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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240709BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
F24C3/12 K
F24C3/02 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020195241
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083730
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03376104(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の炎口が形成されたバーナヘッド部を有するコンロバーナが設けられたコンロを備える加熱調理システムであって、
コンロは、ユーザによるコンロバーナの火力調節指示情報を入力する火力指示部を備え、火力指示部に入力された火力調節指示情報に基づいてコンロバーナの火力を調節するものにおいて、
バーナヘッド部は、周方向に区分された複数の区分けヘッド領域を有し、これら複数の区分けヘッド領域の火力を個別に調節可能なバルブ手段と、バルブ手段を制御する制御手段と、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力を指示する不均一火力指示手段とを備え、
制御手段は、不均一火力指示手段により不均一火力が指示された場合、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力制御を実行すると共に、不均一火力制御の実行時に、火力指示部で火力調節指示情報が入力された場合、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にしたまま、複数の区分けヘッド領域の火力を火力調節指示情報に基づいて増減する制御を実行することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
請求項記載の加熱調理システムであって、前記制御手段は、前記不均一火力制御の実行時に、前記複数の区分けヘッド領域のうちの何れかの区分けヘッド領域の火力が所定の上限火力を上回るような火力調節指示情報が前記火力指示部で入力された場合、火力が上限火力を上回る区分けヘッド領域の火力を上限火力に維持する制御を実行することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項3】
多数の炎口が形成されたバーナヘッド部を有するコンロバーナが設けられたコンロを備える加熱調理システムであって、
コンロは、ユーザによるコンロバーナの火力調節指示情報を入力する火力指示部を備え、火力指示部に入力された火力調節指示情報に基づいてコンロバーナの火力を調節するものにおいて、
バーナヘッド部は、周方向に区分された複数の区分けヘッド領域を有し、これら複数の区分けヘッド領域の火力を個別に調節可能なバルブ手段と、バルブ手段を制御する制御手段と、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力を指示する不均一火力指示手段とを備え、
制御手段は、不均一火力指示手段により不均一火力が指示された場合、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力制御を実行し、
更に、コンロバーナの近傍の状態を表すバーナ近傍情報を取得するバーナ近傍情報取得手段を備え、不均一火力指示手段は、バーナ近傍情報に基づいて不均一火力を指示する自動指示手段を有することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
前記バーナ近傍情報は、前記コンロバーナの上方に載置される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た燃焼炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報とのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項記載の加熱調理システム。
【請求項5】
前記不均一火力指示手段は、ユーザの操作により前記不均一火力を指示する手動指示手段を有することを特徴とする請求項1~の何れか1項記載の加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の炎口が形成されたバーナヘッド部を有するコンロバーナが設けられたコンロを備える加熱調理システムであって、コンロは、ユーザによるコンロバーナの火力調節指示情報を入力する火力指示部を備え、火力指示部に入力された火力調節指示情報に基づいてコンロバーナの火力を調節するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理システムとして、コンロバーナの上方に載置される調理容器の底面の外方に溢れ出た燃焼炎(炎溢れ)を検知する手段を備え、炎溢れを検知した場合に、コンロバーナの火力を小さくするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、調理容器が矩形や楕円形等の一方向に長手のものであって、調理用容器の短手方向でのみ炎溢れを生じていても、コンロバーナの全ての箇所の火力が小さくなってしまい、火力不足で調理性能に悪影響が及んでしまう。
【0004】
ここで、安全性を確保するには、火力が大きいと危険になるコンロバーナの部分の火力を小さくすれば十分である。そして、安全性を確保して、且つ、調理性能に悪影響が及ばないようにするには、コンロバーナの一部分の火力のみを小さくすること、即ち、コンロバーナの各部分の火力を不均一化できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-230148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、コンロバーナの各部分の火力を不均一化できるようにし、安全性を確保して、且つ、調理性能に悪影響が及ばないようにした加熱調理システムを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、多数の炎口が形成されたバーナヘッド部を有するコンロバーナが設けられたコンロを備える加熱調理システムであって、コンロは、ユーザによるコンロバーナの火力調節指示情報を入力する火力指示部を備え、火力指示部に入力された火力調節指示情報に基づいてコンロバーナの火力を調節するものにおいて、バーナヘッド部は、周方向に区分された複数の区分けヘッド領域を有し、これら複数の区分けヘッド領域の火力を個別に調節可能なバルブ手段と、バルブ手段を制御する制御手段と、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力を指示する不均一火力指示手段とを備え、制御手段は、不均一火力指示手段により不均一火力が指示された場合、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にする不均一火力制御を実行することを前提とする。
【0008】
この前提によれば、不均一火力指示手段により必要に応じて不均一火力を指示することにより、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にして、安全性を確保する上で必要な区分けヘッド領域でのみ火力を小さくすることが可能になる。従って、安全性を確保して、且つ、調理性能に悪影響が及ばないようにすることができる。
【0009】
ここで、本発明は、上記前提において、制御手段は、不均一火力制御の実行時に、火力指示部で火力調節指示情報が入力された場合、複数の区分けヘッド領域の火力を不均一にしたまま、複数の区分けヘッド領域の火力を火力調節指示情報に基づいて増減する制御を実行することを特徴とする。これによれば、安全性を損なうことなく、ユーザの要望に応じた火力調節を行うことができ、利便性が向上する。
【0010】
更に、本発明において、制御手段は、不均一火力制御の実行時に、複数の区分けヘッド領域のうちの何れかの区分けヘッド領域の火力が所定の上限火力を上回るような火力調節指示情報が火力指示部で入力された場合、火力が上限火力を上回る区分けヘッド領域の火力を上限火力に維持する制御を実行することが望ましい。ここで、上限火力を、例えば、その区分けヘッド領域での炎溢れを生じない最大限の火力に設定しておけば、火力指示部で火力をかなり大きくする火力調節指示情報が入力されても、炎溢れを生ずることがなく、安全性が確保される。
【0011】
また、本発明は、上記前提において、コンロバーナの近傍の状態を表すバーナ近傍情報を取得するバーナ近傍情報取得手段を備え、不均一火力指示手段は、バーナ近傍情報に基づいて不均一火力を指示する自動指示手段を有することを特徴とする。ここで、バーナ近傍情報がコンロバーナの上方に載置される調理容器に関する調理容器情報であれば、調理容器が一方向に長手のものである場合、調理容器の短手方向に位置する区分けヘッド領域の火力を調理容器の長手方向に位置する区分けヘッド領域の火力よりも弱くする不均一火力を指示することにより、調理容器全体を均一に加熱することができる。また、バーナ近傍情報が調理容器の底面の外方に溢れ出た燃焼炎に関する炎溢れ情報であれば、調理容器がコンロバーナに対し偏心していて一部で炎溢れを生じた場合、炎溢れの発生箇所に対応する区分けヘッド領域の火力を弱くする不均一火力を指示することにより、炎溢れを防止して、且つ、調理容器の加熱不足を抑制できる。更に、バーナ近傍情報がコンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報であれば、侵入物に近い区分けヘッド領域の火力を弱くする不均一火力を指示することにより、侵入物の加熱を抑制することができる。従って、バーナ近傍情報は、コンロバーナの上方に載置される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た燃焼炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報とのうちの少なくとも1つを含むことが望ましい。
【0012】
また、不均一火力指示手段は、ユーザの操作により不均一火力を指示する手動指示手段を有していてもよい。これによれば、ユーザの好みに合わせて不均一火力制御を実行でき、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の加熱調理システムの設置状況を示す斜視図。
図2】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの要部の斜視図。
図3図2のIII-III線で切断した断面図。
図4】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロに設けられたコンロバーナの分解状態の斜視図。
図5】(a)~(d)実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの天板に設けられた操作パネル部の拡大平面図。
図6】実施形態の加熱調理システムに設けられたレンジフードの斜め下方から見た斜視図。
図7】実施形態の加熱調理システムに設けられるバーナ近傍情報取得手段による情報取得エリアを示す平面図。
図8】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの制御手段が行う不均一火力制御に関する制御内容を示すフロー図。
図9】実施形態の加熱調理システムに設けられる不均一火力指示手段の構成を示す説明図。
図10】(a)~(f)各モードでの火力調節による各区画ヘッド領域の火力変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態の加熱調理システムが具備するコンロ1は、コンロ本体2をシステムキッチンのカウンタトップCTに形成したコンロ開口CTaに落とし込むようにして配置するビルトイン式コンロであり、左右2個のコンロバーナ3,3を備えている。各コンロバーナ3は、コンロ本体2の開放された上面を覆う天板4に開設したバーナ用開口41を通して天板4上に露出するバーナヘッド部31を有している。また、コンロ1は、各バーナ用開口41を囲うようにして天板4上に設置される五徳5を備えている。尚、天板4には、各バーナ用開口41と各コンロバーナ3のバーナヘッド部31との間の隙間を閉塞するリング部材42が装着されている。また、天板4の前部には、コンロバーナ3,3用の左右一対の操作パネル部43,43と、中央部の電源スイッチ44とが設けられている。
【0015】
図4を参照して、各コンロバーナ3のバーナヘッド部31は、周方向に区分された第1乃至第4の4個の区分けヘッド領域31~31を有している。具体的に説明すれば、バーナヘッド部31は、環状の下ヘッド部材32と、下ヘッド部材32上に設置される環状の上ヘッド部材33とで構成されている。下ヘッド部材32の上面には、周方向に等間隔で4個の放射状リブ321が立設され、また、上ヘッド部材33の下面にも、周方向に等間隔で4個の放射状リブ331が垂設されている。更に、上ヘッド部材33の内周部に、下ヘッド部材32の内周部に設けた上方への凸部322に係合する位相決め用の切欠き部332を設けている。そして、上ヘッド部材33を下ヘッド部材32上に位相決めした状態で載置することにより、下ヘッド部材32の各放射状リブ321の上縁に上ヘッド部材33の各放射状リブ331の下縁が当接して、バーナヘッド部31が、前方の第1区分けヘッド領域31と、右方の第2区分けヘッド領域31と、後方の第3区分けヘッド領域31と、左方の第4区分けヘッド領域31とに区分けされるようにしている。また、上ヘッド部材33の外周部には、各区分けヘッド領域31~31から混合気が噴出する多数の炎口34が形成されている。
【0016】
バーナヘッド部31は、コンロ本体2内に固定のバーナホルダ21に形成した複数の支持孔211に下端部が嵌入する複数の支柱301を垂設した環状のバーナボディ30上に設置されている。バーナボディ30には、各区分けヘッド領域31~31の中央部から下方にのびる混合管部302が垂設されている。バーナホルダ21には、第1乃至第4の各区分けヘッド領域31~31からのびる混合管部302の下端開口に臨む第1乃至第4の各ノズル35~35が設けられている。また、下ヘッド部材32には、各混合管部302の上端開口に僅かな隙間を存して対向する案内板部323が設けられている。そして、各ノズル35~35から噴射された燃料ガスが各案内板部323に衝突して各区分けヘッド領域31~31内に拡散することで発生するラジアルベンチュリ効果により各混合管部302の下端開口から一次空気が吸い込まれ、混合気が生成されるようにしている。尚、図4では、上ヘッド部材33を斜め下方から見た斜視図で表し、下ヘッド部材32とバーナホルダ21とを斜め上方から見た斜視図で表している。
【0017】
また、各コンロバーナ3には、操作パネル部43に設けた後述する点消火ボタン431による点火操作時に制御手段たるコントローラ6による制御でスパークする点火電極36と、火炎検知素子としての熱電対37と、コンロバーナ3の上方、即ち、五徳5に載置される調理容器の底面に当接してその温度を検出する鍋底温度センサ38とが付設されている。点火電極36は、第3区分けヘッド領域31の炎口34に臨ませて設けられ、熱電対37は、第1乃至第4の夫々の区分けヘッド領域31~31の炎口34に臨むように4個設けられている。また、鍋底温度センサ38は、各コンロバーナ3のバーナボディ30及びバーナヘッド部31で囲われた中央空間に配置されている。尚、上ヘッド部材33には、点火電極36の直上部で径方向外方に突出する舌片状のカバー部333を設け、点火電極36に煮こぼれが落下しないようにしている。
【0018】
各コンロバーナ3に対するガス供給路39には安全弁391が介設されている。安全弁391は、操作パネル部43に設けた点消火ボタン431による点火操作時に、コントローラ6による制御で開弁され、点消火ボタン431による消火操作時や、鍋底温度センサ38が調理容器の過熱を検知したときや、燃焼中であるはずの区分けヘッド領域に対応する熱電対37の起電力が低下して失火が検知されたときにコントローラ6による制御で閉弁される。また、ガス供給路39は、安全弁391の下流側で第1乃至第4の各ノズル35~35に連なる第1乃至第4の分岐路39~39に分岐されている。第1乃至第4の各分岐路39~39には、第1乃至第4の各開閉弁392~392と第1乃至第4の各火力調節弁393~393とが介設されている。そして、これら開閉弁392~392と火力調節弁393~393により各区分けヘッド領域31~31の火力を消火も含めて個別に調節可能な火力調節手段を構成している。尚、本実施形態では、各火力調節弁393~393により各区分けヘッド領域31~31の火力を最小の第1段火力から最大の第9段火力まで9段階に調節可能としている。
【0019】
各操作パネル部43には、図5に示す如く、ディスプレイ部430と、点消火ボタン431と、ユーザによるコンロバーナ3の火力調節指示情報を入力する火力指示部たる火力調節ボタン432と、決定ボタン433と、オート調理ボタン434と、モード確認ボタン435と、時間ボタン436と、温度ボタン437と、アップダウンボタン438と、選択ボタン439とが配置されている。火力調節ボタン432により、コンロバーナ3全体の火力を最小の火力1から最大の火力10まで10段階に調節可能としている。そして、第1乃至第4の各区分けヘッド領域31~31の火力を火力1乃至火力10で図10(a)に示す如く変化させる。また、点火時は、第1乃至第4の各区分けヘッド領域31~31の火力を第4段火力とし、点火後も火力調節ボタン432による火力調節指示情報が入力されるまでは第4段火力に維持するようにしている。
【0020】
ディスプレイ部430には、コンロバーナ3の第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31に対応する第1乃至第4の表示領域4301~4301を有する火力表示部4301が設けられている。各表示領域4301~4301には、内外3重の表示ラインが配置されており、各区分けヘッド領域31~31の火力が強くなるのに伴い点灯する表示ラインの数が内側から外側に向けて増加する。また、第1乃至第4の表示領域4301~4301の何れかを長押しすると、この表示領域に対応する区分けヘッド領域の火力を火力調節ボタン432の操作で変更できるようになっている。
【0021】
また、電源スイッチ44をオンして、モード確認ボタン435を押すと、ディスプレイ部430には、図5(a)に示す如く、モード確認画面が表示される。モード確認画面に表示されるモードには、調理容器、炎溢れ防止、吹き零れ防止、加熱防止、ユーザ接近、手前温度低減、手動設定がある。選択ボタン439の操作でモードを選択して決定ボタン433を押すと、選択したモードでの後述する不均一火力制御が実行可能となる。選択したモードは、地色が黒の白抜き表示に変化する。また、手動設定のモードを選択して決定ボタン433を押すと、モード確認画面が図5(b)に示すように切換り、表示されるモードが調理容器選択、吹き零れ防止、手前温度低減になる。そして、調理容器選択のモードを選択して決定ボタン433を押すと、画面が図5(c)に示すものに切換り、縦長容器(前後方向に長手方向の調理容器)と横長容器との何れかを選択できるようになる。また、吹き零れ防止のモードを選択して決定ボタン433を押すと、画面が図5(d)に示すものに切換り、調理容器の大きさ(径)を選択できるようになる。尚、上記の各モードと不均一火力制御との関係については後で詳述する。
【0022】
また、本実施形態の加熱調理システムは、図6に示す如く、カウンタトップCTの上方に位置するレンジフードRHの下面に配置した、赤外線カメラから成る左右一対のバーナ近傍情報取得手段7,7を備えている。各バーナ近傍情報取得手段7は、各コンロバーナ3の周辺を含む所定範囲を俯瞰して撮像し、各コンロバーナ3の近傍の状態を表すバーナ近傍情報を取得する。そして、図7に示す如く、各バーナ近傍情報取得手段7の撮像範囲内のうち、各コンロバーナ3の中心を中心とする一辺が所定長さ(例えば、30cm程度)の正方形のエリアを第1のエリアS1とし、また、コンロ1の天板4の外縁から所定距離(例えば、30cm程度)以内のエリアを第2のエリアS2としている。更に、第1と第2の各エリアS1,S2を、コンロバーナ3の前方の第1区分けヘッド領域31と右方の第2区分けヘッド領域31と後方の第3区分けヘッド領域31と左方の第4区分けヘッド領域31とに対応して、前方の第1区分けエリアS1,S2と右方の第2区分けエリアS1,S2と後方の第3区分けエリアS1,S2と左方の第4区分けエリアS1,S2とに区分している。尚、図7は、左側のコンロバーナ3に対する第1と第2のエリアS1,S2を示しており、右側のコンロバーナ3に対しても図7と左右対称で同様に第1と第2のエリアが設定される。
【0023】
本実施形態の加熱調理システムは、更に、各コンロバーナ3の第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を不均一にする不均一火力を指示する不均一火力指示手段8を備えている。そして、コントローラ6は、不均一火力指示手段8により不均一火力が指示された場合、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を不均一にする不均一火力制御を実行すると共に、不均一火力制御の実行時に、火力調節ボタン432で火力調節指示情報が入力された場合、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を不均一にしたまま、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節指示情報に基づいて増減する制御を実行する。以下、この制御について図8を参照して説明する。
【0024】
不均一火力制御に関する処理は、電源スイッチ44がオンされたときにスタートし、先ず、STEP1で点消火ボタン431による点火操作が行われたか否かを判別する。点火操作が行われるまでは、STEP1に戻ることを繰り返し、点火操作が行われたときに、STEP2に進んで、安全弁391と第1乃至第4開閉弁392~392とを開弁させてコンロバーナ3の全ての区分けヘッド領域31~31にガスを供給すると共に、点火電極36でスパークさせて、コンロバーナ3に点火する。次に、STEP3において、熱電対37により着火が検知されたか否かを判別し、着火が検知されなければ、STEP4で着火不良を報知した後、STEP5に進み、安全弁391及び第1乃至第4開閉弁392~392を閉弁させるコンロバーナ3の消火制御を行う。
【0025】
着火を検知したときは、STEP6に進み、不均一火力指示手段8から不均一火力の指示が出されているか否かを判別する。そして、不均一火力の指示が出されている場合は、STEP7に進んで不均一火力制御を実行する。次に、STEP8で再び不均一火力指示手段8から不均一火力の指示が出されているか否かを判別し、不均一火力の指示が出されていれば、STEP9に進んで不均一火力制御を継続する。次に、STEP10で点消火ボタン431による消火操作が行われた否かを判別し、消火操作が行われていなければ、STEP11に進んで、火力調節ボタン432により火力調節指示情報が入力されたか否かを判別する。火力調節指示情報が入力されたときは、STEP12に進み、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を不均一にしたまま、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節指示情報に基づいて図10(b)~(f)の如く増減する火力調節制御を実行して、STEP8に戻る。火力調節指示情報が入力されていないときは、STEP12を経由せずにSTEP8に戻る。消火操作が行われたときは、STEP10からSTEP5に進んで消火制御を行う。
【0026】
STEP6において、不均一火力の指示が出されていないと判別されたときは、STEP13に進んで、火力調節ボタン432により火力調節指示情報が入力されたか否かを判別する。火力調節指示情報が入力されたときは、STEP14に進んで、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節指示情報に基づいて図10(a)に示す如く増減する火力調節制御を実行し、次に、STEP15に進む。火力調節指示情報が入力されていないときは、STEP14を経由せずにSTEP15に進む。STEP15では、消火操作が行われた否かを判別し、消火操作が行われていなければ、STEP8に進み、消火操作が行われていれば、STEP5に進んで消火制御を行う。STEP8において、不均一火力の指示が出されていないと判別されたときは、STEP16で不均一火力制御を解除してからSTEP13に進む。
【0027】
ここで、不均一火力指示手段8は、図9に示す如く、バーナ近傍情報に基づいて不均一火力を指示する自動指示手段81と、ユーザの操作により不均一火力を指示する手動指示手段82とを有している。自動指示手段81には、コンロバーナ3の上方、即ち、五徳5に載置される調理容器に関する調理容器情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面で調理容器のモードを選択したときに働く第1自動指示部811と、調理容器の底面の外方に溢れ出た燃焼炎に関する炎溢れ情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面で炎溢れ防止のモードを選択したときに働く第2自動指示部812と、調理容器内の泡立ちに関する泡立ち情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面で吹き零れ防止のモードを選択したときに働く第3自動指示部813と、コンロバーナ3の近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報、即ち、図7の第1のエリアS1に侵入物が存在するか否かの情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面で加熱防止のモードを選択したときに働く第4自動指示部814と、侵入物情報の一種である、図7の第2のエリアS2に人体が存在するか否かの情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面でユーザ接近のモードを選択したときに働く第5自動指示部815と、コンロ1の操作部たる操作パネル部43と電源スイッチ44とが設けられている天板4の前部の温度情報に基づいて不均一火力を指示する、図5(a)の画面で手前温度低減のモードを選択したときに働く第6自動指示部816とが設けられている。また、手動指示手段82には、図5(c)の画面での調理容器の選択操作に基づいて不均一火力を指示する第1手動指示部821と、図5(b)の画面での吹き零れ防止のモード選択操作に基づいて不均一火力を指示する第2手動指示部822と、図5(b)の画面での手前温度低減のモード選択操作に基づいて不均一火力を指示する第3手動指示部823とが設けられている。
【0028】
第1自動指示部811では、調理容器の平面視形状が一方向に長手のものである場合に、調理容器の短手方向に位置する区分けヘッド領域の火力を低くする不均一火力を指示する。例えば、図7に示す如く、調理容器Pの短手方向が前後方向である場合(調理容器Pが横長である場合)、第1と第3の区分けヘッド領域31,31の火力を低くする不均一火力を指示する。この場合、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(b)に示す如く変化させる。第1と第3の区分けヘッド領域31,31の火力を第4段火力以上にすると、調理容器の底面の前方及び後方への炎溢れを生ずる恐れがあるため、第1と第3の区分けヘッド領域31,31の上限火力を第3段火力に設定している。そして、第1と第3の区分けヘッド領域31,31の火力が第3段火力を上回るような火力6以上の火力調節指示情報が火力調節ボタン432で入力された場合、第1と第3の区分けヘッド領域31,31の火力を上限火力である第3段火力に維持するようにしている。これにより、調理容器が一方向に長手のものであっても、調理容器の短手方向での炎溢れを生ずることなく、調理容器を均等に加熱することができ、調理性能が向上する。
【0029】
第2自動指示部812では、炎溢れを生じている場合に、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31のうち炎溢れを生じている箇所に対応する区分けヘッド領域(以下、炎溢れ区分けヘッド領域という)の火力を低くする不均一火力を指示する。そして、コントローラ6は、図8のSTEP9において、炎溢れ区分けヘッド領域の火力を炎溢れが解消されるまで低減させる。また、炎溢れが解消された時点での火力を上限火力に設定し、炎溢れ区分けヘッド領域の火力がこの上限火力を上回るような火力調節指示情報が火力調節ボタン432で入力されても、炎溢れ区分けヘッド領域の火力をこの上限火力に維持し、炎溢れ区分けヘッド領域の火力が上限火力を上回らないように図8のSTEP12での火力調節を行う。これにより、炎溢れを防止して、且つ、調理容器の加熱不足を抑制できる。
【0030】
第3自動指示部813では、調理容器内の泡立ち箇所(泡立ちで白濁している箇所)の調理容器全体に対する面積比率が所定の閾値(例えば、90%)以上になったときに、あと少しで吹き零れを生ずると判断して、何れかの区分けヘッド領域、例えば、第1区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。そして、コントローラ6は、図8のSTEP9において、泡立ち箇所の面積比率が閾値を下回るまで第1区分けヘッド領域31の火力を低減させる。また、泡立ち箇所の面積比率が閾値を下回った時点での火力を第1区分けヘッド領域31の上限火力に設定し、更に、泡立ち箇所の面積比率が閾値に達した時点での火力を第2乃至第4区分けヘッド領域31~31の上限火力に設定し、各区分けヘッド領域31~31の火力が夫々の上限火力を上回らないように図8のSTEP12での火力調節を行う。これにより、調理容器からの吹き零れを防止できる。
【0031】
第4自動指示部814では、第1のエリアS1内に侵入物が存在するか否かを判別し、侵入物が存在する場合は、侵入物が存在する第1のエリアS1内の区分けエリアに対応する区分けヘッド領域の火力を低くする不均一火力を指示する。例えば、図7に示す如く布巾等の侵入物Wが第2区分けエリアS1に存在する場合は、第2区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。この場合、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(c)に示す如く変化させる。第2区分けヘッド領域31の火力を第4段火力以上にすると、侵入物Wが強く加熱されてしまうため、第2区分けヘッド領域31の上限火力を第3段火力に設定している。そして、第2区分けヘッド領域31の火力が第3段火力を上回らないようにSTEP12での火力調節を行う。これにより、コンロバーナ3の近傍に侵入した侵入物が強く加熱されることを防止することができる。
【0032】
第5自動指示部815では、第2のエリアS2内に侵入物たる人体が存在するか否かを判別し、人体が存在する場合は、人体が存在する第2のエリア内の区分けエリアに対応する区分けヘッド領域の火力を低くする不均一火力を指示する。例えば、第2のエリアS2の第1区分けエリアS2に人体が存在する場合は、第1区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。この場合、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(d)に示す如く変化させる。第1区分けヘッド領域31の火力を第3段火力以上にすると、ユーザが熱く感じてしまう可能性があるため、第1区分けヘッド領域31の上限火力を第2段火力に設定している。そして、第1区分けヘッド領域31の火力が第2段火力を上回らないようにSTEP12での火力調節を行う。尚、人体が存在するか否かを判別する第2のエリアS2を第1のエリアS1よりも広くしているのは、人体に対しより高い安全性を確保するためである。
【0033】
第6自動指示部816では、天板4の前部の温度をバーナ近傍情報取得手段7たる赤外線カメラの赤外線画像の温度解析から取得し、天板4の前部の温度が所定温度(例えば、50℃)以上になったときに、第1区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。そして、コントローラ6は、図8のSTEP9において、第1区分けヘッド領域31の火力を天板4の前部の温度が所定温度を下回るまで低減させる。また、天板4の前部の温度が所定温度を下回った時点での火力を上限火力に設定し、第1区分けヘッド領域31の火力がこの上限火力を上回らないように図8のSTEP12での火力調節を行う。これにより、ユーザが操作パネル部43や電源スイッチ44に触れたときに熱い思いをすることを防止できる。
【0034】
第1手動指示部821では、図5(c)の調理容器の選択操作で選択された調理容器の短手方向に位置する区分けヘッド領域の火力を低くする不均一火力を指示する。例えば、選択されたのが横長容器である場合、調理容器の短手方向に位置する第1と第3の区分けヘッド領域31,31の火力を低くする不均一火力を指示する。この場合、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(b)に示す如く変化させる。これは、第1自動指示部811から不均一火力が指示された場合と同じである。これにより、調理容器が一方向に長手のものであっても、調理容器の短手方向での炎溢れを生ずることなく、調理容器を均等に加熱することができ、調理性能が向上する。
【0035】
第2手動指示部822では、一部の区分けヘッド領域、例えば、第1区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。そして、図5(d)の画面で例えばφ24~φ28の容器が選択された場合、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(e)に示す如く変化させる。即ち、第1区分けヘッド領域31の上限火力を第3段火力、第2乃至第4区分けヘッド領域31~31の上限火力を第6段火力に設定し、各区分けヘッド領域31~31の火力が夫々の上限火力を上回らないようにSTEP12での火力調節を行う。これにより、吹き零れの発生を抑制することができる。尚、第2乃至第4区分けヘッド領域31~31の上限火力は、調理容器の大きさに応じて可変設定される。
【0036】
第3手動指示部823では、第1区分けヘッド領域31の火力を低くする不均一火力を指示する。そして、コントローラ6は、図8のSTEP12において、第1乃至第4の区分けヘッド領域31~31の火力を火力調節ボタン432による火力調節指示情報に基づいて図10(f)に示す如く変化させる。即ち、第1区分けヘッド領域31の上限火力を第2段火力に設定し、第1区分けヘッド領域31の火力が第2段火力を上回らないようにSTEP12での火力調節を行う。これにより、天板4の前部の加熱を抑制して、ユーザが操作パネル部43や電源スイッチ44に触れたときに熱い思いをすることを防止できる。
【0037】
尚、図5(a)の画面で複数のモードを選択することも可能である。そして、複数のモードを選択したときは、各区画ヘッド領域31~31の火力を、選択した複数のモードに対応する複数の自動指示部により指示される各区画ヘッド領域31~31の火力のうちの最も低い火力になるように制御する。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態において、コンロバーナ3は、バーナヘッド部31の外周部に炎口34を有するものであるが、バーナヘッド部31の上面に炎口を有するものであってもよい。また、上記実施形態において、バーナヘッド部31の区分けヘッド領域の数は4個であるが、4個以外であってもよい。更に、上記実施形態では、バーナ近傍情報取得手段7をレンジフードRHの下面に設置しているが、それ以外の例えばコンロ1の後方の壁面にバーナ近傍情報取得手段を設置することも可能である。また、バーナ近傍情報取得手段として上記実施形態の赤外線カメラとコンロと人体との距離を計測する測距センサとを併用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…コンロ、3…コンロバーナ、31…バーナヘッド部、31~31…区分けヘッド領域、34…炎口、392~392…開閉弁(バルブ手段)、393~393…火力調節弁(バルブ手段)、432…火力調節ボタン(火力指示部)、6…コントローラ(制御手段)、7…バーナ近傍情報取得手段、8…不均一火力指示手段、81…自動指示手段、82…手動指示手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10