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特許7517967バッテリとヒューズユニットとの接続構造
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  • 特許-バッテリとヒューズユニットとの接続構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】バッテリとヒューズユニットとの接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/579 20210101AFI20240709BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M50/579
H01M50/296
H01M50/242
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198707
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086605
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩浜 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚也
(72)【発明者】
【氏名】太田 三幹
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-110844(JP,A)
【文献】特開2006-269186(JP,A)
【文献】特開2010-129315(JP,A)
【文献】特開2015-118855(JP,A)
【文献】特開2010-092753(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2011-0027541(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01H 37/76;69/02:85/00-87/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリの柱状端子に導通接続されるヒューズユニットと、を備える、バッテリとヒューズユニットとの接続構造であって、
前記ヒューズユニットは、
前記柱状端子が挿通される端子部と、前記端子部に導通するヒューズ部と、前記端子部に組み付けられ且つ前記バッテリに接触して当該ヒューズユニットの前記柱状端子周りの回転位置を規制するストッパ部と、を有し、
前記ストッパ部は、
前記端子部に組み付けられる本体部と、前記本体部から延出して前記バッテリに接触する回り止め部と、前記本体部と前記回り止め部とを連結する梁状の支持部と、を有するとともに、前記ヒューズ部を前記バッテリの角部をまたぐ初期位置に配置するように前記ヒューズユニットの回転位置を規制し、且つ、前記ヒューズユニットに所定方向の一方側から外力が及んだときに前記支持部が変形することによって前記ヒューズ部が所定の退避位置に移動するように前記ヒューズユニットの回転を許容する、ように構成され、
前記退避位置は、
前記バッテリの外装部、前記柱状端子、及び、前記ストッパ部の前記本体部の各々の前記一方側の端部のうちの最も前記一方側に位置する前記端部よりも前記所定方向の他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接続構造において、
前記ストッパ部は、
前記バッテリの前記外装部及び前記柱状端子よりも前記一方側に位置して前記外力が及ぼされることになる当て部を、更に有する、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接続構造において、
前記退避位置は、
前記バッテリの前記外装部の前記一方側の前記端部よりも前記他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリと、バッテリの柱状端子に導通接続されるヒューズユニットと、を備える、バッテリとヒューズユニットとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用バッテリ等に直接取り付けられるヒューズユニットが提案されている。例えば、従来のヒューズユニットの一つは、バッテリ上面の柱状端子(いわゆるバッテリポスト)が挿通される端子部と、端子部からバッテリ上面に沿って延び且つバッテリ側面に沿うように折れ曲がるバスバ等が埋め込まれるヒューズ部と、を有する構造(いわゆるL字型構造)を有している。このヒューズユニットは、バッテリの柱状端子に端子部が締結されることで、バッテリに対して一体的に取り付けられる(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-129315号公報
【文献】特開2015-118855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した種類のヒューズユニットは、一般に、外部からの衝撃等からヒューズ部を保護するべく、その衝撃等が及ぶことが想定される向き(例えば、バッテリ及びヒューズユニットが搭載される車両への想定衝突向き)において、バッテリの外装部よりも奥側に配置される。この配置により、バッテリの外装部で衝撃等を一次的に受け止めることで、ヒューズ部に及ぶ衝撃等を低減するようになっている。この配置は、ヒューズ部の保護に貢献するものの、バッテリの形状や車両等への搭載位置によっては、ヒューズ部の大きさや形状等の設計自由度を下げる要因となり得る。このように、バッテリに取り付けられるヒューズユニットでは、一般に、ヒューズ部の保護とヒューズ部の設計自由度の向上との両立は困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒューズ部の保護とヒューズ部の設計自由度の向上とを両立可能なバッテリとヒューズユニットとの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバッテリとヒューズユニットとの接続構造は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
バッテリと、前記バッテリの柱状端子に導通接続されるヒューズユニットと、を備える、バッテリとヒューズユニットとの接続構造であって、
前記ヒューズユニットは、
前記柱状端子が挿通される端子部と、前記端子部に導通するヒューズ部と、前記端子部に組み付けられ且つ前記バッテリに接触して当該ヒューズユニットの前記柱状端子周りの回転位置を規制するストッパ部と、を有し、
前記ストッパ部は、
前記端子部に組み付けられる本体部と、前記本体部から延出して前記バッテリに接触する回り止め部と、前記本体部と前記回り止め部とを連結する梁状の支持部と、を有するとともに、前記ヒューズ部を前記バッテリの角部をまたぐ初期位置に配置するように前記ヒューズユニットの回転位置を規制し、且つ、前記ヒューズユニットに所定方向の一方側から外力が及んだときに前記支持部が変形することによって前記ヒューズ部が所定の退避位置に移動するように前記ヒューズユニットの回転を許容する、ように構成され、
前記退避位置は、
前記バッテリの外装部、前記柱状端子、及び、前記ストッパ部の前記本体部の各々の前記一方側の端部のうちの最も前記一方側に位置する前記端部よりも前記所定方向の他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造であること。
[2]
上記[1]に記載の接続構造において、
前記ストッパ部は、
前記バッテリの前記外装部及び前記柱状端子よりも前記一方側に位置して前記外力が及ぼされることになる当て部を、更に有する、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造であること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の接続構造において、
前記退避位置は、
前記バッテリの前記外装部の前記一方側の前記端部よりも前記他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造であること。
【0007】
上記[1]の構成のバッテリとヒューズユニットとの接続構造によれば、ヒューズユニットのヒューズ部は、ストッパ部に回転位置が規制されつつ、バッテリの角部をまたぐ初期位置に配置される。なお、ヒューズ部が角部を「またぐ」とは、バッテリの角部から一の側面と他の側面とが異なる方向に広がるとき、ヒューズ部が、一の側面の面上領域のみに留まらず、一の側面の面上領域から他の側面の面上領域に向けて延び出すことを表す。ここで、ヒューズユニットに所定方向の一方側(例えば、バッテリ及びヒューズユニットが車両のリアトランク周辺に搭載された場合、車両の後方側)から外力が及んだ場合、ストッパ部の支持部が変形するとともに、ヒューズユニットが柱状端子周りに回転して退避位置に移動する。退避位置は、バッテリの外装部、柱状端子、及び、ストッパ部の本体部の各々の端部のうちの最も一方側に位置する端部よりも上記所定方向の他方側(例えば、車両の前方側)の位置である。
【0008】
ヒューズ部が退避位置にあれば、更なる外力が一方側から及んでも、その更なる外力を上記最も一方側に位置する端部で受け止めることで、ヒューズ部に及ぶ更なる外力が低減されることになる。即ち、ストッパ部の支持部の変形およびヒューズユニットの回転によってヒューズ部に及ぶ外力が吸収されて低減し、且つ、ヒューズ部を退避位置に移動させることで更なる外力がヒューズ部に及ぶことが抑制される。よって、角部をまたぐ初期位置にヒューズ部が配置可能であることでヒューズ部の設計自由度を高めつつ、必要に応じてヒューズ部を退避位置に移動させることでヒューズ部の適切な保護を図ることができる。したがって、本構成の接続構造は、ヒューズ部の保護とヒューズ部の設計自由度の向上とを両立可能である。
【0009】
上記[2]の構成のバッテリとヒューズユニットとの接続構造によれば、ストッパ部が有する当て部が、バッテリの外装部及び柱状端子よりも一方側(例えば、車両の後方側)に位置する。これにより、当て部に優先的に外力が及ぶことで、支持部の変形およびヒューズユニットの回転が促され、ヒューズ部を速やかに退避位置に移動させることができる。よって、本構成の接続構造は、ヒューズ部の保護をより確実に図ることができる。
【0010】
上記[3]の構成のバッテリとヒューズユニットとの接続構造によれば、ヒューズ部は、バッテリの外装部の一方側の端部よりも他方側(例えば、車両の前方側)の退避位置に移動することになる。よって、柱状端子やストッパ部の本体部に比べて一般に強度に優れるバッテリの外装部で更なる外力を受け止めることで、ヒューズ部の保護をより確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、ヒューズ部の保護とヒューズ部の設計自由度の向上とを両立可能なバッテリとヒューズユニットとの接続構造を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ヒューズユニットが初期位置にある本実施形態に係るバッテリとヒューズユニットとの接続構造を示す斜視図である。
図2図2は、ヒューズユニットが初期位置にある図1に示す接続構造の上面図である。
図3図3は、ヒューズユニットが退避位置にある図1に示す接続構造の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るバッテリ1とヒューズユニット2との接続構造について説明する。バッテリ1は、車両用のバッテリであり、本例では、車両のリアトランク周辺に搭載される。ヒューズユニット2は、図1に示すように、バッテリ1に取り付けられて使用される。ヒューズユニット2は、バッテリ1と外部負荷(図示省略)から延びる電線(図示省略)とを電気的に接続すると共に、電線に定格電流を超える電流が流れたときにバッテリ1と電線との電気的接続を断つ機能を有する。ヒューズユニット2には、その上面を覆うカバー(図示省略)が取り付けられてもよい。
【0015】
以下、説明の便宜上、図1図3に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向、左右方向及び上下方向はそれぞれ、バッテリ1及びヒューズユニット2が搭載された車両の前後方向、左右方向及び上下方向と一致している。
【0016】
まず、バッテリ1について簡単に説明する。バッテリ1の外装部は、略直方体状の形状を有している。本例では、バッテリ1は、図2及び図3に示すように、上方からみて、バッテリ1の外装部の互いに交差(直交)する2つの側面11,12がそれぞれ前後方向及び左右方向から時計回りに僅かに傾斜した向きで、車両に搭載されている。
【0017】
バッテリ1の外装部の上面の左後角部には、矩形状に下方に窪む凹部13が形成されている。凹部13の底面14には、バッテリポスト(柱状端子)16が、上方に突出するように設けられている。
【0018】
次いで、ヒューズユニット2について説明する。本例では、ヒューズユニット2は、図1に示すように、バッテリポスト16から凹部13の底面14に沿って左方に延び且つバッテリ1の外装部の側面11に向かい合うように下方に折れ曲がる略L字状の形状を有している。このように、ヒューズユニット2は、全体として略L字状の形状を有する。
【0019】
ヒューズユニット2は、図1に示すように、バッテリポスト16が挿通される端子部3と、端子部3に組み付けられるストッパ部4と、端子部3に導通するヒューズ部5と、を備える。以下、ヒューズユニット2を構成する各部材について順に説明する。
【0020】
まず、端子部3について説明する。端子部3は、バッテリ端子、又は中継端子とも呼ばれる。金属製の端子部3は、図1及び図2に示すように、上方からみて、前後方向及び左右方向に延びる略L字状の形状を有し、その右前端部(L字の交差部分)には、バッテリポスト16が挿通されることになる上下方向に貫通する挿通孔21が形成されている。端子部3における挿通孔21より後側の部分には、挿通孔21を縮径させる機能を有する締付機構部22が設けられている。端子部3における挿通孔21より左側の部分には、上方に突出するスタッドボルト23が一体に設けられている。スタッドボルト23には、ヒューズ部5の後述するバスバ40の入力端子部41が接続されることになる。
【0021】
次いで、ストッパ部4について説明する。ストッパ部4は、ヒューズユニット2(ヒューズ部5)の位置決め機能と、外力からヒューズユニット2(ヒューズ部5)を保護する機能と、を果たす部材である。ストッパ部4は、本例では樹脂成形体であり、本体部31と、回り止め部32と、支持部33と、を一体に有する。
【0022】
ストッパ部4の本体部31は、図1及び図2に示すように、端子部3に相対移動不能に組み付け可能な形状を有している。本体部31は、端子部3に相対移動不能に組み付けられた状態において、端子部3の主として右側端面及び後側端面を覆う。図2に示すように、ストッパ部4が組み付けられた端子部3の挿通孔21にバッテリポスト16が挿通された状態において、本体部31の右側端面31aは、バッテリ1の凹部13を画成する側面15(側面11と平行に延びる側面)の後側領域と対面接触することで、上方からみたときのヒューズユニット2の位置(バッテリポスト16周りの回転方向の位置)が、図2に示す「初期位置」となるように、ヒューズユニット2のバッテリポスト16周りの回転位置を規制する機能(ヒューズ部5の位置決め機能)を果たすようになっている(詳細は後述)。
【0023】
図2に示すように、ヒューズユニット2が初期位置にある状態において、本体部31の後側端部31bは、バッテリポスト16より後側に位置するバッテリ1の外装部の側面12よりも後側(車両の後方側)に位置し、且つ、ヒューズユニット2(ヒューズ部5)の後端部5aよりも後側に位置している。このため、例えば、車両衝突時等において、ヒューズユニット2に後側(車両の後方側)から外力が及ぶ場合において、後側端部31bに優先的に外力が及ぶようになっている(図2の白矢印を参照)。なお、ヒューズユニット2が初期位置にある状態では、ヒューズユニット2(ヒューズ部5)の後端部5aは、バッテリ1の外装部の側面12、及び、バッテリ1の外装部の角部17(図2参照、側面11と側面12とが交差する部分)よりも、後側(車両の後方側)に位置している。
【0024】
ストッパ部4の回り止め部32は、本体部31における端子部3の右側端面を覆う部分の前端部から前方に延出する部分である。図2に示すように、ストッパ部4が組み付けられた端子部3の挿通孔21にバッテリポスト16が挿通された状態において、回り止め部32は、バッテリ1の凹部13を画成する側面15の前側領域と対面接触するようになっている。
【0025】
ストッパ部4の支持部33は、本体部31の右前端部31cと、回り止め部32とを、左右方向に連結する梁状の部分である。ヒューズユニット2(本体部31の後側端部31b)に後側(車両の後方側)から外力が及ぶことで、端子部3が上方からみて時計回りに回転する方向の回転モーメントを受ける場合、支持部33は、図3に示すように、本体部31の右前端部31cと回り止め部32とに挟まれて変形する(例えば、折れる、又は、押し潰される)ことで、ヒューズユニット2が図3に示す「退避位置」まで移動するように、ヒューズユニット2のバッテリポスト16周りの回転(上方からみて時計回り方向の回転)を許容させる機能(ヒューズ部5を保護する機能)を果たすようになっている(詳細は後述)。
【0026】
次いで、ヒューズ部5について説明する。ヒューズ部5は、図1及び図2に示すように、バスバ40と、ハウジング50と、カバー60と、を備える。バスバ40は、板状の金属部材である。ハウジング50は、バスバ40の大部分を覆うように樹脂材料によりバスバ40と一体的に成形されたモールド成形体である。本例では、ヒューズ部5(バスバ40及びハウジング50)は、大略的には、スタッドボルト23から凹部13の底面14に沿って左方に延び且つバッテリ1の外装部の側面11に向かい合うように下方に折れ曲がる略L字状の形状を有している。ヒューズ部5は、バッテリ1の外装部の側面11の面上領域だけに留まらず、側面11の面上領域から側面12の面上領域に向けて延び出すように配置されている。即ち、ヒューズ部5は、バッテリ1の外装部の角部17をまたぐように配置されている。ストッパ部4は、ヒューズ部5がこのような位置(初期位置)にあるように、ヒューズユニット2の回転位置を規制している。
【0027】
バスバ40のうち、入力端子部41と、複数(本例では、4つ)の出力端子部42と、入力端子部41及び複数の出力端子部42の各々を一対一に電気的に接続する複数(本例では、4つ)の可溶部43と、が、ハウジング50から露出している。入力端子部41は、バッテリ1側(具体的には、端子部3のスタッドボルト23)に接続されることになり、各出力端子部42は、外部負荷から延びる電線側に接続されることになる。
【0028】
具体的には、入力端子部41は、略L字状のバスバ40の左右方向に延びる部分の右端部に位置する平板状部分であり、その中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔(図示省略)が形成されている。このボルト挿通孔に、端子部3のスタッドボルト23が挿通されることになる。
【0029】
複数の出力端子部42は、略L字状のバスバ40の上下方向に延びる部分に位置しており、ハウジング50に設けられた複数の凹形状の接続部51にてそれぞれ露出する平板状部分である。複数の出力端子部42のうち一部の出力端子部42の中央部には、凹形状の接続部51内にて突出するスタッドボルト44が固定されている。
【0030】
複数の可溶部43は、略L字状のハウジング50の上下方向に延びる部分にて左方に開口するように設けられた窓部52の内部にて左方へ露出している(図1参照)。各可溶部43には、自身の他の部分と比べて相対的に低融点の金属(図示省略)が載置されている。各可溶部43は、対応する出力端子部42(即ち、対応する出力端子部42に接続される電線)に定格電流を超える電流が流れたときに、ジュール熱によって溶断されるように設計されている。各可溶部43が溶断されると、入力端子部41と、対応する出力端子部42との間(即ち、バッテリ1と、対応する出力端子部42に接続される電線との間)の電気的接続が断たれる。
【0031】
複数の可溶部43を露出させる窓部52には、窓部52の開口形状に対応する形状を有する平板状の樹脂製の透明のカバー60(図1参照)が、ハウジング50の左方から装着されている。これにより、複数の可溶部43が視認可能な状態で、窓部52の開口がカバー60によって塞がれている。以上、ヒューズユニット2を構成する各部材について説明する。
【0032】
次いで、ヒューズユニット2をバッテリ1に取り付ける際の手順について説明する。まず、ストッパ部4が組み付けられた端子部3を、バッテリ1の凹部13内に仮固定する。このため、ストッパ部4が組み付けられた端子部3の挿通孔21に、バッテリポスト16を挿通させる。この状態において、図2に示すように、ストッパ部4の本体部31の右側端面31aが、バッテリ1の凹部13を画成する側面15の後側領域と対面接触している。これにより、上方からみたときの端子部3の位置(バッテリポスト16周りの回転方向の位置)が、図2に示す「初期位置」となるように、端子部3のバッテリポスト16周りの回転が規制される。次いで、端子部3の締付機構部22を操作して、端子部3の挿通孔21を縮径させる。これにより、端子部3が、初期位置にある状態のまま、バッテリポスト16に締結固定される。
【0033】
次いで、初期位置にある端子部3に、ヒューズ部5を組み付ける。このため、略L字状のヒューズ部5を、バッテリ1の凹部13の底面14及びバッテリ1の外装部の側面11に向かい合うように配置した状態で、ヒューズ部5の入力端子部41のボルト挿通孔に、端子部3のスタッドボルト23を挿通させる。次いで、スタッドボルト23にナット6を螺号させて、ナット6を規定トルクで締め付ける。これにより、ヒューズ部5の、スタッドボルト23を中心とした端子部3に対する回動が規制された状態で、ヒューズ部5(即ち、ヒューズユニット2)が、図2に示す初期位置にある状態で、端子部3のスタッドボルト23に締結固定される。
【0034】
このように、ストッパ部4は、本体部31の右側端面31aがバッテリ1の凹部13を画成する側面15の後側領域と対面接触することで、上方からみたときのヒューズユニット2の位置が図2に示す「初期位置」となるように、ヒューズユニット2のバッテリポスト16周りの回転を規制する機能(ヒューズ部5の位置決め機能)を果たしている。以上により、ヒューズユニット2のバッテリ1への取り付けが完了する。
【0035】
この取付完了状態において、ヒューズ部5の複数の出力端子部42のそれぞれに、スタッドボルト44等を利用して、外部負荷から延びる電線の端末に接続された端子が締結固定される。これにより、ヒューズ部5から延びる複数(本例では、4本)の電線が、ヒューズ部5を介してそれぞれバッテリ1と電気的に接続される。そして、これらの電線の何れかに定格電流を超える電流が流れたとき、その電線に対応する可溶部43が溶断されて、その電線とバッテリ1との電気的接続が断たれる。なお、上記順序とは逆に、ヒューズ部5の出力端子部42に電線の端子を締結固定した後に、ヒューズ部5を端子部3に締結固定してもよい。
【0036】
以下、ストッパ部4によるヒューズ部5を保護する機能について説明する。図2に示すように、ヒューズユニット2が初期位置にある状態では、上述したように、ストッパ部4の本体部31の後側端部31bが、バッテリポスト16より後側に位置するバッテリ1の外装部の側面12よりも後側(車両の後方側)に位置し、且つ、ヒューズユニット2(ヒューズ部5)の後端部5aよりも後側に位置している。このため、例えば、車両衝突時等において、ヒューズユニット2に後側(車両の後方側)から外力が及ぶ場合において、図2に白矢印で示すように、後側端部31bに優先的に外力が及ぶ。
【0037】
このように、ストッパ部4の本体部31の後側端部31bに後側(車両の後方側)から外力が及ぶことで、端子部3が上方からみて時計回りに回転する方向の回転モーメントを受け得る。この回転モーメントを受けて、端子部3のバッテリポスト16に対する締結力に打ち勝って、端子部3がバッテリポスト16周りに上方からみて時計回りに回転しようとすると、図3に示すように、ストッパ部4の支持部33が、本体部31の右前端部31cと回り止め部32とに挟まれて変形する(押し潰される)と共に、ストッパ部4の回り止め部32も、側面15からの押圧によって本体部31に対して揺動するように変形する。これにより、ヒューズユニット2が図3に示す「退避位置」まで移動可能となる。
【0038】
図3に示すように、ヒューズユニット2が退避位置にある状態では、ヒューズユニット2(ヒューズ部5)の後端部5aは、ストッパ部4の本体部31の後側端部31b、バッテリ1の外装部の側面12、及び、バッテリ1の外装部の角部17よりも、前側(車両の前方側)に位置している。このため、ヒューズユニット2が退避位置にある状態において、ヒューズユニット2に対して更なる外力が後側(車両の後方側)から及んでも、その更なる外力を、ストッパ部4の本体部31の後側端部31bやバッテリ1の外装部の側面12で受け止めることができる。この結果、ヒューズ部5に及ぶ更なる外力が低減され得る。
【0039】
即ち、ストッパ部4は、支持部33(及び回り止め部32)の変形、及び、ヒューズユニット2の回転によって、ヒューズ部5に及ぶ外力を吸収して低減させ、且つ、ヒューズ部5を退避位置に移動させることで更なる外力がヒューズ部5に及ぶことを抑制する機能(ヒューズ部5を保護する機能)を果たしている。
【0040】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るバッテリ1とヒューズユニット2との接続構造によれば、ヒューズユニット2のヒューズ部5は、バッテリ1の角部(凹部13の底面14と側面11との交差部)をまたぐ位置(初期位置)に配置される(図2参照)。更に、ヒューズユニット2の端子部3に組み付けられるストッパ部4は、ヒューズ部5が初期位置に配置されるように、ヒューズユニット2の回転を規制する。更に、ヒューズユニット2に後側(車両の後方側)から外力が及んだ場合、ストッパ部4の支持部33が変形するとともに、ヒューズユニット2の回転が許容され、ヒューズ部5が退避位置に移動する(図3参照)。退避位置は、バッテリ1の外装部の後側端部(側面12及び角部17)、バッテリポスト16の後側端部、及び、ストッパ部4の本体部31の後側端部31bのうち最も後側に位置する端部(後側端部31b)よりも前側(車両の前方側)の位置である。ヒューズ部5が退避位置にあれば、更なる外力が後側(車両の後方側)から及んでも、その更なる外力をストッパ部4の本体部31の後側端部31bで受け止めることで、ヒューズ部5に及ぶ更なる外力を低減する。即ち、ストッパ部4は、支持部33の変形およびヒューズユニット2の回転によってヒューズ部5に及ぶ外力を吸収して低減させ、且つ、ヒューズ部5を退避位置に移動させることで更なる外力がヒューズ部5に及ぶことを抑制する。このように、ストッパ部4は、ヒューズ部5の位置決め機能と、外力からヒューズ部5を保護する機能と、を有する。したがって、本実施形態に係る接続構造は、ヒューズ部5の保護とヒューズ部5の設計自由度の向上とを両立可能である。
【0041】
更に、本実施形態に係るバッテリ1とヒューズユニット2との接続構造によれば、ヒューズユニット2が初期位置にある状態において、ストッパ部4が有する当て部(後側端部31b)が、バッテリポスト16より後側に位置するバッテリ1の外装部の側面12よりも後側(車両の後方側)に位置する。これにより、後側端部31bに優先的に外力が及ぶことで、支持部33の変形およびヒューズユニット2の回転が促され、ヒューズ部5を速やかに退避位置に移動させることができる。よって、本実施形態に係る接続構造は、ヒューズ部5の保護をより確実に図ることができる。
【0042】
更に、本実施形態に係るバッテリ1とヒューズユニット2との接続構造によれば、ヒューズ部5は、バッテリ1の外装部の後側端部(側面12及び角部17)よりも前側(例えば、車両の前方側)の退避位置に移動することになる。よって、バッテリポスト16やストッパ部4の本体部31に比べて一般に強度に優れるバッテリ1の外装部で更なる外力を受け止めることで、ヒューズ部5の保護をより確実に図ることができる。
【0043】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
上記実施形態では、ヒューズユニット2は、バッテリポスト16から凹部13の底面14に沿って左方に延び且つバッテリ1の外装部の側面11に向かい合うように下方に折れ曲がる略L字状の形状を有している。これに対し、ヒューズユニット2がバッテリポスト16から凹部13の底面14に沿って左方に延びる平板状の形状を有していてもよい。
【0045】
更に、上記実施形態では、ストッパ部4の本体部31は、バッテリ1の凹部13を画成する側面15に接触することで、ヒューズユニット2の回転位置を初期位置に規制している。これに対し、この側面15とは異なるバッテリ1の任意の箇所に本体部31が接触することで、ヒューズユニット2の回転位置が規制されてもよい。
【0046】
ここで、上述した本発明に係るバッテリ1とヒューズユニット2との接続構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
バッテリ(1)と、前記バッテリ(1)の柱状端子(16)に導通接続されるヒューズユニット(2)と、を備える、バッテリ(1)とヒューズユニット(2)との接続構造であって、
前記ヒューズユニット(2)は、
前記柱状端子(16)が挿通される端子部(3)と、前記端子部(3)に導通するヒューズ部(5)と、前記端子部(3)に組み付けられ且つ前記バッテリ(1)に接触して当該ヒューズユニット(2)の前記柱状端子(16)周りの回転位置を規制するストッパ部(4)と、を有し、
前記ストッパ部(4)は、
前記端子部(3)に組み付けられる本体部(31)と、前記本体部(31)から延出して前記バッテリ(1)に接触する回り止め部(32)と、前記本体部(31)と前記回り止め部(32)とを連結する梁状の支持部(33)と、を有するとともに、前記ヒューズ部(5)を前記バッテリ(1)の角部をまたぐ初期位置に配置するように前記ヒューズユニット(2)の回転位置を規制し、且つ、前記ヒューズユニット(2)に所定方向の一方側から外力が及んだときに前記支持部(33)が変形することによって前記ヒューズ部(5)が所定の退避位置に移動するように前記ヒューズユニット(2)の回転を許容する、ように構成され、
前記退避位置は、
前記バッテリ(1)の外装部、前記柱状端子(16)、及び、前記ストッパ部(4)の前記本体部(31)の各々の前記一方側の端部のうちの最も前記一方側に位置する前記端部(31b)よりも前記所定方向の他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
[2]
上記[1]に記載の接続構造において、
前記ストッパ部(4)は、
前記バッテリ(1)の前記外装部及び前記柱状端子(16)よりも前記一方側に位置して前記外力が及ぼされることになる当て部(31b)を、更に有する、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の接続構造において、
前記退避位置は、
前記バッテリ(1)の前記外装部の前記端部(12,17)よりも前記他方側の位置である、
バッテリとヒューズユニットとの接続構造。
【符号の説明】
【0047】
1 バッテリ
2 ヒューズユニット
3 端子部
4 ストッパ部
5 ヒューズ部
12 側面(端部)
16 バッテリポスト(柱状端子)
17 角部(端部)
31 本体部
31b 後側端部(端部、当て部)
32 回り止め部
33 支持部
図1
図2
図3