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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】画像表示素子
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240709BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 33/20 20100101ALI20240709BHJP
   H01L 33/38 20100101ALI20240709BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 349D
G09F9/33
H01L33/20
H01L33/38
H01L33/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020200338
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088085
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】319006036
【氏名又は名称】シャープ福山レーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】山口 真司
(72)【発明者】
【氏名】地主 修
(72)【発明者】
【氏名】桃谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】三上 恭平
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111725251(CN,A)
【文献】国際公開第2019/053923(WO,A1)
【文献】特開2005-322847(JP,A)
【文献】特開2020-088383(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111403430(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0035748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/30-9/46
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画素領域と、前記画素領域の外側に設けられた接続領域とを有する画像表示素子であって、
前記画素領域において複数の発光素子がアレイ状に配置された発光ユニットと、
前記発光ユニットと対向するように配置され、前記複数の発光素子を駆動する駆動回路基板と、を備え、
前記発光ユニットは、前記画素領域および前記接続領域に、第2導電層と、発光層と、第1導電層とが積層された半導体層を有し、前記画素領域内では、前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなる複数のメサ形状を有し、前記接続領域内では、前記半導体層に形成された溝によって前記メサ形状と隔てられた段部を有し、
各前記メサ形状の前記第1導電層には、第1電極が接続しており、
前記第1電極は、前記駆動回路基板の前記発光ユニットに対向する対向面に設けられた第1駆動電極と接続し、
前記発光ユニットは、
隣り合う前記メサ形状の間には、当該メサ形状の第2導電層との間で導電経路を形成する配線層であって、前記半導体層における前記メサ形状の部分の層厚よりも薄い配線層を更に有し、
前記配線層は、前記段部の上まで延設されており、当該段部の上に設けられた共通第2電極に接続されており、
前記共通第2電極は、前記駆動回路基板の前記対向面に設けられた第2駆動電極と接続しており
前記画素領域内では、前記複数のメサ形状が、前記第2導電層を層厚方向に一部分を残して前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなり、
前記接続領域内では、前記段部が、前記第2導電層を層厚方向に一部分を残して前記半導体層に形成された前記溝によって前記メサ形状と隔てられており、
前記配線層は、前記第2導電層の前記一部分と接続している、
ことを特徴とする画像表示素子。
【請求項2】
画像を表示する画素領域と、前記画素領域の外側に設けられた接続領域とを有する画像表示素子であって、
前記画素領域において複数の発光素子がアレイ状に配置された発光ユニットと、
前記発光ユニットと対向するように配置され、前記複数の発光素子を駆動する駆動回路基板と、を備え、
前記発光ユニットは、前記画素領域および前記接続領域に、第2導電層と、発光層と、第1導電層とが積層された半導体層を有し、前記画素領域内では、前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなる複数のメサ形状を有し、前記接続領域内では、前記半導体層に形成された溝によって前記メサ形状と隔てられた段部を有し、
各前記メサ形状の前記第1導電層には、第1電極が接続しており、
前記第1電極は、前記駆動回路基板の前記発光ユニットに対向する対向面に設けられた第1駆動電極と接続し、
前記発光ユニットは、
隣り合う前記メサ形状の間には、当該メサ形状の第2導電層との間で導電経路を形成する配線層であって、前記半導体層における前記メサ形状の部分の層厚よりも薄い配線層を更に有し、
前記配線層は、前記段部の上まで延設されており、当該段部の上に設けられた共通第2電極に接続されており、
前記共通第2電極は、前記駆動回路基板の前記対向面に設けられた第2駆動電極と接続しており
前記画素領域内では、前記メサ形状同士が前記第2導電層によって繋がっておらず、前記半導体層は前記発光素子毎に分断されており、
前記接続領域内では、前記溝によって前記半導体層が層厚方向に分断されており、
前記配線層は、前記メサ形状の前記第2導電層の側面と接続する、
ことを特徴とする画像表示素子。
【請求項3】
前記配線層の長手方向に沿った端部は、前記メサ形状の側壁の壁面に沿ってせり上がっており、
隣り合う前記メサ形状と、当該隣り合う前記メサ形状の間に配されている前記配線層とを当該配線層の短手方向に沿って切断したとき、当該配線層の切断面は、前記駆動回路基板に向かって開口した凹形状を有している、
ことを特徴とする請求項に記載の画像表示素子。
【請求項4】
前記配線層と、前記メサ形状に構成される前記半導体層との間には、保護膜が形成されている、
ことを特徴とする請求項に記載の画像表示素子。
【請求項5】
前記第1電極と、前記共通第2電極とは、同一の電極材料から形成されている、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の画像表示素子。
【請求項6】
前記第1電極における前記第1駆動電極との接続面の位置と、前記共通第2電極における前記第2駆動電極との接続面の位置とは、同一平面上にある、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の画像表示素子。
【請求項7】
前記メサ形状の前記第1導電層と、前記段部の前記第1導電層とは、層厚が等しく、
前記メサ形状の前記発光層と、前記段部の前記発光層とは、層厚が等しく、
前記メサ形状の前記第2導電層と、前記段部の前記第2導電層とは、層厚が等しい、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の画像表示素子。
【請求項8】
前記配線層は、金(Au)よりも高反射率を有する光反射材料によって構成される、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の画像表示素子。
【請求項9】
前記画素領域内に構成される前記発光素子のアレイは、m行×n列の並びで、一定のピッチで配列しており、
行方向の奇数列が偶数列の並びに対して、前記ピッチ×1/2ずれて並んでいる、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の画像表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示素子に関し、より詳細には、マイクロ発光素子を備えた画像表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
画素を構成するマイクロ発光素子を駆動回路基板上にアレイ状に複数備えた表示素子が知られている。このような表示素子は、小型でありながら、輝度が高く、耐久性も高いという特性を有している。このため、眼鏡型端末や、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等の表示装置用の表示素子として実装されている。
【0003】
また、マイクロLEDをアレイ状に備えた表示素子の表面には、光取出し効率向上のため、多数のマイクロメサ構造が形成されていることが知られている。このような表示素子では、マイクロLEDのアレイ内でカソード電極を配置する態様があるが、カソード電極の面積ほど発光面積が小さいといった問題や、画素領域が大きいといった問題がある。そこで、このような問題に対し、アレイ外でカソード電極を配置する態様が提案されている(特許文献1および2)。さらに、光取り出し効率の改善のために、メサ間のスペースを反射率の高い材料によって埋めるという手法も提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許公開公報US2018/308420A1
【文献】米国特許公開公報US2020/152693A1
【非特許文献】
【0005】
【文献】Francois Olivier, Anis Daami, Ludovic Dupre, Franck Henry, Bernard Aventurier, Francois Templier, "Investigation and Improvement of 10μm Pixel-pitch GaN-based Micro-LED Arrays with Very High Brightness", SID 2017 DIGEST, P353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アレイ外にカソード電極を配置することで、アレイ内でカソード電極を配置する態様と比較して光源の品位を向上させることができる。しかしながら、アレイ外でカソード電極を配置している特許文献1および2の態様では、画素領域内に配置される共通カソード構造の抵抗が光源品質向上の妨げになっていることが懸念される。
【0007】
また、非特許文献1のようにメサ間のスペースを反射率の高い材料で埋める態様では、発光素子の反りの原因となるおそれがある。
【0008】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みて為されたものであり、高い光源品位を備えたマイクロ発光素子を備えた画像表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像表示素子は、画像を表示する画素領域と、前記画素領域の外側に設けられた接続領域とを有する画像表示素子であって、前記画素領域において複数の発光素子がアレイ状に配置された発光ユニットと、前記発光ユニットと対向するように配置され、前記複数の発光素子を駆動する駆動回路基板と、を備え、前記発光ユニットは、前記画素領域および前記接続領域に、第2導電層と、発光層と、第1導電層とが積層された半導体層を有し、前記画素領域内では、前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなる複数のメサ形状を有し、前記接続領域内では、前記半導体層に形成された溝によって前記メサ形状と隔てられた段部を有し、各前記メサ形状の前記第1導電層には、第1電極が接続しており、前記第1電極は、前記駆動回路基板の前記発光ユニットに対向する対向面に設けられた第1駆動電極と接続し、前記発光ユニットは、隣り合う前記メサ形状の間には、当該メサ形状の第2導電層との間で導電経路を形成する配線層であって、前記半導体層における前記メサ形状の部分の層厚よりも薄い配線層を更に有し、前記配線層は、前記段部の上まで延設されており、当該段部の上に設けられた共通第2電極に接続されており、前記共通第2電極は、前記駆動回路基板の前記対向面に設けられた第2駆動電極と接続している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、高い光源品位を備えたマイクロ発光素子を備えた画像表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示素子の上面図である。
図2図1に示す画像表示素子の一部分における構成を示す分解斜視図である。
図3図1および図2に示す切断線B-B´における画像表示素子に具備される発光ユニットの画素領域の矢視断面図である。
図4図1および図2に示す切断線B-B´における画像表示素子に具備される発光ユニットの接続領域の矢視断面図である。
図5図1および図2に示す切断線B-B´における画像表示素子の矢視断面図である。
図6図1に示す画像表示素子に具備される発光ユニットの製造方法を説明するフロー図である。
図7図6に示すフローに対応する発光ユニットの製造工程を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る画像表示素子の部分断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る画像表示素子の部分断面図である。
図10図9に示す画像表示素子に具備される発光ユニットの製造方法を説明するフロー図である。
図11図10に示すフローに対応する発光ユニットの製造工程を示す断面図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る画像表示素子に具備される発光ユニットの部分上面図である。
図13図12に示す発光ユニットの製造過程の途中の部分断面図である。
図14】本発明の第5実施形態に係る画像表示素子に具備される発光ユニットの部分上面図である。
図15】本発明の第6実施形態に係る画像表示素子に具備される発光ユニットの部分上面図である。
図16】本発明の第7実施形態に係る画像表示素子に具備される発光ユニットの製造方法を説明するフロー図である。
図17】本発明の第7実施形態に係る画像表示素子に具備される発光ユニットの部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る画像表示素子の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(1)画像表示素子の構成
図1は、本実施形態の画像表示素子3の上面図である。図2は、図1に示す領域A内における画像表示素子3の構成を示す分解斜視図である。なお、各構成要素の設置数については、図示する数に限らない。
【0014】
画像表示素子3は、マイクロLEDユニットを光源として搭載する画像表示素子である。そのため、画像表示素子3は、図2に示すように、複数のマイクロLEDチップ(発光素子100)がアレイ状に配設された発光ユニット200と、発光ユニット200と対向するように配置され、複数の発光素子100を駆動する駆動回路基板50とを備える。
【0015】
図1に示す上面視において、画像表示素子3は、中央に設けられた画素領域1と、画素領域1の外側に設けられた接続領域2とを有する。画素領域1では、複数の発光素子100がアレイ状に配設されており、駆動回路基板50の発光ユニット200との対向面には、各発光素子100に設けられたP電極30(第1電極)と接続するアノード電極51(第1駆動電極)が設けられている。接続領域2では、複数の発光素子100に共通する共通第2電極32(N電極)が配設されており、駆動回路基板50の発光ユニット200との対向面には、共通第2電極32と接続するカソード電極52(第2駆動電極)が設けられている。
【0016】
更に、本実施形態の画像表示素子3は、発光ユニット200に構成される積層構造の半導体層13が、画素領域1では複数のメサ形状113を形成し、接続領域2では段部213を形成している。そして、詳細は後述するが、複数のメサ形状113の各々が発光素子100を構成しており、各メサ形状の上にP電極30が形成されている。一方、段部213の上には、共通第2電極32が形成されている。また、メサ形状113間に延設されており、半導体層13の第2導電層10(N型層)と接続する配線層31が設けられており、配線層31は、共通第2電極32に接続している。
【0017】
なお、画像表示素子3には、図1に示すように接続領域2の外側にマーク領域4が設けられている。マーク領域4は、例えば、発光素子100と駆動回路基板50とを張り合わせる際に位置合わせに使用するマークであり、発光素子100の複数のアレイについて、その座標を示すためのマークであってもよい。
【0018】
画像表示素子3は、発光素子100が発する光が、駆動回路基板50とは反対側に出射する構成である。なお、光の出射側に波長変換層や、光拡散層、カラーフィルター等を有していても良いが、本発明とは直接関係しないため、説明を省略し、図示もしない。
【0019】
以下、発光ユニット200と、駆動回路基板50とについて、詳述する。
【0020】
(2)発光ユニット
図3および図4は、図1および図2に示す切断線B-B’における矢視断面図であり、図3が画素領域1の断面、図4が接続領域2の断面を示す。なお、説明の便宜上、図3および図4では、駆動回路基板50の図示を省略する。
【0021】
先述のように、発光ユニット200は、先述の画素領域1および前記接続領域2に、第2導電層10と、発光層11と、第1導電層12とが積層された半導体層13を有する。
【0022】
<半導体層13>
半導体層13は、第2導電層10と、発光層11と、第1導電層12とが積層されてなる。
【0023】
図3に示す画素領域1内では、第2導電層10を層厚方向に一部分を残して半導体層13を発光素子100毎に分割してなる複数のメサ形状を有する。すなわち、第2導電層10は、層厚方向に沿って2つの領域から構成されており、光出射側の領域10aは、画素領域1全体に渡って連続して繋がっている。一方、光出射側の領域10aと隣り合うもう一つの領域10bは、複数のメサ形状113に構成されている。メサ形状113同士は所定の間隔を有しており、アレイを構成している。
【0024】
各メサ形状113の第1導電層12に、Pコンタクト膜14を介してP電極30が接続している。
【0025】
半導体層13は、GaN等の窒化物半導体から構成される。具体的には、第2導電層10は、N型層とすることができ、周知の多層構造よりなるN型層を採用することができる。発光層11は、InGaN層やGaN層からなる多重量子井戸層を含む。第1導電層12は、P型層とすることができ、周知の多層構造よりなるP型層を採用することができる。
【0026】
各メサ形状113は、P電極30におけるアノード電極51との接続部分を除いて、保護膜18によって覆われている。具体的には、層厚方向に広がるメサ形状113の側面と、メサ形状113の第1導電層12側の端部とには、絶縁材料からなる保護膜18が形成されている。一方、図3に示すように、隣り合う2つのメサ形状113の間にある第2導電層10の光出射側の領域10aの表面には、保護膜18は形成されていない。
【0027】
図4に示す接続領域2内に設けられた段部213は、第2導電層10を層厚方向に一部分を残して半導体層13に形成された溝61によってメサ形状113と隔てられている。要するに、段部213を構成する積層構造は、メサ形状113を構成する積層構造と同じである。接続領域2においても、先述の画素領域1の第2導電層10の光出射側の領域10aが連続しており、溝61の底面が、光出射側の領域10aの表面によって構成されている。溝61の底面は、光出射側の領域10aの表面と層厚方向に沿って同じ高さ(位置)にある。要するに、段部213の積層(層厚)方向の長さ(段部213の高さ)は、メサ形状113の積層(層厚)の長さ(メサ形状113の高さ)と等しい。
【0028】
段部213は、画素領域1の端辺に沿って細長く設けられており、その長手方向の長さは、上面視において四角形の画素領域1の端辺と、略同じ長さを有する。溝61も、画素領域1の端辺に沿って設けられている。
【0029】
段部213の第1導電層12の上には、共通第2電極32が形成されている。なお、第1導電層12と共通第2電極32との間、および段部213の側面には、コンタクト膜15が設けられている。コンタクト膜15は、P電極30の下に形成されるPコンタクト膜14と同一材料、同一工程で形成される膜である。なお、コンタクト膜15は共通第2電極32には必須ではないが、共通第2電極32と第1導電層12との密着力の向上等の観点から、形成されることが望ましい。
【0030】
段部213は、コンタクト膜15を除く上面と、側面とが、保護膜18によって覆われている。保護膜18は、先述の保護膜18と同一材料から構成される。具体的には、SiO、SiN等がある。
【0031】
<P電極30>
P電極30は、図1および図2に示すように、上面視において、各メサ形状113の上面よりも小さいサイズである。
【0032】
<共通第2電極32>
共通第2電極32は、図1および図2に示すように、上面視において、段部213の上面において、当該上面より小さいサイズで帯状に形成されている。また、上面視においては、共通第2電極32のサイズは、P電極30のサイズよりも大きい。サイズが大きいことにより、駆動回路基板50のカソード電極52との位置合わせが容易である。共通第2電極32は、1箇所において配線層31と接続している。換言すれば、1つの共通第2電極32に対して、1つの配線層31が設けられている。しかしながら、これに限定されず、1つの共通第2電極32に対して、複数本の配線層31が設けられていてもよい。また、共通第2電極32は段部213の上面よりサイズが大きくてもよい。例えば、段部213を覆うかたちで設けられていてもよい。
【0033】
ここで、共通第2電極32とP電極30とは、層厚方向に沿って同じ高さ(位置)にある。すなわち、共通第2電極32における前記第2駆動電極との接続面の位置と、P電極30における第1駆動電極との接続面の位置とは、同一平面内にある。換言すれば、メサ形状113と段部213とは同じ高さ(層厚)を有する。このように共通第2電極32とP電極30とが同じ高さにあることにより、駆動回路基板側の電極とのコンタクトに不具合を生じさせないというメリットを有する。
【0034】
<配線層31>
配線層31は、画素領域1内においては画素領域1の端辺に至るまでメサ形状113間に延設されている。更に、画素領域1の端辺から溝61に延びて接続領域2内に入り、段部213の側面を上るように延設されており、段部213の上の共通第2電極32と接続している。
【0035】
ここで、アレイ状に配置された複数のメサ形状113は、図1および図2に示すように、行方向に等間隔で配列しているとともに、列方向に等間隔で配列しており、行方向に沿って配列し、列方向に沿って配列している。そのため、配線層31は、図1および図2に示すように、行方向および列方向に沿って延設されている。換言すれば、配線層31は、上面視において格子状に形成されている。なお、本実施形態の配線層31の態様に限らず、後述する実施形態で説明するように、メサ形状が千鳥配置されており、行方向、または列方向どちらか一方に配線層31が配される態様であってもよい。
【0036】
配線層31は、図3および図4に示すように、第2導電層10の一部分と接続する。具体的には、配線層31は、第2導電層10の光出射側の領域10aの表面に接続している。配線層31は、共通第2電極32と同一の導電性材料から構成される。そのため、配線層31と第2導電層10とは電気的に接続されており、駆動回路基板50(図2)のアノード電極51に接続したP電極30からメサ形状113に入った電流は、第2導電層10の光出射側の領域10aと、配線層31とを通り、共通第2電極32まで到達する。このように、本実施形態では、アレイ外で共通第2電極を有する構成であっても、配線層31が抵抗低減に寄与し、配線層31が無い構成に比べて、光源品位を向上させることができる。また、配線層31と共通第2電極32とが同一の導電性材料から構成されることにより、同じタイミングで形成することができ、プロセスがより簡易にできるというメリットがある。なお、配線層31は、段部213の側面に配された保護膜18上に設けられている。
【0037】
ここで、P電極30と、共通第2電極32と、配線層31とは、同一の導電材料から構成することができる。例えば、Au(金)により構成することができるほか、Al(アルミ)あるいはAg(銀)などのAu(金)より光反射率の高い材料で配線層31を形成すれば、発光ユニット200の光取出し効率をより一層向上させることができる。
【0038】
配線層31の層厚は、図3に示すように、メサ形状113の層厚よりも薄い。換言すれば、配線層31の、第2導電層10の光出射側の領域10aの表面に接する面とは反対側の面(以下、駆動回路基板側の面と称する)は、メサ形状113の上面よりも光出射側に下がった位置にある。本実施形態では、配線層31の層厚は、メサ形状113に構成される第2導電層10の領域10bの層厚よりも薄い。また、図3に示すように、メサ形状113間の配線層31の駆動回路基板側の面は、フラットである。換言すれば、隣り合うメサ形状113の間にある素子分離溝60は、溝の底面(第2導電層10の光出射側の領域10aにおける駆動回路基板50に近い側の表面)に配線層31が配されることにより溝の深さが浅くなっているものの、メサ形状113間に残存している。
【0039】
配線層31の上には、保護膜18が設けられている。保護膜18は、先述の保護膜18と同一材料から構成することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の発光ユニット200は、メサ形状113間に配した配線層31が、抵抗の低減に寄与し、共通第2電極32をアレイ外に設けても、良好な光源品位を実現することができる。
【0041】
図5は、図3および図4に示した発光ユニット200の断面とともに、駆動回路基板50の断面を示している。先述のように、発光ユニット200の共通第2電極32とP電極30の各々の上面は、層厚方向に沿って同じ高さ(位置)にある。そのため、駆動回路基板のアノード電極51とカソード電極52と良好なコンタクトを実現することができる。
【0042】
(3)駆動回路基板
駆動回路基板50は、図2に示すように、アノード電極51とカソード電極52が片面に設けられている。アノード電極51は、各メサ形状上のP電極30に対応して、中央の画素領域においてアレイ状に配置している。一方、カソード電極52は、共通第2電極32に対向する位置に設けられている。なお、ここで説明している以外の駆動回路基板50の具体的構成については、周知の構成を採用することができる。
【0043】
(4)発光ユニット200の製造方法
次に、発光ユニット200の製造方法について、図6および図7を用いて説明する。図6は、発光ユニット200の製造過程を示すフロー図であり、図7は、製造過程を示す発光ユニット200の断面図である。
【0044】
まず、サファイアやSiC、あるいはSi等を素材として構成される成長基板9を準備し、成長基板9の上に、MOCVD装置によって、GaN等の半導体層を成長させる(図6のステップS1、図7の(a))。具体的には、まず、N型層である第2導電層10を成長させ、次いで発光層11、更にP型層である第1導電層12を成長させる。第2導電層10の層厚は、一般的に10μm以下であり、特に3μm以上7μm以下であることが好ましい。発光層11の層厚は、一般的に10nm以上200nm以下であり、特に50nm以上100nm以下であることが好ましい。第1導電層12の層厚は、一般的に50nm以上1000nm以下であり、特に100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0045】
次に、図7の(b)に示す様に、第1導電層12の上に、コンタクト膜(Pコンタクト膜14、コンタクト膜15)を形成する(図6のステップS2)。後にメサ形状113となる部分の上面に形成されるPコンタクト膜14としては、第1導電層12との接触抵抗が低く、半導体層13との界面での光反射率が高い材料が好ましい。Pd(パラジウム)やNi(ニッケル)の様な金属が好ましい。Pコンタクト膜14の膜厚は、10nm以上500nm以下が好ましい。一方、後に段部213となる部分の上面に形成されるコンタクト膜15にも、パラジウム(Pd)やNi(ニッケル)を、500nm~1000nm程度の膜厚で成膜する(図7の(b))。
【0046】
次に、図7の(c)に示す様に、画素領域1では発光素子100の外周部に素子分離溝60を形成する。同時に画素領域1と接続領域2との境界位置に溝61を形成する(図6のステップS3)。これらの溝の形成は、通常のフォトリソグラフィ工程によって、素子分離溝60、溝61に開口部を有するレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置によって、第2導電層10の一部分を残して半導体層13をエッチングすることで形成する。このエッチングの際に、素子分離溝60、溝61の側壁には傾斜を設けることが望ましく、傾斜の角度により光取り出し効率をより大きくすることができる。一方で、傾斜が大きいと、1つのメサ形状(=サブピクセル)に必要な面積が大きくなり、微細化ができなくなる。そこで、これら溝の側壁(メサ形状の側面)が半導体層13の表面となす角度をθとすると、θは60度程度を最小とし、θ>70度程度が好ましい。また、溝61の溝幅は、素子分離溝60の溝幅と同じか、それより大きいことが好ましい。以上により、メサ形状113と段部213が形成される。要するに、メサ形状113の第1導電層12と、段部213の第1導電層12とは、同一材料からなり、メサ形状113の発光層11と、段部213の発光層11とは、同一材料からなり、メサ形状113の第2導電層10と、段部213の第2導電層10とは、同一材料からなる。また、メサ形状113の第1導電層12と、段部213の第1導電層12とは、層厚が等しく、メサ形状113の発光層11と、段部213の発光層11とは、層厚が等しく、メサ形状113の第2導電層10と、段部213の第2導電層10とは、層厚が等しい。
【0047】
次に、保護膜18を形成する。これにより、メサ形状113の側面と段部213の側面に保護膜18が形成される(図6のステップS4、図7の(d))。
【0048】
次に、ステップS3で形成した保護膜18のエッチングを行い、メサ形状113の上面の一部分と、段部213の上面の一部分と、素子分離溝60および溝61の底面に、ビア24a、24b、24cを形成する(図6のステップS5、図7の(e))。
【0049】
次に、図7の(f)に示すように、ビア24a、24b、24cに導電材料を堆積させて、P電極30、共通第2電極32、および配線層31を形成する(図6のステップS6)。P電極30と、共通第2電極32と、配線層31とは、同一の電極材料からなる。そのため、P電極30、共通第2電極32、および配線層31は、同時形成できる。なお、メサ形状113の上面のビア24a、および段部213の上面のビア24bには、先に形成したコンタクト膜(Pコンタクト膜14、コンタクト膜15)がある。電極はTi/Auで形成し、NGaNとはTiがコンタクトを取るためNGaN-Ti-Au、PGaN上は、PGaN-Pd-Ti-Auの構成とすることができる。
【0050】
図7の(f)に示すビア24a、24b、24cへの導電材料の堆積方法には、蒸着やスパッタ法を用いる。P電極30、共通第2電極32、および配線層31の層厚としては、先に形成した保護膜18よりも厚く成膜する必要がある。例えば、保護膜18の膜厚を0.1μm程度とする場合、0.2μm~0.8μm程度の厚さで形成する。
【0051】
このように、本実施形態によれば、P電極30、共通第2電極32、および配線層31を容易なプロセスで形成することができる。例えば比較構成として、メサ形状とメサ形状との間の溝を配線層の材料によって完全に埋め尽くす構成を例に挙げる。この比較構成の例では、当該溝を埋める必要があり、P電極と、共通第2電極とを同じタイミングで形成することができず、製造プロセスが複雑である。これに対し、本実施形態の構成であれば、P電極と、共通第2電極とを同じタイミングで形成することができる。配線層31と、メサ形状113を構成する半導体層の側面との間には、保護膜が形成されている。
【0052】
次に、図7の(g)に示すように、P電極30および共通第2電極32の各々の上面およびその近傍を除いて、保護膜18を形成する(図6のステップS7)。以上により発光ユニット200が形成される。なお、ステップS7は、省略可能である。
【0053】
(5)画像表示素子3の製造方法
本実施形態の画像表示素子3は、以上の製造フローで製造された発光ユニット200のP電極30の上面に、駆動回路基板50のアノード電極をコンタクトさせ、共通第2電極32の上面に、駆動回路基板50のカソード電極をコンタクトさせることによって製造できる。
【0054】
(6)本実施形態の作用効果
本実施形態の画像表示素子によれば、発光素子がアレイ状に配置された画素領域の外において、発光素子のN電極にあたる共通第2電極を設けている。アレイ内において透明電極を用いてN電極を形成する場合には、クロストークの要因になる可能性があり、光源品位への影響が考えられる。しかしながら、本実施形態のようにアレイ外でカソード接続する構成とすることにより、光源としての品質向上と、光取り出し効率の改善とを実現することができる。
【0055】
また、メサ形状間に設けた配線層が、抵抗低減層として機能することからも、光源としての品質向上を実現できる。
【0056】
また、メサ構造同士の間のスペースを反射率の高い材料で埋めるという手法では、製造方法が複雑であり、且つ発光素子に反りを生じさせるおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、配線層が、メサ形状間の溝を完全に埋めるかたちでなく、配線層の駆動回路基板側の表面がメサ形状の上面よりも低い位置(駆動回路基板から離れた位置)にある。しかしながら、本実施形態では、素子分離溝の底面に接して素子分離溝の一部分のみに配線層を設けていることから、溝を完全に埋める構成に比べて発光素子(発光ユニット)の反りの抑制を実現できる。また、メサ形状間の溝を配線層材料によって完全に埋めている態様の製造プロセスに比べて、容易なプロセスで発光ユニットを形成することができるというメリットもある。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0058】
図8は、本実施形態の画像表示素子の断面図である。図8は、実施形態1の図5の断面図に対応している。
【0059】
本実施形態と実施形態1との相違点は、配線層31の形状にある。具体的には、本実施形態では、配線層31Aの長手方向に沿った端部31aは、メサ形状113の側壁113aの壁面に沿ってせり上がっている。そして、隣り合うメサ形状113と、当該隣り合うメサ形状113の間に配されている配線層31Aとを当該配線層31Aの短手方向に沿って切断したとき、配線層31Aの切断面は、駆動回路基板50に向かって開口した凹形状を有している。なお、端部31aと、メサ形状113の側壁113aとの間には、保護膜18が設けられており、配線層31Aは第2導電層10の光出射側の領域10aの上面と、電気的に接続している。
【0060】
実施形態1の配線層31は、上面がフラットであった。これに対し、本実施形態の配線層31Aは、上面が、メサ形状113と隣り合う端部31aにおいてメサ形状113の上面に向かって突出していて、メサ形状113とメサ形状113の間が窪んだ、断面凹型になっている。要するに、本実施形態の配線層31は、メサ形状113間の素子分離溝を完全に埋めているのではなく、メサ形状にならうように、メサ形状113の起伏に沿って、メサ形状113とメサ形状113との間の素子分離溝の壁面(底面も含む)を被覆した形状を有している。
【0061】
本実施形態の配線層31Aは、実施形態1において説明した製造方法を用いて製造することができる。
【0062】
本実施形態の発光ユニットも、実施形態1と同じ効果を奏する。加えて、配線層31Aを高反射率の材料で形成すれば、発光素子の光取り出し効率を上げる効果が期待できる。これは、メサ形状の外に出ていく光を配線層31Aで反射させて直上へ持ち上げられるためである。
【0063】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0064】
図9は、本実施形態の画像表示素子3Aの断面図である。図9は、実施形態1の図5の断面図に対応している。
【0065】
本実施形態と実施形態1との相違点は、半導体層13と、配線層31Bの形状にある。具体的には、本実施形態の発光ユニット200Aは、画素領域1内では、メサ形状113同士が第2導電層10によって繋がっておらず、半導体層13は発光素子100毎に分断されている。また、接続領域2内では、溝61によって半導体層13が層厚方向に完全に分断されており、配線層31Bは、メサ形状113の第2導電層10の側面10cと接続している。以下、図9を用いて説明する。
【0066】
(1)発光ユニット
発光ユニット200は、実施形態1のように各メサ形状113が互いに第2導電層10の光出射側の領域10a(図3および図5)によって繋がっている態様とは異なり、メサ形状113が構造的に独立している。これは、画素領域1内において半導体層13に形成される素子分離溝60Aが、第2導電層10を層厚方向に完全に分断していることによる。
【0067】
また、接続領域2と画素領域1との間の溝61Aも、実施形態1の溝61とは異なり、第2導電層10を層厚方向に完全に分断して設けられている。
【0068】
本実施形態では、配線層31Bが、メサ形状113の第2導電層10の側面10cと接続する。図9に示すように、隣り合うメサ形状113の第2導電層10の側面10c同士を、配線層31Bが接続した状態となっている。これにより、第2導電層10と配線層31Bとの間で導電経路が形成される。
【0069】
配線層31Bは、メサ形状113に構成される第2導電層10の側面10cの全長よりも短い長さにおいて側面10cと接続している。具体的には、第2導電層10の側面10cの全長のうちの(メサ形状113の下端から)8割、好ましくは9割程度の長さに配線層31Bが接触しているとよい。また、プロセスマージンも含めると、第2導電層10の側面10cの全長のうちの(メサ形状113の下端から)8割、好ましくは9割程度の長さに配線層31Bが接触しているとよい。換言すれば、第2導電層10の側面10cの全長の大部分に、配線層31Bが接触している。これにより、発光素子の光取り出し効率を高めることが可能となる。
【0070】
また、配線層31Bにおけるメサ形状113の間の領域では、配線層31Bの層厚が、メサ形状113を構成する半導体層13の層厚よりも薄い。具体的には、配線層31Bにおけるメサ形状113の間の領域の層厚は、共通第2電極32の層厚と同一となっている。
【0071】
本実施形態の画像表示素子3Aによれば、発光ユニット200Aは、配線層31Bが、メサ形状113に構成される第2導電層10の側面10cと接続されている。この接続部分において配線層31Bと第2導電層10とは電気的に接続しており、駆動回路基板50のアノード電極51に接続したP電極30からメサ形状113に入った電流は、第2導電層10の側面10cから配線層31を通って共通第2電極32まで到達する。このように、本実施形態であっても実施形態1と同様に、アレイ外で共通第2電極を有する構成において配線層31Bが抵抗低減に寄与し、配線層31Bが無い構成に比べて、光源品位を向上させることができる。
【0072】
(2)発光ユニットの製造方法
【0073】
次に、発光ユニット200Aの製造方法について、図10および図11を用いて説明する。図9は、発光ユニット200Aの製造過程を示すフロー図であり、図11は、製造過程を示す発光ユニット200Aの断面図である。
【0074】
まず、サファイアやSiC、あるいはSi等を素材として構成される成長基板9を準備し、成長基板9の上に、MOCVD装置によって、GaN等の半導体層13を成長させる(図10のステップS11、図11の(a))。このステップS11は、実施形態1で説明したステップS1と同じである。
【0075】
次に、第1導電層12の上に、コンタクト膜(Pコンタクト膜14、コンタクト膜15)を形成する(図10のステップS12、図11の(b))。このステップS12は、実施形態1で説明したステップS2と同じである。
【0076】
次に、図11の(c)に示す様に、画素領域1では発光素子100の外周部に素子分離溝60を形成する。同時に画素領域1と接続領域2との境界位置に溝61を形成する(図10のステップS13)。これらの溝の形成は、通常のフォトリソグラフィ工程によって、素子分離溝60、溝61に開口部を有するレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置によって、半導体層13をエッチングする。このとき、成長基板9の界面まで削ってしまう(不図示)。
【0077】
続いて、保護膜18の形成ステップ(図10のステップS14)、ビアの形成ステップ(図10のステップS15)、P電極30、共通第2電極32、および配線層31Bの形成ステップ(図10のステップS16)と進む。これらの各ステップは、実施形態1の図6のステップS4、ステップS5、ステップS6と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0078】
最後に、実施形態1の図6のステップS7と同様に、P電極30および共通第2電極32の各々の上面およびその近傍を除いて、保護膜18を形成する(不図示)。以上により発光ユニット200Aが形成される。
【0079】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
図12は、本実施形態の画像表示素子の発光ユニット200Bの部分上面図である。図13は、本実施形態の発光ユニット200Bの製造過程の途中の構造を示す部分断面図である。
【0081】
上述の実施形態1では、図1および図2に示すように、複数の発光素子100(複数のメサ形状113)が、四角形の画素領域1の端辺に沿って例えばm行×n列の並びで一定のピッチで整然と並んでいる。これに関し、本実施形態の発光ユニット200Bも、複数の発光素子100(複数のメサ形状113)がm行×n列の並びで一定のピッチで配列している。一方で、本実施形態の発光ユニット200Bでは、行方向の奇数列が偶数列の並びに対してピッチ×1/2ずれて並んでいる点において、実施形態1と相違している。
【0082】
ところで、本実施形態の発光ユニット200Bは、メサ形状113の形成工程において半導体層に溝を形成する際に、図13に示すように、メサ形状の下端の境界よりも深い箇所まで溝が形成される場合がある。このように、メサ形状とメサ形状との間に形成された素子分離溝60の形状が、後工程で形成される配線層31に影響を与え得る不都合な形状となる場合がある。ここで、実施形態1のように複数の発光素子100(複数のメサ形状113)のアレイがピッチをずらしていない場合には、その影響が、隣り合うメサ形状113の間に配された配線層31における一方のメサ形状113側の端部と、他方のメサ形状113側の端部との双方に及ぶおそれがある。一方、図12に示すようにピッチをずらして千鳥配置とすることにより、その影響を、1/2ピッチごとに配線層31の片方の端部のみに限定することができる。これにより、配線層31の断線等の不具合の発生を低減できる。
【0083】
〔実施形態5〕
上述の実施形態1では、図7の(e)に示すように、段部213の側面に保護膜18がある。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。以下に、実施形態1の変形例として、実施形態5を説明する。
【0084】
図14は、本実施形態の発光ユニットの製造過程の一部を示す断面図である。図14の(e)´は、図7の(e)に対応し、図14の(f)´は、図7の(f)に対応する。図14は、段部213の側面に保護膜18がない点において、図7の構成と相違している。要するに、ビアを形成するステップS5において、本実施形態では、段部213の側面からも、保護膜18を除去する。
【0085】
図14の(e)´に示す状態から、ステップS6として、実施形態1の図6のステップS6と同様に、P電極30、共通第2電極32、および配線層31を形成する。
【0086】
本実施形態の製造方法によれば、接続領域の保護膜を取り除くため、PNショートの状態である。接続領域は、アレイ内の発光素子のN側電極であるため、ショート状態でも問題ない。
【0087】
〔実施形態6〕
上述の実施形態3では、図11の(e)に示すように、段部213の側面に保護膜18がある。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。以下に、実施形態3の変形例として、実施形態6を説明する。
【0088】
図15は、本実施形態の発光ユニットの製造過程の一部を示す断面図である。図15の(e)´は、図11の(e)に対応し、図15の(f)´は、図11の(f)に対応する。図15は、段部213の側面に保護膜18がない点において、図10の構成と相違している。要するに、ビアを形成するステップS15において、本実施形態では、段部213の側面からも、保護膜18を除去する。
【0089】
図15の(e)´に示す状態から、ステップS16として、実施形態3の図10のステップS16と同様に、P電極30、共通第2電極32、および配線層31Bを形成する。
【0090】
本実施形態の製造方法によれば、接続領域の保護膜を取り除くため、PNショートの状態である。接続領域は、アレイ内の発光素子のN側電極であるため、ショート状態でも問題ない。
【0091】
〔実施形態7〕
上述の実施形態3では、図11の(c)に示すように、ビアの形成ステップにおいて、メサ形状113間の第2導電層10を全て除去し、成長基板9の界面まで削っている。要するに、実施形態3では、メサ形状113とメサ形状113とは第2導電層10で繋がっていない構成となっている。本実施形態でも、メサ形状113とメサ形状113とは第2導電層10で繋がっていない構成である点においては、実施形態3と同じである。一方で、実施形態3との相違点は、P電極30、共通第2電極32、および配線層31Bを形成するステップまでは、実施形態1と同じく、メサ形状113とメサ形状113とは第2導電層10の一部分で繋がった状態とする。そして、この状態で、駆動回路基板50と電気的に接続した後に、繋がっていた第2導電層10の一部分を除去することで、実施形態3と同じ態様を実現する。以下に、実施形態3の変形例として、実施形態7を説明する。
【0092】
図16は、本実施形態の発光ユニット200(画像表示素子3)の製造過程を示すフロー図であり、図17は、製造過程を示す発光ユニット200(画像表示素子3)の断面図である。なお、図16のステップS21~ステップS26の各ステップは、実施形態1の図6のステップS1~ステップS6と同一工程であるため、説明を省略する。
【0093】
図16のステップS26でP電極30、共通第2電極32、および配線層31Bが形成された状態(図17の(e)の状態)で、駆動回路基板50と接合する。具体的には、P電極30の上面に、駆動回路基板50のアノード電極51をコンタクトさせ、共通第2電極32の上面に、駆動回路基板50のカソード電極52をコンタクトさせる。そして、接合によって形成される空隙を、樹脂部70によって埋める(図16のステップS17、図17の)。
【0094】
次に、成長基板9を剥離する(図16のステップS28、図17の(g))。
【0095】
次に、成長基板9を剥離した側から半導体層13の第2導電層10を削っていき、隣り合うメサ形状113とメサ形状113との間が第2導電層10によって繋がっていない状態まで削る(ステップS29、図17の(h))。
【0096】
以上の製造フローによっても、実施形態3と同じ発光ユニット200の構成を実現することができる。
【0097】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る画像表示素子は、画像を表示する画素領域と、前記画素領域の外側に設けられた接続領域とを有する画像表示素子であって、前記画素領域において複数の発光素子がアレイ状に配置された発光ユニットと、前記発光ユニットと対向するように配置され、前記複数の発光素子を駆動する駆動回路基板と、を備え、前記発光ユニットは、前記画素領域および前記接続領域に、第2導電層と、発光層と、第1導電層とが積層された半導体層を有し、前記画素領域内では、前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなる複数のメサ形状を有し、前記接続領域内では、前記半導体層に形成された溝によって前記メサ形状と隔てられた段部を有し、各前記メサ形状の前記第1導電層には、第1電極が接続しており、前記第1電極は、前記駆動回路基板の前記発光ユニットに対向する対向面に設けられた第1駆動電極と接続し、前記発光ユニットは、隣り合う前記メサ形状の間には、当該メサ形状の第2導電層との間で導電経路を形成する配線層であって、前記半導体層における前記メサ形状の部分の層厚よりも薄い配線層を更に有し、前記配線層は、前記段部の上まで延設されており、当該段部の上に設けられた共通第2電極に接続されており、前記共通第2電極は、前記駆動回路基板の前記対向面に設けられた第2駆動電極と接続している。
【0098】
前記の構成によれば、高い光源品位を備えたマイクロ発光素子を備えた画像表示素子を提供することができる。具体的には、画素領域の発光素子アレイの外の領域(接続領域)においてカソード電極と接続する構成となっており、アレイ内に非発光部であるN電極がないため光源品位を向上させることができる。また、配線層を配設していることにより、抵抗低減を実現できる。また、配線層を、メサ形状間を埋め尽くす構成としないことにより、発光ユニットの反りを軽減できる。また、配線層を、メサ形状間を埋め尽くす構成としないことにより、埋め尽くすプロセスに比べて、容易なプロセスで形成することが可能である。
【0099】
本発明の態様2に係る画像表示素子は、前記態様1において、前記画素領域内では、前記複数のメサ形状が、前記第2導電層を層厚方向に一部分を残して前記半導体層を前記発光素子毎に分割してなり、前記接続領域内では、前記段部が、前記第2導電層を層厚方向に一部分を残して前記半導体層に形成された前記溝によって前記メサ形状と隔てられており、前記配線層は、前記第2導電層の前記一部分と接続していてもよい。
【0100】
前記の構成によれば、配線層が、第2導電層の前記一部分と接続していることから、抵抗低減機能を有し、光源品位を向上させることができる。
【0101】
本発明の態様3に係る画像表示素子は、前記態様1において、前記画素領域内では、前記メサ形状同士が前記第2導電層によって繋がっておらず、前記半導体層は前記発光素子毎に分断されており、前記接続領域内では、前記溝によって前記半導体層が層厚方向に分断されており、前記配線層は、前記メサ形状の前記第2導電層の側面と接続する構成であってもよい。
【0102】
前記の構成によれば、配線層が、第2導電層の前記側面と接続していることから、抵抗低減機能を有し、光源品位を向上させることができる。
【0103】
本発明の態様4に係る画像表示素子は、前記態様1または2において、前記配線層の長手方向に沿った端部は、前記メサ形状の側壁の壁面に沿ってせり上がっており、隣り合う前記メサ形状と、当該隣り合う前記メサ形状の間に配されている前記配線層とを当該配線層の短手方向に沿って切断したとき、当該配線層の切断面は、前記駆動回路基板に向かって開口した凹形状を有している構成であってもよい。
【0104】
前記の構成によれば、配線層を、メサ形状間を埋め尽くす構成とせず、メサ形状の起伏に倣う形状とすることにより、埋め尽くすプロセスに比べて、容易なプロセスで形成することが可能である。
【0105】
本発明の態様5に係る画像表示素子は、前記態様2において、前記配線層と、前記メサ形状に構成される前記半導体層との間には、保護膜が形成されている。
【0106】
前記の構成によれば、メサ形状の第2導電層の前記一部分の表面から配線層に電流が流れる経路が形成される。
【0107】
本発明の態様6に係る画像表示素子は、前記態様1から5において、前記第1電極と、前記共通第2電極とは、同一の電極材料から形成されていてもよい。
【0108】
前記の構成によれば、製造プロセスを容易に実現できる。
【0109】
本発明の態様7に係る画像表示素子は、前記態様1から6において、前記第1電極における前記第1駆動電極との接続面の位置と、前記共通第2電極における前記第2駆動電極との接続面の位置とは、同一平面上にあることが好ましい。
【0110】
前記の構成によれば、駆動回路基板の第1駆動電極および第2駆動電極と良好なコンタクトを実現することができる。
【0111】
本発明の態様8に係る画像表示素子は、前記態様1から7において、前記メサ形状の前記第1導電層と、前記段部の前記第1導電層とは、層厚が等しく、前記メサ形状の前記発光層と、前記段部の前記発光層とは、層厚が等しく、前記メサ形状の前記第2導電層と、前記段部の前記第2導電層とは、層厚が等しいことが好ましい。
【0112】
前記の構成によれば、メサ形状を構成する各層と、段部を構成する各層とを同じプロセス内で形成することができ、生産性向上を図った画像表示素子を実現できる。
【0113】
本発明の態様9に係る画像表示素子は、前記態様1から8において、前記配線層は、金(Au)よりも高反射率を有する光反射材料によって構成されてもよい。
【0114】
前記の構成によれば、光取り出し効率を向上させることができる。
【0115】
本発明の態様10に係る画像表示素子は、前記態様1から9において、前記画素領域内に構成される前記発光素子のアレイは、m行×n列の並びで、一定のピッチで配列しており、行方向の奇数列が偶数列の並びに対して、前記ピッチ×1/2ずれて並んでいてもよい。
【0116】
前記の構成によれば、半導体層に形成されるマイクロトレンチ(メサ形状とメサ形状との間に設けられる溝)が配線層の形成に与える影響を低減させることができる。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 画素領域
2 接続領域
3 画像表示素子
4 マーク領域
9 成長基板
10 第2導電層
10a 第2導電層の光出射側の領域
10b 第2導電層におけるメサ形状に構成される領域
10c 第2導電層の側面
11 発光層
12 第1導電層
13 半導体層
14 Pコンタクト膜
15 コンタクト膜
18 保護膜
24a、24b、24c ビア
30 P電極
31 配線層
31a 配線層におけるメサ形状側の端部
32 共通第2電極
50 駆動回路基板
51 アノード電極
52 カソード電極
60 素子分割溝
61 溝
100 発光素子
113 メサ形状
200 発光ユニット
213 段部
図1
図2
図3
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