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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/02 20060101AFI20240709BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20240709BHJP
   B23P 17/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B24C5/02 B
B24C5/02 C
B26F3/00 J
B26F3/00 N
B23P17/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020135917
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032288
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】藤間 正博
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225528(JP,A)
【文献】特開2011-020212(JP,A)
【文献】特開昭55-066406(JP,A)
【文献】特開2000-117637(JP,A)
【文献】特開2015-208825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/02
B23P 17/00
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、前記ノズルに液体を供給するポンプと、前記ノズルを移動する移動装置と、前記ポンプ及び前記移動装置を制御する制御装置とを備え、前記ノズルから噴出された液体ジェットを用いて対象物の改質、残留応力緩和、バリ取り、表面平滑化、又は切断を行う加工装置において、
前記ノズルの入口又は内側に付設され、前記液体ジェットの中心軸にて前記ノズルと前記対象物の表面の間の距離を検出する距離センサを備え、
前記制御装置は、
前記対象物を加工しないように前記ポンプの供給圧を低圧に制御すると共に、前記ノズルを移動させる第1の運転制御を実行し、
前記第1の運転制御中に得られた前記距離センサの検出結果により、前記対象物の表面の位置データを作成して記憶し、
前記対象物を加工するように前記ポンプの供給圧を高圧に制御すると共に、前記対象物の表面の位置データに基づいて前記ノズルを移動させる第2の運転制御を実行し、
前記第2の運転制御中、前記距離センサで検出された距離が所定値となるように前記ノズルの位置を制御することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、
前記液体中にアブレッシブ粒子を混入する粒子混入装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記第1の運転制御中、前記アブレッシブ粒子を混入しないように前記粒子混入装置を制御し、
前記第2の運転制御中、前記アブレッシブ粒子の混入と未混入を交互に繰返すように前記粒子混入装置を制御し、前記アブレッシブ粒子の未混入時に前記距離センサで検出された距離が所定値となるように前記ノズルの位置を制御することを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加工装置において、
前記距離センサは、超音波式又はレーザ式であることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから噴出された液体ジェットを用いて対象物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルと、ノズルに液体を供給するポンプとを備え、ノズルから噴出された液体ジェットを用いて対象物を加工する加工装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6438848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、次のような改善の余地がある。液体ジェットの到達距離(言い換えれば、ノズルと対象物の間の距離)には、有効加工距離がある。そのため、例えば、対象物の表面が平滑でない場合や、対象物の表面の位置データが既知でない場合に、ノズルと対象物の間の距離が所定値(有効加工距離)にならず、加工精度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工精度と加工効率を高めることができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ノズルと、前記ノズルに液体を供給するポンプと、前記ノズルを移動する移動装置と、前記ポンプ及び前記移動装置を制御する制御装置とを備え、前記ノズルから噴出された液体ジェットを用いて対象物の改質、残留応力緩和、バリ取り、表面平滑化、又は切断を行う加工装置において、前記ノズルの入口又は内側に付設され、前記液体ジェットの中心軸にて前記ノズルと前記対象物の表面の間の距離を検出する距離センサを備え、前記制御装置は、前記対象物を加工しないように前記ポンプの供給圧を低圧に制御すると共に、前記ノズルを移動させる第1の運転制御を実行し、前記第1の運転制御中に得られた前記距離センサの検出結果により、前記対象物の表面の位置データを作成して記憶し、前記対象物を加工するように前記ポンプの供給圧を高圧に制御すると共に、前記対象物の表面の位置データに基づいて前記ノズルを移動させる第2の運転制御を実行し、前記第2の運転制御中、前記距離センサで検出された距離が所定値となるように前記ノズルの位置を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工精度と加工効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態における加工装置の構成を表す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態における制御装置の制御手順を表すフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施形態における加工装置の構成を表す概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態における粒子濃度の経時変化の具体例を表す図である。
図5】本発明の第1の変形例における加工装置の構成を表す概略図である。
図6】本発明の第2の変形例における加工装置の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における加工装置の構成を表す概略図である。
【0011】
本実施形態の加工装置は、ノズル1と、ホース2を介しノズル1に水(液体)を供給するポンプ3と、ノズル1を移動する移動装置4と、ポンプ3及び移動装置4を制御する制御装置5とを備え、ノズル1から噴出された水ジェット6(液体ジェット)を用いて、気体11(詳細には、例えば空気)中に配置された対象物10を加工する。
【0012】
移動装置4は、例えば、X方向、Y方向、及びZ方向にそれぞれ移動可能なXステージ、Yステージ、及びZステージで構成されている。あるいは、多関節型のマニピュレータやロボットなどで構成されている。
【0013】
制御装置5は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。
【0014】
対象物10の加工は、例えば、対象物10の改質、残留応力緩和、バリ取り、表面平滑化、又は切断などである。加工装置は、例えば、自動車産業などの一般産業で用いられるか、若しくは、原子力関連の施設(詳細には、例えば、発電施設、核燃料製造施設、核燃料保管施設、核燃料再処理施設、廃棄物保管施設、解体施設、燃料デブリ保管施設、又は燃料デブリ処理施設等)で用いられる。
【0015】
本実施形態の最も大きな特徴として、加工装置は、ノズル1の外側(詳細には、ノズル1の入口側)に付設され、水ジェット6の中心軸にてノズル1と対象物10の表面の間の距離を検出する距離センサ7を更に備える。
【0016】
距離センサ7は、例えば超音波式である。距離センサ7から送信された超音波は、水ジェット6を伝播し、対象物10の表面で反射される。対象物10の表面で反射された超音波は、水ジェット6を伝播し、距離センサ7で受信される。距離センサ7又は制御装置5は、水中の音速と超音波の往復時間により、ノズル1と対象物10の表面の間の距離を演算する。
【0017】
制御装置5は、第1の機能として、距離センサ7の計測結果により、対象物10の表面の位置データを作成して記憶する。制御装置5は、第2の機能として、距離センサ7で検出された距離が所定値(有効加工距離)となるようにノズル1の位置を制御する。
【0018】
制御装置5の制御手順を、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における制御装置5の制御手順を表すフローチャートである。
【0019】
まず、制御装置5は、対象物10を加工しないようにポンプ3の供給圧を低圧に制御すると共に、ノズル1をX方向及びY方向に移動させる第1の運転制御を実行する(ステップS21)。そして、第1の運転制御中に得られた距離センサ7の検出結果により、対象物10の表面の位置データを作成して記憶する。
【0020】
その後、制御装置5は、対象物10を加工するようにポンプ3の供給圧を高圧に制御すると共に、対象物10の表面の位置データに基づいてノズル1をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させる第2の運転制御を実行する。第2の運転制御中、距離センサ7で検出された距離が所定値となるようにノズル1の位置を制御する。
【0021】
以上のように本実施形態では、制御装置5は、対象物10の表面の位置データを作成し、これに基づいてノズル1を移動させる。したがって、対象物10の表面の位置データが無い場合と比べ、ノズル1を効率よく移動させて対象物10を加工することができる。
【0022】
また、本実施形態では、距離センサ7は、水ジェット6の中心軸にてノズル1と対象物10の表面の間の距離を検出し、制御装置5は、距離センサ7で検出された距離が所定値となるようにノズル1の位置を制御する。したがって、加工精度と加工効率を高めることができる。
【0023】
本発明の第2の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態における加工装置の構成を表す概略図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0024】
本実施形態の加工装置は、ホース2Aを介し、ホース2の液体中にアブレッシブ粒子(詳細には、例えば、砥粒、金属粒、又はガーネット粒など)を混入する粒子混入装置8を更に備える。
【0025】
制御装置5は、上述した第1の運転制御中、アブレッシブ粒子を混入しないように、粒子混入装置8を制御する。
【0026】
制御装置5は、上述した第2の運転制御中、アブレッシブ粒子の混入と未混入を繰返すように、粒子混入装置8を制御する。具体的には、アブレッシブ粒子の濃度の経時変化が、例えば正弦波形(図4(a)参照)又は方形波形(図4(b)参照)等になるように、粒子混入装置8を制御する。そして、アブレッシブ粒子の未混入時に距離センサ7で検出された距離が所定値となるようにノズル1の位置を制御する。
【0027】
本実施形態では、液体中にアブレッシブ粒子を混入することにより、高度および効率的な加工を行うことができる。また、アブレッシブ粒子の未混入時に距離センサ7で検出された距離が所定値となるようにノズル1の位置を制御する。したがって、加工精度と加工効率を高めることができる。
【0028】
なお、第1及び第2の実施形態において、加工装置は、超音波式の距離センサ7を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば図5で示す変形例のように、加工装置は、レーザ式の距離センサ7Aを備えてもよい。距離センサ7Aから送信された光は、水ジェット6を伝播し、対象物10の表面で反射される。対象物10の表面で反射された光は、水ジェット6を伝播し、距離センサ7Aで受信される。距離センサ7A又は制御装置5は、水中の光速と光の往復時間や位相情報などにより、ノズル1と対象物10の表面の間の距離を演算する。
【0029】
また、第1及び第2の実施形態において、距離センサ7は、ノズル1の外側に付設された場合を例にとって説明したが、これに限られない。距離センサ7又は7Aは、ノズル1の内側に付設されてもよい(図5参照)。
【0030】
また、第1及び第2の実施形態において、加工装置は、ノズル1から噴出された水ジェット6を用いて、気体11中に配置された対象物10を加工する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば図6で示す変形例のように、加工装置は、構造物12内に溜められた液体13(詳細には、例えば水)中に配置された対象物10を加工してもよい。また、加工装置は、水ジェット以外の他の液体ジェットを用いて、対象物10を加工してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ノズル
3 ポンプ
4 移動装置
5 制御装置
6 水ジェット(液体ジェット)
7,7A 距離センサ
8 粒子混入装置
10 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6