(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】施療器
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20240709BHJP
A61N 1/30 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
A61F7/00 310A
A61F7/00 310J
A61N1/30
(21)【出願番号】P 2020211270
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】松木 陽太
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0290531(US,A1)
【文献】特表2006-521889(JP,A)
【文献】特開2015-029844(JP,A)
【文献】特開2018-143384(JP,A)
【文献】特表2015-535457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185236(US,A1)
【文献】中国実用新案第201750912(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61N 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
当接させた肌の加温及び/又は冷却を行う変温部と、肌が所定の温度に至るよう前記変温部を制御する制御部と
、肌に発現している所定の要素を前記変温部による加温又は冷却の前に測定する肌状態測定部と、同肌状態測定部による測定結果に応じて肌温度調節の目的に適した目標温度を決定する目標温度決定手段と、を備え、前記制御部は、前記目標温度を前記所定の温度として前記変温部の制御を行
う肌温度調節装置
と、
肌温度調節の目的としての複数種の施療を行う施療部と、を備えた施療器であって、
前記複数種の施療を行う施療部は、前記施療器を構成する施療器本体部に対して着脱可能で前記複数種の施療毎に設けられそれぞれに固有の標識手段が備えられた複数のヘッド部であり、
前記標識手段に基づいて前記施療器本体部に取り付けられたヘッド部を識別することにより前記肌温度調節の目的を認識する目的認識手段を備え、
前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、前記肌温度調節の目的毎に備えられた複数の目標温度群のうち前記目的認識手段が認識した肌温度調節の目的に対応する当該肌温度調節の目的に適した複数の温度からなる目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うことを特徴とする施療器。
【請求項2】
前記標識手段は、前記複数のヘッド部毎に値の異なる電気抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の施療器。
【請求項3】
前記制御部による変温部の制御中の肌の温度を監視する肌温度監視手段を備えることを特徴とする
請求項1に記載の施療器。
【請求項4】
前記制御部は、使用環境温度に応じた制御を行うための環境温度補正手段を備えることを特徴とする
請求項1に記載の施療器。
【請求項5】
前記肌状態測定部が測定する所定要素は、肌の温度、肌の水分、肌の皮脂量、肌の表面状態から選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする
請求項1に記載の施療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌温度調節装置及び同肌温度調節装置を備えた施療器に関する。
【背景技術】
【0002】
健康的で美しい肌は、男女を問わずその人の魅力を引き出す大切な外観要素の一つである。そのため、美しい肌を長く保つためには、継続的に肌の手入れを行うことが望ましく、また、効果的な手法で行うのがより望ましいと言える。
【0003】
従来、肌を活性化させたり、肌に栄養や水分を供給するため、化粧品メーカーや電機メーカー、美容家などにより様々な手技や装置が提供されている。そして、これらの多くは、効果的で簡便に日々の肌の手入れが行えるよう開発が成されている。
【0004】
このような装置の一例として、美容成分のイオン導入装置が挙げられる。例えば一般家庭などで手軽に利用できるハンディ型のイオン導入装置であれば、電極の表面に化粧水を含ませたコットンを配置し、頬にあてがって通電させることにより電界勾配に従って化粧水の美容成分を肌の中に効果的に染みこませることができ、効率的な肌の手入れを実現することができる。
【0005】
また、肌の手入れを行うにあたり、予め肌を温める処理を行う場合がある。例えば特許文献1には、施療前に肌を予め温めることができるハンディ型のイオン導入装置が開示されており、この予備的な加温処理で事前に肌を温めて活性化させておくことで、その後に行う施療の効果を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の施療装置は、やけどの防止や心地よさを主眼に決定した温度が予め設定され、その温度を目標温度として加温するものであり、加温前の個々の肌の状態の違いに応じ適切な加温を行うものではなかった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、肌温度調節の目的や加温又は冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温又は冷却することのできる肌温度調節装置を備えた施療器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る施療器によれば、(1)当接させた肌の加温及び/又は冷却を行う変温部と、肌が所定の温度に至るよう前記変温部を制御する制御部と、肌に発現している所定の要素を前記変温部による加温又は冷却の前に測定する肌状態測定部と、同肌状態測定部による測定結果に応じて肌温度調節の目的に適した目標温度を決定する目標温度決定手段と、を備え、前記制御部は、前記目標温度を前記所定の温度として前記変温部の制御を行う肌温度調節装置と、肌温度調節の目的としての複数種の施療を行う施療部と、を備えた施療器であって、前記複数種の施療を行う施療部は、前記施療器を構成する施療器本体部に対して着脱可能で前記複数種の施療毎に設けられそれぞれに固有の標識手段が備えられた複数のヘッド部であり、前記標識手段に基づいて前記施療器本体部に取り付けられたヘッド部を識別することにより前記肌温度調節の目的を認識する目的認識手段を備え、前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、前記肌温度調節の目的毎に備えられた複数の目標温度群のうち前記目的認識手段が認識した肌温度調節の目的に対応する当該肌温度調節の目的に適した複数の温度からなる目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととした。
【0010】
また、本発明に係る施療器は、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記標識手段は、前記複数のヘッド部毎に値の異なる電気抵抗であること。
(3)前記制御部による変温部の制御中の肌の温度を監視する肌温度監視手段を備えること。
(4)前記制御部は、使用環境温度に応じた制御を行うための環境温度補正手段を備えること。
(5)前記肌状態測定部が測定する所定要素は、肌の温度、肌の水分、肌の皮脂量、肌の表面状態から選ばれる少なくともいずれか1つであること。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る施療器によれば、当接させた肌の加温及び/又は冷却を行う変温部と、肌が所定の温度に至るよう前記変温部を制御する制御部と、肌に発現している所定の要素を前記変温部による加温又は冷却の前に測定する肌状態測定部と、同肌状態測定部による測定結果に応じて肌温度調節の目的に適した目標温度を決定する目標温度決定手段と、を備え、前記制御部は、前記目標温度を前記所定の温度として前記変温部の制御を行う肌温度調節装置と、肌温度調節の目的としての複数種の施療を行う施療部と、を備えた施療器であって、前記複数種の施療を行う施療部は、前記施療器を構成する施療器本体部に対して着脱可能で前記複数種の施療毎に設けられそれぞれに固有の標識手段が備えられた複数のヘッド部であり、前記標識手段に基づいて前記施療器本体部に取り付けられたヘッド部を識別することにより前記肌温度調節の目的を認識する目的認識手段を備え、前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、前記肌温度調節の目的毎に備えられた複数の目標温度群のうち前記目的認識手段が認識した肌温度調節の目的に対応する当該肌温度調節の目的に適した複数の温度からなる目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととしたため、肌温度調節の目的や加温・冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温したり冷却することのできる肌温度調節装置を備えた施療器を提供することができる。
【0013】
また、前記制御部による変温部の制御中の肌の温度を監視する肌温度監視手段を備えることとすれば、使用者によってそれぞれ異なる肌の温まり方や冷え方を捉えて更に適した加温や冷却を行うことができる。
【0014】
また、前記制御部は、使用環境温度に応じた制御を行うための環境温度補正手段を備えることとすれば、冬季と夏季のように使用環境温度が異なる場合であっても、それぞれの使用環境温度に応じて適切な肌の加温や冷却を行うことができる。
【0015】
また、前記肌状態測定部が測定する所定要素は、肌の温度、肌の水分、肌の皮脂量、肌の表面状態から選ばれる少なくともいずれか1つであることとすれば、肌状態に応じた肌温度調節の制御をより適切に行うことができる。
【0016】
また、前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、所定の肌温度調節の目的に適した複数の温度からなる目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととすれば、目的に応じた肌の適切な加温や冷却のための目標温度を、複数の目標温度の中から自由度を持って選択することができ、個々の肌の状態の違いに応じた加温や冷却を更に適切に行うことができる。
【0017】
前記肌温度調節の目的を認識する目的認識手段を備え、前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、前記肌温度調節の目的毎に備えられた複数の目標温度群のうち前記目的認識手段が認識した肌温度調節の目的に対応する目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととすれば、肌の適切な加温や冷却のための目標温度を、複数の目的の中から所定の目的に応じ、更に複数の目標温度の中から自由度を持って選択することができる。
【0018】
また、本発明に係る施療器では、肌温度調節装置と、肌温度調節の目的としての施療を行う施療部とを備えることとしたため、施療にあたり個々の肌の状態の違いに応じて予備加温や予備冷却を行うことが可能な施療器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る施療器の外観を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る施療器の外観を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る施療器の構成を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る施療器の内部構成を示す説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る施療器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る施療器のメイン処理を示すフローである。
【
図7】第1実施形態に係る施療器の割込処理を示すフローである。
【
図8】第1実施形態に係る施療器の肌温度調節モード処理を示すフローである。
【
図9】第2実施形態に係る肌温度調節装置の外観を示す説明図である。
【
図10】第2実施形態に係る肌温度調節装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態に係る肌温度調節装置の肌温度調節モード処理の一部を示すフローである。
【
図12】第3実施形態に係る施療器の構成を示す説明図である。
【
図16】第3実施形態に係る施療器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図17】第3実施形態に係る施療器の肌温度調節モード処理の一部を示すフローである。
【
図18】第4実施形態に係る肌温度調節装置の外観を示す説明図である。
【
図19】第4実施形態に係る肌温度調節装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、肌温度調節装置や同肌温度調節装置を備えた施療器に関するものであり、特に肌温度調節装置に関して言えば、当接させた肌の加温及び/又は冷却を行う変温部と、肌が所定の温度に至るよう前記変温部を制御する制御部とを備えた肌温度調節装置を提供するものである。
【0021】
ここで肌温度調節とは、肌の温度を直接的に調節する意味の他に、後述の変温部に配設された加熱手段や冷却手段の温度を調節すること、ひいては肌の温度を間接的に調節することの意味も含む。なおこのことは、出願人が本願を権利化するにあたり、肌温度調節の意義を限定することを妨げるものではない。
【0022】
また、肌温度調節装置は、施療を施す前に予備的に肌を温めたり冷やすための装置のほか、肌を温めたり冷やすこと自体を施療とする装置も含んでいる。
【0023】
また、本実施形態に係る肌温度調節装置において、当接させた肌の加温や冷却は変温部により行うこととしている。
【0024】
この、肌の加温及び/又は冷却を行う変温部には、加温のための発熱手段のみを備えるものや、冷却のための冷却手段のみを備えるもの、また、発熱手段と冷却手段との両方を備えるものが含まれる。例えば、加温のためのヒータを備え冷却のための構成を備えていないものや、冷却のためのペルチェ素子を備え加温のための構成を備えていないもの、また、加温のためのヒータと冷却のためのペルチェ素子との両方を備えているもののいずれも含まれる。発熱手段は、目標温度よりも肌温度が低い場合などに使用され、また、冷却手段は目標温度よりも肌温度が高い場合などに使用される。
【0025】
また同じく、肌の加温及び/又は冷却を行う変温部には、加温のためのヒータと冷却のためのペルチェ素子とを備えた変温部の動作として、ヒータのみに電力が供給されて加温だけが行われている状態や、ペルチェ素子のみに電力が供給されて冷却だけが行われている状態、ヒータとペルチェ素子とに交互に電力が供給されて加温と冷却が交互に行われている状態、また、ヒータとペルチェ素子とにの両方に電力が供給されて加温と冷却が同時に行われている状態のいずれもが含まれる。なお、これら変温部の構成や動作に関する記載は、出願人が本願を権利化する上でいずれかの構成や動作に限定することを妨げない。
【0026】
また施療は、イオン導入の如き電気・機械的な施療は勿論、手指によるマッサージの如く人が行う施療の他、本実施形態に係る肌温度調節装置が行う加温や冷却自体が施療となる場合も含む。
【0027】
また別の観点から説明すると、本実施形態に係る肌温度調節装置や施療器は、施療部の有無や、使用目的(肌温度調節の目的)が特定された専用品か否か(複数目的品、用途が限定されないものか)の違いによって大別でき、これらのいずれもが本実施形態に係る肌温度調節装置や施療器となり得る。
【0028】
例えば、施療部を備え、目的が特定された専用品としては、イオン導入電極などを具備するイオン導入部を施療部として備え、更にイオン導入施療を行うにあたり肌の予備加温や予備冷却を行うための肌温度調節装置を備えた施療器を例示することができる。
【0029】
施療部を備えず、目的が特定された専用品としては、例えば、市販されている所定の化粧料について、この化粧料に含まれる成分による効果の向上を目的として肌の加温や冷却を行うための肌温度調節装置が挙げられる。このような肌温度調節装置は、当該所定の化粧料とセットで市販するのも一案である。
【0030】
施療部を備え、目的が単一の専用品でないもの(複数目的に係るもの)としては、肌の予備加温や予備冷却を行うための肌温度調節装置と、同肌温度調節装置に着脱可能な複数種類の施療部とにより構成された施療器が例示できる。施療部は、例えばイオン導入部や振動マッサージ部、低周波マッサージ部などが取り替え可能であり、各施療部に固有の電気的情報や物理的なコネクタ形状を検知することで装着された施療部の種類を認識、すなわち施療目的(肌温度調節の目的)を認識し、それに応じて変温部が肌を加温したり冷却する施療器がこれにあたる。
【0031】
施療部を備えず、目的が単一の専用品でないもの(複数目的に係るもの)としては、例えば、化粧前の予備加温や予備冷却、マッサージのための予備加温や予備冷却、イオン導入のための予備加温や予備冷却、肌の活性化のための予備加温や予備冷却など複数の加温・冷却目的を使用者がダイヤルにて選択可能に構成した肌温度調節装置が挙げられる。
【0032】
なお、加温や冷却による施療を目的としたものは、肌温度調節装置自体を施療部とし、加温・冷却施療を目的とした専用品の施療器と解することも可能である。
【0033】
そして、本実施形態に係る肌温度調節装置の特徴としては、肌に発現している所定の要素を前記変温部による加温又は冷却の前に測定する肌状態測定部と、同肌状態測定部による測定結果に応じて肌温度調節の目的に適した目標温度を決定する目標温度決定手段と、を備え、前記制御部は、前記目標温度を前記所定の温度として前記変温部の制御を行う点が挙げられる。
【0034】
肌に発現している所定の要素は、加温・冷却の目的や使用の目的の如き肌温度調節の目的が後に行われる施療のための予備的な肌温度調節である場合はその肌におけるその施療に適した温度(施療至適温度)や、後に施療を行わず肌温度調節の目的が加温・冷却自体にある場合はその肌におけるその加温・冷却目的に適した温度(加温・冷却至適温度)に実質的な影響を与える要素が含まれる。なお、以下の説明において施療至適温度と加温・冷却至適温度を総称して目標温度ともいう。
【0035】
具体的に例示するならば、肌に発現している所定の要素は、例えば、肌の温度、肌の水分、肌の皮脂量、肌の表面状態などとすることができ、更にはこれらの中から選ばれる少なくともいずれか1つを採用しても良い。
【0036】
また目標温度は、肌を所定の温度に到達させるための目標温度(目標肌温度)であっても良く、また、加温手段や冷却手段を所定の温度に到達させるための目標温度(目標加温(冷却)手段温度)であっても良い。すなわち目標温度の対象は肌であっても、加温手段や冷却手段であっても良い。
【0037】
肌温度調節の目的は前述の如く、なんらかの使用目的が特定された専用品であっても良いし、複数の用途を目的としたものであっても良い。
【0038】
そして、このような構成を備える肌温度調節装置によれば、肌温度調節の目的や加温又は冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温したり冷却することのできる肌温度調節装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る肌温度調節装置では、前記制御部による変温部の制御中の肌の温度を監視する肌温度監視手段を備えることとしても良い。
【0040】
例えば、接触又は非接触の温度センサを用い、ヒータなどの加温手段やペルチェ素子などの冷却手段ではなく肌自体の温度を監視することにより、やけど防止のための設定温度を超えた場合には通電を遮断したり急速冷却に転じるなどの処理を行うことができるのは勿論のこと、肌の温まりやすさなどを分析してその傾向に応じた肌温度調節制御を行うなど、より適切な肌の温度調節を行うことができる。
【0041】
また、前記制御部は、使用環境温度に応じた制御を行うための環境温度補正手段を備えることとしても良い。このような構成とすることにより、使用環境温度を反影させた肌温度調節制御を行うことができ、より適切な肌温度調節を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る肌温度調節装置における肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、所定の肌温度調節の目的に適した複数の温度からなる目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととしても良い。
【0043】
例を交えてやや具体的に説明するならば、肌温度調節装置は、例えば、肌状態測定部が測定する所定要素の測定値と肌温度調節の目的に適した目標温度とを対応付けたデータの対(以下、要素測定値-目標温度データ対ともいう。)を複数の要素測定値について関数やテーブル等の状態で記憶しており、これを目標温度群として肌状態測定部の測定値(測定結果)に応じて一の要素測定値-目標温度データ対を選択し目標温度を決定するような態様が例示できる。
【0044】
このような構成とすれば、肌状態測定部による測定結果に応じて複数の目標温度の中から自由度を持って一の目標温度を選択することができ、個々の肌の状態の違いに応じた温度調節を更に適切に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態に係る肌温度調節装置では、肌温度調節の目的を認識する目的認識手段を備え、前記肌温度調節の目的に適した目標温度の決定は、前記肌温度調節の目的毎に備えられた複数の目標温度群のうち前記目的認識手段が認識した肌温度調節の目的に対応する目標温度群の中から前記測定結果に応じて目標温度を決定することで行うこととしても良い。
【0046】
同様に例を交えて説明すると、例えば先述した多目的肌温度調節装置、すなわち、化粧前の予備温度調節、マッサージのための予備温度調節、イオン導入のための予備温度調節、肌の活性化のための予備加温、肌の引き締めを目的とした冷却など複数の肌温度調節の目的を使用者がダイヤルにて選択可能に構成した肌温度調節装置がこれにあたる。
【0047】
このような多目的肌温度調節装置には、例えば、化粧前の予備温度調節のための目標温度群や、マッサージのための予備温度調節のための目標温度群、イオン導入のための予備温度調節のための目標温度群、肌の活性化のための予備温度調節のための目標温度群の如く複数の目標温度群が記憶されており、肌温度調節の目的の選択ダイヤルを肌温度調節装置の目的認識手段として機能させることで、ダイヤルで設定された肌温度調節の目的の目標温度群を選択し、更に肌状態測定部の測定値(測定結果)に応じて一の要素測定値-目標温度データ対を選択し目標温度を決定するような態様が例示できる。
【0048】
このような構成とすれば、肌の適切な温度調節のための目標温度を、複数の目的の中から所定の目的に応じ、更に複数の目標温度の中から自由度を持って選択することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る施療器は、ここまで述べてきた何れかの態様の肌温度調節装置と、肌温度調節の目的としての施療を行う施療部とを備えたものとすることができる。なお、肌温度調節装置は、施療部と一体的な状態で施療器を構成している場合には、施療器の一部を構成する肌温度調節ユニットと解することもできる。
【0050】
そして、このような構成とすれば、施療にあたり個々の肌の状態の違いに応じて予備温度調節を行うことが可能な施療器を提供することができる。
【0051】
以下、本実施形態に係る肌温度調節装置や施療器について、図面を参照しながら説明する。
【0052】
〔第1実施形態〕
図1は、本第1実施形態に係る施療器A1の外観を示した説明図である。この施療器A1は、後述する制御部により肌を温める加温処理が実行されることで変温部としての加温部として機能し、また、イオン導入処理が実行されることで施療部としてのイオン導入部として機能する。すなわち、第1の実施形態にて説明する施療器A1は、加温部と施療部とを備えており、加温部による加温の目的がイオン導入部によるイオン導入施療の予備加温に特定された専用品である。
【0053】
施療器A1は、
図1(a)に示すように、正面視略長矩形で下部から上部にかけてやや後方へ反った厚板状の外観形状を有しており、手のひらで把持できる程度の胴回りとしつつ、その上下長さは筐体を把持した際に上部が手の中から出る程度の大きさとしている。
【0054】
また施療器A1は、
図1(b)に示すように、施療器本体12と、挟持体13とで構成している。
【0055】
施療器本体12は、肌を温める加温部やイオン導入部が実装された施療器A1の主要部位であり、その上部前面に截頭円錐台形状の当接部14を突設している。
【0056】
当接部14は加温又は施療の対象となる肌に直接又は間接的に接触させる部位であり、加温部の機能時には発熱体にて生成した熱を肌に良好に伝達させ、またイオン導入部の機能時には電位勾配を形成するための一側電極として機能させるべく金属等の導体にて形成している。
【0057】
挟持体13は、一点鎖線にて示すように当接部14の上に配置したコットン15を施療器本体12との間で挟持するための部材である。
【0058】
挟持体13は、施療器本体12の下端にて左右方向を軸線としつつ
図1(a)に示す閉姿勢と
図1(b)に示す開姿勢との間で揺動可能に枢支している。また、挟持体13には、閉姿勢とした際に当接部14が露出する露出孔13aをその対向位置に形成している。
【0059】
そして、挟持体13を閉姿勢とし、加温部を機能させつつ当接部14を直接肌に接触させれば、その肌の状態に応じ、後に行うイオン導入施療に適した温度に加温が行われる。
【0060】
また、挟持体13を一度開姿勢とし、当接部14の上面14aに化粧料等を染みこませたコットン15を配置し、挟持体13を閉姿勢に変位させれば、コットン15を施療器本体12との間で挟持させることができる。この状態で、後述するイオン導入部を機能させてコットン15を介して当接部14を当接させた肌に対して通電すれば、化粧料等に含まれる所定成分のイオン導入を行うことが可能である。なお、
図1中にて示す符号16は、当接部14との間で電位勾配を形成するための把持部側電極16である。
【0061】
図2は、施療器A1の背面側の構成を示す説明図である。
図2に示すように施療器A1の背面側には、操作部17が配されており、施療器本体12の内部に収容されている制御部30に対して使用者の指示を入力可能としている。
【0062】
操作部17には、電源ボタン17aと、肌温度調節ボタン17bと、施療ボタン17cが配設されており、各ボタンは制御部30に電気的に接続されている。
【0063】
電源ボタン17aは、施療器A1を起動させたり、電源を落とすためのボタンである。起動前の状態で電源ボタン17aを押下すれば、電源(本実施形態では電池18)から制御部30に対し電力が供給され、加温部やイオン導入部がスタンバイ状態となる。また、起動後の状態で電源ボタン17aを押下すれば、制御部30への電力は遮断され、施療器A1は起動前の状態に戻る。
【0064】
肌温度調節ボタン17bは、変温部を機能させるためのボタンであり、本第1実施形態に係る施療器A1では加温部を機能させるためのボタンである。具体的には、加温部を構成するヒータやセンサ等に電力を供給し、当接部14に接触させた肌の加温が行われる。
【0065】
施療ボタン17cはイオン導入部を機能させるためのボタンである。具体的には、イオン導入部を構成するパルス電流供給回路49(後述)等に電力を供給し、コットン15を介して当接部14に当接させた肌へイオン導入が行われる。
【0066】
また、操作部17には、表示部17fが設けられている。この表示部17fは、目標温度や現在の肌温度、ヒータやペルチェ素子の温度など各種温度情報を表示して使用者に報知するためのものであり、後述の制御部30に電気的に接続されている。
【0067】
また、操作部17の上部位置にはインジケータランプ17dが設けられている。インジケータランプ17dは施療器A1の起動前は消灯し、起動後は点灯することで施療器A1の起動状態を示す。また、インジケータランプ17dは、いわゆる多色発光型のLEDにて構成しており、使用者に対し、施療器A1の状態が後述する肌温度調節モード又はイオン導入モードのいずれであるかについて色の違いにより報知する。
【0068】
次に、施療器A1の内部構成、特に当接部14近傍の内部構成について説明する。
図3は施療器A1の正面における当接部14の近傍を示した説明図であるが、同
図3は外観から視認できる構成の他に、当接部14の内部に収容されている外観からは視認できない構成の配設位置を破線及び網掛けにて示している。
【0069】
すなわち、
図3に示すように当接部14には、上面14aと対向する内面側に、網掛けの中抜き円領域として示すヒータ19が配設されている。
【0070】
また、外観より視認できる構成として、上面14aの中央には、肌温度測定部20が配されており、ヒータ19の配置領域と肌温度測定部20との間には断熱部21が形成されている。従って、これらヒータ19、断熱部21、肌温度測定部20は同心円状に配置されている。
【0071】
図4は、
図3におけるX-X断面を示した説明図である。当接部14は、その外装を成す金属製の当接カップ22を備え、基台24や支持体23、断熱部21、ヒータ19、肌温度測定部20を配して構成している。
【0072】
当接カップ22は、導電性や熱伝導性の良好な金属にて形成した部材であり、肌温度調節モードの時にヒータ19の熱を肌に伝達させたり、イオン導入モードの時に電極として機能させるための部位である。
【0073】
また、当接カップ22の底、すなわち、当接部14の上面14aとなる部分の中央には露出孔22bが形成されており、後述の断熱部21や肌温度測定部20を露出させた状態で配置可能としている。
【0074】
基台24及び支持体23は、当接カップ22の内方に配された断熱部21やヒータ19を支えるための部材である。
【0075】
断熱部21は、支持体23の略中央に配されている。断熱部21は熱伝導性が低くヒータ19の熱では変性しない材料にて形成されており、周辺各部にヒータ19の熱が伝搬するのを防ぐ役割を果たす。
【0076】
ヒータ19は、施療器A1が肌温度調節モードの時に肌に供給する熱を生成するための部位である。ヒータ19は、その上面を当接カップ22の裏面側に接触させた状態で配設しており、発生させた熱が当接カップ22へ円滑に伝達されるよう構成している。また、ヒータ19の下面側は支持体23や断熱部21にて支持し、ヒータ19の当接カップ22からの剥落を防止すると共に、ヒータ19の熱が他の部位へ逃げてロスにならないようにしている。
【0077】
ヒータ19は、施療器本体12の内部に配設されている制御基板26と図示しない配線によって電気的に接続されており、制御基板26上に構築された制御部30の制御により発生する熱量を変更できるよう構成している。
【0078】
また、ヒータ19には、ヒータ温度センサ19aが配設されている。このヒータ温度センサ19aは、ヒータ19の温度を測定するためのものであり、同ヒータ温度センサ19aにて得られた温度情報は図示しない配線を介して制御基板26(制御部30)に供給される。
【0079】
肌温度測定部20は、肌に発現している所定の要素としての肌温度をヒータ19等による加温の前に測定する肌状態測定部を制御部30と共に構成する部材の一つであり、当接部14の上面14aの中央、すなわち、当接カップ22の露出孔22bより露出させた断熱部21の凹部21aに配されている。肌温度測定部20は、肌の温度応じた情報(肌温度情報)を生成し、制御基板26(制御部30)へ供給するための部位であり、キャップ体20aと肌温度センサ20bとで構成している。
【0080】
キャップ体20aは肌に直接接触し、その熱を肌温度センサ20bに伝達させるための金属製のカバー材である。
【0081】
肌温度センサ20bは、キャップ体20aを介して伝達された肌の熱に応じて変化する電気的な要素(例えば、温度に応じた電圧や、温度に応じた抵抗値など。)を肌温度情報として生成したり保持するものである。肌温度センサ20bは図示しない配線を介して制御基板26(制御部30)に接続されており、肌温度情報は制御部30へ供給される。
【0082】
また、当接部14の特徴として、ヒータ19と肌温度測定部20との間に断熱部21を配置して、ヒータ19の熱が肌温度測定部20による肌温度の計測に影響を及ぼすことを可及的抑制するよう構成している。
【0083】
特に、上面14aの表面構造に着目すると分かるように、ヒータ19や同ヒータ19の熱を帯びる当接カップ22と肌温度測定部20との間には断熱部21の区画壁21bを介在させて、肌温度測定部20が熱的にできるだけ絶縁されるような構成とし、肌に発現している所定の要素としての肌温度を正確に測定できるようにしている。
【0084】
次に、施療器A1の電気的構成について説明する。
図5は施療器A1の電気的構成を示したブロック図である。
【0085】
制御基板26上に構築される制御部30は、その構成としてCPU45、ROM46、RAM47、RTC48等を備えており、施療器A1の稼動に必要なプログラムを実行可能としている。
【0086】
具体的には、ROM46はCPU45の処理において必要なプログラム等が格納されており、RAM47はそのプログラム等の実行に際し一時的な記憶領域として機能する。
【0087】
例えばROM46の所定領域には、処理を実現するためのプログラムの他、制御部30が環境温度補正手段として機能する際に参照される環境温度補正テーブルが記憶されている。この環境温度補正テーブルには、後述する要素測定値-目標温度テーブルを参照するに先立ち、環境温度が肌温度に与える影響を排除するためのデータが記憶されている。
【0088】
またROM46には、肌温度調節の目的別に目標温度群が格納される目的別記憶領域が備えられている。本実施形態に係る施療器A1では、目的別記憶領域内の所定アドレス範囲をイオン導入用記憶領域として割り当てており、ここには目標温度群としてイオン導入用要素測定値-目標温度テーブルが格納されている。
【0089】
なお、本実施形態に係る施療器A1は、肌温度調節の目的(加温の目的)がイオン導入前の予備加温に特定された専用品であることから目的別記憶領域にはイオン導入用記憶領域のみが割り当てられイオン導入用要素測定値-目標温度テーブルが格納されているが、先に述べた多目的の装置ならば、目的別記憶領域には各目的に応じた記憶領域が割り当てられ、それぞれ領域に各目的用の目標温度群(例えば、各目的用用要素測定値-目標温度テーブル)が格納される。また付言すれば、本実施形態に係る施療器A1の場合、多目的用の目的別記憶領域の構成を備え、ハードウェアやソフトウェア的にイオン導入用記憶領域にのみアクセス可能に構成することもできる。
【0090】
また、ROM46には、肌温度調節モードでのインジケータランプ17dの発光色の設定値である第1の色の値や、イオン導入モードでの発光色の設定値である第2の色の値なども記憶されている。
【0091】
また例えばRAM47の所定領域には、施療器A1の現在のモードを表すモード値や、当接カップ22に供給すべきパルス電流パターンを後述のパルス電流供給回路49に指示するための電流パターン値、インジケータランプ17dの発光色を後述のインジケータドライブ回路50に指示するための発光色値、制御部30による加温制御の目標温度値等が記憶される。
【0092】
RTC(Real Time Clock)48は、後述の割込処理を実行するための基準となるクロックパルスを発生させるためのものである。CPU45は、処理を実行している状態であっても、このRTC48から所定の周期(例えば2ミリ秒)毎に発生されるクロックパルスに応じて処理を中断させ割込処理を実行する。
【0093】
また制御部30には、パルス電流供給回路49やインジケータドライブ回路50が備えられている。
【0094】
パルス電流供給回路49は、電源部31(電池18)より供給される電力を元に、所定の電流を所定のパターンで当接カップ22に対し供給するための回路である。パルス電流供給回路49はRAM47の電流パターン値を監視しており、電流パターン値に応じたパターンの電流を当接カップ22に供給する。
【0095】
インジケータドライブ回路50は、インジケータランプ17dを所定の発光色で発光させるための回路である。インジケータドライブ回路50はRAM47の発光色値を監視しており、所定の色と対応する値に応じた色でインジケータランプ17dを発光させる。
【0096】
また、制御部30には、電源ボタン17a、肌温度調節ボタン17b、施療ボタン17c、ヒータ温度センサ19a、肌温度センサ20b、インジケータランプ17d、当接カップ22、ヒータ19、表示部17fが接続されており、制御部30におけるプログラムの実行状況に応じて参照されたり、制御駆動するよう構成している。
【0097】
例えば、制御部30は、電源ボタン17aや肌温度調節ボタン17b、施療ボタン17cを監視しており、各ボタンが押下された際には、RAM47の所定アドレスの値を書き換えて、施療器A1の使用者により各ボタンが操作されたことを記録する。
【0098】
また例えば、制御部30は、ヒータ温度センサ19aや肌温度センサ20bを監視している。ヒータ温度センサ19aや肌温度センサ20bから得られた温度情報は、RAM47の所定アドレスにそれぞれ逐次記憶される。なお、インジケータランプ17dや当接カップ22、ヒータ19、表示部17fは前述の通りであり、ここでは説明を省略する。
【0099】
次に、制御部30において実行される処理について、
図6~
図8を参照しつつ説明する。
図6は制御部30のCPU45にて実行されるメイン処理を示したフローであり、
図7は割込処理を示したフロー、
図8は肌温度調節モード処理を示したフローである。
【0100】
図6に示すように、メイン処理においてCPU45はまず、RAM47の所定アドレスを参照し、モード値が0であるか否か、すなわち使用者により待機状態が指示されているか否かについて判断を行う(ステップS11)。ここで、モード値が0であると判断した場合(ステップS11:Yes)には、CPU45は処理をステップS11へ戻す。一方、モード値が0ではないと判断した場合(ステップS11:No)には、CPU45は処理をステップS12へ移す。
【0101】
ステップS12においてCPU45は、モード値が1であるか否か、すなわち、使用者により肌温度調節モードが指示されているか否かについて判断を行う。ここで、モード値が1であると判断した場合(ステップS12:Yes)には、CPU45は処理をステップS13へ移す。
【0102】
ステップS13においてCPU45は、肌温度調節モード処理を実行する。肌温度調節モード処理を終えるとCPU45は、処理をステップS11へ戻す。
【0103】
一方、ステップS12においてモード値が1でないと判断した場合(ステップS12:No)には、CPU45は処理をステップS14へ移す。
【0104】
ステップS14においてCPU45は、モード値が2であるか否か、すなわち、使用者によりイオン導入モードが指示されているか否かについて判断を行う。ここでモード値が2であると判断した場合(ステップS14:Yes)には、CPU45は処理をステップS15へ移す。
【0105】
ステップS15においてCPU45は、発光色値を第2の色の値(例えば、赤色を示す値)に設定すると共に、RAM47の所定アドレスに記憶されている電流パターン値を参照し処理をステップS16へ移す。
【0106】
ステップS16においてCPU45は、パルス電流供給回路49に対して通電を指示し、接触している肌に対してイオン導入処理を所定時間に亘って行う。所定時間経過後は、モード値と発光色値に0を設定することで、施療器A1を待機状態とする。なお、これらステップS15やステップS16がCPU45にて実行されることで、制御部30や当接部14等は一体的に施療部として機能することとなる。ステップS16を終えたCPU45は、処理をステップS11へ戻す。
【0107】
一方、ステップS14においてモード値が2でないと判断した場合(ステップS14:No)には、CPU45は処理をステップS17へ移す。
【0108】
ステップS17においてCPU45は、RAM47の所定アドレスに記憶されているモード値を0に設定し待機状態とすると共に、目標温度の値をnull値、発光色値に0を設定して待機状態とする。本ステップS17を終えると、CPU45は再びステップS11に処理を戻す。
【0109】
次に、
図7を参照しつつ割込処理について説明する。CPU45は、処理を実行している状態であっても処理を中断させ割込処理を実行する場合がある。RTC48から所定の周期(例えば2ミリ秒)毎に発生されるクロックパルスに応じて、以下の割込処理を実行する。
【0110】
割込処理においてCPU45は、RAM47の所定アドレスを参照し、使用者が肌温度調節ボタン17bを操作したか否かについて判断を行う。ここで肌温度調節ボタン17bが押下されたと判断した場合(ステップS21:Yes)には、CPU45はRAM47に記憶されているモード値を1、発光色値を第1の色の値に設定し(ステップS22)、処理を分岐前のアドレスに戻す。一方、肌温度調節ボタン17bが押下されていないと判断した場合(ステップS21:No)には、CPU45は処理をステップS23へ移す。
【0111】
ステップS23においてCPU45は、RAM47の所定アドレスを参照し、使用者が施療ボタン17cを操作したか否かについて判断を行う。ここで施療ボタン17cが押下されたと判断した場合(ステップS23:Yes)には、CPU45はRAM47に記憶されているモード値を2、発光色値を第2の色の値に設定し(ステップS24)、処理を分岐前のアドレスに戻す。一方、施療ボタン17cが押下されていないと判断した場合(ステップS23:No)には、CPU45は処理をステップS25へ移す。
【0112】
ステップS25においてCPU45は、電源ボタン17aが長押しされているか否かについて判断を行う。ここで長押しされていると判断した場合(ステップS25:Yes)には、CPU45はRAM47に記憶されているモード値を0、発光色値を0に設定し(ステップS26)、処理を分岐前のアドレスに戻す。一方、電源ボタン17aが長押しされていないと判断した場合(ステップS25:No)には、CPU45は処理を分岐前のアドレスに戻す。
【0113】
次に、
図8を参照しつつ肌温度調節モード処理について説明する。肌温度調節モードにおいてCPU45は、RAM47の所定アドレスを参照し、目標温度が設定されているか否かについて判断を行う(ステップS31)。ここで、目標温度値がnullである場合(ステップS31:No)にはCPU45は処理をステップS32へ移す。一方、目標温度値に値が設定されている場合(ステップS31:Yes)には、CPU45は処理をステップS37へ移す。
【0114】
ステップS32においてCPU45は、当接部14に肌が接触しているかを判断すべく、当接カップ22に通電する。
【0115】
次にCPU45は、通電した際の電圧や抵抗値等を参照し、当接部14に肌が接触していると判断した場合(ステップS33:Yes)には、処理をステップS34へ移す。一方、肌が接触していないと判断した場合(ステップS33:No)には、CPU45は処理を分岐前のアドレスに戻す。
【0116】
ステップS34においてCPU45は、肌状態測定処理を行う。本実施形態に係る施療器A1では、肌に発現している測定対象としての所定の要素を肌温度としているため、ここでは肌の温度を測定する。なお、CPU45が本ステップS34を実行することで、制御部30や肌温度測定部20等は一体的に肌温度測定手段として機能する。
【0117】
具体的には、CPU45はRAM47の所定アドレスを参照し、肌温度センサ20bからの温度情報から肌温度を算出する。本肌状態測定処理を終えると、CPU45は処理をステップS35へ移す。
【0118】
ステップS35においてCPU45は、環境温度補正処理を実行する。具体的には、例えば室温の如く施療器A1を使用している環境の温度と、予めROM46に格納された環境温度補正テーブルとを参照し、環境温度が肌温度に与える影響が排除されるよう肌温度の補正を行う。なお、CPU45が本ステップS35を実行することで、制御部30は環境温度補正手段として機能する。本環境温度補正処理を終えると、CPU45は処理をステップS36へ移す。
【0119】
ステップS36においてCPU45は、目標温度決定処理を実行する。具体的には、RAM47のイオン導入用記憶領域に格納されたイオン導入用要素測定値-目標温度テーブルを参照し、同テーブルに定義された複数のイオン導入用要素測定値-目標温度データ対の中からイオン導入用要素測定値である補正された肌温度(補正肌温度)の値と対応する目標温度を取得し、これを制御目標温度として決定する。なお、CPU45が本ステップS36を実行することで、制御部30は目標温度決定手段として機能する。本目標温度決定処理を終えると、CPU45は処理をステップS37へ移す。
【0120】
ステップS37においてCPU45は、制御目標温度に応じた電力をヒータ19へ供給し、ヒータ19を発熱させる。このとき、RAM47の所定アドレスに記憶されるヒータ温度センサ19aからの温度情報を参照し、ヒータ19へ供給する電力を調整しながら発熱量の制御を行う。なお、CPU45が本ステップS37を実行することで、制御部30やヒータ19、ヒータ温度センサ19a等は、当接させた肌の加温を行う変温部である加温部として一体的に機能する。
【0121】
次にCPU45は、ステップS38として肌温度監視制御処理を行う。具体的には、CPU45は、ヒータ19の温度ではなく、肌自体の現在の温度をRAM47の所定アドレスに記録される肌温度センサ20bの温度情報から算出し、これを経時的に監視することで使用者の肌の温まりやすさの傾向に応じた温度制御を行う。
【0122】
例えば、ヒータ19により肌に加えた熱量に対して温度上昇が緩慢な場合は、使用者の肌の新陳代謝が低い状態であるものとし、後に行うイオン導入に最適化された肌温度とすべくヒータ19の発熱量を増やす処理などが行われる。
【0123】
また逆に、肌が暖まりやすいと判断された場合は、肌の新陳代謝が活発な状態であるものとし、発熱量を抑える処理が行われる。なお、CPU45が本ステップS38を実行することで、制御部30や肌温度測定部20等は、制御部30による加温部(変温部)の制御中の肌の温度を監視する肌温度監視手段として機能する。本肌温度監視制御処理を終えると、CPU45は処理を分岐前のアドレスに戻す。
【0124】
このように、本実施形態に係る施療器A1は上述のような構成を備えているため、以下のように動作する。
【0125】
すなわち、使用者が施療器A1の操作部17に配された電源ボタン17aを押下すると施療器A1は待機状態となり、使用者による肌温度調節モード又はイオン導入モードの選択待ちの状態となる。
【0126】
次に使用者が肌温度調節ボタン17bを押下すると、施療器A1は肌温度調節モードに移行する。肌温度調節モードではヒータ19による肌の加温に先立って、肌温度の測定が行われ、環境温度に応じた補正が成された後に、目標温度の決定を行う。
【0127】
ここで制御部30は、ROM46に格納されているイオン導入用要素測定値-目標温度テーブル、換言すれば、複数の要素測定値-目標温度データ対の中から補正肌温度に応じた要素測定値-目標温度データ対を選択し、イオン導入に適した温度であって、且つ、使用者の現在の肌状態に適した目標温度を決定する。
【0128】
従って、従来の施療装置の如く使用者の肌の状態とは無関係に予め定められた1つの温度を目標として加温するのではなく、複数の目標温度の中から補正肌温度に応じた適切な目標温度を自由度を持って選択すること可能であり、加温前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温することが可能となる。
【0129】
そして制御部30は、この目標温度を制御すべき温度としてヒータ19への供給電力を制御し、肌に対して適切な加温を行う。
【0130】
またこのとき、制御部30は肌温度監視制御処理を実行することで、使用者によってそれぞれ異なる肌の温まり方を捉えて更に適した加温を行うことができる。
【0131】
〔第2実施形態〕
次に、第2の実施形態に係る肌温度調節装置A2について説明する。この肌温度調節装置A2は、制御部30にて先述の加温処理が実行され加温部としての機能が発揮される点においては第1実施形態の施療器A1と同様であるが、当接させた肌の冷却を行うペルチェ素子25を備え、制御部30にて冷却処理が実行され冷却部としての機能が発揮される点や、施療部に該当する構成や処理を備えていない点で相違している。すなわち、第2の実施形態にて説明する肌温度調節装置A2は、変温部として加温部と冷却部との両者を備えるが施療部を備えず、肌温度調節の目的が特定の一の目的に限られた専用品であり、特にここでは、市販されている所定の化粧料について、この化粧料に含まれた成分による美容効果の向上を目的として肌の温度調節を行うための肌温度調節装置A2として説明する。
【0132】
図9は、本第2実施形態に係る肌温度調節装置A2の販売イメージを示した説明図である。肌温度調節装置A2は、化粧料Mと共に化粧箱Pに収容した状態で販売される美容セットSの構成物品である。
【0133】
化粧料Mには、肌に対する効果が肌の温度や代謝状態によって異なる美容成分が含まれており、肌温度調節装置A2は美容成分を効果的に肌で機能させるため、化粧料Mの使用前に肌を温めたり、肌を冷まして引き締める役割を有している。
【0134】
また
図9に示すように、肌温度調節装置A2の外観は施療器A1と比較して挟持体13を備えていない点で異なっているが、それ以外の構成は概ね同様である。
【0135】
図10は、肌温度調節装置A2の電気的構成を示したブロック図である。肌温度調節装置A2の電気的構成もまた先の施療器A1と大凡同様であるが、
図10に示すように施療部として機能する構成を備えていない点や、ペルチェ素子25を備える点で相違している。
【0136】
具体的には、施療器A1の操作部17に備えられていた施療ボタン17cや、制御部30内のパルス電流供給回路49は備えておらず、また、イオン導入の為に行われていたメイン処理のステップS14~ステップS16や、割り込み処理のステップS23、ステップS24は実行されない。
【0137】
また、肌温度調節モード処理においてステップS37のヒータ通電は必要に応じて行われることとし、
図11に示すように同ステップS37に引き続くステップS37-1として、ペルチェ素子25に対して必要に応じて通電を行い、同素子の冷却面と当接させた当接カップ22を冷却するペルチェ素子通電の処理が実行される。
【0138】
また、ROM46の目的別記憶領域には、イオン導入用記憶領域は存在しないが美容成分浸透用記憶領域が割り当てられており、そこには美容成分浸透用要素測定値-目標温度テーブルが格納されている。
【0139】
そして、本実施形態に係る肌温度調節装置A2は上述のような構成を備えているため、以下のように動作する。
【0140】
すなわち、使用者が電源ボタン17aを押下して待機状態となった肌温度調節装置A2に対し更に肌温度調節ボタン17bが押下されると、肌温度調節装置A2は肌温度調節モードに移行する。
【0141】
肌温度調節モードではヒータ19による肌の加温及び/又はペルチェ素子25による肌の冷却に先立って、肌温度の測定が行われ、環境温度に応じた補正が成された後に、目標温度の決定を行う。
【0142】
ここで制御部30は、ROM46に格納されている美容成分浸透用要素測定値-目標温度テーブルを参照し、同テーブルを構成する複数の要素測定値-目標温度データ対の中から補正肌温度に応じた要素測定値-目標温度データ対を選択し、美容成分の浸透に適した温度であって、且つ、使用者の現在の肌状態に適した目標温度を決定する。
【0143】
そして、決定した目標温度に至るよう必要に応じてステップS37やステップS37-1を実行することにより、その他構成と共に加温及び/又は冷却が可能な変温部を構成し、当接させた肌の温度調節が行われる。
【0144】
従って、従来の施療装置の如く使用者の肌の状態とは無関係に予め定められた1つの温度を目標として加温や冷却を行うのではなく、複数の目標温度の中から補正肌温度に応じた適切な目標温度を自由度を持って選択すること可能であり、加温や冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌の温度を適切に調節することが可能となる。
【0145】
また、前述の肌温度調節モードのフローに従って各種処理が実行されることにより、先の施療器A1と同様に、その他の機能についても実現される。
【0146】
〔第3実施形態〕
次に、第3の実施形態に係る施療器A3ついて説明する。この施療器A3は、制御部30にて先述の肌温度調節モード処理が実行され変温部である加温部としての機能が発揮される点においては第1実施形態の施療器A1と同様であるが、施療部に該当する機械的構成が別体で複数用意されており、これを付け替えることで複数種の施療が行えるよう構成されている。すなわち、第3の実施形態にて説明する施療器A3は、加温部と施療部との両方を備えるが、付け替え可能な施療部が複数用意されており、実行可能な施療の数だけ加温の目的も複数に亘り、単一の目的に使用される専用品でないもの(複数目的に係るもの)と言える。
【0147】
また、肌状態測定部や同肌状態測定部により肌の加温前に測定される所定の要素は、施療器A1や肌温度調節装置A2では肌温度測定部20による肌温度の測定であったが、施療器A3では、肌色計測部65による肌の色合い(所定波長光の反射率)の測定で肌状態の確認を行うこととしている。
【0148】
図12は、本第3実施形態に係る施療器A3の構成を示した説明図である。施療器A3は、先述の肌温度調節装置A2と凡そ同様の外観構成を備えるものであるが、
図12(a)に示すように、施療器本体部61にヘッド部62を装着して構成される点や、ヘッド部62は低周波マッサージヘッド62a、振動マッサージヘッド62b、光施療ヘッド62cの3種が用意されており、付け替えることで複数の施療を行えるようにしている点で特徴的である。
【0149】
施療器本体部61は、主に施療器A3の制御を行う部位である。施療器本体部61は、取り付けられたヘッド部62の種類に応じて施療器A3を施療目的に応じた肌温度調節を行う変温部(本第3実施形態では加温を行う加温部)として機能させたり、施療部としての機能を発揮させる。
【0150】
また、施療器本体部61の上端には、ヘッド取付部61aが形成されており、施療器本体部61とヘッド部62を着脱可能に連結しつつ電気的な接続が行われるよう構成している。
【0151】
ヘッド部62は、肌温度調節を行うための構成であるヒータ19やペルチェ素子25の如き構成(ここでは、加温を行うための構成であるヒータ19)と施療を行うための構成が収容されており、施療を行うための構成は各ヘッド部62により異なっている。なお、肌温度調節をする構成もまた、ヘッド毎に異なるようにしても良いのは勿論である。
【0152】
また、ヘッド部62には、施療器本体部61によりいずれのヘッド部62が装着されたかを認識させるための標識手段が備えられている。このような標識手段は特に限定されるものではないが、本第3実施形態における施療器A3では、各ヘッド部62毎に値の異なる電気抵抗にて実現している。
【0153】
具体的には、
図12(b)に示すように、施療器本体部61のヘッド取付部61aに設けた電気コネクタに標識手段の識別のための端子を割り当てており、取り付けられるヘッド部62毎に割り当てた固有の抵抗値を施療器本体部61の制御部30が電気的に識別することでヘッド部62の種類が判別される。
【0154】
付言すると、制御部30は、各ヘッド部62の違いを判別することで、どのような施療が行われる前の肌の温度調節(加温)であるかを認識する。すなわち、これら構成は後述する制御部30での目的認識処理の実行とともに、加温目的を認識する目的認識手段として機能するものである。
【0155】
図13は、
図12(a)にて示す低周波マッサージヘッド62aのY-Y断面を示した説明図である。低周波マッサージヘッド62aは、電極として機能する当接部64の当接カップ22を介して肌に各種パターンの低周波電流を付与し、筋肉の収縮運動を促すことでマッサージを行うためのヘッド部62である。なお、先に
図4を参照しつつ説明した施療器A1の当接部14の内部構成と同様の構成については同じ符号を付して説明を簡略化したり、割愛する場合がある。
【0156】
低周波マッサージヘッド62aは、同ヘッド部62の基部となるヘッド本体部71と、同ヘッド本体部71の前面側に形成された当接部64とを備えている。
【0157】
ヘッド本体部71は、当接部64の取付け基部としての役割を果たすと共に、施療器本体部61との連結部としての役割も担う部位である。
【0158】
当接部64は、当接カップ22の内部に支持体23や断熱部材21を配し、肌を温める為の熱源として機能するヒータ19やこれを監視するためのヒータ温度センサ19aを備えるほか、第1実施形態にて説明した施療器A1の当接部14(
図4参照)との違いとして、光学式の肌色計測部65を備えている。
【0159】
肌色計測部65は、発光素子66および受光素子67と、発光素子66から受光素子67へのV字状の光路を断熱部材21と共に形成する光路形成体68と、当接カップ22の露出孔22bに配置されたレンズ69などで構成される。66や受光素子67は、ヘッド取付部61aを介して施療器本体部61内の制御部30に電気的に接続されており、発光素子66からは、レンズ69へ向けて検査光が出射される。この検査光は、レンズ69に当接する肌面の被測定部で反射して受光素子67へ至る。
【0160】
このときの反射光量は、ユーザーの肌の色、すなわちメラニンの量によって変化する。具体的には、肌が黒くメラニンが多いユーザーの場合は、検査光が肌面で比較的多く吸収されるので、反射光量は少なくなる。逆に、肌が白くメラニンが少ないユーザーの場合は、検査光の吸収量が比較的少ないので、反射光量は多くなる。また、同じユーザーが使用する場合でも、メラニンを原因とするシミなどの異常部分では、シミなどが無い正常部分と比べて、検査光が多く吸収されて反射光量は少なくなる。紫色(380~430nm)の可視光は、それよりも波長が長い他色の可視光に比べてメラニンに吸収されやすく、そのため正常部分と異常部分に照射したときの反射光量の差異が大きいことから、肌異常の検知力に優れる。
【0161】
制御部30は、肌色計測部65からの出力情報を記憶し、反射光量が少なく(反射率が低く)くすんだ肌の色であれば肌の代謝が良好でないと判断したり、明るく澄んだ肌であれば肌の代謝が良好であるものと判断するなどして、その後の施療に応じた加温を行う。
【0162】
また、当接部64には肌温度センサ20bを具備する肌温度測定部20を配置している。ヒータ19や同ヒータ19の熱を帯びる当接カップ22と肌温度測定部20との間には断熱部21の区画壁21bを介在させて、肌温度測定部20が熱的にできるだけ絶縁されるような構成とし、肌に発現している所定の要素としての肌温度を正確に測定できるようにしている。
【0163】
また、当接カップ22には、施療器本体部61の制御部30内に構築された後述の低周波電流生成回路(図示せず)と電気的に接続される構成としており、制御部30の制御下で肌に対し所定の低周波電流を付与して肌を低周波マッサージできるようにしている。
【0164】
図14は、振動マッサージヘッド62bの断面を示した説明図である。振動マッサージヘッド62bは、内蔵する振動モータ72を振動させて当接させた肌のマッサージを行うためのヘッド部62である。
【0165】
振動マッサージヘッド62bは、同ヘッド部62の基部となるヘッド本体部71と、同ヘッド本体部71の前面側に形成された当接部73とを備えている。
【0166】
当接部73は、当接カップ22の内部に支持体23や断熱部材21を配し、肌を温める為の熱源として機能するヒータ19やこれを監視するためのヒータ温度センサ19a、制御部30と電気的に接続された当接カップ22、光学式の肌色計測部65を備える点で低周波マッサージヘッド62aと同様の構成を有しているが、振動モータ72を備えている点で構成を異にしている。
【0167】
振動モータ72は、モータ72aの駆動軸72bに偏心おもり72cを配設しており、制御部30の制御下で施療器本体部61より供給される電力により振動し、低周波マッサージヘッド62aの全体を振動させて当接部73の上面73aに当接させた肌の振動マッサージが行われる。
【0168】
図15は、光施療ヘッド62cの断面を示した説明図である。光施療ヘッド62cは、肌の細胞を活性化させる波長の光を施療用LED75から出射し、当接させた肌の施療を行うためのヘッド部62である。
【0169】
光施療ヘッド62cは、同ヘッド部62の基部となるヘッド本体部71と、同ヘッド本体部71の前面側に形成された当接部74とを備えている。
【0170】
当接部74は、当接カップ22の内部に支持体23や断熱部材21を配し、肌を温める為の熱源として機能するヒータ19やこれを監視するためのヒータ温度センサ19a、制御部30と電気的に接続された当接カップ22、光学式の肌色計測部65を備える点で低周波マッサージヘッド62aと同様の構成を有しているが、肌に対して所定波長の光を出社可能に施療用LED75を設けている点で構成を異にしている。
【0171】
施療用LED75は、図示しない配線によってヘッド取付部61aを介して施療器本体部61内の制御部30に接続されており、制御部30の制御下で施療器本体部61より供給される電力により発光し、当接部74の上面74aに当接させた肌に光による施療が行われる。
【0172】
図16は施療器A3の電気的構成を示したブロック図である。施療器A3は、施療器本体部61と複数のヘッド部62とで別体に構成されており、第1実施形態の施療器A1にて説明した電気的構成がそれぞれに分配されているが、各ブロックにおける機能は同様である。
【0173】
簡単に説明すると、施療器本体部61には、制御部30が備えられており、CPU45やROM46、RAM47、RTC48、インジケータドライブ回路50により、電源部31からの電力を受け、各種プログラム等を実行可能としている。
【0174】
また、制御部30には、施療器本体部61側の構成として、電源ボタン17aや、肌温度調節ボタン17b、施療ボタン17c、インジケータランプ17dが接続されている。
【0175】
一方、各ヘッド部62には、当接カップ22やヒータ温度センサ19aや肌温度センサ20b、受光素子67、ヒータ19、発光素子66が配設されており、ヘッド取付部61aを介して制御部30の制御の下、各構成からの情報を受信したり、各構成を駆動できるようにしている。
【0176】
また、本第3実施形態に係る施療器A3の特徴として、振動マッサージヘッド62bには振動モータ72が、光施療ヘッド62cにはLED75が配設されており、制御部30の制御の下、各構成を駆動させたり通電できるようにしている。
【0177】
また、本施療器A3の更なる特徴として、ROM46の目的別記憶領域には、低周波マッサージ用記憶領域や振動マッサージ用記憶領域、光施療用記憶領域が割り当てられており、低周波マッサージ用記憶領域には低周波マッサージ用要素測定値-目標温度テーブル、振動マッサージ用記憶領域には振動マッサージ用要素測定値-目標温度テーブル、光施療用記憶領域には光施療用要素測定値-目標温度テーブルが格納されている。
【0178】
また制御部30は、ヘッド取付部61aを介して取り付けられたヘッド部62の種類を判別し、RAM47の所定アドレスにその種類を示す値を記憶させる。
【0179】
次に、CPU45により実行される処理について、かいつまんで説明する。CPU45は、先に
図6~
図8を参照しつつ説明したメイン処理や割込処理、肌温度調節モード処理とほぼ同様の処理を実行するのであるが、相違する点として、CPU45は、メイン処理のステップS14においてモード値が2であると判断した場合(ステップS14:Yes)には、ステップS15やステップS16に代えて、
図17に示す各ステップを実行する。
【0180】
すなわちCPU45は、ステップS15-1において、RAM47の所定アドレスを参照し、装着されているヘッド部62の種類を示す値を取得する。次にCPU45は、取得した値、すなわち、装着されているヘッド部62に応じた通電や制御などの施療処理を実行する(ステップS16-1)。このステップS16-1を終えると、CPU45は、処理をステップS11へ戻す。
【0181】
また、施療器A3は、
図8にて示した肌温度調節モード処理のステップS34~ステップS36について、以下のような処理を実行する。
【0182】
すなわち、ステップS34においてCPU45は、肌状態測定処理を行うのであるが、本第3実施形態に係る施療器A3では、肌に発現している測定対象としての所定の要素を肌の色合いとしているため、ここでは肌の色合い(所定波長光の反射率)を測定する。
【0183】
具体的には、CPU45はRAM47の所定アドレスを参照し、肌色計測部65の受光素子67からの反射強度情報から肌の色合いを示す値を算出する。本肌状態測定処理を終えると、CPU45は処理をステップS35へ移す。
【0184】
ステップS35においてCPU45は、環境温度補正処理を実行する。予めROM46に格納された環境温度補正テーブルとを参照し、環境温度が肌の色合いに与える影響が排除されるよう肌の色合いを示す値の補正を行う。本環境温度補正処理を終えると、CPU45は処理をステップS36へ移す。
【0185】
ステップS36においてCPU45は、目標温度決定処理を実行する。具体的には、現在装着されているヘッド部62の種類を取得すべくRAM47の所定アドレスを参照する。そして、RAM47の各目的別の記憶領域のうち、装着されているヘッド部62に応じた記憶領域に格納されている要素測定値-目標温度テーブルを参照し、同テーブルに定義された複数の当該目的用要素測定値-目標温度データ対の中から当該目的用要素測定値である補正された肌の色合いを示す値と対応する目標温度を取得し、これを制御目標温度として決定する。本目標温度決定処理を終えると、CPU45は処理をステップS37へ移す。
【0186】
また、その他のステップにおいても、現在装着されているヘッド部62の種類に応じた制御が成されることとなる。
【0187】
そして、本実施形態に係る施療器A3は上述のような構成を備えているため、以下のように動作する。
【0188】
すなわち、使用者は、施療器A3の使用に先立ち、目的とする施療を行うためのヘッド部62を施療器本体部61に取り付ける。
【0189】
次に、使用が電源ボタン17aを押下し更に肌温度調節ボタン17bが押下されると、施療器A3は肌温度調節モードに移行する。
【0190】
肌温度調節モードではヒータ19による肌の加温に先立って、肌の色合い(所定波長光の反射率)の測定が行われ、環境温度に応じた補正が成された後に、目標温度の決定を行う。
【0191】
ここで制御部30は、ROM46の目的別記憶領域を参照し、複数備えられた個々の目的に応じた記憶領域、すなわち施療器A3では低周波マッサージ用記憶領域や振動マッサージ用記憶領域、光施療用記憶領域の中から、加温目的に対応する記憶領域に格納された要素測定値-目標温度テーブルを選択する。
【0192】
そして、同テーブルを構成する複数の要素測定値-目標温度データ対の中から肌の色合いを示す値の補正値に応じた要素測定値-目標温度データ対を選択し、その後の施療に適した温度であって、且つ、使用者の現在の肌状態に適した目標温度を決定する。
【0193】
付言すれば、要素測定値-目標温度テーブルは、加温目的毎、すなわち、その後に行われる施療の数だけ備えられている。従って、制御部30は、複数の要素測定値-目標温度テーブルの中から装着されたヘッド部62に種類に応じた要素測定値-目標温度テーブルを選択し、肌色計測部65を構成する受光素子67より得られた情報に基づき目標温度を決定し、その後の施療に適した温度を目標に肌の加温を行うこととなる。
【0194】
従って、従来の施療装置の如く使用者の肌の状態とは無関係に予め定められた1つの温度を目標として加温するのではなく、複数の目標温度の中から補正肌温度に応じた適切な目標温度を自由度を持って選択すること可能であり、加温前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温することが可能となる。
【0195】
また特に、肌の適切な加温のための目標温度を、複数の目的の中から所定の目的に応じ、更に複数の目標温度の中から自由度を持って選択することができる。
【0196】
〔第4実施形態〕
次に、第4の実施形態に係る肌温度調節装置A4について説明する。この肌温度調節装置A4は、制御部30にて先述の加温処理が実行され加温部としての機能が変温部として発揮される点においては第3実施形態の施療器A3と同様であるが、当接させた肌の冷却を行うペルチェ素子25を備え、制御部30にて冷却処理が実行され冷却部としての機能が発揮される点や、施療部に該当する構成や処理を備えていない点で相違している。すなわち、第4の実施形態にて説明する肌温度調節装置A4は、変温部として加温部と冷却部との両者を備えるが施療部を備えず、しかしながら肌温度調節の目的(加温の目的)は複数に亘り、単一の目的に使用される専用品でないもの(複数目的に係るもの)である。なお、施療器A3との違いとして肌温度調節装置A4は、操作部17にて表示部17fを備えていない点でも相違している。
【0197】
ここでは、このような装置の例として、化粧前の予備的な肌温度調節(加温や冷却)、マッサージのための予備加温、肌の活性化のための予備加温、肌の引き締めのための冷却の複数(4つ)の肌温度調節の目的を使用者がスイッチにて選択可能に構成した肌温度調節装置A4を例に説明する。
【0198】
図18は、本第4実施形態に係る肌温度調節装置A4の操作部17部分を示した説明図である。肌温度調節装置A4は、前述の肌温度調節装置A2と大凡同様の外観構成であるが、使用者が肌温度調節の目的を入力する手段として目的選択スイッチ17eが設けられている点で異なっている。
【0199】
具体的には、目的選択スイッチ17eは肌温度調節の目的に応じて切り替え可能なスイッチであり、ここでは、肌温度調節の目的が化粧前の予備的な肌温度調節の場合は「1」、マッサージのための予備加温の場合は「2」、肌の活性化のための予備加温の場合は「3」、肌の引き締めのための冷却の場合は「4」を選択するようにしている。
【0200】
図19は、肌温度調節装置A4の電気的構成を示したブロック図である。肌温度調節装置A4の電気的構成は先の肌温度調節装置A2と大凡同様であるが、
図19に示すように目的選択スイッチ17eが制御部30に接続されている点で相違している。
【0201】
また制御部30は、目的選択スイッチ17eの選択位置を判別し、RAM47の所定アドレスにその選択位置に応じた肌温度調節の目的を示す値、例えば、化粧前の予備的な肌温度調節の場合は「1」、マッサージのための予備加温の場合は「2」、肌の活性化のための予備加温の場合は「3」、肌の引き締めのための冷却の場合は「4」を記憶させる。
【0202】
また制御処理についても同様であり、メイン処理のステップS14~ステップS16や、割り込み処理のステップS23、ステップS24は実行されない。
【0203】
しかしながら、肌温度調節装置A2とは異なり、肌温度調節の目的が複数に亘るものであるため、肌温度調節モード処理での処理内容や目的別記憶領域の構成は、先述の施療器A3と類似している。
【0204】
すなわち、ROM46の目的別記憶領域には、化粧前予備加温用記憶領域やマッサージ用記憶領域、肌の活性化用記憶領域、肌の引き締め用記憶領域が割り当てられており、化粧前予備加温用記憶領域には化粧前予備加温用要素測定値-目標温度テーブル、マッサージ用記憶領域にはマッサージ用要素測定値-目標温度テーブル、肌の活性化用記憶領域には肌の活性化用要素測定値-目標温度テーブル、肌の引き締め用記憶領域には肌の引き締め用要素測定値-目標温度テーブルが格納されている。
【0205】
また、肌温度調節装置A4では、
図8にて示した肌温度調節モード処理のステップS36について、以下のような処理を実行する。
【0206】
すなわち、ステップS36においてCPU45は目標温度決定処理を実行するにであるが、具体的には、目的選択スイッチ17eの位置(肌温度調節の目的)を取得すべくRAM47の所定アドレスを参照する。そして、RAM47の各目的別の記憶領域のうち、肌温度調節の目的に応じた記憶領域に格納されている要素測定値-目標温度テーブルを参照し、同テーブルに定義された複数の当該目的用要素測定値-目標温度データ対の中から当該目的用要素測定値である補正された肌温度(補正肌温度)の値と対応する目標温度を取得し、これを制御目標温度として決定する。本目標温度決定処理を終えると、CPU45は処理をステップS37へ移す。
【0207】
ステップS37のヒータ通電の処理においてCPU45は、ヒータへ通電は必要に応じて行う。また、
図11にて示したように同ステップS37に引き続くステップS37-1として、ペルチェ素子25に対して必要に応じて通電を行い、同素子の冷却面と当接させた当接カップ22を冷却するペルチェ素子通電の処理が実行される。
【0208】
そして、本実施形態に係る肌温度調節装置A4は上述のような構成を備えているため、以下のように動作する。
【0209】
すなわち、使用者は、肌温度調節装置A4の使用に先立ち、肌温度調節の目的、すなわち、後に如何なる施療を効果的に行うために肌温度を調節するのかについて、目的選択スイッチ17eの位置選択を行う。
【0210】
次に、使用者が電源ボタン17aを押下し更に肌温度調節ボタン17bを押下すると、肌温度調節装置A4は肌温度調節モードに移行する。
【0211】
肌温度調節モードではヒータ19による肌の加温及び/又はペルチェ素子25による肌の冷却に先立って、肌温度の測定が行われ、環境温度に応じた補正が成された後に、目標温度の決定を行う。
【0212】
ここで制御部30は、ROM46の目的別記憶領域を参照し、複数備えられた個々の目的に応じた記憶領域、すなわち肌温度調節装置A4では化粧前予備加温用記憶領域やマッサージ用記憶領域、肌の活性化用記憶領域、肌の引き締め用記憶領域の中から、肌温度調節の目的に対応する記憶領域に格納された要素測定値-目標温度テーブルを選択する。
【0213】
また、同テーブルを構成する複数の要素測定値-目標温度データ対の中から補正肌温度に応じた要素測定値-目標温度データ対を選択し、その後の施療に適した温度であって、且つ、使用者の現在の肌状態に適した目標温度を決定する。
【0214】
そして、肌が目標温度に至るよう、必要に応じてヒータ19への通電による加温や、ペルチェ素子25への通電による冷却が行われる。
【0215】
従って、従来の施療装置の如く使用者の肌の状態とは無関係に予め定められた1つの温度を目標として肌温度を調節するのではなく、複数の目標温度の中から補正肌温度に応じた適切な目標温度を自由度を持って選択すること可能であり、加温や冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌温度を適切に調節することが可能となる。
【0216】
また特に、肌温度の適切な調節のための目標温度を、複数の目的の中から所定の目的に応じ、更に複数の目標温度の中から自由度を持って選択することができる。
【0217】
上述してきたように、本実施形態に係る肌温度調節装置や施療器によれば、当接させた肌の加温及び/又は冷却を行う変温部と、肌が所定の温度に至るよう前記変温部を制御する制御部と、を備えた肌温度調節装置において、肌に発現している所定の要素を前記変温部による加温又は冷却の前に測定する肌状態測定部と、同肌状態測定部による測定結果に応じて肌温度調節の目的に適した目標温度を決定する目標温度決定手段と、を備え、前記制御部は、前記目標温度を前記所定の温度として前記変温部の制御を行うこととしたため、肌温度調節の目的や加温・冷却前の個々の肌の状態の違いに応じて肌を適切に加温したり冷却することのできる肌温度調節装置を提供することができる。
【0218】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0219】
例えば、上述してきた肌温度調節装置や施療器は、加温のみ可能なものや、加温と冷却との両方を行えるものであったが、冷却のみ可能なものも本願発明に含まれるのは勿論である。
【0220】
また他の例として、上述してきた肌温度調節装置や施療器は、他の機器と有線又は無線により電気的に接続し、通信や情報の共有が可能な構成とすることも可能である。具体的には、制御部30に接続された所定の無線通信モジュール(例えば、Bluetooth(登録商標)通信モジュール)を備えることも可能である。
【0221】
このような構成とすれば、例えば、スマートフォンとの間で情報の授受や各種表示、操作などを行うことができる。また、スマートフォンを介してインターネット上のサーバと通信を行うこととすれば、当該サーバに蓄積されるビックデータを活用したり、履歴を分析し新たなサービスの提供のための拠り所とすることもできる。
【符号の説明】
【0222】
14 当接部
19 ヒータ
19a ヒータ温度センサ
20 肌温度測定部
20b 肌温度センサ
21 断熱部材
22 当接カップ
30 制御部
61 施療器本体部
62 ヘッド部
65 肌色計測部
A1 施療器
A2 肌温度調節装置
A3 施療器
A4 肌温度調節装置