(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/36 20100101AFI20240709BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L33/36
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2020149918
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】小幡 俊之
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-150386(JP,A)
【文献】特開2009-194365(JP,A)
【文献】特開2008-288548(JP,A)
【文献】特開2014-93318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/36
H01L 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層、前記半導体層にオーミック接触したオーミック電極、および、前記オーミック電極の表面に配置されたパッド電極を含む半導体発光素子と、配線電極が形成された基板と、前記パッド電極と前記配線電極とを接合する接合部材とを有し、
前記接合部材は、2以上の金属を含み、
前記パッド電極は、
前記オーミック電極の表面に配置された第1パッドと、前記第1パッドの表面に積層された第2パッドとを含み、
前記第1パッドは、2以上の前記金属のうちの少なくとも第1の金属の拡散を妨げる
Niにより構成され
たブロック層と
、前記第1の金属と合金を構成する材料によって構成
された中間層とを、前記オーミック電極側から順に積層した積層体を、1組以上繰り返し積層した構成であり、
前記第2パッドは、Niにより構成された第2パッド用ブロック層を少なくとも1層含み、
前記オーミック電極の周囲の端面を覆うように、第1絶縁層が配置され、当該第1絶縁層の端部は、前記第1パッドの前記ブロック層と前記オーミック電極との界面に挿入されており、
前記第1絶縁層で覆われた前記オーミック電極の周囲の端面と、前記第1パッドの周囲の端面とを覆うように第2絶縁層が配置され、当該第2絶縁層の端部は、前記第1パッドと前記第2パッドとの界面に挿入されている、
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記中間層の材料と前記第1の金属との前記合金は、金属間化合物であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体発光装置であって、前記接合部材は、前記第1の金属と第2の金属との合金であり、
前記中間層を構成する材料と前記第1の金属との合金の融点は、前記接合部材の合金の融点よりも高いことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体発光装置であって、前記中間層は、前記第2の金属によって構成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の半導体発光装置であって、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層で覆われた前記オーミック電極の周囲の端面と、前記第2絶縁層で覆われた前記第1パッドの周囲の端面と、前記第2パッドの周囲の端面とを覆うように第3絶縁層が配置されている
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体発光装置であって、
前記第2パッドは、前記第1パッドの表面に配置された前記第2パッド用ブロック層と、前記第2パッド用ブロック層の表面に順に積層された、第2パッド用中間層および素子側配線電極層とを含み、前記第2パッド用中間層は、前記第1の金属と合金を構成する材料によって構成され、
前記第3絶縁層の端部は、前記素子側配線電極の表面の周縁部を覆っている
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記接合部材は、AuSnからなり、
前記中間層は、Auを含む層であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
請求項
1、5および6のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、
前記オーミック電極と前記第1パッドの前記ブロック層との間、および、
前記第1パッドの前記ブロック層と前記中間層との間には、それぞれTi層が
挿入されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
請求項6に記載の半導体発光装置であって、前記第1パッドと前記第2パッドの前記第2パッド用ブロック層との間、および、前記第2パッド用ブロック層と前記第2パッド用中間層との間には、それぞれTi層が挿入されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
請求項
1に記載の半導体発光装置であって、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層は、SiO
2層またはSi
3N
4層である、ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項11】
請求項
5に記載の半導体発光装置であって、
前記第3絶縁層は、SiO
2層またはSi
3N
4層である、ことを特徴とする半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子をAuSn等の接合部材により基板に接合された半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一面上にp電極とn電極の両方が形成された半導体発光素子を、サブマウント側の電極に対して、AuSn等の接合部材を用いて、フリップチップ実装により接合する技術が知られている。特許文献1には、AlGaN層の上にp電極とn電極が形成された半導体発光素子の構造の一例が開示されている。特許文献1では、耐湿性を向上させるために、電極とAlGaN層の接触領域を取り囲むように耐湿性のある保護層を配置している。
【0003】
また、特許文献2では、上面電極と裏面電極を備えた電力用半導体素子の裏面電極を、AuSn等の接合部材を介して放熱体に固定した構造の装置において、Snが溶出して半導体素子の裏面全面に多孔性領域を形成し、熱伝導を阻害するため、半導体素子が加熱されて短時間で不良になるという問題を解決する構造を提案している。すなわち、裏面電極が半導体基板側から、チタン層、ニッケル層、金又は銀の層を順次積層した構造とし、これらの3層の膜厚を調整しておくことにより、Snが半導体素子へ侵入するのを防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6331204公報
【文献】特開2003-347487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AuSnを接合部材として、フリップチップ実装によりサブマウントと接合した半導体発光素子においては、かかる接合の際に、オーミック電極中にAuSn接合部材のSnが拡散する場合がある。Snが拡散したオーミック電極は、局所的に接触抵抗が上昇する箇所が発生するため、通電した際に接触抵抗が低い部位に電流が集中して流れ込んでジュール熱を発し、その箇所のオーミック電極が破壊される。
【0006】
特許文献2では、Ni層をSnの侵入を防ぐブロック層として挿入しているが、ブロック層として機能させるためには、特許文献2に記載されているように、ニッケル層の厚みを0.4~2μmの厚膜に設定する必要がある。
【0007】
しかしながら、Ni層は、膜応力が大きく、その応力は、収縮応力であるため、Ni層自身とその下に配置されている電極層を、半導体素子から引き剥がす方向に作用し、膜剥がれを生じさせることがある。
【0008】
本発明の目的は、合金を接合部材として、半導体発光素子を基板に接合する際に、接合部材を構成する金属が拡散してオーミック電極に到達するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、半導体層、半導体層にオーミック接触したオーミック電極、および、前記オーミック電極の表面に配置されたパッド電極を含む半導体発光素子と、配線電極が形成された基板と、パッド電極と配線電極とを接合する接合部材とを有する。接合部材は、2以上の金属を含む。パッド電極は、2以上の金属のうちの少なくとも第1の金属の拡散を妨げる材料により構成された2層のブロック層と、2層のブロック層の間に挟まれた中間層との積層体を含む。中間層は、第1の金属と合金を構成する材料によって構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体発光素子を基板に接合する際に、接合部材に含まれる金属が拡散しても、ブロック層がその拡散を妨げ、さらに中間層が拡散した金属と合金を構成することによってさらなる拡散を抑制するため、オーミック電極への到達し、不具合を生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1の半導体発光装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について図面を用いて以下に説明する。
【0013】
<<実施形態1>>
実施形態1として、
図1の半導体発光装置について説明する。
【0014】
( 構造 )
実施形態1の半導体発光装置は、
図1にその断面図を示したように、半導体発光素子1と、サブマウント基板3とを、接合部材2により接合した構造である。
【0015】
半導体発光素子1は、基板70と、半導体層10と、半導体層10にオーミック接触したオーミック電極11、21と、オーミック電極11、21の表面にそれぞれ配置されたパッド電極4、5を含む。半導体層10は、オーミック電極11に接している領域と、オーミック電極21に接している領域とで半導体型が異なる。ここでは、一例としてオーミック電極11が接している半導体層10の領域は、p型半導体であり、オーミック電極21が接している半導体層10の領域は、n型半導体である。
【0016】
サブマウント3は、サブマウント基板32の上に、配線電極31、33を形成した構成である。
【0017】
パッド電極4、5は、接合部材2により、それぞれサブマウント基板3上の配線電極31、33に接続されている。
【0018】
接合部材2は、半導体発光素子1のパッド電極4、5と、サブマウント3の配線電極31、33とをそれぞれ接合している。接合部材2は、2以上の金属(第1の金属および第2の金属)を含む低融点はんだまたは共晶はんだを用いることができる。ここでは、一例として、AuSnを接合部材2として用いる。
【0019】
パッド電極4は、接合部材2に含まれる2以上の金属のうちの少なくとも第1の金属(例えばSn)の拡散を妨げる材料により構成された2層のブロック層12,14と、2層のブロック層12,14の間に挟まれた中間層13との積層体を含んでいる。
【0020】
ブロック層12、14は、Ni、Pt、TiおよびWのうちの少なくとも1種類を含むものを用いることができる。
【0021】
中間層13は、第1の金属(例えばSn)と合金を構成する材料によって構成されている。例えば、中間層13は、接合部材2に含まれる第1の金属と金属間化合物を構成する材料(例えばAu)を含むことが好ましい。
【0022】
接合部材2が、第1の金属と第2の金属との合金である場合、中間層13を構成する材料と第1の金属との合金の融点が、接合部材2の合金の融点より高くなるように、中間層13を構成する材料を選択することが望ましい。例えば、接合部材2が第1の金属と第2の金属との合金である場合、中間層13を第2の金属によって構成する。
【0023】
具体的には例えば、接合部材2がAuSnからなる場合、中間層13としては、Auを含む層(例えば、Au層)を用いる。また、ブロック層12,14は、Niを含む層(例えば、Ni層)を用いる。
【0024】
このような構造にすることにより、本実施形態の半導体発光装置の製造時において、半導体発光素子1のパッド電極4とサブマウント3の配線電極31とを接合部材2によって接合する工程において、接合部材2を加熱して溶融しても、接合部材2の第1の金属の拡散は、ブロック層12,14と中間層13により抑制される。
【0025】
具体的には、加熱された接合部材2から拡散した第1の金属は、ブロック層14によってその拡散が抑制されるが、一部の第1の金属がブロック層14を通過した場合であっても、中間層13において、中間層13を構成する金属と合金を構成することにより、さらなる拡散が抑制される。
【0026】
すなわち、拡散により中間層13に到達した第1の金属は、中間層13を構成する金属と合金を構成することにより、接合部材2とは異なる合金組成となり、その融点は、接合部材2の融点よりも高いため、接合部材2が液相で存在する接合時の温度では液相では存在できず、固相に変化する。よって、第1の金属のさらなる拡散を抑制することができる。
【0027】
ブロック層12は、中間層13に到達した第1の金属がオーミック電極11に拡散するのをさらに抑制する。
【0028】
このように、本実施形態の半導体発光装置は、ブロック層14から漏れでた第1の金属がオーミック電極11に到達して拡散するのを防ぐことができる。
【0029】
また、パッド電極4の最表面層(素子側配線電極)15は、接合部材2と接するため、接合部材2に対して接着力の高い材料で構成されていることが望ましい。例えば、接合部材2がAuSnからなる場合、最表面層15としてはAu層を配置する。
【0030】
ブロック層12,14(例えばNi層)と中間層13(例えば、Au層)との間には、それぞれTi層が接着層として配置されていることが望ましい。
【0031】
また、パッド電極4は、複数層の中間層13を含んでいてもよい。その場合、パッド電極4は、ブロック層と、中間層とを交互に複数組積層した構造にすればよい。
【0032】
つぎに、n型半導体に接するオーミック電極21に積層されているパッド電極5について説明する。
【0033】
パッド電極5は、パッド電極4と同様の構成であり、2層のブロック層22,24と、その間に挟まれるように配置された中間層23と、最表面層(素子側配線電極)25を備えている。これらの各層の作用および材質は、パッド電極4のブロック層12,14と、中間層13と、最表面層15と同様である。
【0034】
パッド電極5は、接合部材2により、サブマウント3の配線電極33と接続されている。
【0035】
製造時に、パッド電極5を接合部材2により配線電極33と接合する工程では、接合部材2から拡散した第1の金属は、ブロック層24によりその拡散が抑制され、中間層23において中間層23を構成する金属と合金を構成し、その拡散がさらに抑制される。中間層23を通過した第1の金属があった場合には、ブロック層22によって、その拡散がさらに抑制される。
【0036】
(製造方法)
本実施形態の半導体発光装置の製造方法を簡単に説明する。半導体発光素子の半導体層10上に、オーミック電極11,21を形成し、それらの上に上述したブロック層12,14,22,24(例えばNi層)の間に中間層13,23を挟んだ構造のパッド電極4,5を形成しておく。
【0037】
サブマウント3には、配線電極31,33を形成し、その上に接合部材2を配置しておく。
【0038】
半導体発光素子1とサブマウント3をそれぞれ、供給トレーからピックアップし、それぞれに設けておいたアライメントマークが一致する様にカメラ認識等により位置合わせし、サブマウント3の配線電極31,33上の接合部材2に、パッド電極4,5がそれぞれ接するように半導体発光素子1を搭載する。
【0039】
その後、所定の負荷荷重をかけた状態で、半導体発光素子1とサブマウント3を加熱し、接合部材2を所定の時間溶融させる。
【0040】
この加熱工程において、溶融した接合部材2の第1の金属(例えばSn)がパッド電極4、5に拡散するが、上述したように、ブロック層14,24によりその拡散が抑制される。拡散した第1の金属は、中間層13、23において、中間層23を構成する金属(例えば第2の金属)と合金を構成し、その拡散がさらに抑制される。中間層13、23を通過した第1の金属があった場合には、ブロック層12、22によって、その拡散がさらに抑制される。
【0041】
なお、接合部材2の溶融時は、接合部材2が酸化しない様に、雰囲気中の酸素が低減した状態に保つことが好ましい。
【0042】
所定の時間、加圧・加熱接合した後、冷却工程を経て、フリップチップ型の半導体発光装置が製造される。
【0043】
上述してきたように、本実施形態の半導体発光装置は、その製造工程において、接合部材2を融点よりも高温の温度に加熱しても、電極パッド4,5が接合部材2の第1の金属の拡散を抑制するため、オーミック電極11、21まで第1の金属が到達するのを防止できる。よって、オーミック電極11、21において、金属の拡散により局所的に接触抵抗が上昇することがないため、接触抵抗の低い部位に電流が集中する現象も発生せず、オーミック電極が破壊される等の不良の発生を抑制できる。
【0044】
上述してきた
図1の半導体発光装置は、半導体発光素子1をサブマウント基板3に接合部材2によってフリップチップ実装した構成であるが、本実施形態は、フリップチップ実装に限られるものではなく、一つの半導体型のオーミック電極のみがサブマウント基板に接合部材で接合される構造に適用することもちろん可能である。
【0045】
<<実施形態2>>
次に、実施形態2の半導体発光装置について、
図2を用いて説明する。
【0046】
実施形態2の半導体発光装置は、実施形態1同様のブロック層と中間層とを含むパッド電極4,5を備える。このとき、ブロック層としてNi層を含むものを用いた場合、Ni層は膜応力が大きく、その応力は収縮応力であるために、Ni層自身とその下に配置されているオーミック電極11,21等を、半導体層10から引き剥がす向きに作用する。また、接合部材2によりサブマウント3と半導体発光素子1とを接合する加熱工程において、Ni層の収縮力に加えて、熱応力が加わり、膜剥がれを生じさせやすい。そこで、実施形態2では、パッド電極4,5の周囲が絶縁層61,62,63によって覆われた構成にすることにより、パッド電極4,5の膜剥がれを防止する。
【0047】
図2は、実施形態2の半導体発光装置の断面図である。
【0048】
図2の半導体発光装置において、
図1の半導体発光装置と同様の構成については、説明を省略し、異なる構成について以下詳しく説明する。
【0049】
パッド電極4、5は、オーミック電極11,21の上に配置された第1パッド4a、5aと、その上に積層された第2パッド4b、5bを含む。
【0050】
第1パッド4a,5aは、例えば、オーミック電極11,21側から順に、(Ti/Ni/Ti/Au)/(Ti/Ni/Ti/Au)の層を順に積層した構成を含む。これらの層のうち、Ni層は、実施形態1で説明したブロック層12,14または22、24である。Au層は、中間層13、23である。Ti層は、Au層とNi層の接着層である。
【0051】
第2パッド4b、5bは、例えば、オーミック電極11,21に近い側から順に(Ti/Ni/Ti/Au)の層を順に積層した構成を1以上含む。これらの層のうちNi層は、実施形態1で説明したブロック層14または24である。最表面のAu層は、素子側配線電極15である。Ti層は、Au層とNi層の接着層である。
【0052】
ブロック層12、14または22,24と、中間層13,23の機能については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
第1パッド4a,5a中の複数のブロック層12,14または22,24の膜厚は、合計500nm以上であることが望ましい。例えば、ブロック層12を340nm、ブロック層14を170nmとする。
【0054】
第2パッド4b、5bのブロック層(Ni)は、例えば340nmとする。
【0055】
ブロック層12,14または22,24は、Niに限らず、Pt、Ti、W、の少なくとも1種類を含むものを用いることができる。
【0056】
中間層であるAu層の膜厚は例えば275nmにする。
【0057】
オーミック電極11の周囲には端面を覆うように、絶縁層61が配置されている。絶縁層61の端部は、第1パッド4aとオーミック電極11との界面に挿入されている。
【0058】
第1パッド4aの周囲の端面とオーミック電極11の絶縁層61で覆われた周囲には、それらを覆うように、絶縁層62が配置されている。絶縁層62の端部は、第1パッド4aと第2パッド4bとの界面に挿入されている。
【0059】
同様に、第1パッド5aとオーミック電極21の周囲の端面には、それらを覆うように、絶縁層62が配置されている。絶縁層62の端部は、第1パッド5aと第2パッド5bとの界面に挿入されている。
【0060】
第2パッド4b、5bおよび素子側配線電極15,25の周囲の端面には、それら覆うように絶縁層63がそれぞれ配置されている。絶縁層63の端部は、素子側配線電極15,25の表面(サブマウント3に対向する面)の周縁部をそれぞれ覆っている。
【0061】
絶縁層61~63としては、SiO2層またはSi3N4層を用いる。その膜厚は、100nm~1000nmであることが望ましい。
【0062】
このように、オーミック電極11,21、第1パッド4a、5a、第2パッド4b、5bおよび素子側配線電極15,25の周囲の端面は、絶縁層61~63によって覆されているため、第1パッド4a,5aおよび第2パッド4b、5b内のNi層(ブロック層)に収縮応力が生じても、第1パッド4a,5aおよび第2パッド4b、5bがオーミック電極11,21または半導体層10から剥がれるのを防止できる。
【0063】
さらに、絶縁層61~62の端部を、オーミック電極11と第1パッド4aとの界面、第1パッド4a、5aと第2パッド4b,5bとの界面に挿入し、絶縁層63の端部を、素子側配線電極15,25の表面周縁部に配置したことにより、オーミック電極11と、第1パッド4a、5a、第2パッド4b、5bの周縁部は、絶縁層61~63によって半導体層10側に押し付けられる。よって、第1パッド4a,5aおよび第2パッド4b、5b内のNi層(ブロック層)の収縮応力と、熱応力により、半導体層10からはがれる方向の力が作用しても、周縁部を絶縁層61~63によって抑え、膜剥がれをより効果的に防ぐことができる。
【0064】
本実施形態2の層構造の半導体発光装置を、接合部材2としてAuSn(Au70wt%、Sn30wt%)を用いて、実施形態1で説明した製造工程により製造し、Snの拡散濃度を計測する実験を行った。接合部材2の膜厚は、2μm以上(3±1μm)、接合工程の加熱温度335℃、加熱時間30秒とした。
【0065】
その結果、第1パッド4a、5aの中間層であるAu層の表層部(接合部材2に近い側)では、Auが拡散したSnと反応し、SnとAuとの金属間化合物が形成されていた。Au層の厚さ方向にオーミック電極11に近づくに従って、Sn濃度は、表層部の半分程度まで減少し、AuSn組成変化に伴うSn拡散抑制効果が確認できた。
【0066】
この実験により、拡散をAu層で抑制する為には、約500nm以上の膜厚でAu層を形成すれば良いことがわかった。
【0067】
<<実施形態3>>
実施形態3の半導体発光装置について
図3を用いて説明する。
【0068】
図3は、半導体発光装置の半導体発光素子の断面図である。
図3の半導体発光素子は、実施形態2の半導体発光素子1と同様の構成であるが、絶縁層63を備えていない。
【0069】
図3のように絶縁層61、62のみを備える構成であっても、第1パッド4aの膜剥がれを抑制できるため、一定の膜剥がれ抑制効果を得られる。
【0070】
他の構成および作用効果は、第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0071】
<<実施形態4>>
実施形態4の半導体発光装置について
図4を用いて説明する。
【0072】
図4は、半導体発光装置の半導体発光素子の断面図である。
図4の半導体発光素子は、オーミック電極11、第1パッド4a、第2パッド4bおよび素子側配線電極15の周囲の端面を絶縁層65により一体に覆っている。絶縁層65の端部は、素子側配線電極15の表面の周縁部を覆っている。
【0073】
図4のように1枚の絶縁層65のみでも、第1パッド4a、第2パッド4b等の膜剥がれを抑制できる。
【0074】
他の構成および作用効果は、第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0075】
1…半導体発光素子、2…接合部材、3…サブマウント基板、4、5…パッド電極、10…半導体層、11,21…オーミック電極、12,14、22,24…ブロック層、13、23…中間層