IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井住友建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図1
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図2
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図3
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図4
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図5
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図6
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図7
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図8
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図9
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図10
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図11
  • 特許-点検装置、および、点検システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】点検装置、および、点検システム
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020110201
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007303
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 保久
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 友一郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-128015(JP,A)
【文献】特開2020-044858(JP,A)
【文献】特開2019-203706(JP,A)
【文献】特開2016-215931(JP,A)
【文献】特開2019-006170(JP,A)
【文献】特開2016-006398(JP,A)
【文献】特開2016-125273(JP,A)
【文献】特開平11-100814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象の構造物に沿って、前記構造物から所定距離、離れて設置された1本のレール上移動可能前記レールを両側方から挟む複数の車輪を有する台車と、
前記レールに沿って前記レールの上面に設置された可撓性部材に接触して駆動し、前記レール上で前記台車を移動させる駆動手段と、
前記台車に固定され、前記構造物を撮影する撮影手段と、
記台車に固定され、前記撮影手段が撮影する前記構造物を照明する照明手段と、
を備え、
前記照明手段が、前記撮影手段の周りに置されたことを特徴とする点検装置。
【請求項2】
前記駆動手段が、前記可撓性部材に対して、回転して駆動力を与える駆動ローラを有し、
前記レールから離隔して設定された前記駆動ローラに、前記可撓性部材を案内するガイドローラを有し、前記可撓性部材の端が前記レールの端に固定さていることを特徴とする請求項に記載の点検装置。
【請求項3】
前記可撓性部材が、歯付きベルトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点検装置。
【請求項4】
点検対象の構造物を点検する点検装置と、前記構造物に沿って、前記構造物から所定距離、離れて設置された1本のレールと、を備える点検システムであって、
前記点検装置は、
前記レール上移動可能前記レールを両側方から挟む複数の車輪を有する台車と、
前記レールに沿って前記レールの上面に設置された可撓性部材に接触して駆動し、前記レール上で前記台車を移動させる駆動手段と、
前記台車に固定され、前記構造物を撮影する撮影手段と、
前記台車に固定され、前記撮影手段が撮影する前記構造物を照明する照明手段と、
を有し、
前記照明手段が、前記撮影手段の周りに置されたことを特徴とする点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の損傷状態を撮影する点検装置、および、点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既設橋梁等の構造物の老朽化に伴い、コンクリート等の検査方法や診断方法が開発されている。例えば、特許文献1には、コンクリート構造物表面の赤外線熱画像を撮影し表面付近の外気温を計測し、外線熱画像および計測した外気温に基づいて、健全部とはく離部との間における温度差としてのはく離部温度差と、健全部の表面温度と外気温との差としての測定温度環境を算出し、算出した測定温度環境に対する算出したはく離部温度差との比率として温度環境係数を算出、温度環境係数に応じて、はく落危険度を算出し、前回算出したはく落危険度と今回算出したはく落危険度とを比較して、はく落時期を算出するコンクリート構造物のはく落予測診断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-6398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリート床版等の裏側等の検査、診断の点検作業等がしにくい場所において、これらの作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、構造物の点検等の作業効率を向上させた点検装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、点検対象の構造物に沿って、前記構造物から所定距離、離れて設置された1本のレール上移動可能前記レールを両側方から挟む複数の車輪を有する台車と、前記レールに沿って前記レールの上面に設置された可撓性部材に接触して駆動し、前記レール上で前記台車を移動させる駆動手段と、前記台車に固定され、前記構造物を撮影する撮影手段と、前記台車に固定され、前記撮影手段が撮影する前記構造物を照明する照明手段と、を備え、前記照明手段が、前記撮影手段の周りに置されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の点検装置において、前記駆動手段が、前記可撓性部材に対して、回転して駆動力を与える駆動ローラを有し、前記レールから離隔して設定された前記駆動ローラに、前記可撓性部材を案内するガイドローラを有し、前記可撓性部材の端が前記レールの端に固定さていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の点検装置において、前記可撓性部材が、歯付きベルトであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、点検対象の構造物を点検する点検装置と、前記構造物に沿って、前記構造物から所定距離、離れて設置された1本のレールと、を備える点検システムであって、前記点検装置は、前記レール上移動可能前記レールを両側方から挟む複数の車輪を有する台車と、前記レールに沿って前記レールの上面に設置された可撓性部材に接触して駆動し、前記レール上で前記台車を移動させる駆動手段と、前記台車に固定され、前記構造物を撮影する撮影手段と、前記台車に固定され、前記撮影手段が撮影する前記構造物を照明する照明手段と、を有し、前記照明手段が、前記撮影手段の周りに置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、点検対象の構造物に沿って所定距離、離れて設置されたレールに沿って設置された可撓性部材に接触して駆動し、レール上を移動して、構造物を撮影することにより、レール上を自走して構造物を撮影するので、構造物の点検等の作業効率を向上さることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る点検システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図2図1の点検装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図3図1のレールの先端の一例を示す斜視図である。
図4図1の点検装置の概略構成の一例を示す平面図である。
図5図1の点検装置の概要構成の一例を示す側面図である。
図6図1の点検装置の自走機構の概要構成の一例を示す模式図である。
図7図1の点検装置の制御ボックスの概要構成の一例を示すブロック図である。
図8図1の判定装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
図9】点検装置の撮影動作の一例を示すフローチャートである。
図10】判定動作の一例を示すフローチャートである。
図11】撮影画像の一例を示す模式図である。
図12】画像処理結果の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、点検システム等に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0015】
[1.点検システムおよび各装置の構成および機能概要]
(1.1 点検システムの構成および機能概要)
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る点検システムの構成および概要機能について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る点検システムの概略構成の一例を示す模式図である。図2は、図1の点検装置の概略構成の一例を示す斜視図である。図3は、図1のレールの先端の一例を示す斜視図である。図4は、図1の点検装置の概略構成の一例を示す平面図である。図5は、図1の点検装置の概要構成の一例を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る点検システム1は、点検対象の高架、橋梁等の構造物のコンクリート床版2の下に組み立てられた足場3に設置されたレール10と、高架、橋梁等の構造物のコンクリート床版2の裏面等を撮影する点検装置20と、点検装置20が撮影した画像に基づき、建設物のメンテナンスに関する判定をする判定装置30と、を備える。
【0019】
足場3は、点検対象の構造物に沿って所定距離、離れて組み立てられる。組み立てられた足場3の上に、レール10が設置される。なお、壁の場合、壁に沿って所定距離、離れてレールが設置される。レール10が、点検対象の構造物に沿って所定距離、離れて設置されたレールの一例である。
【0020】
点検装置20が、レール10の上を自走して、コンクリート床版2を撮影する。判定装置30が、撮影した画像データからコンクリート床版2等の状態を判定する。なお、構造物として、既設のRC(Reinforced Concrete)床版、鋼桁、PC(Prestressed Concrete)合成桁等が挙げられる。
【0021】
図2に示すように、レール10は、レール本体11と、足場3に設置する脚部12と、を有する。
【0022】
レール本体11は、金属製の1本のレールである。レール本体11の断面形状は、例えば、高さ方向が長い長方形である。レール本体11の材質は、アルミニウム等の軽量の金属が好ましい。脚部12は、高さ調整の部材を有し、レール本体11を安定して、足場3上に設置させる。また、レール本体11は、折りたたみ式、または、持ち運びやすい短いレールを接続して、作業現場で組み立てられるようになっていてもよい。
【0023】
レール本体11の上面には、ベルト15が設置される。ベルト15は、例えば、歯15aを有する歯付きベルトである。ベルト15の材質は、例えば、ポリウレタン等のプラスチック製である。ベルト15は、ガラス繊維やアラミド繊維の心線を有してもよい。
【0024】
図3に示すように、ベルト15の裏面の歯15aがレール本体11の上面に向くように、レール本体11の端部11aに、ベルト15の端が、固定部材16により固定される。ベルト15は、レールに沿って設置された可撓性部材の一例である。なお、ベルト15の代わりに、可撓性部材の一例として、伸び縮みしにくいロープ、ワイヤ、テープでもよい。
【0025】
図4および図5に示すように、点検装置20は、撮影カメラ21と、照明器具22と、制御ボックス23と、走行台車24と、レール10に設置されるベルト15を収納するベルト収納部25と、を有する。
【0026】
撮影カメラ21は、例えば、オートフォーカス機能を有するカメラである。撮影カメラ21は、カメラレンズ21aから光を取り込み、カラーの静止画を撮影する。撮影カメラ21は、ステレオ撮影するカメラである。撮影カメラ21は、前記レールを移動して、前記構造物を撮影する撮影手段の一例である。なお、撮影カメラ21は、動画を撮影してもよい。撮影カメラ21は、赤外線カメラでもよい。
【0027】
照明器具22は、LED素子(図示せず)と、LED素子に電力を供給するバッテリー(図示せず)と、LED素子からの光を絞るレンズ22aと、内部で発生する熱を逃がす通気口22bと、を有する。照明器具22は、例えば、撮影カメラ21の両脇に2台設置される。
【0028】
制御ボックス23は、図4に示すように、上面に電源スイッチ23aと、画面23bと、を有する。制御ボックス23は、図5に示すように、内部に、駆動モータMと、バッテリー(図示せず)と、電子制御基板(図示せず)と、を有する。駆動モータMは、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ等である。なお、駆動モータMは、制御ボックス23の外側の下部でもよい。
【0029】
制御ボックス23が、点検装置20の走行と、撮影カメラ21の撮影および画像の記憶、照明器具22の照明を制御する。なお、制御ボックス23のバッテリーが、照明器具22に電力を供給してもよい。
【0030】
制御ボックス23は、点検装置20において、例えば、撮影カメラ21を挟んで、ベルト収納部25と反対が側に設置される。
【0031】
走行台車24は、点検装置20がレール本体11から転倒、または、外れないように、レール本体11を両側方から挟むように、複数の車輪24aを有する。走行台車24の上に、撮影カメラ21、照明器具22、制御ボックス23等が固定される。
走行台車24は、点検対象の構造物に沿って所定距離、離れて設置されたレール上で移動可能に案内するレールガイド手段の一例である。なお、レール本体11の側面に、走行台車24の車輪が走る溝があってもよい。
【0032】
ベルト収納部25は、レール10上に張って利用されるベルト15を巻き取って収納する。
【0033】
点検装置20は、コンピュータ機能により設定した撮影カメラ21の撮影条件、走行台車24の移動距離と移動回数を制御し、自動撮影を行う。撮影条件として、撮影カメラ21のシャッタースピード、絞り、焦点等が挙げられる。
【0034】
(1.2 点検装置20の自走機構および制御ボックスの概要構成)
次に、点検装置20の自走機構の概要構成および制御ボックス23の概要構成について、図を用いて説明する。
【0035】
図6は、点検装置20の自走機構の概要構成の一例を示す模式図である。図7は、点検装置20の制御ボックス23の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
図6に示すように、点検装置20は、レール10を自走する駆動系として、駆動モータMと、駆動モータMにより回転する駆動ローラr1と、ベルト15を案内する第1ガイドローラr2および第2ガイドローラr3と、を有する。
【0037】
駆動ローラr1は、歯車を有し、駆動ローラr1の歯が、ベルト15の歯15aに噛み合う。駆動ローラr1は、駆動モータMにより駆動されて回転する。駆動ローラr1は、可撓性部材のベルト15に対して、駆動モータMにより回転して駆動力を与える。
【0038】
駆動ローラr1は、点検装置20内において、レール10から離隔して設定される。第1ガイドローラr2は、レール10上のベルト15の方向を、駆動ローラr1の上方に向きを変え、レール10から上方にある駆動ローラr1にベルト15をガイドする。
【0039】
第2ガイドローラr3は、ベルト15を上から押さえるように、レール10の方向に複数並べて点検装置20の下部に設置される。第2ガイドローラr3は、点検装置20の下部にガイドし、第1ガイドローラr2にベルト15を供給する。
【0040】
駆動ローラr1は、レールに沿って設置された可撓性部材に接触して駆動し、レール上で移動させる駆動手段の一例である。なお、駆動手段の一例のとして、駆動ローラr1は、可撓性部材との接触面が、自動車のタイヤのように、滑り難い材質や溝のパターンを有してもよい。
【0041】
また、駆動モータMと駆動ローラr1とは、回転軸で直結でも、ギアやベルトで連結されてもよい。
【0042】
第1ガイドローラr2は、レールから離隔して設定された駆動ローラに、可撓性部材を案内するガイドローラである。
【0043】
点検装置20は、駆動モータM、駆動ローラr1、第1ガイドローラr2および第2ガイドローラr3により、レール本体11の上面に設置されたベルト15を、点検装置20内部に巻き込みながら、レール10上を移動する。
【0044】
図7に示すように、点検装置20は、撮影部20aと、照明部20bと、駆動部20cと、記憶部20dと、表示部20eと、操作部20fと、制御部20gと、を有する。
【0045】
撮影部20aは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、または、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子を有する。撮影部20aは、撮影カメラ21に対応する。
【0046】
照明部20bは、照明器具22に対応する。
【0047】
駆動部20cは、駆動モータMおよび駆動ローラr1等の点検装置20の駆動系に対応する。
【0048】
記憶部20dは、例えば、シリコンディスクドライブやハードディスクドライブ等からなる。記憶部20dは、制御ボックス23内に設置される。記憶部20dは、点検装置20を制御するための各種プログラム等を記憶したりする。各種プログラムは、オペレーティングシステム等が挙げられる。なお、各種プログラムは、例えば、無線通信網等のネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0049】
なお、撮影部20aが撮影した画像データは、撮影カメラ21のSDカード等のメモリカードに記憶してもよいし、記憶部20dに記憶してもよい。
【0050】
表示部20eは、液晶表示素子または有機EL素子等を有する。表示部20eは、制御ボックス23の上面の画面23bに対応する。
【0051】
操作部20fは、例えば、電源スイッチ23a等の操作ボタン等によって構成されている。なお、表示部20eがタッチパネルのようなタッチスイッチ方式の表示パネルの場合、操作部20fは、ユーザが接触または近接した表示部20eの位置情報を取得する。
【0052】
制御部20gは、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。制御部20gは、制御ボックス23内に設置される。制御部20gは、CPUが、ROMや、RAMや、記憶部20dに記憶された各種プログラムを読み出して実行する。制御ボックス23の電子制御基板が、制御部20gに対応する。
【0053】
制御部20gは、撮影部20aの撮影のタイミングを制御する。制御部20gは、照明部20bの照明を制御する。制御部20gは、駆動部20cを制御して、駆動モータMを作動させて点検装置20を、所定の距離、移動させる。なお、制御部20gは、撮影カメラ21の制御部を有してもよい。
【0054】
なお、点検装置20は、判定装置30と無線通信または有線通信を行う通信部を備えてもよい。点検装置20は、通信部を介して、判定装置30に撮影した画像データを送信する。
【0055】
(1.3 判定装置30の構成および機能)
次に、判定装置30の構成および機能について、図8を用いて説明する。
【0056】
図8は、判定装置30の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0057】
図8に示すように、コンピュータとして機能する判定装置30は、通信部31と、表示部32と、記憶部33と、操作部34と、入出力インターフェース部35と、制御部36とを有する。そして、制御部36と入出力インターフェース部35とは、システムバス37を介して接続されている。例えば、判定装置30は、パーソナルコンピュータやスマートフォンを含む携帯型無線電話機やPDA等の携帯端末である。
【0058】
通信部31は、無線通信機能または有線通信機能を有する。通信部31は、点検装置20等との通信状態を制御する。
【0059】
表示部32は、例えば、液晶表示素子または有機EL素子等によって構成されている。表示部32には、判定結果の情報を表示される。
【0060】
記憶部33は、例えば、シリコンディスクドライブやハードディスクドライブ等からなる。記憶部33は、判定装置30を制御するための各種プログラム等を記憶したりする。各種プログラムは、オペレーティングシステム、画像認識等を行う人工知能(AI:Artificial Intelligence)のプログラム等が挙げられる。なお、各種プログラムは、例えば、無線通信網等のネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、CD、DVD等の記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0061】
記憶部33は、点検装置20が撮影した画像データを、撮影番号等に関連付けて記憶する。記憶部33には、ひびの密度と損傷度とを紐付けたデータベース、損傷度と補強方法とを紐付けたデータベース等が構築されている。
【0062】
操作部34は、例えば、キーボードおよびマウス等によって構成されている。操作部34は、表示部32がタッチパネルのようなタッチスイッチ方式の表示パネルでもよい。
【0063】
入出力インターフェース部35は、通信部31等と制御部36とのインターフェースである。
【0064】
制御部36は、例えば、CPUと、ROMと、RAMと、を有する。制御部36は、CPUが、ROMや、RAMや、記憶部33に記憶された各種プログラムを読み出して実行する。
【0065】
[2.点検装置20の動作例]
(2.1)
次に、点検システム1の点検装置20の動作例について、図を用いて説明する。
【0066】
図9は、点検装置20の撮影動作の一例を示すフローチャートである。
【0067】
先ず、足場3に、レール10が設置される。ベルト収納部25からベルト15が巻き出され、巻き出されたベルト15が、点検装置20の駆動部20cの駆動系の駆動ローラr1、第1ガイドローラr2および第2ガイドローラr3に設定された後、レール10の上面に設置される。例えば、駆動部20cの駆動系に通されたベルト15において、レール本体11の一方の端部11aに、ベルト15の一端が、固定部材16により固定される。さらに、レール本体11の他方の端部11aに、ベルト15の他端が、ベルト15が緩まないように、固定部材16により固定される。
【0068】
撮影対象のコンクリート床版2に、定規を連続して、鋼桁の左右のフランジに貼り付ける。コンクリート床版2に、両面テープや、筆記具でマークを付ける。
【0069】
点検装置20の電源を入れて、制御部20gを起動させ、プログラムを実行させ、撮影の準備をする。なお、点検装置20の起動は、判定装置30等から遠隔操作されてもよい。
【0070】
図9に示すように、点検システム1は、点検装置20を、所定距離、移動させる(ステップS1)。具体的には、点検装置20の制御部20gが、駆動部20cが、駆動モータMを、所定回転、駆動させ、所定距離に対応した所定回転、駆動ローラr1が回転して、ベルト15を動かす。点検装置20本体が、レール10上を、所定距離、移動して、停止する。ここで、所定距離は、撮影カメラ21の撮影画角と被写体のコンクリート床版2の裏面との距離とに基づき決定される。
【0071】
次に、点検システム1は、照明器具を点灯する(ステップS2)。具体的には、点検装置20の制御部20gが、2台の照明器具22を点灯させ、被写体のコンクリート床版2の裏面を照明する。なお、2台の照明器具22のうち、一方の照明器具22のみを点灯する照明パターンでもよい。これにより、コンクリート床版2の面の凹凸を際立たせることができる。
【0072】
次に、点検システム1は、撮影する(ステップS3)。具体的には、点検装置20の制御部20gが、撮影カメラ21を作動させ、撮影カメラ21がコンクリート床版2の裏面を撮影する。なお、制御部20gが、2台の照明器具22の照明パターンを変えて、撮影カメラ21がコンクリート床版2の裏面を撮影してもよい。
【0073】
次に、点検システム1は、撮影した画像を記憶する(ステップS4)。具体的には、制御部20gとして、撮影カメラ21が、メモリに撮影した画像データを記憶する。撮影カメラ21が、所定距離の移動毎の撮影毎に、画像データのファイルを生成する。画像データのファイル名は、撮影順等によりナンバリングする。なお、制御部20gが、撮影カメラ21から画像データを、制御ボックス23に転送して記憶部20dに記憶してもよい。制御部20gが、2台の照明器具22の照明パターンに関連付けて、画像データを記憶してもよい。
【0074】
次に、点検システム1は、終了か否かを判定する(ステップS5)。具体的には、点検装置20の制御部20gが、点検装置20の電源の状態やプログラム等が終了したか否かを判定する。
【0075】
終了していない場合(ステップS5;NO)、点検システム1は、ステップS1の処理に戻って、制御部20gが、駆動部20cの駆動系により、点検装置20本体を、所定距離、移動させる。
【0076】
終了した場合(ステップS5;YES)、点検システム1は、一連の動作を終了する。具体的には、点検装置20が、プログラムを終了する。
【0077】
(2.2 判定装置30の動作例)
次に、点検システム1の判定装置30の動作例について、図を用いて説明する。
【0078】
図10は、判定装置30の判定動作の一例を示すフローチャートである。図11は、撮影画像の一例を示す模式図である。図12は、画像処理結果の一例を示す模式図である。
【0079】
点検装置20の撮影動作の終了後、例えば、撮影カメラ21からメモリカードが取り出され、判定装置30に接続されて、制御部36は、メモリカードから撮影した画像データを読み出し、記憶部33に記憶する。
【0080】
図10に示すように、点検システム1は、各所定距離の移動毎に撮影された各画像を接続する(ステップS10)。具体的には、判定装置30の制御部36は、各所定距離の移動毎に撮影された各画像データのファイルを、記憶部33から読み出す。図11に示すように、制御部36は、各所定距離の移動毎に撮影された各画像をつなぎ合わせて、コンクリート床版2の画像を合成する。
【0081】
次に、点検システム1は、欠陥箇所を抽出する(ステップS11)。具体的には、判定装置30の制御部36は、画像処理をして、図12に示すように、亀裂等の欠陥箇所を抽出した画像を生成する。
【0082】
次に、点検システム1は、コンクリートの状態を判定する(ステップS12)。具体的には、判定装置30の制御部36は、AI機能等により画像処理を行い、鋼桁の左右のフランジに貼り付けられた定規の画像や、マークに基づき、床版寸法、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひび割れの密度、損傷(浮き)等を計算する。
【0083】
制御部36は、計算されたひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度等に基づき、記憶部33のデータベースを参照して、コンクリートの損傷度合いを判定する。制御部36は、例えば、ひびの密度から、損傷度合いを判定したり、損傷度より、最適な補強方法を選定したりする。制御部36は、補修・補強設計、補修・補強図面を作成してもよい。
【0084】
なお、判定装置30は、AI機能により、ステップS10の処理で生成された原画像から、コンクリートの状態を判定してもよい。
【0085】
次に、点検システム1は、判定結果を表示する(ステップS13)。具体的には、判定装置30の制御部36は、寸法、ひびの密度、損傷度合い、選択された補強方法等の判定結果を表示部32に表示する。
【0086】
実施形態に係る点検装置20によれば、点検対象のコンクリート床版2等の構造物に沿って所定距離、離れた足場3に設置されたレール10上で移動可能に案内するレールガイド手段の一例の走行台車24と、レール10に沿って設置された可撓性部材の一例のベルト15に接触して駆動し、レール10上で移動させる駆動手段の一例の駆動ローラr1と、レール10を移動して、構造物を撮影する撮影手段の一例の撮影カメラ21と、を備えた点検装置20により、点検装置20が、レール10上を自走して構造物を撮影するので、構造物の点検等の作業効率を向上さることができる。
【0087】
また、実施形態に係る点検装置20により、人員による手作業に比べ、大幅な省力化、省人化が可能で生産性が向上する。また、実施形態に係る点検装置20により、人的要因による損傷の見落としや判定のバラツキがなくなり、調査・判定の精度が向上する。
【0088】
また、駆動手段が、ベルト15等の可撓性部材に対して、回転して駆動力を与える駆動ローラr1を有する場合、駆動ローラr1を駆動モータMで駆動させて、点検装置20が、レール10上を自走することができる。
【0089】
また、レール10から離隔して設定された駆動ローラr1に、ベルト15等の可撓性部材を案内するガイドローラr2を有する場合、駆動ローラr1と可撓性部材とが接触する面積が広がり、滑りにくくなり、レール10上を確実に、所定距離、点検装置20が移動することができる。また、レール10に傾斜があってもレール10上をより正確に、所定距離、点検装置20が移動することができる。
【0090】
また、ベルト15が可撓性部材であり、ベルト15がベルト収納部25に収納されることにより、点検装置20は、ベルト15と共に持ち運び容易になる。さらに、レール本体11の材質は、アルミニウム等の軽量の金属であり、レール本体11が作業現場で組み立てられるようになっている場合、ポータブルな検査システム1を構築することができる。
【0091】
また、可撓性部材が、歯付きベルト15である場合、歯があることで、滑りにくくなり、レール10上をより正確に、所定距離、点検装置20が移動することができる。レール10に傾斜があってもレール10上をより正確に、所定距離、点検装置20が移動することができる。
【0092】
特に、歯車を有する駆動ローラr1の場合、歯付きベルト15と、噛み合い、レール10上をより正確に、所定距離、点検装置20が移動することができる。レール10により傾斜があっても、十分な駆動力が得られ、レール10上をより正確に、所定距離、点検装置20が移動することができる。
【0093】
また、撮影する構造物を照明する照明手段の一例の照明器具22を備えた場合、コンクリート床版2の裏側等、暗い場所でも、より鮮明な画像データを取得することができる。点検装置20が照明器具22と一体になっているため、別途、照明装置を設置する必要がない。
【0094】
さらに、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0095】
1:点検システム
2:コンクリート床版(構造物)
10:レール
15:ベルト(可撓性部材)
20:点検装置
20a:撮影部(撮影手段)
20b:照明部(照明手段)
21:撮影カメラ(撮影手段)
22:照明器具(照明手段)
24:走行台車(レールガイド手段)
M:モータ(駆動手段)
r1:駆動ローラ(駆動手段)
r2:ガイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12