(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】舗設温度自動記録方法及び舗設温度自動記録システム
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20240709BHJP
E01C 19/26 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
E01C19/48 A
E01C19/26
(21)【出願番号】P 2020135641
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 覚
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0245785(US,A1)
【文献】特開2018-123587(JP,A)
【文献】特開平06-228911(JP,A)
【文献】特開2018-190228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0060819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータを内蔵した情報処理装置が、
加熱アスファルト混合物を運搬する運搬車両、前記運搬車両により運搬された加熱アスファルト混合物を敷き均すアスファルトフィニッシャ、及び前記アスファルトフィニッシャにより敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラに夫々設置された温度センサから前記加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録し、
前記アスファルトフィニッシャに設置された接近状態検知センサから、前記アスファルトフィニッシャに対する前記運搬車両及び前記転圧ローラの接近状態を読み込み、
前記接近状態検知センサにより前記運搬車両が第1の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記運搬車両及び前記アスファルトフィニッシャに夫々設置された温度センサから読み込ん
だ加熱アスファルト混合物の各温度を関連付けて帳票化
し、前記接近状態検知センサにより前記転圧ローラが第2の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記転圧ローラに設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の温度を更に関連付けて帳票化する、
舗設温度自動記録方法。
【請求項2】
前記情報処理装置が、所定のサンプリング間隔ごとに、前記運搬車両、前記アスファルトフィニッシャ及び前記転圧ローラに夫々設置された温度センサから前記加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録する、
請求項1に記載の舗設温度自動記録方法。
【請求項3】
前記情報処理装置が、前記接近状態検知センサにより前記運搬車両が第1の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記運搬車両及び前記アスファルトフィニッシャに夫々設置された温度センサから前記加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録し、前記接近状態検知センサにより前記転圧ローラが第2の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記転圧ローラに設置された温度センサから前記加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録する、
請求項1に記載の舗設温度自動記録方法。
【請求項4】
前記接近状態検知センサが、複数の運搬車両を個別に識別可能に構成され、
前記情報処理装置が、前記接近状態検知センサにより識別された運搬車両ごとに、前記運搬車両、前記アスファルトフィニッシャ及び前記転圧ローラに夫々設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の温度を関連付けて帳票化する、
請求項1~
請求項3のいずれか1つに記載の舗設温度自動記録方法。
【請求項5】
前記情報処理装置が、前記運搬車両、前記アスファルトフィニッシャ及び前記転圧ローラに夫々設置された温度センサから読み込んだ温度が所定の温度範囲を逸脱しているとき警告を発する、
請求項1~
請求項4のいずれか1つに記載の舗設温度自動記録方法。
【請求項6】
前記情報処理装置が、無線通信ユニットを介して、前記運搬車両、前記アスファルトフィニッシャ及び前記転圧ローラに夫々設置された温度センサから加熱アスファルト混合物の温度を読み込むとともに、前記アスファルトフィニッシャに設置された接近状態検知センサから前記運搬車両及び前記転圧ローラの接近状態を読み込む、
請求項1~
請求項5のいずれか1つに記載の舗設温度自動記録方法。
【請求項7】
加熱アスファルト混合物を運搬する運搬車両、前記運搬車両により運搬された加熱アスファルト混合物を敷き均すアスファルトフィニッシャ、及び前記アスファルトフィニッシャにより敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラに夫々設置され、前記加熱アスファルト混合物の温度を計測する温度センサと、
前記アスファルトフィニッシャに設置され、前記アスファルトフィニッシャに対する前記運搬車両及び前記転圧ローラの接近状態を検知する接近状態検知センサと、
前記運搬車両、前記アスファルトフィニッシャ及び前記転圧ローラに夫々設置された温度センサから加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録するとともに、前記接近状態検知センサにより
前記運搬車両が第1の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記運搬車両及び前記アスファルトフィニッシャに夫々設置された温度センサから読み込ん
だ加熱アスファルト混合物の各温度を関連付けて帳票化
し、前記接近状態検知センサにより前記転圧ローラが第2の所定距離まで接近したことが検知されたとき、前記転圧ローラに設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の温度を更に関連付けて帳票化する情報処理装置と、
を備えた舗設温度自動記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱アスファルト混合物を運搬する運搬車両、運搬車両により運搬された加熱アスファルト混合物を敷き均すアスファルトフィニッシャ、及びアスファルトフィニッシャにより敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラにおいて、加熱アスファルト混合物の温度を自動的に計測して記録及び帳票化する、舗設温度自動記録方法及び舗設温度自動記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装は、特開平11-152709号公報(特許文献1)に記載されるように、ダンプトラックにより運搬された加熱アスファルト混合物をアスファルトフィニッシャが敷き均し、敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧ローラが転圧することで舗設される。このとき、舗設後のアスファルト舗装の品質を保証すべく、国土交通省の「品質管理基準及び規格値」で規定されるように、転圧ローラによる初期転圧前の加熱アスファルト混合物の温度を110℃以上に管理することが推奨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアスファルト舗装の舗設工事においては、作業者が棒状の温度計を使用し、転圧ローラによる初期転圧前の加熱アスファルト混合物の温度を人手で計測していた。この場合、加熱アスファルト混合物の温度を計測する作業者は、転圧ローラの直前において温度計測作業を行う必要があり、轢過事故などが起こらないように十分注意を払わなければならなかった。また、大規模なアスファルト舗装の敷設現場においては、複数のダンプトラックが頻繁に出入りし、加熱アスファルト混合物の温度計測結果を帳票化する業務に多大な工数が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、運搬車両、アスファルトフィニッシャ及び転圧ローラにおける加熱アスファルト混合物の温度を自動的に計測して記録及び帳票化できる、舗設温度自動記録方法及び舗設温度自動記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
マイクロコンピュータを内蔵した情報処理装置が、加熱アスファルト混合物を運搬する運搬車両、運搬車両により運搬された加熱アスファルト混合物を敷き均すアスファルトフィニッシャ、及びアスファルトフィニッシャにより敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラに夫々設置された温度センサから加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録する。また、情報処理装置が、アスファルトフィニッシャに設置された接近状態検知センサから、アスファルトフィニッシャに対する運搬車両及び転圧ローラの接近状態を読み込む。そして、情報処理装置が、接近状態検知センサにより運搬車両が第1の所定距離まで接近したことが検知されたとき、運搬車両及びアスファルトフィニッシャに夫々設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の各温度を関連付けて帳票化し、接近状態検知センサにより転圧ローラが第2の所定距離まで接近したことが検知されたとき、転圧ローラに設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の温度を更に関連付けて帳票化する。
【0007】
舗設温度自動記録システムは、加熱アスファルト混合物を運搬する運搬車両、運搬車両により運搬された加熱アスファルト混合物を敷き均すアスファルトフィニッシャ、及びアスファルトフィニッシャにより敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラに夫々設置された温度センサと、アスファルトフィニッシャに設置された接近状態検知センサと、情報処理装置と、を備えている。温度センサは、運搬車両、アスファルトフィニッシャ及び転圧ローラにおける加熱アスファルト混合物の温度を計測する。接近状態検知センサは、アスファルトフィニッシャに対する運搬車両及び転圧ローラの接近状態を検知する。情報処理装置は、運搬車両、アスファルトフィニッシャ及び転圧ローラに夫々設置された温度センサから加熱アスファルト混合物の温度を読み込んで記録するとともに、接近状態検知センサにより運搬車両が第1の所定距離まで接近したことが検知されたとき、運搬車両及びアスファルトフィニッシャに夫々設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の各温度を関連付けて帳票化し、接近状態検知センサにより転圧ローラが第2の所定距離まで接近したことが検知されたとき、転圧ローラに設置された温度センサから読み込んだ加熱アスファルト混合物の温度を更に関連付けて帳票化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運搬車両、アスファルトフィニッシャ及び転圧ローラにおける加熱アスファルト混合物の温度を自動的に計測して記録及び帳票化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】アスファルト舗装を舗設する建設機械の説明図である。
【
図2】運搬車両がアスファルトフィニッシャに加熱アスファルト混合物を供給する作業の説明図である。
【
図3】転圧ローラが加熱アスファルト混合物を転圧する作業の説明図である。
【
図4】舗設温度自動記録システムの一例を示す概要図である。
【
図5】アスファルト温度記録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】ストレージに記録されるアスファルト温度の説明図である。
【
図7】第1の帳票作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】アスファルト温度を帳票化した一例の説明図である。
【
図9】アスファルト温度を帳票化した一例の説明図である。
【
図10】アスファルト温度を帳票化した一例の説明図である。
【
図11】アスファルト温度を帳票化した一例の説明図である。
【
図12】第2の帳票作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】舗設温度自動記録システムの他の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
最初に、舗設温度自動記録システムを説明するに先立って、
図1~
図3を参照して、アスファルト舗装の舗設作業の概要について説明する。
【0011】
アスファルト舗装を舗設する建設機械として、
図1に示すように、加熱アスファルト混合物を運搬するダンプトラックなどの運搬車両100、運搬車両100により運搬された加熱アスファルト混合物を路盤RB上に敷き均すアスファルトフィニッシャ200、及びアスファルトフィニッシャ200により敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧する転圧ローラ300が使用される。ここで、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200、及び転圧ローラ300としては、当業者にとって周知かつ任意の建設機械を使用することができる。
【0012】
加熱アスファルト混合物を積載した運搬車両100は、
図2に示すように、アスファルトフィニッシャ200の前方からそのホッパに加熱アスファルト混合物を投入可能な位置まで後進し、荷台をダンプアップして加熱アスファルト混合物をアスファルトフィニッシャ200に供給し始める。そして、運搬車両100及びアスファルトフィニッシャ200は、運搬車両100からアスファルトフィニッシャ200に加熱アスファルト混合物を連続して供給可能な間隔を隔てたまま、同速度で一体となって前進する。このとき、運搬車両100からアスファルトフィニッシャ200に供給された加熱アスファルト混合物は、ホッパの底部に配置されたバーフィーダーにより後方に搬送され、スクリードにより路盤RBの左右方向に敷き均される。
【0013】
運搬車両100及びアスファルトフィニッシャ200が一体となって前進を開始すると、
図3に示すように、転圧ローラ300がアスファルトフィニッシャ200の後方から近付いて、アスファルトフィニッシャ200により敷き均された加熱アスファルト混合物を転圧して締め固める。なお、転圧ローラ300は、転圧可能な幅を超えて加熱アスファルト混合物を転圧する場合、前後進を繰り返すことで対応することができる。
【0014】
このように、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300が協働して、アスファルト舗装を舗設する。なお、上記のアスファルト舗装の舗設作業は、あくまで一例であることに留意されたい。
【0015】
図4は、舗設温度自動記録システム400の一例を示している。
舗設温度自動記録システム400は、運搬車両100に設置された温度センサ410及び無線通信ユニット420と、アスファルトフィニッシャ200に設置された温度センサ430、接近状態検知センサ440及び無線通信ユニット450と、転圧ローラ300に設置された温度センサ460及び無線通信ユニット470と、情報処理装置480と、を備えている。
【0016】
運搬車両100に設置された温度センサ410は、荷台に積載された加熱アスファルト混合物の温度(アスファルト温度)Td[℃]を計測可能な位置、例えば、荷台の所定箇所に取り付けられている。この温度センサ410は、接触式温度計又は非接触式温度計のいずれでもよいが、加熱アスファルト混合物の内部温度を計測可能な棒状の接触式温度計を使用することが望ましい。この場合、温度センサ410は、運搬車両100の荷台をダンプアップして加熱アスファルト混合物をアスファルトフィニッシャ200に供給しても脱落しないように、ワイヤなどにより荷台に接続して固定することが望ましい。ここで、接触式温度計は、株式会社マイゾックスが販売しているデジタルアスファルト温度計など、一般的に使用されているものでよいが、用途に応じて検温部を交換可能なものが望ましい。また、非接触式温度計は、赤外線温度計やサーモグラフィを使用することができる。なお、温度センサ410は、運搬車両100の荷台の底面に取り付けられた、シート状の接触式温度計であってもよい。
【0017】
運搬車両100に設置された無線通信ユニット420は、所定のサンプリング間隔、例えば、1分などの所定時間ごとに、温度センサ410により計測されたアスファルト温度Tdを情報処理装置480に送信する。無線通信ユニット420としては、例えば、無線LAN(WiFi)、公衆無線通信網を利用して任意のデータを送受信可能な機器を使用することができる(以下同様)。ここで、無線通信ユニット420は、アスファルト温度Tdを送信するとき、運搬車両100を一意に特定可能な識別子、及び温度計測時間を関連付けて送信する。なお、無線通信ユニット420は、温度センサ410と一体化されていてもよい(以下同様)。
【0018】
アスファルトフィニッシャ200に設置された温度センサ430は、スクリードにより左右方向に敷き均された加熱アスファルト混合物の温度(アスファルト温度)Ta[℃]を計測可能な位置、例えば、自走車両の本体やスクリードの後方に取り付けられている。アスファルトフィニッシャ200に対する温度センサ430の取り付けは、例えば、自走車両の本体や屋根に取り付けられたステー、ポールやブラケット、又は両面テープなどを使用することができる。また、アスファルトフィニッシャ200に設置された温度センサ430は、上述した接触式温度計又は非接触式温度計のいずれでもよいが、作業の妨げやアスファルト舗装の品質に影響を及ぼさない非接触式温度計を使用することが望ましい。
【0019】
アスファルトフィニッシャ200に設置された接近状態検知センサ440は、アスファルトフィニッシャ200に対する運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を検知するように構成されている。具体的には、接近状態検知センサ440は、アスファルトフィニッシャ200の前方から運搬車両100が第1の所定距離(例えば、5m)まで接近したか否か、及びアスファルトフィニッシャ200の後方から転圧ローラ300が第2の所定距離(例えば、5m)まで接近したか否かを検知するように構成されている。なお、第1の所定距離及び第2の所定距離は、例えば、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300のサイズや仕様を考慮して、異なる値に設定されていてもよい。
【0020】
接近状態検知センサ440としては、例えば、運搬車両100及び転圧ローラ300の前面に貼り付けられた特定の文字記号やバーコードなどを認識可能な画像認識装置、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位衛星システム)、RFID(Radio Frequency Identifier)、赤外線やレーザー光を利用した測距計などを使用することができる。ここで、接近状態検知センサ440として、例えば、株式会社シフトが販売する「カメレオンコード」(カラーバーコード)を使用する場合、カラーバーコードの大きさを適宜調整することで、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したときにカラーバーコードを認識可能となる特性を利用して、運搬車両100の接近を検知することができる(転圧ローラ300についても同様)。
【0021】
アスファルトフィニッシャ200に設置された無線通信ユニット450は、所定のサンプリング間隔、例えば、アスファルトフィニッシャ200が50cm走行するごとに、温度センサ430により計測されたアスファルト温度Ta、並びに接近状態検知センサ440により検知された運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を情報処理装置480に送信する。ここで、無線通信ユニット450は、アスファルト温度Ta、並びに運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を送信するとき、アスファルトフィニッシャ200を一意に特定可能な識別子、及び温度計測時間を関連付けて送信する。
【0022】
転圧ローラ300に設置された温度センサ460は、ローラにより転圧される前の加熱アスファルト混合物の温度(アスファルト温度)Tr[℃]を計測可能な位置、例えば、自走車両の前面に取り付けられている。転圧ローラ300に対する温度センサ460の取り付けは、例えば、自走車両の本体に取り付けられたステー、ブラケット、又は両面テープなどを使用することができる。また、転圧ローラ300に設置された温度センサ460は、上述した接触式温度計又は非接触式温度計のいずれでもよいが、作業の妨げやアスファルト舗装の品質に影響を及ぼさない非接触式温度計を使用することが望ましい。
【0023】
転圧ローラ300に設置された無線通信ユニット470は、所定のサンプリング間隔、例えば、転圧ローラ300が50cm走行するごとに、温度センサ460により計測されたアスファルト温度Trを情報処理装置480に送信する。ここで、無線通信ユニット470は、アスファルト温度Trを送信するとき、転圧ローラ300を一意に特定可能な識別子、及び温度計測時間を関連付けて送信する。
【0024】
情報処理装置480は、マイクロコンピュータ482、及び無線通信ユニット484を備えている。マイクロコンピュータ482は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、不揮発性メモリ、揮発性メモリなどを含んで構成されている。ここで、情報処理装置480としては、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、クラウドコンピューティングなどが一例として挙げられる。
【0025】
無線通信ユニット484は、運搬車両100から送信されたアスファルト温度Td、アスファルトフィニッシャ200から送信されたアスファルト温度Ta及び接近状態、並びに転圧ローラ300から送信されたアスファルト温度Trを受信して、マイクロコンピュータ482へと送出する。なお、無線通信ユニット484は、マイクロコンピュータ482に内蔵されていてもよい。
【0026】
次に、情報処理装置480に備えられたマイクロコンピュータ482のプロセッサが実行する、舗設温度自動記録処理について説明する。なお、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラムに従って、舗設温度自動記録処理を実行する。
【0027】
図5は、情報処理装置480が運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200、及び転圧ローラ300からアスファルト温度を含むデータを受信したことを契機として、マイクロコンピュータ482のプロセッサが実行する、アスファルト温度記録処理の一例を示している。
【0028】
ステップ10(
図5では「S10」と略記する。以下同様。)では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、受信データを解析して、データの送信元を特定可能な識別子、アスファルト温度の計測時間、及びアスファルト温度を関連付けたレコードを作成し、これをストレージに逐次格納して記録する。ここで、ストレージとしては、不揮発性メモリに限らず、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カードなど、可搬記録媒体であってもよい。その後、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、アスファルト温度記録処理を終了させる。
【0029】
かかるアスファルト温度記録処理によれば、情報処理装置480は、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200、又は転圧ローラ300からアスファルト温度を含むデータを受信すると、
図6に示すように、識別子、計測時間及びアスファルト温度を関連付けたレコードを作成し、これをストレージに逐次格納して記録する。従って、ストレージに格納されたレコードを解析することで、データの転送元におけるアスファルト温度及びその計測時間を取得することができる。
【0030】
図7は、情報処理装置480において明示の指示があったことを契機として、マイクロコンピュータ482のプロセッサが所定時間ごとに繰り返し実行する、第1の帳票作成処理の一例を示している。
【0031】
ステップ20では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、情報処理装置480の無線通信ユニット484及びアスファルトフィニッシャ200の無線通信ユニット450を利用して、アスファルトフィニッシャ200の接近状態検知センサ440から運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を読み込む。
【0032】
ステップ21では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したか否かを判定する。そして、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したと判定すれば(Yes)、処理をステップ22へと進める。一方、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100が第1の所定距離まで接近していないと判定すれば(No)、処理をステップ25へと進める。なお、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したか否かの判定は、運搬車両100の識別子が変化しない限り、同一の識別子を持つ運搬車両100に対して1回だけ行えばよい(以下同様)。
【0033】
ステップ22では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、情報処理装置480の無線通信ユニット484及び運搬車両100の無線通信ユニット420を利用して、運搬車両100の温度センサ410からアスファルト温度Tdを読み込む。このアスファルト温度Tdは、運搬車両100とアスファルトフィニッシャ200とが最接近したときのアスファルト温度、要するに、運搬車両100がアスファルト舗装現場に到着したときのアスファルト温度(到着時温度)であると見做すことができる。
【0034】
ステップ23では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、情報処理装置480の無線通信ユニット484及びアスファルトフィニッシャ200の無線通信ユニット450を利用して、アスファルトフィニッシャ200の温度センサ430からアスファルト温度Taを読み込む。このアスファルト温度Taは、アスファルトフィニッシャ200により加熱アスファルト混合物が敷き均された直後のアスファルト温度(敷き均し後温度)であると見做すことができる。
【0035】
ステップ24では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、
図8に示すように、運搬車両100を一意に特定可能な識別子、加熱アスファルト混合物の到着時温度(Td)及び敷き均し後温度(Ta)を関連付けたレコードを作成して帳票化し、これをストレージに格納して記録する。なお、
図8に示す例では、運搬車両100の識別子「a」に対して到着時温度「165℃」及び敷き均し後温度「125℃」が関連付けられている。
【0036】
ステップ25では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近したか否かを判定する。そして、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近したと判定すれば(Yes)、処理をステップ26へと進める。一方、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近していないと判定すれば(No)、第1の帳票作成処理を終了させる。なお、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近したか否かの判定は、運搬車両100の識別子が変化しない限り、同一の識別子を持つ運搬車両100に対して1回だけ行えばよい(以下同様)。
【0037】
ステップ26では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、情報処理装置480の無線通信ユニット484及び転圧ローラ300の無線通信ユニット470を利用して、転圧ローラ300の温度センサ460からアスファルト温度Trを読み込む。このアスファルト温度Trは、転圧ローラ300による初期転圧前のアスファルト温度(初期転圧前温度)であると見做すことができる。
【0038】
ステップ27では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、
図9に示すように、ステップ24において作成されたレコード(
図8参照)に対して、初期転圧前のアスファルト温度(Tr)を更に関連付けて帳票を更新する。その後、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、第1の帳票作成処理を終了させる。なお、
図9に示す例では、運搬車両100の識別子「a」に到着時温度「165℃」及び敷き均し後温度「125℃」が関連付けられたレコードに対して、初期転圧前温度「115℃」が更に関連付けられている。
【0039】
かかる第1の帳票作成処理によれば、情報処理装置480は、所定時間ごとに、アスファルトフィニッシャ200に対する運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を読み込む。そして、情報処理装置480は、運搬車両100が第1の所定距離まで接近すると、運搬車両100及びアスファルトフィニッシャ200におけるアスファルト温度Td及びTaを関連付けたレコードを作成して帳票化し、これをストレージに格納して記録する。また、情報処理装置480は、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近すると、上記のレコードに対して転圧ローラ300におけるアスファルト温度Trを更に関連付けて帳票を更新する。
【0040】
従って、運搬車両100によりアスファルト舗装現場に到着したアスファルト温度Td、アスファルトフィニッシャ200による敷き均し後のアスファルト温度Ta、及び転圧ローラ300による初期転圧前のアスファルト温度Trが自動的に計測されて記録及び帳票化される。このため、作業者が転圧ローラ300の直前において温度計測作業を行う必要がなくなり、轢過事故などが発生し難くなって作業の安全性を担保することができる。
【0041】
また、アスファルトフィニッシャ200に加熱アスファルト混合物を供給する運搬車両100が入れ替わると、上述した処理によって、
図10及び
図11に示すように、入れ替わった運搬車両100(識別子:b)についてアスファルト温度が帳票化される。このため、運搬車両100ごとに、運搬車両100によりアスファルト舗装現場に到着したアスファルト温度Td、アスファルトフィニッシャ200による敷き均し後のアスファルト温度Ta、及び転圧ローラ300による初期転圧前のアスファルト温度Trが自動的に計測されて記録及び帳票化される。従って、大規模なアスファルト舗装現場において複数の運搬車両100が頻繁に出入りしても、運搬車両100ごとに、加熱アスファルト混合物の温度計測結果が自動的に帳票化され、加熱アスファルト混合物の温度計測結果を帳票化する作業が不要となる。
【0042】
なお、情報処理装置480は、第1の帳票作成処理において運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300からアスファルト温度Td,Ta及びTrを読み込む代わりに、アスファルト温度記録処理によりストレージに記録されたレコードを参照し、これからアスファルト温度Td,Ta及びTrを抽出してもよい。この場合、情報処理装置480は、現在時間に最も近いレコードを抽出すればよい。
【0043】
図12は、情報処理装置480において明示の指示があったことを契機として、マイクロコンピュータ482のプロセッサが所定時間ごとに繰り返し実行する、第2の帳票作成処理の一例を示している。ここで、第2の帳票作成処理においては、所定条件が成立したときにストレージにアスファルト温度を記録するので、
図5に示すアスファルト温度記録処理を実行する必要はない。なお、第1の帳票作成処理と共通する処理については、重複説明を避ける目的で、その説明を簡略化する。必要があれば、第1の帳票作成処理の説明を参照されたい。
【0044】
ステップ30では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、アスファルトフィニッシャ200の接近状態検知センサ440から、運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を読み込む。
【0045】
ステップ31では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したか否かを判定する。そして、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100が第1の所定距離まで接近したと判定すれば(Yes)、処理をステップ32へと進める。一方、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100が第1の所定距離まで接近していないと判定すれば(No)、処理をステップ36へと進める。
【0046】
ステップ32では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、運搬車両100の温度センサ410からアスファルト温度Tdを読み込む。
ステップ33では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、アスファルトフィニッシャ200の温度センサ430からアスファルト温度Taを読み込む。
【0047】
ステップ34では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、アスファルト温度Td及びアスファルト温度Taをストレージに格納して記録する。
ステップ35では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、アスファルト温度Td及びアスファルト温度Taを関連付けたレコードを作成して帳票化し、これをストレージに格納して記録する。
【0048】
ステップ36では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近したか否かを判定する。そして、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近したと判定すれば(Yes)、処理をステップ37へと進める。一方、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、転圧ローラ300が第2の所定距離まで接近していないと判定すれば(No)、第2の帳票作成処理を終了させる。
【0049】
ステップ37では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、転圧ローラ300の温度センサ460からアスファルト温度Trを読み込む。
ステップ38では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、アスファルト温度Trをストレージに格納して記録する。
【0050】
ステップ39では、マイクロコンピュータ482のプロセッサが、ステップ35で作成したレコードに対してアスファルト温度Trを更に関連付けて帳票を更新する。その後、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、第2の帳票作成処理を終了させる。
【0051】
かかる第2の帳票作成処理によれば、第1の帳票作成処理の作用及び効果に加え、アスファルトフィニッシャ200に運搬車両100が接近すると、運搬車両100によりアスファルト舗装現場に到着したアスファルト温度Td、及びアスファルトフィニッシャ200による敷き均し後のアスファルト温度Taがストレージに記録される。また、アスファルトフィニッシャ200に転圧ローラ300が接近すると、転圧ローラ300による初期転圧前のアスファルト温度Trがストレージに記録される。
【0052】
従って、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300におけるアスファルト温度Td,Ta及びTrは、上記の条件が成立したときに記録されることとなる。このため、所定のサンプリング間隔でアスファルト温度を常時記録するものと比較して、データ数が大幅に減少し、これを解析する負荷を低減することができる。
【0053】
ここで、情報処理装置480のマイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300におけるアスファルト温度Td,Ta及びTrが個別の所定の温度範囲を逸脱したとき、例えば、管理者が所持するスマートフォンやタブレット端末にメールでその旨を通知して警告するようにしてもよい。また、マイクロコンピュータ482のプロセッサは、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧ローラ300に設置したモニタにその旨を通知して警告するようにしてもよい。このようにすれば、加熱アスファルト混合物の温度を所定の温度範囲に維持することができ、アスファルト舗装の品質低下を抑制することができる。
【0054】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したり、周知技術を更に組み合わせることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0055】
その一例を挙げると、舗設温度自動記録システム400について、
図13に示すように、情報処理装置480はアスファルトフィニッシャ200に設置されていてもよい。この場合、アスファルトフィニッシャ200に無線通信ユニット450が設置済みであるため、情報処理装置480は無線通信ユニット484を備える必要がない。
【0056】
また、加熱アスファルト混合物の温度測定結果の帳票化は、アスファルト温度Td,Ta及びTrを記録した後、例えば、事務所などにおいてバッチ処理で行ってもよい。この場合、アスファルトフィニッシャ200に対する運搬車両100及び転圧ローラ300の接近状態を判断可能とすべく、識別子、計測時間及びアスファルト温度に加えて、GNSSなどで測位された現在位置を関連付けたレコードをストレージに記録すればよい。
【0057】
さらに、アスファルトフィニッシャ200は、加熱アスファルト混合物を路盤上に敷き均すだけでなく、加熱アスファルト混合物をアスファルトやコンクリート上に敷き均してもよい。さらにまた、運搬車両100としては、ダンプトラックに限らず、流動性の高いグースアスファルト混合物を運搬するクッカー車であってもよく、この場合、グースアスファルト混合物はクッカー車の後方からアスファルトフィニッシャ200に供給される。
【符号の説明】
【0058】
100 運搬車両
200 アスファルトフィニッシャ
300 転圧ローラ
400 舗設温度自動記録システム
410 温度センサ
420 無線通信ユニット
430 温度センサ
440 接近状態検知センサ
450 無線通信ユニット
460 温度センサ
470 無線通信ユニット
480 情報処理装置
482 マイクロコンピュータ
484 無線通信ユニット
RB 路盤