(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】計画管理装置、計画管理方法及び計画管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0635 20230101AFI20240709BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G06Q10/0635
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2020190434
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 孝保
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-250989(JP,A)
【文献】特開2009-176315(JP,A)
【文献】特開2006-134022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクトを構成するアクティビティ、前記アクティビティに対して割り当てられるリソース、及び、前記リソースごとに定義されたリスクを受け付ける入力処理部と、
前記受け付けたリスクに基づき、前記プロジェクト及び前記アクティビティについて、それぞれの工期の変動量及びコストの変動量の少なくとも一方を算出する計画管理部と、
前記変動量が所定の基準より大きい前記アクティビティを表示する出力処理部と、
を備え
、
前記入力処理部は、
前記リスクを、確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータとして受け付け、
前記計画管理部が前記工期の変動量を算出する場合において、
前記入力処理部は、
前記アクティビティの終了期限を受け付け、
前記計画管理部は、
前記リスクに起因して前記終了期限を超過する可能性がある前記アクティビティを特定し、
前記出力処理部は、
前記特定したアクティビティを当該アクティビティに割り当てられる前記リソースに関連付けて表示し、
前記計画管理部が前記コストの変動量を算出する場合において、
前記計画管理部は、
前記リスクの大きさに応じて、前記アクティビティに割り当てられるリソースを変更し、
前記出力処理部は、
変更後の前記リソースを当該リソースが割り当てられる前記アクティビティに関連付けて表示し、
前記確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータは、
過去の実績に基づいて決定されたものであり、
前記アクティビティは、
前記アクティビティが必要とする機能であり、かつ、前記アクティビティの直接的な実行主体である前記リソースが有する機能でもあるロールと関連付けられており、
前記リソースもまた、
前記ロールと関連付けられていること、
を特徴とする計画管理装置。
【請求項2】
計画管理装置の入力処理部は、
プロジェクトを構成するアクティビティ、前記アクティビティに対して割り当てられるリソース、及び、前記リソースごとに定義されたリスクを受け
付け、
前記計画管理装置の計画管理部は、
前記受け付けたリスクに基づき、前記プロジェクト及び前記アクティビティについて、それぞれの工期の変動量及びコストの変動量の少なくとも一方を算出し、
前記計画管理装置の出力処理部は、
前記変動量が所定の基準より大きい前記アクティビティを表示
し、
前記入力処理部は、
前記リスクを、確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータとして受け付け、
前記計画管理部が前記工期の変動量を算出する場合において、
前記入力処理部は、
前記アクティビティの終了期限を受け付け、
前記計画管理部は、
前記リスクに起因して前記終了期限を超過する可能性がある前記アクティビティを特定し、
前記出力処理部は、
前記特定したアクティビティを当該アクティビティに割り当てられる前記リソースに関連付けて表示し、
前記計画管理部が前記コストの変動量を算出する場合において、
前記計画管理部は、
前記リスクの大きさに応じて、前記アクティビティに割り当てられるリソースを変更し、
前記出力処理部は、
変更後の前記リソースを当該リソースが割り当てられる前記アクティビティに関連付けて表示し、
前記確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータは、
過去の実績に基づいて決定されたものであり、
前記アクティビティは、
前記アクティビティが必要とする機能であり、かつ、前記アクティビティの直接的な実行主体である前記リソースが有する機能でもあるロールと関連付けられており、
前記リソースもまた、
前記ロールと関連付けられていること、
を特徴とする計画管理装置の計画管理方法。
【請求項3】
コンピュータを、
プロジェクトを構成するアクティビティ、前記アクティビティに対して割り当てられるリソース、及び、前記リソースごとに定義されたリスクを受け付ける入力処理部と、
前記受け付けたリスクに基づき、前記プロジェクト及び前記アクティビティについて、それぞれの工期の変動量及びコストの変動量の少なくとも一方を算出する計画管理部と、
前記変動量が所定の基準より大きい前記アクティビティを表示する出力処理部と、
して機能させるための計画管理プログラム
であって、
前記入力処理部に対し、
前記リスクを、確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータとして受け付ける処理を実行させ、
前記計画管理部が前記工期の変動量を算出する場合において、
前記入力処理部に対し、
前記アクティビティの終了期限を受け付ける処理を実行させ、
前記計画管理部に対し、
前記リスクに起因して前記終了期限を超過する可能性がある前記アクティビティを特定する処理を実行させ、
前記出力処理部に対し、
前記特定したアクティビティを当該アクティビティに割り当てられる前記リソースに関連付けて表示する処理を実行させ、
前記計画管理部が前記コストの変動量を算出する場合において、
前記計画管理部に対し、
前記リスクの大きさに応じて、前記アクティビティに割り当てられるリソースを変更する処理を実行させ、
前記出力処理部に対し、
変更後の前記リソースを当該リソースが割り当てられる前記アクティビティに関連付けて表示する処理を実行させ、
前記確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータは、
過去の実績に基づいて決定されたものであり、
前記アクティビティは、
前記アクティビティが必要とする機能であり、かつ、前記アクティビティの直接的な実行主体である前記リソースが有する機能でもあるロールと関連付けられており、
前記リソースもまた、
前記ロールと関連付けられていること、
を特徴とする計画管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計画管理装置、計画管理方法及び計画管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工程を有するプロジェクト全体の工期及びコストは、各工程の工期及びコストに影響される。近時、コンピュータがプロジェクト全体の工期及びコストを予想する技術が普及している。
【0003】
特許文献1のプロジェクト指標見積装置は、工期又はコストの増加の確率分布を工程ごとに定義し、プロジェクト全体の工期及びコストの確率分布を演算する。特許文献2のプロジェクト評価システムは、定量値(開始時期、終了時期、作業コスト等)の変動量の確率分布を工程ごとに定義し、プロジェクト全体の定量値の確率分布を演算する。さらに、特許文献2のプロジェクト評価システムは、プロジェクト全体の定量値の変動量に対する各工程の影響度、及び、工程間の定量値の変動量の相関関係を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-147432号公報
【文献】特開2004-192109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロジェクトが過去に経験のない工程を多く含む場合、工程の経験値を積み上げることによってプロジェクト全体の工期、コスト等を予想することは難しい。そこでまず、各工程の担い手であるリソース(作業員、ロボット等)の能力に基づいて、各工程の工期、コスト等を予想することになる。各工程のリスク(工期、コスト等の変動量)は、リソースに応じて大きく異なる。
【0006】
新たな工法を用いる工程において、非熟練作業員を使用した場合の工期及びそのばらつきは、熟練作業員を使用した場合の工期及びそのばらつきよりも大きい。ある工程において、新型のロボットを使用した場合の工期は、従来型のロボットを使用した場合の工期よりも小さい。しかしながら、新型のロボットに想定外の故障が発生することがあり、その結果、新型のロボットを使用した場合の工期のばらつきは、従来型のロボットを使用した場合の工期のばらつきよりも大きい。
【0007】
特許文献1のプロジェクト指標見積装置及び特許文献2のプロジェクト評価システムは、各工程にどのようなリソースを割り当てるかに応じて工程のリスクが異なるということを前提としておらず、過去に経験のない工程を多く含むプロジェクトには不向きである。
そこで、本発明は、工程に対するリソースの割り当てに応じてプロジェクトのリスクを管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の計画管理装置は、プロジェクトを構成するアクティビティ、前記アクティビティに対して割り当てられるリソース、及び、前記リソースごとに定義されたリスクを受け付ける入力処理部と、前記受け付けたリスクに基づき、前記プロジェクト及び前記アクティビティについて、それぞれの工期の変動量及びコストの変動量の少なくとも一方を算出する計画管理部と、前記変動量が所定の基準より大きい前記アクティビティを表示する出力処理部と、を備え、前記入力処理部は、前記リスクを、確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータとして受け付け、前記計画管理部が前記工期の変動量を算出する場合において、前記入力処理部は、前記アクティビティの終了期限を受け付け、前記計画管理部は、前記リスクに起因して前記終了期限を超過する可能性がある前記アクティビティを特定し、前記出力処理部は、前記特定したアクティビティを当該アクティビティに割り当てられる前記リソースに関連付けて表示し、前記計画管理部が前記コストの変動量を算出する場合において、前記計画管理部は、前記リスクの大きさに応じて、前記アクティビティに割り当てられるリソースを変更し、前記出力処理部は、変更後の前記リソースを当該リソースが割り当てられる前記アクティビティに関連付けて表示し、前記確率分布のタイプ及び確率分布のパラメータは、過去の実績に基づいて決定されたものであり、前記アクティビティは、前記アクティビティが必要とする機能であり、かつ、前記アクティビティの直接的な実行主体である前記リソースが有する機能でもあるロールと関連付けられており、前記リソースもまた、前記ロールと関連付けられていること、を特徴とする
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工程に対するリソースの割り当てに応じてプロジェクトのリスクを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】リスクの正規分布及びガンマ分布を説明する図である。
【
図16】アクティビティ固有リスク設定画面の一例である。
【
図18】ロール・リソース組合せリスク設定画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、主として建物の建設のような現場作業を有するプロジェクトを想定している。しかしながら、本発明は、研究・開発等のような現場作業を有さないプロジェクトにも適用可能である。
【0012】
(用語)
プロジェクトとは、“〇〇ビル建設計画”のような有期の事業計画であり、多くの場合、個別的かつ非反復的である。プロジェクトは、“基礎工事”、“資材搬入”のような複数の工程を含む。工程間には、順序(前後)関係又は並列関係が存在する。また、工程は、階層構造を有し、上位の工程は“タスク”と呼ばれ、下位の工程は“アクティビティ”と呼ばれる。さらに、タスク同士の間にも、階層関係が存在する。結局、これらの階層関係は、“プロジェクト>タスク>・・・>タスク>アクティビティ”である。
【0013】
リスクとは、工期又はコストの基準に対する変動量である。リスクは、確率分布によって表現され得る。さらに、その確率分布が正規分布である場合、リスクは、平均及び標準偏差によって表現され得る。
リソースとは、各アクティビティの直接的な実行主体としての、作業員、ロボット、その他の設備等である。リソースは、アクティビティに対して割り当てられる。
【0014】
ロールとは、“溶接”、“測量”のような、アクティビティが必要とする機能であり、リソースが有する(発揮する)機能でもある。リソースは、ロールを仲介してアクティビティに対して割り当てられる。
シフトとは、プロジェクトの全期間のうちの“第1日から第10日まで”のように、特定のアクティビティを行う時間幅である。シフトは、例えばアルバイトの作業員を雇用する単位期間となる。
マイルストンとは、アクティビティに対して設定された終了期限日である。すべてのアクティビティにマイルストンが設定される必要はない。
【0015】
(計画管理装置の構成等)
図1は、計画管理装置1の構成等を説明する図である。計画管理装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マウス、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14及び補助記憶装置15を備える。これらは、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、リスク情報31、WBS(Work Breakdown Structure、作業分解構造)情報32、アクティビティ情報33、計画情報34、実績情報35、シフト情報36、コスト情報37、リスク反映情報38及び最適化条件情報39(詳細後記)を格納している。
【0016】
主記憶装置14における入力処理部21、出力処理部22及び計画管理部23は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出し主記憶装置14にロードすることによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15は、計画管理装置1から独立した構成であってもよい。
【0017】
(リスク情報)
図2は、リスク情報31の一例である。リスク情報31(
図1)は、リスク情報31a及びリスク情報31b(
図2)を含む。リスク情報31aにおいては、リソース(欄101)、ロール(欄102)、習熟度(欄103)及びリスク(欄104)が相互に関連付けて記憶されている。リスク(欄104)は、分布タイプ(欄104a)、パラメータ1(欄104b)、パラメータ2(欄104c)及びパラメータ3(欄104d)を含む。
【0018】
リソース(欄101)は、リソースの名称である。なお、“名称”は、リソースを一意に特定する識別子を含む。以降で説明する“名称”についても同様である。
ロール(欄102)は、ロールの名称である。多能工作業員のように、1つのリソースが複数のロールを有することがある。例えば、ある多能工作業員は、ロールとして、“運搬”及び“切削”を有する。
習熟度(欄103)は、リソースがロールを経験した程度である。1つのリソースが複数のロールを有する場合、それらの習熟度は異なる。例えば、“運搬”の習熟度は高く、“切削”の習熟度は低いことがある。“#”は、異なる数値を省略的に示している(以下同様)。
【0019】
リスク(欄104)は、リソースがロールを行う場合に、そのロールを必要とするアクティビティに発生することが想定されるリスクの確率分布である。前記したように、リスクとは、工期又はコストの基準に対する変動量(遅延日数又は追加コスト)である。分布タイプ(欄104a)は、リスクの確率分布の類型であり、正規分布を示す“正規”、ガンマ分布を示す“ガンマ”等があり得る。
パラメータ1(欄104b)、パラメータ2(欄104c)及びパラメータ3(欄104d)は、確率分布のパラメータである。分布タイプが“正規”である場合、パラメータ1は平均であり、パラメータ2は標準偏差であり、欄104dは空欄となる。あるリソースがあるロールを行う場合の平均及び標準偏差は、同じリソースが他のロールを行う場合の平均及び標準偏差とは異なる。分布タイプ及びパラメータは、過去の実績によって決定される。なお、正規分布及びガンマ分布のパラメータについては、詳細を後記する。
【0020】
リスク情報31bにおいては、ロール(欄105)及びアクティビティ(欄106)が相互に関連付けて記憶されている。
ロール(欄105)は、ロールの名称である。
アクティビティ(欄106)は、アクティビティの名称である。
【0021】
図2を全体的に見ると、以下のことがわかる。
・リスク情報31aは、どのリソースがどのロールを行った場合、リスク(遅延日数又は追加コスト)がどのような確率分布として発生するかを示す。
・リスク情報31bは、アクティビティが決まれば、ロールも決まることを示す。
・例えば、アクティビティJ1が必要とするロールは、“a”である。ロール“a”に対して割り当て可能なリソースは、“R1”、“R2”、“R3”及び“R4”である。
【0022】
・仮に、これらのうちからリソースR1が選択されるということは、リソースR1がアクティビティJ1に対して割り当てられたことを意味する。
・リソースR1がアクティビティJ1に対して割り当てられた場合のリスクの確率分布は、他のリソースが同じアクティビティJ1に対し割り当ててられた場合のリスクの確率分布とは異なる。
【0023】
(リスクの正規分布及びガンマ分布)
図3は、リスクの正規分布及びガンマ分布を説明する図である。グラフ41は、正規分布“N(μ,σ
2)”を示す。グラフ41の横軸の値は、リスクである。リスクの例としては、アクティビティの遅延日数又は追加コストが挙げられる。縦軸の値は、確率密度である。“μ”は、平均を示し、“σ
2”は分散を示す。“μ”及び“σ”(標準偏差)は、前記したパラメータである。
【0024】
いま、確率密度の“-∞”から“∞”までの積分値を“100%”とすると、このうち“-1σ”から“1σ”までの積分値は“68%”となる。同様に、“-2σ”から“2σ”までの積分値は“95%”となり、“-3σ”から“3σ”までの積分値は“99.7%”となる。これらの百分率は、統計学上の信頼区間であり、本実施形態では“リスク確率”とも呼ばれる。
【0025】
グラフ42は、ガンマ分布“Ga(α,β)”を示す。グラフ41と同様、グラフ42の横軸の値はリスクであり、縦軸の値は確率密度である。“α”及び“β”もまた、前記したパラメータである。確率密度の“0”から“∞”までの積分値を“100%”とすると、このうち“0”から“x”までの積分値(%)が、“x”の値に応じて決まる。この百分率もまた、“リスク確率”とも呼ばれる。
【0026】
(リスク確率を指定する意味)
計画管理装置1は、正規分布“N(μ,σ2)”に従ってリスク(遅延日数又は追加コスト)の値の候補を生成する。このとき特に指定しない限り、計画管理装置1は、“-∞”から“∞”までの全体に渡って候補を生成することになる(詳細後記)。いま、計画管理装置1のユーザが、“-1σ”から“1σ”までの部分を指定したとする。すると、計画管理装置1は、全体に渡って候補を生成させたうえで、“-1σ”未満及び“1σ”超の部分の候補を削除する。このことは、計画管理装置1が平均μを中心として“68%”のリスク確率を受け付けたことを意味する。自身が指定するリスク確率が大きいほど、ユーザは、大小極端なリスクの値を想定した慎重な態度を有することになる。
【0027】
ガンマ分布Ga(α,β)において、確率密度の“0”から“5”までの積分値が“90%”であるとする。ユーザがリスク確率として“90%”を指定した場合、計画管理装置1は、“0”から“∞”までの全体に渡って候補を生成させたうえで、“5”超の部分の候補を削除する。
【0028】
(WBS情報(作業分解構造情報))
図4は、WBS情報32の一例である。WBS情報32(
図1)は、WBS情報32a、WBS情報32b、WBS情報32c及びWBS情報32d(
図4)を含む。WBS情報32aにおいては、アクティビティ(欄111)及びタスク(欄112)が相互に関連付けて記憶されている。
アクティビティ(欄111)は、アクティビティの名称である。
タスク(欄112)は、アクティビティを含むタスクの名称である。
【0029】
WBS情報32bにおいては、タスク(欄113)及び上位タスク(欄114)が相互に関連付けて記憶されている。
タスク(欄113)は、タスクの名称である。
上位タスク(欄114)は、欄113のタスクを含む上位のタスクの名称である。タスク(欄113)が上位タスク(欄114)に一致する場合、それは、そのタスクが最上位にあることを示す。
【0030】
WBS情報32cにおいては、タスク(欄115)及びプロジェクト(欄116)が相互に関連付けて記憶されている。
タスク(欄115)は、タスクの名称である。
プロジェクト(欄116)は、タスクを含むプロジェクトの名称である。
【0031】
WBS情報32dにおいては、アクティビティ1(欄117)、アクティビティ2(欄118)及び順序関係(欄119)が相互に関連付けて記憶されている。
アクティビティ1(欄117)は、アクティビティの名称である。
アクティビティ2(欄118)は、アクティビティ1と順序的な関係を有する他のアクティビティの名称である。
順序関係(欄119)は、2つのアクティビティ相互間の前後関係である。例えば、“1→2”は、アクティビティ1が実行された後にアクティビティ2が実行されることを示す。
【0032】
図4は、全体として、WBSの形状(プロジェクトが、どのような工程を、どのような階層、かつ、どのような順序で含むか)を示している。
【0033】
(アクティビティ情報)
図5は、アクティビティ情報33の一例である。アクティビティ情報33においては、ロール(欄121)、アクティビティ(欄122)、標準負荷(欄123)及びマイルストン(欄124)が相互に関連付けて記憶されている。
ロール(欄121)は、ロールの名称である。
アクティビティ(欄122)は、アクティビティの名称である。
標準負荷(欄123)は、そのアクティビティにおけるそのロールが必要とする標準的な負荷(例えば、標準日数)である。ロールが同じであっても、アクティビティが異なれば、標準負荷の値は異なり得る。
マイルストン(欄124)は、前記したマイルストンである。マイルストンが定義されないアクティビティもあり得る。
【0034】
(計画情報)
図6は、計画情報34の一例である。計画情報34(
図1)は、計画情報34a及び計画情報34b(
図6)を含む。計画情報34aにおいては、アクティビティ(欄131)、開始日(欄132)及び終了日(欄133)が相互に関連付けて記憶されている。
アクティビティ(欄131)は、予定(計画)されているアクティビティの名称である。
開始日(欄132)は、アクティビティを開始する予定日である。ここでの開始日は、プロジェクト全体の開始日を“1”として1日経過するごとに“1”をインクリメントさせた序数である(以降の開始日及び終了日についても同様)。
終了日(欄133)は、アクティビティを終了する予定日である。
【0035】
計画情報34bにおいては、日付(欄134)、アクティビティ(欄135)及びリソース(欄136)が相互に関連付けて記憶されている。
日付(欄134)は、プロジェクト全体の開始日を“1”として1日経過するごとに“1”をインクリメントさせた序数である。
アクティビティ(欄135)は、その日付に行われる予定のアクティビティの名称である。
リソース(欄135)は、そのアクティティビティに対して割り当てられる予定のリソースの名称である。
【0036】
図6を全体的に見ると、例えば以下のことがわかる。
・アクティビティJ1及びJ6は、いずれも、プロジェクトの第1日から第5日までに予定されている。
・その間、アクティビティJ1に対して、リソースR3が割り当てられている。
・その間、アクティビティJ6に対して、リソースR4が割り当てられている。
【0037】
(実績情報)
図7は、実績情報35の一例である。実績情報34(
図1)は、実績情報35a及び実績情報35b(
図7)を含む。実績情報35aにおいては、アクティビティ(欄141)、開始日(欄142)及び終了日(欄143)が相互に関連付けて記憶されている。
アクティビティ(欄141)は、実際に行われたアクティビティの名称である。
開始日(欄142)は、アクティビティを実際に開始した日である。“実績なし”は、現時点においてアクティビティが未だ開始していないことを示す。
終了日(欄143)は、アクティビティを実際に終了した日である。“実績なし”は、現時点においてアクティビティが未だ終了していないことを示す。
【0038】
実績情報35bにおいては、アクティビティ(欄144)、リソース(欄145)及びロール(欄146)が相互に関連付けて記憶されている。
アクティビティ(欄144)は、アクティティビティの名称である。
リソース(欄145)は、アクティティビティに対して実際に割当てられたリソースの名称である。
ロール(欄146)は、そのアクティビティが必要とするロールの名称である。1つのアクティビティに対して複数のロールが対応する場合もある。
【0039】
図7を
図6と比較しながら見ると、以下のことがわかる。
・アクティビティJ1及びJ3は、予定通り開始したが未だ終了していないことが現時点でわかっている。
・アクティビティJ8は、未だ開始していないこと、したがって当然未だ終了していないことが現時点でわかっている。
・アクティビティJ1に対してリソースR3が割り当てられる予定であったが、実際にはリソースR1及びR2が割り当てられた。
・アクティビティJ3に対してリソースR4が割り当てられる予定であったが、実際にはリソースR3が割り当てられた。
【0040】
(シフト情報)
図8は、シフト情報36の一例である。シフト情報36においては、シフト(欄151)、開始日(欄152)及び終了日(欄153)が相互に関連付けて記憶されている。
シフト(欄151)は、シフトの名称である。
開始日(欄152)は、シフトを開始する日である。
終了日(欄153)は、シフトを終了する日である。
【0041】
(コスト情報)
図9は、コスト情報37の一例である。コスト情報37においては、リソース(欄161)、シフト(欄162)及び標準コスト(欄163)が相互に関連付けて記憶されている。
リソース(欄161)は、リソースの名称である。
シフト(欄162)は、リソースを使用し得るシフトの名称である。
標準コスト(欄163)は、そのリソースをそのシフトにおいて使用した場合のコスト(賃金、賃借料等)である。コストもまた分布パタン及びそのパラメータの値に応じて変動する。しかしながら、ここでのコストは、その変動量を加算する前の標準コスト(経験的に求められた基準値)である。
図9においては、コストは、シフトに関係なく、リソースごとに決まる例が記載されている。しかしながら、これは一例に過ぎず、リソース及びシフトの組合せに対してコストが決まってもよい。
【0042】
(リスク反映情報)
図10は、リスク反映情報38の一例である。リスク反映情報38においては、リソース(欄171)、ロール(欄172)、アクティビティ(欄173)及びリスク反映後所要日数(欄174)が相互に関連付けて記憶されている。
リソース(欄171)は、リソースの名称である。
ロール(欄172)は、アクティビティが必要とするロールの名称である。
アクティビティ(欄173)は、リソースが割り当てられたアクティビティの名称である。
【0043】
リスク反映後所要日数(欄174)は、そのリソースを使用してそのアクティビティを行う場合に必要な日数であり、標準日数(経験的に求められた基準値)に対して遅延日数を加算したものである。
なお、
図10には記載がないが、リスク反映情報38は、リスク反映後コストを記憶する欄を有してもよい。リスク反映後コストとは、標準コストに対して追加コストを加算したものである。
【0044】
(最適化条件情報)
図11は、最適化条件情報39の一例である。詳細は後記するが、計画管理装置1は、ユーザが入力する“ユーザ計画”を、工期又はコストが最適化されるように見直し、“最適化計画”として出力する。“ユーザ計画”及び“最適化計画”はともに、“あるプロジェクトに含まれる各アクティビティに対してどのリソースを割り当てるか”を示している。計画管理装置1は、最適化計画を作成するに際し、ユーザが入力する“ユーザ計画”及びユーザが別途設定するリスクの他に、
図11の制約条件及び評価関数を参照する。
【0045】
(計画表示画面)
詳細は後記するが、計画管理装置1は、最適化計画を計画表示画面として表示する。仮に“ユーザ計画”が同じであっても、ユーザが設定するリスクが変化すると、表示される計画表示画面も変化する。
【0046】
図12は、計画表示画面51の一例である。計画表示画面51全体の横軸は、日付である。アクティビティ欄52の縦軸は、アクティビティの名称である。横軸位置“5~7”の縦軸位置“J1”には、“R4”と記された長方形が表示されている。この長方形は、アクティビティJ1を示している。アクティビティJ1の開始日は第5日であり、終了日は第7日である。“R4”は、アクティビティJ1に対して割り当てられたリソースである。アクティビティ欄52における他の長方形についても同様である。長方形間の矢印は、アクティビティ間の順序関係を示している。横軸位置“14”の縦軸位置“J5”には三角形が表示されている。この三角形は、マイルストンであり、アクティビティJ5の終了期限日が第14日であることを示している。アクティビティ欄52は、全体として一般的な“WBS”となっている。
【0047】
シフト欄54は、横軸の日付がどのシフトに属するかを示している。例えば、第1日~第4日はシフト“C1”に属し、第5日~第8日はシフト“C2”に属し、以下同様である。
リソース欄53の縦軸はリソースである。リソースと横軸(シフト)との交点のセルにコストが表示されている。ここでのコストは、標準コスト(
図9の欄163)に相当する。例えば、リソースR1とシフトC1(第1日~第4日)との交点のセルに表示されている“3”は、そのシフト中において少なくとも1日リソースR1を使用した場合、そのコストが“3”であることを示している。他のセルについても同様である。
【0048】
図13もまた、計画表示画面51の一例である。
図12に比して
図13が異なる点は、以下の通りである。
・
図12においては、アクティビティJ5、J7、J8及びJ9に対してリソースR3が割り当てられているのに対して、
図13においては、アクティビティJ5、J7、J8及びJ9に対してリソースR2が割り当てられている。
・その結果、
図12においては、シフトC1~C7を通じたコストの総計が“11”であるのに対して、
図13においては、コストの総計は“17”である。この差は、各シフトにおけるリソースR3のコスト“2”とリソースR2のコスト“4”との差に起因する。
【0049】
(リスクの反映の有無)
図12におけるリソースR1~R5のコストは、リスクを反映していない(確率分布に従う変動量を加算する前の)標準コストである。
【0050】
図12においては、リソースR3のコスト“2”は、敢えて表現すれば「平均が“2”であり、標準偏差は“0”である」ことを示す。リソースR2のコスト“4”は、同様に「平均が“4”であり、標準偏差は“0”である」ことを示す。したがって、
図12においては、例えばアクティビティJ8に割り当てられ得るリソースとして、“R2”及び“R3”のみが想定される場合、より安価なリソースR3が割り当てられる。
【0051】
一方、
図13においては、リソースR1~R5のコストは、リソースとロールとの組合せごとのリスクを反映している。
図13においては、リソースR3のコスト“2”は、「コストは“2”を含む正規分布に従い、その平均が“2”より大きく、その標準偏差も極端に大きい」ことを示す。リソースR2のコスト“4”は、「コストは“4”を含む正規分布に従い、その平均が“4”より小さく、その標準偏差も極端に小さい」ことを示す。したがって、
図13においては、例えばアクティビティJ8に割り当てられ得るリソースとして、“R2”及び“R3”のみが想定される場合、より安価である可能性が高いリソースR2が割り当てられる。
【0052】
ユーザが、
図13において、リソースR3に対して充分大きいリスク(正規分布の平均及び標準偏差が大きい)を設定し、リソースR2に対して充分小さいリスク(正規分布の平均及び標準偏差が小さい)を設定したとする。すると、計画管理装置1がアクティビティJ5、J7、J8及びJ9に対して、リソースR3を避け、リソースR2を割り当てる可能性は高い。
【0053】
(処理手順)
図14は、処理手順のフローチャートである。説明の途中で適宜
図15~
図20を参照する。
ステップS201において、計画管理装置1の入力処理部21は、リスク情報31(
図2)、シフト情報36(
図8)及びコスト情報37(
図9)を受け付ける。具体的には、第1に、入力処理部21は、入力画面61(
図15)を出力装置13(ディスプレイ)に表示する。
第2に、入力処理部21は、ユーザが入力画面61に対し入力装置12(キーボード等)を介して、シフト情報36、コスト情報37及びリスク情報31を入力するのを受け付ける。なお、ここで入力されるリスク情報31は、その一部(
図2の欄104を除く)である。
【0054】
ステップS202において、入力処理部21は、WBS情報32(
図4)を受け付ける。具体的には、入力処理部21は、ユーザが入力装置12を介してWBS情報32(32a~32d)を入力するのを受け付ける。
ステップS203において、入力処理部21は、アクティビティ情報33(
図5)を受け付ける。具体的には、入力処理部21は、ユーザが入力装置12を介してアクティビティ情報33を入力するのを受け付ける。
【0055】
ステップS204において、入力処理部21は、計画情報34(
図6)を受け付ける。具体的には、入力処理部21は、ユーザが入力装置12を介して計画情報34(34a及び34b)を入力するのを受け付ける。
ステップS201~S204において、入力処理部21は、前記した“ユーザ計画”に相当するデータを受け付けたことになる。
【0056】
ステップS205において、入力処理部21は、最適化条件情報39(
図11)を受け付ける。具体的には、入力処理部21は、ユーザが入力装置12を介して最適化条件情報39を入力するのを受け付ける。
【0057】
ステップS206において、入力処理部21は、リスクの設定を受け付ける。具体的には、第1に、入力処理部21は、以下の3種類のリスク設定画面を出力装置13に表示する。
・アクティビティ固有リスク設定画面71a(
図16)
・ロール固有リスク設定画面71b(
図17)
・ロール・リソース組合せリスク設定画面71c(
図18)
【0058】
第2に、入力処理部21は、ユーザがアクティビティに対してリスクを設定することを希望する場合、ユーザがアクティビティ固有リスク設定画面71a(
図16)にデータを入力するのを受け付ける。ユーザは、アクティビティ選択欄72においてアクティビティの名称を選択し、リスク設定欄73にリスクの内容を入力する。リスクの内容は、例えば“視界不良”のように作業環境である場合が多い。ユーザはさらに、分布タイプ欄74においてリスクの分布タイプを選択し、パラメータ欄76にパラメータの値を入力したうえで、新規登録ボタン75を押下する。すると、入力処理部21は、入力されたデータを補助記憶装置15に登録するとともに、登録済データ欄77に表示する。
【0059】
第3に、入力処理部21は、ユーザがロールに対してリスクを設定することを希望する場合、ユーザがロール固有リスク設定画面71b(
図17)にデータを入力するのを受け付ける。ユーザは、ロール選択欄78においてロールの名称を選択し、リスク設定欄73にリスクの内容を入力する。リスクの内容は、例えば“積荷落下”のように作業上の人為的不具合である場合が多い。その後の説明は、
図16と同様である。ユーザは、未経験のロールに対してどのようなリスクの内容を設定すべきかが不明な場合がある。入力処理部21は、他の経験済のロールで発生したリスクの内容をいくつか初期値として表示してもよい。
【0060】
第4に、入力処理部21は、ユーザがロールとリソースとの組合せに対してリスクを設定することを希望する場合、ユーザがロール・リソース組合せリスク設定画面71c(
図18)にデータを入力するのを受け付ける。ユーザは、ロール選択欄78においてロールの名称を選択し、リソース選択欄79においてリソースの名称を選択し、リスク設定欄73にリスクの内容を入力する。リスクの内容は、例えば、ロールが運搬でありリソースが作業員である場合は“体調不良”のようになり、ロールが運搬でありリソースが車両である場合は“パンク”のようになる。ロールが作業管理であり、リソースが作業員である場合は“人事トラブル”のようになる。その後の説明は、
図16と同様であるが、選択された分布タイプ及び入力されたパラメータの値は、リスク情報31a(
図2)のリスク欄104に記憶される。
【0061】
ステップS207において、入力処理部21は、リスク確率を受け付ける。具体的には、入力処理部21は、ユーザが入力装置12を介して、前記したリスク確率(信頼区間)を入力するのを受け付ける。ユーザは、基本的には、アクティビティごと、ロールごと、又は、ロールとリソースとの組合せごとにリスク確率を入力する。ユーザは、設定した個々の分布タイプごとに異なるリスク確率を入力してもよいし、設定したすべての分布タイプに共通のリスク確率を入力してもよい。
【0062】
ステップS208において、計画管理装置1の計画管理部23は、最適化計画を作成する。具体的には、第1に、計画管理部23は、入力された最適化条件情報39の制約条件のもとで、入力されたユーザ計画を基準として、設定されたリスクを反映した“最適化計画”の候補を充分多い数だけ作成する。つまり、計画管理部23は、確率分布に従いリスク確率の範囲内で、追加されるべき“遅延日数”及び“追加コスト”をアクティビティごとに充分多い数だけ生成する。そして、計画管理部23は、ユーザ計画が含む各アクティビティについて、標準日数に対して遅延日数を加算しリスク反映後所要日数とし、標準コストに対して追加コストを加算しリスク反映後コストとする。
【0063】
第2に、計画管理部23は、最適化計画の各候補について、最適化条件情報39の評価関数の値を算出し、その値を最小とする候補(以降、“表示対象最適化計画”とも呼ばれる)を決定する。
図11によれば、最小化すべき値は“コスト”の総和である。しかしながら、ユーザの設定次第では、計画管理部23がプロジェクト全体の工期を最小化する場合もある。計画管理部23は、表示対象最適化計画を構成する各アクティビティのリスク反映後所要日数又はリスク反映後コストに基づいて、リスク反映情報38(
図10)を作成する。さらに、計画管理部23は、個々のアクティビティの工期又はコストの変動量を算出してもよいし、プロジェクト全体の工期又はコストの変動量を算出してもよい。つまり、計画管理部23は、受け付けたリスクに基づき、プロジェクト及びアクティビティについて、それぞれの工期の変動量及びコストの変動量の少なくとも一方を算出する。
【0064】
ステップS209において、計画管理装置1の出力処理部22は、最適化計画を表示する。具体的には、出力処理部22は、出力装置13に、表示対象最適化計画を計画表示画面51(
図13)として表示する。出力処理部22は、ユーザ計画のみを反映し、リスクを反映しない場合の計画表示画面51(
図12)を比較対照として表示してもよい。
図12及び
図13の例は、コストのリスクによって、アクティビティに対するリソースの割り当てがどのように変化するかを示している。しかしながら、出力処理部22は、工期のリスクによって、アクティビティに対するリソースの割り当てがどのように変化するかを示すことも可能である。この場合、アクティビティを示す長方形の横幅が変化する。
【0065】
ステップS210において、計画管理装置1の計画管理部23は、リスクが大きいリソースを特定する。具体的には、計画管理部23は、表示対象最適化計画から、リスク(遅延日数又は追加コスト)が所定の基準より大きいリスクを抽出し、そのリスクに対応するアクティビティを特定する。ここで所定の基準とは、所定の数値、比率であってもよいし、リスクが遅延日数である場合、“そのリソースが割り付けられたアクティビティの終了日がマイルストンを超える”という事象であってもよい。ここでは、説明の便宜上、リソース“R3”とロール“b”との組合せのリスクが大きく、リソース“R3”は、アクティビティ“J7”に割り当てられているとする。
【0066】
ステップS211において、計画管理装置1の出力処理部22は、リスク表示画面81(
図19)を表示する。具体的には、第1に、出力処理部22は、リスク表示画面81を出力装置13に表示する。リスク表示画面81には、リソース“R3”、ロール“b”、リスクの内容“配線ミス”及び影響を受けるマイルストンを有するアクティビティ“J7”が表示される。このとき、出力処理部22は、計画表示画面51(
図13)において、アクティビティJ7以前に直列的に連続する複数のアクティビティの群のうち、合計の工期が最大となる群(クリティカルパス)を、他の群とは異なる態様で表示してもよい。
【0067】
第2に、出力処理部22は、ユーザが“リスク反映情報を見る”ボタン82を押下するのを受け付けた場合、リスク反映情報38(
図10)を出力装置13に表示する。リスク反映情報38は、リソース、ロール及びアクティビティの組合せごとに、リスク反映所要日数を表示する。
【0068】
ステップS212において、計画管理装置1の計画管理部23は、リスクの再設定を受け付けるか否かを判断する。具体的には、計画管理部23は、入力装置12を介してユーザが再度リスクの設定を行う旨の指示を入力するのを受け付けた場合(ステップS212“Yes”)、ステップS206に戻る。計画管理部23は、それ以外の場合(ステップS212“No”)、ステップS213に進む。
【0069】
ステップS213において、プロジェクトが始まる。破線の長方形は、このステップの動作が計画管理装置1による情報処理ではないことを示している。
【0070】
ステップS214において、計画管理部23は、実績情報35(
図7)を登録する。具体的には、第1に、計画管理部23は、実績情報登録画面91(
図20)を出力装置13に表示する。
第2に、計画管理部23は、ユーザがプロジェクト選択欄92に特定のプロジェクトの名称を入力するのを受け付ける。ここでは、“P1”が入力されている。
【0071】
第3に、計画管理部23は、任意の記憶装置にアクセスし、そこに記憶されている、プロジェクトP1についてのリアルタイムの実績情報(各欄の構成は、
図7と同じ)を取得し、実績情報欄94に表示する。“任意の記憶装置”は、計画管理装置1の補助記憶装置15でもよいし、外部の記憶装置でもよい。
第4に、計画管理部23は、ユーザが“実績登録”ボタン93を押下するのを受け付ける。
【0072】
第5に、計画管理部23は、リアルタイムの実績情報を、実績情報35a及び35bとして補助記憶装置15に記憶する。計画管理部23は、計画情報34及び登録された実績情報35を学習データとして任意の機械学習を行い、あるアクティビティとあるロールの組合せに対してあるリソースを割り当てた場合の標準日数(又は標準コスト)、分布タイプ及びそのパラメータの精度を向上させることができる。
その後、処理手順を終了する。
【0073】
(機械学習の成果物の活用)
ユーザが
図16、
図17又は
図18に対してパラメータを入力する際に、入力処理部21は、経験に基づくパラメータの値を初期値として示してもよい。
【0074】
(本実施形態の効果)
本実施形態の計画管理装置の効果は以下の通りである。
(1)計画管理装置は、アクティビティに割り当てられるリソースごとに定義されたリスクを受け付けることができる。
(2)計画管理装置は、ユーザがリスクの確率分布を簡便に入力するのを可能にする。
(3)計画管理装置は、終了期限を超過する可能性があるアクティビティを特定することができる。
(4)計画管理装置は、コストのリスクに応じてリソースを変更することができる。
(5)計画管理装置は、現実的なリスクの確率分布を設定することができる。
(6)計画管理装置は、ユーザがロールを仲介として容易にアクティビティに対してリソースを割り当てることを可能にする。
【0075】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0076】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 計画管理装置
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
21 入力処理部
22 出力処理部
23 計画管理部
31 リスク情報
32 WBS情報
33 アクティビティ情報
34 計画情報
35 実績情報
36 シフト情報
37 コスト情報
38 リスク反映情報
39 最適化条件情報