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特許7517862調理済み凍結食品の製造方法、および調理済み凍結食品
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  • 特許-調理済み凍結食品の製造方法、および調理済み凍結食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】調理済み凍結食品の製造方法、および調理済み凍結食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20240709BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
A23L5/10 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020082843
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176291
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-05-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実1] テスト販売日: 令和2年2月8日 テスト販売した場所: 北海道全域
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実2] テスト販売日: 令和2年3月7日 テスト販売した場所: 北海道全域
(73)【特許権者】
【識別番号】000222783
【氏名又は名称】東洋水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 文宏
(72)【発明者】
【氏名】角野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】地曳 健
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102429238(CN,A)
【文献】特開2008-271883(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102370176(CN,A)
【文献】登録実用新案第3217589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36 - 3/54
A23L 5/00 - 5/30
A23L 29/00 - 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の食材を含む、封止された容器入りの調理済み凍結食品の製造方法であって、
結晶性プラスチックにより構成された、150℃超250℃以下の温度条件での耐熱性および-40℃以上-25℃以下の温度条件での冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、2種以上の食材を充填する充填工程と、
前記容器に充填された前記2種以上の食材を含む内容物を、前記容器の前記収容領域内において、過熱水蒸気を用いて150℃超250℃以下の温度条件により加熱処理する加熱工程と、
加熱処理された前記内容物が前記収容領域内に含まれる前記容器の封止および前記内容物の凍結をする封止および凍結工程と、を備え
前記加熱工程における前記加熱処理が、150℃超250℃以下の温度範囲内において温度勾配をつけた温度条件の加熱装置内を一定の速度で通過させる加熱処理である、
調理済み凍結食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程における前記加熱処理が、150℃超250℃以下の温度範囲内において入口領域および/または出口領域がこれら以外の他の領域よりも低い温度条件の加熱装置内を一定の速度で通過させる加熱処理である、請求項1に記載の調理済み凍結食品の製造方法。
【請求項3】
前記2種以上の食材が、魚介類、野菜類、肉類、および穀類からなる群から選ばれる1以上を含む、請求項1または2に記載の調理済み凍結食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により製造された、過熱水蒸気を用いて加熱処理されて凍結された2種以上の食材を含む内容物、結晶性プラスチックにより構成された、150℃超250℃以下の温度条件での耐熱性および-40℃以上-25℃以下の温度条件での冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に含まれる、封止された容器入りの調理済み凍結食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済み凍結食品の製造方法、および調理済み凍結食品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジなどにより解凍するだけで喫食可能となる容器入りの調理済み凍結食品は、レトルト食品などの他の調理済み加工食品と比較して調理食品本来の風味等が維持され易く、且つ長期保存が可能であるため、消費者ニーズも非常に高く、多種多様な商品が販売されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、果菜類を70~100℃、1~5分間で過熱蒸気殺菌などの加熱殺菌を施した後、別途、加熱殺菌・冷却された原料と混合することにより製造した、果菜類を原料として用いる調理済み冷凍食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-295817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、2種以上の食材を使用した容器入りの調理済み凍結食品を製造する場合、通常、冷凍耐性を備える容器は加熱処理などに耐え得るような高い耐熱性を有さないため、容器への充填前に個々の食材を別々に加熱調理し、この加熱調理された個々の食材をそれぞれ規定された量や個数となるように容器に充填して凍結を行う必要がある。しかしながら、このようにして製造された容器入りの調理済み凍結食品は、複数種の食材をまとめて加熱調理したときに生じる風味全体の複雑なまとまり(風味の一体感)が得られにくいという課題がある。また、その外観においても、個々の食材の加熱調理度合いの違いや、容器への充填時などにおける崩れ等の発生などにより、全体としての調理感や見栄えが劣るものとなり易い。さらに、その製造(工業的生産)における歩留まりの低下や作業時間の増加がし易い傾向にある。特に、魚介類と、野菜類および/または穀類とを含む調理済み凍結食品の場合には、これらの課題はより大きくなる傾向にある。
【0006】
なお、容器への充填前に複数種の食材を1つの調理器具でまとめて加熱調理し、この加熱調理された食材の混合物を容器に小分け充填して凍結を行う製造方法も考えられるが、この場合、この加熱調理された混合物に含まれる個々の食材が全て規定された量や個数となるように小分け充填することはかなり困難である。また、この製造方法でも、容器への充填時などにおける崩れ等の発生により見栄えなどが劣るものとなり易く、また歩留まりの低下や作業時間の増加もし易い傾向にある。さらに、容器への充填前に1容器分だけの食材等をまとめて加熱調理してから充填、凍結する製造方法も考えられるが、この方法は大量生産には適さない場合が多く、且つ、これも見栄えや歩留まり、作業時間などについて上記と同様の傾向がある。
【0007】
そこで本発明は、風味の一体感が向上し、且つ調理感および見栄えのある外観を有する、2種以上の食材を含む調理済み凍結食品、ならびに、工業的生産における歩留まりおよび作業効率が優れたその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、2種以上の食材を充填する充填工程と、この容器に充填された2種以上の食材を含む内容物を、容器の収容領域内において150℃超250℃以下の温度条件により加熱処理する加熱工程と、容器を封止し、且つ内容物を凍結する封止および凍結工程と、を備える製造方法により、風味の一体感が向上し、且つ調理感および見栄えのある外観を有する調理済み凍結食品を製造できることを見出し、また、この製造方法は工業的生産における歩留まりおよび作業効率が優れていることも見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(6)である。
(1)2種以上の食材を含む調理済み凍結食品の製造方法であって、耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、2種以上の食材を充填する充填工程と、前記容器に充填された前記2種以上の食材を含む内容物を、前記容器の前記収容領域内において150℃超250℃以下の温度条件により加熱処理する加熱工程と、前記容器を封止し、且つ前記内容物を凍結する封止および凍結工程と、を備える、調理済み凍結食品の製造方法。
(2)前記加熱工程における前記加熱処理が、過熱水蒸気を用いた加熱処理である、(1)に記載の調理済み凍結食品の製造方法。
(3)前記2種以上の食材が、魚介類、野菜類、肉類、および穀類からなる群から選ばれる1以上を含む、(1)または(2)に記載の調理済み凍結食品の製造方法。
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法により製造された、加熱処理された2種以上の食材が耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に含まれる、調理済み凍結食品。
(5)耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、加熱処理された2種以上の食材を含む内容物を有し、前記容器の前記収容領域内における加熱処理によって前記内容物に付与された調理跡が維持されている、調理済み凍結食品。
(6)前記2種以上の食材が、魚介類、野菜類、肉類、および穀類からなる群から選ばれる1以上を含む、(5)に記載の調理済み凍結食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、風味の一体感が向上し、且つ調理感および見栄えのある外観を有する、2種以上の食材を含む調理済み凍結食品、ならびに、工業的生産における歩留まりおよび作業効率が優れたその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法の一例を、工程図として示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について説明する。
本発明は、耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、2種以上の食材を充填する充填工程と、この容器に充填された2種以上の食材を含む内容物を、容器の収容領域内において150℃超250℃以下の温度条件により加熱処理する加熱工程と、容器を封止し、且つ内容物を凍結する封止および凍結工程と、を備える調理済み凍結食品の製造方法である。また、耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に、加熱処理された2種以上の食材を含む内容物を有し、この容器の収容領域内における加熱処理によって内容物に付与された調理跡が維持されている調理済み凍結食品である。以下においては、これらを「本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法」、「本発明の調理済み凍結食品」という場合もある。
【0013】
ここで、本発明における「調理済み凍結食品」とは、内容物の少なくとも一部が凍結前に加熱調理され、解凍するだけで喫食可能となる凍結状態の食品(例えば-18℃以下で保管等がされる冷凍食品など)を意味する。なお、この凍結食品の販売時(例えば陳列時など)における保管温度帯は0℃未満に限定されない。また、本発明における「調理跡」とは、この凍結前の加熱調理によって内容物に付与された跡であり、焦げ目、焼き目、これら以外の加熱調理に伴う変色、他の食材または調味成分からの加熱調理に伴う着色(色移り)、デンプンの糊化やタンパク質の分解または凝集による跡から選ばれる1以上が例示される。
【0014】
まず、本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法では種類が異なる2種以上の食材を用いる。ここで、この食材には、加熱処理後において固形分が残らないもの(例えば調味成分、添加成分、水など)は含まれない。また、種類が異なる食材とは、品目(食品名、特に日本食品標準成分表2015年版(七訂)の第2章における各分類中に示される食品名)としての種類が異なる食材であることを意味する。なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の第2章における分類が異なる食材を2種以上用いるのが好ましい。特に、少なくとも、魚介類、野菜類(いも類、豆類、種実類も含む)、肉類、穀類、きのこ類、藻類、果実類、および卵類からなる群から選ばれる1以上、好ましくはこの群から選ばれる2種以上を食材として使用すると、本発明の効果が発揮され易く、さらに、魚介類、野菜類、肉類、および穀類からなる群から選ばれる1以上、より好ましくはこの群から選ばれる2種以上を食材として使用すると、本発明の効果がより発揮され易い。さらには、魚介類と、野菜類および/または穀類と、を食材として使用すると、本発明の効果が特に発揮され易いため非常に好適である。
なお、本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法では、1種の食材のみを用いる実施形態は包含されない。また、複数種の食材を用いた1種の加工品のみを用いる実施形態も包含されない。
【0015】
例えば、使用可能な魚介類としては、鮭、赤魚、鱈、カレイ、アジ、サバ、サンマ、イワシ等の魚類、イカ・タコ類、エビ・カニ類、ホタテ、アサリ、ハマグリ等の貝類が例示され、これらから選ばれる1以上が含まれる加工品(例えば魚肉練り製品など)を使用しても良い。なお、魚卵(卵巣を含む場合もある)、および魚精巣については、その魚の魚肉部分とは品目としての種類が異なる食材として使用することができる。
【0016】
また、使用可能な野菜類としては、キャベツ、アスパラガス、ブロッコリー、ニラ、ネギ、ピーマン、パプリカ、コーン、玉ネギ、大根、人参、レンコン、トマト、ナス、パセリ、香辛野菜(ショウガ、ニンニク、唐辛子など)等が例示される。また、本発明においては、いも類(ジャガイモ、サトイモなど)、豆類(大豆、インゲン、エンドウなど)、および種実類(ゴマ、クルミ、カシューナッツなど)についても野菜類の1つとして使用できる。そして、同様に、これらから選ばれる1以上が含まれる加工品(例えば大豆加工品など)を使用しても良い。なお、葉茎部、根部、および種子部(実部)から選ばれる2以上が食材となる野菜ついては、これらの部位は互いに品目としての種類が異なる食材として使用することができる。
【0017】
さらに、使用可能な穀類としては、粳米や糯米などの精白米や玄米、加工米(洗米、浸漬、蒸らしなどの少なくとも一部の工程が省略できるように加工された米)等の米が例示される。なお、米の品種については限定されない。また、発芽玄米を使用することもできる。さらには、ヒエ、アワ、キビ等の雑穀や、小麦、大麦、ライ麦、蕎麦などを使用することもできる。また、これも同様に、これらから選ばれる1以上が含まれる加工品(例えば米粉麺や、パスタ等の小麦加工品など)を使用しても良い。
そして、使用可能な肉類としては、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、鴨肉等が例示され、これらから選ばれる1以上が含まれる加工品なども例示される。
【0018】
さらに、本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法では、上記した魚介類、野菜類、肉類、および穀類以外の食材を使用しても良い。例えば、前述したきのこ類(シイタケ、マイタケ、シメジ、エリンギなど)、藻類(ワカメ、コンブなど)、果実類、卵類などが例示され、上記と同様にこれらから選ばれる1以上が含まれる加工品を使用しても良い。また、これも必要に応じて、食材以外の原料として調味成分(醤油、みそ、油脂類、塩類、糖類、アミノ酸類など)を用いても良い。なお、使用する調味成分には、上記した食材(例えば刻んだ野菜類や卵加工品など)が混合されていても良く、その場合、この使用する調味成分中に混合された食材は、本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法に用いる食材に含まれる。また、これらに加えて、さらに任意の添加成分(天然色素、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、香料など)を用いても良い。
【0019】
そして、上記した食材は、容器への充填前に、必要に応じて前処理を行っても良い。この前処理としては、食材を所定のサイズにカットする処理、魚介類等の骨や殻を除去する処理、野菜類等のブランチング処理、穀類等の浸漬処理や予備的な蒸煮処理、食材の調味液等への漬け込み処理、臭い取りやあく抜きのための食材の予備的な加熱処理などが例示される。
【0020】
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法では、まず、少なくとも2種以上の食材と、必要に応じて調味成分などとを、耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に(容器の一部などにより区域が分離されていない領域に)充填する充填工程を行う。各食材や調味成分などの計量および充填は、公知の方法(計量機等による機械充填、手作業による充填など)により行えば良い。また、充填する食材は、前述したように前処理がされたものや調味成分中に混合されたものであっても良い。
【0021】
食材等を充填する容器は、少なくとも、後述する加熱処理の温度条件に耐え得る耐熱性、および後述する封止および凍結工程の凍結温度条件に耐え得る冷凍耐性を有するものであれば特段限定されず、例えば、プラスチック、金属、ガラス、紙などにより構成された容器を使用できるが、コストや、軽量化、密閉のし易さなどの観点から、ヒートシール等による密封が可能なプラスチックにより構成された容器であるのが好ましい。特に、結晶性プラスチックにより構成された容器であるのがより好ましく、結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)により構成された容器であるのがさらに好ましい。また、その形状も特段限定されないが、後述する加熱工程において効率良く加熱処理することが可能な形状(例えばトレー形状、丼形状など)であるのが好ましい。
【0022】
次に、この容器内に充填された2種以上の食材を含む内容物を、容器の封止を行う前に、この容器の収容領域内において、150℃超250℃以下の温度条件(雰囲気温度条件)により加熱処理する加熱工程を行う。つまり、加熱調理としての加熱処理において、この容器を、鍋やフライパンなどと同じように加熱調理用の調理器具として用いる。なお、この温度条件は、風味の一体感が向上し易く、且つ内容物(特に食材)に好ましい調理跡を付与し易いという点から、その下限は160℃以上であるのがさらに好ましく、170℃以上であるのがさらに好ましく、180℃以上であるのがさらに好ましく、190℃以上であるのがさらに好ましく、200℃以上であるのがさらに好ましい。そして、その上限は240℃以下であってもよく、230℃以下であってもよく、220℃以下であってもよい。また、上記した温度範囲内において、温度勾配をつけた加熱処理(例えば、入口領域および/または出口領域が他の領域よりも低い温度条件である加熱装置内を一定の速度で通過させる加熱処理など)を行ってもよい。
【0023】
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法においては、容器の同じ収容領域内において所定の温度条件により加熱処理を行うことによって、食材等を加熱調理したときに生じる風味が複雑にまとまって内容物の風味の一体感が向上し、且つ、その表面などに好ましい調理跡(例えば連続的あるいは部位特異的な焦げ目や焼き目など)を付与できることが特徴である。そして、この風味の一体感の向上や好ましい調理跡の付与は、加熱調理の方法として150℃超250℃以下の温度条件での加熱処理(例えば焼成処理など)を行うことが重要であって、例えばボイル処理などではこのような効果を得ることは難しい。
ここで、本発明において「風味の一体感」とは、2種以上の食材等をまとめて加熱調理したときに生じる風味全体の複雑なまとまりを意味する。
【0024】
そして、この加熱処理は、内容物が充填された容器を金属製のトレーや紙製のシート(クッキングシート等)、コンベアベルトなどに載せて保持あるいは搬送しながら、過熱水蒸気、ヒーター(シーズヒーター等)、熱風などを用いて、内容物が接触(直接接触、あるいは容器を介して間接的に接触)している雰囲気の温度を上記温度条件とすることにより行うことができるが、風味の一体感がより向上し易いことから、過熱水蒸気を用いた加熱処理を行うのが好ましい。さらには、この過熱水蒸気とヒーター(シーズヒーター等)とを併用した加熱処理を行っても良い。そして、過熱水蒸気等については、前述した温度勾配をつけて用いてもよい。
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法においては、容器内での所定の温度条件による加熱処理に過熱水蒸気を用いることにより、この加熱処理時に内容物が過熱水蒸気に包み込まれることによって食材の風味が他の食材により加わりやすくなり、つまり上記した風味の一体感をより向上させることができ、且つこの加熱処理時における食材の酸化を抑制でき、食材の旨味等をより引き出すことができる。
【0025】
さらに、上記した過熱水蒸気を用いた加熱処理を行う場合において、少なくとも、内容物が露出している容器の天面側から過熱水蒸気を供給して加熱処理を行うのが好ましいが、この容器の天面側に加えて、内容物が露出していない容器の底面側からも(つまり容器の天面側および底面側の両方から)過熱水蒸気を供給して加熱処理するとさらに好適である。容器内の内容物をより均一に加熱処理することができ、またより短時間での加熱処理も可能となり、さらに、容器の底面側の内容物にも良好な調理跡を付与し易いからである。
ここで、本発明において「容器の天面側」とは、収容領域内への内容物の充填に用いる容器の開口面を含む平面において加熱処理を行う空間を2分した時の容器の開口側であり、また「容器の底面側」とは、この容器の天面側と対向する側であり、容器からそのまま内容物を喫食する場合に容器の底となる容器の閉鎖面側である。
【0026】
なお、この加熱処理の時間は、容器内の内容物の量(内容量)、使用する各食材の種類、大きさ、厚みや、加熱処理を行う装置(装置の庫内)の大きさなどにより適宜設定すれば良く、特段限定はされないが、1~20分間程度が例示され、3~15分間が好ましく、5~10分間がより好ましい。
【0027】
次に、この加熱工程の後、容器を封止し、且つ容器内の内容物を凍結する封止および凍結工程を行う。
なお、この容器の封止の前に、加熱処理された容器内の内容物の粗熱を取るために、冷却を行っても良い。この冷却の方法としては、例えば、0~10℃の雰囲気温度において0.5~2時間程度保管する方法などが示され、容器内の内容物の温度を0~20℃程度とするのが好適である。また、この容器の封止の前に(例えば上記した粗熱取りの冷却の後に)、未加熱の食材や調味成分などをさらに充填しても良い。
【0028】
そして、容器の封止は、例えば、この容器の開口部と嵌合可能な冷凍耐性を備える嵌合蓋を被せて嵌合させたり、この容器の開口部に、ポリエチレン製のシート材フィルム等を蓋材として用いて、ヒートシールなどにより気密性を有する密封を行ったりすれば良いが、封止を保ち易いという観点から気密性を有する密封を行うのがより好適である。なお、容器および蓋材に酸素バリア性を備えるものを使用し、且つ、この容器の封止時に、窒素ガス、炭酸ガスなどの食品用不活性ガスを容器内に充填してガス置換を行ってから封止を行うと、その後の内容物の酸化をより抑制し易いためさらに好適である。
【0029】
このようにして封止された容器について、急速凍結庫などを使用して、例えば-25℃以下(-40~-25℃など)の雰囲気温度において10~30時間程度保管し、容器内の内容物を凍結させる。そして、容器内の内容物の温度を-18℃以下とするのが好適である。なお、この容器内の内容物の凍結は、前述した容器の封止前に行っても良い。つまり、容器の封止前に内容物の凍結を行い、その後に前述した容器の封止を行っても良い。そして、この封止および凍結工程の後は、必要に応じて外包装や箱詰めなどをして、製品とする。なお、容器の封止を凍結前に行う場合には、この外包装および箱詰めの少なくとも一方についても凍結前に行っても良い。
【0030】
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法においては、前述した加熱工程において容器の収容領域内で内容物を加熱処理した後、封止および凍結工程においてこの内容物を凍結させるまで、容器内の加熱処理された内容物を出し入れすることなくそのまま収容領域内に保持していることが大きな特徴である。これにより、加熱処理により内容物に付与された風味や調理跡などを維持したまま凍結させ易く、また、凍結前における食材の崩れ等も発生しにくく、解凍時に調理感および見栄えのある外観を有する調理済み凍結食品とすることができる。また、これによって製造歩留まりの向上や作業時間の低減も可能となり、さらには、内容量が少ない(例えば内容量が200g以下、さらには160g以下、さらには150g以下、さらには130g以下、さらには100g以下の)調理済み凍結食品であっても容易に製造することができる。
【0031】
なお、本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法については、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、上記以外の任意の工程を含んでも良い。
本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法の一例として、充填工程において前処理を行った2種以上の食材の容器充填を行い、次に加熱工程において内容物の容器内加熱処理を行い、さらに、冷却(粗熱取り)した後に、容器密封をしてから急速凍結する封止および凍結工程を行って、調理済み凍結食品を得る製造例を図1に示した。
【0032】
次に、本発明の調理済み凍結食品について詳細に説明する。
本発明の調理済み凍結食品は、耐熱性および冷凍耐性を備える容器の同じ収容領域内に、加熱処理された2種以上の食材を含む内容物を有し、この容器の収容領域内における加熱処理によって内容物に付与された調理跡(焦げ目、焼き目、着色など)が維持されているという特徴を有する。この「調理跡が維持されている」とは、凍結された状態において、加熱処理により内容物に付与された焦げ目や焼き目、着色などの調理跡の連続的あるいは部位特異的な位置関係(2種以上の食材間等において一連となった調理跡など)が概ね保たれている状態である。また、この本発明の調理済み凍結食品は、風味の一体感が向上していることも特徴である。
【0033】
そして、本発明の調理済み凍結食品は、前述した充填工程、加熱工程、ならびに封止および凍結工程を備える本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法により製造することができる。
なお、このような本発明に係る調理済み凍結食品の製造方法により製造された、加熱処理された2種以上の食材を含む内容物が耐熱性および冷凍耐性を有する容器の同じ収容領域内に含まれる本発明の調理済み凍結食品は、プロセスによって特定された物の発明であるとも言える。しかし、この本発明の調理済み凍結食品と、容器の外部において食材が別々に加熱調理された後に一体充填された凍結食品などの他の調理済み凍結食品とには風味等に相違点があるが、その具体的な成分等の違いはいまだ明確に特定できておらず、また、この成分等の特定は著しく過大な経済的支出や時間を要するものであると考えられるため、この相違点をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情が存在すると認められる。
【0034】
また、本発明の調理済み凍結食品は、加熱処理された魚介類、加熱処理された野菜類、加熱処理された肉類、および加熱処理された穀類からなる群から選ばれる1以上、より好ましくは2以上を含むものであるのが、本発明の効果がより得られ易いため好適である。特に、加熱処理された魚介類と、加熱処理された野菜類および/または穀類と、を含むものが非常に好ましい。さらに、本発明の調理済み凍結食品には、加熱処理されたきのこ類、加熱処理された藻類、加熱処理された果実類、加熱処理された卵類などが含まれていても良い。
【0035】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例
【0036】
(実施例1)
鮭の切り身、ホタテ、イカ、ならびにカットされたジャガイモを用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(オリーブオイル、フライドガーリック、輪切り唐辛子、食塩、アミノ酸、pH調整剤、酸化防止剤、香料など)を含む液を充填した。なお、充填された内容物の重量は合計で70~130gの範囲内となるようにした。
【0037】
そして、この食材等が充填された容器を金属製のトレーに置き、この容器の天面側および底面側の両方に庫内シーズヒーターが設置され且つこの両方の側から過熱水蒸気が庫内に供給される加熱装置中を一定の速度で通過させて5分間の容器内加熱処理を行った。なお、加熱処理時の庫内シーズヒーターの設定温度は両側とも200℃とし、過熱水蒸気の設定温度は入口付近の領域が両側とも220℃、中央付近の領域が両側とも230℃、出口付近が両側とも200℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は200~220℃)。
【0038】
次いで、この加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリーを充填した。そして、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、本発明の調理済み凍結食品(実施例1)を得た。
【0039】
(実施例2)
加熱処理における庫内シーズヒーターの設定温度が両側とも190℃、供給する過熱水蒸気の設定温度が入口付近の領域で両側とも210℃、中央付近の領域も両側とも210℃、出口付近も両側とも210℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は180~200℃)以外は、実施例1と同じ方法により、本発明の調理済み凍結食品(実施例2)を得た。
【0040】
(比較例1)
鮭の切り身、ホタテ、イカ、ならびにカットされたジャガイモを用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器にそれぞれ別々に充填し、さらに、ここに調味成分等(オリーブオイル、食塩、アミノ酸、pH調整剤、酸化防止剤、香料など)を含む液をそれぞれ適量充填した。そして、この食材等が充填された各容器を金属製のトレーに置き、この容器の天面側(開口面側)および底面側の両方に庫内シーズヒーターが設置され且つこの両方の側から過熱水蒸気が庫内に供給される加熱装置中を一定の速度で通過させてそれぞれ5分間の容器内加熱処理を行った。なお、いずれも、加熱処理時の庫内シーズヒーターの設定温度は両側とも200℃とし、過熱水蒸気の設定温度は入口付近の領域が両側とも220℃、中央付近の領域が両側とも230℃、出口付近が両側とも200℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は200~220℃)。
【0041】
次いで、いずれも、加熱処理後に雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリー、フライドガーリック、および輪切り唐辛子も含めて、上記食材を全て1つの容器内にまとめて所定量盛付け、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例1の調理済み凍結食品を得た。
【0042】
(比較例2)
鮭の切り身、ホタテ、イカ、ならびにカットされたジャガイモを用意し、これらを所定量フライパンにまとめて投入し、さらに、ここに調味成分等(オリーブオイル、フライドガーリック、輪切り唐辛子、食塩、アミノ酸、pH調整剤、酸化防止剤、香料など)を含む液を所定量投入した。そして、このフライパン内において、IHテーブル(フジマック社製、FIC90758T)により5分間の加熱処理(設定は、沸騰まではIHダイヤル40、沸騰後はIHダイヤル20)を行った。
【0043】
次いで、加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリーを含めて、上記食材を全て1つの容器内に所定量盛付け、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例2の調理済み凍結食品を得た。
【0044】
(比較例3)
鮭の切り身、ホタテ、イカ、カットされたジャガイモ、ならびにカットされたブロッコリーを用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(オリーブオイル、フライドガーリック、輪切り唐辛子、食塩、アミノ酸、pH調整剤、酸化防止剤、香料など)を含む液を充填し、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。なお、充填は、ブロッコリーを除く内容物の重量が合計で70~130gの範囲内となるようにした。さらに、そのまま-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例3の凍結食品を得た。
【0045】
(比較例4)
加熱処理における庫内シーズヒーターの設定温度が両側とも140℃、供給する過熱水蒸気の設定温度が入口付近の領域で両側とも170℃、中央付近の領域も両側とも170℃、出口付近も両側とも170℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は130~150℃)以外は、実施例1と同じ方法により、比較例4の調理済み凍結食品を得た。
【0046】
なお、実施例1~2および比較例1~4の加熱処理前の食材および調味成分の合計重量(g)、および凍結直前の内容量(g、いずれもブロッコリーを除く重量)を下記表1に示した。また、実施例1~2および比較例1~4の製造時における歩留まり(上記した凍結直前の内容量の、上記した加熱処理前の食材および調味成分の合計重量に占める割合)、加熱設定温度、および加熱処理から封止および凍結工程前までの作業時間についても下記表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
そして、上記した実施例1~2および比較例1~4について、これらを電子レンジ(実施例1、2、および比較例1、2、4は600W2分10秒間の条件、比較例3は600W3分間の条件)により加熱解凍してから官能評価を行った。
官能評価は、味(風味の一体感)、食感および外観(調理感、見栄え)の3つの項目について、いずれも以下に示す評価基準を用い、パネリスト間において共通の評価基準となるように統一した。つまり、実施例1を基準サンプル(評価はいずれの項目も4.0)として、以下の評価基準に基づいて、訓練され官能的識別能力を備えた10名のパネリストが相対評価により各サンプルを比較官能評価し、この平均値を算出した。この結果を下記表2に示す。
【0049】
<評価基準>
5:非常に良い(実施例1より良い)
4:かなり良い(実施例1と同等)
3:良い(実施例1よりやや劣るが製品の品質としては良い)
2:やや悪い(実施例1より劣る)
1:悪い(実施例1よりもかなり劣る)
【0050】
【表2】
【0051】
この結果から、本発明の調理済み凍結食品である実施例1および2は、所定の温度範囲内での容器内加熱処理により、比較例1~4と異なり、複数種の食材等の風味の一体感および食感がいずれも優れ、焼き目などの調理跡も維持されて調理感や見栄えも優れたものであることが示された。
また、この実施例1および2は、比較例1、2、4よりも製造歩留まりが高く、作業時間も短いこと、つまり歩留まりおよび作業効率が向上していることも示された。一方で、比較例2は、各食材を等量ずつ小分けすることが困難であり、重量ロスも非常に多かった。
【0052】
(実施例3)
赤魚の切り身および刻みショウガを用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(醤油、pH調整剤、カラメル色素、増粘剤など)を含む液を充填した。なお、充填された内容物の重量は合計で100~120gの範囲内となるようにした。
【0053】
そして、この食材等が充填された容器を金属製のトレーに置き、この容器の天面側(開口面側)および底面側の両方に庫内シーズヒーターが設置され且つこの両方の側から過熱水蒸気が庫内に供給される加熱装置中を一定の速度で通過させて8分間の容器内加熱処理を行った。なお、加熱処理時の庫内シーズヒーターの設定温度は両側とも200℃とし、過熱水蒸気の設定温度は入口付近の領域が両側とも220℃、中央付近の領域が両側とも230℃、出口付近が両側とも200℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は200~220℃)。
【0054】
次いで、加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、本発明の調理済み凍結食品(実施例3)を得た。
【0055】
(比較例5)
赤魚の切り身および刻みショウガを用意し、これらを所定量鍋にまとめて投入し、さらに、ここに調味成分等(醤油、pH調整剤、カラメル色素、増粘剤など)を含む液を所定量投入した。そして、この鍋内において、IHテーブル(フジマック社製、FIC90758T)により8分間の加熱処理(設定は、沸騰まではIHダイヤル40、沸騰後はIHダイヤル20)を行った。
【0056】
次いで、加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、1つの容器内に所定量盛付け、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例5の調理済み凍結食品を得た。
【0057】
(比較例6)
赤魚の切り身および刻みショウガを用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(醤油、pH調整剤、カラメル色素、増粘剤など)を含む液を充填し、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。なお、充填は、内容物の重量が合計で100~120gの範囲内となるようにした。さらに、そのまま-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例6の凍結食品を得た。
【0058】
なお、実施例3および比較例5~6の加熱処理前の食材および調味成分の合計重量(g)、および凍結直前の内容量(g)を下記表3に示した。また、実施例3および比較例5~6の製造時における歩留まり(上記した凍結直前の内容量の、上記した加熱処理前の食材および調味成分の合計重量に占める割合)、加熱設定温度、および加熱処理から封止および凍結工程前までの作業時間についても下記表3に示した。
【0059】
【表3】
【0060】
そして、上記した実施例3および比較例5~6について、これらを電子レンジ(実施例3および比較例5は600W2分40秒間の条件、比較例6は600W5分間の条件)により加熱解凍してから、前述と同じ評価方法および評価基準により官能評価を行った。なお、基準サンプルは実施例3(評価はいずれの項目も4.0)とした。この結果を下記表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
この結果から、本発明の調理済み凍結食品である実施例3は、比較例5、6と異なり、赤魚とショウガ等との風味の一体感および食感がいずれも優れ、調理跡も維持されて調理感や見栄えも優れたものであることが示された。なお、比較例5、6は、調味成分等の赤魚への浸透が少なく、風味の一体感に劣るものであった。
また、この実施例3は、比較例5よりも製造歩留まりが高く、作業時間も短いこと、つまり歩留まりおよび作業効率が向上していることも示された。一方で、比較例5は、各食材を等量ずつ小分けすることが困難であり、重量ロスも非常に多かった。
【0063】
(実施例4)
カットされたイカ(冷凍品)、むきあさり(冷凍品)、ムキエビ(冷凍品)、ならびに早炊き加工米(キユーピー社製)を用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(食塩、アミノ酸、クチナシ色素など)を含む液を充填した。なお、充填された内容物の重量は合計で100~130gの範囲内となるようにした。
【0064】
そして、この食材等が充填された容器を金属製のトレーに置き、この容器の天面側(開口面側)および底面側の両方に庫内シーズヒーターが設置され且つこの両方の側から過熱水蒸気が庫内に供給される加熱装置中を一定の速度で通過させて8分間の容器内加熱処理を行った。なお、加熱処理時の庫内シーズヒーターの設定温度は両側とも200℃とし、過熱水蒸気の設定温度は入口付近の領域が両側とも220℃、中央付近の領域が両側とも230℃、出口付近が両側とも200℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は200~220℃)。
【0065】
次いで、加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリーおよびパセリ末を充填し、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、本発明の調理済み凍結食品(実施例4)を得た。
【0066】
(比較例7)
カットされたイカ(冷凍品)、むきあさり(冷凍品)、ムキエビ(冷凍品)、ならびに早炊き加工米(キユーピー社製)を用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器にそれぞれ別々に充填し、さらに、加工米を充填した容器の同じ収容領域内には調味成分等(食塩、アミノ酸、クチナシ色素など)を含む液を適量充填した。そして、この食材等が充填された各容器を金属製のトレーに置き、この容器の天面側(開口面側)および底面側の両方に庫内シーズヒーターが設置され且つこの両方の側から過熱水蒸気が庫内に供給される加熱装置中を一定の速度で通過させてそれぞれ8分間の容器内加熱処理を行った。なお、いずれも、加熱処理時の庫内シーズヒーターの設定温度は両側とも200℃とし、過熱水蒸気の設定温度は入口付近の領域が両側とも220℃、中央付近の領域が両側とも230℃、出口付近が両側とも200℃とした(加熱装置の庫内雰囲気温度は200~220℃)。
【0067】
次いで、いずれも、加熱処理後に雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリーおよびパセリ末を含めて、上記食材を全て1つの容器内にまとめて所定量盛付け、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例7の調理済み凍結食品を得た。
【0068】
(比較例8)
カットされたイカ(冷凍品)、むきあさり(冷凍品)、ムキエビ(冷凍品)、ならびに早炊き加工米(キユーピー社製)を用意し、これらをフライパンにまとめて所定量投入し、さらに、ここに調味成分等(食塩、アミノ酸、クチナシ色素など)を含む液を所定量投入した。そして、このフライパン内において、IHテーブル(フジマック社製、FIC90758T)により8分間の加熱処理(設定は、沸騰まではIHダイヤル40、沸騰後はIHダイヤル20)を行った。
【0069】
次いで、加熱処理後に、雰囲気温度5℃において粗熱取りのための冷却を1時間行い、その後、カットされたブロッコリーおよびパセリ末を含めて、上記食材を全て1つの容器内に所定量盛付け、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。さらに、-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例8の調理済み凍結食品を得た。
【0070】
(比較例9)
カットされたイカ(冷凍品)、むきあさり(冷凍品)、ムキエビ(冷凍品)、カットされたブロッコリー、パセリ末、ならびに早炊き加工米(キユーピー社製)を用意し、これらを冷凍耐性および耐熱性を有する結晶性ポリエチレンテレフタレート(C-PET)製の容器の同じ収容領域内に充填し、さらに、ここに調味成分等(食塩、アミノ酸、クチナシ色素など)を含む液を充填し、ポリエチレン製のシート材により容器の密封(ヒートシール)を行った。なお、充填は、ブロッコリーおよびパセリ末を除く内容物の重量が合計で100~130gの範囲内となるようにした。さらに、そのまま-25℃以下での急速凍結処理を行って内容物の品温を-18℃以下とし、比較例9の凍結食品を得た。
【0071】
なお、実施例4および比較例7~9の加熱処理前の食材および調味成分の合計重量(g)、および凍結直前の内容量(g、いずれもブロッコリーおよびパセリ末を除く重量)を下記表5に示した。また、実施例4および比較例7~9の製造時における歩留まり(上記した凍結直前の内容量の、上記した加熱処理前の食材および調味成分の合計重量に占める割合)、加熱設定温度、および加熱処理から封止および凍結工程前までの作業時間についても下記表5に示した。
【0072】
【表5】
【0073】
そして、上記した実施例4および比較例7~9について、これらを電子レンジ(実施例4、および比較例7、8は600W2分間の条件、比較例9は600W5分間の条件)により加熱解凍してから、前述と同じ評価方法および評価基準により官能評価を行った。なお、基準サンプルは実施例4(評価はいずれの項目も4.0)とした。この結果を下記表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
この結果から、本発明の調理済み凍結食品である実施例4は、比較例7~9と異なり、複数種の食材等の風味の一体感および食感がいずれも優れ、焼き目や米の色調(パエリアのような特有の黄色の色調)などの調理跡も維持されて調理感や見栄えも優れたものであることが示された。
また、この実施例4は、比較例7、8よりも製造歩留まりが高く、作業時間も短いこと、つまり歩留まりおよび作業効率が向上していることも示された。一方で、比較例7、8は食材等の移しかえ時にロスが多く発生し、重量ロスが非常に多かった。さらに、比較例8は、各食材を等量ずつ小分けすることも困難であった。
図1