(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/16 20060101AFI20240709BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20240709BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240709BHJP
【FI】
H02P25/16
H02P5/46 J
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2020200231
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】松平 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 希望
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/122648(WO,A1)
【文献】特開平7-255122(JP,A)
【文献】特開2019-47650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0199085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/16
H02P 5/46
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源を用いて、少なくともモータの駆動を制御する制御装置であって、
前記外部電源と、前記外部電源からの電力を用いて前記モータを駆動するモータ駆動装置との間に設けられ、前記外部電源と前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第1スイッチと、
前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との間に設けられ、前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第2スイッチと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間に設けられたヒューズと、
前記ヒューズと前記第2スイッチとの間に設けられた昇圧トランスと、
前記第1スイッチを制御してオンにさせた後、所定時間経過後に前記第2スイッチを制御してオンにさせる制御部と、
を備え、
前記所定時間は、電圧が第1電圧より高い第2電圧の前記外部電源から電力が供給された際に前記ヒューズが溶断して切断するのに要する時間より長い、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記昇圧トランスは、前記第1電圧の前記外部電源から供給された電力を前記第2電圧に昇圧して前記モータ駆動装置に供給するものである、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置であって、
前記モータ駆動装置を備え、
前記制御装置は、前記モータ駆動装置を制御することで、前記モータの駆動を制御する、制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記モータは、多軸多関節ロボットを動かすためのモータである、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを制御する制御装置は、商用電源によって動作する。ここで、商用電源には、低電圧(例えば、AC100V)出力、および高電圧(例えば、AC200V)出力のものがある。モータが高電圧の電力で駆動し、且つ、低電圧の商業電圧が制御装置に接続される場合、昇圧トランスを制御装置に設けて高電圧(例えば、200V)の電力をモータに供給する。この場合に、昇圧トランスが設けられた制御装置に間違って高電圧の商業電源を接続すると、モータに電力を供給して駆動させるサーボアンプが破損する虞がある。一方で、下記に示す特許文献1には、ヒューズを用いて負荷機器の焼損を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昇圧トランスが設けられた制御装置に間違って高電圧の商業電源を接続した場合は、上記した特許文献1のように単にヒューズを用いたとしても、ヒューズが切れるまではサーボアンプに高電圧より遙かに高い電圧(例えば、400V)の電力が供給されてしまう。したがって、サーボアンプが破損してしまい、過電圧からモータに電力を供給する駆動系を保護するのは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、昇圧トランスが設けられた制御装置に誤って高電圧の商用電源が接続された場合であっても、サーボアンプを過電圧から保護することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る制御装置は、外部電源を用いて、少なくともモータの駆動を制御する制御装置であって、前記外部電源と、前記外部電源からの電力を用いて前記モータを駆動するモータ駆動装置との間に設けられ、前記外部電源と前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第1スイッチと、前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との間に設けられ、前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第2スイッチと、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間に設けられたヒューズと、前記ヒューズと前記第2スイッチとの間に設けられた昇圧トランスと、前記第1スイッチを制御してオンにさせた後、所定時間経過後に前記第2スイッチを制御してオンにさせる制御部と、を備える。前記所定時間は、電圧が第1電圧より高い第2電圧の前記外部電源から電力が供給された際に前記ヒューズが溶断して切断するのに要する時間より長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、昇圧トランスが設けられた制御装置に誤って高電圧の商用電源が接続された場合であっても、サーボアンプを過電圧から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る制御装置の動作手順の一例を表すフローチャートである。
【
図3】駆動信号、検知信号、並びに昇圧トランスの電圧および電流の時間的変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る制御装置について、詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る制御装置10を表す図である。制御装置10は、電磁接触器12a、電磁接触器12b、ヒューズ14、昇圧トランス16、サーボアンプ18、制御部20、およびAC/DC変換器22を有する。制御装置10は、外部電源PSを用いて、機械装置30(モータM)の駆動を制御する。機械装置30は、モータMによって動作する、例えば、多軸多関節ロボット、工作機械、射出成形機等である。外部電源PSとサーボアンプ18の間に、外部電源PS側から電磁接触器12a、ヒューズ14、昇圧トランス16、および電磁接触器12bが前記の順で直列に接続される。外部電源PSからの電圧は、電磁接触器12aおよびヒューズ14を介して、昇圧トランス16に達して、昇圧され、電磁接触器12bを介して、サーボアンプ18に印加される。
【0011】
外部電源PSは、例えば、交流電圧を出力する商用電源であり、接続部C0によって、制御装置10と着脱可能に接続され、制御装置10に電力を供給する。接続部C0は、例えば、コンセントとプラグの組み合わせである。接続部C0は、外部電源PS側の端子(例えば、外部電源PSに接続されたブレーカの端子)と制御装置10側の端子の組み合わせでもよい。外部電源PS側および制御装置10側の端子を互いに接続することで、外部電源PSは制御装置10に接続される。
【0012】
外部電源PSは、一般に、電圧V1を出力するものと、電圧V1より大きい電圧V2を出力するものに区分される。電圧V1は、例えば、AC100V~AC120V、電圧V2は、例えば、AC200V~AC230Vであり、国または地域によって異なる。電圧V1および電圧V2は、例えば、日本ではAC100VおよびAC200V、米国ではAC115VおよびAC230Vである。
【0013】
AC/DC変換器22は、交流の電圧V1または電圧V2を所定の直流電圧に変換して、制御用の電力として、電磁接触器12a、電磁接触器12b、サーボアンプ18、および制御部20に供給する。この結果、電磁接触器12a、電磁接触器12b、および制御部20は、電圧V1、電圧V2いずれの外部電源PSであっても動作可能となる。但し、サーボアンプ18には、モータMの駆動用に電圧V2の電力を供給する必要があるものとする。
【0014】
電磁接触器12aおよび電磁接触器12bは、ヒューズ14および昇圧トランス16を挟んで、外部電源PSとサーボアンプ18の間に直列に接続するように設けられる。
【0015】
電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの各々は、コイル部122、2つの接触子124、および1つの接触子126を有する。コイル部122の通電および非通電(結局、電磁力の有無)が、制御部20によって制御されることで、接触子124および接触子126のオンオフが切り替わる。ここでは、コイル部122が非通電状態のとき、接触子124はオフ状態で、接触子126はオン状態となり、一方、コイル部122が通電状態のとき、接触子124はオン状態で、接触子126はオフ状態となる。但し、コイル部122の通電、非通電と、接触子124のオン、オフの関係は逆であってもよい。また、接触子124および接触子126のオンオフを揃えてもよい。
【0016】
2つの接触子124は、外部電源PSからの2本の配線L1および配線L2それぞれに接続され、配線L1および配線L2の通電、非通電を切り替える。但し、接触子124を1つのみとし、配線L1および配線L2の一方にのみ配置してもよい。接触子124のオンオフは、電磁接触器12a(または電磁接触器12b)自体のオンオフをも意味する。接触子126は、接触子124のオンオフ状態を検知するためのものである。接触子126のオンオフに応じた検知信号が電磁接触器12aおよび電磁接触器12bから制御部20に出力される。接触子126のオン状態およびオフ状態に対応する検知信号をオン信号およびオフ信号(ここでは、それぞれレベルLおよびHの信号)とする。
【0017】
電磁接触器12aをオン状態とすることで、外部電源PSと昇圧トランス16との電気的接続がオン状態となり、外部電源PSとサーボアンプ18との電気的接続をオン状態とすることが可能となる。電磁接触器12aおよび電磁接触器12bは直列に接続されているため、双方がオン状態のときに外部電源PSとサーボアンプ18との電気的接続はオン状態となり、それ以外のときには外部電源PSとサーボアンプ18との電気的接続はオフ状態となる。電磁接触器12aは、外部電源PSと、外部電源PSからの電力を用いてモータMを駆動するサーボアンプ18(モータ駆動装置)との間に設けられ、制御部20によって制御され、外部電源PSとサーボアンプ18との接続のオンオフを切り替える第1スイッチとして機能する。
【0018】
電磁接触器12bをオン状態とすることで、昇圧トランス16とサーボアンプ18との電気的接続がオン状態となり、外部電源PSとサーボアンプ18との電気的接続をオン状態とすることが可能となる。電磁接触器12bは、電磁接触器12aとサーボアンプ18との間に設けられ、制御部20によって制御され、電磁接触器12aとサーボアンプ18との接続のオンオフを切り替える第2スイッチとして機能する。言い換えれば、電磁接触器12b(第2スイッチ)は、外部電源PSとサーボアンプ18との間に、電磁接触器12aと直列に接続され、且つ、電磁接触器12aよりサーボアンプ18側に設けられ、外部電源PSとサーボアンプ18との接続のオンオフを切り替える。
【0019】
サーボアンプ18は、昇圧トランス16からの電圧V2の電力によって動作し、制御部20に制御されて、機械装置30を駆動するものであり、モータMを駆動する駆動装置として機能する。既述のように、サーボアンプ18は、電圧V2で動作し、電圧V1では動作不可とする。
【0020】
昇圧トランス16は、ヒューズ14と電磁接触器12bとの間に設けられ、外部電源PSから供給された電力を昇圧してサーボアンプ18に供給する。外部電源PSが電圧V1の電力を供給する場合、昇圧トランス16は電圧V1を電圧V2に昇圧する。すなわち、昇圧トランス16の一次コイル162に電圧V1が印加され、二次コイル164において電圧V2が発生する。
【0021】
外部電源PSが電圧V2の電力を供給する場合、昇圧トランス16は不要となる。このため、2つのヒューズ14および昇圧トランス16(以下、昇圧トランス16等と称する)の前後には、接続部C1および接続部C2が設けられ、昇圧トランス16等を切り離し可能としている。外部電源PSが電圧V1の電力を供給する場合、接続部C1と接続部C2との間に、昇圧トランス16等が接続されて、外部電源PSからの電圧V1は電圧V2に昇圧されて、サーボアンプ18に印加される。一方、外部電源PSが電圧V2の電力を供給する場合、接続部C1と接続部C2は、昇圧トランス16等を介さず直結され、外部電源PSからの電圧V2はそのままサーボアンプ18に印加される。
【0022】
ここで、外部電源PSが電圧V2の電力を供給し、この電圧V2が昇圧トランス16に印加された場合を考える。このとき、この電圧V2は、昇圧トランス16の一次コイル162での本来の電圧V1(規格電圧)より大幅に大きい過電圧であり、昇圧トランス16は飽和状態になるものとする。この飽和状態は、昇圧トランス16内の磁束密度が飽和し、昇圧トランス16の一次コイル162のインピーダンスが大幅に低下することを意味する。その結果、昇圧トランス16の一次コイル162での電流が過多となる(過電流の発生)。昇圧トランス16とサーボアンプ18とが電気的に接続されていれば(電磁接触器12bがオン)、昇圧トランス16の二次コイル164から電圧V2(例えば、200V)からさらに昇圧された過電圧(例えば、400V)がサーボアンプ18に印加される。この過電圧によって、サーボアンプ18は損傷するおそれがある。
【0023】
2つのヒューズ14は、電磁接触器12aと電磁接触器12bの間に設けられ、サーボアンプ18を過電圧から保護する。既述のように、昇圧トランス16に過電圧が印加されると(例えば、一次コイル162への電圧V2の印加)、過電流が発生し、ヒューズ14に流れる。この過電流によって、ヒューズ14が溶断することで、サーボアンプ18に過電圧が印加されることが防止される。このとき、電圧V2の外部電源PSから電力が供給された際にヒューズ14が溶断するのに要する時間を溶断所要時間(時間)tyとする。ここでは、外部電源PSからの2本の配線L1および配線L2それぞれに対応するように、2つのヒューズ14は設けられる。但し、ヒューズ14を1つのみとし、配線L1および配線L2の一方にのみ配置してもよい。
【0024】
制御部20は、電磁接触器12a、電磁接触器12b、およびサーボアンプ18を制御する。制御部20は、ハードウェア(例えば、プロセッサ)およびソフトウェア(例えば、プログラム)を組み合わせて構成できる。制御部20は、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bに対応する入力端DI1、DI2および出力端DO1、DO2を有する。出力端DO1および出力端DO2から電磁接触器12aおよび電磁接触器12bのコイル部122を駆動する駆動信号が出力され、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bがオンオフされる。入力端DI1および入力端DI2には、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bからの検知信号が入力される。なお、以下では、出力端DO1、DO2から出力される駆動信号を駆動信号DO1、DO2、入力端DI1、DI2に入力される検知信号を検知信号DI1、DI2と称することとする。
【0025】
制御部20は、サーボアンプ18を制御して、機械装置30(モータM)を駆動させる。また、制御部20は、動作中の機械装置30(モータM)を緊急停止させるような場合、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの双方をオフ状態とする。電磁接触器12aおよび電磁接触器12bいずれかに不具合があったような場合であっても、モータMを確実に停止させることができる。
【0026】
制御部20は、起動時において、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bを順にオフ状態からオン状態へと変化させることで、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの動作確認を行う。詳細には、制御部20は、駆動信号D01、DO2によって、電磁接触器12a、電磁接触器12bを順にオフ状態からオン状態へと変化させる。また、制御部20は、検知信号DI1、DI2によって、電磁接触器12a、電磁接触器12bの状態が変化したこと、すなわち、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bが適正動作可能であることを確認する。
【0027】
このとき、制御部20は、電磁接触器12aがオン状態としてから時間(経過時間)txが経過した後に電磁接触器12bをオン状態とする。この経過時間txは、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの動作確認を確実なものとするためのものである。すなわち、経過時間txをゼロとして、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの双方を同時にオン状態とすると、例えば、駆動信号DO1および駆動信号DO2を伝達する配線間のショートを検出することはできない。
【0028】
本実施形態では、電磁接触器12aがオンとなってから電磁接触器12bがオンとなるまでの経過時間txは、ヒューズ14の溶断所要時間ty(電圧V2の外部電源PSの接続時にヒューズ14が溶断するのに要する時間)より長く設定される。従い、外部電源PSが電圧V2のものだった場合、電磁接触器12aがオン状態で電磁接触器12bがオフ状態の期間(時間tx)内にヒューズ14が溶断する。この結果、過電圧がサーボアンプ18に印加されることはなくなる。なお、経過時間txおよび溶断所要時間tyの長短の設定は、経過時間txおよび溶断所要時間tyのいずれ(または双方)を調節してもよい。例えば、溶断所要時間tyの短いヒューズ14を用いてもよいし、経過時間txを長くしてもよい。
【0029】
(制御装置10の動作)
本実施形態に係る制御装置10の動作につき説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置10の動作手順の一例を表すフローチャートである。
図3は、駆動信号DO1、DO2、検知信号DI1、DI2、昇圧トランス16の電圧Vt1、Vt2および電流It1、It2の時間的変化を表すグラフである。横軸が時刻であり、駆動信号DO1、DO2、検知信号DI1、DI2、並びに昇圧トランス16の一次コイル162の電圧Vt1、Vt2および電流It1、It2の時間的変化が表される。電圧Vt1、Vt2の各々は、電圧V1の外部電源PSおよび電圧V2の外部電源PSに対応する。電流It1、It2の各々も、電圧V1の外部電源PSおよび電圧V2の外部電源PSに対応する。以下、基本的には
図2に基づいて、制御装置10の動作手順を説明する。
【0030】
制御装置10に外部電源PSが接続される(ステップST1)。本実施形態の構成では、制御装置10は、昇圧トランス16を有し、電圧V1の外部電源PSが接続されるべきである。既述のように、制御装置10に電圧V2の外部電源PSを接続すると、過電圧によりサーボアンプ18が損傷するおそれがある。しかし、本実施形態では、制御装置10に電圧V2の外部電源PSを接続した場合であっても、以下のように、サーボアンプ18の損傷が防止される。
【0031】
外部電源PSが接続された制御装置10が起動される(ステップST2)。例えば、制御装置10の起動スイッチ(図示せず)を操作することで、制御装置10は起動する。
【0032】
この起動時において、制御部20は電磁接触器12aをオン状態とする(ステップST3)。詳細には、制御部20は、駆動信号DO1によって、電磁接触器12aをオフ状態からオン状態へと変化させる(
図3の時刻t1)。このとき、制御部20は、検知信号DI1によって、電磁接触器12aの状態が変化したこと(具体的には、検知信号DI1がオフ信号(Hレベル)からオン信号(Lレベル)へと変化したこと)、すなわち、電磁接触器12aが適正動作可能であることを確認する。実際には、駆動信号DO1と検知信号DI1の間には若干のタイムラグαがある。すなわち、検知信号DI1の変化は、電磁接触器12aのスイッチングに要する時間だけ、駆動信号DO1の変化から遅れる。しかし、
図3では、判り易さのために、タイムラグαを実質的にゼロとしている。駆動信号DO2と検知信号DI2においても、この点は同様である。
【0033】
接続された外部電源PSが電圧V1のものだった場合(ステップST4での「V1」)、過電圧によってヒューズ14が溶断することはなく、そのまま処理が続行される。すなわち、制御部20は、電磁接触器12aをオン状態としてから、時間txが経過した後に、電磁接触器12bをオン状態とする(ステップST5、
図3の時刻t2)。詳細には、制御部20は、駆動信号DO2によって、電磁接触器12bをオフ状態からオン状態へと変化させる(時刻t2)。このとき、制御部20は、検知信号DI2によって、電磁接触器12bの状態が変化したこと(具体的には、検知信号DI2がオフ信号(Hレベル)からオン信号(Lレベル)へと変化したこと)、すなわち、電磁接触器12bが適正動作可能であることを確認する。
【0034】
電磁接触器12a、電磁接触器12bの双方がオン状態になったことで、サーボアンプ18に昇圧トランス16から電圧V1から昇圧された電圧V2が印加される(ステップST6)。
【0035】
その後、制御部20は、サーボアンプ18を制御して、モータMを駆動させる(ステップST7)。なお、制御部20は、機械装置30(モータM)を緊急停止させるような場合、電磁接触器12a、電磁接触器12bの双方をオフ状態とする。電磁接触器12a、電磁接触器12bの一方に不具合があったような場合であっても、モータMを確実に停止させることができる。
【0036】
一方、接続された外部電源PSが電圧V2のものだった場合(ステップST4の「V2」)、過電圧によってヒューズ14は溶断する(ステップST8、
図3の時刻t3)。この結果、サーボアンプ18は、過電圧から保護される。
【0037】
電磁接触器12aがオン状態となってからヒューズ14の溶断に要する溶断所要時間tyは、電磁接触器12aがオン状態となってから電磁接触器12bがオン状態となるまでの経過時間txより短い。このため、接続された外部電源PSが電圧V2のものだった場合であっても、過電圧がサーボアンプ18に印加されることはない。
【0038】
本実施形態では、次のような利点を享受することができる。
【0039】
外部電源PSが本来接続すべきでない電圧V2のものだった場合、ヒューズ14は溶断することで、昇圧トランス16およびサーボアンプ18を過電圧から保護することができる。
【0040】
ヒューズ14の溶断所要時間tyは、電磁接触器12a、12bが順にオン状態となる経過時間txよりも短いため、電磁接触器12bがオン状態となる前にヒューズ14は溶断する。このため、ヒューズ14が溶断する前であってもサーボアンプ18に過電圧が印加されることはなく、過電圧からの保護の確実性が向上する。
【0041】
モータMを緊急停止させるような場合に、電磁接触器12a、12bの双方をオフ状態として、その一方に不具合があったような場合であっても、モータMを確実に停止させることができる。
【0042】
起動時に電磁接触器12a、12bを順次にオン状態とすることで、緊急停止用の電磁接触器12a、12bが適正動作可能であることを確認しつつ、サーボアンプ18を過電圧から確実に保護することが可能となる。
【0043】
(比較例)
比較例に係る制御装置につき説明する。
図4は、比較例に係る制御装置10xを表す図である。比較例に係る制御装置10xでは、ヒューズ14および昇圧トランス16は、電磁接触器12aと電磁接触器12bとの間ではなく、電磁接触器12bの後段に接続される。
【0044】
比較例に係る制御装置10xでも、外部電源PSが本来接続すべきでない電圧V2のものだった場合、ヒューズ14は溶断することで、ある程度はサーボアンプ18を過電圧から保護することができる。
【0045】
しかし、比較例に係る制御装置10xでは、電磁接触器12aおよび電磁接触器12bの双方がオン状態となってから、ヒューズ14および昇圧トランス16に外部電源PSからの電圧が印加される。このため、電圧V2の外部電源PSが接続された場合、サーボアンプ18には、ヒューズ14が溶断するまで、昇圧トランス16によって電圧V2(例えば、200V)からさらに昇圧された過電圧(例えば、400V)が印加される。すなわち、比較例に係る制御装置10は、実施形態に係る制御装置10と比べて、サーボアンプ18の保護に欠けるおそれがある。
【0046】
(変形例1)
変形例1に係る制御装置10につき説明する。
図5は、変形例1に係る制御装置10を表す図である。変形例1に係る制御装置10では、電磁接触器12bの後段に、2つのモータMの各々を駆動する2つのサーボアンプ18が接続される。すなわち、変形例1では複数のサーボアンプ18を過大電圧から保護することができる。以上の点を除き、変形例2は本実施形態と実質的な相違はないので、詳細な説明を省略する。
【0047】
(変形例2)
変形例2に係る制御装置10につき説明する。
図6は、変形例2に係る制御装置10を表す図である。変形例2に係る制御装置10では、電磁接触器12aの後段にサーボアンプ32が接続されている。機械装置30は、サーボアンプ18およびサーボアンプ32の各々によって駆動されるモータMaおよびモータMbを有する。
【0048】
サーボアンプ32は、電圧V1および電圧V2のいずれでも動作可能であり、アンプ本体322、入力電圧判定部324、遮断部326を有する。アンプ本体322は、電圧V1または電圧V2を用いて、モータMbの駆動を制御する。入力電圧判定部324は、外部電源PSの電圧が電圧V1および電圧V2のいずれであるかを判定し、判定された電圧に応じてアンプ本体322の設定を変更する。遮断部326は、制御部20に制御されて、電磁接触器12aからアンプ本体322に供給される電力を遮断する。
【0049】
制御部20は、電磁接触器12a、電磁接触器12b、サーボアンプ18、およびサーボアンプ32を制御する。
【0050】
制御部20は、サーボアンプ18およびサーボアンプ32を制御して、機械装置30(モータMa、Mb)を駆動させる。
【0051】
制御部20は、機械装置30(モータMa、Mb)を緊急停止させるような場合、電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bの全てをオフ状態とする。電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bいずれかに不具合があったような場合であっても、モータMaおよびモータMbを確実に停止させることができる。
【0052】
制御部20は、起動時において、電磁接触器12a、サーボアンプ32(遮断部326)、および電磁接触器12bを順にオフ状態からオン状態へと変化させることで、電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bの動作確認を行う。詳細には、制御部20は、駆動信号D01、DO3、およびDO2によって、電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bを順にオフ状態からオン状態へと変化させる。また、制御部20は、検知信号DI1、DI3、およびDI2によって、電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bの状態が変化したこと、すなわち、電磁接触器12a、遮断部326、および電磁接触器12bが適正動作可能であることを確認する。
【0053】
接続された外部電源PSが電圧V2のものだった場合、この動作確認において、電磁接触器12aがオン状態で電磁接触器12bがオフ状態の経過時間tx内にヒューズ14が溶断する。この結果、過電圧がサーボアンプ18に印加されることが防止される。以上の点を除き、変形例2は本実施形態と実質的な相違はないので、詳細な説明を省略する。
【0054】
(他の変形例)
実施形態および変形例では、サーボアンプ18、32は制御装置10に含まれている。これに対して、駆動装置(サーボアンプ18、32)を制御装置10から切り離し、制御装置10からサーボアンプ18に対して、昇圧トランス16で昇圧された電圧V2を印加してもよい。
【0055】
[変形実施形態]
本発明についての実施形態および変形例を説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0056】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0057】
〔1〕制御装置(10)は、外部電源(PS)を用いて、少なくともモータ(M)の駆動を制御する制御装置であって、前記外部電源と、前記外部電源からの電力を用いて前記モータを駆動するモータ駆動装置(サーボアンプ18)との間に設けられ、前記外部電源と前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第1スイッチ(電磁接触器12a)と、前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との間に設けられ、前記第1スイッチと前記モータ駆動装置との接続のオンオフを切り替える第2スイッチ(電磁接触器12b)と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間に設けられたヒューズ(14)と、前記ヒューズと前記第2スイッチとの間に設けられた昇圧トランス(16)と、前記第1スイッチを制御してオンにさせた後、所定時間(時間tx)経過後に前記第2スイッチを制御してオンにさせる制御部(20)と、を備える。前記所定時間は、電圧が第1電圧(電圧V1)より高い第2電圧(電圧V2)の前記外部電源から電力が供給された際に前記ヒューズが溶断して切断するのに要する時間(時間ty)より長い。これにより、第2電圧の外部電源から電力が供給された場合に、モータ駆動装置を過電圧から保護することができる。
【0058】
〔2〕前記昇圧トランスは、前記第1電圧の前記外部電源から供給された電力を前記第2電圧に昇圧して前記モータ駆動装置に供給するものである。これにより、第1電圧の外部電源を用いて、第2電圧を定格とするモータ駆動装置を動作させることができる。
【0059】
〔3〕前記モータ駆動装置を備え、前記制御装置は、前記モータ駆動装置を制御することで、前記モータの駆動を制御する。これにより、制御装置が備えるモータ駆動装置を過電圧から保護することができる。
【0060】
〔4〕前記モータは、多軸多関節ロボットを動かすためのモータである。これにより、多軸多関節ロボットを制御できる。
【符号の説明】
【0061】
10…制御装置 12a、12b…電磁接触器
14…ヒューズ 16…昇圧トランス
18…サーボアンプ 20…制御部
30…機械装置 122…コイル部
124、126…接触子 M…モータ
PS…外部電源