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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】容器蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/04 20060101AFI20240709BHJP
   B65D 53/06 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B65D53/04 100
B65D53/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020122587
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019046
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】上西 涼介
(72)【発明者】
【氏名】市村 克仁
(72)【発明者】
【氏名】細野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英典
(72)【発明者】
【氏名】石井 祐基
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0148426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
B65D 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備し、
該シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを含み、該スカート壁の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段又は周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されており、
該ライナーは硬質層と軟質層とを含み、該硬質層は該シェルの該天面壁の内面に沿って延在する円形主部と該主部の周縁に続く係止部とを有し、該軟質層は該硬質層の該主部の内面に沿って延在し且つ該硬質層の該主部の内面に接着された円形であり、外周縁部には密封部が配設されており、
該ライナーの該硬質層における該係止部は該シェルの該スカート壁に配設されている該係止手段に当接し、
容器の口頸部に装着する際には、該シェルの該天面壁の外面に押圧力が加えられて該ライナーの該軟質層における該密封部が口頸部の上端に押圧されると共に、該シェルの該天面壁における外周縁部が下方及び半径方向内方に変形され、口頸部に装着された状態においては該ライナーの該硬質層における該主部は該シェルの該天面壁の内面に対して非接着状態である容器蓋において、
該ライナーの該硬質層における該主部の外周縁部において該ライナーの該軟質層の該密封部と対応した位置には、肉厚増大部が設けられている、ことを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の下面は半径方向外方に向って下方に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向って漸次増大されている、請求項に記載の容器蓋。
【請求項3】
金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備し、
該シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを含み、該スカート壁の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段又は周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されており、
該ライナーは硬質層と軟質層とを含み、該硬質層は該シェルの該天面壁の内面に沿って延在する円形主部と該主部の周縁に続く係止部とを有し、該軟質層は該硬質層の該主部の内面に沿って延在し且つ該硬質層の該主部の内面に接着された円形であり、外周縁部には密封部が配設されており、
該ライナーの該硬質層における該係止部は該シェルの該スカート壁に配設されている該係止手段に当接し、
容器の口頸部に装着する際には、該シェルの該天面壁の外面に押圧力が加えられて該ライナーの該軟質層における該密封部が口頸部の上端に押圧されると共に、該シェルの該天面壁における外周縁部が下方及び半径方向内方に変形され、口頸部に装着された状態においては該ライナーの該硬質層における該主部は該シェルの該天面壁の内面に対して非接着状態である容器蓋において、
該ライナーの該硬質層における該主部の外周縁部には、肉厚増大部が設けられており、該肉厚増大部の下面は半径方向外方に向って下方に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向って漸次増大されている、ことを特徴とする容器蓋。
【請求項4】
該ライナーの該軟質層における該密封部の下面は水平に延在し、該ライナーの該軟質層における該密封部の厚さは該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の下面の傾斜に起因して局部的に半径方向外方に向って漸次減少する、請求項3に記載の容器蓋。
【請求項5】
該ライナーの該軟質層における該外周縁部の半径方向内側領域には下方に突出する円環形状の突出部が形成されており、該突出部の外径は口頸部の上端部の内径に対応している、請求項4に記載の容器蓋。
【請求項6】
該ライナーの該硬質層における該係止部は該主部の周縁から垂下する、請求項1から5までのいずれかに記載の容器蓋。
【請求項7】
該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の径方向内側端は容器の口頸部の内径よりも外側であって且つ口頸部の外径よりも内側に位置する、請求項1からまでのいずれかに記載の容器蓋。
【請求項8】
該シェルの該スカート壁の上端部には半径方向内側に没入された環状溝が形成され、該環状溝には周方向に間隔をおいて周方向に延びるスリットが形成され、該環状溝における該スリットの上方に位置する領域が半径方向内方に変位されて該係止手段が規定されている、請求項1から7までのいずれかに記載の容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備した容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備した容器蓋の一例が開示されている。かかる容器蓋にあっては、シェルは円形天面壁と天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを含んでいる。スカート壁の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段又は周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されている。ライナーは硬質層と軟質層とを含んでいる。硬質層はシェルの天面壁の内面に沿って延在する円形主部と主部の周縁に続く係止部とを有している。軟質層は硬質層の主部の内面に沿って延在し且つ硬質層の主部の内面に接着された円形である。軟質層の外周縁部には封部が配設されている。ライナーの硬質層における係止部はシェルのスカート壁に配設されている係止手段に当接する。
【0003】
上記のとおりの容器蓋を容器の口頸部に装着する際には、シェルの天面壁の外面に押圧力が加えられてライナーの軟質層における密封部が口頸部の上端に押圧されると共に、シェルの天面壁における外周縁部が下方及び半径方向内方に変形される。容器蓋が口頸部に装着された状態においては、ライナーの硬質層における主部はシェルの天面壁の内面に対して非接着状態となる。容器の口頸部を開封する際には、容器蓋を口頸部に対し上昇せしめてこれから離脱させる。このとき、シェルが口頸部に対して上昇することで、シェルのスカート壁に配設されている係止手段がライナーの硬質層における係止部と係止し、ライナーはシェルと共に口頸部に対し上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-26961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、本発明者等の経験によれば、上述した従来の形態の容器蓋にあっては、容器の口頸部から離脱する際に、ライナーがシェルから分離して容器の口頸部に残留してしまう傾向があることが判明している。これは、シェルが口頸部に対して上昇してスカート壁に配設されている係止手段とライナーの硬質層における係止部とが係止し、係止部に係止手段から上向きの力が付加された際に、係止部を含むライナー全体の外周縁部が上方に幾分弾性変形せしめられ、係止手段が係止部を乗り越えてしまうためである。
【0006】
容器蓋を容器の口頸部に装着するためにシェルの天面壁の外面に加える押圧力を小さくすることや、ライナー全体の外周縁部の厚みを低減させることで、容器蓋が容器の口頸部に装着された際にライナーの軟質層における密封部が容器の口頸部を保持する力を低減させ、これにより、係止手段が係止部と係止した際に、ライナー全体の外周縁部が変形するよりも先にライナーが容器の口頸部から離隔するようにすれば、上記課題を解決することができるとも考えられるが、ライナーの軟質層における密封部が容器の口頸部を保持する力を小さくすると、容器蓋が容器の口頸部に装着された際の口頸部の密封性が損なわれるため好ましくない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、容器の口頸部に装着された際に良好な密封性を得ることができるにも拘らず、容器の口頸部から離脱される際にライナーがシェルから分離して容器の口頸部に残留することが防止される、新規且つ改良された容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ライナーの硬質層における主部の外周縁部に肉厚増大部を設けることで上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を解決することができる容器蓋として、金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備し、
該シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを含み、該スカート壁の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段又は周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されており、
該ライナーは硬質層と軟質層とを含み、該硬質層は該シェルの該天面壁の内面に沿って延在する円形主部と該主部の周縁に続く係止部とを有し、該軟質層は該硬質層の該主部の内面に沿って延在し且つ該硬質層の該主部の内面に接着された円形であり、外周縁部には密封部が配設されており、
該ライナーの該硬質層における該係止部は該シェルの該スカート壁に配設されている該係止手段に当接し、
容器の口頸部に装着する際には、該シェルの該天面壁の外面に押圧力が加えられて該ライナーの該軟質層における該密封部が口頸部の上端に押圧されると共に、該シェルの該天面壁における外周縁部が下方及び半径方向内方に変形され、口頸部に装着された状態においては該ライナーの該硬質層における該主部は該シェルの該天面壁の内面に対して非接着状態である容器蓋において、
該ライナーの該硬質層における該主部の外周縁部において該ライナーの該軟質層の該密封部と対応した位置には、肉厚増大部が設けられている、ことを特徴とする容器蓋が提供される。
また、本発明の第二の局面によれば、上記主たる技術的課題を解決することができる容器蓋として、金属薄板製シェル及び合成樹脂製ライナーを具備し、
該シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを含み、該スカート壁の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段又は周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されており、
該ライナーは硬質層と軟質層とを含み、該硬質層は該シェルの該天面壁の内面に沿って延在する円形主部と該主部の周縁に続く係止部とを有し、該軟質層は該硬質層の該主部の内面に沿って延在し且つ該硬質層の該主部の内面に接着された円形であり、外周縁部には密封部が配設されており、
該ライナーの該硬質層における該係止部は該シェルの該スカート壁に配設されている該係止手段に当接し、
容器の口頸部に装着する際には、該シェルの該天面壁の外面に押圧力が加えられて該ライナーの該軟質層における該密封部が口頸部の上端に押圧されると共に、該シェルの該天面壁における外周縁部が下方及び半径方向内方に変形され、口頸部に装着された状態においては該ライナーの該硬質層における該主部は該シェルの該天面壁の内面に対して非接着状態である容器蓋において、
該ライナーの該硬質層における該主部の外周縁部には、肉厚増大部が設けられており、該肉厚増大部の下面は半径方向外方に向って下方に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向って漸次増大されている、ことを特徴とする容器蓋が提供される。
【0010】
本発明の第一の局面にあっては、該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の下面は半径方向外方に向って下方に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向って漸次増大されているのが好ましい。本発明の第二の局面にあっては、該ライナーの該軟質層における該密封部の下面は水平に延在し、該ライナーの該軟質層における該密封部の厚さは該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の下面の傾斜に起因して局部的に半径方向外方に向って漸次減少するのが好ましい。この場合には、該ライナーの該軟質層における該外周縁部の半径方向内側領域には下方に突出する円環形状の突出部が形成されており、該突出部の外径は口頸部の上端部の内径に対応しているのがよい。本発明の第一の局面及び第二の局面にあっては、該ライナーの該硬質層における該係止部は該主部の周縁から垂下するのが好ましい。また、該ライナーの該硬質層における該肉厚増大部の径方向内側端は容器の口頸部の内径よりも外側であって且つ口頸部の外径よりも内側に位置するのがよい。好適には、該シェルの該スカート壁の上端部には半径方向内側に没入された環状溝が形成され、該環状溝には周方向に間隔をおいて周方向に延びるスリットが形成され、該環状溝における該スリットの上方に位置する領域が半径方向内方に変位されて該係止手段が規定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の容器蓋にあっては、ライナーの硬質層における主部の外周縁部には肉厚増大部が設けられており、これによりライナー全体の外周縁部の剛性は増大せしめられている。それ故に、本発明の容器蓋にあっては、(1)容器の口頸部に装着されるためにシェルの天面壁の外面に加えられる押圧力は効果的に容器の口頸部に伝達され、容器の口頸部に装着された際に良好な密封性を得ることができる。また、(2)容器の口頸部から離脱させるためにシェルを口頸部に対して上昇させてスカート壁に配設されている係止手段とライナーの硬質層における係止部とが係止した際には、ライナー全体の外周縁部が上方に反って変形することが防止され、これにより係止手段が係止部を弾性的に乗り越えてしまうことが回避され、容器の口頸部から離脱される際にライナーがシェルから分離して容器の口頸部に残留することが防止される。つまり、本発明の容器蓋にあっては、容器の口頸部に装着された際に良好な密封性を得ることができるにも拘わらず、容器の口頸部から離脱される際にライナーがシェルから分離して容器の口頸部に残留することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を、一部を断面で示す正面図。
図2図1のX部を拡大して示す図。
図3図1に示す容器蓋が容器の口頸部に被嵌された状態を、一部を断面で示す正面図。
図4図1に示す容器蓋が容器の口頸部に装着された状態を、一部を断面で示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態について、更に詳述する。
【0014】
本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を図示している図1を参照して説明すると、全体を番号2で示す容器蓋は、金属薄板製シェル4及び合成樹脂製ライナー6を具備している。シェル4は金属薄板に適宜の機械加工を施すことによって形成され、円形天面壁8とこの天面壁8の周縁から垂下する円筒形スカート壁10とを含んでいる。天面壁8とスカート壁10との境界領域は横断面において弧状である。スカート壁10の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段12が配設されている。図示の実施形態においては、スカート壁10の上端部には周方向全体に渡って半径方向内側に没入された環状溝14が形成され、環状溝14には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット16が形成され、環状溝14におけるスリット16の上方に位置する領域が半径方向内方に変位されて係止手段12が規定されている。スカート壁10の上端部における環状溝14よりも下方の部位には、周方向長さが比較的長い複数個の第一の凹部18及び周方向長さが比較的短い複数個の第二の凹部20が夫々周方向に間隔をおいて交互に配設されている。全ての第一の凹部18及び第二の凹部20は、スカート壁10が半径方向内方に局所的に変位されることで規定されている。第二の凹部20は第一の凹部18よりも上下方向に長く、夫々の上端には周方向に延びるスリット22が形成されている。スカート壁10の下端部には周方向破断可能ライン24が配設されていて、スカート壁10は周方向破断可能ライン24よりも上方の主部26と周方向破断可能ライン24よりも下方のテンパーエビデント裾部28とに区画されている。図示の実施形態における周方向破断可能ライン24は、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の裾部スリット30とかかる裾部スリット30間に残留せしめられた複数個の橋絡部32とから構成されており、タンパーエビデント裾部28は複数個の橋絡部32を介して主部26に接続されている。
【0015】
ライナー6はポリプロピレン又は硬質ポリエチレン製の硬質層34と熱可撓性エラストマー性の軟質層36とを含んでいる。硬質層34はシェル4の天面壁8の内面に沿って延在する円形主部38を含んでいる。主部38の上面は実質上水平である。主部38の外周縁部40を除いた部分の下面は、径方向外方に向かって水平に延在した後に上方に直線状に傾斜し、次いで再び水平に延在している。主部38の外周縁部40を除いた部分の厚さは0.4乃至0.7mmである。本発明に従って構成された容器蓋にあっては、ライナー6の硬質層34における主部38の外周縁部40には、肉厚増大部42が設けられていることが重要である。図示の実施形態においては、肉厚増大部42は円環形状であって、肉厚増大部42の下面は半径方向外方に向かって下方に直線状に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向かって漸次増大されている。肉厚増大部42の下面の傾斜角度αは5乃至25°であって(図2を参照されたい)、肉厚増大部42の最大厚さは0.6乃至0.9mmであるのが好ましい。肉厚増大部42は軟質層36の後述する密封部と対応した位置に設けられている。また、肉厚増大部42の径方向内側端は後述する容器の口頸部の内径よりも外側であって且つ口頸部の外径よりも内側に位置する(図3を参照されたい)。所望ならば、周方向に延在する肉厚増大部を周方向に間隔をおいて複数設けてもよい。図示の実施形態においては、上述した主部38は、硬質層34をシェル4の内面に形成した際にはシェル4の天面壁8の内面に対して接着状態であるが、口頸部に装着された状態においてはシェル4の天面壁8の内面に対して非接着状態となる。所望ならば、主部38は、硬質層34をシェル4の内面に形成した時点からシェル4の天面壁8の内面に対して非接着状態であってもよい。硬質層34は主部38の周縁に続く係止部44も有しており、係止部44はシェル4のスカート壁10に配設されている係止手段12に当接している。図示の実施形態においては、係止部44は主部38の周縁から垂下しており、周方向に連続して延在する環状である。所望ならば、周方向に延在する係止部が周方向に間隔をおいて複数配設されるようにしてもよい。係止部44が主部38の周縁から垂下している場合には、肉厚増大部42の下面の径方向外側端が係止部44の下端(さらに詳しくは内周面の下端)に接続されていてもよい。また、係止部44は必ずしも主部38の周縁から垂下している形態でなくてもよく、主部38の周縁から半径方向外方に実質上水平に延出する形態であってもよい。
【0016】
軟質層36は硬質層34の主部38の内面に沿って延在し且つ硬質層34の主部38の内面に接着された円形であり、外周縁部46を除いた部分の下面は水平である。かかる部分の上面は、硬質層34の主部38の下面と対応し、径方向外方に向かって水平に延在した後に上方に直線状に傾斜し、次いで再び水平に延在している。軟質層36の外周縁部46には密封部48が配設されている。図示の実施形態においては、密封部48の下面は水平に延在し、ライナー6の軟質層36における密封部48の厚さはライナー6の硬質層34における肉厚増大部42の下面の傾斜に起因して局部的に半径方向外方に向かって漸次減少している。密封部48の最小厚さは0.8乃至1.2mmであるのが好ましい。軟質層36の外周縁部46の半径方向内側領域には下方に突出する円環形状の突出部50が形成されており、突出部50の外径は後述する容器の口頸部の上端部の内径に対応している(図3を参照されたい)。上述したライナー6の成形方法については、例えば上記特許文献1を参照されたい。
【0017】
図3には、容器蓋2が適用される容器の口頸部52が二点鎖線で図示されている。クロム酸処理鋼薄板、ブリキ薄板或いはアルミニウム基合金薄板の如き適宜の金属薄板から形成することができる、それ自体は周知の形態である容器の口頸部52は、全体として略円筒形状であり、上方に向かって外径が漸次減少する上端部には外巻カール54が形成されている。口頸部52の主部外周面には雄螺条56とかかる雄螺条56の下方に位置する係止あご部58とが形成されている。
【0018】
容器の口頸部52に容器蓋2を装着して口頸部52を密封する際には、口頸部52に容器蓋2を被嵌した状態でシェル4の天面壁8の外面に押圧力を加えてライナー6の軟質層36における密封部48を口頸部52の上端に押圧すると共に、シェル4の天面壁8における外周縁部を下方及び半径方向内方に変形、即ち図4に図示するとおりの形状に変形する。このとき、本発明の容器蓋にあっては、ライナー6の硬質層34における主部38の外周縁部40には肉厚増大部42が設けられており、これによりライナー6全体の外周縁部の剛性は増大せしめられていることに起因して、容器の口頸部52に装着されるためにシェル4の天面壁8の外面に加えられる押圧力は効果的に外巻きカール54に伝達され、容器の口頸部52に装着された際に良好な密封性を得ることができる。そして又、容器の口頸部52に形成されている雄螺条56に沿ってシェル4のスカート壁10の主部26を変形して雌螺条60を形成し、シェル4のスカート壁10におけるタンパーエビデント裾部28の下端部を半径方向内方に変形して容器の口頸部52における係止あご部58に係止する。上述したとおり、容器蓋2が容器の口頸部52に装着された状態においては、ライナー6の硬質層34の主部38はシェル4の天面壁8に対して非接着状態となっている。
【0019】
容器の内容物を消費するために口頸部52を開封する際には、シェル4のスカート壁10に指を掛けて容器蓋2を開方向、即ち図4において上方から見て反時計方向に回転する。この回転の初期段階においては、ライナー6、更に詳しくはその硬質層34がシェル4の天面壁8の内面に対して非接着状態でありライナー6に対してシェル4のみ回転するため、過剰の力を必要とすることなく容易に口頸部52に対して容器蓋2を回転せしめることができる。口頸部52に対してシェル4が回転せしめられると、スカート壁10の主部26に形成されている雌螺条64が口頸部52の雄螺条56に沿って移動する故に容器蓋2は口頸部52に対して上方に移動される。この際には、シェル4が口頸部52に対して上方に移動されると共に、ライナー6も、硬質層34における係止部44がシェル4のスカート壁10に配設されている係止手段12によって係止せしめられて上方に移動されることとなる。このとき、本発明の容器蓋にあっては、ライナー6の硬質層34における主部38の外周縁部40には肉厚増大部42が設けられており、これによりライナー6全体の外周縁部の剛性は増大せしめられていることに起因して、硬質層34における係止部44がシェル4のスカート壁10に配設されている係止手段12によって係止せしめられた際に、ライナー6の外周縁部40が上方に反って変形することが防止される。これにより係止手段12が係止部44を弾性的に乗り越えてしまうことは回避され、ライナー6がシェル4から分離して容器の口頸部52に残留することが防止される。
【0020】
容器蓋2が口頸部52に対して上方に移動される際、スカート壁10のタンパーエビデント裾部28はその下端部が口頸部52の係止あご部58に形成されている故に上方への移動が阻止され、スカート壁10に形成されている周方向破断可能ライン24における橋絡部32に応力が生成されて橋絡部32が破断される。しかる後においては、タンパーエビデント裾部28を残して容器蓋2は回転と共に上方に移動して口頸部52から離脱され、口頸部52が開封される。
【0021】
従って、本発明の容器蓋にあっては、ライナー6の硬質層34における主部38の外周縁部40には肉厚増大部42が設けられており、これによりライナー6全体の外周縁部の剛性は増大せしめられていることから、容器の口頸部52に装着された際に良好な密封性を得ることができるにも拘わらず、容器の口頸部52から離脱される際にライナー6がシェル4から分離して容器の口頸部52に残留することが防止される。
【0022】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。例えば、図示の実施形態においては、ライナー6の硬質層34における肉厚増大部42の下面は半径方向外方に向って下方に傾斜されており、肉厚は半径方向外方に向って漸次増大されていたが、肉厚増大部はライナー6の硬質層34における主部38の外周縁部40において局所的(つまりステップ状)に増大されていてもよい。また、図示の実施形態においては、スカート壁10の上端部には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の弧状係止手段12が配設されていたが、これに替えて、スカート壁10の上端部には周方向に連続して延在する環状係止手段が配設されていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
2:容器蓋
4:シェル
6:ライナー
8:天面壁
10:スカート壁
12:係止手段
34:硬質層
36:軟質層
40:(硬質層の)外周縁部
42:肉厚増大部
44:係止部
46:(軟質層の)外周縁部
48:密封部
50:突出部
52:容器の口頸部
図1
図2
図3
図4