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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20240709BHJP
   B29C 45/68 20060101ALI20240709BHJP
   B29C 45/73 20060101ALI20240709BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B29C45/64
B29C45/68
B29C45/73
B29C45/76
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020176706
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067864
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 匡英
(72)【発明者】
【氏名】田窪 勝
(72)【発明者】
【氏名】樽家 宏治
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138438(JP,A)
【文献】特開2018-167467(JP,A)
【文献】特開2016-040089(JP,A)
【文献】特開2015-140012(JP,A)
【文献】特開2003-033954(JP,A)
【文献】特開平09-239796(JP,A)
【文献】特開平08-238655(JP,A)
【文献】特開昭57-135137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/64
B29C 45/68
B29C 45/73
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を型締する型締装置と、前記金型のキャビティに樹脂を射出する射出装置と、を有し、金型温調機によって前記金型を高温目標温度になるまで昇温して射出しその後前記金型を低温目標温度になるように冷却するヒート&クール成形に用いられる射出成形機において、
前記型締装置が、
固定ダイプレートと、
前記固定ダイプレートと型締方向に対向し、前記固定ダイプレートとの間に前記金型を挟むように配置された移動ダイプレートと、
前記固定ダイプレートに対して前記移動ダイプレートを進退させる、伸長および屈曲可能に構成されたトグルリンク機構と、を有し、
前記射出成形機が、前記固定ダイプレートおよび前記移動ダイプレートのうちの一方のダイプレートに設けられ、前記ヒート&クール成形時に前記金型を前記型締方向に押圧可能に構成された型締力補充機構を有し、
前記型締装置が、
前記固定ダイプレートと前記型締方向に対向し、前記移動ダイプレートとの間に前記固定ダイプレートを挟むように配置されたテールストックと、
前記テールストックと前記移動ダイプレートとを連結する複数のタイバーと、を有し、
前記テールストックと前記固定ダイプレートとが前記トグルリンク機構によって連結され、
前記固定ダイプレート側に、前記金型から成形品を押し出すエジェクタ機構が設けられ、
前記移動ダイプレートに、前記型締力補充機構が設けられ
前記射出成形機が、当該射出成形機の動作を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記金型温調機によって高温目標温度に昇温され前記型締装置によって型締された前記金型の型締力(以下、「高温時型締力」という。)を取得し、
前記金型温調機によって低温目標温度になるように冷却されている間の前記金型の型締力(以下、「冷却中型締力」という。)を取得し、
取得された前記冷却中型締力を前記高温時型締力と比較し、前記冷却中型締力が前記高温時型締力になるように前記型締力補充機構を制御する、射出成形機。
【請求項2】
前記制御装置が、前記タイバーの伸び量に基づいて前記型締力を取得する、請求項に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記金型と前記固定ダイプレートおよび前記移動ダイプレートのうちの他方のダイプレートとの間に配置された冷却プレートを有している、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記型締力補充機構が、
前記一方のダイプレートに設けられたシリンダ部と、
前記一方のダイプレートから他方のダイプレート側に突出可能なように前記シリンダ部に保持されたピストンと、
前記ピストンと前記金型との間に配置され、前記ピストンによって前記型締方向に押される押圧プレートと、を有している、請求項または請求項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記制御装置が、前記トグルリンク機構が屈曲した状態において、前記ピストンを前進限位置および後退限位置に移動させる、請求項に記載の射出成形機。
【請求項6】
金型を型締する型締装置と、前記金型のキャビティに樹脂を射出する射出装置と、を有し、金型温調機によって前記金型を高温目標温度になるまで昇温して射出しその後前記金型を低温目標温度になるように冷却するヒート&クール成形に用いられる射出成形機において、
前記型締装置が、
固定ダイプレートと、
前記固定ダイプレートと型締方向に対向し、前記固定ダイプレートとの間に前記金型を挟むように配置された移動ダイプレートと、
前記固定ダイプレートに対して前記移動ダイプレートを進退させる、伸長および屈曲可能に構成されたトグルリンク機構と、を有し、
前記射出成形機が、前記固定ダイプレートおよび前記移動ダイプレートのうちの一方のダイプレートに設けられ、前記ヒート&クール成形時に前記金型を前記型締方向に押圧可能に構成された型締力補充機構を有し、
前記型締装置が、
前記移動ダイプレートと前記型締方向に対向し、前記固定ダイプレートとの間に前記移動ダイプレートを挟むように配置されたテールストックと、
前記テールストックと前記固定ダイプレートとを連結する複数のタイバーと、を有し、
前記テールストックと前記移動ダイプレートとが前記トグルリンク機構によって連結され、
前記移動ダイプレート側に、前記金型から成形品を押し出すエジェクタ機構が設けられ、
前記固定ダイプレートに前記型締力補充機構が設けられている、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒート&クール成形に用いられる射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の成形方法の一つとして、「ヒート&クール成形」と呼ばれるものがある。ヒート&クール成形では、金型を昇温して高温にした状態で、金型のキャビティに樹脂を射出充填する。そのあと、金型を冷却して低温にし、キャビティ内の樹脂を固化させる。ヒート&クール成形を用いることで、ウェルドラインの発生等を抑制して成形品の外観品質を高めることができる。
【0003】
特許文献1に、ヒート&クール成形に用いられる従来の射出成形機が記載されている。特許文献1の射出成形機は、型締装置によって金型を所定の型締力で締め付け、金型の循環路内に高温の媒体を流動させる。金型が高温になった後、金型のキャビティに樹脂を射出充填し、金型の循環路内に低温の媒体を流動させる。そして、キャビティ内の樹脂が固化した後、金型を開いて成形品を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-156773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の射出成形機では、トグルリンク機構を有する型締装置が用いられることがある。型締装置は、トグルリンク機構を最大限伸長させたときに所定の型締力を発生するように構成されている。そして、金型が高温から低温に温度変化して厚さ方向の寸法が小さくなると、型締力が低下して成形不良が生じてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ヒート&クール成形において金型の寸法変化によって生じる成形不良を抑制できる射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る射出成形機は、金型を型締する型締装置と、前記金型のキャビティに樹脂を射出する射出装置と、を有し、金型温調機によって前記金型を高温目標温度になるまで昇温して射出しその後前記金型を低温目標温度になるように冷却するヒート&クール成形に用いられる射出成形機において、前記型締装置が、固定ダイプレートと、前記固定ダイプレートと型締方向に対向し、前記固定ダイプレートとの間に前記金型を挟むように配置された移動ダイプレートと、前記固定ダイプレートに対して前記移動ダイプレートを進退させる、伸長および屈曲可能に構成されたトグルリンク機構と、を有し、前記射出成形機が、前記固定ダイプレートおよび前記移動ダイプレートのうちの一方のダイプレートに設けられ、前記ヒート&クール成形時に前記金型を前記型締方向に押圧可能に構成された型締力補充機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒート&クール成形時に型締力補充機構によって金型を型締方向に押圧する。このようにしたことから、金型が高温から低温に温度変化して厚さ方向の寸法が小さくなると型締力が低下するが、型締力補充機構によって、型締力を補充する。そのため、ヒート&クール成形において金型の寸法変化によって生じる成形不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
図2図1の射出成形機の機能ブロック図である。
図3図1の射出成形機の制御装置が実行する動作の一例を示すフローチャートである。
図4図1の射出成形機の型締装置の正面図である(型開状態)。
図5図1の射出成形機の型締装置の正面図である(型締状態)。
図6図1の射出成形機の型締装置の正面図である(型締力補充状態)。
図7図1の射出成形機の変形例の構成を示す正面図である。
図8図1の射出成形機の他の変形例の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る射出成形機について、図1図6を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る射出成形機1は、ヒート&クール成形に用いられる射出成形機である。射出成形機1は、竪型締・横射出タイプの射出成形機である。
【0012】
図1図2に示すように、射出成形機1は、型締装置10と、型締力補充機構20と、射出装置30と、金型温調機40と、制御装置50と、を有している。
【0013】
型締装置10は、基台5に設けられている。型締装置10は、コア金型である固定側金型81とキャビティ金型である可動側金型82とを型締する。型締装置10は、固定ダイプレート11と、移動ダイプレート12と、テールストック13と、トグルリンク機構14と、複数のタイバー15と、型締駆動機構16と、冷却プレート17と、ひずみセンサ18と、を有している。
【0014】
固定ダイプレート11は、基台5と一体化されている。固定ダイプレート11には、冷却プレート17が取り付けられ、冷却プレート17に固定側金型81が取り付けられる。冷却プレート17は、その内部に低温の液体や気体などの媒体を流動可能なように構成されている。なお、冷却プレート17を省略して、固定ダイプレート11に固定側金型81が取り付けられていてもよい。固定ダイプレート11には、成形品を押し出すエジェクタピンなどを有するエジェクタ機構19が設けられている。固定ダイプレート11は、固定側金型81を回転移動させるロータリーテーブルであってもよい。移動ダイプレート12は、固定ダイプレート11の上方に配置されている。テールストック13は、固定ダイプレート11の下方に配置されている。移動ダイプレート12とテールストック13とは、固定ダイプレート11を間に挟み、上下方向(型締方向)に対向して配置されている。
【0015】
トグルリンク機構14は、固定ダイプレート11とテールストック13とを連結している。タイバー15は、4本設けられている。複数のタイバー15は、一端部(下端部)がテールストック13に固定され、他端部(上端部)が移動ダイプレート12に固定されている。複数のタイバー15は、移動ダイプレート12とテールストック13とを連結している。また、複数のタイバー15は、固定ダイプレート11に設けられた貫通孔11aに挿通されている。タイバー15には、その伸び量を検出するひずみセンサ18が取り付けられている。なお、移動ダイプレート12の位置を検出することによって、タイバー15の伸び量を検出してもよい。
【0016】
型締駆動機構16は、ボールねじ16aと、ボールねじ16aをプーリ16b、16cおよびベルト16dを介して駆動する型開閉モータ16eと、を有している。型締駆動機構16は、トグルリンク機構14を伸長および屈曲させる。トグルリンク機構14が伸長および屈曲すると、固定ダイプレート11に対して移動ダイプレート12が進退される。
【0017】
型締力補充機構20は、移動ダイプレート12に設けられている。型締力補充機構20は、固定側金型81および可動側金型82を下方に向けて押圧可能なように構成されている。型締力補充機構20は、シリンダ部21と、ピストン22と、押圧プレート23と、を有している。シリンダ部21は、移動ダイプレート12の下面に開口する円形穴である。ピストン22は、円柱形状に形成されており、シリンダ部21に挿入されている。ピストン22は、シリンダ部21から固定ダイプレート11側に突出可能なように当該シリンダ部21に保持されている。シリンダ部21とピストン22とで油圧シリンダ装置を構成している。シリンダ部21とピストン22との間には図示しない円環形状のパッキンが設けられている。押圧プレート23は、ピストン22の下端に固定されている。押圧プレート23には、可動側金型82が取り付けられる。型締力補充機構20は、電動モータで押圧プレート23を駆動する構成であってもよい。
【0018】
射出装置30は、基台5上に設けられている。射出装置30は、加熱シリンダ31と、ノズル32と、スクリュー33と、スクリュー駆動機構34と、を有している。
【0019】
加熱シリンダ31は、円筒状に形成されている。加熱シリンダ31の外周面には、図示しないヒータが設けられている。ノズル32は、加熱シリンダ31の先端(図1において左端)に設けられている。スクリュー33は、加熱シリンダ31に回転及び進退可能に収容されている。スクリュー駆動機構34は、例えば、電動モータなどを有しており、スクリュー33を回転および進退させる。
【0020】
金型温調機40は、固定側金型81および可動側金型82の温度を調整する装置である。金型温調機40は固定側金型81および可動側金型82の図示しない流路に媒体を流動させる。金型温調機40は、制御装置50から送られる信号に応じて、流路に高温の媒体を流動させて、固定側金型81および可動側金型82を高温目標温度(例えば、300℃)になるように昇温する。金型温調機40は、制御装置50から送られる信号に応じて、流路に低温の媒体を流動させて、固定側金型81および可動側金型82を低温目標温度(例えば、50℃)になるように冷却する。本実施形態において、各金型へ供給する媒体は水(HO)であるが、油などの水以外の液体を用いてもよい。
【0021】
制御装置50は、射出成形機1全体の動作を司る。制御装置50は、マイクロコンピュータを有して構成されている。制御装置50は、型締駆動機構16、ひずみセンサ18、エジェクタ機構19、型締力補充機構20、スクリュー駆動機構34、金型温調機40、ならびに、固定側金型81および可動側金型82の温度を検出する金型温度センサ86などと信号を送受可能に接続されている。制御装置50は、型閉動作、射出動作、保圧動作、型締力補充動作、計量動作(可塑化動作)、型開動作、成形品取り出し動作などの各種動作において、射出成形機1の各駆動機構などを制御する。制御装置50が有するメモリには、各種動作に関する情報が記憶される。
【0022】
次に、上述した本実施形態の射出成形機1の制御装置50において実行される成形サイクルに係る動作の一例について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0023】
射出成形機1の制御装置50は、事前にパージ動作および初回射出分の熱可塑性の樹脂の計量動作などを実行する。また、固定側金型81および可動側金型82が高温目標温度の場合においてトグルリンク機構14を伸長したときに各金型に加わる型締力Fが目標型締力Ftとなるように、各金型の型厚に応じてテールストック13とタイバー15との固定位置を調整する。押圧プレート23が移動ダイプレート12に接する位置(後退限位置)までピストン22をシリンダ部21に引き込む。なお、射出成形機1において、冷却プレート17は、その内部に低温(例えば50℃)の媒体が流動されている。
【0024】
成形サイクルにおいて、制御装置50は型締駆動機構16を制御して、図4に示す型開状態から図5に示す型締状態となるように、トグルリンク機構14を伸長させて固定側金型81に可動側金型82を押し付けて型締する(型閉動作、S110)。
【0025】
型閉動作と並行して、制御装置50は、金型温調機40に信号を出力し、各金型の流路に高温の媒体を流動させて、各金型の温度が高温目標温度(例えば、300℃)になるように各金型を昇温する(金型昇温動作、S120)。
【0026】
各金型の温度が高温目標温度になると、制御装置50は、ひずみセンサ18の出力信号に基づいて、各金型に加わる型締力Fを取得し、高温時型締力F0としてメモリに記憶する(型締力記憶動作、S130)。また、制御装置50はスクリュー駆動機構34を制御して、スクリュー33を前進させる(射出動作、S140)。これにより、加熱シリンダ31の先端部の樹脂がキャビティ83に射出充填される。なお、高温時型締力F0は目標型締力Ftである。
【0027】
次に、制御装置50はスクリュー駆動機構34を制御して、キャビティ83内の樹脂に所定の圧力(保圧)が加わるようにスクリュー33を進退させる(保圧動作、S150)。
【0028】
保圧動作と並行して、制御装置50は、金型温調機40に信号を出力し、各金型の流路に低温の媒体を流動させて、各金型の温度が低温目標温度(例えば、50℃)になるように各金型を冷却する(金型冷却動作、S160)。
【0029】
金型冷却動作を開始すると、制御装置50は、ひずみセンサ18の出力信号に基づいて、各金型に加わる型締力Fを取得する。そして、制御装置50は、型締力Fが高温時型締力F0より小さいと、型締力Fが高温時型締力F0と同じになるように型締力補充機構20をフィードバック制御する(型締力補充動作、S170)。具体的には、図6に示すように、制御装置50は、取得した型締力Fと高温時型締力F0とに基づいてシリンダ部21に導入する作動油の量を調整することにより、ピストン22のシリンダ部21からの突出量を調整する。ピストン22の突出量に応じて押圧プレート23が上下方向に移動し、各金型に加わる型締力Fが補充される。
【0030】
同時に、制御装置50はスクリュー駆動機構34を制御して、スクリュー33を回転させながら後退させ、樹脂を可塑化しつつ1回の射出に必要となる量の樹脂を加熱シリンダ31の先端部に供給(計量)する(計量動作、S180)。
【0031】
そして、制御装置50は型締駆動機構16を制御して、トグルリンク機構14を屈曲させて固定側金型81および可動側金型82を開き(型開動作、S190)、図示しないエジェクタ機構によって固定側金型81から成形品を取り出す(成形品取り出し動作、S200)。また、型開動作後、制御装置50は、型締力Fの取得を停止する。また、制御装置50は、ピストン22を後退限位置まで移動させる。
【0032】
以降、上記型閉動作~上記成形品取り出し動作からなる成形サイクルを繰り返し実行して成形品の成形を行う。
【0033】
また、制御装置50は、成形サイクルを毎回もしくは所定回数(例えば、10回)実行した後、トグルリンク機構14が屈曲した状態において、ピストン22をシリンダ部21から最大限突出させた位置(前進限位置)および後退限位置に移動させる動作を行う。
【0034】
以上より、本実施形態の射出成形機1は、固定側金型81と可動側金型82とを型締する型締装置10と、キャビティ83に樹脂を射出する射出装置30と、各金型の温度を調整する金型温調機40、と、を有する。金型温調機40によって各金型を高温目標温度になるまで昇温して射出しその後低温目標温度へ冷却するヒート&クール成形を実施する。型締装置10は、固定ダイプレート11と、固定ダイプレート11と型締方向に対向し、固定ダイプレート11との間に各金型を挟むように配置された移動ダイプレート12と、固定ダイプレート11に対して移動ダイプレート12を進退させる、伸長および屈曲可能に構成されたトグルリンク機構14と、を有する。射出成形機1は、移動ダイプレート12に設けられ、ヒート&クール成形時に各金型を型締方向に押圧可能に構成された型締力補充機構20と、を有している。
【0035】
射出成形機1によれば、移動ダイプレート12に設けられ、各金型を型締方向に押圧可能に構成された型締力補充機構20を有する。そのため、ヒート&クール成形において金型の寸法変化によって生じる成形不良を抑制できる。
【0036】
また、型締装置10が、固定ダイプレート11と型締方向に対向し、移動ダイプレート12との間に固定ダイプレート11を挟むように配置されたテールストック13と、テールストック13と移動ダイプレート12とを連結する複数のタイバー15と、を有する。テールストック13と固定ダイプレート11とがトグルリンク機構14によって連結される。固定ダイプレート11に、固定側金型81から成形品を押し出すエジェクタ機構が設けられ、移動ダイプレート12に、型締力補充機構20が設けられている。このようにしたことから、固定ダイプレート11に、エジェクタ機構19と型締力補充機構20とを両方設けた構成に比べて、簡易な構成にすることができる。
【0037】
また、射出成形機1は、動作を制御する制御装置50を有する。制御装置50は、金型温調機40によって各金型の温度を高温目標温度に昇温され、型締装置によって型締された金型の型締力F(高温時型締力F0)を取得し、射出装置30によってキャビティ83に樹脂を射出し、キャビティ83に樹脂を射出した後、金型温調機40によって各金型の温度を低温目標温度になるように冷却している間の各金型に加わる型締力F(冷却中型締力F)を取得し、冷却中型締力Fを高温時型締力F0と比較し、冷却中型締力Fが高温時型締力F0と同じになるように、型締力補充機構20を制御する。
【0038】
射出成形機1によれば、トグルリンク機構14を伸長させることによって各金型を型締する。金型温調機40によって固定側金型81および可動側金型82の温度を高温目標温度になるように昇温する。次に射出装置30によって、キャビティ83に樹脂を射出する。キャビティ83に樹脂を射出した後、各金型の温度を低温目標温度になるように冷却する。冷却中の各金型に加わる型締力F(冷却中型締力F)を取得する。そして、冷却中型締力Fと高温時型締力F0と比較し、冷却中型締力Fが高温時型締力F0と同じになるように、型締力補充機構20を制御する。このようにしたことから、固定側金型81および可動側金型82が高温から低温に温度変化して厚さ方向の寸法が小さくなると、タイバー15の伸び量が小さくなり冷却中型締力Fが小さくなるが、型締力補充機構20によって、冷却中型締力Fが高温時型締力F0になるように冷却中型締力Fを補充する。そのため、ヒート&クール成形において金型の寸法変化によって生じる成形不良を抑制できる。
【0039】
また、制御装置50が、タイバー15の伸び量に基づいて型締力Fを取得する。このようにしたことから、型締力Fを精度よく取得でき、成形不良をより抑制できる。
【0040】
また、固定側金型81と固定ダイプレート11との間に配置された冷却プレート17を有している。このようにしたことから、固定側金型81から固定ダイプレート11に熱が伝わってしまうことを抑制できる。
【0041】
また、型締力補充機構20が、移動ダイプレート12に設けられたシリンダ部21と、移動ダイプレート12から固定ダイプレート11側に突出可能なようにシリンダ部21に保持されたピストン22と、ピストン22と可動側金型82との間に配置され、ピストン22によって型締方向に押される押圧プレート23と、を有している。このようにしたことから、型締力補充機構20を比較的簡易な構成で実現できる。
【0042】
また、制御装置50が、トグルリンク機構14が屈曲した状態において、ピストン22を前進限位置および後退限位置に移動させる。このようにしたことから、ピストン22の固着などによる動作不良を防止できる。また、油圧シリンダ装置を構成するシリンダ部21とピストン22との間に配置されたパッキンの油膜切れを抑制できる。
【0043】
上述した射出成形機1は、竪型締・横射出タイプであったが、本発明を適用可能な射出成形機はこのタイプに限られない。図7図8に、上述した射出成形機1の変形例の構成を示す。図7図8において、上述した射出成形機1と同機能の構成には、同一の符号を付している。
【0044】
図7に示す射出成形機2は、竪型締・竪射出タイプの射出成形機である。射出成形機2は、移動ダイプレート12に型締力補充機構20が設けられている。射出成形機2の移動ダイプレート12および押圧プレート23には、加熱シリンダ31が挿入される貫通孔12aおよび貫通孔23aが設けられている。そして、貫通孔12aの周りに、型締力補充機構20の複数の油圧シリンダ装置(シリンダ部21およびピストン22)が配置されている。
【0045】
図8に示す射出成形機3は、横型締・横射出タイプの射出成形機である。射出成形機3の型締装置10は、基台5に固定された固定ダイプレート11と、固定ダイプレート11と横方向(型締方向)に対向し、固定ダイプレート11との間に各金型を挟むように配置された移動ダイプレート12と、を有している。また、型締装置10は、移動ダイプレート12と横方向に対向し、固定ダイプレート11との間に移動ダイプレート12を挟むように配置されたテールストック13と、このテールストック13と固定ダイプレート11とを連結する、移動ダイプレート12に設けられた図示しない貫通孔に挿通された複数のタイバー15と、を有する。テールストック13と移動ダイプレート12とはトグルリンク機構14によって連結される。移動ダイプレート12に、可動側金型82から成形品を押し出すエジェクタ機構19が設けられている。そして、固定ダイプレート11に、型締力補充機構20が設けられている。
【0046】
これら射出成形機2、3においても、上述した射出成形機1と同様の作用効果を奏する。
【0047】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、2、3…射出成形機、5…基台、10…型締装置、11…固定ダイプレート、12…移動ダイプレート、12a…貫通孔、13…テールストック、14…トグルリンク機構、15…タイバー、16…型締駆動機構、16a…ボールねじ、16b、16c…プーリ、16d…ベルト、16e…型開閉モータ、17…冷却プレート、18…ひずみセンサ、19…エジェクタ機構、20…型締力補充機構、21…シリンダ部、22…ピストン、23…押圧プレート、23a…貫通孔、30…射出装置、31…加熱シリンダ、32…ノズル、33…スクリュー、34…スクリュー駆動機構、40…金型温調機、81…固定側金型、82…可動側金型、83…キャビティ、86…金型温度センサ、F…型締力、F0…高温時型締力、Ft…目標型締力

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8