(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】物標高さ測定装置及び物標高さ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/42 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01S13/42
(21)【出願番号】P 2020165832
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓真
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0149021(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107991659(CN,A)
【文献】特開2018-146486(JP,A)
【文献】特開2013-053946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダアンテナと物標との間の距離及び前記物標から前記レーダアンテナへの直接信号の到来仰角に基づいて、前記物標から大地又は海面を経た前記レーダアンテナへの反射信号の到来仰角を分離して、前記物標の高さを算出する物標高さ算出部と、
前記レーダアンテナと前記物標との間の複数の距離における前記物標の高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する前記物標の高さの算出結果を除外し、除外しなかった前記物標の高さの算出結果の平均を算出する物標高さ平均部と、
を備えることを特徴とする物標高さ測定装置。
【請求項2】
前記物標の高さの複数回の算出結果について、(1)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が所定の高さ平均未満であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が所定の高さ分散未満であるときに、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性の高低を判定するにあたり、(1-1)前記レーダアンテナと前記物標との間の距離の変化に対する前記レーダアンテナの受信強度の変化の近似直線の傾きが所定の傾き以上であり、又は、前記レーダアンテナの受信強度の分散が所定の強度分散未満であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し、(1-2)前記レーダアンテナと前記物標との間の距離の変化に対する前記レーダアンテナの受信強度の変化の近似直線の傾きが前記所定の傾き未満であり、かつ、前記レーダアンテナの受信強度の分散が前記所定の強度分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定する信頼性判定部、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の物標高さ測定装置。
【請求項3】
前記信頼性判定部は、前記物標の高さの複数回の算出結果について、(2)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均以上であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散未満であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し、(3)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均以上であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定し、(4)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均未満であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定する
ことを特徴とする、請求項2に記載の物標高さ測定装置。
【請求項4】
レーダアンテナと物標との間の距離及び前記物標から前記レーダアンテナへの直接信号の到来仰角に基づいて、前記物標から大地又は海面を経た前記レーダアンテナへの反射信号の到来仰角を分離して、前記物標の高さを算出する物標高さ算出ステップと、
前記レーダアンテナと前記物標との間の複数の距離における前記物標の高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する前記物標の高さの算出結果を除外し、除外しなかった前記物標の高さの算出結果の平均を算出する物標高さ平均ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための物標高さ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダを用いて物標の高さを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを用いて物標の高さを測定する技術が、特許文献1等に開示されている。特許文献1では、複数の鉛直に配列のレーダアンテナにおいて、物標から大地又は海面を経ず入力した直接信号の位相差に基づいて、物標の仰角ひいては物標の高さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、複数の鉛直に配列のレーダアンテナにおいて、物標から大地又は海面を経ず入力した直接信号と、物標から大地又は海面を経て入力した反射信号と、が干渉することがある。すると、複数の鉛直に配列のレーダアンテナにおいて、物標の距離又は速度に基づいて、直接信号と反射信号とを分離することができなければ、直接信号と反射信号との干渉の強弱に応じて、物標の距離の関数であるハイトパターンが発生する。
【0005】
よって、ハイトパターンの谷となるNull点付近では、物標の仰角ひいては物標の高さを高精度に測定することができない。そして、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、物標の距離が遠いほど又は物標の高さが低いほど、直接信号と反射信号とで到来仰角の差分が小さく、直接信号と反射信号とを分離することができず、反射信号の到来仰角の低さに引き摺られ、物標の仰角ひいては物標の高さを低めに誤測定することがある。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、物標から大地又は海面を経ず入力した直接信号と、物標から大地又は海面を経て入力した反射信号と、が干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて、物標の高さを高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、物標の複数の距離における物標の高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する物標の高さの算出結果を除外する。そして、物標の距離が変化することにより、物標の仰角も変化したとしても、物標の高さは変化しないことを前提として、除外しなかった物標の高さの算出結果の平均を算出する。
【0008】
具体的には、本開示は、レーダアンテナと物標との間の距離及び前記物標から前記レーダアンテナへの直接信号の到来仰角に基づいて、前記物標から大地又は海面を経た前記レーダアンテナへの反射信号の到来仰角を分離して、前記物標の高さを算出する物標高さ算出部と、前記レーダアンテナと前記物標との間の複数の距離における前記物標の高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する前記物標の高さの算出結果を除外し、除外しなかった前記物標の高さの算出結果の平均を算出する物標高さ平均部と、を備えることを特徴とする物標高さ測定装置である。
【0009】
また、本開示は、レーダアンテナと物標との間の距離及び前記物標から前記レーダアンテナへの直接信号の到来仰角に基づいて、前記物標から大地又は海面を経た前記レーダアンテナへの反射信号の到来仰角を分離して、前記物標の高さを算出する物標高さ算出ステップと、前記レーダアンテナと前記物標との間の複数の距離における前記物標の高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する前記物標の高さの算出結果を除外し、除外しなかった前記物標の高さの算出結果の平均を算出する物標高さ平均ステップと、を順にコンピュータに実行させるための物標高さ測定プログラムである。
【0010】
これらの構成によれば、ハイトパターンの谷となるNull点付近では、高精度な測定の可能性が低い物標の高さの算出結果を除外することができる。一方で、ハイトパターンの谷となるNull点以外では、高精度な測定の可能性が高い物標の高さの算出結果を採用することができる。よって、直接信号と反射信号とが干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて、物標の高さを高精度に測定することができる。
【0011】
また、本開示は、前記物標の高さの複数回の算出結果について、(1)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が所定の高さ平均未満であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が所定の高さ分散未満であるときに、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性の高低を判定するにあたり、(1-1)前記レーダアンテナと前記物標との間の距離の変化に対する前記レーダアンテナの受信強度の変化の近似直線の傾きが所定の傾き以上であり、又は、前記レーダアンテナの受信強度の分散が所定の強度分散未満であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し、(1-2)前記レーダアンテナと前記物標との間の距離の変化に対する前記レーダアンテナの受信強度の変化の近似直線の傾きが前記所定の傾き未満であり、かつ、前記レーダアンテナの受信強度の分散が前記所定の強度分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定する信頼性判定部、をさらに備えることを特徴とする物標高さ測定装置である。
【0012】
この構成によれば、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、実際には低い物標が測定でも低く見えているか、実際には高い物標が測定では低く見えているか、を判定することができる。よって、直接信号と反射信号とが干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて測定した物標の高さの信頼度を判定することができる。
【0013】
また、本開示は、前記信頼性判定部は、前記物標の高さの複数回の算出結果について、(2)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均以上であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散未満であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し、(3)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均以上であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定し、(4)除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均が前記所定の高さ平均未満であり、かつ、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の分散が前記所定の高さ分散以上であるときには、除外されなかった前記物標の高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定することを特徴とする物標高さ測定装置である。
【0014】
この構成によれば、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、(1)の場合のみならず、(2)の場合に該当するか、(3)の場合に該当するか、(4)の場合に該当するか、を判定することができる。よって、直接信号と反射信号とが干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて測定した物標の高さの信頼度を判定することができる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本開示は、物標から大地又は海面を経ず入力した直接信号と、物標から大地又は海面を経て入力した反射信号と、が干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて、物標の高さを高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の物標高さ測定システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の物標高さ平均処理の手順を示す図である。
【
図3】本開示の物標高さ平均処理の具体例を示す図である。
【
図4】本開示の物標高さ平均処理の具体例を示す図である。
【
図5】本開示の信頼性判定処理の手順を示す図である。
【
図6】本開示の信頼性判定処理の具体例を示す図である。
【
図7】本開示のステップS17の処理の手順を示す図である。
【
図8】本開示のステップS17の処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0018】
(本開示の物標高さ平均処理)
本開示の物標高さ測定システムの構成を
図1に示す。物標高さ測定システムRは、レーダアンテナA、レーダ送受信装置1及び物標高さ測定装置2を備える。レーダ送受信装置1は、レーダアンテナA(位相モノパルスを用いてもよく、MIMOアンテナを用いてもよい。)を用いて、物標Tへと送信信号を照射し、物標Tから受信信号を取得する。
【0019】
物標高さ測定装置2は、物標高さ算出部21、物標高さ平均部22及び信頼性判定部23を備え、
図2に示す物標高さ平均プログラム並びに
図5及び
図7に示す信頼性判定プログラムをコンピュータにインストールして実現することができる。
【0020】
本開示の物標高さ平均処理の手順及び具体例をそれぞれ
図2から
図4までに示す。物標高さ算出部21は、レーダアンテナAと物標Tとの間の距離及び物標TからレーダアンテナAへの直接信号の到来仰角に基づいて、物標Tから大地又は海面を経たレーダアンテナAへの反射信号の到来仰角を分離して、物標Tの高さを算出する(ステップS1)。
【0021】
図3の上段では、物標Tの実際の高さが3mであるときのハイトパターンを示す。
図4の上段では、物標Tの実際の高さが0.2mであるときのハイトパターンを示す。物標Tの高さが低いほど又は物標Tの距離が遠いほど、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化が緩やかになる。レーダアンテナAの受信強度に対して、ノイズ(-20dB程度)より十分に高い検出閾値(0dB程度)が設定されている。
【0022】
物標高さ平均部22は、レーダアンテナAと物標Tとの間の複数の距離における物標Tの高さの複数回の算出結果について、上位値及び下位値を有する物標Tの高さの算出結果を除外する(ステップS2)。そして、物標高さ平均部22は、レーダアンテナAと物標Tとの間の複数の距離における物標Tの高さの複数回の算出結果について、除外しなかった物標Tの高さの算出結果の平均を算出する(ステップS3)。
【0023】
図3の中段では、物標Tの実際の高さが3mであるときの、上下位除外前かつ高さ平均前の物標Tの高さの算出結果を示す。
図4の中段では、物標Tの実際の高さが0.2mであるときの、上下位除外前かつ高さ平均前の物標Tの高さの算出結果を示す。ここで、ハイトパターンの谷となるNull点付近では、物標Tの実際の高さと大きく異なる物標Tの高さの算出結果が得られている。一方で、ハイトパターンの谷となるNull点以外では、物標Tの実際の高さとおよそ同等な物標Tの高さの算出結果が得られている。
【0024】
物標Tの高さの算出結果の平均処理は、物標Tの距離が変化することにより、物標Tの仰角も変化したとしても、物標Tの高さは変化しないことを前提としているからである。物標Tの高さの算出結果の平均距離幅(
図3及び
図4では、5m程度)は、物標高さ測定システムRを搭載した車両の速度(
図3及び
図4では、時速50km)及び当該車両と物標Tとの間の距離(
図3及び
図4では、100m程度)に応じて設定されている。
【0025】
図3の下段では、物標Tの実際の高さが3mであるときの、上下位除外後かつ高さ平均後の物標Tの高さの算出結果を示す。
図4の下段では、物標Tの実際の高さが0.2mであるときの、上下位除外後かつ高さ平均後の物標Tの高さの算出結果を示す。ここで、ハイトパターンの谷となるNull点付近では、物標Tの実際の高さと大きく異なる物標Tの高さの算出結果が除外されている。一方で、ハイトパターンの谷となるNull点以外では、物標Tの実際の高さとおよそ同等な物標Tの高さの算出結果が採用されている。
【0026】
以上に説明したように、ハイトパターンの谷となるNull点付近では、高精度な測定の可能性が低い物標Tの高さの算出結果を除外することができる。一方で、ハイトパターンの谷となるNull点以外では、高精度な測定の可能性が高い物標Tの高さの算出結果を採用することができる。よって、直接信号と反射信号とが干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて、物標Tの高さを高精度に測定することができる。
【0027】
ただし、
図3の下段では、物標Tの距離が近いほど、物標Tの高さの算出結果は、物標Tの実際の高さとおよそ同等であるが、物標Tの距離が遠いほど、物標Tの高さの算出結果は、物標Tの実際の高さと大きく異なる。そして、
図4の下段では、物標Tの距離の遠近によらず、物標Tの高さの算出結果は、物標Tの実際の高さとおよそ同等であるが、物標Tの距離が遠いほど、物標Tの高さの算出結果は、信頼性の高低が判然としない。
【0028】
つまり、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、物標Tの距離が遠いほど又は物標Tの高さが低いほど、直接信号と反射信号とで到来仰角の差分が小さく、直接信号と反射信号とを分離することができず、反射信号の到来仰角の低さに引き摺られ、物標Tの仰角ひいては物標Tの高さを低めに誤測定することがある。そして、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、実際には低い物標Tが測定でも低く見えているか、実際には高い物標Tが測定では低く見えているか、を判定することができない。
【0029】
(本開示の信頼性判定処理)
本開示の信頼性判定処理の手順及び具体例をそれぞれ
図5及び
図6に示す。本開示のステップS17の処理の手順及び具体例をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0030】
図6の第1段では、物標Tの高さの複数回の算出結果について、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均が、所定の高さ平均(レーダアンテナAより十分に高い)以上であり(ステップS11、YES)、かつ、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の分散が、所定の高さ分散未満である(ステップS12、NO)。つまり、直接信号が反射信号の影響を受けておらず、信頼度が高い算出結果が採用されている。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し(ステップS13)、除外されなかった物標Tの高さの算出結果を最終的な出力とする。
【0031】
図6の第2段では、物標Tの高さの複数回の算出結果について、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均が、所定の高さ平均(レーダアンテナAより十分に高い)以上であり(ステップS11、YES)、かつ、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の分散が、所定の高さ分散以上である(ステップS12、YES)。つまり、直接信号が反射信号の影響を受けており、安定性が低い算出結果が採用されている。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定し(ステップS14)、検出失敗のフラグを立てて算出結果を出力しない、又は、低信頼性の警告を出して算出結果を出力する、又は、本開示と別個の測定処理に移行する。
【0032】
図6の第3段では、物標Tの高さの複数回の算出結果について、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均が、所定の高さ平均(レーダアンテナAより十分に高い)未満であり(ステップS11、NO)、かつ、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の分散が、所定の高さ分散以上である(ステップS15、YES)。つまり、直接信号が反射信号の影響を受けており、安定性が低い算出結果が採用されている。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定し(ステップS16)、検出失敗のフラグを立てて算出結果を出力しない、又は、低信頼性の警告を出して算出結果を出力する、又は、本開示と別個の測定処理に移行する。
【0033】
図6の第4段では、物標Tの高さの複数回の算出結果について、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均が、所定の高さ平均(レーダアンテナAより十分に高い)未満であり(ステップS11、NO)、かつ、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の分散が、所定の高さ分散未満である(ステップS15、NO)。つまり、実際には低い物標Tが測定でも低く見えているか、実際には高い物標Tが測定では低く見えているか、を判定することができない。そこで、信頼性判定部23は、以下に説明するように、ステップS21からステップS24までの処理を実行する(ステップS17)。
【0034】
図8の上段では、実際には高い物標Tが測定では低く見えている。物標Tの実際の高さが3mであるため、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化が激しくなる。
図8の上段の左側では、物標Tの高さの算出結果の平均距離幅が55m~60mであるときの、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化を示す。
図8の上段の右側では、物標Tの高さの算出結果の平均距離幅が65m~70mであるときの、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化を示す。
【0035】
図8の上段の左側及び右側では、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化は、ハイトパターンの複数の山及び谷に分布している。つまり、レーダアンテナAと物標Tとの間の距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化の近似直線の傾きが、所定の傾き未満であり(ステップS21、NO)、かつ、レーダアンテナAの受信強度の分散が、所定の強度分散以上である(ステップS22、YES)。ここで、レーダアンテナAの受信強度をデシベル単位に変換したうえで、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化を最小二乗法により一次関数として近似する。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が低いと判定し(ステップS23)、検出失敗のフラグを立てて算出結果を出力しない、又は、低信頼性の警告を出して算出結果を出力する、又は、本開示と別個の測定処理に移行する。
【0036】
図8の下段では、実際には低い物標Tが測定でも低く見えている。物標Tの実際の高さが0.2mであるため、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化が緩やかになる。
図8の下段の左側では、物標Tの高さの算出結果の平均距離幅が55m~60mであるときの、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化を示す。
図8の下段の右側では、物標Tの高さの算出結果の平均距離幅が65m~70mであるときの、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化を示す。
【0037】
図8の下段の左側では、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化は、ハイトパターンの一つの山の斜面に分布している。つまり、レーダアンテナAと物標Tとの間の距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化の近似直線の傾きが、所定の傾き以上である(ステップS21、YES)。なお、レーダアンテナAの受信強度の分散は、所定の強度分散以上であるが(ステップS22、YES)、ここでは判定基準としない。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し(ステップS24)、算出結果を最終的な出力とする。
【0038】
図8の下段の右側では、物標Tの距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化は、ハイトパターンの一つの山の頂点に分布している。つまり、レーダアンテナAの受信強度の分散が、所定の強度分散未満である(ステップS22、NO)。なお、レーダアンテナAと物標Tとの間の距離の変化に対するレーダアンテナAの受信強度の変化の近似直線の傾きは、所定の傾き未満であるが(ステップS21、NO)、ここでは判定基準としない。そこで、信頼性判定部23は、除外されなかった物標Tの高さの算出結果の平均の信頼性が高いと判定し(ステップS24)、算出結果を最終的な出力とする。
【0039】
物標Tの高さの算出結果の平均距離幅(
図8では、5m程度)は、
図8の上段の場合を
図8の下段の場合と混同しない程度に広い距離幅に設定することが望ましく、
図8の下段の場合を
図8の上段の場合と混同しない程度に狭い距離幅に設定することが望ましい。
【0040】
以上に説明したように、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、
図6の第4段の場合及び
図8の場合のように、実際には低い物標Tが測定でも低く見えているか、実際には高い物標Tが測定では低く見えているか、を判定することができる。そして、ハイトパターンの谷となるNull点以外でも、
図6の第4段の場合のみならず、
図6の第1段の場合に該当するか、
図6の第2段の場合に該当するか、
図6の第3段の場合に該当するか、を判定することができる。よって、直接信号と反射信号とが干渉するときでも、直接信号の到来仰角に基づいて測定した物標Tの高さの信頼度を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示の物標高さ測定装置及び物標高さ測定プログラムは、ミリ波レーダ又はMIMOレーダを用いた、物標に対して移動する車載レーダ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
R:物標高さ測定システム
T:物標
A:レーダアンテナ
1:レーダ送受信装置
2:物標高さ測定装置
21:物標高さ算出部
22:物標高さ平均部
23:信頼性判定部