれ、アンテナ装置1、又はアンテナ部10等のアンテナ装置1を構成する部材の前後方向、左右方向及び上下方向として称する。また、必要に応じて、第1方向Xの正方向、第1方向Xの負方向、第2方向Yの正方向、第2方向Yの負方向、第3方向Zの正方向及び第3方向Zの負方向を、それぞれ、アンテナ装置1、又はアンテナ部10等のアンテナ装置1を構成する部材の前方向、後方向、左方向、右方向、上方向及び下方向として称する。
【0016】
まず、
図1を用いて、アンテナ装置1の全体について説明する。
【0017】
アンテナ装置1は、アンテナ部10、地板510、基板520及びパッチアンテナ530を備えている。
【0018】
地板510は、例えば、板金である。基板520は、地板510によって保持されている。基板520は、例えば、プリント回路板(PCB)である。基板520には、TEL(Telephone)アンテナ等のアンテナとして機能する導電パターンが形成されていてもよい。
【0019】
パッチアンテナ530は、Global Navigation Satellite System(GNSS)用のアンテナ、例えば、Global Positioning System(GPS)用のアンテナである。ただし、パッチアンテナ530は、GNSSと異なる用途のアンテナであってもよい。
【0020】
パッチアンテナ530は、基板520の上面側に設けられている。基板520の上方から見て、パッチアンテナ530の形状は、四角形、具体的には略正方形となっている。ただし、パッチアンテナ530の形状は、四角形以外であってもよく、例えば、円形であってもよい。
【0021】
アンテナ部10(後述するコイルエレメント200)は、Electronic Toll Collection(ETC)用のアンテナである。ただし、アンテナ部10は、ETCと異なる用途のアンテナであってもよい。
【0022】
アンテナ部10は、保持部材100、コイルエレメント200及び導体板300を有している。
【0023】
導体板300は、基板520の上面側に設けられている。導体板300は、例えば板金を折り曲げて形成されている。これによって、導体板300のうちの前側部分は、基板520の上面と略平行になっている。これに対して、導体板300のうちの後側部分は、基板520の上面に対して斜めに設けられている。導体板300のうちの前側部分と後側部分が一体となっている。導体板300のうちの後側部分の上面が基板520の上面に対して斜めに設けられており、かつ、導体板300のうちの後側部分の下面が基板520の上面と略平行になっていてもよい。なお、導体板300の前側部分と導体板300の後側部分とは、導体板300の前側部分となる導体板と、導体板300の後側部分となる導体板と、を溶接することで形成されてもよい。また、導体板300全体が基板520の上面に対して斜めに設けられていてもよい。
【0024】
保持部材100は、保持部110、複数の第1リブ120、第1フック130、第2フック140及び第2リブ150を有している。保持部材100は、例えば樹脂からなっている。詳細を後述するように、保持部材100は、コイルエレメント200の軸方向にコイルエレメント200の少なくとも一部分を保持している。また、保持部材100は、コイルエレメント200の外側からコイルエレメント200を保持している。保持部材100によってコイルエレメント200の変形が抑制されている。このため、コイルエレメント200にアンテナ装置1が搭載される自動車の振動等による外力が加わっても、コイルエレメント200は安定したアンテナ性能を得ることができる。
【0025】
コイルエレメント200は、コイルエレメント200の下端部200aを除いて、ヘリカル状(スパイラル状)に延伸したヘリカルエレメントである。コイルエレメント200の下端部200aは、コイルエレメント200と基板520との接続のため、基板520の厚さ方向(上下方向)に略平行になっている。また、コイルエレメント200の上端部は、ヘリカル形状に対して折り曲げられておらず、各種部材、例えば、コイルエレメント200の上端部を支持するための部材に接続されていない。
【0026】
保持部110は、上部110a及び下部110bを含む枠形状を有している。上部110aが設けられている場合、上部110aが設けられていない場合と比較して、保持部110のうち左側部分と右側部分である両側壁は、各種振動、例えばアンテナ装置1が搭載される自動車の振動を受けても各々変形しにくくなる。また、上部110aが設けられている場合、上部110aが設けられていない場合と比較して、各種振動、例えばアンテナ装置1が搭載される自動車の振動を受けても、コイルエレメント200の上方への飛び出しを抑制することができる。コイルエレメント200は、保持部110によって囲まれた領域内に収容されている。
【0027】
複数の第1リブ120は、保持部110の両側壁の内側の各々に設けられている。コイルエレメント200の軸方向に並ぶ2つの第1リブ120の間の空隙によって溝122が画定されている。コイルエレメント200の一部分、すなわち、コイルエレメント200の各巻き部は溝122を通過している。このようにしてコイルエレメント200の一部分が溝122に入り込むことで、コイルエレメント200のピッチ(コイルエレメント200の各巻き部間の間隔)が安定する。これによって、コイルエレメント200のアンテナ性能を安定させることができる。特に、コイルエレメント200の軸方向に並ぶ2つの第1リブ120の間の空隙によって溝122が画定されている場合、当該2つの第1リブ120によってコイルエレメント200のピッチを安定させて、コイルエレメント200のアンテナ性能を安定させることができる。また、本実施形態においては、保持部材100に組み付けられる前のコイルエレメント200のピッチが所望のピッチからずれていたとしても、コイルエレメント200を保持部材100に組み付けることでコイルエレメント200のピッチを補正することができる。コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の間隔は、例えば、コイルエレメント200のピッチに応じて決定されている。また、コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の数は、例えば、コイルエレメント200のターン数、すなわち巻き部の数に応じて決定されている。また、溝122の幅は、例えば、コイルエレメント200の線径に応じて決定されている。具体的には、溝122の幅は、コイルエレメント200の線径以上となっている。
【0028】
例えば
図3に示すように、保持部110の後方から見て、隣り合う第1リブ120の間の溝122の幅(上下方向の幅)は、溝122の底側から溝122の開口側に向かうにつれて、つまり保持部材100の外側から内側に向かうにつれて広くなっている。具体的には、
図3において、保持部材100の左側の溝122の幅は、溝122の底側から溝122の開口側、すなわち、アンテナ部10の左側から右側に向かうにつれて広くなっている。また、保持部材100の右側の溝122の幅は、溝122の底側から溝122の開口側、すなわち、アンテナ部10の右側から左側に向かうにつれて広くなっている。したがって、溝122の幅が溝122の底側から溝122の開口側にかけて一定である場合と比較して、コイルエレメント200の各巻き部を、溝122の開口側から溝122の底側に向けて案内しやすくなっている。なお、溝122の幅は、溝122の底側から溝122の開口側にかけて一定であってもよい。
【0029】
コイルエレメント200の軸方向における溝122の少なくとも一部分における幅は、コイルエレメント200の線径と実質的に等しく、又はコイルエレメント200の線径より僅かだけ大きくなっている。例えば、コイルエレメント200の軸方向における溝122の少なくとも一部分における幅は、コイルエレメント200の線径の100%以上120%以下となっている。したがって、コイルエレメント200の軸方向における溝122の幅がコイルエレメント200の線径に対して比較的大きい場合と比較して、コイルエレメント200のピッチの変動を防止しやすくなっている。
【0030】
保持部110の上部110a及び下部110bの間の間隔は、保持部110に収容されていないときのコイルエレメント200の高さよりも小さくなっている。保持部110の上部110a及び下部110bの間の間隔とは、
図3において、保持部110の上部110aのうちの下面と、保持部110の下部110bのうちの上面と、の間の間隔である。したがって、コイルエレメント200が保持部110の上部110a及び下部110bの間の領域内に収容された場合、保持部110は、保持部110の上部110a及び下部110bによって、コイルエレメント200の軸方向にコイルエレメント200を圧縮可能になっている。この場合、コイルエレメント200が保持部110の上部110a及び下部110bによって圧縮されない場合と比較して、コイルエレメント200の圧縮による反発力が保持部110に伝わり、コイルエレメント200を保持部110に安定的に組み付けることができる。
【0031】
第1フック130は、保持部110の上部110aの下面に設けられている。第1フック130の高さは、保持部材100の後方から前方に向かうにつれて高くなっている。具体的には、第2方向Yに垂直な断面において、第1フック130は三角形形状を有している。第1フック130は、コイルエレメント200の最上段巻き部の前側部分よりも後側に配置されている。したがって、第1フック130は、コイルエレメント200の最上段巻き部の前部が保持部材100の後方に向けて移動することを防いでいる。
【0032】
第2フック140は、保持部110の下部110bに設けられている。第2フック140は、コイルエレメント200の下端部200aよりも後側に配置されている。また、第2フック140には、コイルエレメント200の下端部200aが引っ掛けられている。したがって、第2フック140は、コイルエレメント200の下端部200aが保持部材100の後方に向けて移動することを防いでいる。
【0033】
第2リブ150は、コイルエレメント200の後側部分より前側に配置されている。したがって、第2リブ150は、コイルエレメント200の後側部分が保持部材100の前方に向けて移動することを防いでいる。また、第2リブ150の後側部分には、コイルエレメント200の各巻き部に応じて案内溝152が形成されている。案内溝152には、コイルエレメント200の各巻き部が入り込んでいる。これによって、コイルエレメント200の各巻き部を第2リブ150の所望の位置に案内することができる。
【0034】
本実施形態によれば、保持部材100によってコイルエレメント200の少なくとも一部分、特に、コイルエレメント200の各巻き部をコイルエレメント200の軸方向に保持することができる。このため、例えば特許文献1のようにコイルエレメント200の各巻き部が軸方向に保持されていない場合と比較して、コイルエレメント200の軸方向におけるコイルエレメント200の各部分の移動、特に、コイルエレメント200のピッチの変動を抑制することができる。したがって、特許文献1のようにコイルエレメント200の各巻き部が軸方向に保持されていない場合と比較して、コイルエレメント200の形状の変動を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、コイルエレメント200を樹脂によって封止することなく、保持部材100によってコイルエレメント200を保持することができる。このため、コイルエレメント200を樹脂によって封止する場合と比較して、コイルエレメント200の周囲に位置する樹脂の量を少なくすることができる。したがって、例えば特許文献2のようにコイルエレメント200を樹脂によって封止する場合と比較して、樹脂によるコイルエレメント200の性能の悪化、例えば樹脂による利得のロスを抑制することができる。また、コイルエレメント200を樹脂によって封止する場合と比較して、コイルエレメント200を保持するための樹脂の量が低減され、アンテナ部10のコストの低減とアンテナ部10の軽量化を実現することができる。さらに、樹脂の量を少なくすることができるため、波長短縮の影響が少なくなり、アンテナ部10の小型化が可能になる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の間隔を変更することで、同じ形状のコイルエレメント200を用いても、コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の間隔に応じてコイルエレメント200の各巻き部のピッチを変更することができる。
【0037】
図6~
図9は、コイルエレメント200を保持部材100に組み付ける方法の一例を説明するための図である。
【0038】
まず、
図6及び
図7に示すように、保持部材100の上方からコイルエレメント200を保持部材100の第2リブ150に通す。この時点では、コイルエレメント200の軸方向は、第3方向Zと略平行になっている。
図6に示すように、保持部110の上部110aには、コイルエレメント200が保持部110の上部110aの側方を通過する際にコイルエレメント200が保持部110の上部110aと干渉しないように、切欠き112が設けられている。さらに、必要に応じて、コイルエレメント200を第2リブ150の周りに回転させて、コイルエレメント200の下端部200aが第2フック140の後方に位置するようにする。
【0039】
次いで、
図8に示すように、コイルエレメント200を保持部材100の前方に向けて傾ける。
【0040】
次いで、
図9に示すように、コイルエレメント200を保持部材100の斜め前下方向に押し込む。この場合、コイルエレメント200の各巻き部を
図2及び
図3に示した溝122に入り込ませる。これによって、コイルエレメント200の各巻き部のピッチが、
図2及び
図3に示した複数の第1リブ120の間隔に応じて決定される。また、保持部110の上部110aと下部110bとの間にコイルエレメント200を入り込ませて、コイルエレメント200を保持部材100の上部110aと下部110bとによって圧縮する。また、コイルエレメント200の下端部200aは、第2フック140の前方に位置するようになる。このようにして、コイルエレメント200は、保持部材100に組み付けられる。
【0041】
本実施形態においては、コイルエレメント200を保持部材100に組み付けた後に、アンテナ部10を基板520上に搭載することができる。したがって、アンテナ部10を基板520上に搭載するに際して、コイルエレメント200が不安定な姿勢にならず、コイルエレメント200の姿勢のばらつきを抑えてアンテナ部10を基板520上に搭載することができる。
【0042】
(変形例1)
図10は、変形例1に係るアンテナ装置1の斜視図である。
図11は、
図10に示したアンテナ部10の上面図である。変形例1に係るアンテナ装置1は、以下の点を除いて、実施形態に係るアンテナ装置1と同様である。
【0043】
保持部材100のうちコイルエレメント200の周囲のうちの少なくとも一部分、具体的には、保持部材100のうち、コイルエレメント200の前側部分の前側(保持部材100の外側)と、コイルエレメント200の後側部分の前側(保持部材100の内側)と、には、コイルエレメント200の巻き部に応じて形成された略L字形状の階段部122Aが各々設けられている。コイルエレメント200の一部分、すなわち、コイルエレメント200の各巻き部は、階段部122Aを通過している。これによって、コイルエレメント200のピッチの変動が抑制されている。
【0044】
アンテナ部10の保持部材100は、ストッパ160Aを有している。ストッパ160Aは、コイルエレメント200の上端部に対して設けられている。ストッパ160Aは、コイルエレメント200の上端部が入り込む溝を有している。本実施形態において、コイルエレメント200の上端部は、当該上端部以外の巻き部に対して折り曲げられていて、第2方向Yに沿って略線型に延在している。ストッパ160Aは、コイルエレメント200の上端部が上方に向けて移動することを防いでいる。すなわち、ストッパ160Aは、保持部材100の軸方向にコイルエレメント200の少なくとも一部分を保持している。
【0045】
(変形例2)
図12は、変形例2に係るアンテナ装置1の斜視図である。
図13は、
図12に示したアンテナ部10の上面図である。変形例2に係るアンテナ装置1は、以下の点を除いて、実施形態に係るアンテナ装置1と同様である。
【0046】
アンテナ部10の保持部材100は、複数の、具体的には4つのストッパ160Bを有している。4つのストッパ160Bは、コイルエレメント200の前側部分と、後側部分と、右側部分と、左側部分と、に設けられている。4つのストッパ160Bは、コイルエレメント200が上方に向けて移動することを防いでいる。すなわち、4つのストッパ160Bは、保持部材100の軸方向にコイルエレメント200の少なくとも一部分を保持している。また、コイルエレメント200の右側部分のストッパ160Bと、コイルエレメント200の左側部分のストッパ160Bと、によって、コイルエレメント200の左右方向における移動も抑制されている。
【0047】
(変形例3)
図14は、変形例3に係るアンテナ装置1の斜視図である。変形例3に係るアンテナ装置1は、以下の点を除いて、実施形態に係るアンテナ装置1と同様である。
【0048】
アンテナ部10の保持部材100は、第1保持部品100A及び第2保持部品100Bを有している。第1保持部品100A及び第2保持部品100Bは、互いに分離可能になっている。第1保持部品100Aは、コイルエレメント200の前側に位置している。第2保持部品100Bは、コイルエレメント200の後側に位置している。
【0049】
第1保持部品100Aは、基板520の上方から見てコイルエレメント200の前方に位置していてコイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120を有している。コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の間には、溝122が設けられている。コイルエレメント200の一部分、すなわち、コイルエレメント200の各巻き部は、第1保持部品100Aの溝122を通過している。したがって、実施形態と同様にして、第1保持部品100Aの溝122を用いることで、コイルエレメント200を保持することができる。
【0050】
第2保持部品100Bは、基板520の上方から見てコイルエレメント200の右後側に位置していてコイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120と、基板520の上方から見てコイルエレメント200の左後側に位置していてコイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120と、を有している。コイルエレメント200の軸方向に並ぶ複数の第1リブ120の間には、溝122が設けられている。コイルエレメント200の一部分、すなわち、コイルエレメント200の各巻き部は、第2保持部品100Bの溝122を通過している。したがって、実施形態と同様にして、第2保持部品100Bの溝122を用いることで、コイルエレメント200を保持することができる。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0052】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、
ヘリカルエレメントと、
前記ヘリカルエレメントを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの軸方向に前記ヘリカルエレメントの少なくとも一部分を保持する、アンテナ装置である。
態様1によれば、ヘリカルエレメントが軸方向に保持されていない場合と比較して、ヘリカルエレメントの軸方向におけるヘリカルエレメントの各部分の移動を抑制することができ、ヘリカルエレメントの形状の変動を抑制すことができる。また、ヘリカルエレメントを樹脂によって封止する場合と比較して、ヘリカルエレメントの周囲に位置する樹脂の量を少なくすることができ、樹脂によるヘリカルエレメントのアンテナ性能の悪化を抑制することができる。
(態様2)
態様2は、
前記保持部材には、溝が形成されており、
前記ヘリカルエレメントの一部分が前記溝を通過する、態様1に記載のアンテナ装置である。
態様2によれば、ヘリカルエレメントの一部分が溝に入り込むことで、ヘリカルエレメントの軸方向にヘリカルエレメントを保持することができる。
(態様3)
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの前記軸方向に並ぶ2つのリブを有し、
前記溝は、前記2つのリブの間の空隙によって画定されている、態様2に記載のアンテナ装置である。
態様3によれば、2つのリブによってヘリカルエレメントの軸方向にヘリカルエレメントを保持することができる。
(態様4)
態様4は、
前記溝の少なくとも一部分の幅が、前記ヘリカルエレメントの線径の100%以上120%以下である、態様2又は3に記載のアンテナ装置である。
態様4によれば、ヘリカルエレメントの軸方向における溝の幅がヘリカルエレメントの線径に対して比較的大きい場合と比較して、ヘリカルエレメントのピッチの変動を防止しやすくすることができる。
(態様5)
態様5は、
前記溝の幅が、前記溝の底側から前記溝の開口側に向かうにつれて広がっている、態様2~4のいずれか一に記載のアンテナ装置である。
態様5によれば、溝の幅が溝の底側から溝の開口側にかけて一定である場合と比較して、ヘリカルエレメントの各巻き部を、溝の開口側から溝の底側に向けて案内しやすくすることができる。
(態様6)
態様6は、
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの外側から前記ヘリカルエレメントを保持する、態様1~5のいずれか一に記載のアンテナ装置である。
態様6によれば、ヘリカルエレメントに外力が加わっても、ヘリカルエレメントの安定したアンテナ性能を得ることができる。
(態様7)
態様7は、
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの前記軸方向に前記ヘリカルエレメントを圧縮可能になっている、態様1~6までのいずれか一に記載のアンテナ装置である。
態様7によれば、ヘリカルエレメントが保持部材によって圧縮されない場合と比較して、ヘリカルエレメントを保持部材に安定的に組み付けることができる。
(態様8)
態様8は、
前記保持部材は、前記ヘリカルエレメントの上方に位置する上部を含む、態様1~7のいずれか一に記載のアンテナ装置である。
態様8によれば、保持部材の上部が設けられている場合、保持部材の上部が設けられていない場合と比較して、保持部材のうちヘリカルエレメントの左側部分と右側部分である両側壁は、各種振動を受けても各々変形しにくくなる。
(態様9)
態様9は、
前記保持部材の前記上部には、切欠きが設けられている、請求項8に記載のアンテナ装置である。
態様9によれば、ヘリカルエレメントを保持部材に組み付ける場合において、ヘリカルエレメントが保持部材の上部の側方を通過する際にヘリカルエレメントが保持部材の上部と干渉しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 アンテナ装置
10 アンテナ部
100 保持部材
100A 第1保持部品
100B 第2保持部品
110 保持部
110a 上部
110b 下部
112 切欠き
120 第1リブ
122 溝
122A 階段部
130 第1フック
140 第2フック
150 第2リブ
152 案内溝
160A ストッパ
160B ストッパ
200 コイルエレメント
200a 下端部
300 導体板
510 地板
520 基板
530 パッチアンテナ
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向