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特許7517896複合梁における異種部材の接合方法と接合構造
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  • 特許-複合梁における異種部材の接合方法と接合構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】複合梁における異種部材の接合方法と接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20240709BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240709BHJP
   E04C 3/293 20060101ALI20240709BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
E04B1/30 H
E04B1/58 503P
E04C3/293
E04C5/18 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020131627
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028308
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑 素彦
(72)【発明者】
【氏名】和泉 信之
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】川又 哲也
(72)【発明者】
【氏名】得能 将紀
(72)【発明者】
【氏名】石塚 圭介
(72)【発明者】
【氏名】仁科 智貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 英一郎
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084052(JP,A)
【文献】特開2010-112009(JP,A)
【文献】特開2001-173155(JP,A)
【文献】特開2016-089550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04C 3/293
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合梁を構成する梁中央側の鉄骨部材と梁端部側の鉄筋コンクリート部材との異種部材の接合方法において、
前記鉄骨部材と前記鉄筋コンクリート部材との接合部が前記鉄骨部材の境界プレートを介して一体化されており、
前記鉄筋コンクリート部材における主筋が、前記境界プレートに設けた貫通孔に前記主筋の端部を貫通させて、その端部に有するネジ部を定着用のナットで締結させており、
前記鉄筋コンクリート部材の中央部近傍位置において前記複合梁の長さ方向に沿って軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋を複数本配設すると共に、前記軸方向補強鉄筋の端部を前記境界プレートに設けた接続用鋼板に接続させて配設し、
前記鉄骨部材のウェブに接続させて補強リブを配設すると共に、前記補強リブの端部を前記境界プレートに接続させて配設し、かつ前記補強リブと前記接続用鋼板とを同レベルの位置に配設すること
を特徴とする複合梁における異種部材の接合方法。
【請求項2】
前記軸方向補強鉄筋と前記接続用鋼板との接続は、直接溶接又はカプラーを介して接続すること
を特徴とする請求項1に記載の複合梁における異種部材の接合方法。
【請求項3】
複合梁を構成する梁中央側の鉄骨部材と梁端部側の鉄筋コンクリート部材との異種部材の接合構造において、
前記鉄骨部材と前記鉄筋コンクリート部材との接合部が前記鉄骨部材の境界プレートを介して一体化されており、
前記鉄筋コンクリート部材における主筋が、前記境界プレートに設けた貫通孔に前記主筋の端部を貫通させて、その端部に有するネジ部を定着用のナットで締結させており、
前記鉄筋コンクリート部材の中央部近傍位置において前記複合梁の長さ方向に沿って軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋を複数本配設すると共に、前記軸方向補強鉄筋の端部を前記境界プレートに設けた接続用鋼板に接続させて配設し、
前記鉄骨部材のウェブに接続させて補強リブを配設すると共に、前記補強リブの端部を前記境界プレートに接続させて配設し、かつ前記補強リブと前記接続用鋼板とを同レベルの位置に配設した構成であること
を特徴とする複合梁における異種部材の接合構造。
【請求項4】
前記軸方向補強鉄筋と前記接続用鋼板との接続は、直接溶接又はカプラーを介して接続したこと
を特徴とする請求項3に記載の複合梁における異種部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合梁における異種部材、即ち、梁端部の鉄筋コンクリート部材と梁中央部の鉄骨部材との接合方法と接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の複合梁における異種部材の接合構造としては、例えば、特開2015-4168号公報(従来例1)、及び特開2009-215748号公報(従来例2)に開示された発明が知られている。
【0003】
従来例1の鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材との接合構造は、図4に示すように、梁中央側の鉄骨部材1と梁端部側の鉄筋コンクリート部材2との接合部3において、接合部3が境界プレート4を介して一体化されており、鉄筋コンクリート部材2における主筋が、1段筋2aと2段筋2bとに分けられており、1段筋2aが、その接合側の端部を境界プレート4の貫通孔に貫通させて定着部材5で境界プレート4に定着された構成である(特許文献1参照)。
【0004】
このような構成の鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材との接合構造は、鉄筋コンクリート部材2の鉄筋を、1段筋2aと2段筋2bとに分けて、1段筋2aを境界プレート4に貫通させて定着し、2段筋2bを境界プレート4に溶接することで、負担応力が分担され、全鉄筋を溶接する方式に比べて溶接量を半減できる。また、2段筋2bの溶接作業を、工場もしくは現場で予め行うことで、現場溶接作業を無くして、安全性を確保して工期を短縮できる。
【0005】
また、従来例2の複合構造梁6は、図5に示すように、梁端部7で曲げ応力により梁が降伏するヒンジゾーンHを少なくとも鉄筋コンクリート構造とし、ヒンジゾーンHよりも梁中央側を鉄骨構造とし、梁中央側の鉄骨8と鉄筋コンクリート構造の梁端部7とを境界プレート9を介して一体化した構成である(特許文献2参照)。
【0006】
このような構成の複合構造梁6は、梁端部7における鉄筋コンクリート構造の梁断面を小さくでき、かつ鉄筋コンクリート構造の長さを短くできて軽量化を実現できると共に、せん断補強筋の配置の自由度を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-4168号公報
【文献】特開2009-215748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来例1の鉄筋コンクリート部材2と鉄骨部材1との接合構造、及び従来例2の複合構造梁6においては、いずれも軸力が生じない場合を前提としており、軸力が生じる場合に十分対応できる接合方法ではない。つまり、境界プレートの4、9の曲げ変形を介して軸力が伝達されるため、1段筋2a、段筋2b、又は主筋10への軸力負担が大きくなるという問題点を有している。
【0009】
従って、従来例における構造においては、軸力が生じる場合に軸力負担を低減させることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、複合梁を構成する梁中央側の鉄骨部材と梁端部側の鉄筋コンクリート部材との異種部材の接合方法において、前記鉄骨部材と前記鉄筋コンクリート部材との接合部が前記鉄骨部材の境界プレートを介して一体化されており、前記鉄筋コンクリート部材における主筋が、前記境界プレートに設けた貫通孔に前記主筋の端部を貫通させて、その端部に有するネジ部を定着用のナットで締結させており、前記鉄筋コンクリート部材の中央部近傍位置において前記複合梁の長さ方向に沿って軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋を複数本配設すると共に、前記軸方向補強鉄筋の端部を前記境界プレートに設けた接続用鋼板に接続させて配設し、前記鉄骨部材のウェブに接続させて補強リブを配設すると共に、前記補強リブの端部を前記境界プレートに接続させて配設し、かつ前記補強リブと前記接続用鋼板とを同レベルの位置に配設することである。
【0011】
また、前記軸方向補強鉄筋と前記接続用鋼板との接続は、直接溶接又はカプラーを介して接続すること、;
を含むものである。
【0012】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、複合梁を構成する梁中央側の鉄骨部材と梁端部側の鉄筋コンクリート部材との異種部材の接合構造において、前記鉄骨部材と前記鉄筋コンクリート部材との接合部が前記鉄骨部材の境界プレートを介して一体化されており、前記鉄筋コンクリート部材における主筋が、前記境界プレートに設けた貫通孔に前記主筋の端部を貫通させて、その端部に有するネジ部を定着用のナットで締結させており、前記鉄筋コンクリート部材の中央部近傍位置において前記複合梁の長さ方向に沿って軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋を複数本配設すると共に、前記軸方向補強鉄筋の端部を前記境界プレートに設けた接続用鋼板に接続させて配設し、前記鉄骨部材のウェブに接続させて補強リブを配設すると共に、前記補強リブの端部を前記境界プレートに接続させて配設し、かつ前記補強リブと前記接続用鋼板とを同レベルの位置に配設した構成であることである。
【0013】
また、前記軸方向補強鉄筋と前記接続用鋼板との接続は、直接溶接又はカプラーを介して接続したこと、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る複合梁における異種部材の接合方法と接合構造によれば、軸力が生じる梁に対して、鉄筋コンクリート部は引張時の軸方向補強鉄筋にて、鉄骨部は圧縮時の補強リブにて補強を行う。具体的には、軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋を鉄筋コンクリート部材の中央部近傍位置に沿って集中的に配設する。補強リブは鉄骨部を補強するほか、軸力を梁中央部に集める機能を有する。梁からの軸力を補強リブから軸方向補強鉄筋に伝達させることで、曲げ抵抗用の主筋(1段筋、2段筋)への軸力負担を低減させるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る複合梁における異種部材の接合構造を示す略示的な断面図である。
図2】本発明に係る複合梁における異種部材の接合構造を示す断面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】従来例1に係る鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材との接合構造の縦断面図である。
図5】従来例2に係る複合構造梁の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明は、複合梁11を構成する梁中央側の鉄骨部材13と梁端部側の鉄筋コンクリート部材15との異種部材の接合方法と接合構造である。
【0017】
図1及び図2に示すように、複合梁11を構成する梁中央側の鉄骨造の梁12である鉄骨部材13と、梁端部側のRC造の梁14である鉄筋コンクリート部材15との異種部材の接合部25において、主筋(16、17)貫通用の貫通孔が設けられていると共に、鉄骨部材13に工場で溶接接合された境界プレート18がある。
なお、鉄骨部材13において、図中の符号13aはフランジを示し、符号13bはウェブを示す。また、図中の符号26は柱を示す。
【0018】
主筋は、鉄筋コンクリート部材15用の1段筋16と2段筋17とで構成されている。この主筋16、17は、その端部が境界プレート18の貫通孔(図示せず)に貫通してナット定着されるネジ部(図示せず)を有する鉄筋である。
【0019】
また、境界プレート18から突出した主筋(16、17)のネジ部に螺着され締結される定着用のナット19とからなる。
なお、主筋を固定する方法については、ねじ節鉄筋にねじ節用のナットを取り付けてグラウト注入により固定する方法もある。つまり、現状はこの部分の固定方法として、ミリネジを摩擦圧着してJISナットで固定する方法と、ねじ節筋にねじ節用ナットを取り付けてグラウト注入する方法とがある。
【0020】
このように、境界プレート18に対して主筋16、17をナット定着させることで、スラブ20との納まりが良くなり、また部材の減少により、コスト低減となるだけでなく、溶接作業が不要となって、施工性が向上するものである。
【0021】
図1から図3に示すように、鉄筋コンクリート部材15の中央部近傍位置に沿って軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋21が複数本配設されている。
また、境界プレート18のほぼ中央部には、接続用鋼板22が完全溶け込み溶接手段で設けられており、この接続用鋼板22に対して軸方向補強鉄筋21の端部21aを溶接している。
あるいは、接続用鋼板22と軸方向補強鉄筋21との接続は、図1に示すように、カプラー23を介して接続してもよい。
接続用鋼板22とカプラー23との接続は、隅肉溶接手段であり、カプラー23と軸方向補強鉄筋21との接続は、鉄筋コンクリート部材15の形成時にグラウトを注入することより固定する。
【0022】
また、図1に示すように、鉄骨部材13のウェブ13bに対して補強リブ24が隅肉溶接手段により設けられていると共に、補強リブ24の端部24aを境界プレート18に完全溶け込み溶接手段で設けている。そして、補強リブ24と接続用鋼板22とは同レベルの位置に設けられている。
【0023】
以上のように構成される複合梁における異種部材の接合方法と接合構造は、軸力(図1参照)が生じる梁に対して、鉄筋コンクリート部は引張時の軸方向補強鉄筋21にて、鉄骨部は圧縮時の補強リブ24にて補強を行う。
具体的には、軸力抵抗用の軸方向補強鉄筋21を鉄筋コンクリート部材15の中央部近傍位置に沿って集中的に配設する。
補強リブ24は、鉄骨部を補強するほか、軸力を梁中央部に集める機能を有する。梁からの軸力を補強リブ24から軸方向補強鉄筋21に伝達させることで、曲げ抵抗用の主筋(1段筋16、2段筋17)への軸力負担を低減させる。
【符号の説明】
【0024】
1 鉄骨部材
2 鉄筋コンクリート部材
2a 1段筋
2b 2段筋
3 接合部
4 境界プレート
5 定着部材
6 複合構造梁
7 梁端部
8 鉄骨
9 境界プレート
10 主筋
11 複合梁
12 鉄骨造の梁
13 鉄骨部材
13a フランジ
13b ウェブ
14 RC造の梁
15 鉄筋コンクリート部材
16 1段筋(主筋)
17 2段筋(主筋)
18 境界プレート
19 ナット
20 スラブ
21 軸方向補強鉄筋
21a 端部
22 接続用鋼板
23 カプラー
24 補強リブ
24a 端部
25 接合部
26 柱
図1
図2
図3
図4
図5