(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】フォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20240709BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20240709BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20240709BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/58
G03F1/80
G03F7/20 505
(21)【出願番号】P 2020173464
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020079752
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】尾島 省二郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】森山 久美子
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-059708(JP,A)
【文献】特開平08-328235(JP,A)
【文献】特開平09-050116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性基板上に半透過膜を有し、前記半透過膜上に中間膜を有し、前記中間膜上に上層膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程と、
前記上層膜上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光し、露光量の異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を形成する露光工程と、
前記第1の領域を
現像液により選択的に除去する第1のレジスト除去工程と、
前記上層膜をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の領域を
現像液により選択的に除去する第2のレジスト除去工程と、
前記半透過膜、前記上層膜及び前記中間膜をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記第3の領域を除去する工程とを含
み、
前記第2のレジスト除去工程後における前記第3の領域のエッジ部の前記レジスト膜の断面形状は、前記第1のレジスト除去工程後における前記第2の領域と前記第3の領域とが接する境界部の前記レジスト膜の断面形状よりも急峻な形状となる
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記半透過膜と前記上層膜とが同じ材料から構成されていることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記露光工程において、前記第1の領域の露光量は、前記第2の領域の露光量より多く、前記第3の領域の露光量が0であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記半透過膜がハーフトーン膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記半透過膜が位相シフト膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の電子デバイスを製造する工程において、フォトマスクが使用されている。従来より、フォトマスクとして、透過部と遮光部とを有するバイナリーマスクが用いられている。しかし、近年では、例えば微細なパターンを形成するため、遮光膜と位相シフト膜とを備えた位相シフトマスクや、電子デバイスの製造工程数の低減のため多階調フォトマスクが用いられることがある。このようなフォトマスクは、透明基板上に複数の光学的特性の異なるパターンを備えており、これらのパターンを形成するためには、複数回のパターン描画(露光)工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なる光学特性を有する半透過領域と遮光領域とを形成する場合、それぞれのパターン形成に対して、フォトレジストの露光(描画)処理が必要となり、製造工数が増大する。さらに、それぞれのパターンを描画する毎に、フォトマスク基板を露光(描画)装置にセットして露光処理を行うため、重ね合わせ誤差(アライメントずれ)が発生することがある。そのため、重ね合わせ余裕を考慮したパターン配置とする必要があり、精細なパターンを得ることができなくなる。
重ね合わせ誤差の発生を回避する方法が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、予備現像によって形成された第1レジストパターンをマスクに第1のエッチングを行い、その後に追加現像を施すことで第1レジストパターンのエッジ部を後退させた後に第2のエッチングを行い、遮光部の両側に対称的に位相シフト膜を形成する方法が開示されている。しかし、第2のエッチングにおいて、露光装置での重ね合わせ誤差の発生を防止できるものの、露光の際の不必要な光量を利用するため不安定であり、自ずとパターンサイズが限定される。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、異なる光学特性を有するパターンを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができるフォトマスクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
透過性基板上に半透過膜を有し、前記半透過膜上に中間膜を有し、前記中間膜上に上層膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程と、
前記上層膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜を露光し、露光量の異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を形成する露光工程と、
前記第1の領域を現像液により選択的に除去する第1のレジスト除去工程と、
前記上層膜をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の領域を現像液により選択的に除去する第2のレジスト除去工程と、
前記半透過膜、前記上層膜及び前記中間膜をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記第3の領域を除去する工程とを含み、
前記第2のレジスト除去工程後における前記第3の領域のエッジ部の前記レジスト膜の断面形状は、前記第1のレジスト除去工程後における前記第2の領域と前記第3の領域とが接する境界部の前記レジスト膜の断面形状よりも急峻な形状となる
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記半透過膜と前記上層膜とが同じ材料から構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記露光工程において、前記第1の領域の露光量は、前記第2の領域の露光量より多く、前記第3の領域の露光量が0であることを特徴とする。
【0009】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、半透過膜からなるパターンと、半透過膜、中間膜及び上層膜からなるパターンとを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができ、フォトマスクの製造工期の短縮に寄与することができる。
また、重ね合わせ余裕を考慮することなくパターン設計が可能となり、精細なパターン形成が可能であり、また設計者の作業負担を低減できる。
また、製造工程でのコスト削減に寄与することができる。
【0010】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記半透過膜がハーフトーン膜であることを特徴とする。
【0011】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、多階調マスクであるハーフトーンマスクを製造することができる。
【0012】
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記半透過膜が位相シフト膜であることを特徴とする。
【0013】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、位相シフトマスクを製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる光学特性を有するパターンを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができるフォトマスクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】フォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【
図2】フォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【
図3】フォトレジスト膜の断面を示すSEM写真である。
【
図4】フォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【
図5】実施形態2におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【
図6】実施形態2におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0017】
(実施形態1)
図1、2は、実施形態1によるフォトマスク100の主要製造工程を示す断面図である。
以下、図面を参照して、フォトマスク100の製造方法を説明する。
【0018】
(成膜工程:フォトマスクブランクス準備工程)
図1(a)に示すように、合成石英ガラス等の透過性基板1を準備し、透過性基板1上に、例えばCr系金属化合物、Si系化合物、金属シリサイド化合物等の公知の材料からなる半透過性の機能性膜2(半透過膜)をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。
【0019】
ここで、透過性基板1は、フォトマスク100を用いたリソグラフィー工程において使用される露光光に含まれる代表波長(例えばi線、h線、g線)に対して90~100%(90%≦透過率≦100%)の透過率を有する。
また、半透過性とは、露光光に含まれる代表波長に対して、透過率が、透過性基板1の透過率よりも低く、後述する積層構造膜の透過率よりも高いことを意味する。
なお、露光光は、例えばi線、h線若しくはg線であってもよく、又はこれらの少なくとも2つの光を含む混合光であってもよい。また、露光光は、これらに限定するものではない。
【0020】
機能性膜2は、ハーフトーン膜又は位相シフト膜として用いることができる。
例えば、機能性膜2をハーフトーン膜として利用する場合、代表波長に対して、機能性膜2の透過率が10~70%(10%≦透過率≦70%)になるよう設定する。また、位相シフト量は小さく(略0[°]、例えば0~20[°])に設定すればよい。
また、例えば、機能性膜2を位相シフト膜として利用する場合、露光光に含まれる代表波長に対して、機能性膜2の透過率が3~15%(3%≦透過率≦15%)、位相シフト量が略180°(160°≦位相シフト量≦200°)、さらに好適には170°≦位相シフト量≦190°になるよう設定する。
機能性膜2のハーフトーン膜及び位相シフト膜としての光学的性質は、例えば、組成及び膜厚を調整することにより、実現が可能である。
【0021】
次に、エッチングストッパ膜3(中間膜3)をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚1[nm]~20[nm])成膜する。
次に、遮光膜4(上層膜4)をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚50[nm]~100[nm])成膜する。
エッチングストッパ膜3は、後述するように遮光膜4(上層膜4)及び機能性膜2とエッチング特性が異なる(耐性を持つ)材料から構成される。
なお、機能性膜2、エッチングストッパ膜3及び遮光膜4からなる積層膜が遮光性を有すれば、遮光膜4(上層膜4)が単層で遮光性を有する遮光膜である必要はなく、このような観点から、遮光膜4の材料(組成)及び膜厚を調整すればよい。本積層膜の代表波長に対する透過率は、例えば1%以下である。換言すれば、機能性膜2、エッチングストッパ膜3及び遮光膜4の積層領域において遮光膜4の材質(組成)及び膜厚を調整することで光学濃度OD値が3.0以上を満たせばよい。
【0022】
以下、透過性基板1上に機能性膜2、エッチングストッパ膜3及び遮光膜4が形成された積層構造体をフォトマスクブランクスと称する。
予め上記構成のフォトマスクブランクスを複数枚準備し、保管しておいてもよい。顧客等から発注された際に、予め準備されていた上記構成のフォトマスクブランクスを利用することで、工期の短縮に寄与することができる。
【0023】
(フォトレジスト形成工程)
次に、
図1(b)に示すように、遮光膜4上に(フォト)レジスト膜5を塗布法、スプレイ法等により形成する。
【0024】
(露光工程)
次に、
図1(c)に示すように、露光(描画)装置、例えばレーザー描画等に、フォトマスクブランクスをロード(露光装置内の露光用ステージ上に載置)し、レジスト膜5を露光する。
このとき、レジスト膜5には、露光量が異なる3つの領域、すなわち高ドーズ領域5c(第1の領域)、低ドーズ領域5b(第2の領域)、未露光領域5a(第3の領域)、が形成される。
ここで、未露光領域5aとは露光しない領域即ち露光量が0の領域であり、低ドーズ領域5bとは高ドーズ領域に対して相対的に低い露光量で露光された領域であり、高ドーズ領域5cとは低ドーズ領域に対して相対的に高い露光量で露光された領域である。
露光装置による描画方法は、レーザー描画に限定されるものではない。例えば電子線を用いて露光してもよい。
【0025】
さらに具体的には、上記高ドーズ領域の高ドーズとは、後述する第1の現像工程でレジストが除去される際に、レジストを溶解させるために必要な露光量以上の露光量を意味する。対して、低ドーズ領域の低ドーズとは、後述する第1の現像工程によりレジストが除去されず残置され、第2の現像工程によって除去される程度の露光量という意味である。例えば、第1の現像工程に必要な高ドーズ量を基準とした場合、その高ドーズ量に対して、5%~90%の露光量の範囲の露光量を意味する。
低ドーズ量の設定は、上記範囲内で適宜設定が可能であるが、第2の現像工程のプロセス工程時間を考慮する必要があることは言うまでもない。
【0026】
なお、簡単のためレジスト膜5の高ドーズ領域5cを「高ドーズ領域5c」、レジスト膜5の低ドーズ領域5bを「低ドーズ領域5b」、レジスト膜5のレジスト膜5の未露光領域5aを「未露光領域5a」と称することがある。
【0027】
低ドーズ領域5b及び高ドーズ領域5cは、露光装置から透明基板1をアンロードする(取り出す)ことなく形成することができる。例えば、低ドーズ領域5bに相当する領域及び高ドーズ領域5cに相当する領域を、それぞれ第1の露光量及び第2の露光量となるようレーザーをスキャンすることで露光し、これらの領域を形成できる。
【0028】
また、低ドーズ領域5b及び高ドーズ領域5cに相当する領域を、第1の露光量となるようレーザーをスキャンして露光し、その後、高ドーズ領域5cが第2の露光量となるように、高ドーズ領域5cに相当する領域のみを追加的にレーザーをスキャンして露光してもよい。複数のレーザー照射により露光量が平均化され、高ドーズ領域5c露光量の均一性が向上する。また、低ドーズ領域5bと高ドーズ領域5cとが接する場合、境界領域での露光量の均一性も向上する。
【0029】
フォトマスクブランクスを露光装置からアンロードせずに、低ドーズ領域5b及び高ドーズ領域5cの露光処理を行うため、これらの領域(パターン)間で重ね合わせ誤差(ずれ)の発生は抑制される。
【0030】
(第1の現像(レジスト除去)工程)
次に、
図1(d)に示すように、第1の現像工程において、現像液により高ドーズ領域5cのレジスト膜5のみを選択的に除去し、レジスト膜5をパターニングする。
後述するように、レジスト膜5の現像液による溶解特性が、露光量(ドーズ量)に依存するため、露光量に応じて露光されたレジスト膜5を選択的に順次除去することが可能となる。第1の現像工程においては、高ドーズ領域5cの溶解速度が、未露光領域5a及び低ドーズ領域5bの溶解速度に対して十分に(例えば、数倍から1桁以上)高くなる現像条件で現像(現像液による溶解)を行うことで、選択的に高ドーズ領域5cのみを除去できる。
なお、
図1(d)に示すように、低ドーズ領域5bのレジスト膜厚は、未露光領域5aのレジスト膜厚と比較して薄くなる。
【0031】
(第1のエッチング工程)
次に、
図2(a)に示すように、パターニングされたレジスト膜5、即ち未露光領域5a及び低ドーズ領域5bのレジスト膜5をエッチングマスクにして、遮光膜4をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングする。遮光膜4とエッチングストッパ膜3とは、互いに異なる材料を採用することにより、エッチングストッパ膜3がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて、エッチングストッパ膜3上の遮光膜4を選択的にエッチングすることができる。その結果、エッチングストッパ膜3及びその下層の機能性膜2はエッチングされず、透過性基板1上に残置する。
【0032】
本工程において、エッチングストッパ膜3によって表面が覆われた機能性膜2はエッチングされないため、機能性膜2と遮光膜4とを同じ材料を用いて構成することができる。
この場合、機能性膜2と遮光膜4の成膜工程において、同一の成膜装置、又は同一の成膜材料(スパッタターゲット、蒸着材料)を使用でき、また機能性膜2と遮光膜4のエッチング工程において同一のエッチング装置、又は同一のエッチャントを使用できるため、生産管理が容易になり、製造コストの低減に寄与する。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように、未露光領域5a及び低ドーズ領域5bのレジスト膜5をエッチングマスクにして、エッチングストッパ膜3をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングする。機能性膜2とエッチングストッパ膜3とは、互いに異なる材料を採用することにより、機能性膜2がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて、機能性膜2上のエッチングストッパ膜3を選択的にエッチングすることができる。その結果、機能性膜2はエッチングされず、透過性基板1上に残置する。
【0034】
(第2の現像(レジスト除去)工程)
次に、
図2(c)に示すように、第2の現像工程において、現像液により低ドーズ領域5bのレジスト膜5のみを選択的に除去し、レジスト膜5をパターニングする。この工程において、未露光領域5aのみが遮光膜4上に残置する。
第1の現像工程及び第2の現像工程に示すように露光量の異なるレジスト膜5を露光量に依存して順次除去できるのは、溶解速度が現像条件(時間等)に非線型に依存するためである。溶解速度が変化(増大)する変化点が露光量に依存して変化する特性を利用することで露光量の異なる領域を選択的に順次除去することができる。
第2の現像工程では、低ドーズ領域5bの溶解速度が、未露光領域5aの溶解速度に対して十分に高くなる現像条件で現像(溶解)を行い、選択的に低ドーズ領域5bのみを除去できる。
なお、この方法を用いることで、3種以上の異なるレジスト膜5のパターンを得ることも可能である。
【0035】
(第2のエッチング工程)
次に、
図2(d)に示すように、機能性膜2をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングして除去するとともに、未露光領域5aのレジスト膜5をエッチングマスクにして、遮光膜4をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングし除去する。機能性膜2がエッチングされた領域では、透明基板1が露出する。
機能性膜2と遮光膜4を同じ材料で構成することにより、機能性膜2と遮光膜4とを同じエッチャントを用いて、同時にエッチングできる。
その後、エッチングストッパ膜3をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングし除去する。
その後アッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより、未露光領域5aのレジスト膜5を除去する(第3のレジスト除去工程)。
以上により、機能性膜2から構成された半透過領域6、下層膜である機能性膜2と中間膜であるエッチングストッパ膜3と上層膜である遮光膜4とを含む積層から構成された遮光領域7、及び透過性基板1が露出した透過領域8を備えたフォトマスク100を得ることができる。
フォトマスク100は、機能性膜2として上記ハーフトーン膜の条件を採用することで、多階調のハーフトーンマスクとして機能し、機能性膜2として上記位相シフト膜の条件を採用することで、位相シフトマスクとして機能する。
【0036】
なお、
図2(b)に示す工程において、機能性膜2上のエッチングストッパ膜3を選択的にエッチングした後に、さらに機能性膜2をエッチングしてもよい。
しかしこの場合、
図2(d)に示す第2のエッチング工程において、例えばウェットエッチングのような等方性エッチングを採用し遮光膜4をエッチングすると、機能性膜2もエッチングされてしまい、機能性膜2のサイドエッチング量が増大する。
図2(b)に示す工程において、遮光膜4及びエッチングストッパ膜3のみをエッチングし、機能性膜2を残置することにより、
図2(d)に示す工程での機能性膜2のサイドエッチング量を低減することができる。その結果、機能性膜2のパターニング制御性が向上する。
【0037】
図3は、フォトレジストの断面形状を示すSEM写真である。
図3(a)は第1の現像工程後のレジスト膜5の断面形状を示し、
図3(b)は第2の現像工程後のレジスト膜5の断面形状を示す。
【0038】
図3(a)に示すように、未露光領域5a及び低ドーズ領域5bとが接する境界部分においては、レジスト膜5の断面は、なだらかなテーパー形状を有することがある。
しかし、
図3(b)に示すように、第2の現像工程後においては、未露光領域5aのレジスト膜5の断面は急峻な形状を示す。すなわち、
図1(c)に示す露光工程において確定された低ドーズ領域5bのレジスト膜5が、第2の現像工程において選択的に除去されたことを示す。
【0039】
もし第2の現像工程において、一律にレジスト膜5を溶解した場合、未露光領域5aのレジスト膜5の断面が
図3(b)に示すような急峻な形状を得ることはできない。
膜厚が厚い未露光領域5aのレジスト膜5の側壁がテーパー形状である場合、パターン幅が変動し、精細なパターンを形成することが困難となる。
【0040】
特に未露光領域5aのレジスト膜5の膜厚は、低ドーズ領域5bと比較して厚くなるため、未露光領域5aの断面のテーパー角は、フォトマスク100上に形成するパターン精度への影響が大きくなる。しかし、露光量を制御することで光学的に低ドーズ領域5bと未露光領域5aとの境界を確定することで、第2の現像工程後の未露光領域5aのレジスト膜5の側面形状が、
図3(b)に示すように急峻となる。その結果、本フォトマスク100を用いたリソグラフィーにより、精細なパターン形成が可能となる。
【0041】
なお、
図1、2においては、半透過領域6と遮光領域7とが互いに接している例を示したが、フォトレジスト膜5の形状は、露光工程において、光学的に決定することができるため、フォトレジスト膜5を所望の形状にパターニングすることができる。
例えば、
図4(c)に示すように、半透過領域6と遮光領域7とを互いに離隔して形成することも可能である。
図4(a)に示すように、露光(描画)装置によって、レジスト膜5に対して、未露光領域5a及び低ドーズ領域5bとを互いに離隔して露光し、その後
図4(b)に示すように、第1の現像工程によって、互いに離隔した未露光領域5aのレジスト膜5及び低ドーズ領域5bのレジスト膜5を得ることができる。
その後、
図2に示す工程によって、半透過領域6と遮光領域7とを互いに離隔して形成することも可能である。従って、フォトマスク100のパターン設計の自由度が、特許文献1に開示された方法と比較して大きく向上する。
なお、半透過領域6と遮光領域7とが互いに離隔したパターンと、半透過領域6と遮光領域7とが互いに隣接したパターンが混在するパターン配置とすることも可能である。
【0042】
(実施形態2)
フォトマスク100は
図5及び
図6を参照して説明する以下の製造工程によって製造することも可能である。
【0043】
図5(a)に示すように、透過性基板1上に、金属化合物、例えばCr化合物からなる半透過性の機能性膜2(半透過膜)をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。
上記のように、機能性膜2は、ハーフトーン膜又は位相シフト膜として用いることができる。
【0044】
次に、機能性膜2上に、遮光膜41をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。
遮光膜41は、機能性膜2を構成する金属化合物の金属とは異なる種類の金属(又はその化合物)から構成される。例えば、機能性膜2をCr化合物とし、遮光膜41をNi膜とすることができる。
形成する遮光膜41の膜厚は、光学濃度(OD値)が3以上となるように設定する。例えば、遮光膜41としてNiを採用する場合、膜厚を例えば100[nm]とすることができる。
【0045】
次に、遮光膜41上に金属化合物からなる反射防止膜9をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。反射防止膜9の膜厚は、例えば膜厚2~5[nm]とすることができる。反射防止膜9は、金属化合物、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物から構成される。反射防止膜9を構成する金属化合物の金属と機能性膜2を構成する金属化合物の金属とは、同一種類の金属とする。すなわち、機能性膜2を構成する金属成分と反射防止膜9を構成する金属成分とは、同一の金属元素で構成される。例えば、機能性膜2がCrを含む化合物から構成される場合、反射防止膜9もCrを含む化合物から構成されるようにする。
なお、Cr化合物として、例えばCr酸化物、Cr窒化物、Cr窒素酸化物を採用することができる。
【0046】
次に、反射防止膜9上に(フォト)レジスト膜5を塗布法、スプレイ法等により形成する。
従って、透過性基板1上に、機能性膜2、遮光膜41、反射防止膜9及びレジスト膜5がこの順に形成される。
【0047】
次に、
図5(b)に示すように、
図1(c)、(d)に示す工程と同様の工程により、レジスト膜5をパターニングし、露光量が異なる2つの領域、すなわち低ドーズ領域5b(第2の領域)、未露光領域5a(第3の領域)を形成する。
反射防止膜9は、レジスト膜5の露光時の露光光の不要な反射(ハレーション等)を低減し、レジスト膜5のパターニング精度を向上させることができる。
【0048】
次に、
図5(c)に示すように、レジスト膜5の低ドーズ領域5b(第2の領域)及び未露光領域5a(第3の領域)をマスクに、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により、反射防止膜9を遮光膜41に対して選択的にエッチングする。
上述のように遮光膜41は、反射防止膜9を構成する金属化合物の金属と異なる種類の金属から構成されているため、遮光膜41のエッチングレートが低く、遮光膜41のエッチングに対する反射防止膜9のエッチングの選択比が高いエッチャント(薬液又はガス)を採用することで、遮光膜41はエッチングされないで、反射防止膜9だけを選択的にエッチングすることが可能である。
なお、本工程では、機能性膜2は、その表面が遮光膜41に覆われているため、エッチングされない。
【0049】
なお、エッチング装置及びエッチャントは、選択エッチングが可能な公知のエッチング装置及びエッチャントを適宜用いることができる。以下同様である。
【0050】
次に、
図5(d)に示すように、レジスト膜5の低ドーズ領域5b(第2の領域)及び未露光領域5a(第3の領域)をマスクに、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により、遮光膜41を反射防止膜9及び機能性膜2に対して選択的にエッチングする。反射防止膜9及び機能性膜2は、遮光膜41を構成する金属とは異なる金属の化合物により構成されているため、反射防止膜9及び機能性膜2のエッチングレートが低く、反射防止膜9及び機能性膜2のエッチングに対する遮光膜41のエッチングの選択比が高いエッチャント(薬液又はガス)を採用することにより、反射防止膜9及び機能性膜2のエッチングレートを低く抑えつつ、遮光膜41だけを選択的にエッチングすることができる。
【0051】
一般的には、ウェットエッチングの場合、上層の遮光膜41を選択的にエッチングする際に、下層の機能性膜2へのダメージ(膜減りやドライエッチングによるイオン衝撃等)が小さくなる傾向がある。そのため、機能性膜2へのダメージを回避するという点において、ウェットエッチング法が好適に使用できる。
【0052】
次に、
図5(e)に示すように、レジスト膜5の低ドーズ領域5b(第2の領域)及び未露光領域5a(第3の領域)をマスクに、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により、機能性膜2を遮光膜41に対して選択的にエッチングする。上述の反射防止膜9の選択的エッチングと同様に、遮光膜41は、機能性膜2を構成する金属化合物の金属と異なる金属から構成されており、遮光膜41のエッチングに対する機能性膜2のエッチングの選択比が高いエッチャント(薬液又はガス)を採用することができるため、遮光膜41がエッチングされないエッチャントを用いることにより機能性膜2だけを選択的にエッチングすることができる。
【0053】
但し、反射防止膜9及び機能性膜2は同一種類の金属を構成要素とする金属化合物であり、等方性エッチング、特にウェットエッチングの場合、機能性膜2をエッチングするエッチャントにより、反射防止膜9がサイドエッチングされることがある。
しかし、反射防止膜9の膜厚は、機能性膜2の膜厚より薄い。例えば、反射防止膜9の膜厚は、(これに限定するものではないが、)機能性膜2の膜厚の5分の1~機能性膜2の膜厚より1桁薄い膜厚に設定することができる。そのため、機能性膜2と比較して、反射防止膜9が露出している側壁面の高さが低く露出面積は小さく、反射防止膜9のサイドエッチング量は少なくなる。
従って、
図5(c)における反射防止膜9のエッチング工程で使用するエッチャントと、本工程における機能性膜2のエッチャントとが同じであっても、反射防止膜9のサイドエッチング量(サイドエッチングによる後退量)は少なくなる。
従って、同一のエッチング装置(ウェットエッチング装置)で同一のエッチャント(薬液)を用いることも可能となる。
【0054】
本工程においては、反射防止膜9がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて機能性膜2をエッチングすることを妨げるものではない。しかし、上記のように、反射防止膜9のエッチング処理工程及び機能性膜2のエッチング処理工程において、同一のエッチング装置で同一のエッチャントを用いることにより、エッチング装置及び/又はエッチャントのランニングコストを低減する効果を得ることができる。
【0055】
次に、
図6(a)に示すように、
図2(c)に示す工程と同様に、低ドーズ領域5bのレジスト膜5のみを選択的に除去し、未露光領域5aのみを反射防止膜9上に残置する。
【0056】
次に、
図6(b)に示すように、レジスト膜5の未露光領域5aをマスクに、
図5(c)に示す工程と同様に、反射防止膜9を遮光膜41に対して選択的にエッチングする。
【0057】
反射防止膜9をエッチングする際に、機能性膜2がサイドエッチングされることがある。しかし、反射防止膜9の膜厚は機能性膜2と比較して十分に薄いため、反射防止膜9のエッチング量は少ない。そのため、反射防止膜9をエッチングする本工程において、反射防止膜9及び機能性膜2の両方をエッチングするエッチャントを用いた場合においても、機能性膜2のサイドエッチング量は少なく、機能性膜2のパターン幅の縮小は低減される。
【0058】
なお、本工程において、遮光膜41及び機能性膜2の両方がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて反射防止膜9をエッチングすることを妨げるものではない。しかし、上記のように反射防止膜9をエッチングする際の機能性膜2のサイドエッチングによるパターン寸法への影響は軽微であり、寸法精度の劣化を防止できる。そのため、反射防止膜9のエッチング処理工程(
図5(c)及び
図6(b)に示す工程)、及び機能性膜2のエッチング処理工程(
図5(e)に示す工程)において、同一のエッチャントを用いることにより、エッチング処理のランニングコスト(例えばエッチャントの管理コストを含む)の低減に寄与できる。
【0059】
なお、エッチング法としてとして、ドライエッチング法を用いることを妨げるものではない。しかし、ドライエッチング装置と比較してウェットエッチング装置は、真空チャンバ、排気設備等が不要であり、大面積のフォトマスク100の製造に対応し易く、また、一般に安価である。本実施形態によれば、等方性の強いエッチング法であるウェットエッチング法を採用しても機能性膜2のパターン寸法精度を容易に確保することができるため、エッチング装置としてウェットエッチング装置を用いることで、製造コストを軽減する効果が大きい。
【0060】
次に、
図6(c)に示すように、
図5(d)に示す工程と同様に、レジスト膜5の未露光領域5aをマスクに、遮光膜41を反射防止膜9及び機能性膜2に対して選択的にエッチングする。
【0061】
次に、
図6(d)に示すように、アッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより、未露光領域5aのレジスト膜5を除去し、フォトマスク100を得る。
【0062】
本実施形態においては、遮光膜41を機能性膜2及び反射防止膜9と異なるエッチング特性を有する膜で構成し、かつ反射防止膜9の膜厚を機能性膜2の膜厚と比較して薄く設定しているため、機能性膜2のサイドエッチングを低減し、機能性膜2の寸法精度の確保が容易となる。
そのため、本フォトマスク100をリソグラフィー工程に用いて製造される最終製品に対して、要求される寸法精度を容易に確保することができる。
【0063】
また、同一のエッチング装置を用いて、反射防止膜9及び機能性膜2のエッチング処理を行っても、良好な加工精度を実現できる。その結果、製造コストの低減に寄与するという効果を得ることができる。特にエッチング装置としてウェットエッチング装置を用いた場合、その効果が大きい。
【0064】
なお、上記実施形態は、レジスト膜5としてポジ型レジストを用いた場合を例にして説明したが、ネガ型レジストを用いた場合も同様である。ネガ型レジストの場合、露光量の関係がポジ型レジストと反対になる。ポジ型レジストの未露光領域がネガ型レジストの高ドーズ領域に、ポジ型レジストの高ドーズ領域がネガ型レジストの未露光領域に対応する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、1回の露光処理工程により、異なる光学特性を有するパターンを備えたフォトマスクを得ることができる。その結果、フォトマスクの製造工数の増大を防止しながら、精細なパターンを実現することができる。
本フォトマスクを、表示装置等の製品の生産工程で用いることにより、製品の性能向上等に寄与することができ、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0066】
100 フォトマスク
1 透過性基板
2 機能性膜(半透過膜)
3 エッチングストッパ膜(中間膜)
4 遮光膜(上層膜)
5 (フォト)レジスト膜
5a 未露光領域
5b 低ドーズ領域
5c 高ドーズ領域
6 半透過領域
7 遮光領域
8 透過領域
9 反射防止膜
41 遮光膜