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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ギヤ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/06 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F16H55/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020157458
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051142
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健二朗
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 和幸
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-295643(JP,A)
【文献】特開平10-196767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に周方向に並ぶ複数の歯部が一体に設けられた外周リムと、
前記外周リムの内側で肉抜き部により周方向で互いに離間するように配置された複数の補強リブと、
を有し、
前記複数の補強リブは、前記複数の歯部の間の各歯溝のそれぞれと径方向で連続する位置で、前記外周リムに接合する
ギヤ。
【請求項2】
樹脂製ギヤであり、
前記複数の補強リブどうしの間の前記肉抜き部は、前記複数の歯部に径方向で隣接して配置されている、
請求項1に記載のギヤ。
【請求項3】
いずれかの前記肉抜き部から対応する前記歯部内へ延びるようにウェルドラインが形成されている、
請求項1又は2に記載のギヤ。
【請求項4】
前記外周リムの内側には、中央側から放射状に延びる複数の内周側リブの外端が接合する内周リムが設けられ、
前記複数の補強リブのそれぞれは、前記外周リムと前記内周リムとの間を接続する、
請求項1に記載のギヤ。
【請求項5】
前記歯溝の位置は、前記補強リブに対して前記外周リムを介して径方向で連続する位置に位置する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のギヤ。
【請求項6】
前記補強リブの周方向の厚みは、歯元のリム厚である前記外周リムの放射方向の厚みの1/3から2/3である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のギヤ。
【請求項7】
複数の前記歯部は、歯幅方向で傾斜するはすば歯車であり、
前記複数の補強リブは、前記外周リムにおいて歯幅方向で離間する両面のそれぞれの周方向で互いに離間するように配置され、
前記外周リムとの接合位置が、前記両面のそれぞれにおける前記歯部間の歯溝の位置と周方向で対応する、
請求項1から6の何れか一項に記載のギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の機械装置には、入力された回転を減速して出力する減速機が組み込まれている。このような減速機は、例えば、互いに噛合する複数のギヤを有する。
【0003】
ギヤとしては、特許文献1に示すように、射出成形により製作され、外周に歯部を備えた成形プラスチック歯車が知られている。成形プラスチック歯車は、金属製歯車と比較して、強度は劣るものの、騒音が少なく、耐摩耗性、耐薬品性に優れるとった利点を有し、更に、金属製歯車と比較して軽量であり、精密な成形で大量生産を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3439317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラスチック成形を行う場合、成形品となる際の樹脂の収縮量は、肉厚の薄い領域よりも厚い領域において大きくなることが知られている。
成型品としての成形プラスチック歯車を成形する場合においても同様に、所定の肉厚(例えば、2.5mm程度)以上の肉厚にすると、樹脂の収縮により、ボイド(空隙)やヒケ(凹み)が発生する可能性が高くなる。
【0006】
一般的に成形プラスチック歯車の強度を確保するには、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)やAGMA(American Gear Manufacturers Association)等で規定されているように、歯部の歯元で一体に設けられたリング形状の部位であるリムの厚みを、歯たけよりも大きく(1.2倍以上)する必要がある。
【0007】
歯たけを大きくして、大型の歯車の成形品を製作しようとする場合、強度上、上記の規定を満たすように、歯たけのリム厚を設定することになる。このように設定される肉厚は、所定の肉厚以上になって、ボイドによる強度低下やヒケによる精度低下が起きやすいという問題があるが、成形プラスチック歯車でも歯たけの大きい歯車を使用したいという要望があった。
【0008】
本発明の目的は、成形品であっても、精度、強度、及び耐久性に優れた歯の大型化が可能なギヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るギヤの一態様は、
外周面に周方向に並ぶ複数の歯部が一体に設けられた外周リムと、
前記外周リムの内側で肉抜き部により周方向で互いに離間するように配置された複数の補強リブと、
を有し、
前記複数の補強リブは、前記複数の歯部の間の各歯溝のそれぞれと径方向で連続する位置で、前記外周リムに接合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、射出成型品であっても、精度、強度、及び耐久性に優れた歯の大型化が可能なギヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係るギヤの外観斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るギヤの正面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るギヤの説明に供する図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るギヤの前方斜視図である。
図6】本発明の実施の形態2に係るギヤの後方斜視図である。
図7】本発明の実施の形態2に係るギヤの正面図である。
図8図7のB-B線断面図である。
図9】本発明の実施の形態3に係るギヤの前方斜視図である。
図10】本発明の実施の形態3に係るギヤの後方斜視図である。
図11】本発明の実施の形態3に係るギヤの正面図である。
図12図11のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。尚、後述する実施の形態に係るギヤは、本発明に係るギヤの一例であり、本発明は実施の形態により限定されない。
【0013】
[実施の形態1]
以下、図1図4を参照して、本発明の実施の形態1に係る歯車1について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態1に係るギヤの外観斜視図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係るギヤの正面図である。また、図3は、図2のA-A線断面図である。
【0015】
以下の歯車1の説明において、軸方向は、歯車1の中心軸に平行な方向を意味し、歯幅方向と平行である。又、径方向は、歯車1の径方向を意味する。径方向の外側は、径方向において歯車1の中心から離れる方向を意味し、放射方向とも称する。径方向の内側は、径方向において歯車1の中心に向かう方向を意味する。又、周方向は、歯車1の中心軸を中心とした円の円周方向を意味する。
【0016】
<歯車>
歯車1は、ギヤの一例に該当し、平歯車である。歯車1は、他のギヤと噛み合った状態で、例えば、自動車のパワースライドドア等の機械装置に組み込まれる。
【0017】
歯車1は、合成樹脂製の円板状であり、強化繊維(例えば、ガラス繊維、カーボンファイバー)を含む合成樹脂で形成されてもよい。また、歯車1は、金属で形成されてもよい。
【0018】
具体的には、歯車1は、複数の歯部3、リング状の外周リム4、補強リブ5、外周リムの内周側に同心円状に配置される内周リム6、内周側リブ7、ウェブ81、82、及び、中央に設けられる環状部2を一体に有する。環状部2は、歯車1の軸となる部位であり、開口部21を有し、軸方向で突出する筒状体である。
【0019】
歯部3は、外周リム4の外周面に一体に形成されている。歯部3は、外周リム4の外周面から径方向外方に突出して設けられており、外周リム4の外周面に、周方向に一様に並んで設けられている。複数の歯部3は、本実施の形態では、歯車1の環状部2としてのボスの中心軸に対して平行に切られた、いわゆる平歯車である。
【0020】
外周リム4は、外周面に、複数の歯部3と、歯部3の間の歯溝33とを周方向で交互に有し、歯部3の歯幅と同じ幅(軸方向の厚み)を有している。なお、外周リム4の径方向の厚みは、成形の際にボイド、ヒケが発生しない厚み(例えば、2.5mm未満)とする。
【0021】
外周リム4の内周側には、ウェブ82が接合され、ウェブ82上には、複数の補強リブ5が放射状に配置されている。
【0022】
補強リブ5は、外周リム4の内側で肉抜き部92により周方向で互いに離間するように配置されている。補強リブ5は、外周リム4に対して、複数の歯部3どうしの間の歯溝33の位置に周方向で対応する位置で接合している。
【0023】
補強リブ5は、外周リム4と同じ幅(軸方向の厚み)を有する。補強リブ5と周方向に隣接して、肉抜き部92が配置されている。肉抜き部92は、外周リム4及び内周リム6との間に補強リブ5とウェブ82とにより形成される。肉抜き部92は、環状部2の軸方向と平行な方向に開口して形成されている。補強リブ5及び肉抜き部92により、成形時における外周リム4の内周側のボイドあるいはヒケの発生が防止される。
【0024】
補強リブ5の周方向の厚みは、外周リム4の放射方向の厚みよりも薄い。例えば、補強リブ5の周方向の厚みは、外周リム4の放射方向(径方向)の厚み(歯元のリム厚)の1/3から2/3である。これにより、補強リブ5の強度を確保しつつ、肉抜き部92を小さくしすぎることがなく、射出成形により確実に肉抜きを形成する金型を確保できる。
【0025】
補強リブ5の中心側の端部(基端部)は、内周リム6に接合されている。補強リブ5は、ここでは、外周リム4と内周リム6との間に放射状に配置され、その外端と、内端で外周リム4と内周リム6の双方に接合されている。補強リブ5は、外周リム4と内周リム6との間に、周方向で、肉抜き部92と交互に配置されている。
【0026】
補強リブ5は、外周リム4を介して、複数の歯部3どうしの間の歯溝33が、径方向で連続する位置に位置する。これにより、補強リブ5は、歯部3が他のギヤの歯部と歯合した際に荷重のかかる歯溝33を補強する。
【0027】
複数の補強リブ5どうしの間の肉抜き部92の位置は、複数の歯部3のそれぞれの位置に周方向で対応している。
具体的には、肉抜き部92は、歯車1において、外周リム4を挟んで複数の歯部3の歯元と径方向で近接する位置に配置、つまり、肉抜き部92において放射方向で延在する位置に配置されている。
【0028】
肉抜き部92は、補強リブ5に挟まれていることから、成形の際に内周側から補強リブ5を流れる樹脂は、肉抜き部92を迂回して歯部3内で合流する。このため、肉抜き部92から対応する歯部3内へ延びるようにウェルドラインW1が形成されている。
【0029】
内周リム6は、外周リム4及び環状部2と同心円上に配置されたリング状体であり、外周リム4に比較して、半径だけが異なりその他の構成は同様である。例えば、内周リム6は、外周リム4と同じ幅(軸方向の厚み)、厚み(径方向の厚み)を有する。
【0030】
内周リム6には、内周リム6の内周側で環状部2との間に配置されウェブ81が接続されている。ウェブ81は、内周リム6と環状部2とを接続しており、ウェブ81上には、内周側リブ7が放射状に延在して配置され、内周側リブ7は、環状部2及び内周リム6を接合している。
【0031】
なお、内周側リブ7の本数は任意であり、ゲート(ゲート痕Gで示す)から図示しない成形金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂により成形される際に、歯元にウェルドラインWが形成されないように配置されている。ウェルドラインWは、隣り合うゲートG間の中央において溶融樹脂が合流することに起因するものであり、径方向に沿って直線状に延びるように形成されるが、本実施の形態では、歯溝33上には位置していない。
【0032】
ゲートGは、内周リム6の内側で、内周リム6に連続する部位に形成される。本実施の形態では、内周側リブ7により挟まれるウェブ81のそれぞれに、ゲート(ゲート痕Gで示す)が位置するように構成されている。
歯車1では、周方向で隣り合うゲートGの中央部分に、内周側リブ7が配置されている。射出成形により歯車1を成形するときに、それぞれのゲートGからキャビティ内に流れる溶融樹脂が、周方向で隣り合うゲートGからの溶融樹脂と合流する際に、内周側リブ7で合流し、ギヤの内周側から外周側に流れることとなる。
【0033】
<本実施の形態の作用・効果>
図4は、本発明の実施の形態1に係るギヤの説明に供する図である。
歯車1は、外周面に周方向に並ぶ複数の歯部3が一体に設けられたリング状の外周リム4と、外周リム4の内側で肉抜き部により周方向で互いに離間するように配置された複数の補強リブ5と、を有する。複数の補強リブ5のそれぞれと外周リム4とが接合する位置は、複数の歯部3どうしの間の歯溝33の位置に周方向で対応する。また、外周リム4の内側には、内周リム6が設けられている。
【0034】
これにより、歯車1が他の歯車とかみ合い、歯部3の歯面に荷重がかかると、歯部3に周方向(矢印K1方向)に荷重がかかる。歯部3において周方向にかかる荷重は、歯溝33に伝播され、歯溝33から外周リム4を通り(荷重方向を矢印K2で示す)、径方向の内側に伝播して、外周リム4との接合位置が周方向で歯溝33に対応する補強リブ5に伝播する。歯溝33の位置は、補強リブ5に対して外周リム4を介して径方向で連続する位置に位置する。これにより、補強リブ5は、歯溝33からの荷重を好適に受ける(荷重方向を矢印K3で示す)ことができ、歯部3の大きな変形を抑制することができる。
【0035】
また、補強リブ5から内周リム6との接合に荷重がかかり、この荷重(荷重方向を矢印K4で示す)に対する応力を発生して、補強リブ5を支えることができる。
【0036】
このように外周リム4を厚くすることなく、補強リブ5、さらには内周リム6により外周リム4の強度を確保し、歯部3の大きな変形を抑制することができる。
また、内周リム6における応力発生部位は、内周側リブ7間に配置されるので、内周リム6で受けた荷重は、内周側リブ7にも伝播し、内周側リブ7及び環状部2で受けることができる。
【0037】
よって、外周リム4の周方向の厚さが、想定される歯部3の大きさに対応した所定のリム厚(例えば、歯たけの1.2倍程度以上)より薄くても、十分に強度を確保できる歯車(ギヤ)となる。これにより、歯車が射出成型品であっても、精度、強度、及び耐久性に優れた歯の大型化が可能な歯車、つまり、歯たけの大きい歯車を実現している。
【0038】
また、歯車1の肉抜き部92から対応する歯部3内へ延びるようにウェルドラインW1が形成されている。これにより、成形の際に、歯車1の中央から歯溝33に樹脂が流れる際に、歯溝33に到達するウェルドラインが形成されることがなく、ウェルドラインによる強度の低下を防止し、歯車1において歯部3の歯元近傍での損傷を防止でき、剛性を確保できる。
【0039】
[実施の形態2]
図5図8を参照して、本発明に係る実施の形態2について説明する。
【0040】
<歯車>
図5は、本発明の実施の形態2に係るギヤの前方斜視図であり、図6は、本発明の実施の形態2に係るギヤの後方斜視図である。また、図7は、本発明の実施の形態2に係るギヤの正面図であり、図8は、図7のB-B線断面図である。
【0041】
歯車1Aは、歯部3Aの構造が実施の形態1に係る歯車1の歯部3と異なる。その他の歯車1Aの基本的構造は、歯車1と同様である。歯車1Aの構造のうち歯車1と同じ構造については、歯車1と同じ名称、同じ符号にAを付して適宜説明を省略する。
【0042】
歯車1Aは、合成樹脂製の円板状である。歯車1Aは、強化繊維(例えば、ガラス繊維、カーボンファイバー)を含む合成樹脂、或いは、金属で形成されてもよい。
【0043】
具体的には、歯車1Aは、複数の歯部3A、リング状の外周リム4A、補強リブ5A、外周リム4Aの内周側に同心円状に配置される内周リム6A、内周側リブ7A、ウェブ81A、82A、及び、中央に設けられる環状部2Aを一体的に有する。
【0044】
歯部3Aは、外周リム4Aの外周面に、周方向に一様に並んで設けられている。歯部3Aは、それぞれ外周リム4Aの外周面から径方向外方に突出し、且つ、軸方向に傾斜するように設けられており、所謂、はすば歯車である。
【0045】
歯車1Aの外周部を構成する外周リム4Aは、外周面に周方向で、はすば歯車である複数の歯部3Aと、歯部3Aの間の歯溝33Aとを、交互に有する。外周リム4Aは、歯部3の歯幅と同じ幅(軸方向の厚み)を有している。
【0046】
外周リム4Aの内周側には、外周リムにウェブ82Aが接合され、ウェブ82A上には、肉抜き部92Aにより周方向で互いに離間するように複数の補強リブ5Aが配置されている。ここでは、複数の補強リブ5Aは、放射状に配置されている。
【0047】
歯部3Aは、歯幅方向で斜めに配置されており、歯部3Aの歯幅方向の両端部は、歯幅方向(軸方向)でずれた位置に位置する。
【0048】
複数の補強リブ5Aのそれぞれと外周リム4Aとが接合する位置は、複数の歯部3Aどうしの間の歯溝33Aの位置に周方向で対応する。具体的には、補強リブ5Aは、ウェブ82Aに対して、軸方向(歯幅方向と同じ)で離間する正面側及び背面側の面のそれぞれに、外周リム4Aに対して、歯幅方向で離間する歯溝33Aのそれぞれと対応して、前記歯幅方向でずれた位置で、それぞれ接合されている。
【0049】
すなわち、歯車1Aでは、複数の歯部3Aは、歯幅方向で傾斜するはすば歯車であり、複数の補強リブ5Aは、外周リム4Aにおいて歯幅方向で離間する両面のそれぞれの周方向で互いに離間するように配置されている。補強リブ5Aのそれぞれと外周リム4Aとの接合位置は、ギヤ1A(外周リム4A)の両面(歯幅方向で離間する面)のそれぞれにおける歯部3A間の歯溝33Aの位置とそれぞれの周方向で対応している。これにより、歯車1Aの歯幅方向(軸方向)の幅を有するはすば歯車において、ボイドやヒケとなりうる肉厚部分の発生を防止している。
【0050】
補強リブ5Aは、正面視及び背面視して、外周リム4Aに、複数の歯部3Aどうしの間の歯溝33Aが補強リブ5Aの延在方向で重なる位置に位置するよう接合されている。
【0051】
補強リブ5は、外周リム4Aと同じ幅(軸方向の厚み)を有する。なお、肉抜き部92Aも、ウェブ82Aを挟み歯車1Aの両面でそれぞれ補強リブ5Aと周方向に交互に配置されている。
【0052】
肉抜き部92Aは、ウェブ82Aに対して垂直な軸方向に開口して形成されている。肉抜き部92Aは、歯部3Aが延在する方向に沿って斜めに開口するように形成されてもよい。
【0053】
内周リム6Aは、歯車1の内周リム6と同様に、環状部2Aとにウェブ81Aを介して接合されるとともに、ウェブ81A上に放射状に配置された内周側リブ7Aにより接合されている。
【0054】
環状部2Aは、筒状体であり、貫通する開口部21Aの一方側の縁部に環状の底部23Aが設けられている。
本実施の形態によれば、はすば歯車である歯車1Aは、歯車1と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、はすば歯車1Aにおいて歯を大型化しても、外周リム4Aの周方向の厚みを、大型の歯に応じた厚みでなくても、強度を確保でき、歯車が成形品であっても、精度、強度、及び耐久性に優れた大型の歯、つまり、歯たけの大きい歯を有する歯車を実現している。
【0055】
[実施の形態3]
図9図12を参照して、本発明に係る実施の形態3について説明する。
【0056】
図9は、本発明の実施の形態3に係るギヤの前方斜視図であり、図10は、本発明の実施の形態3に係るギヤの後方斜視図である。図11は、本発明の実施の形態3に係るギヤの正面図であり、図12は、図11のC-C線断面図である。
【0057】
歯車1Bは、実施の形態1、2に係る歯車1、1Aと比較して、それぞれの歯車1、1Aが一段の歯車であるのに対し、第1歯車部110と第2歯車部120の2段の歯車部を同軸で一体に有する点で異なる。
【0058】
すなわち、歯車1Bは、第1歯車部110と第2歯車部120といった外径の異なる合成樹脂製の円盤状の歯車を、同一軸心で、軸方向に一体的に有している。
【0059】
第1歯車部110及び第2歯車部120は、それぞれはすば歯車である。
第1歯車部110及び第2歯車部120のそれぞれに、複数の歯部113、123、リング状の外周リム114、124、補強リブ115、125、外周リム114、124の内周側に同心円状に配置される内周リム116、122を有する。
【0060】
第1歯車部110は、更に、内周側リブ117、ウェブ118、及び、中央に設けられた環状部112を有する。
環状部112は、軸方向で開口する開口部1121を有し、軸方向で第2歯車部120の内周リム122と同一軸心で連続して設けられている。環状部112の開口部1121と、内周リム122の中央の開口部は、同心円の内周部であり互いに連続して設けられ、歯車1Bの回動軸となる軸部(図示省略)が挿入される。
【0061】
環状部112の外周側には、実施の形態1、2の歯車1、1Aと同様に、外周面に周方向に並ぶ複数の歯部113が一体に設けられたリング状の外周リム114と、外周リム114に接合する複数の補強リブ115と、内周リム116が配設されている。
外周リム114は、環状部112との間に配置され、且つ、外周リム114より軸方向の厚みの薄いウェブ118に接合している。
【0062】
外周リム114は、外周リム4Aと同様に、外周面に周方向で並んで設けられた複数の歯部113を有する。歯部113は、外周リム114の外周面に、外周面から径方向外方に突出し、且つ、軸方向に傾斜するように設けられている。
【0063】
これにより、外周リム114の外周面には、歯部113と、周方向で並ぶ歯部113により形成される歯溝1133とが交互に周方向に設けられている。なお、外周リム114は、歯部113の歯幅と同じ幅(軸方向の厚み)を有し、外周リム4Aの径方向の厚みは、射出成形で製作する場合、ボイドやヒケが発生しない程度の厚みである。
【0064】
ウェブ118は、環状部112の外周面から放射方向に延在して設けられ、その一方の面(表面)側において外周リム114との間に、補強リブ115、内周リム116、内周側リブ117が、外周側から設けられている。
【0065】
補強リブ115は、外周リム114の内側で肉抜き部119により周方向で互いに離間するように配置されている。補強リブ115は、外周リム114と内周リム116との間で放射状に配置されている。
補強リブ115は、実施の形態1、2の補強リブ5、5Aと同様の機能を有し、複数の補強リブ115のそれぞれと外周リム114とが接合する位置は、複数の歯部113どうしの間の歯溝1133の位置に周方向で対応する。
【0066】
第1歯車部110は、軸方向の一方側(本実施の形態では正面側)に補強リブ115が配置され、肉抜き部119が開口して配置されている。補強リブ115は、正面側からみて歯溝1133が、補強リブ115の延在方向で重なる位置にウェブ118上に位置している。
【0067】
複数の補強リブ115の間には、肉抜き部119が設けられ、外周リム114と内周リム116との間には、補強リブ115と肉抜き部119とが周方向に交互に配置されている。
【0068】
また、ウェブ118上には、内周リム116と環状部112との間に、内周側リブ117が設けられ、内周リム116と環状部112の双方を接続している。
【0069】
内周側リブ117の機能は、歯車1、1Aの内周側リブ7、7Aの機能と同様である。
第2歯車部120は、内周リム122の外周側に、ウェブ128が設けられ、ウェブ128を介して、内周リム122と同心円状の外周リム124が接続されている。
外周リム124には、外周面に、複数の歯部113が、周方向に一様に並んで配置され、それぞれ外周面から径方向外方に突出し、且つ、軸方向に傾斜するように設けられている。
【0070】
ウェブ128上には、補強リブ125が内周リム122を中心に放射方向に設けられ、内周リム122と外周リム124とを接合している。
【0071】
補強リブ125は、外周リム124に対して、歯部123どうしの間の歯溝1233が補強リブ125の延在方向で重なる位置に位置するよう接合されている。
外周リム124と内周リム122との間には、補強リブ125と肉抜き部129とが周方向で交互に並んで設けられている。
【0072】
これにより、歯車1Bでは、第1歯車部110、第2歯車部120のそれぞれが、他の歯車と歯合して、歯部113、123に周方向の荷重がかかる場合でも、実施の形態1と同様に、補強リブ115、125で受けることができる。更には、内周リム116、122でも受けることができ、これにより、射出成形による成形品としての歯車であっても、精度、強度、及び耐久性に優れた歯たけの大きい歯車(ギヤ)となり、その歯車を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、種々のギヤに適用でき、特に、樹脂製ギヤで歯たけの大きなギヤとして有効である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B 歯車
2、2A、112 環状部
3、3A、113、123 歯部
4、4A、114、124 外周リム
5、5A、115、125 補強リブ
6、6A、116 内周リム
7、7A、117 内周側リブ
21、21A、1121 開口部
23A 底部
33、33A、1133、1233 歯溝
81、81A、82、82A 、118、128 ウェブ
122 内周リム(環状部)
92、92A、119、129 肉抜き部
110 第1歯車部
120 第2歯車部
図1
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図12