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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20240709BHJP
   A61F 13/62 20060101ALI20240709BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61F13/56 210
A61F13/62 120
A61F13/51
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020133412
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029861
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】富田 美奈
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066374(JP,A)
【文献】特開2019-097607(JP,A)
【文献】特開平09-294772(JP,A)
【文献】特開2019-055092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有するとともに、着用者の股間部に配される股下部、並びに該股下部の前後に延在する腹側部及び背側部を有しており、該背側部の前記縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープ、及び該腹側部の非肌対向面に設けられ、該ファスニングテープを止着可能な止着部材を備える、吸収性物品であって、
前記腹側部の非肌対向面を形成する外層シートは、少なくとも非肌対向面側の表面に扁平繊維が存在する扁平繊維含有領域を有しており、
前記止着部材は、前記ファスニングテープが止着される第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有し、該第2面は前記第1面よりも表面接触面積率が高く、前記第2面が前記扁平繊維含有領域に接着されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記外層シートは、前記扁平繊維含有領域の表面接触面積率が70%以上100%以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記止着部材は、前記第2面の表面接触面積率が70%以上100%以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記止着部材は、前記第1面の表面接触面積率が10%以上50%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記扁平繊維含有領域及び前記第2面それぞれは、平均摩擦係数MIUが0超0.2以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記扁平繊維含有領域及び前記第2面それぞれは、摩擦係数の平均偏差MMDが0超0.008以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記扁平繊維含有領域又は前記第2面に、接着性向上剤が塗工されている、請求項1~6の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ファスニングテープと、該ファスニングテープを止着可能な止着部材とを備えた吸収性物品が知られている。斯かる吸収性物品は、前後で対向するように縦方向の両端部を着用者の腰回りに配し、ファスニングテープと止着部材とを止着することによって、着用者の腰回りに固定された着用状態となる。
例えば特許文献1には、後身頃の両側部に各々設けられたファスナテープと、前身頃の外面に設けられ、熱可塑性樹脂からなるターゲットテープとを備え、該ターゲットテープが嵩高の不織布からなり、オムツの外面を構成する熱可塑性樹脂シートに、前記ターゲットテープが所定のパターンで熱融着されている使い捨てオムツが記載されている。
【0003】
また、吸収性物品の外面を形成するシートに、ファスニングテープを止着させるものが知られている。
例えば、特許文献2には、一部又は全部が面ファスナーの雄材で形成された止着テープと、該雄材を係止する係止部とを有し、疎水性シートと不織布とを水溶性ホットメルト樹脂からなる接着剤を介して熱圧着させて形成された裏面シートを備えており、該裏面シートにおける前記疎水性シート及び不織布との接着強度が所定以上であり、該裏面シートが所定の物性を有している、展開型の吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-307210号公報
【文献】特開2009-183797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファスニングテープを止着する止着部材は、吸収性物品の外面に、接着剤を用いて設けられることが一般的である。ファスニングテープ及び止着部材を備える吸収性物品の着用状態を安定して維持するには、ファスニングテープと止着部材との係合力が高いこと、及び吸収性物品の外面に止着部材が確実に固定されていることが望まれる。しかしながら、止着部材の固定の観点から接着剤の使用量を多くし過ぎると、生産コストが増大するとともに、吸収性物品の外面の風合いが低下すること、及び該接着剤の臭いが強くなること等といった品質の低下を招く虞があった。特許文献1に記載の吸収性物品は、接着剤の代わりに熱融着によってターゲットテープを固定するものであるが、吸収性物品の外面における止着部材の固定と吸収性物品の風合いとを両立させる点が不充分であった。特許文献2は、吸収性物品の外面に止着部材を固定する技術を開示するものではない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、吸収性物品の外面に止着部材を安定に固定可能であり、風合いも考慮した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有するとともに、着用者の股間部に配される股下部、並びに該股下部の前後に延在する腹側部及び背側部を有しており、該背側部の前記縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープ、及び該腹側部の非肌対向面に設けられ、該ファスニングテープを止着可能な止着部材を備える、吸収性物品に関する。
前記腹側部の非肌対向面を形成する外層シートは、少なくとも非肌対向面側の表面に扁平繊維が存在する扁平繊維含有領域を有していることが好ましい。
前記止着部材は、前記ファスニングテープが止着される第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有し、該第2面は前記第1面よりも表面接触面積率が高く、前記第2面が前記扁平繊維含有領域に接着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、ファスニングテープと止着部材との係合力を担保しつつ、吸収性物品の外面における止着部材の接着性と、吸収性物品の風合いとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である展開型の使い捨ておむつを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。
図3図3は、図2のII-II線断面図である。
図4図4は、図1に示す止着部材を一部剥離させた拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき説明する。図1図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態である展開型の使い捨ておむつ(以下、これを単に「おむつ」ともいう。)が示されている。
図2に示すおむつ1は、その展開且つ伸長状態において、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、該縦方向Xに直交する横方向Yとを有している。おむつ1は、その着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、背側に配される背側部B、及び股間部に配される股下部Cを有している。すなわち、腹側部A及び背側部Bは、股下部Cの前後に延在している。腹側部A,股下部C及び背側部Bは、おむつ1を、その縦方向Xの全長を三等分して区分した各領域であり、着用者の前後方向に連続して延びている。股下部Cは、おむつ1の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部(図示せず)を有している。
【0011】
本明細書において、おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1を展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
また、「肌対向面」は、おむつ又はその構成部材(例えば吸収体)に着目したときに、おむつの着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、おむつの着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。つまり、肌対向面は、着用者の肌に相対的に近い側の面であり、非肌対向面は、着用者の肌から相対的に遠い側の面である。「着用時」及び「着用状態」は、おむつの適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0012】
図3に示すように、おむつ1は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2と、非肌対向面を形成する液難透過性(撥水性も含む)の防漏シート3と、これら表面シート2及び防漏シート3間に配された液保持性の吸収体4とを備えており、これらの部材が吸収性本体10を構成している。図3では、説明の便宜上、後述する防漏カフ16が起立した状態で図示されている。
表面シート2及び防漏シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の外周縁から外方に延出している。本実施形態における防漏シート3の各長手方向両端縁は、おむつ1の長手方向両端縁と略一致している。
【0013】
おむつ1は、液保持性の吸収体4を備えている。図2に示す吸収体4は、その長手方向とおむつの縦方向Xとが一致するように配され、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延びて配されている。吸収体4の長手方向両側縁は、おむつ1の縦方向Xの両側縁よりも内方に位置している。
吸収体4は、図3に示すように、吸収性能を有する吸収性コア4aが液透過性のコアラップシート4bに被覆されて形成されている。
【0014】
おむつ1は、吸収性本体10の縦方向Xに沿う両側部に沿って配された一対の防漏カフ16,16を備えている。
防漏カフ16は、糸状のカフ形成用弾性部材16aと、撥水性且つ通気性のカフ形成用シート16bとを含んで構成されている。防漏カフ16は、カフ形成用弾性部材16aの収縮によって、少なくとも股下部Cにおいて着用者の肌側に向かって起立し、それによって尿等の排泄物が、横方向Yの外方へ流出することを抑制する。
【0015】
おむつ1は、図1及び図2に示すように、背側部Bの縦方向Xに沿う両側縁部に一対のファスニングテープ7,7を備えている。各ファスニングテープ7は、背側部Bの縦方向Xに沿う両側縁部から横方向Y外方に延出するように設けられている。各ファスニングテープ7の横方向Y内方側の一端は、おむつ1を構成するシート部材に固定されており、好ましくは、おむつ1を構成するシート部材どうしの間、例えば、防漏シート3と外層シート5との間に固定されている(図示せず)。
本実施形態のファスニングテープ7は、テープ基材70と、該テープ基材70の肌対向面に固定された係合部71とを有している。係合部71は、その肌対向面に係合突起を有している。係合部71としては、メカニカルファスナーのオス材を用いることができる。メカニカルファスナーは、表面に多数の係合突起が配置されてなるオス材と、表面に該係合突起を直接係合可能な材料が配置されてなるメス材とからなり、オス材とメス材とを面接触させることにより、両者が係合されるようになされている止着具をいう。メカニカルファスナーとしては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0016】
おむつ1は、腹側部Aの非肌対向面に、ファスニングテープ7が具備する係合部71を着脱自在に止着可能な止着部材6を備えている。この止着部材6は、上述したメカニカルファスナーのメス材を含んで構成されている。止着部材6における係合部71が止着される部分を形成する素材、すなわち前記メス材の素材は、係合部71の係合突起の形状に応じて選択することができる。前記メス材の素材としては、例えばループ部、網状部等や、係合性に富む不織布を用いることができる。
止着部材6は、おむつ1の腹側部Aにおける非肌対向面を形成する外層シート5上に設けられている。
【0017】
本実施形態のおむつ1は、図3に示すように、吸収性本体10の非肌対向面側、すなわち防漏シート3よりも非肌対向面側に配された外層シート5を備えている。外層シート5は、おむつ1の外面(非肌対向面)を形成している。本実施形態の外層シート5は、縦方向Xにおいて腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延在している。この外層シート5は、展開且つ伸長状態のおむつ1の外形を形作っており、該外層シート5の周縁は、腹側部A、股下部C及び背側部Bのそれぞれの輪郭線を形成している。
本実施形態のおむつ1の輪郭は、図2に示すように、縦方向Xの中央側、即ち股下部C並びに腹側部A及び背側部Bにおける股下部C側の部位が括れており、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける縦方向Xの端部側が、該股下部C側の部位よりも横方向Y外方に張り出している。
【0018】
外層シート5は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出しており、防漏シート3及び防漏カフ16を構成するカフ形成用シート16bとともにサイドフラップ部SFを形成している。サイドフラップ部SFは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出するシート部材からなる部分である。サイドフラップ部SFを構成するシート部材は、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延在しており、吸収体4の両側縁それぞれから横方向Y外方に延出した延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。
【0019】
本実施形態のおむつ1では、図2に示すように、該おむつ1の縦方向Xに沿う両側部、具体的には一対のサイドフラップ部SF,SFそれぞれには、レッグギャザー形成用弾性部材15が、股下部Cを通って縦方向Xに延びるように伸長状態で配されている。斯かる弾性部材15の収縮により、着用者の脚周りに配される左右の部分、即ちおむつ1の縦方向Xの両側部にレッグギャザーが形成されるようになされている。本実施形態においてレッグギャザー形成用弾性部材15は、サイドフラップ部SFにおけるカフ形成用シート16bと防漏シート3との間に、縦方向Xに沿って伸長状態で固定されている。
【0020】
外層シート5は、少なくとも腹側部Aにおける非肌対向面側の表面に、扁平繊維が存在する扁平繊維含有領域Rを有している。そして、その腹側部Aにおける扁平繊維含有領域Rに止着部材6が設けられている。止着部材6は、扁平繊維含有領域Rに接着されている。本実施形態の外層シート5は、腹側部Aにおける止着部材6が接着される部分が、少なくとも扁平繊維含有領域Rとなっており、扁平繊維含有領域Rの面積は止着部材6の面積よりも大きく、止着部材6の全体が扁平繊維含有領域Rに重なっている。
【0021】
扁平繊維は、繊維の断面の扁平率(長軸長/短軸長)が1.2以上の繊維である。例えば、繊維の断面が真円形状の場合の扁平率は1であり、該断面の潰れの程度が大きくなる(楕円形状に近くなる)に従って扁平率は1より大きくなる。
止着部材6の接着性を向上させる観点から、扁平繊維含有領域Rにおける扁平繊維の存在率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。扁平繊維含有領域Rにおける扁平繊維の存在率の上限は特に制限されず、100%であってもよい。斯かる扁平繊維の存在率は、以下の測定方法により測定される。
【0022】
〔扁平繊維含有領域Rにおける扁平繊維の存在率の測定方法〕
おむつ1から、腹側部Aにおける外層シート5を取り出し、該外層シート5から止着部材6を剥がす。この外層シート5の非肌対向面において、止着部材6が接着されていた領域から測定片を切り出す。測定片は、平面視四角形形状(8mm×4mm)であり、剃刀(例えばフェザー安全剃刃株式会社製片刃)で外層シート5を切断することで得られる。外層シート5の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい切断方法として、外層シート5の切断に先立って、外層シート5を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。次いで、測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。この切断面において、測定片の非肌対向面に存在する繊維の断面を観察し、該繊維の断面の長軸長及び短軸長を測定して、長軸長を短軸長で除することで繊維の扁平率を算出する。これを繊維10本分測定し、該10本に対する、扁平率(長軸長/短軸長)が1.2以上である繊維の本数の割合を求め、これを扁平繊維の存在率(%)とする。
【0023】
おむつ1から外層シート5や止着部材6等の構成部材を取り出して、該構成部材の物性を測定する際、該構成部材が接着剤によって他の構成部材に固定されている場合、その固定部分にコールドスプレーの冷風を吹き付けて他の構成部材を剥がした後、測定対象の構成部材に付着している接着剤を、有機溶剤を用いて溶解することによって除去する。この操作は、本明細書中の全ての測定において共通である。
【0024】
扁平繊維、すなわち断面の潰れの程度が大きい繊維を得る方法としては、1)所望の扁平率に対応した扁平率を有する紡糸口金を用いて紡糸する方法や、2)通常の紡糸口金(断面が真円形状又はこれに準ずる形状)を用いて得られた繊維の堆積物に対して加圧等の後加工を施す方法等の公知の方法が挙げられる。前記1)の方法における紡糸口金の扁平率は、目的とする繊維の扁平率と同じでもよく、目的とする繊維の扁平率よりも高くてもよい。
扁平な繊維の長軸方向を不織布の平面方向に確実に配向させて、止着部材6の接着性をより向上させる観点から、前記2)の方法が好ましい。前記2)の方法は例えば、断面真円形状の繊維を含む繊維集合体(不織布)を、必要に応じて加熱しつつ、加圧して圧密化することで実施可能である。斯かる方法は、例えばカレンダー処理によって実施可能である。
【0025】
外層シート5は、少なくとも腹側部Aに扁平繊維含有領域Rを有していればよい。本実施形態の外層シート5は、腹側部Aに扁平繊維含有領域Rを部分的に有している。これに代えて、外層シート5は、腹側部Aの全域に扁平繊維含有領域Rを有していてもよく、外層シート5の全域が扁平繊維含有領域Rを有していてもよい。
【0026】
止着部材6は、図4に示すように、ファスニングテープ7が止着される第1面61と、第1面61とは反対側の第2面62とを有している。第1面61は、ファスニングテープ7の係合部71における係合突起と係合する面であり、該係合突起と係合するループ部等の被係合部(メス材)が設けられている。第2面62は、接着剤を介して扁平繊維含有領域Rに接着されている。
【0027】
止着部材6における第1面61と第2面62とは、表面接触面積率が異なっている。具体的には第2面62は第1面61よりも表面接触面積率が高い。表面接触面積率は、表面における凹凸の程度を示す指標となるものである。表面接触面積率は、後述する方法により測定される。
【0028】
本実施形態のおむつ1は、図1に示すように、ファスニングテープ7が止着部材6に止着されることにより、着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LHが形成されて、着用者に装着される。本実施形態において止着部材6は、外層シート5の扁平繊維含有領域Rに接着されているので、該止着部材6と外層シート5との接着性に優れる。これは、止着部材6を接着させる部分に扁平繊維が存在すること、及び表面接触面積率が第1面61よりも大きい第2面62が、外層シート5との接着面になっていることで、外層シート5と止着部材6との接触面積を大きく確保できることによる。また止着部材6は、表面接触面積率の低い方の面である第1面61が、おむつ1における肌対向面側とは反対側の表面に位置するので、外層シート5との接着性を向上させつつ、ファスニングテープ7における係合部71と止着部材6との係合力を容易に確保することができる。
本実施形態のおむつ1によれば、接着剤の使用量を増やさずに、止着部材6と外層シート5との接合強度を向上させることができ、あるいは止着部材6と外層シート5との接合強度を従来と同程度に維持しながら、接着剤の使用量を減らすことも可能である。
本実施形態のおむつ1によれば、多量の接着剤を用いなくとも、外層シート5と止着部材6との接着性を担保することができるので、おむつ1の外面の風合いを良好に維持することができるとともに、多量の接着剤による臭いの発生を抑制することができる。
【0029】
〔表面接触面積率の測定方法〕
止着部材6から縦方向60mm×横方向30mmの大きさの測定片を切り出す。この測定片を、測定対象の面(第1面61又は第2面62)が上になるように、無加圧の状態で水平な台の上に置く。この測定片の上に透明なアクリル板を置き、さらに該アクリル板上に錘を載置して、測定片が1.7kPaで加圧されるようにする。次いで、加圧した測定片における測定対象の面の表面形状をKeyence社製、高精度形状計測システムKS-1100を用いて測定する。具体的には、測定片における位置ごとの厚みを測定する。測定条件は、測定ピッチ50μm、移動速度10cm/sとし、縦方向30mm×横方向30mmの範囲を測定する。このようにして得られた測定結果(画像)を、Keyence社製、形状解析アプリケーションKS-Analyzerを用いて解析する。そして、測定片において最大厚みとなる位置、及び該最大厚みとの厚み差が200μm以下となる位置とを抽出し、これを「高厚み領域」とする。また、測定片において最大厚みとの厚み差が200μm超となる位置を「低厚み領域」とする。これら高厚み領域及び低厚み領域を二値化処理することにより、高厚み領域の面積を測定する。具体的には、前記画像を(株)日本ローパー社製、Image-Pro Plusに取り込み、コントラストの強調で、白黒コントラストを100に設定する。フィルター処理(メディアン、5×5を5回)によりノイズを除去した後、カウント処理を行い、白又は黒で表示された高厚み領域の総面積を測定する。その後、高厚み領域の総面積を、測定片の面積(縦方向30mm×横方向30mm)で除し、これを表面接触面積率とする。
外層シート5における扁平繊維含有領域Rの表面接触面積率を測定する場合は、止着部材6を剥がした部分を切り出し、これを測定片とする。
【0030】
外層シート5と止着部材6との接着性及びおむつ1の外面の風合いをより両立させる観点から、外層シート5における扁平繊維含有領域Rの表面接触面積率をS1とし、止着部材6における第2面62の表面接触面積率をS2としたとき、S1に対するS2の比率(S2/S1)は好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、また好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下であり、また好ましくは0.7以上1.4以下、より好ましくは0.8以上1.3以下である。
【0031】
ファスニングテープ7と止着部材6との係合力及び外層シート5と止着部材6との接着性をより両立させる観点から、止着部材6における第1面61の表面接触面積率をS3とし、止着部材6における第2面62の表面接触面積率をS2としたとき、S3に対するS2の比率(S2/S3)は好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、また好ましくは10以下、より好ましくは9以下であり、また好ましくは1.4以上10以下、より好ましくは1.5以上9以下である。
【0032】
外層シート5と止着部材6との接着性をより向上させる観点から、外層シート5の扁平繊維含有領域R、及び止着部材6の第2面62それぞれの表面接触面積率は以下の範囲内であることが好ましい。
外層シート5は、扁平繊維含有領域Rの表面接触面積率が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下であり、また好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは80%以上95%以下である。外層シート5における表面接触面積率は、例えばシートに開孔を形成することで制御してもよい。また、シートに加圧開孔処理をすることで、開孔部以外に扁平繊維含有領域Rを形成することができる。
止着部材6は、第2面62の表面接触面積率が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。第2面62の表面接触面積率の上限値については、特に制限はなく、100%に近ければ近いほど好ましい。
【0033】
ファスニングテープ7と止着部材6との係合力をより向上させる観点から、止着部材6は、第1面61の表面接触面積率が好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下であり、また好ましくは10%以上50%以下、より好ましくは20%以上40%以下である。
【0034】
外層シート5と止着部材6との接着性をより向上させる観点から、扁平繊維含有領域R及び第2面62それぞれは、平均摩擦係数MIUが好ましくは0.2以下、より好ましくは0.19以下である。扁平繊維含有領域R及び第2面62それぞれの平均摩擦係数MIUの下限値については、特に制限はなく、0に近ければ近いほど好ましい。
【0035】
上記と同様の観点から、扁平繊維含有領域R及び第2面62それぞれは、摩擦係数の平均偏差MMDが好ましくは0.008以下、より好ましくは0.007以下である。扁平繊維含有領域R及び第2面62それぞれは、摩擦係数のMMDの下限値について特に制限はなく、0に近ければ近いほど好ましい。
【0036】
〔平均摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDの測定方法〕
KES-FB4表面試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、測定対象上に接触子により5kPa(50gf/cm2)の荷重を加えた状態下に、該接触子を0.1cm/secの一定速度で水平方向に3cm移動させる。この接触子を移動させた領域の摩擦係数及び摩擦係数の平均偏差を横方向Yに離間させた位置3点で計測し、その平均値をシートの平均摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDとする。
測定対象が外層シート5の扁平繊維含有領域Rである場合は、止着部材6を剥がした部分を扁平繊維含有領域Rとし、平均摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDを測定する。
【0037】
外層シート5と止着部材6とは接着剤を介して接着されている。接着剤としては、ホットメルト接着剤等の公知のものを用いることができる。
外層シート5と止着部材6との接合強度を確保しつつ、おむつ1の非肌対向面における風合いをより向上させる観点から、外層シート5と止着部材6とを接着する接着剤の使用量は、10g/m以上、より好ましくは15g/m以上であり、また好ましくは30g/m以下、より好ましくは25g/m以下であり、また好ましくは10g/m以上30g/m以下、より好ましくは15g/m 以上25g/m以下である。
【0038】
湿度が高い条件下でも外層シート5と止着部材6との接着性を担保する観点から、扁平繊維含有領域R又は第2面62に、接着性向上剤が塗工されていることが好ましい。すなわち、外層シート5及び止着部材6それぞれの接着部分に接着性向上剤が塗工されていることが好ましい。接着性向上剤は、接着剤による接着性を向上させるものである。斯かる接着性向上剤を塗工した部材を、接着剤で接着させると、接着剤単独で接着させたものよりも強固に接着させることができる。接着性向上剤としては、疎水性の物質からなるものを用いることができる。接着性向上剤は、成分として、油性成分を含むことが好ましい。油性成分としては、植物油、シリコーン系化合物、C12~C22脂肪酸又はそのグリセロールエステル化合物、C12~C44脂肪酸エーテル、C12~C22脂肪アルコール、ワセリン等が挙げられる。
これらの中でも植物油を含むことが好ましい。植物油としては、オリーブ油、ホホバ油、ライス油、シアバター、茶油、アロエ油、アルガン油、桃油等が挙げられる。
接着性向上剤には、上記油性成分の一種又は二種以上を併用することができ、該接着性向上剤としては、上記の一種又は二種以上を含む組成物を用いることができる。接着性向上剤としては、好ましくはシアバター、アルガン油又は桃油を含むスキンケア剤、ステアリルアルコールを含むスキンケア剤等を用いることができる。
接着性向上剤が扁平繊維含有領域Rに塗工されている場合、該扁平繊維含有領域Rの止着部材6が接着される部分に塗工されていればよい。接着性向上剤は、扁平繊維含有領域R及び第2面62の何れか一方に塗工されていてもよく、扁平繊維含有領域R及び第2面62の双方に塗工されていてもよい。
【0039】
第1面61よりも第2面62の表面接触面積率をより容易に高める観点から、止着部材6の第2面62には、繊維間の空隙を閉塞する空隙閉塞処理が施されていることが好ましい。空隙閉塞処理は、第2面62を形成する繊維どうし間の空隙を閉塞する方法を特に制限なく用いることができる。斯かる処理としては、熱処理や、超音波処理、インク塗工処理等が挙げられる。
【0040】
上述した実施形態におけるおむつの各部の形成材料について詳述する。表面シート2、防漏シート3及び吸収体4としてはそれぞれ、吸収性物品に従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。
表面シート2としては例えば、液透過性の不織布及び開孔フィルム等を用いることができる。
防漏シート3としては、液難透過性の樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
吸収体4は、吸収性コア4aとして、木材パルプ、親水化処理された合成繊維等の親水性繊維の集合体や、該集合体に吸水性ポリマーを保持させたものを用いることができる。また、コアラップシート4bとしては、表面シート2と同様のものを用いることができる。
【0041】
外層シート5及びカフ形成用シート16bは、例えば各種製法による不織布を用いることができ、例えば、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、メルトブローン不織布、又はこれらの積層不織布等を用いることができる。外層シートは、一枚のシートで構成されていてもよく、これに代えて、複数枚のシートの積層体で構成されていてもよい。また、カフ形成用シート16bとしては、撥水性の不織布を用いてもよい。
防漏カフ16におけるカフ形成用弾性部材16aや、レッグギャザー形成用弾性部材15等の弾性部材は、この種の吸収性物品に通常用いられる各種公知の弾性材料を特に制限なく用いることができる。弾性材料としては、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。弾性部材の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。
【0042】
ファスニングテープ7を形成するテープ基材70及び係合部71、並びに止着部材6の各形成材料は、通常、展開型の使い捨ておむつに用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。また、係合部71における係合突起の形状は特に制限されず、フック形、錨形、鉤形等の形状とすることができる。
例えば、ファスニングテープ7及び止着部材6には、「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)、「クイックロン(登録商標)」(YKK社製)、「マジクロス(登録商標)」(カネボウベルタッチ社製)等のメカニカルファスナーを用いることができる。係合を容易にする観点から、止着部材6に不織布を用いる場合は、エアスルー不織布であることが好ましい。
テープ基材70の形成材料としては、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート等などの合成樹脂、及びこれら合成樹脂2種以上の複合材料からなるシートや不織布等を用いることができる。
【0043】
第1面61及び第2面62の表面接触面積率をより容易に異ならせる観点から、止着部
材6は、第1面61を形成する層及び第2面62を形成する層が積層した、2層以上の積層構造を有していることが好ましい。斯かる形態の止着部材6として、メカニカルファスナーのメス材と不織布とが積層したもの、例えば係合突起が直接係合可能な不織布と他の不織布とが積層したもの等が挙げられる。
止着部材6が前記積層構造を有している場合、第2面62の表面接触面積率を第1面61よりも容易に高くする観点から、第2面62を形成する層の坪量は好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上であり、また好ましくは35g/m以下、より好ましくは30g/m以下であり、また好ましくは5g/m以上35g/m以下、より好ましくは10g/m 以上30g/m以下である。
【0044】
止着部材6は、図2に示すように、平面視においてレッグギャザー形成用弾性部材15と重なっていないことが、おむつ1の着用時における外層シート5と止着部材6との接着性の観点から好ましい。特に、縦方向Xに関し、おむつ1の展開且つ伸長状態において、レッグギャザー形成用弾性部材15と止着部材6とが離間していることが好ましい。これにより、接着剤量を減らしても、外層シート5と止着部材6との接着性を着用時においてもより安定して維持できる。
上記の効果がより確実に奏される観点から、縦方向Xにおけるレッグギャザー形成用弾性部材15と止着部材6との離間距離は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上である。前記離間距離は、おむつ1の展開且つ伸長状態における距離であって、腹側部Aにおける、レッグギャザー形成用弾性部材15の縦方向Xの端部と、止着部材6の股下部C側の端部との間の縦方向Xに沿う距離である。
【0045】
おむつ1の着用時における外層シート5と止着部材6との接着性をより向上させる観点から、止着部材6は、図2に示すように、平面視において防漏カフ16の伸縮領域と重ならないことが好ましい。防漏カフ16の伸縮領域は、カフ形成用弾性部材16aによって縦方向Xに伸縮可能な領域である。止着部材6が前記伸縮領域と重ならない形態の例としては、平面視において止着部材6が防漏カフ16自体に重なっていない形態が挙げられる他、平面視において止着部材6が、カフ形成用弾性部材16aによる伸縮能を有する部分と重なっていない形態が挙げられる。例えば、止着部材6が、カフ形成用弾性部材16aにおいて伸縮不能になっている部分のみに重なっている形態や、防漏カフ16において伸縮不能になっている部分のみに重なっている形態等が挙げられる。「カフ形成用弾性部材16aにおいて伸縮不能になっている部分」は、例えば、該弾性部材16aがカフ形成用シート16bに非伸長状態で配置されている部分である。「防漏カフ16において伸縮不能になっている部分」は、例えば、カフ形成用シート16bがおむつ1の他の構成部材に固定されて伸縮不能となった部分である。
【0046】
防漏カフ16は、着用者の肌に向かって起立するときの起立端となる基端部と、自由端部とを有している。防漏カフ16は、基端部と自由端部との間に縦方向Xに延びる折り曲げ部を有し、該折り曲げ部と該自由端部との間が横方向Y外方に張り出していることが好ましい。より詳細には、防漏カフ16は、基端部と該折り曲げ部との間に位置する第1起立部、及び該折り曲げ部と自由端部との間に位置する第2起立部を有し、該第2起立部が横方向Y外方に延びていることが好ましい。斯かる構成により、外層シート5の中央領域(一対の防漏カフ16,16間の領域)が平坦になり易くなって、止着部材6と外層シート5との接着性をより安定させることができる。特に、止着部材6の横方向Yの中央側において、第1面61に対する防漏カフ16の伸縮による皺の影響が小さくなるので、ファスニングテープ7と止着部材6の第1面61との止着がより確実となる。斯かる効果は、幼児用等の小さいサイズのおむつ1に有効である。さらに、第2起立部を有することによって、着用者の肌と防漏カフ16との接触面が大きくなるので、排泄物の横漏れ抑制性能を向上できる。
また、防漏カフ16の第2起立部が複数のカフ形成用弾性部材16aを備える場合、おむつ1の厚み方向においてカフ形成用弾性部材16aと止着部材6とが離れるので、止着部材6に該弾性部材の伸縮による皺が生じ難くなる点で好ましい。
【0047】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。
また、上述した吸収性物品は、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつであったが、例えば、おむつカバー(パッドホルダー)や胴回りで着脱する帯状体に適用可能であり、乳幼児用のものであっても、成人用のものであってもよい。本発明の吸収性物品には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含される。例えば、失禁パッド、生理用ナプキン、生理用ショーツ等が包含される。
【0048】
上述した本発明の実施形態に関し、さらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有するとともに、着用者の股間部に配される股下部、並びに該股下部の前後に延在する腹側部及び背側部を有しており、該背側部の前記縦方向に沿う両側縁部に設けられたファスニングテープ、及び該腹側部の非肌対向面に設けられ、該ファスニングテープを止着可能な止着部材を備える、吸収性物品であって、
前記腹側部の非肌対向面を形成する外層シートは、少なくとも非肌対向面側の表面に扁平繊維が存在する扁平繊維含有領域を有しており、
前記止着部材は、前記ファスニングテープが止着される第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有し、該第2面は前記第1面よりも表面接触面積率が高く、前記第2面が前記扁平繊維含有領域に接着されている、吸収性物品。
【0049】
<2>
前記扁平繊維含有領域における前記扁平繊維の存在率は、60%以上、好ましくは70%以上である、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記外層シートにおける前記扁平繊維含有領域の表面接触面積率をS1とし、前記止着部材における前記第2面の表面接触面積率をS2としたとき、S1に対するS2の比率(S2/S1)は、0.7以上1.4以下、好ましくは0.8以上1.3以下である、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記止着部材における前記第1面の表面接触面積率をS3とし、前記止着部材における前記第2面の表面接触面積率をS2としたとき、S3に対するS2の比率(S2/S3)は1.4以上10以下、好ましくは1.5以上9以下である、前記<1>~<3>の何れか1に記載の吸収性物品。
<5>
前記外層シートは、前記扁平繊維含有領域の表面接触面積率が70%以上である、前記<1>~<4>の何れか1に記載の吸収性物品。
<6>
前記外層シートは、前記扁平繊維含有領域の表面接触面積率が70%以上100%以下、好ましくは80%以上95%以下である、前記<1>~<5>の何れか1に記載の吸収性物品。
<7>
前記止着部材は、前記第2面の表面接触面積率が70%以上である、前記<1>~<6>の何れか1に記載の吸収性物品。
<8>
前記止着部材は、前記第2面の表面接触面積率が80%以上であり、100%以下である、前記<1>~<7>の何れか1に記載の吸収性物品。
<9>
前記止着部材は、前記第1面の表面接触面積率が50%以下である、前記<1>~<8>の何れか1に記載の吸収性物品。
<10>
前記止着部材は、前記第1面の表面接触面積率が10%以上50%以下、好ましくは20%以上40%以下である、前記<1>~<9>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0050】
<11>
前記扁平繊維含有領域及び前記第2面それぞれは、平均摩擦係数MIUが0.2以下である、前記<1>~<10>の何れか1に記載の吸収性物品。
<12>
前記扁平繊維含有領域及び前記第2面それぞれは、摩擦係数の平均偏差MMDが0.008以下である、前記<1>~<11>の何れか1に記載の吸収性物品。
<13>
前記扁平繊維含有領域又は前記第2面に、接着性向上剤が塗工されている、前記<1>~<12>の何れか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記外層シートと前記止着部材とを接着する接着剤の使用量は、10g/m以上30g/m以下、好ましくは15g/m 以上25g/m以下である、前記<1>~<13>の何れか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記止着部材が、前記第1面を形成する層及び前記第2面を形成する層が積層した積層構造を有している、前記<1>~<14>の何れか1に記載の吸収性物品。
<16>
前記第2面を形成する層の坪量は、5g/m以上35g/m以下、好ましくは10g/m 以上30g/m以下である、前記<15>に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収性物品の前記縦方向に沿う両側部それぞれには、レッグギャザー形成用弾性部材が、該縦方向に延びるように伸長状態で配されており、
前記止着部材は、平面視において前記レッグギャザー形成用弾性部材と重なっていない、前記<1>~<16>の何れか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記縦方向における前記レッグギャザー形成用弾性部材と前記止着部材との離間距離が、10mm以上、好ましくは15mm以上である、前記<17>に記載の吸収性物品。
<19>
吸収体を含む吸収性本体の前記縦方向に沿う両側部に一対の防漏カフを備えており、
前記止着部材は、平面視において前記防漏カフの伸縮領域と重なっていない、前記<1>~<18>の何れか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記止着部材は、前記防漏カフが備えるカフ形成用弾性部材による伸縮能を有する部分と重なっていない、前記<19>に記載の吸収性物品。
【0051】
<21>
前記防漏カフは、着用者の肌に向かって起立するときの起立端となる基端部と、自由端部と、該基端部と該自由端部との間に前記縦方向に延びる折り曲げ部とを有しており、
さらに、前記基端部と前記折り曲げ部との間に位置する第1起立部、及び該折り曲げ部と自由端部との間に位置する第2起立部とを有しており、
前記第2起立部が前記横方向外方に延びている、前記<19>又は<20>に記載の吸収性物品。
<22>
前記防漏カフは、前記第2起立部に複数のカフ形成用弾性部材を備えている、前記<21>に記載の吸収性物品。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0053】
〔実施例1〕
上述したおむつにおける、外層シート5及び止着部材6を用意した。ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布(坪量20g/m)に対し、カレンダー処理を施して扁平繊維含有領域Rを形成し、これを外層シート5とした。カレンダー処理は、金属製のカレンダーロール及び樹脂ロールを用いて二段カレンダー加工にて行った。一段目のカレンダー加工は、非加熱状態で、線圧255N/cmの条件で行い、二段目のカレンダー加工は非加熱状態で、線圧115N/cmの条件で行った。また、止着部材6として、ポリプロピレン及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布A1(坪量20g/m)と、ポリプロピレン及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布A2(坪量15g/m)とを積層し、これら両エアスルー不織布A1,A2をエンボス加工により一体化したシートを作製した。
また、外層シート5に止着部材6を接着させた複合部材を作製した。具体的には、外層シート5の扁平繊維含有領域Rに、前記不織布A1が第2面となるように、止着部材6を接着剤〔ゴム系(スチレン-ブタジエン系)の汎用ホットメルト接着剤〕を用いて固定し、これを複合部材とした。接着剤の使用量は20g/mとした。
【0054】
〔実施例2〕
外層シート5として、ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布(坪量21g/m)に対し、加圧開孔処理を施して、開孔部以外は扁平繊維含有領域Rを形成しつつ、開孔により表面接触面積率を制御したシートを作製した。
止着部材6として、ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布A3(坪量15g/m)と、ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンの複合繊維を構成繊維とするエアスルー不織布A4(坪量10g/m)とを積層し、エンボス加工により一体化したシートを作製した。
また、前記止着部材6を、前記不織布A3が第2面となるように、外層シート5の扁平繊維含有領域Rに固定した点以外は、実施例1と同様の方法により複合部材を作製した。
【0055】
〔比較例1及び2〕
比較例1では、前記不織布A1を2枚積層し、エンボス加工により一体化したシートを作製し、比較例2では前記不織布A2を2枚積層し、エンボス加工により一体化したシートを作製し、これらシートそれぞれを止着部材とした。斯かる点以外は、実施例1と同様の方法により、外層シート5及び複合部材を作製した。
【0056】
〔比較例3〕
カレンダー処理を施さず、扁平繊維含有領域Rを外層シートに形成しなかった点以外は、実施例1と同様の方法により、外層シート5、止着部材6及び複合部材を作製した。
【0057】
〔比較例4及び5〕
比較例4では比較例1の止着部材を用いた点以外、及び比較例5では比較例2の止着部材を用いた点以外は、比較例3と同様の方法により、外層シート5、止着部材6及び複合部材を作製した。
【0058】
各実施例及び比較例の外層シート5及び止着部材6について、外層シートの扁平繊維含有領域、並びに止着部材の第1面及び第2面それぞれの表面接触面積率を測定した。また、外層シートの扁平繊維含有領域、及び止着部材の第2面それぞれの平均摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDを測定した。これら測定は上述した方法に従い行った。測定結果を表1に示す。
【0059】
〔外層シートと止着部材との接着性〕
各実施例及び比較例の外層シート及び止着部材について、これらの接着性を以下の方法により評価した。先ず、予め剥離紙に塗布しておいた接着剤〔ゴム系(スチレン-ブタジエン系)の汎用ホットメルト接着剤、使用量20g/m〕を止着部材の第2面(接着面)に転写し、接着面を下にした状態で外層シートの扁平繊維含有領域R上に載せた。次いで、止着部材の上で1kgローラーを3往復させて、該止着部材を外層シートに固定した。次いで、止着部材と外層シートとが接着した部分から、幅3cm、長さ3cmの測定片を切り出し、該測定片における外層シートの端縁部をクリップで挟んで、プッシュプルゲージ(RX-20、アイコーエンジニアリング社製)に繋いだ。次いで、止着部材が外層シートから剥離するまで、プッシュプルゲージを引っ張り、止着部材と外層シートとの剥離強度を測定した。そして、以下の基準により外層シートと止着部材との接着性を評価した。
A:剥離強度が0.4N以上である。
B:剥離強度が0.4N未満である。
シートの破断による影響を防ぐ観点から、以上の接着性の評価では、止着部材と外層シートとを、おむつにおける実際の接着強度よりも低い接着強度で接着させている。前記剥離強度が0.4N以上であると、おむつにおける外層シートと止着部材との接着は十分であることの目安となる。評価結果を表1に示す。
【0060】
〔ファスニングテープと止着部材との係合力〕
各実施例及び比較例の複合部材について、ファスニングテープ7と止着部材6との係合力を以下の方法により評価した。ファスニングテープ7には、花王株式会社製の「メリーズ さらさらエアスルー テープSサイズ」に用いられているファスニングテープを用意した。このファスニングテープ7を、複合部材における止着部材上に載せ、該ファスニングテープの上で1kgローラーを3往復させて止着した。次いで、このファスニングテープの端縁部をクリップで挟んで、プッシュプルゲージ(RX-20、アイコーエンジニアリング社製)に繋いだ。次いで、ファスニングテープが止着部材から脱離するまで、プッシュプルゲージを引っ張り、ファスニングテープと止着部材との係合強度を測定して、以下の基準によりファスニングテープと止着部材との係合力を評価した。前記係合強度が2.0N以上であると、ファスニングテープと止着部材との係合力が十分であることの目安となる。評価結果を表1に示す。
A:係合強度が2.0N以上である。
B:係合強度が2.0N未満である。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すとおり、各実施例では外層シートと止着部材との剥離強度が0.4N以上であり、且つファスニングテープと止着部材との係合強度が2.0N以上であった。この結果から、各実施例の複合部材は、ファスニングテープと止着部材との係合力を担保しつつ、外層シートと止着部材との接着性に優れることが示された。各実施例においては、接着剤の使用量を多くしなくとも、外層シートと止着部材との接着性に優れるので、外層シートの風合いを良好に維持することができる。一方、各比較例においては、外層シートと止着部材との接着性及びファスニングテープと止着部材との係合力の何れか一方又は双方の評価が低いものとなった。
【符号の説明】
【0063】
1 吸収性物品(使い捨ておむつ)
2 表面シート
3 防漏シート
4 吸収体
6 止着部材
7 ファスニングテープ
10 吸収性本体
16 防漏カフ
61 第1面
62 第2面
71 係合部
A 腹側部
B 背側部
C 股下部
R 扁平繊維含有領域
SF サイドフラップ部
X 縦方向
Y 横方向
Z 厚み方向
図1
図2
図3
図4