(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240709BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240709BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240709BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240709BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240709BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L29/78 657F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652R
H01L29/78 652H
H01L29/78 657A
H01L29/78 652F
H01L29/91 F
H01L29/91 C
H01L29/91 L
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L27/06 102A
H01L29/78 301D
(21)【出願番号】P 2020206183
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 理俊
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-087548(JP,A)
【文献】特開2020-136493(JP,A)
【文献】特開2012-231019(JP,A)
【文献】特開2018-121020(JP,A)
【文献】特開2020-177957(JP,A)
【文献】特開2011-086710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 29/12
H01L 21/76
H01L 29/868
H01L 29/861
H01L 29/06
H01L 21/8234
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
<11-20>方向に対してオフ角を有するSiC基板(12)と、
メインソース電極(22)と、
メインゲート電極(24c)と、
センスソース電極(42)と、
センスゲート電極(44c)、
を有し、
前記SiC基板が、
メインセル(20)と、
前記メインセルに対して<1-100>方向に間隔を開けて配置されており、前記メインセルよりも小さい面積を有するセンスセル(40)と、
前記メインセルと前記センスセルの間に位置する間隔部(60)、
を有し、
前記メインセルが、
n型のメインソース領域(26)と、
前記メインソース領域に接するp型のメインボディ領域(28)と、
前記メインソース領域から分離されたn型のメインドリフト領域(30)
と、
前記メインボディ領域に対して間隔を開けて前記メインドリフト領域に囲まれた範囲内に配置されているp型のメイン中間領域(34)、
を有し、
前記センスセルが、
n型のセンスソース領域(46)と、
前記センスソース領域に接するp型のセンスボディ領域(48)と、
前記センスボディ領域によって前記センスソース領域から分離されたn型のセンスドリフト領域(50)
と、
前記センスボディ領域に対して間隔を開けて前記センスドリフト領域に囲まれた範囲内に配置されているp型のセンス中間領域(54)、
を有し、
前記メインソース電極が、前記メインセル内で前記メインソース領域及び前記メインボディ領域に接しており、
前記メインゲート電極が、前記メインボディ領域にメインゲート絶縁膜(24a)を介して対向しており、
前記センスソース電極が、前記センスセル内で前記センスソース領域及び前記センスボディ領域に接しており、
前記センスゲート電極が、前記センスボディ領域にセンスゲート絶縁膜(44a)を介して対向しており、
前記間隔部が、前記メインドリフト領域及び前記センスドリフト領域と繋がっており、前記メインボディ領域と前記センスボディ領域を互いから分離するn型の分離領域(62)
と、
前記メイン中間領域と前記センス中間領域の間に配置されており、前記分離領域によって前記メイン中間領域及び前記センス中間領域から分離されているp型のフローティング中間領域(68)、
を有し、
前記フローティング中間領域の上面が、前記分離領域と接しており、
前記メインボディ領域と前記センスボディ領域の間の間隔(W)が、前記分離領域内における正孔の拡散長の2倍よりも長い、
半導体装置。
【請求項2】
前記間隔部が、前記メインボディ領域と前記センスボディ領域の間に配置されており、前記分離領域によって前記メインボディ領域及び前記センスボディ領域から分離されているp型のフローティング領域(66)を有
し、
前記フローティング領域の下面が、前記分離領域と接している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フローティング中間領域が、<1-100>方向に間隔を空けて複数個配置されており、
前記フローティング領域が、<1-100>方向に間隔を空けて複数個配置されており、
前記各フローティング中間領域が前記フローティング領域の間の対応する間隔と重複し、
前記各フローティング領域が前記フローティング中間領域の間の対応する間隔と重複している、
請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体装置は、SiC基板を有している。半導体基板のメインセルとセンスセルには、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)が設けられている。センスセルは、メインセルよりも小さい面積を有する。したがって、MOSFETがオンしたときに、センスセルにはメインセルよりも小さい電流が流れる。センスセルに流れる電流がメインセルに流れる電流と相関関係を有するので、センスセルに流れる電流を検出することで、メインセルに流れる電流を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MOSFETはボディダイオードを有する。ボディダイオードがオンすると、ホールがドリフト領域に流入する。SiC基板において、ホールがドリフト領域に流入すると、ホールが基底面転移で電子と再結合し、シングルショックレー型の積層欠陥(いわゆる、SSF:Shockley-Type Stacking Fault)が成長する。メインセルの面積が広いので、メインセルの内部でSSFが発生し易い。SSFではバリアによる空乏層が発生するため、SSFにはほとんど電流が流れない。したがって、メインセルでSSFが発生すると、メインセルのオン抵抗が上昇する。但し、メインセルの面積が広いので、メインセルでSSFが発生しても、メインセルのオン抵抗の上昇は僅かである。SSFのうちの帯状欠陥は、SiC基板の<1-100>方向に沿って帯状に成長する。メインセルで発生した帯状欠陥が成長してセンスセルに進入すると、センスセルのオン抵抗が上昇する。センスセルの面積が小さいので、センスセルに帯状欠陥が進入すると、センスセルのオン抵抗が大きく上昇する。このようにセンスセルのオン抵抗が上昇すると、センスセルとメインセルの間の電流の相関関係が崩れる。このため、メインセルに流れる電流を正確に検出できなくなる。本明細書では、センスセルへの帯状欠陥の進入を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置は、半導体装置(10a、10b、10c)であって、<11-20>方向に対してオフ角を有するSiC基板(12)と、メインソース電極(22)と、メインゲート電極(24c)と、センスソース電極(42)と、センスゲート電極(44c)、を有する。前記SiC基板が、メインセル(20)と、前記メインセルに対して<1-100>方向に間隔を開けて配置されているとともに前記メインセルよりも小さい面積を有するセンスセル(40)と、前記メインセルと前記センスセルの間に位置する間隔部(60)、を有する。前記メインセルが、n型のメインソース領域(26)と、前記メインソース領域に接するp型のメインボディ領域(28)と、前記メインソース領域から分離されたn型のメインドリフト領域(30)、を有する。前記センスセルが、n型のセンスソース領域(46)と、前記センスソース領域に接するp型のセンスボディ領域(48)と、前記センスボディ領域によって前記センスソース領域から分離されたn型のセンスドリフト領域(50)、を有する。前記メインソース電極が、前記メインセル内で前記メインソース領域及び前記メインボディ領域に接している。前記メインゲート電極が、前記メインボディ領域にメインゲート絶縁膜(24a)を介して対向している。前記センスソース電極が、前記センスセル内で前記センスソース領域及び前記センスボディ領域に接している。前記センスゲート電極が、前記センスボディ領域にセンスゲート絶縁膜(44a)を介して対向している。前記間隔部が、前記メインドリフト領域及び前記センスドリフト領域と繋がっているとともに前記メインボディ領域と前記センスボディ領域を互いから分離するn型の分離領域(62)を有する。前記メインボディ領域と前記センスボディ領域の間の間隔(W)が、前記分離領域内における正孔の拡散長の2倍よりも長い。
【0006】
この半導体装置では、メインセルとセンスセルの間の間隔部が、メインボディ領域とセンスボディ領域を分離するn型の分離領域を有する。さらに、メインボディ領域とセンスボディ領域の間の間隔が、分離領域内における正孔の拡散長の2倍よりも長い。したがって、メインセルとセンスセルのそれぞれでボディダイオード(すなわち、ボディ領域とドリフト領域の界面のpn接合により構成されるダイオード)がオンしても、分離領域の中央部にホールが到達しない。このため、分離領域の中央部では、帯状欠陥が成長しない。したがって、メインボディ領域内で発生した帯状欠陥が<1-100>方向に沿ってセンスセルに向かって成長しても、帯状欠陥の成長が分離領域の中央部内で停止する。これによって、メインボディ領域内で発生した帯状欠陥がセンスセル領域に進入することを抑制できる。したがって、この半導体装置では、センスセルとメインセルの間の電流の相関関係が崩れ難く、メインセルに流れる電流を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】半導体装置10cの断面を含む斜視図(上面12a上の電極と絶縁膜を省略した図)。
【
図7】半導体装置10cのメイントレンチ、センストレンチ、メイン中間領域、センス中間領域、フローティング中間領域の位置関係を示す平面図。
【
図8】第1変形例の半導体装置の
図2に対応する断面図。
【
図9】第2変形例の半導体装置の
図2に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0009】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記間隔部が、前記メインボディ領域と前記センスボディ領域の間に配置されているとともに前記分離領域によって前記メインボディ領域及び前記センスボディ領域から分離されているp型のフローティング領域(66)を有していてもよい。
【0010】
この構成によれば、メインボディ領域及びセンスボディ領域の端部近傍における電界集中を抑制することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記メインセルが、前記メインボディ領域に対して間隔を開けて前記メインドリフト領域に囲まれた範囲内に配置されているp型のメイン中間領域(34)を有していてもよい。前記センスセルが、前記センスボディ領域に対して間隔を開けて前記センスドリフト領域に囲まれた範囲内に配置されているp型のセンス中間領域(54)を有していてもよい。前記間隔部が、前記メイン中間領域と前記センス中間領域の間に配置されており、前記分離領域によって前記メイン中間領域及び前記センス中間領域から分離されているp型のフローティング中間領域(68)を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、メイン中間領域によってメインドリフト領域内の電界集中を抑制でき、センス中間領域によってセンスドリフト領域内の電界集中を抑制できる。さらに、フローティング中間領域によって、メイン中間領域及びセンス中間領域の端部近傍における電界集中を抑制できる。
【実施例1】
【0013】
図1、2に示す実施例1の半導体装置10aは、半導体基板12を有している。以下では、半導体基板12の上面12aと平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12は、SiC(炭化シリコン)を主材料とするSiC基板である。より詳細には、半導体基板12は、β-SiCにより構成されている。
図1、2に示すように、半導体基板12の<1-100>方向は、y方向と略一致している。
図1に示すように、上面12aを平面視した状態では、半導体基板12の<11-20>方向は、x方向と略一致している。但し、
図3に示すように、xz断面においては、半導体基板12の<11-20>方向は、x方向に対してオフ角θだけずれた方向に伸びている。すなわち、半導体基板12の上面12aと<11-20>方向の間にオフ角θが設けられている。言い換えると、半導体基板12は、<11-20>方向に対してオフ角θを有している。オフ角θは、数度(例えば、4度)である。
【0014】
図1に示すように、半導体基板12の上面12aには、メインソース電極22とセンスソース電極42が設けられている。メインソース電極22は、上面12aの広い範囲を覆っている。センスソース電極42は、上面12aのうちメインソース電極22よりも狭い範囲を覆っている。センスソース電極42は、メインソース電極22に対してy方向(すなわち、<1-100>方向)に間隔を開けて配置されている。センスソース電極42は、メインソース電極22から分離されている。
【0015】
図2に示すように、半導体基板12の下面12bには、ドレイン電極70が設けられている。ドレイン電極70は、半導体基板12の下面12bの略全域を覆っている。
【0016】
図1に示すように、半導体基板12は、メインセル20とセンスセル40を有している。メインセル20はメインソース電極22の下部に設けられており、センスセル40はセンスソース電極42の下部に設けられている。メインセル20とセンスセル40のそれぞれに、複数のMOSFETが設けられている。センスセル40は、メインセル20に対してy方向(すなわち、<1-100>方向)に間隔を開けて配置されている。メインセル20とセンスセル40の間に、間隔部60が設けられている。間隔部60には、MOSFETが設けられていない。
【0017】
図2に示すように、メインセル20内において、半導体基板12の上面12aに複数のメイントレンチ24が設けられている。複数のメイントレンチ24は、y方向に間隔を開けて配列されている。各メイントレンチ24は、x方向に直線状に伸びている。各メイントレンチ24内に、メインゲート絶縁膜24a、底部絶縁層24b、及び、メインゲート電極24cが配置されている。底部絶縁層24bは、メイントレンチ24の底部に設けられた厚い絶縁層である。メインゲート絶縁膜24aは、底部絶縁層24bの上部に位置するメイントレンチ24の側面を覆っている。メインゲート電極24cは、メインゲート絶縁膜24aと底部絶縁層24bによって半導体基板12から絶縁されている。メインゲート電極24cの上面は、層間絶縁膜24dによって覆われている。層間絶縁膜24dによって、メインゲート電極24cがメインソース電極22から絶縁されている。層間絶縁膜24dが設けられていない範囲で、メインソース電極22は半導体基板12の上面12aに接している。
【0018】
メインセル20は、メインソース領域26、メインボディ領域28、メインドリフト領域30、及び、メインドレイン領域32を有している。メインソース領域26は、n型であり、メインソース電極22とメインゲート絶縁膜24aに接する位置に配置されている。メインボディ領域28は、p型であり、コンタクト領域28aと低濃度領域28bを有する。コンタクト領域28a内のp型不純物濃度は、低濃度領域28b内のp型不純物濃度よりも高い。コンタクト領域28aは、メインソース電極22に接する位置に配置されている。低濃度領域28bは、メインソース領域26及びコンタクト領域28aに対して下側から接している。低濃度領域28bは、メインソース領域26の下側でメインゲート絶縁膜24aに接している。メインドリフト領域30は、メインソース領域26よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。メインドリフト領域30は、低濃度領域28bに対して下側から接している。メインドリフト領域30は、低濃度領域28bの下側でメインゲート絶縁膜24aに接している。したがって、メインゲート電極24cは、メインゲート絶縁膜24aを介してメインソース領域26、低濃度領域28b、及び、メインドリフト領域30に対向している。また、メインドリフト領域30は、メイントレンチ24の側面及び底面で底部絶縁層24bに接している。メインドレイン領域32は、メインドリフト領域30よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。メインドレイン領域32は、メインドリフト領域30に対して下側から接している。メインドレイン領域32は、半導体基板12の下面12bにおいてドレイン電極70に接している。上記の構成によって、メインセル20内に複数のMOSFETが形成されている。
【0019】
図2に示すように、センスセル40は、メインセル20と略同様の構成を備えている。センスセル40内において、半導体基板12の上面12aに複数のセンストレンチ44が設けられている。複数のセンストレンチ44は、y方向に間隔を開けて配列されている。各センストレンチ44は、x方向に直線状に伸びている。各センストレンチ44内に、センスゲート絶縁膜44a、底部絶縁層44b、及び、センスゲート電極44cが配置されている。底部絶縁層44bは、センストレンチ44の底部に設けられた厚い絶縁層である。センスゲート絶縁膜44aは、底部絶縁層44bの上部に位置するセンストレンチ44の側面を覆っている。センスゲート電極44cは、センスゲート絶縁膜44aと底部絶縁層44bによって半導体基板12から絶縁されている。センスゲート電極44cの上面は、層間絶縁膜44dによって覆われている。層間絶縁膜44dによって、センスゲート電極44cがセンスソース電極42から絶縁されている。層間絶縁膜44dが設けられていない範囲で、センスソース電極42は半導体基板12の上面12aに接している。
【0020】
センスセル40は、センスソース領域46、センスボディ領域48、センスドリフト領域50、及び、センスドレイン領域52を有している。センスソース領域46は、n型であり、センスソース電極42とセンスゲート絶縁膜44aに接する位置に配置されている。センスボディ領域48は、p型であり、コンタクト領域48aと低濃度領域48bを有する。コンタクト領域48a内のp型不純物濃度は、低濃度領域48b内のp型不純物濃度よりも高い。コンタクト領域48aは、センスソース電極42に接する位置に配置されている。低濃度領域48bは、センスソース領域46及びコンタクト領域48aに対して下側から接している。低濃度領域48bは、センスソース領域46の下側でセンスゲート絶縁膜44aに接している。センスドリフト領域50は、センスソース領域46よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。センスドリフト領域50は、低濃度領域48bに対して下側から接している。センスドリフト領域50は、低濃度領域48bの下側でセンスゲート絶縁膜44aに接している。したがって、センスゲート電極44cは、センスゲート絶縁膜44aを介してセンスソース領域46、低濃度領域48b、及び、センスドリフト領域50に対向している。また、センスドリフト領域50は、センストレンチ44の側面及び底面で底部絶縁層44bに接している。センスドレイン領域52は、センスドリフト領域50よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。センスドレイン領域52は、センスドリフト領域50に対して下側から接している。センスドレイン領域52は、半導体基板12の下面12bにおいてドレイン電極70に接している。上記の構成によって、センスセル40内に複数のMOSFETが形成されている。
【0021】
図2に示すように、間隔部60は、分離領域62と間隔部ドレイン領域64を有している。分離領域62は、n型であり、メインドリフト領域30及びセンスドリフト領域50と繋がっている。分離領域62のn型不純物濃度は、メインドリフト領域30及びセンスドリフト領域50と略等しい。例えば、分離領域62のn型不純物濃度は、1×10
15~1×10
17cm
-3である。言い換えると、メインドリフト領域30、センスドリフト領域50、及び、分離領域62は、メインセル20、センスセル40、及び、間隔部60に跨って分布するn型領域である。分離領域62は、メインドリフト領域30及びセンスドリフト領域50の深さから半導体基板12の上面12aまで伸びている。分離領域62によって、メインボディ領域28とセンスボディ領域48が互いから分離されている。間隔部60内において、半導体基板12の上面12a(すなわち、分離領域62の表面)は層間絶縁膜60aに覆われている。間隔部ドレイン領域64は、分離領域62よりも高いn型不純物を有するn型領域である。分離領域62は、分離領域62に対して下側から接している。間隔部ドレイン領域64は、ドレイン電極70に接している。間隔部ドレイン領域64は、メインドレイン領域32及びセンスドレイン領域52と繋がっている。
【0022】
メインボディ領域28とセンスボディ領域48の間の間隔Wは、分離領域62内における正孔の拡散長L(より詳細には、半導体装置10aの動作温度範囲のうちの最高動作温度における正孔の拡散長L)の2倍よりも長い。拡散長Lは、以下の数式により定義される。
【0023】
【0024】
ここで、τは半導体装置10aの最高動作温度における分離領域62内のホールのライフタイムであり、kはボルツマン定数であり、Tは半導体装置10aの最高動作温度であり、qは電荷素量であり、μpは半導体装置10aの最高動作温度における分離領域62内でのホールの移動度である。半導体装置10aの最高動作温度Tは、例えば、150℃とすることができる。この場合、ホールのライフタイムτは約770nsecであり、ホールの移動度μpは約210cm2/V/secである。したがって、この場合、拡散長Lは約13μmである。したがって、この場合、間隔Wを約26μmよりも長くすることができる。
【0025】
図1に示すように、半導体基板12の上面12aには、電極パッド80a~80eが設けられている。電極パッド80a~80eは、半導体装置10aの各部に電気的に接続されている。例えば、電極パッド80cは、各メインゲート電極24c及び各センスゲート電極44cに接続されている。したがって、各メインゲート電極24c及び各センスゲート電極44cの電位は、電極パッド80cによって制御される。また、電極パッド80dは、センスソース電極42に接続されている。
【0026】
メインゲート電極24c及びセンスゲート電極44cにゲート閾値以上の電位を印加すると、メインボディ領域28及びセンスボディ領域48にチャネルが形成される。メインセル20内では、チャネルによってメインソース領域26とメインドリフト領域30が接続されることで、MOSFETがオンする。センスセル40内では、チャネルによってセンスソース領域46とセンスドリフト領域50が接続されることで、MOSFETがオンする。この状態で、ドレイン電極70にメインソース電極22及びセンスソース電極42よりも高い電位を印加すると、メインセル20内のMOSFET及びセンスセル40内のMOSFETに電流が流れる。メインセル20の面積がセンスセル40の面積よりも大きいので、メインセル20にセンスセル40よりも大きい電流が流れる。センスセル40に流れる電流は、外部回路によって検出される。メインセル20に流れる電流とセンスセル40に流れる電流は、相関関係(例えば、比例関係)を有する。したがって、センスセル40に流れる電流を検出することで、メインセル20に流れる電流を検出することができる。すなわち、センスセル40に流れる小電流を検出することで、メインセル20に流れる大電流を検出することができる。
【0027】
メインセル20内には、メインボディ領域28とメインドリフト領域30の界面のpn接合によってpnダイオード(いわゆる、ボディダイオード)が形成されている。同様に、センスセル40内には、センスボディ領域48とセンスドリフト領域50の界面のpn接合によってpnダイオード(いわゆる、ボディダイオード)が形成されている。このため、MOSFETがオフしている状態において、メインソース電極22及びセンスソース電極42にドレイン電極70よりも高い電位を印加すると、これらのボディダイオードがオンする。メインセル20内では、メインボディ領域28からメインドレイン領域32に向かってホールが流れるとともに、メインドレイン領域32からメインボディ領域28に向かって電子が流れる。センスセル40内では、センスボディ領域48からセンスドレイン領域52に向かってホールが流れるとともに、センスドレイン領域52からセンスボディ領域48に向かって電子が流れる。このようにボディダイオードがオンしている状態では、メインボディ領域28からメインドリフト領域30にホールが拡散するとともに、センスボディ領域48からセンスドリフト領域50にホールが拡散する。すると、ドリフト領域内(すなわち、メインドリフト領域30とセンスドリフト領域50内)において、ホールが基底面転移で電子と再結合し、SSFが発生する。センスセル40の面積が小さいので、センスドリフト領域50内でSSFが発生する可能性は低い。他方、メインセル20の面積が大きいので、メインドリフト領域30内でSSFが発生する可能性は比較的高い。但し、メインセル20の面積が大きいので、メインドリフト領域30内でSSFが発生しても、メインセル20内のMOSFETのオン抵抗にほとんど影響はない。しかしながら、SSFの一種である帯状欠陥は<1-100>方向に沿って成長する。このため、
図1、2の矢印100に示すように、メインセル20(すなわち、メインドリフト領域30)内で発生した帯状欠陥110がセンスセル40(すなわち、センスドリフト領域50)に向かって成長する場合がある。仮に帯状欠陥110がセンスセル40内に進入すると、センスセル40内のMOSFETのオン抵抗が大きく上昇し、メインセル20内のMOSFETに流れるオン電流とセンスセル40内のMOSFETに流れるオン電流の比が変化する。すると、センスセル40内のMOSFETに流れるオン電流を検出しても、メインセル20内のMOSFETに流れるオン電流を正確に検出することができなくなる。
【0028】
これに対し、実施例1の半導体装置10aでは、分離領域62によってセンスセル40内への帯状欠陥110の進入が抑制される。以下、分離領域62の機能について説明する。上述したように、メインセル20及びセンスセル40でボディダイオードがオンすると、メインボディ領域28からメインドリフト領域30にホールが拡散するとともに、センスボディ領域48からセンスドリフト領域50にホールが拡散する。このとき、メインボディ領域28から分離領域62にもホールが拡散し、センスボディ領域48から分離領域62にもホールが拡散する。ここで、上述したように、メインボディ領域28とセンスボディ領域48の間の間隔Wが分離領域62内における正孔の拡散長Lの2倍よりも長い。このため、分離領域62の中央部62aは、メインボディ領域28から拡散長L以上離れているとともに、センスボディ領域48からも拡散長L以上離れている。したがって、ボディダイオードがオンしている状態において、中央部62aにはホールが到達しない。このため、矢印100に示すように帯状欠陥110が成長し、帯状欠陥110が分離領域62内に進入したとしても、中央部62aにおいて帯状欠陥110の成長が停止する。このため、センスドリフト領域50内に帯状欠陥110が進入することを抑制できる。したがって、実施例1の半導体装置10aでは、メインセル20内のMOSFETに流れるオン電流とセンスセル40内のMOSFETに流れるオン電流の相関関係が崩れ難い。このため、センスセル40内のMOSFETに流れるオン電流に基づいて、メインセル20内のMOSFETに流れるオン電流を正確に検出することができる。
【実施例2】
【0029】
図4に示す実施例2の半導体装置10bでは、間隔部60が複数のフローティング領域66を有している。実施例2の半導体装置10bのその他の構成は、実施例1の半導体装置10aと等しい。
【0030】
フローティング領域66は、p型であり、上面12aを含む範囲に配置されている。各フローティング領域66は、メインボディ領域28とセンスボディ領域48の間に配置されている。すなわち、各フローティング領域66は、メインボディ領域28の下端とセンスボディ領域48の下端よりも上側に配置されている。但し、各フローティング領域66の一部が、メインボディ領域28の下端とセンスボディ領域48の下端よりも下側まで伸びていてもよい。各フローティング領域66は、y方向(すなわち、<1-100>方向)に間隔を開けて配列されている。各フローティング領域66は、x方向に直線状に長く伸びている。各フローティング領域66の表面は、層間絶縁膜60aによって覆われている。各フローティング領域66は、分離領域62によってメインボディ領域28及びセンスボディ領域48から分離されている。各フローティング領域66は、分離領域62によって互いから分離されている。したがって、各フローティング領域66の電位は、フローティング電位となっている。
【0031】
実施例2の半導体装置10bでは、MOSFETがオフするときに各フローティング領域66から分離領域62内に空乏層が伸びるので、分離領域62内に空乏層が広がり易い。このため、メインボディ領域28の間隔部60に近い側の端部28xの周辺及びセンスボディ領域48の間隔部60に近い側の端部48xの周辺における電界集中を抑制できる。したがって、実施例2の半導体装置10bは、高い耐圧を有する。また、実施例2の半導体装置10bでも、実施例1の半導体装置10aと同様に、メインセル20からセンスセル40内への帯状欠陥の進入を抑制できる。
【0032】
なお、
図4では、各フローティング領域66が上面12aを含む範囲に配置されていたが、各フローティング領域66が上面12aから離れた範囲に配置されていてもよい。このような構成でも、各フローティング領域66がメインボディ領域28とセンスボディ領域48の間の範囲内(すなわち、メインボディ領域28とセンスボディ領域48の下端よりも上側の範囲内)に配置されていれば、各フローティング領域66によって電界集中を抑制できる。また、間隔部60内に配置されるフローティング領域66の数は、1つであっても複数であってもよい。
【実施例3】
【0033】
図5~7に示す実施例3の半導体装置10cでは、メインセル20が複数のメイン中間領域34を有している。また、半導体装置10cでは、センスセル40が複数のセンス中間領域54を有している。また、半導体装置10cでは、間隔部60が、複数のフローティング中間領域68を有している。実施例3の半導体装置10cのその他の構成は、実施例1の半導体装置10aと等しい。
【0034】
各メイン中間領域34は、p型領域であり、メイントレンチ24の下端よりも下側に配置されている。複数のメイン中間領域34は、x方向に間隔を開けて配列されている。各メイン中間領域34は、y方向に長く直線状に伸びている。各メイン中間領域34の周囲は、メインドリフト領域30に囲まれている。各メイン中間領域34は、図示しない位置でメインソース電極22に接続されている。
【0035】
各センス中間領域54は、p型領域であり、センストレンチ44の下端よりも下側に配置されている。複数のセンス中間領域54は、x方向に間隔を開けて配列されている。各センス中間領域54は、y方向に長く直線状に伸びている。各センス中間領域54の周囲は、センスドリフト領域50に囲まれている。各センス中間領域54は、図示しない位置でセンスソース電極42に接続されている。各センス中間領域54は、対応するメイン中間領域34の延長線上に配置されている。
【0036】
各フローティング中間領域68は、メイン中間領域34及びセンス中間領域54と略同じ深さに配置されている。3つのフローティング中間領域68が、y方向に間隔を開けて配列されている。y方向に並ぶ3つのフローティング中間領域68のグループの複数個が、x方向に間隔を開けて配列されている。y方向に並ぶ3つのフローティング中間領域68の各グループは、対応するメイン中間領域34及びセンス中間領域54の延長線上に配置されている。各フローティング中間領域68は、分離領域62によってメインボディ領域28、センスボディ領域48、メイン中間領域34、及び、センス中間領域54から分離されている。また、各フローティング中間領域68は、分離領域62によって互いから分離されている。したがって、各フローティング中間領域68の電位は、フローティング電位となっている。
【0037】
実施例3の半導体装置10cでは、メインドリフト領域30内において、複数のメイン中間領域34の間の間隔を通って電流が流れる。また、センスドリフト領域50内において、複数のセンス中間領域54の間の間隔を通って電流が流れる。したがって、上述した実施例1、2と略同様に、MOSFETとボディダイオードがオンすることができる。
【0038】
実施例3の半導体装置10cでは、MOSFETがオフするときに、メイン中間領域34からその周辺のメインドリフト領域30に空乏層が広がり、この空乏層によってメイントレンチ24の下端の周辺における電界集中が抑制される。同様に、実施例3の半導体装置10cでは、MOSFETがオフするときに、センス中間領域54からその周辺のセンスドリフト領域50に空乏層が広がり、この空乏層によってセンストレンチ44の下端の周辺における電界集中が抑制される。
【0039】
また、実施例3の半導体装置10cでは、MOSFETがオフするときに、各フローティング中間領域68からその周辺の分離領域62に空乏層が広がる。したがって、メイン中間領域34の間隔部60に近い側の端部34xの周辺及びセンス中間領域54の間隔部60に近い側の端部54xの周辺における電界集中を抑制できる。したがって、実施例3の半導体装置10cは、高い耐圧を有する。また、実施例3の半導体装置10cでも、実施例1の半導体装置10aと同様に、メインセル20からセンスセル40内への帯状欠陥の進入を抑制できる。
【0040】
なお、メイン中間領域34及びセンス中間領域54の電位がフローティング電位であってもよい。また、メイン中間領域34がメイントレンチ24の下端を含む深さに配置されていてもよく、センス中間領域54がセンストレンチ44の下端を含む深さに配置されていてもよい。また、間隔部60内に配置されるフローティング中間領域68の数は、1つであっても複数であってもよい。また、
図8に示すように、間隔部60が、フローティング中間領域68に加えてフローティング領域66を有していてもよい。この場合、
図9に示すように、フローティング領域66とフローティング中間領域68を互い違いに配置してもよい。すなわち、上から見たときに、フローティング領域66の間の間隔66cとフローティング中間領域68が重複し、フローティング中間領域68の間の間隔68cとフローティング領域66が重複するように、これらを配置してもよい。この構成によれば、より耐圧を高くすることができる。
【0041】
実施例1~3では、トレンチ型のゲート電極を有する半導体装置について説明した。しかしながら、プレーナ型のゲート電極を有する半導体装置において、本明細書に開示の技術を適用してもよい。
【0042】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
20:メインセル、22:メインソース電極、24c:メインゲート電極、26:メインソース領域、28:メインボディ領域、30:メインドリフト領域、40:センスセル、42:センスソース電極、44c:センスゲート電極、46:センスソース領域、48:センスボディ領域、50:センスドリフト領域、60:間隔部、62:分離領域