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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】クローラ走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20240709BHJP
   B62D 55/088 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B62D55/14 A
B62D55/088
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194689
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083320
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 穣
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232771(JP,A)
【文献】特開2010-052551(JP,A)
【文献】実開昭57-195978(JP,U)
【文献】実公昭48-013852(JP,Y1)
【文献】特開平10-059226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/14
B62D 55/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラが回転輪とともに回転することによって走行可能な、クローラ走行装置であって、
前記弾性クローラと、
らせん突起をローラの外周面に備える回転スクリューと、を備えており、
前記らせん突起は、前記ローラの外周面を前記回転スクリューの軸線の周りに旋回するようにらせん状に設けられており、
前記回転スクリューは、前記弾性クローラの内周側に前記回転スクリューの軸線がクローラ長さ方向に対して交差する向きとなるように配置されているとともに、前記弾性クローラとともに回転可能であり、さらに、
前記らせん突起は、当該らせん突起の延在方向に対して直交する断面において、円弧状の輪郭形状を有している、クローラ走行装置。
【請求項2】
前記回転スクリューと前記クローラ走行装置の走行方向において近接する位置に配置されているとともに、クローラ幅方向に延在している、障壁を備えている、請求項1に記載されたクローラ走行装置。
【請求項3】
前記回転スクリューは、前記回転輪に結合されている、請求項1又は2に記載されたクローラ走行装置。
【請求項4】
前記弾性クローラの内周面は、前記回転輪が通過する通過面と、前記通過面よりもクローラ幅方向外側に位置しているクローラ幅方向外側面とを有し、
前記回転スクリューは、前記クローラ幅方向外側面に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載されたクローラ走行装置。
【請求項5】
前記クローラ幅方向外側面は、前記通過面よりもクローラ外周側に配置されており、
前記らせん突起の間の溝深さは、前記通過面と前記クローラ幅方向外側面との間の高さ以上である、請求項4に記載されたクローラ走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクローラ走行装置には、トラック支持ブラケットの取付部が丸みを帯びた形状となるように、当該トラック支持ブラケットを一体構成の鋳造部材としたトラクタのセミクローラ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。このセミクローラ装置によれば、トラック支持ブラケットの取付部に堆積する堆積物の量が減少することによって、堆積物の除去作業頻度を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-3553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のクローラ走行装置は、トラック支持ブラケットの取付部に堆積する堆積物の量を減少させることができるものの、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を除去することはできない。したがって、上記従来のクローラ走行装置には、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を除去する点で改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を除去することができる、クローラ走行装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、クローラ走行装置は、弾性クローラが回転輪とともに回転することによって走行可能な、クローラ走行装置であって、前記弾性クローラと、らせん突起をローラの外周面に備える回転スクリューと、を備えており、前記回転スクリューは、前記弾性クローラの内周側に前記回転スクリューの軸線がクローラ長さ方向に対して交差する向きに配置されるように配置されているとともに、前記弾性クローラとともに回転可能である。本発明に係る、クローラ走行装置によれば、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を除去することができる。
【0007】
本発明に係る、クローラ走行装置は、前記回転スクリューと前記クローラ走行装置の走行方向において近接する位置に配置されているとともに、クローラ幅方向に延在している、障壁を備えていることが好ましい。この場合、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0008】
本発明に係る、クローラ走行装置において、前記回転スクリューは、前記回転輪に結合させることが好ましい。この場合、回転スクリューに独自の動力源を設けることなく、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0009】
本発明に係る、クローラ走行装置において、前記弾性クローラの前記内周面は、前記回転輪が通過する通過面と、前記通過面よりもクローラ幅方向外側に位置しているクローラ幅方向外側面とを有し、前記回転スクリューは、前記クローラ幅方向外側面に配置されていることが好ましい。この場合、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0010】
本発明に係る、クローラ走行装置において、前記クローラ幅方向外側面は、前記通過面よりもクローラ外周側に配置されており、前記らせん突起の間の溝深さは、前記通過面と前記クローラ幅方向外側面との間の高さ以上であることが好ましい。この場合、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0011】
本発明に係る、クローラ走行装置において、前記らせん突起は、当該らせん突起の延在方向に対して直交する断面において、円弧状の断面輪郭形状を有していることが好ましい。この場合、クローラ走行装置の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を除去することができる、クローラ走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る、クローラ走行装置を概略的に示す側面図である。
図2図1のX-X断面図である。
図3図1のクローラ走行装置のクローラ内周側を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、クローラ走行装置について説明をする。
【0015】
図中、符号Dは、弾性クローラの回転方向(以下、「クローラ回転方向」ともいう。)である。特に、符号D1は、クローラ回転方向のうち、クローラ走行装置が前進するときの、弾性クローラの回転方向(以下、「クローラ前進回転方向」ともいう)である。一方、符号D2は、クローラ回転方向のうち、クローラ走行装置が後進するときの、弾性クローラの回転方向(以下、「クローラ後進回転方向」ともいう。)である。
【0016】
また、図中、符号Fは、クローラ走行装置1が前進する側(以下、「クローラ前進側」ともいう。)である。一方、符号Bは、クローラ走行装置1が後進する側(以下、「クローラ後進側」ともいう。)である。なお、本明細書中、クローラ走行装置1が前後進する方向、すなわち、クローラ走行装置1が走行する方向を「クローラ走行方向」ともいう。
【0017】
また、図中、符号Lは、弾性クローラの長さ方向(以下、「クローラ長さ方向」ともいう。)である。クローラ長さ方向は、環状の弾性クローラが延在している方向をいう。本実施形態では、クローラ長さ方向は、クローラ回転方向と同義である。符号Wは、弾性クローラの幅方向(以下、「クローラ幅方向」ともいう。)である。本実施形態において、単に「幅」と使用した場合、クローラ幅方向の幅を意味する。また、本実施形態では、クローラ幅方向の中心側を、クローラ幅方向内側といい、クローラ幅方向の端部側を、クローラ幅方向外側という。符号Tは、弾性クローラの厚さ方向(以下、「クローラ厚さ方向」ともいう。)である。
【0018】
図1を参照すれば、クローラ走行装置1は、弾性クローラ2が回転輪3とともに回転することによって走行可能な、クローラ走行装置である。クローラ走行装置1は、弾性クローラ2と、回転スクリュー4と、を備えている。回転スクリュー4は、らせん突起5をローラ6の外周面に備えている。回転スクリュー4は、弾性クローラ2の内周側に回転スクリュー4の軸線O1がクローラ長さ方向に対して交差する向きに配置されるように配置されているとともに、弾性クローラ2とともに回転可能である。
【0019】
また、クローラ走行装置1は、回転スクリュー4とクローラ走行方向において近接する位置に配置されているとともにクローラ幅方向に延在している、障壁7を備えている。
【0020】
弾性クローラ2は、無端帯状の弾性部材である。本実施形態において、弾性クローラ2の内周面21には、クローラ長さ方向に間隔を置いて複数のガイド突起23が設けられている。また、本実施形態において、弾性クローラ2の外周面22には、クローラ長さ方向に間隔を置いて複数のラグ24が設けられている。弾性クローラ2としては、例えば、ゴムクローラが挙げられる。
【0021】
弾性クローラ2の内周側には、回転輪3が配置されている。弾性クローラ2は、回転輪3とともに、当該回転輪3の回転方向に回転させることができる。回転輪3は、農作業機、建設作業機などの機体側に取り付けられている。本実施形態において、クローラ走行装置1は、駆動輪3a、従動輪3b、転輪3cの、3種類の回転輪3を備えている。駆動輪3aは、エンジンなどの動力源に繋がり、弾性クローラ2の回転を生起させる。従動輪3b、転輪3cは、弾性クローラ2とともに回転することができる。
【0022】
図2を参照すれば、本実施形態において、弾性クローラ2の内周面21は、回転輪3が通過する通過面21aと、通過面21aよりもクローラ幅方向外側に位置しているクローラ幅方向外側面21bとを有している。本実施形態において、回転スクリュー4は、クローラ幅方向外側面21bに配置されている。
【0023】
本実施形態において、通過面21aは、転輪3cが通過する転輪通過面である。図2に示すように、本実施形態において、通過面21aと、クローラ幅方向外側面21bは、平坦な面である。本実施形態において、クローラ幅方向外側面21bは、通過面21aよりもクローラ外周側に位置する。図2を参照すれば、本実施形態において、クローラ幅方向外側面21bは、クローラ厚さ方向において、通過面21aよりも高さΔhだけクローラ外周側に位置している。すなわち、クローラ幅方向外側面21bは、図2に示すように、弾性クローラ2が接地している状態において、通過面21aよりも高さΔhだけ低い位置に配置されている。
【0024】
本実施形態において、回転スクリュー4は、2つのクローラ幅方向外側面21bのそれぞれに配置されている。
【0025】
図3を参照すれば、通過面21aと、クローラ幅方向外側面21bは、クローラ長さ方向に延在している。また、本実施形態では、図3に示すように、通過面21a及びクローラ幅方向外側面21bは、クローラ幅方向中心線O2を挟んで隣接する位置に配置されている。
【0026】
本実施形態において、クローラ幅方向中心線O2は、クローラ長さ方向に延在している軸線である。ただし、本実施形態において、弾性クローラ2は、クローラ幅方向中心線O2を挟んで非対称な形状である。符号2aは、弾性クローラ2の、2つの幅方向端縁のうち、機体外側の幅方向端縁である。また、符号2bは、弾性クローラ2の、2つの幅方向端縁のうち、機体内側の幅方向端縁である。本実施形態において、2つの通過面21aの幅は、機体外側と機体内側の両側で同一である。一方、本実施形態において、2つのクローラ幅方向外側面21bの幅は、機体内側に比べて機体外側の方が広く設定されている。
【0027】
本実施形態において、例えば、図3を参照すれば、2つのクローラ幅方向外側面21bのうちの一方(図面右側)の、機体外側のクローラ幅方向外側面21bの幅は、他方(図面左側)の、機体内側のクローラ幅方向外側面21bの幅よりも広い。したがって、本実施形態において、2つの回転スクリュー4のうちの一方(図面右側)の、機体外側の回転スクリュー4の幅(以下、「回転スクリュー4の軸方向長さL4」ともいう。)は、他方(図面左側)の、機体内側の回転スクリュー4の軸方向長さL4よりも広い(長い)。
【0028】
ただし、2つのクローラ幅方向外側面21bの幅は、適宜設定することができる。したがって、2つのクローラ幅方向外側面21bの幅は、いずれか一方を他方よりも広くすることができる。また、2つのクローラ幅方向外側面21bの幅は、同一とすることができる。また、回転スクリュー4の軸方向長さL4は、クローラ幅方向外側面21bの幅に応じて、適宜設定することができる。したがって、2つの回転スクリュー4の軸方向長さL4は、いずれか一方を他方よりも長くすることができる。また、2つの回転スクリュー4の軸方向長さL4は、同一とすることができる。
【0029】
さらに、回転スクリュー4は、機体外側のクローラ幅方向外側面21bと機体内側のクローラ幅方向外側面21bとの少なくともいずれか一方に配置することができる。例えば、回転スクリュー4は、機体外側のクローラ幅方向外側面21bのみに配置することができる。また、回転スクリュー4は、機体内側のクローラ幅方向外側面21bのみに配置することができる。
【0030】
回転スクリュー4は、軸線O1の周りに回転させることができる。本実施形態において、回転スクリュー4は、図3に示すように平面視において、軸線O1がクローラ幅方向中心線O2に対して直交する向きに配置されている。ただし、本発明によれば、軸線O1は、平面視において、クローラ幅方向中心線O2に対して交差していればよい。
【0031】
回転スクリュー4は、らせん突起5と、ローラ6と、を備えている。本実施形態では、ローラ6は、円筒形の部材である。ローラ6は、軸線O1の周りを回転させることができる。らせん突起5は、ローラ6の外周面を軸線O1の周りに旋回するようにらせん状に設けられている。本実施形態では、らせん突起5の間に、らせん溝5aが形成されている。本実施形態では、らせん溝5aの溝底は、ローラ6の外周面である。本実施形態では、らせん突起5は、弾性クローラ2がクローラ前進回転方向D1に回転するとき、クローラ幅方向外側に向かって進行するねじ山である。すなわち、本実施形態では、回転スクリュー4は、クローラ走行装置1が前進するとき、らせん溝5aに溜まった堆積物をクローラ幅方向外側に押し出すことができる。回転スクリュー4は、弾性クローラ2との干渉を考慮すれば、弾性材料によって形成することが好ましい。本実施形態では、回転スクリュー4は、弾性クローラ2と同様にゴムによって形成されている。ただし、回転スクリュー4は、金属、合成樹脂によって形成することができる。
【0032】
回転スクリュー4は、クローラ幅方向外側面21bに対して、らせん突起5がクローラ幅方向外側面21bに堆積した堆積物を排出可能な高さに配置されている。図2を参照すれば、本実施形態において、回転スクリュー4は、らせん突起5がクローラ幅方向外側面21bと接触する高さに配置されている。ただし、本発明によれば、回転スクリュー4の配置は、堆積物の排出が可能であれば、らせん突起5とクローラ幅方向外側面21bとの間に隙間を形成することも許容される。
【0033】
また、回転スクリュー4は、回転輪3に結合されている。これによって、回転スクリュー4は、回転輪3の回転に同期して、弾性クローラ2とともに回転することができる。
【0034】
本実施形態において、回転スクリュー4は、シャフト8を介して転輪3c(より具体的には、接地面に近い側に配置された転輪3c)に結合されている。図1に示すように、転輪3cは、弾性クローラ2の接地面に最も近く、弾性クローラ2の内周面21が上向きの状態で露出している範囲が最も広い位置に配置されている。すなわち、転輪3cは、弾性クローラ2の内周面21に堆積物が最も堆積し易い位置にある。本実施形態では、回転スクリュー4は、接地面に近い側に配置された全ての転輪3c(本実施形態では、4つの転輪3c)に設けることが好ましい。ただし、回転スクリュー4は、複数の転輪3cのうちの、少なくともいずれか1つに設けることができる。本実施形態では、回転スクリュー4は、図1に示すように側面視において、複数の転輪3cのうちの、クローラ後進方向の、1つの転輪3cのみに結合させている。これによって、クローラ前進側から移動してきた堆積物を、最もクローラ後進側に最も近い位置で排出させることができる。
【0035】
障壁7は、弾性クローラ2の内周側に配置されている。障壁7は、例えば、機体、回転輪ブラケットに取り付けることができる。図3を参照すれば、本実施形態において、障壁7は、クローラ幅方向外側面21bにおいて、クローラ幅方向に延在している。障壁7は、回転スクリュー4とクローラ回転方向において近接して対向する位置に配置されていることが好ましい。ここで、「近接」とは、回転スクリュー4と障壁7とがすぐ近くにあるが接触してないことをいう。具体的に、近接とは、回転スクリュー4と障壁7との間に隙間を有しているものの、回転スクリュー4と障壁7との間の堆積物を、回転スクリュー4によって排出できる位置関係にあることを意味する。特に、本実施形態では、障壁7は、回転スクリュー4とクローラ回転方向において隣接する位置に配置されている。ここで、「隣接」とは、上述のとおり、回転スクリュー4と障壁7とが接触しつつ、回転スクリュー4と障壁7との間の堆積物を、回転スクリュー4によって排出できる位置関係にあることを意味する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態では、障壁7の、回転スクリュー4と隣接する対向面71は、曲面によって形成されている。前記曲面は、図1に示すように側面視において、軸線O1を中心とした回転スクリュー4の外側半径(らせん突起5の外側半径)r4を曲率半径とする湾曲面である。これによって、障壁7は、らせん突起5と接触する位置に配置することができる。ただし、本発明によれば、障壁7の配置は、回転スクリュー4と障壁7との間に堆積物を溜めておくことが可能であれば、らせん突起5と障壁7に隙間を形成することも許容される。例えば、障壁7は、対向面71がらせん突起5に対して隙間を形成するように配置することができる。また、障壁7の対向面71は、平面によって形成することができる。
【0037】
障壁7は、弾性クローラ2の内周面21に対して、障壁7のクローラ外周側端(以下、「障壁外周側端」ともいう。)72が弾性クローラ2の内周面21に堆積した堆積物を排出可能な高さに配置されている。本実施形態において、障壁7は、障壁外周側端72がクローラ幅方向外側面21bと接触する高さに配置されている。ただし、本発明によれば、障壁7の配置は、堆積物の排出が可能であれば、障壁外周側端72とクローラ幅方向外側面21bとの間に隙間を形成することも許容される。なお、障壁7のクローラ内周側端(以下、「障壁内周側端」ともいう。)73は、クローラ厚さ方向において、軸線O1の高さ位置よりクローラ内周側にあることが好ましい。本実施形態では、障壁内周側端73は、軸線O1の高さ位置と同一の高さ位置にある。ただし、障壁内周側端73は、回転スクリュー4の外側直径と同一とすれば、回転スクリュー4を通過した堆積物を、回転スクリュー4と障壁7との間に効率的に溜めておくことができる。この場合、障壁7の対向面71は、曲率半径r4とする湾曲面であることが好ましい。
【0038】
本実施形態において、障壁7は、回転スクリュー4と、クローラ走行方向において近接する位置に配置されている。本実施形態では、障壁7は、回転スクリュー4に対応させることによって、全ての回転スクリュー4に設けることが好ましい。ただし、障壁7は、複数の回転スクリュー4のうちの、少なくともいずれか1つに対応させるだけでもよい。本実施形態では、障壁7は、図1に示すように側面視において、回転スクリュー4に対応させて、最もクローラ後進方向側に配置されている。これによって、クローラ前進側から移動してきた堆積物を、クローラ後進側に最も近い位置でまとめて排出させることができる。
【0039】
ここで、クローラ走行装置1の作用効果について説明する。堆積物としては、例えば、雪、泥、砂が挙げられる。以下、説明の簡略化のため、泥を堆積物として説明をする。
【0040】
図1を参照すれば、クローラ走行装置1の走行中、弾性クローラ2の内周側に溜まった泥は、弾性クローラ2の回転によって、当該弾性クローラ2とともに回転スクリュー4の位置まで運ばれる。弾性クローラ4とともに運ばれた泥は、回転スクリュー4で一時的に溜まるが、当該回転スクリュー4は、転輪3cの回転に同調して回転している。本実施形態では、回転スクリュー4のらせん突起5は、転輪3cがクローラ前進回転方向に回転しているときに、弾性クローラ2の幅方向外側に向かって押し出される方向に形成されている。すなわち、本実施形態では、回転スクリュー4のらせん突起5は、クローラ走行装置1が前進しているときに、弾性クローラ2の幅方向外側に向かって押し出される方向に形成されている。これによって、例えば、図2に示すように、回転スクリュー4で一時的に溜まった泥は、クローラ幅方向外側に押し出され、最終的には、弾性クローラの外側に廃土される。このように、本実施形態によれば、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物は、当該弾性クローラ2の内周側から、当該弾性クローラ2の外側に排出される。
【0041】
したがって、クローラ走行装置1によれば、回転スクリュー4を設けたことによって、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を除去することができる。なお、本実施形態において、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間には、高さΔhの段差が形成されている。本実施形態では、通過面21aは、弾性クローラ2が接地した状態において、当該段差の分だけ、クローラ幅方向外側面21bよりも高い位置にある。したがって、回転スクリュー4内の堆積物が、当該回転スクリュー4の逆回転によってクローラ幅方向内側に移動しても、通過面21aに堆積することを抑制することができる。
【0042】
特に、本実施形態では、回転スクリュー4とクローラ走行方向において近接する位置に、クローラ幅方向に延在している障壁7を備えている。
【0043】
回転スクリュー4とクローラ走行方向において近接する位置に障壁7を配置した場合、当該障壁7は、回転スクリュー4を通過した泥を、回転スクリュー4と障壁7との間に積極的に溜めておく機能を発揮する。これによって、障壁7は、回転スクリュー4で一時的に溜まる泥の量を効率的に増やすことができる。したがって、この場合、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。特に、より効率的な堆積物の除去を考慮すれば、本実施形態のように、障壁7は、回転スクリュー4と隣接する位置に配置することが好ましい。
【0044】
なお、クローラ走行装置1が後進した場合、障壁7は、堆積物が回転スクリュー4に搬送されてしまうことを防止するための機能をも兼ね備えている。
【0045】
また、本実施形態において、回転スクリュー4は、回転輪3に結合させている。
【0046】
回転輪3に回転スクリュー4を結合すれば、当該回転スクリュー4を積極的に回転させることができる。これによって、回転スクリュー4で一時的に溜まった泥は、クローラ幅方向外側に効率的に排出することができる。本実施形態では、回転スクリュー4は、転輪3cに結合させている。これによって、回転スクリュー4は、転輪3cの回転に同期して自発的に回転することができる。回転スクリュー4は、従動輪3bに結合させることができる。この場合も、回転スクリュー4は、従動輪4bの回転に同期して自発的に回転することができる。さらに、回転スクリュー4は、動力源に繋いで自発的に駆動させることができる。回転スクリュー4を動力源に繋いで自発的に回転させる方法としては、回転スクリュー4に独自の動力源を設ける方法と、回転スクリュー4を機体側の駆動輪に結合させる方法がある。回転スクリュー4を駆動輪3aに結合させた場合、回転スクリュー4に独自の動力源を設けることなく、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。ただし、回転スクリュー4は、例えば、従動輪3b、転輪3cのいずれかに、ギアボックスなどの動力伝達装置を介して動力を伝達させるように繋げば、回転スクリュー4に独自の動力源を設けることなく、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。また、シャフト8は、回転輪3に結合されない、別個のシャフトとして構成することができる。
【0047】
また、本実施形態において、回転スクリュー4は、クローラ幅方向外側面21bに配置されている。
【0048】
弾性クローラの内周側に堆積した泥は、回転輪3が通過する通過面21aに堆積させないことが好ましい。本実施形態では、回転スクリュー4は、通過面21aよりもクローラ外周側に位置するクローラ幅方向外側面21bに配置されている。これによって、クローラ幅方向外側面21bに堆積した泥をクローラ幅方向外側に排出することができる。また、本実施形態では、通過面21aは、クローラ幅方向外側面21bよりもクローラ内周側に位置している。すなわち、本実施形態では、図2に示すように、通過面21aが接地面に近い位置にある場合、当該通過面21aは、クローラ幅方向外側面21bよりも高い位置に位置する。この場合、クローラ幅方向外側面21bに溜まった泥は、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間に生じた段差によって、クローラ幅方向外側面21bに押し戻される。したがって、この場合、弾性クローラの内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0049】
また、図2を参照すれば、本実施形態において、クローラ幅方向外側面21bは、通過面21aよりもクローラ外周側に配置されており、らせん突起5の間の溝深さd4は、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間の高さΔh以上である。
【0050】
らせん突起5の間の溝深さd4を、高さΔh以上とした場合、通過面21aに溜まった泥を、回転スクリュー4によって、クローラ幅方向外側に排出させることができる。したがって、この場合、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0051】
或いは、らせん突起5の間の溝深さd4は、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間の高さΔh以下とすることができる。
【0052】
らせん突起5の間の溝深さd4を、高さΔh以下とした場合、通過面21aよりもクローラ幅方向外側は、クローラ幅方向外側面21bと、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間に生じた前記段差と、回転スクリュー4と、によって閉じられる。これによって、クローラ幅方向外側面21bに溜まった泥は、通過面21aとクローラ幅方向外側面21bとの間に生じた段差によって、クローラ幅方向外側面21bに効率的に押し戻される。したがって、この場合、弾性クローラ2の内周側に堆積した堆積物を効率的に除去することができる。
【0053】
また、本本実施形態において、らせん突起5は、円弧状の断面輪郭形状を有している。本実施形態において、らせん突起5は、図2のY-Y断面に示すように、当該らせん突起5の延在方向に対して直交する断面において、円弧状の断面輪郭形状を有している。
【0054】
本発明によれば、らせん突起5の断面輪郭形状は、直線を組み合わせて形成された、三角、四角、台形などの多角形状とすることができる。一方、弾性クローラ2は、クローラ長さ方向、クローラ幅方向、クローラ厚さ方向の少なくともいずれか1つに対する回転(よじれ)など、様々な方向に変形することができる。本実施形態では、らせん突起5の断面輪郭形状は、円弧状の形状としている。これによって、らせん突起5と弾性クローラ2との、片当たりなどの、応力集中を生じるような局所的な干渉を抑えている。この場合、らせん突起5と弾性クローラ2との耐久性を向上させることができる。したがって、この場合、クローラ走行装置1の耐久性を向上させることができる。
【0055】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上記実施形態に係る、弾性クローラ2のクローラ幅方向外側面21bは、図2に示すように、水平面である。ただし、図2を参照すれば、クローラ幅方向外側面21bは、幅方向端縁2a,2bに向かうにしたがって、クローラ内周側に向かう傾斜面、又は、幅方向端縁2a,2bに向かうにしたがって、クローラ外周側に向かう傾斜面とすることができる。また、回転スクリュー4のローラ6は、円筒形としたが、回転スクリュー4の外観形状は、弾性クローラ2の内周面21の形状に合わせて変更することができる。また、障壁7は、例えば、へら状(例えば、平板状)のスクレーパとすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:クローラ走行装置, 2:弾性クローラ, 21:弾性クローラの内周面, 21a:通過面, 21b:クローラ幅方向外側面, 22:弾性クローラの外周面, 3:回転輪, 3a:駆動輪, 3b:従動輪, 3c:転輪, 4:回転スクリュー, 5:らせん突起, 6:ローラ, 7:障壁, 23:ガイド突起,, 24:ラグ, D:クローラ回転方向(弾性クローラの回転方向), D1:クローラ前進回転方向, D2:クローラ後進回転方向, F:、クローラ前進側(クローラ走行装置が前進する側), B:クローラ後進側(クローラ走行装置が後進する側), L:クローラ長さ方向(弾性クローラの長さ方向), W:クローラ幅方向(弾性クローラの幅方向), T:クローラ厚さ方向(弾性クローラの厚さ方向), O1:軸線, O2:クローラ幅方向中心線
図1
図2
図3