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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240709BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240709BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20240709BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240709BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
G03B17/02
G03B17/55
H04N23/52
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020121287
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018284
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 恭生
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
(72)【発明者】
【氏名】楳田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】谷川 剛基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真也
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0239105(US,A1)
【文献】国際公開第2019/225745(WO,A1)
【文献】特開2004-325603(JP,A)
【文献】特開2019-168509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/14
G03B 17/55
G03B 30/00
H04N 23/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、
前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備え
前記導電膜は透明導電膜であり、
前記透明導電膜は、前記像側レンズ面に配置され、
前記透明導電膜は、前記像側フランジ面に配置される腕部を備え、
前記腕部は、前記像側フランジ面に配置される取り出し電極を介して、前記電極と接続されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、
前記腕部および前記取り出し電極は、前記黒化膜の上に積層されることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項3】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、
前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備え
前記導電膜は金属薄膜からなり、
前記金属薄膜は、前記像側フランジ面の周方向の一部に配置され、
前記金属薄膜の周方向の先端部は、前記電極と接続されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、
前記黒化膜の上に前記金属薄膜が積層され、
前記金属薄膜の上に保護膜が積層され、前記金属薄膜は、前記先端部を除く全範囲が前記保護膜によって覆われ、
前記平面部は環状であり、前記保護膜の上に前記平面部が配置されることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、
前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備え
前記フレキシブルプリント基板は、前記突出部と周方向で隣り合う第1切欠き部を備え、
前記第1切欠き部は、径方向内側に向かって切り欠かれていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
前記突出部は、前記延伸部の周方向の一方側に配置される第1突出部、および、前記延伸部の周方向の他方側に配置される第2突出部を備え、
前記第1切欠き部は、前記延伸部と前記第1突出部との間、および、前記延伸部と前記第2突出部との間に設けられていることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記平面部は環状であり、
前記平面部の周方向の一部に、前記延伸部と繋がる繋ぎ部が設けられ、
前記フレキシブルプリント基板は、前記繋ぎ部の内周縁を径方向外側へ切り欠いた第2切欠き部を備えることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1切欠き部および第2切欠き部は、接着剤塗布溝であることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、
前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備え
前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部に配置されるヒータを備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項10】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、
前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備え
前記第1収容部は、前記像側フランジ面に当接するレンズ座面が設けられた規制部と、
前記規制部の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部と、を備え、
前記平面部は、前記規制部の内周側に配置され、
前記突出部は、前記ザグリ部に配置されることを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズを光軸上に配置したレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、光学機器に用いられるレンズユニットが開示される。特許文献1のレンズユニットは、光軸上に配置される複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダとを備える。レンズホルダは、鏡筒(支持手段)と、鏡筒を覆うケース(ケーシング)とを備える。また、特許文献2にも、同様のレンズユニットが開示される。
【0003】
特許文献1、2のレンズユニットは、屋外での使用の際にレンズユニット内で結露が発生することを抑制するため、レンズユニットの内部にヒータが配置される。例えば、特許文献1には、レンズ表面に形成したITO膜などの導電膜をヒータとして用いることが記載される。また、特許文献2には、第1レンズと第2レンズとの間に、電熱線(ヒータ)を配置したフレキシブルプリント基板を配置することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4252959号公報
【文献】特開2019-168509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のレンズを備えるレンズユニットでは、レンズの外周部と、他のレンズもしくは鏡筒とを光軸方向に当接させることによってレンズの光軸方向の位置決めを行う。ここで、特許文献1には、ITO膜をヒータとして用いる場合に、ITO膜の外周部に配置した取り出し電極、および、取り出し電極に接続される配線部材(接続線)を用いて給電することが記載されているが、取り出し電極と配線部材との接続部分がレンズと鏡筒もしくは他のレンズとの間に挟まれると、接続部分が押圧されて配線部材や電極が潰されてしまう。これにより、短絡などの不具合が発生するおそれがある。
【0006】
例えば、特許文献2では、配線部材としてフレキシブルプリント基板を用いている。ITO膜に対する給電用の配線部材としてフレキシブルプリント基板を用いる場合、ITO膜の取り出し電極とフレキシブルプリント基板との接続部分がレンズと鏡筒もしくは他のレンズとの間に挟まれると、接続部分が潰されて短絡を引き起こしてしまう。例えば、フレキシブルプリント基板上に導電体による細かい配線パターンが形成されている場合には、配線パターンが潰されて配線同士が短絡するおそれがある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、レンズの表面に配置した導電膜(ヒータ)に給電するための電極とフレキシブルプリント基板上の電極との接続部分が潰されて短絡などの不具合が発生することを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、最も物体側にある第1レンズと、前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、前記第1レンズの像側面に配置される導電膜と、前記導電膜に給電するフレキシブルプリント基板と、を有し、前記像側面は、像側レンズ面および前記像側レンズ面を囲む像側フラ
ンジ面を備え、前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部と、を備え、前記突出部は、前記導電膜に電気的に接続される電極を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、導電膜によって第1レンズを加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、導電膜に給電するフレキシブルプリント基板では、導電膜との接続用の電極が、径方向外側に突出する突出部に配置される。従って、フレキシブルプリント基板上の電極と、この電極に接触する導電膜側の取り出し電極との接続部分が、第1レンズの像側に配置される部品(例えば、第2レンズもしくは第2収容部)と干渉することを回避しやすい。よって、第1レンズと他部品(第2レンズもしくは第2収容部)との間にフレキシブルプリント基板上の電極や配線が挟まれて潰されるおそれが少なく、潰された電極や配線の短絡が発生するおそれが少ない。
【0010】
本発明において、前記導電膜は透明導電膜であり、前記透明導電膜は、前記像側レンズ面に配置されることが好ましい。このようにすると、透明導電膜によって第1レンズの像側レンズ面を直接加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。
【0011】
本発明において、前記透明導電膜は、前記像側フランジ面に配置される腕部を備え、前記腕部は、前記像側フランジ面に配置される取り出し電極を介して、前記電極と接続されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板上の電極が取り出し電極以外の位置で透明導電膜と短絡するおそれが少ない。
【0012】
本発明において、前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、前記腕部および前記取り出し電極は、前記黒化膜の上に積層されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板が黒化膜と重なるので、フレキシブルプリント基板を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面を透過する光によるゴーストを黒化膜によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面に光を拡散させるための凹凸(シボ)を形成した場合は、黒化膜によって凹凸(シボ)が埋まって平滑化される。従って、像側フランジ面に透明導電膜の腕部および取り出し電極を形成しやすい。
【0013】
本発明において、前記導電膜は金属薄膜からなり、前記金属薄膜は、前記像側フランジ面の周方向の一部に配置され、前記金属薄膜の周方向の先端部は、前記電極と接続されることが好ましい。このようにすると、金属薄膜によって第1レンズの像側フランジ面を直接加温できる。また、像側レンズ面に導電膜を形成する場合と比較して、ゴーストの発生等による光学性能への影響を少なくすることができる。
【0014】
本発明において、前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、前記黒化膜の上に前記金属薄膜が積層され、前記金属薄膜の上に保護膜が積層され、前記金属薄膜は、前記先端部を除く全範囲が前記保護膜によって覆われ、前記平面部は環状であり、前記保護膜の上に前記平面部が配置されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板が黒化膜と重なるので、フレキシブルプリント基板を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面を透過する光によるゴーストを黒化膜によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、金属薄膜の上に保護膜が積層されているので、金属薄膜を保護できる。特に、高温高湿状態になると金属薄膜が酸化してクラックが発生して抵抗値が変化するおそれがあるが、保護膜を設けることによってクラックの発生を抑制できる。従って、抵抗値の変化を抑制でき、発熱量の変化を抑制できる。また、フレキシブルプリント基板を第1レンズに配置する際に、平面部を固定する固定面として保護膜を使用することが可能である。
【0015】
本発明において、前記フレキシブルプリント基板は、前記突出部と周方向で隣り合う第1切欠き部を備え、前記第1切欠き部は、径方向内側に向かって切り欠かれていることが好ましい。このような位置に切欠き部を設けることにより、フレキシブルプリント基板の外周部の反りを抑制できる。また、切欠き部によって配線や電極を分離できるので、配線や電極の短絡が発生する恐れを少なくすることができる。
【0016】
本発明において、前記突出部は、前記延伸部の周方向の一方側に配置される第1突出部、および、前記延伸部の周方向の他方側に配置される第2突出部を備え、前記第1切欠き部は、前記延伸部と前記第1突出部との間、および、前記延伸部と前記第2突出部との間に設けられていることが好ましい。このようにすると、正負の電極を切欠き部によって延伸部と分離できるので、正負の電極と延伸部の配線とが短絡しにくい。また、正負の電極を延伸部の近傍に集約できるので、正負の電極への配線を短く、且つ、単純な形状にすることができる。
【0017】
本発明において、前記平面部は環状であり、前記平面部の周方向の一部に、前記延伸部と繋がる繋ぎ部が設けられ、前記フレキシブルプリント基板は、前記繋ぎ部の内周縁を径方向外側へ切り欠いた第2切欠き部を備えることが好ましい。このようにすると、繋ぎ部の周方向の一方側に配置される第1突出部の電極に接続される配線と、繋ぎ部の周方向の他方側に配置される第2突出部の電極に接続される配線とが短絡するおそれを少なくすることができる。また、フレキシブルプリント基板の内周部の反りを抑制できる。
【0018】
本発明において、前記第1切欠き部および第2切欠き部は、接着剤塗布溝である。このようにすると、フレキシブルプリント基板を像側フランジ面に固定する際、固定強度を高めることができる。また、突出部の近傍を固定できるため、突出部に設けられた電極が像側フランジ面から浮き上がり難い。
【0019】
本発明において、前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部に配置されるヒータを備えることが好ましい。このようにすると、透明導電膜、および、フレキシブルプリント基板上のヒータの両方が発熱するので、結露が発生するおそれをより少なくすることができる。
【0020】
本発明において、前記第1収容部は、前記像側フランジ面に当接するレンズ座面が設けられた規制部と、前記規制部の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部と、を備え、前記平面部は、前記規制部の内周側に配置され、前記突出部は、前記ザグリ部に配置されることが好ましい。このようにすると、電極を配置した突出部と規制部とが干渉しない。従って、フレキシブルプリント基板上の電極と、この電極に接触する透明導電膜側の取り出し電極との接続部分がレンズホルダと第1レンズとの間に挟まれるおそれが少ない。よって、電極を構成する配線が潰れて短絡するおそれが少ない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、導電膜によって第1レンズを直接加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、導電膜に給電するフレキシブルプリント基板では、導電膜との接続用の電極が、径方向外側に突出する突出部に配置される。従って、フレキシブルプリント基板上の電極と、この電極に接触する導電膜側の取り出し電極との接続部分が、第1レンズの像側に配置される部品(例えば、第2レンズもしくは第2収容部)と干渉することを回避しやすい。よって、第1レンズと他部品(第2レンズもしくは第2収容部)との間にフレキシブルプリント基板上の電極や配線が挟まれて潰されるおそれが少ないので、潰された電極や配線の短絡が発生するおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
図2図1のレンズユニットの分解断面斜視図である。
図3】レンズホルダの斜視図である。
図4】レンズホルダの平面図、および、第1レンズおよびOリングを取り外したレンズユニットの平面図である。
図5】第1レンズに配置される透明導電膜、取り出し電極、および黒化膜の説明図である。
図6】フレキシブルプリント基板の平面図である。
図7】像側フランジ面におけるフレキシブルプリント基板および取り出し電極の配置を示す説明図である。
図8】レンズユニットの部分拡大断面図である。
図9】第1レンズに配置される金属薄膜、保護膜、および黒化膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットの実施形態を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るレンズユニット1の断面図である。図1において、Lはレンズユニット1の光軸である。Laは光軸L方向の一方側であり、レンズユニット1の物体側(被写体側)である。Lbは光軸L方向の他方側であり、レンズユニット1の像側である。レンズユニット1は、光軸Lに沿って1列に並ぶ複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダ2を備える。複数のレンズは、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6を備える。第2レンズL2と第3レンズL3との間には遮光板L7が配置され、第3レンズL3と第4レンズL4との間には絞りL8が配置される。
【0025】
複数のレンズのうち、最も物体側Laに位置する第1レンズL1、および、第4レンズL4はガラスレンズである。第4レンズL4は、枠状のホルダ3に固定された状態でレンズホルダ2の内側に配置される。第2レンズL2、第3レンズL3、第5レンズL5、第6レンズL6はプラスチックレンズである。最も像側Lbに位置する第6レンズL6と第5レンズL5は、接合レンズL9を構成している。なお、レンズホルダ2に保持されるレンズの数および構成は、上記の数および構成に限定されるものではない。
【0026】
レンズホルダ2は樹脂製である。レンズホルダ2は、第1レンズL1を保持する第1収容部4と、第1収容部4の像側Lbに配置される第2収容部5と、第2収容部5の外周側を囲むレンズケース6を備える。レンズケース6は、第1収容部4の外周端部から像側Lbへ延びている。第2収容部5には、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が保持される。
【0027】
図2は、図1のレンズユニット1の分解断面斜視図である。図3は、レンズホルダ2の斜視図である。図4(a)はレンズホルダ2の平面図であり、図4(b)は、第1レンズL1およびOリング7を取り外したレンズユニット1の平面図である。図3図4は、図1のA-A位置より上の部分(カシメ部45)の図示を省略した図である。図1図2に示すように、レンズホルダ2には、第1収容部4の内周面を基準として第1レンズL1が配置される。また、第2収容部5の内周面を基準として第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が配置される。
【0028】
第1レンズL1は、第1収容部4の底部に形成されたレンズ座面40を基準として光軸L方向に位置決めされる。図1図3に示すように、第1収容部4の底部は、第2収容部5の外周面に繋がる環状接続部41と、環状接続部41の外周側において物体側Laへ突出した環状の規制部42と、規制部42の外周縁から物体側Laへ立ち上がる周壁部43を備える。
【0029】
図3図4に示すように、規制部42は、物体側Laを向く環状端面44からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面40になっている。本形態では、光軸Lを中心として略等角度間隔の4か所にレンズ座面40が設けられている。第1レンズL1の外周部分はレンズ座面40に当接しており、周壁部43の先端に設けられたカシメ部45によって第1レンズL1がカシメ固定される。第1レンズL1と第1収容部4との隙間は、Oリング7によって封止される。
【0030】
図1図2に示すように、第2収容部5は、第1収容部4の環状接続部41に繋がる筒部51と、光軸L方向に延びる筒部51の像側Lbの端部に設けられた底部52を備える。第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズLおよび、第6レンズL6)は、第2収容部5の底部52に形成されたレンズ座面50(図3図4(a)参照)を基準として光軸L方向に位置決めされる。
【0031】
第2収容部5の底部52は、物体側Laを向く環状底面53からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面50になっている。図4(a)に示すように、本形態では、光軸Lを中心として略等角度間隔の3か所にレンズ座面50が設けられている。また、第2収容部5は、環状底面53の内周側において像側Lbに所定深さで凹んだ凹部54と、凹部54の中央に設けられた円形の開口部55とを備える。
【0032】
接合レンズL9は、第5レンズL5の外周部分がレンズ座面50に当接することによって光軸L方向に位置決めされている。最も像側Lbに配置される第6レンズL6は凹部54の内側に収容されているが、凹部54の内面に接触しておらず、第5レンズL5を介して光軸L方向に位置決めされている。
【0033】
接合レンズL9の物体側Laに位置する第4レンズL4は、ホルダ3に保持されており、ホルダ3は第5レンズL5の外周部分と光軸L方向に当接する。また、第4レンズL4の物体側Laに位置する第3レンズL3の外周部分は、絞りL8を介してホルダ3の外周部分と光軸L方向に当接する。さらに、第3レンズL3の物体側Laに位置する第2レンズL2の外周部分は、遮光板L7を介して第3レンズL3の外周部分と光軸L方向に当接する。従って、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4は、いずれも、レンズ座面50を基準として光軸L方向に位置決めされる。第2レンズL2は、筒部51の物体側Laの端部に設けられたカシメ部56によってカシメ固定される。
【0034】
(透明導電膜)
レンズユニット1は、第1レンズL1の表面に配置される透明導電膜16を備える。透明導電膜16は、通電により発熱する抵抗体であり、第1レンズL1を直接加温するヒータである。図1図2に示すように、第1レンズL1は、物体側Laに凸の物体側レンズ面11と、物体側Laに凹の像側レンズ面12と、像側レンズ面12の外周側を囲む像側フランジ面13と、像側フランジ面13の外周側で物体側Laに凹む環状段部14を備える。像側フランジ面13は、光軸Lに対して垂直な環状の平坦面である。環状段部14には、Oリング7が配置される。
【0035】
図5は、第1レンズL1に配置される透明導電膜16、取り出し電極17A、17B、
および黒化膜15の説明図である。図5(a)~図5(d)は、第1レンズL1を像側Lbから見た平面図である。図5(a)は、黒化膜15の平面形状を示し、図5(b)は、透明導電膜16の平面形状を示し、図5(c)は、取り出し電極17A、17Bの平面形状を示す。図5(d)は、透明導電膜16、取り出し電極17A、17B、および黒化膜15が像側レンズ面12および像側フランジ面13に積層された状態を示す。
【0036】
像側フランジ面13は光拡散面であり、全面に微細な凹凸(シボ)が形成されている。本形態では、像側フランジ面13には、黒化膜15が形成される。黒化膜15は、例えば、墨塗りを施すことにより形成される。第1レンズL1は、微細な凹凸(シボ)によって光を拡散し、且つ、墨塗りによって光を吸収するため、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。図5(a)に示すように、黒化膜15は、像側フランジ面13の略全体に形成されている。
【0037】
透明導電膜16は、像側レンズ面12に配置される。本形態では、透明導電膜16はITO膜である。像側レンズ面12に対する透明導電膜16の成膜工程は、像側フランジ面13に黒化膜15を形成した後に行う。レンズユニット1では、透明導電膜16への通電によって像側レンズ面12を均一に発熱させる。透明導電膜16への給電は、像側フランジ面13に配置される取り出し電極17A、17Bを介して行う。
【0038】
図5(b)に示すように、透明導電膜16は、像側フランジ面13に配置される2本の腕部16A、16Bを備える。腕部16A、16Bは、像側レンズ面12の外周縁から径方向で反対側の2方向に延びている。取り出し電極17A、17Bは、光軸Lを中心として点対称に配置される。取り出し電極17Bは、腕部16Bの先端を中心として周方向に円弧状に延びている。腕部16A、16Bは、および取り出し電極17A、17Bは、黒化膜15の上に積層される。
【0039】
(フレキシブルプリント基板)
図1図2に示すように、レンズユニット1は、フレキシブルプリント基板8を備える。フレキシブルプリント基板8は、第1レンズL1と第2レンズL2の間から径方向外側に延びて略直角に屈曲され、レンズホルダ2の第1収容部4に形成された貫通孔46に通されて、レンズホルダ2の像側Lbへ引き出されている。
【0040】
フレキシブルプリント基板8には、透明導電膜16への給電用の給電配線85および電極84が配置される。また、フレキシブルプリント基板8には、ヒータ9が配置される。すなわち、本形態では、第1レンズL1およびフレキシブルプリント基板8の2か所に、それぞれ、発熱部(ヒータ)が設けられている。
【0041】
図6は、フレキシブルプリント基板8の平面図である。フレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う環状の平面部81と、平面部81から径方向外側に向かって直線状に延びる延伸部82と、延伸部82の周方向の両側において平面部81から径方向外側に突出する突出部83を備える。平面部81には、ヒータ9が配置される。ヒータ9が配置される領域は、例えば、図6において破線で囲んだ領域Bである。領域Bには、通電により発熱する導電材のパターン(図示省略)が形成される。
【0042】
フレキシブルプリント基板8の突出部83には、第1レンズL1に設けられた取り出し電極17A、17Bに電気的に接続される電極84が配置される。また、延伸部82には、電極84およびヒータ9に接続される給電配線85が配置される。より詳細には、突出部83は、延伸部82の周方向の一方側に配置される第1突出部83Aと、延伸部82の周方向の他方側に配置される第2突出部83Bを備える。電極84は、第1突出部83Aに配置される第1電極84Aと、第2突出部83Bに配置される第2電極84Bを備える
。給電配線85は、第1電極84Aと繋がる第1給電配線85Aと、第2電極84Bと繋がる第2給電配線85Bを備える。第1電極84Aと第2電極84Bの一方は正の電極であり、第1電極84Aと第2電極84Bの他方は負の電極である。
【0043】
フレキシブルプリント基板8の平面部81は、延伸部82の径方向内側に配置される繋ぎ部86と、繋ぎ部86の周方向の両側において周方向に延びる円弧部87を備える。円弧部87は、繋ぎ部86を介して延伸部82と接続される。突出部83は、繋ぎ部86の周方向の両側において、円弧部87から径方向外側へ突出する。
【0044】
第1給電配線85Aと第2給電配線85Bは、延伸部82において電気的に絶縁された状態で略平行に延びており、繋ぎ部86において周方向で反対側へ延びている。周方向の一方側へ延びる第1給電配線85Aは、第1突出部83Aに向けて径方向外側へ延びて第1電極84Aに接続される。また、周方向の他方側へ延びた第2給電配線85Bは、第2突出部83Bに向けて径方向外側へ延びて第2電極84Bに接続される。なお、図6では、電極84および給電配線85の配置領域のみを図示しており、電極84および給電配線85の詳細な構成は図示を省略している。電極84は、突出部83に配置されていればよく、その配置領域は図6に示す領域に限定されるものではない。また、給電配線85の配置領域も、図6に示す領域に限定されるものではない。
【0045】
フレキシブルプリント基板8は、ポリイミドなどの樹脂フィルムからなる可撓性基板80Aと、可撓性基板80AにCuなどの導電材によって形成される配線や電極などのパターンを備える。本形態では、可撓性基板80Aには、透明導電膜16に通電するための電極84、透明導電膜16およびヒータ9に給電するための給電配線85、および、ヒータ9として機能する導電材のパターンが形成される。可撓性基板80Aの表面には、導電材のパターンを覆うようにオーバーコートが施される。また、導電材のパターンの一部は、オーバーコートが施されずに露出した状態になっている。例えば、透明導電膜16に電気的に接続するための電極84は、オーバーコートによって覆われていない。
【0046】
フレキシブルプリント基板8は、突出部83と周方向で隣り合う部位を径方向内側に向かって直線状に切り欠いた第1切欠き部88を備える。より詳細には、第1切欠き部88は、第1突出部83Aと延伸部82との間、および、第2突出部83Bと延伸部82との間の2か所に設けられている。第1切欠き部88を設けることにより、第1突出部83Aおよび第2突出部83Bの反りが抑制される。また、電極84と給電配線85が短絡しにくい。
【0047】
また、フレキシブルプリント基板8は、繋ぎ部86の内周縁を径方向外側に向かって直線状に切り欠いた第2切欠き部89を備える。第2切欠き部89は、延伸部82の周方向の略中央に位置しており、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bの間に配置される。第2切欠き部89を設けることにより、繋ぎ部86の反りが抑制されるとともに、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bとが短絡しにくい。
【0048】
本形態では、第1切欠き部88および第2切欠き部89は、接着剤塗布溝として使用される。レンズユニット1を組み立てる際は、第1切欠き部88および第2切欠き部89に配置した接着剤により、フレキシブルプリント基板8が像側フランジ面13に固定される。
【0049】
図7は、像側フランジ面13におけるフレキシブルプリント基板8および取り出し電極17A、17Bの配置を示す説明図である。図7に示すように、フレキシブルプリント基板8の平面部81を像側フランジ面13に固定する際、像側フランジ面13の中心と平面部81の中心とを一致させるように平面部81を位置決めする。平面部81の形状は、レ
ンズユニット1の光学性能に影響を与えるおそれが少ない形状に設定されている。本形態では、平面部81の内径D1は、像側フランジ面13の内径D2よりも所定寸法(例えば、0.4mm)大きい。従って、平面部81の内周縁が像側レンズ面12の内側にはみ出して光学性能を低下させるおそれが少ない。
【0050】
像側フランジ面13に平面部81を固定する際、2つの取り出し電極17A、17Bの周方向の隙間の中央に延伸部82の幅方向の中心に設けられた第2切欠き部89を配置するように、平面部81を周方向に位置決めする。これにより、第1電極84Aと取り出し電極17Aとが重なり、第2電極84Bと取り出し電極17Bとが重なる。従って、腕部16A、16Bおよび取り出し電極17A、17Bを介して、透明導電膜16に給電配線85が電気的に接続される。
【0051】
本形態では、取り出し電極17A、17Bが周方向に延びているため、取り出し電極17Aへの給電位置と取り出し電極17Bへの給電位置とを近づけることができる。従って、取り出し電極17A、17Bとの接続用の第1電極84Aと第2電極84Bを延伸部82の近くに集約して配置できる。これにより、延伸部82と第1電極84Aおよび第2電極84Bとの間に設ける給電配線85を短く、且つ、単純な形状にすることができる。
【0052】
(第1レンズの光軸L方向の位置決め)
図8は、レンズユニット1の部分拡大断面図であり、図4(b)のC-C位置で切断した図である。図8に示すように、レンズホルダ2は、第1収容部4の底面から物体側Laに突出する規制部42を備えており、第1レンズL1の像側フランジ面13は、規制部42の先端に設けられたレンズ座面40に当接する外周領域13Aを備える。また、像側フランジ面13は、外周領域13Aの内周側に位置する内周領域13Bを備えており、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、内周領域13Bに配置される。
【0053】
第1レンズL1を第1収容部4に装着すると、図4(b)、図8に示すように、像側フランジ面13の内周領域13Bに配置された平面部81は、規制部42の内周側に配置される。従って、平面部81は、規制部42と干渉することはなく、第1レンズL1とレンズホルダ2との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。本形態では、第1レンズL1の光軸L方向の位置は、像側フランジ面13の外周領域13Aとレンズ座面40とが直接当接することによって規定される。
【0054】
図8に示すように、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、第2レンズL2の外周縁を固定するカシメ部56よりも径方向外側まで延びている。本形態では、カシメ部56と像側フランジ面13の内周領域13Bとの光軸L方向の隙間Sは、フレキシブルプリント基板8の厚みよりも大きい。従って、平面部81は、カシメ部56と干渉することはなく、第1レンズL1とカシメ部56との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。
【0055】
(ザグリ部)
図2図3図4に示すように、第1収容部4は、規制部42の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部47を備える。図4(b)に示すように、フレキシブルプリント基板8の延伸部82および突出部83は、ザグリ部47に配置される。また、図2に示すように、延伸部82は、径方向外側へ延びる途中で像側Lbに曲げられて、ザグリ部47の底面に開口するスリット状の貫通孔46に挿入される。従って、延伸部82および突出部83は、規制部42と干渉しない。なお、延伸部82は、可撓性基板80Aに固定される補強板80Bを備えていてもよい。補強板80Bを備える場合、補強板80Bは、貫通孔46に配置される。
【0056】
図1図2に示すように、貫通孔46は、第1収容部4の底部を光軸L方向に貫通しており、第2収容部5の筒部51とレンズケース6との隙間に連通している。レンズケース6の内周面は、貫通孔46の径方向外側の縁に沿う形状に凹んでいる。貫通孔46に挿入された延伸部82は、レンズケース6の内周面と筒部51の外周面との隙間を通って、レンズホルダ2の像側Lbに引き出されている。
【0057】
本形態では、延伸部82は貫通孔46に固定されていないが、貫通孔46に接着剤を配置して、接着剤によって延伸部82を貫通孔46に固定することもできる。この場合には、貫通孔46の内周面に凹凸を形成しておくことにより、接着面積を増やすことができ、延伸部82の固定強度を高めることができる。
【0058】
規制部42は、ザグリ部47の径方向外側において周方向に延びる外縁部48を備える。外縁部48は、ザグリ部47の周方向の両側に設けられたレンズ座面40と繋がっている。従って、本形態では、規制部42は全体として環状であり、第1レンズL1の外周縁と全周で対向する。従って、第1レンズL1の外周縁に配置されるOリング7は、全周で規制部42に支持されるので、ザグリ部47の内側にOリング7が落ち込んでシール性が低下することが回避される。
【0059】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のレンズユニット1は、最も物体側Laにある第1レンズL1と、第1レンズL1に対して像側Lbに配置される第2レンズL2と、第1レンズL1を収容する第1収容部4、および、第2レンズL2を収容する第2収容部5を備えるレンズホルダ2と、第1レンズL1の像側レンズ面12に配置される透明導電膜16(導電膜)と、透明導電膜16に給電するフレキシブルプリント基板8と、を有する。第1レンズL1は、像側レンズ面12を囲む像側フランジ面13を備える。フレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う平面部81と、径方向外側へ延びる延伸部82と、平面部81から径方向外側へ突出する突出部83と、を備える。突出部83は、透明導電膜16に電気的に接続される電極84(第1電極84A、第2電極84B)を備える。
【0060】
本形態では、透明導電膜16によって第1レンズL1を直接加温できるため、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、透明導電膜16に給電するフレキシブルプリント基板8では、透明導電膜16との接続用の電極84が、径方向外側に突出する突出部83に配置される。従って、フレキシブルプリント基板8上の電極84(第1電極84A、第2電極84B)と、この電極84に接触する取り出し電極17A、17Bとの接続部分が、第1レンズL1の像側Lbに配置される部品(例えば、第2レンズL2もしくは第2収容部5)と干渉することを回避しやすい。よって、第1レンズL1と他部品(第2レンズL2もしくは第2収容部5)との間にフレキシブルプリント基板8上の電極84や配線が挟まれて潰されるおそれが少なく、潰された電極84や配線の短絡が発生するおそれが少ない。
【0061】
例えば、本形態では、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、第2レンズL2の外周縁を固定するカシメ部56よりも径方向外側まで延びている(図8参照)。従って、平面部81の外周縁よりもさらに径方向外側に配置される突出部83は、その全体がカシメ部56よりも径方向外側に配置されており、カシメ部56と干渉することはない。従って、突出部83に配置される電極84と、この電極84に接触する取り出し電極17A、17Bとの接続部分が、カシメ部56と第1レンズL1との間に挟まれて潰されることはない。よって、フレキシブルプリント基板8上の配線や電極84が潰されて短絡が発生するおそれが少ない。
【0062】
また、本形態では、第1レンズL1を収容する第1収容部4は、像側フランジ面13に
当接するレンズ座面40が設けられた規制部42と、規制部42の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部47と、を備える。フレキシブルプリント基板は、平面部81が規制部42の内周側に配置され、突出部83はザグリ部47に配置されるため、電極84を配置した突出部83は、規制部42と干渉することはない。このように、本形態では、第1収容部4の底部が電極84を配置した突出部83と干渉しない形状になっているので、フレキシブルプリント基板8上の電極84と、この電極84に接触する取り出し電極17A、17Bとの接続部分が、レンズホルダ2と第1レンズL1との間に挟まれるおそれが少ない。よって、フレキシブルプリント基板8上の電極84や配線が潰されて短絡が発生するおそれが少ない。
【0063】
本形態では、フレキシブルプリント基板8は、突出部83と周方向で隣り合う第1切欠き部88を備える。第1切欠き部は、径方向内側に向かって切り欠かれているので、フレキシブルプリント基板8の外周部の反りを抑制できる。また、突出部83に設けられた電極84が他の配線や電極と分離されるので、電極84と他の配線や電極とが短絡するおそれが少ない。
【0064】
本形態では、フレキシブルプリント基板8の突出部83は、延伸部82の周方向の一方側に配置される第1突出部83A、および、延伸部82の周方向の他方側に配置される第2突出部83Bを備える。従って、正負の電極84(第1電極84A、第2電極84B)を延伸部82の両側に集約して配置できるので、正負の電極84への配線を短く、且つ、単純な形状にすることができる。また、第1切欠き部88は、延伸部82と第1突出部83Aとの間、および、延伸部82と第2突出部83Bとの間に配置される。従って、延伸部82の配線と、正負の電極84とを第1切欠き部88によって分離できるので、延伸部82の配線と正負の電極84とが短絡するおそれが少ない。
【0065】
本形態では、フレキシブルプリント基板8の平面部81は環状であり、平面部81の周方向の一部に、延伸部82と繋がる繋ぎ部86が設けられている。フレキシブルプリント基板8は、繋ぎ部86の内周縁を径方向外側へ切り欠いた第2切欠き部89を備えているので、フレキシブルプリント基板8の内周部の反りを抑制できる。また、繋ぎ部86に配置される配線が短絡するおそれが少ない。例えば、繋ぎ部86の周方向の一方側に配置される第1給電配線85Aと、繋ぎ部86の周方向の他方側に配置される第2給電配線85Bとが短絡するおそれが少ない。
【0066】
本形態では、第1切欠き部88および第2切欠き部89は、フレキシブルプリント基板8を第1レンズL1に固定するための接着剤を塗布する接着剤塗布溝として使用される。このように、フレキシブルプリント基板8の溝に接着剤を配置することにより、フレキシブルプリント基板8の固定強度を高めることができる。また、突出部83の近傍を固定できるため、突出部83に設けられた電極84が像側フランジ面13から浮き上がり難い。
【0067】
本形態では、透明導電膜16は、像側フランジ面13に配置される腕部16A、16Bを備えており、腕部16A、16Bは、像側フランジ面13に配置される取り出し電極17A、17Bを介して、電極84と接続される。従って、透明導電膜16とフレキシブルプリント基板8とを接続する際、取り出し電極17A、17B以外の部位が電極84と短絡するおそれが少ない。
【0068】
本形態では、第1レンズL1の像側フランジ面13に黒化膜15が形成されており、腕部16A、16Bおよび取り出し電極17A、17Bは、黒化膜15の上に積層される。従って、フレキシブルプリント基板8と重なる面に黒化膜15が形成されているので、フレキシブルプリント基板8を像側フランジ面13に配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面13を透過する光によるゴーストを黒化膜15によっ
て抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。さらに、像側フランジ面13に光を拡散させるための凹凸(シボ)を形成した場合は、黒化膜15によって凹凸(シボ)が埋まって平滑化される。従って、像側フランジ面13に透明導電膜16の腕部16A、16Bおよび取り出し電極17A、17Bを形成しやすい。
【0069】
本形態では、フレキシブルプリント基板8は、平面部81に配置されるヒータ9を備えているので、透明導電膜16、および、フレキシブルプリント基板8上のヒータ9の両方を発熱させることができる。従って、結露が発生するおそれをより少なくすることができる。
【0070】
(導電膜の変形例)
上記形態は、第1レンズL1を直接加温する導電膜として、ITO膜などの透明導電膜16を第1レンズL1の像側面(像側レンズ面12、像側フランジ面13)に配置する構成であったが、第1レンズL1の像側面に他の導電膜を配置する構成を採用することもできる。図9は、第1レンズL1に配置される金属薄膜18、保護膜19、および黒化膜15の説明図である。図9(a)~図9(d)は、第1レンズL1を像側Lbから見た平面図である。図9(a)は、黒化膜15の平面形状を示し、図9(b)は、金属薄膜18の平面形状を示し、図9(c)は、保護膜19の平面形状を示す。図9(d)は、金属薄膜18、保護膜19、および黒化膜15が像側フランジ面13に積層された状態を示す。
【0071】
金属薄膜18は導電膜であり、第1レンズL1の像側フランジ面13に配置される。金属薄膜18は、例えば、NiFe膜、Ni膜またはCr膜、Ni膜とCr膜を積層した積層膜、等からなる。金属薄膜18は、黒化膜15の上に積層される。図9(b)に示すように、金属薄膜18は、像側フランジ面13の周方向の一部に配置される。本形態では、金属薄膜18は、像側フランジ面13において円弧状に延びており、C字状の平面形状をしている。金属薄膜18の周方向の一方側の先端部18A、および、金属薄膜18の周方向の他方側の先端部18Bは、所定の隙間を開けて周方向に対向している。
【0072】
保護膜19は、水分透過性が低く、金属薄膜18を水分から保護できる。保護膜19は、例えば、SiO2膜などの非導電膜を用いることが好ましい。保護膜19は、金属薄膜18の上に積層される。図9(c)に示すように、保護膜19は、金属薄膜18と同様にC字状の平面形状をしている。保護膜19は、像側フランジ面13の内周縁から外周縁までの径方向の全範囲に拡がっているが、保護膜19が設けられている角度範囲は、金属薄膜18が設けられている角度範囲よりも小さい。従って、図9(d)に示すように、金属薄膜18は、先端部18A、18Bを除く全範囲が保護膜19によって覆われている。
【0073】
レンズユニット1では、金属薄膜18への通電によって像側フランジ面13を発熱させる。金属薄膜18への給電は、保護膜19から露出した先端部18A、18Bを介して行う。フレキシブルプリント基板8の平面部81を像側フランジ面13に配置された保護膜19の上に配置すると、平面部81から突出する突出部83に設けられた電極84は、金属薄膜18の先端部18A、18Bに接触する。従って、電極84を介して金属薄膜18に通電される。
【0074】
このように、図9に示す変形例では、第1レンズL1の像側面に配置される導電膜は金属薄膜18からなり、金属薄膜18は、像側フランジ面13の周方向の一部に配置され、金属薄膜18の周方向の先端部18A、18Bは、フレキシブルプリント基板8に配置される給電用の電極84と接続される。従って、金属薄膜18によって第1レンズの像側フランジ面13を直接加温できるので、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、像側レンズ面12に透明導電膜16を形成する場合と比較して、ゴーストの発生等による光学性能への影響を少なくすることができる。
【0075】
また、図9に示す変形例では、第1レンズL1の像側フランジ面13に形成される黒化膜15を備え、黒化膜15の上に金属薄膜18が積層される。また、金属薄膜18の上に保護膜19が積層され、金属薄膜18は、先端部を除く全範囲が保護膜19によって覆われる。また、平面部81は環状であり、保護膜19の上に平面部81が配置されている。従って、上記形態と同様に、フレキシブルプリント基板8が黒化膜15と重なるので、フレキシブルプリント基板8を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面13を透過する光によるゴーストを黒化膜15によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、保護膜19が設けられているので、金属薄膜18を保護でき、耐環境性を高めることができる。特に、高温高湿状態になると金属薄膜18が酸化してクラックが発生して抵抗値が変化するおそれがあるが、保護膜19で金属薄膜18を保護することにより、クラックの発生を抑制できる。従って、金属薄膜18の抵抗値の変化を抑制でき、発熱量のばらつきを抑制できる。また、フレキシブルプリント基板8を第1レンズに配置する際に、平面部81を固定する固定面として保護膜19を使用することができる。
【0076】
(他の変形例)
(1)上記形態では、フレキシブルプリント基板8の平面部81にヒータ9が配置されているが、ヒータ9を設けず、フレキシブルプリント基板8は、透明導電膜16もしくは金属薄膜18への給電用の給電配線85と電極84のみを備えるものとしてもよい。
【0077】
(2)上記形態では、フレキシブルプリント基板の平面部81は環状であるが、平面部81の周方向の一部が欠けた形状であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…レンズユニット、2…レンズホルダ、3…ホルダ、4…第1収容部、5…第2収容部、6…レンズケース、7…Oリング、8…フレキシブルプリント基板、9…ヒータ、11…物体側レンズ面、12…像側レンズ面、13…像側フランジ面、13A…外周領域、13B…内周領域、14…環状段部、15…黒化膜、16…透明導電膜、16A、16B…腕部、17A、17B…電極、18…金属薄膜、18A、18B…先端部、19…保護膜、40…レンズ座面、41…環状接続部、42…規制部、43…周壁部、44…環状端面、45…カシメ部、46…貫通孔、47…ザグリ部、48…外縁部、50…レンズ座面、51…筒部、52…底部、53…環状底面、54…凹部、55…開口部、56…カシメ部、80A…可撓性基板、80B…補強板、81…平面部、82…延伸部、83…突出部、83A…第1突出部、83B…第2突出部、84…電極、84A…第1電極、84B…第2電極、85…給電配線、85A…第1給電配線、85B…第2給電配線、86…繋ぎ部、87…円弧部、88…第1切欠き部、89…第2切欠き部、L…光軸、La…物体側、Lb…像側、L1…第1レンズ、L2…第3レンズL3…第3レンズ、L4…第4レンズ、L5…第5レンズ、L6…第6レンズ、L7…遮光板、L8…絞り、L9…接合レンズ、S…隙間
図1
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図9