(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/27 20180101AFI20240709BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240709BHJP
【FI】
F21S41/27
F21W102:155
(21)【出願番号】P 2020123529
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉原 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 将太
(72)【発明者】
【氏名】星野 真也
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043663(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/022848(WO,A1)
【文献】特開平07-114809(JP,A)
【文献】特開2017-174726(JP,A)
【文献】特開平06-003526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/27
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源と隣接して配置されて、前記第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、前記第1の光源と対向する側に位置する第1の入射部と、前記第1の入射部とは反対側に位置する第1の出射部とを含む第1のレンズ体と、前記第2の光源と対向する側に位置する第2の入射部と、前記第2の入射部とは反対側に位置する第2の出射部とを含む第2のレンズ体とを有し、
前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体との互いに対向する境界面を挟んで、前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが光透過性の接着剤からなる中間層を介して接合された構造を有し、
且つ、前記第1のレンズ体の屈折率よりも前記中間層の屈折率が小さく、前記第2のレンズ体の屈折率が前記中間層の屈折率以下であり、
前記第1の入射部から前記第1のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記境界面で反射した第1の光が、前記第1の出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第2の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第2の光のうち、前記境界面を透過した第2の光が、前記第1の出射部から第1のレンズ体の外部へと出射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1のレンズ体がポリカーボネート樹脂からなり、前記第2のレンズ体がアクリル樹脂(PMMA)からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記投影レンズは、前記第1の出射部及び前記第2の出射部と対向する側に位置する第3のレンズ体を有し、
前記第3のレンズ体は、前記第1の出射部及び前記第2の出射部から出射された第1の光及び第2の光を前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向において集光させるレンズ面を有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第3のレンズ体は、前記第1の出射部及び前記第2の出射部との間に空気層を設けた状態で配置されていることを特徴とする請求項
3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1の光源及び前記第2の光源は、同じ基板の同一面上に設けられていることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記投影レンズにより投影される第1の光が、上端に前記境界面の先端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成することを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、光源と、光源から出射された光を車両の進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両の進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えている。
【0003】
このような車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、シェードの前端によって規定される光源像を投影レンズにより反転投影することで、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成している。
【0004】
また、車両用灯具では、車両の進行方向に向けて光を出射する別の光源をシェードの下方に配置し、走行用ビーム(ハイビーム)として、この光源が出射する光を投影レンズにより投影することで、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成している。
【0005】
ところで、下記特許文献1に記載の車両用灯具では、上述したリフレクタ及びシェードの代わりに、上下2つの光源に対応して設けられた2つの導光部材を用いて、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の車両用灯具では、2つの導光部材の間に空気層(エアギャップ)が存在するため、その間で発生するフレネル損失によって、光源から出射された光の利用効率が低下することになる。また、2つの導光部材の位置精度(特にエアギャップの間隔)のバラツキによって、配光パターンが変化してしまうおそれがある。さらに、下側の導光部材の上面と空気層との間で光が全反射されることによって、ハイビーム用配光パターンの下部側に欠け(暗部)が生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な配光パターンを得ることを可能とした車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源と隣接して配置されて、前記第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、前記第1の光源と対向する側に位置する第1の入射部と、前記第1の入射部とは反対側に位置する第1の出射部とを含む第1のレンズ体と、前記第2の光源と対向する側に位置する第2の入射部と、前記第2の入射部とは反対側に位置する第2の出射部とを含む第2のレンズ体とを有し、
前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体との互いに対向する境界面を挟んで、前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが光透過性の接着剤からなる中間層を介して接合された構造を有し、
且つ、前記第1のレンズ体の屈折率よりも前記中間層の屈折率が小さく、前記第2のレンズ体の屈折率が前記中間層の屈折率以下であり、
前記第1の入射部から前記第1のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記境界面で反射した第1の光が、前記第1の出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第2の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第2の光のうち、前記境界面を透過した第2の光が、前記第1の出射部から第1のレンズ体の外部へと出射されることを特徴とする車両用灯具。
〔2〕 前記第1のレンズ体がポリカーボネート樹脂からなり、前記第2のレンズ体がアクリル樹脂(PMMA)からなることを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔3〕 前記投影レンズは、前記第1の出射部及び前記第2の出射部と対向する側に位置する第3のレンズ体を有し、
前記第3のレンズ体は、前記第1の出射部及び前記第2の出射部から出射された第1の光及び第2の光を前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向において集光させるレンズ面を有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用灯具。
〔4〕 前記第3のレンズ体は、前記第1の出射部及び前記第2の出射部との間に空気層を設けた状態で配置されていることを特徴とする前記〔3〕に記載の車両用灯具。
〔5〕 前記第1の光源及び前記第2の光源は、同じ基板の同一面上に設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔6〕 前記投影レンズにより投影される第1の光が、上端に前記境界面の先端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成することを特徴とする前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、良好な配光パターンを得ることを可能とした車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具の構成を示す断面図である。
【
図2】第1の光により形成されるロービーム用配光パターン及び第2の光により形成されるハイビーム用配光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両用灯具の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用灯具の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1及び
図2に示す車両用灯具1について説明する。なお、
図1は、車両用灯具1の構成を示す断面図である。
【0015】
本実施形態の車両用灯具1は、車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものであり、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するすれ違い用ビーム(ロービーム)と、ロービーム用配光パターンの上方側にハイビーム用配光パターンを形成する走行用ビーム(ハイビーム)とを、それぞれ車両の前方(+X軸方向)に向けて切り替え自在に照射するものである。
【0016】
具体的に、この車両用灯具1は、
図1に示すように、灯体(図示せず。)の内側に、第1の光L1を出射する第1の光源2と、第2の光L2を出射する第2の光源3と、第1の光L1及び第2の光L2を投影する投影レンズ4とを概略備えている。
【0017】
なお、灯体は、前面が開口したハウジングと、このハウジングの開口を覆う透明なレンズカバーとにより構成される。また、灯体の形状については、車両のデザイン等に合わせて、適宜変更することが可能である。
【0018】
第1の光源2及び第2の光源3は、例えば白色光を発する発光ダイオード(LED)からなる。また、LEDには、車両照明用の高出力(高輝度)タイプのもの(例えばSMD LEDなど。)を使用することができる。なお、第1の光源2及び第2の光源3については、上述したLED以外にも、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。
【0019】
本実施形態の車両用灯具1では、第1の光源2と第2の光源3とが互いに隣接した状態で、この車両用灯具1の鉛直方向(上下方向)に並んで配置されている。このうち、第1の光源2を構成する1つのLEDが上部側に配置され、第2の光源3を構成する1つのLEDが下部側に配置されている。
【0020】
第1の光源2及び第2の光源3は、それぞれのLEDを駆動する駆動回路が設けられた回路基板5の一面(本実施形態では正面)側に実装されている。これにより、第1の光源2と第2の光源3とは、前方(+X軸側)に向けて第1の光L1と第2の光L2とを放射状に出射する。すなわち、これら第1の光源2及び第2の光源3は、同じ回路基板5の同一面上に設けられて、互いに同一方向に向けて第1の光L1及び第2の光L2を放射状に出射する構成となっている。
【0021】
また、回路基板5の他面(本実施形態では背面)側には、第1の光源2及び第2の光源3が発する熱を放熱させるヒートシンク6が取り付けられている。ヒートシンク6は、熱伝導性の高い例えばアルミニウムなどの金属製の押出成形体からなる。ヒートシンク6は、回路基板5と接触するベース部6aと、回路基板5からベース部6aに伝わる熱の放熱性を高める複数のフィン部6bとを有している。
【0022】
なお、本実施形態では、上述した第1の光源2及び第2の光源3を構成するLEDと、LEDを駆動する駆動回路とが回路基板5上に実装された構成となっているが、LEDが実装された実装基板と、LEDを駆動する駆動回路が設けられた回路基板とを別々に配置し、実装基板と回路基板との間をハーネスと呼ばれる配線コードを介して電気的に接続し、LEDが発する熱から駆動回路を保護する構成としてもよい。
【0023】
投影レンズ4は、第1の光源2と対向する側に位置する第1の入射部7と、第1の入射部7とは反対側に位置する第1の出射部8とを含む第1のレンズ体9と、第2の光源3と対向する側に位置する第2の入射部10と、第2の入射部10とは反対側に位置する第2の出射部11とを含む第2のレンズ体12と、第1の出射部8及び第2の出射部11と対向する側に位置する第3のレンズ体13とを有している。
【0024】
投影レンズ4では、第1のレンズ体9の屈折率よりも第2のレンズ体12の屈折率が小さくなっている。本実施形態では、例えば、第1のレンズ体9がポリカーボネート樹脂(PC)からなり、第2のレンズ体12がアクリル樹脂(PMMA)からなる。
【0025】
なお、第1のレンズ体9と第2のレンズ体12との屈折率が異なる材質の組み合わせについては、このような組み合わせに必ずしも限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。また、上述した光透過性を有する樹脂に限らず、ガラスを用いることも可能である。
【0026】
投影レンズ4は、第1のレンズ体9と第2のレンズ体12との上下方向において互いに対向する境界面Tを挟んで、第1のレンズ体9と第2のレンズ体12とが中間層Mを介して突き合わされた構造を有している。
【0027】
中間層Mは、第1のレンズ体9と第2のレンズ体12とを接合する光透過性の接着材からなる。また、中間層Mの厚みは、第1のレンズ体9と第2のレンズ体12とを接合するのに十分な厚みであればよい。投影レンズ4では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層Mの屈折率が小さくなっている。
【0028】
また、第2のレンズ体12の屈折率は、中間層Mの屈折率以下となっている。すなわち、この第2のレンズ体12の屈折率は、中間層Mの屈折率と同じか、中間層Mの屈折率の方が第2のレンズ体12の屈折率よりも大きいものとなっている。
【0029】
一方、第1のレンズ体9と中間層Mとの屈折率の差(臨界角)を大きくする場合は、第2のレンズ体12の屈折率に近い値の中間層Mを用いることが好ましい。中間層Mには、公知の接着材の中から、このような条件を満足する接着材を適宜選択して用いることが可能である。
【0030】
第1のレンズ体9と第2のレンズ体12とは、上下方向において互いに対向する境界面Tを突き合わせることによって、この境界面Tの間に空気層を介在させることなく、接着材となる中間層Mを介して接合されている。また、境界面Tの先端は、この車両用灯具1の水平方向(左右方向)に延在しながら、上述したロービーム用配光パターンのカットオフラインを規定している。
【0031】
第1の入射部7は、第1の光源2と対向する位置に、第1の光源2から放射状に出射された第1の光L1が入射する第1の入射面7aを有している。第1の入射面7aは、平面により構成されている。第1の入射面7a(第1の入射部7)から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、第1のレンズ体9の前方にある第1の出射部8に向かって導光される。このうち、境界面Tに入射した第1の光L1は、この境界面Tで反射された後に、第1の出射部8に向かって導光される。
【0032】
すなわち、境界面Tでは、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層Mの屈折率を小さくしているため、この境界面Tに入射した第1の光L1を第1の出射部8に向けて全反射することができる。
【0033】
第2の入射部10は、第2の光源3と対向する位置に、第2の光源3から放射状に出射された第2の光L2が入射する第2の入射面10aを有している。第2の入射面10aは、平面により構成されている。第2の入射面10a(第2の入射部10)から第2のレンズ体12の内部へと入射した第2の光L2は、第2のレンズ体12の前方にある第2の出射部11に向かって導光される。このうち、境界面Tに入射した第2の光L2は、この境界面Tを透過して、第1のレンズ体9の内部へと入射する。第1のレンズ体9の内部に入射した第2の光L2は、第1の出射部8に向かって導光される。
【0034】
すなわち、境界面Tでは、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層M及び第2のレンズ体12の屈折率を小さくしているため、この境界面Tに入射した第2の光L2を第2の出射部11に向けて透過することができる。
【0035】
第1の出射部8は、第1のレンズ体9の正面側に第1の出射面8aを有している。第2の出射部11は、第2のレンズ体12の正面側に第2の出射面11aを有している。第1の出射面8a及び第2の出射面11aは、互いに連続した平面により構成されている。
【0036】
第1の出射部8では、第1のレンズ体9の内部で導光される第1の光L1及び第2の光L2を第1の出射面8aから第1のレンズ体9の外部へと出射する。第2の出射部11では、第2のレンズ体12の内部で導光される第2の光L2を第2の出射面11aから第2のレンズ体12の外部へと出射する。
【0037】
なお、第1のレンズ体9及び第2のレンズ体12を構成する面のうち、図示や説明を省略したその他の面については、第1のレンズ体9及び第2のレンズ体12の内部を通過する第1の光L1及び第2の光L2に悪影響を与えない範囲で自由に設計(例えば、遮蔽するなど。)することが可能である。
【0038】
第3のレンズ体13は、第1の出射部8及び第2の出射部11との間に空気層Kを設けた状態で配置されている。第3のレンズ体13は、その背面側に第1の光L1及び第2の光L2が入射する第3の入射面13aと、その正面側に第1の光L1及び第2の光L2が出射する第3の出射面13bとを有している。
【0039】
第3の入射面13aは、平面により構成されている。第3の出射面13bは、車両用灯具1の鉛直方向(第1の光源2及び第2の光源3が並ぶ方向)及び水平方向(境界面Tが延在する方向)において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させる球面状又は非球面状の凸レンズ面により構成されている。また、この凸レンズ面(第3の出射面13b)の焦点は、境界面Tの先端又はその近傍に設定されている。
【0040】
第3のレンズ体13では、第3の出射面13bから出射された第1の光L1及び第2の光L2が集光された後に、車両用灯具1の水平方向及び鉛直方向に拡散されることによって、第1の光L1及び第2の光L2が第3のレンズ体13(投影レンズ4)の前方に向けて拡大投影される。
【0041】
なお、第3のレンズ体13については、上述した第3の入射面13aが平面により構成されたものに限らず、第3の入射面13aが凹レンズ面により構成されたものであってよい。
【0042】
また、第3のレンズ体13を構成する面のうち、図示や説明を省略したその他の面については、第3のレンズ体13の内部を通過する第1の光L1及び第2の光L2に悪影響を与えない範囲で自由に設計(例えば、遮蔽するなど。)することが可能である。
【0043】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、第1の光源2が出射する第1の光L1を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第1の光L1が、第3の出射面13bの焦点近傍に形成される光源像を反転投影して、上端に境界面Tの先端によって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)を形成する。
【0044】
一方、本実施形態の車両用灯具1では、走行用ビーム(ハイビーム)として、第1の光源2及び第2の光源3が出射する第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第2の光Lが、ロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)よりも上方に位置する第2の配光パターンを形成する。ハイビーム用配光パターンは、この第2の配光パターンと、第1の光L1により形成されるロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)との重ね合わせによって形成される。
【0045】
第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1のうち、第1の出射部8に向かって導光される第1の光L11は、この第1の出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第1の光L11は、空気層Kを介して第3の入射面13aから第3のレンズ体13の内部に入射し、第3の出射面13bから第3のレンズ体13の外部へと出射される。これにより、第1の光L11は、
図2に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCL付近の配光パターンを形成する。
【0046】
一方、境界面Tに入射した第1の光L12は、この境界面Tで反射された後に、第1の出射部8に向かって導光され、この第1の出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第1の光L12は、空気層Kを介して第3の入射面13aから第3のレンズ体13の内部に入射し、第3の出射面13bから第3のレンズ体13の外部へと出射される。これにより、第1の光L12は、
図2に示すロービーム用配光パターンLPにおけるH-H線より下方の配光パターンを形成する。
【0047】
第2のレンズ体12の内部へと入射した第2の光L2のうち、第2の出射部11に向かって導光される第2の光L21は、この第2の出射部11から第2のレンズ体12の外部へと出射される。さらに、第2のレンズ体12の外部へと出射された第2の光L21は、空気層Kを介して第3の入射面13aから第3のレンズ体13の内部に入射し、第3の出射面13bから第3のレンズ体13の外部へと出射される。これにより、第2の光L21は、
図2に示すハイビーム用配光パターンHPにおけるH-H線より上方の配光パターンを形成する。
【0048】
一方、境界面Tに入射した第2の光L22は、この境界面Tを透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、第1の出射部8に向かって導光され、この第1の出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第2の光L22は、空気層Kを介して第3の入射面13aから第3のレンズ体13の内部に入射し、第3の出射面13bから第3のレンズ体13の外部へと出射される。これにより、第2の光L22は、
図2に示すハイビーム用配光パターンHPにおける下方の配光パターンを形成する。
【0049】
また、境界面Tに入射した第2の光L22は、この境界面Tを透過したときに、境界面Tで反射された第1の光L12の位置や光線角度と近づけられる。これにより、第2の光L22は、ロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLよりも下方に出射されるため、
図2に示すハイビーム用配光パターンHPの下部側とロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLとを重ねることが可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1では、上述した第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により投影することによって、良好なロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターンを得ることが可能である。
【0051】
また、本実施形態の車両用灯具1では、上述した投影レンズ4を構成する第1のレンズ体9と第2のレンズ体12とが、中間層Mを挟んで互いの境界面Tを突き合わせることによって、この境界面Tの間に空気層を介在させることなく、中間層Mを介して接合されている。
【0052】
これにより、本実施形態の車両用灯具1では、境界面Tの間でフレネル損失が発生することを防ぐことができ、第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明を適用した車両用灯具は、上述した車両用前照灯(ヘッドランプ)に対して好適に用いられるものの、本発明が適用される車両用灯具については、上述したフロント側の車両用灯具に限らず、例えばリアコンビネーションランプなどのリア側の車両用灯具に本発明を適用することも可能である。
【0054】
すなわち、本発明は、第1の光を出射する第1の光源と、第1の光源と隣接して配置されて、第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、第1の光及び第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備える車両用灯具に対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【0055】
また、第1の光源及び第2の光源については、上述したLEDに限らず、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることも可能である。また、第1の光及び第2の光の色についても、上述した白色光に限らず、赤色光や橙色光など、その用途に応じて適宜変更することが可能である。さらに、第1の光源と第2の光源とが互いに異なる色の第1の光と第2の光とを選択的に出射する構成とすることも可能である。
【0056】
また、上記車両用灯具1では、上述した第1の光源2及び第2の光源3が並ぶ方向が車両用灯具1の鉛直方向となり、境界面Tが延在する方向が車両用灯具1の水平方向となっているが、第1の光源及び第2の光源が並ぶ方向が車両用灯具の水平方向となり、境界面Tが延在する方向が車両用灯具の鉛直方向となる車両用灯具に対して本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…車両用灯具 2…第1の光源 3…第2の光源 4…投影レンズ 5…回路基板 6…ヒートシンク 7…第1の入射部 8…第1の出射部 9…第1のレンズ体 10…第2の入射部 11…第2の出射部 12…第2のレンズ体 13…第3のレンズ体 T…境界面 M…中間層 L1…第1の光 L2…第2の光