(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】共重合体、ゴム組成物、樹脂組成物、タイヤ及び樹脂製品
(51)【国際特許分類】
C08F 236/08 20060101AFI20240709BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240709BHJP
C08F 210/00 20060101ALI20240709BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08F236/08
B60C1/00 Z
C08F210/00
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2020212890
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 重永
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099722(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066480(WO,A1)
【文献】特開2012-131965(JP,A)
【文献】特表2021-517194(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180356(WO,A1)
【文献】特表2022-506644(JP,A)
【文献】国際公開第2020/094993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08C 19/00- 19/44
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含む共重合体であって、
前記非共役オレフィン単位が、エチレンのみに由来し、
前記置換ブタジエン単位におけるビニル結合量(1,2-ビニル結合量及び3,4-ビニル結合量)が、20~60mol%であり、
主鎖が非環状構造のみからなり、
前記置換ブタジエン単位の含有量が、25mol%以上であり、
重量平均分子量(Mw)が、50,000以上であり、
前記置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含み、
前記置換ブタジエン単位が、下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の一価の炭化水素基であり、但し、R
1~R
6の内、少なくとも1つは、炭素数1~12の一価の炭化水素基である。]で表される置換ブタジエン化合物に由来することを特徴とする、共重合体。
【請求項2】
前記非共役オレフィン単位の含有量が、5~65mol%である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記置換ブタジエン化合物が、イソプレン、ミルセン、及びファルネセンの少なくとも1種から選択される、請求項1
又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記置換ブタジエン化合物が、イソプレンである、請求項
3に記載の共重合体。
【請求項5】
前記置換ブタジエン化合物が、イソプレンのみからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項6】
前記非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含む共重合体が、エチレン-イソプレン共重合体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項7】
融点が、70℃以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項8】
結晶量が、5~50%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の共重合体を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の共重合体を含むことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9に記載のゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする、樹脂製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、ゴム組成物、樹脂組成物、タイヤ及び樹脂製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤや樹脂製品用に、様々な重合体や、それを含むゴム組成物及び樹脂組成物が開発されてきている。
例えば、下記特許文献1には、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体であって、共役ジエン化合物部分の1,2-ビニル結合量が10mol%以上である共重合体が開示されており、より具体的には、スカンジウムを中心金属とする錯体の存在下、エチレンとブタジエンを共重合させて製造したエチレン-ブタジエン共重合体が開示されている。また、下記特許文献1には、該エチレン-ブタジエン共重合体を配合したゴム組成物は、ウェット性と低温特性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のタイヤや樹脂製品には、しばしば高い耐久性が求められる。この点に関して、本発明者が検討したところ、上記特許文献1に開示の共重合体は、耐久性が十分とはいえず、改良の余地があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、耐久性に優れる重合体を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる重合体を含み、耐久性に優れる、ゴム組成物、樹脂組成物、タイヤ及び樹脂製品を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の重合体は、非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含む共重合体であり、その要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含む共重合体であって、
前記置換ブタジエン単位におけるビニル結合量(1,2-ビニル結合量及び3,4-ビニル結合量)が、20~60mol%であり、
主鎖が非環状構造のみからなり、
前記置換ブタジエン単位の含有量が、25mol%以上であり、
重量平均分子量(Mw)が、50,000以上であり、
前記置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含み、
前記置換ブタジエン単位が、下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の一価の炭化水素基であり、但し、R
1~R
6の内、少なくとも1つは、炭素数1~12の一価の炭化水素基である。]で表される置換ブタジエン化合物に由来することを特徴とする。
かかる本発明の共重合体は、耐久性に優れる。
【0008】
本発明の共重合体の好適例においては、前記非共役オレフィン単位の含有量が、5~65mol%である。この場合、共重合体の耐久性が更に向上し、作業性も良好となる。
【0009】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記非共役オレフィン単位が、炭素数2~8のα-オレフィンに由来する。この場合、原料の入手が容易で、汎用であり、共重合体の製造コストを低減できる。
【0010】
ここで、前記非共役オレフィン単位が、エチレン又はプロピレンに由来することが好ましい。この場合、原料の入手が更に容易で、汎用であり、共重合体の製造コストを更に低減できる。
【0011】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記置換ブタジエン化合物が、イソプレン、ミルセン、及びファルネセンの少なくとも1種から選択される。この場合、原料のサステナブルの観点で、好ましい。
【0012】
ここで、前記置換ブタジエン化合物が、イソプレンであることが好ましい。この場合、共重合体を天然ゴムとブレンドした際、共重合体と天然ゴムとの相溶性が良好である。
【0013】
本発明の共重合体は、融点が、70℃以上であることが好ましい。この場合、共重合体の耐熱性が向上する。
【0014】
本発明の共重合体は、結晶量が、5~50%であることが好ましい。この場合、共重合体の耐久性が更に向上し、作業性も良好となる。
【0015】
また、本発明のゴム組成物は、上記の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、耐久性に優れる。
【0016】
また、本発明の樹脂組成物は、上記の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明の樹脂組成物は、耐久性に優れる。
【0017】
また、本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を含むことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、耐久性に優れる。
【0018】
また、本発明の樹脂製品は、上記の樹脂組成物を含むことを特徴とする。かかる本発明の樹脂製品は、耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含み、耐久性に優れる共重合体を提供することができる。
また、本発明は、かかる共重合体を含み、耐久性に優れる、ゴム組成物、樹脂組成物、タイヤ及び樹脂製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の共重合体、ゴム組成物、樹脂組成物、タイヤ及び樹脂製品を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0021】
<共重合体>
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含む。ここで、本発明の共重合体は、前記置換ブタジエン単位におけるビニル結合量(1,2-ビニル結合量及び3,4-ビニル結合量)が20~60mol%であり、主鎖が非環状構造のみからなり、前記置換ブタジエン単位の含有量が25mol%以上であり、重量平均分子量(Mw)が50,000以上であり、前記置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含み、前記置換ブタジエン単位が下記一般式(1):
【化2】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の一価の炭化水素基であり、但し、R
1~R
6の内、少なくとも1つは、炭素数1~12の一価の炭化水素基である。]で表される置換ブタジエン化合物に由来することを特徴とする。
【0022】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位を含むことで、非共役オレフィン単位を含まない(共)重合体よりも、耐久性に優れる。更に、本発明の共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなり、また、置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含み、特定の範囲のビニル結合量を有し、また、置換ブタジエン単位の含有量及び重量平均分子量(Mw)が一定値以上であるため、高い耐久性を有する。
【0023】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、置換ブタジエン単位と、を含み、非共役オレフィン単位及び置換ブタジエン単位のみからなってもよいし、更に他の単量体単位を含んでもよい。本発明の一好適実施形態において、共重合体は、エチレン-イソプレン共重合体である。
【0024】
前記非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。なお、非共役オレフィン化合物が炭素-炭素二重結合を2個以上有する場合、それらの炭素-炭素二重結合は、共役していない。該非共役オレフィン化合物としては、特に限定しないが、α-オレフィンが好ましく、炭素数2~8のα-オレフィンが更に好ましい。かかる炭素数2~8のα-オレフィンとして、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。また、非共役オレフィン化合物としては、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等も挙げられる。前記非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、単量体としての非共役オレフィン化合物は、得られる共重合体を用いたゴム組成物や樹脂組成物等の耐久性を更に向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物としては、α-オレフィンが好ましく、炭素数2~8のα-オレフィンが更に好ましく、エチレン及びプロピレンがより一層好ましく、エチレンが特に好ましい。α-オレフィンのような非環状の非共役オレフィン化合物は、オレフィンのα位に二重結合を有するため、後述する置換ブタジエン化合物と効率的に重合することができる上、得られる共重合体を用いたゴム組成物や樹脂組成物等の耐久性をより向上させることができる。また、炭素数2~8のα-オレフィン、特には、エチレン及びプロピレンは、入手が容易で、汎用であり、共重合体の製造コストを低減できる。
本発明の共重合体においては、前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましい。非共役オレフィン単位が非環状の非共役オレフィン単位である場合、得られる共重合体を用いたゴム組成物や樹脂組成物等の耐久性を更に向上させることができる。
【0025】
本発明の共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が、5~75mol%であることが好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、共重合体全体の5mol%以上であると、共重合体の耐久性が更に向上する。また、非共役オレフィン単位の含有量が75mol%以下であると、共重合体の作業性の観点から好ましい。前記非共役オレフィン単位の含有量は、耐久性の観点から、10mol%以上であることが更に好ましく、20mol%以上であることがより一層好ましく、また、作業性の観点から、74mol%以下であることが更に好ましく、72mol%以下であることがより一層好ましい。
【0026】
前記置換ブタジエン単位は、単量体としての置換ブタジエン化合物に由来する構成単位である。ここで、該置換ブタジエン化合物は、下記一般式(1):
【化3】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の一価の炭化水素基であり、但し、R
1~R
6の内、少なくとも1つは、炭素数1~12の一価の炭化水素基である。]で表される。
【0027】
上記一般式(1)中のR1~R6に関して、炭素数1~12の一価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基等のアルケニル基;ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキアジエニル基、オクタジエニル基、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル基等のアルカジエニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、4-メチル-3-ペンテニル基、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル基等が好ましい。
【0028】
前記置換ブタジエン化合物としては、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、ミルセン[下記構造式(1-1)で表される化合物等]、ファルネセン[下記構造式(1-2)で表される化合物等]等が挙げられる。
【化4】
前記置換ブタジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
前記置換ブタジエン化合物の中でも、イソプレン、ミルセン、及びファルネセンが好ましい。イソプレン、ミルセン、ファルネセンは、天然物由来の原料として入手できる。そのため、サステナブルの観点から、置換ブタジエン化合物として、イソプレン、ミルセン、又はファルネセンを用いることが好ましい。
【0030】
また、前記置換ブタジエン化合物としては、イソプレンが特に好ましい。置換ブタジエン化合物として、イソプレンを用いて得た共重合体は、天然ゴム(NR)とブレンドした際、天然ゴムとの相溶性が良好である。
【0031】
本発明の共重合体においては、前記置換ブタジエン単位の含有量が、25mol%以上であり、26mol%以上であることが好ましく、28mol%以上であることがより好ましく、また、95mol%以下であることが好ましく、90mol%以下であることがより好ましく、80mol%以下であることがより一層好ましい。置換ブタジエン単位の含有量が、共重合体全体の25mol%以上であると、共重合体の加硫を容易とすることができ、また、耐久性に優れる共重合体が得られ、また、95mol%以下であると、耐候性に優れる。
【0032】
本発明の共重合体は、前記置換ブタジエン単位におけるビニル結合量(1,2-ビニル結合量及び3,4-ビニル結合量)が、20~60mol%である。置換ブタジエン単位におけるビニル結合量が、20mol%以上であることで、耐久性が向上する。また、置換ブタジエン単位におけるビニル結合量が60mol%以下である共重合体は、後述する方法で製造し易い。なお、耐久性の観点から、置換ブタジエン単位におけるビニル結合量は、25mol%以上が好ましく、また、合成上の観点から、55mol%以下が好ましく、50mol%以下が更に好ましい。
前記ビニル結合量は、置換ブタジエン単位中の、1,2-結合している置換ブタジエン単位の含有量(即ち、1,2-ビニル結合量)と、3,4-結合している置換ブタジエン単位の含有量(即ち、3,4-ビニル結合量)との和である。
本発明の一好適実施形態においては、前記1,2-ビニル結合量が、1質量%以下であり、該1,2-ビニル結合量は、0.5質量%以下であってもよく、また、0質量%(NMRでの検出下限以下)であってもよい。
なお、共重合体の置換ブタジエン単位におけるビニル結合量は、後述する一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の中心金属Mや配位子CpR’を選択することで、任意の値に制御することができる。
【0033】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が-60℃~20℃であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が-29℃~-15℃であることが更に好ましい。上述のビニル結合量が増加するに従い、ガラス転移温度が上昇する傾向があるため、後述する一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の中心金属Mや配位子CpR’を選択することで、ガラス転移温度を任意の値に制御することができる。
ここで、該ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定した値である。
【0034】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、50,000以上であり、100,000以上であることが好ましく、200,000以上であることが更に好ましい。共重合体をゴム組成物や樹脂組成物に使用した際、Mwが50,000以上であると、ゴム組成物や樹脂組成物の耐久性を更に向上させることができ、また、共重合体をゴム組成物や樹脂組成物に配合する際の作業性の観点から、Mwは、4,000,000以下であることが好ましく、3,000,000以下であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることが更に好ましい。共重合体をゴム組成物や樹脂組成物に使用した際、Mnが10,000以上であると、ゴム組成物や樹脂組成物の耐久性を更に向上させることができ、また、共重合体をゴム組成物や樹脂組成物に配合する際の作業性の観点から、Mnは、2,000,000以下であることが好ましく、1,500,000以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の共重合体は、分子量分布(ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)/ポリスチレン換算数平均分子量(Mn))が1~4であることが好ましい。共重合体の分子量分布が4以下であれば、共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0037】
なお、上述した重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0038】
本発明の共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなる。これにより、耐久性を向上させることができる。なお、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
【0039】
本発明の共重合体は、前記置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含む。これにより、耐久性を向上させることができる。なお、共重合体が、置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含むか否かの確認には、1H-NMR、13C-NMRを用いる。具体的には、1H-NMRの場合、1,4結合は5.1ppm、3,4結合は4.7ppm(CDCl3)に観測され、13C-NMRの場合、1,4-シスは23ppm、1,4-トランスは16ppm、3,4-ビニルは18ppm(CDCl3)にそれぞれ観測され、置換ブタジエン単位が連鎖している連鎖部分を含むことを示す。
【0040】
本発明の共重合体は、融点が、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることが更に好ましく、また、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。共重合体の融点が70℃以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐熱性が向上し、また、130℃以下であれば、作業性が向上する。
ここで、該融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定した値である。
【0041】
本発明の共重合体は、結晶量が、5~50%であることが好ましい。共重合体の結晶量が5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する結晶性を十分に確保して、共重合体の耐久性が更に向上する。また、共重合体の結晶量が50%以下であれば、後述するゴム組成物や樹脂組成物の混練の際の作業性の観点から好ましい。また、前記結晶量は、耐久性の観点から、10%以上であることが更に好ましく、14%以上であることがより一層好ましく、また、作業性の観点から、40%以下であることが更に好ましく、30%以下があることがより一層好ましい。
前記共重合体の結晶量は、後述する一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の中心金属Mや配位子CpR’を選択することで、任意の値に制御することができる。該結晶量は、共重合体中の非共役オレフィン単位が連続している部分の量に対応し、中心金属Mや配位子CpR’を選択して、モノマー転化のランダム性を変えることで、共重合体の結晶量を制御できるものと考えられる。
【0042】
なお、本発明の共重合体は、結晶成分を有しても、有しなくてもよい。共重合体が結晶成分を有する場合、結晶成分に起因する結晶融解エネルギーにより、共重合体の耐久性が更に向上する。一方、共重合体が結晶成分を有しない場合、共重合体の作業性が向上し、高分子材料としての作動領域が広くなる(結晶成分を有すると、結晶融点以上の温度で融解することにより、弾性率が低下するが、該弾性率の低下を抑制できる)。
【0043】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体は、例えば、下記一般式(2):
【化5】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、2つ以上の置換基を有する、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル又は置換フルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示し、[B]
-は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を含む重合触媒組成物の存在下で、非共役オレフィン化合物と、置換ブタジエン化合物と、を共重合させることで製造できる。
【0044】
上記一般式(2)で表され、式中のCpR’が、2つ以上の置換基を有するハーフメタロセンカチオン錯体においては、CpR’が嵩高いため、立体障害によって、立体規則的に共重合を進行させることができる。そして、上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、中心金属Mや、配位子CpR’を変更することで、製造される共重合体のビニル結合量、ガラス転移温度、結晶量等を制御することができる。
【0045】
上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル又は置換フルオレニルであり、これらの中でも、置換インデニルが好ましい。CpR’が置換インデニルである場合、製造される共重合体のビニル結合量、ガラス転移温度、結晶量等を更に制御し易くなる。
【0046】
一般式(2)において、シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’(置換シクロペンタジエニル)は、C5H5-yRyで示され得る。
ここで、yは、シクロペンタジエニル環上の置換基Rの数であり、1~5の整数である。yは、2以上であり、即ち、置換基Rの数が2つ以上である。置換基Rの数が2つ以上であることで、CpR’が嵩高くなり、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなり、ビニル結合量が増加し易くなり、ガラス転移温度も高くなり易くなる。
置換基Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。また、少なくとも1つの置換基Rは、Siを含むことが好ましい。Siを含む置換基Rは、錯体の安定性を維持しつつ、CpR’を嵩高くでき、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、シリルSiに加えて、ゲルミルGe、スタニルSnが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のSiを含む置換基が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つの置換基Rは、tert-ブチルジメチルシリル基、ベンジル基等の嵩高い置換基であることが好ましい。置換基Rが嵩高い置換基であると、CpR’が一層嵩高くなり、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。また、置換基Rが嵩高い置換基であると、製造される共重合体の結晶量が減少する傾向があり、これは、モノマー転化のランダム性が向上するためと考えられる。
【0047】
一般式(2)において、インデニル環を基本骨格とするCpR’(置換インデニル)は、C9H7-yRy又はC9H11-yRyで示され得る。
ここで、yは、インデニル環上の置換基Rの数であり、1~7又は1~11の整数である。yは、2以上であり、即ち、置換インデニルは、2つ以上の置換基を有する。置換インデニルが2つ以上の置換基Rを有することで、CpR’が嵩高くなり、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなり、ビニル結合量が増加し易くなり、ガラス転移温度も高くなり易くなる。
また、置換基Rの少なくとも1つは、置換インデニルの五員環上に存在することが好ましい。置換インデニルは、五員環側で中心金属Mに配位するため、置換基Rが五員環上に存在すると、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際に、CpR’(置換インデニル)による立体障害の影響が大きくなり、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。
置換基Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。また、少なくとも1つの置換基Rは、Siを含むことが好ましい。Siを含む置換基Rは、錯体の安定性を維持しつつ、CpR’を嵩高くでき、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、シリルSiに加えて、ゲルミルGe、スタニルSnが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のSiを含む置換基が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つの置換基Rは、tert-ブチルジメチルシリル基、ベンジル基等の嵩高い置換基であることが好ましい。置換基Rが嵩高い置換基であると、CpR’が一層嵩高くなり、重合される置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。また、置換基Rが嵩高い置換基であると、製造される共重合体の結晶量が減少する傾向があり、これは、モノマー転化のランダム性が向上するためと考えられる。
置換インデニルとして、具体的には、1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル、1-tert-ブチルジメチルシリル-3-トリメチルシリルインデニル、1,3-ビス(トリメチルシリル)インデニル、1-tert-ブチルジメチルシリル-3-ベンジルインデニル、1-tert-ブチルジメチルシリル-3-フェニルインデニル、2-tert-ブチルジメチルシリルインデニル、2-トリメチルシリルインデニル等が挙げられる。
【0048】
一般式(2)において、フルオレニル環を基本骨格とするCpR’(置換フルオレニル)は、C13H9-yRy又はC13H17-yRyで示され得る。
ここで、yは、フルオレニル環上の置換基Rの数であり、1~9又は1~17の整数である。yは、2以上であり、即ち、置換基Rの数が2つ以上である。置換基Rの数が2つ以上であることで、CpR’が嵩高くなり、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなり、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。
置換基Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。また、少なくとも1つの置換基Rは、Siを含むことが好ましい。Siを含む置換基Rは、錯体の安定性を維持しつつ、CpR’を嵩高くでき、置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、シリルSiに加えて、ゲルミルGe、スタニルSnが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のSiを含む置換基が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つの置換基Rは、tert-ブチルジメチルシリル基、ベンジル基等の嵩高い置換基であることが好ましい。置換基Rが嵩高い置換基であると、CpR’が一層嵩高くなり、重合される置換ブタジエン化合物が中心金属Mに接近する際の立体障害としての影響が大きくなって、ビニル結合量が増加し易くなり、また、ガラス転移温度も高くなり易い。また、置換基Rが嵩高い置換基であると、製造される共重合体の結晶量が減少する傾向があり、これは、モノマー転化のランダム性が向上するためと考えられる。
【0049】
一般式(2)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
ここで、中心金属Mは、原子半径が小さい方が、製造される共重合体のビニル結合量が増加する傾向があり、また、製造される共重合体のガラス転移温度が高くなる傾向がある。また、中心金属Mは、原子半径が大きい方が、製造される共重合体の結晶量が増加する傾向があり、これは、モノマー転化のランダム性が低くなるためと考えられる。従って、原子半径が小さい中心金属Mを使用することで、共重合体のビニル結合量を増加させ(共重合体のガラス転移温度を高くし)つつ、共重合体の結晶量を減少させることができる。逆に、原子半径が大きい中心金属Mを使用することで、共重合体のビニル結合量を小さく(共重合体のガラス転移温度を低く)しつつ、共重合体の結晶量を増加させることができる。
上記の中心金属Mの中でも、反応性の観点から、ネオジムNd、ガドリニウムGd、ホルミウムHo、イットリウムYが好ましく、ガドリニウムGd、イットリウムYがより好ましい。
【0050】
一般式(2)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示す。ここで、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0051】
一般式(2)において、Xが表すアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシ基等が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0052】
一般式(2)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基等が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0053】
一般式(2)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビス(トリメチルシリル)アミド基等のビス(トリアルキルシリル)アミド基;ビス(ジメチルシリル)アミド基等のビス(ジアルキルシリル)アミド基等が挙げられ、これらの中でも、ビス(トリメチルシリル)アミド基、ビス(ジメチルシリル)アミド基が好ましい。
【0054】
一般式(2)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0055】
一般式(2)において、Xが表す炭素数1~20の一価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0056】
一般式(2)において、Xとしては、ビス(トリメチルシリル)アミド基、ビス(ジメチルシリル)アミド基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基が好ましい。
【0057】
一般式(2)において、[B]-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0058】
上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0~3個、好ましくは0~1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
また、上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0060】
上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化6】
【0061】
ここで、一般式(3)又は(4)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して置換シクロペンタジエニル、置換インデニル又は置換フルオレニルを示し、Xは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物において、[A]+は、カチオンを示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す。
【0062】
[A]+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン(「トリチルカチオン」ともいう)、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0063】
上記反応に用いる一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(「トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」ともいう)等が好ましい。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物は、一般式(3)又は(4)で表される化合物に対して0.1~10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。なお、一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(3)又は(4)で表される化合物と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中において一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。
【0064】
上記一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することができる。
なお、重合反応系において、重合触媒組成物に含まれるハーフメタロセンカチオン錯体の濃度は、0.0001~0.1mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0065】
前記重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、本明細書においては、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体(インデニル、フルオレニル等)が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称する。
【0066】
上記重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択することができる。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO-3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、ハーフメタロセンカチオン錯体の中心金属Mに対する、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率(Al/M)が、10~1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0068】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(5):
AlR7R8R9 ・・・ (5)
(式中、R7及びR8はそれぞれ独立して炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子であり、R9は炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、水素化ジアルキルアルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられ、水素化ジアルキルアルミニウムとしては、水素化ジイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、ハーフメタロセンカチオン錯体に対して1~50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0069】
上記重合触媒組成物においては、一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を、適切な助触媒と組み合わせることで、得られる共重合体のビニル結合量や分子量を制御することができる。
【0070】
なお、前記重合触媒組成物は、ハロゲン化合物を含まないことが好ましい。従来の、ハーフメタロセンカチオン錯体やメタロセン錯体を用いた重合反応では、助触媒として、有機アルミニウム化合物を用いる場合、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド等のハロゲン化合物が使用されることが多いが、一般式(2)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を、ハロゲン化合物と併用しないことで、ビニル結合量が高い共重合体を得ることができる。
【0071】
本発明の共重合体は、上記重合触媒組成物の存在下で、非共役オレフィン化合物と、置換ブタジエン化合物と、を共重合させる工程(以下、共重合工程とも呼ぶ)を経て製造でき、更に、必要に応じて、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を含んでもよい。また、非共役オレフィン化合物、置換ブタジエン化合物に加えて、他のモノマーを共重合させることもできる。
【0072】
共重合工程における、重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、ヘキサン(例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン)等が挙げられる。中でも、ヘキサンが好ましい。ヘキサンを溶媒として用いて重合を行うと、環境負荷を低減することができる。
【0073】
上記重合触媒組成物の存在下では、反応温度、反応時間、非共役オレフィン化合物及び置換ブタジエン化合物の量及び比率等の反応条件を制御することによって、製造される共重合体における、非共役オレフィン単位、置換ブタジエン単位の含有率、結合含量(シス-1,4結合量、トランス-1,4結合量、3,4-ビニル結合量及び1,2-ビニル結合量)を制御することもできる。
【0074】
共重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。重合反応の重合温度は、特に限定しないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。重合反応の圧力は、0.1~10.0MPaの範囲とすることが好ましい。重合反応の反応時間は、特に限定しないが、例えば、1秒~10日の範囲が好ましく、得られる共重合体について所望するミクロ構造、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0075】
前記カップリング工程は、前記共重合工程において得られた共重合体の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
前記カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
前記カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を増加させることができる。
【0076】
前記洗浄工程は、前記共重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、また、これらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することもできる。添加する酸の量は、溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では、酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0077】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、耐久性に優れる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述の共重合体を含み、更に必要に応じて、その他のゴム成分、充填剤、架橋剤、樹脂成分、軟化剤、その他の成分を含むことができる。
【0078】
本発明のゴム組成物において、前記ゴム成分中の、前記共重合体の含有率は、10~100質量%の範囲が好ましく、20~100質量%の範囲が更に好ましく、30~100質量%の範囲がより一層好ましい。ゴム成分中の、前記共重合体の含有率が10質量%以上であれば、共重合体による作用が十分に発揮され、ゴム組成物の耐久性が更に向上する。
【0079】
なお、その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0080】
本発明のゴム組成物は、充填剤を含むことが好ましい。前記ゴム組成物が充填剤を含む場合、ゴム組成物の補強性を向上させることができる。該充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウムが好ましく、カーボンブラック、シリカが更に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックとしては、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。
また、前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。
また、前記水酸化アルミニウムとしては、ハイジライト(登録商標、昭和電工社製)等を用いることが好ましい。
前記充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10~120質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましく、30~80質量部が特に好ましい。前記充填剤の含有量が10質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が十分に得られ、また、120質量部以下であることにより、良好な作業性を保持することができる。
【0081】
本発明のゴム組成物は、前記充填剤としてシリカを含有する場合には、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
ここで、シランカップリング剤(g)としては、特に限定されるものではない。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記シランカップリング剤の含有量については、前記シリカの含有量に対して(シリカの含有量を100質量部としたとき)3~15質量部の範囲であることが好ましく、5~15質量部の範囲であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量がシリカ100質量部に対して3質量部以上であれば、シリカによる高弾性率及び耐破壊性の向上効果が十分に発揮され、また、シランカップリング剤の含有量がシリカ100質量部に対して15質量部以下であれば、ゴム成分がゲル化するのを確実に抑制できる。
【0082】
本発明のゴム組成物は、架橋する際には、架橋剤を含むことが好ましい。前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。
【0083】
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。
前記加硫促進剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。
【0084】
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、樹脂成分を含むことが好ましい。ゴム組成物が樹脂成分を含有することで、ゴム組成物の作業性が更に向上する。また、ゴム組成物が、前記共重合体と共に樹脂成分を含むことにより、共重合体に由来する高い耐久性が維持され、かつ、タイヤ等の成型時において他部材と接着させる際のタッキネスに優れたゴム組成物をもたらすことができ、タイヤ等の生産性の向上にもつながる。
前記樹脂成分としては、種々の天然樹脂及び合成樹脂を使用することができ、具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂等を使用することが好ましい。これら樹脂成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、5~150質量部が好ましく、5~100質量部が更に好ましく、10~80質量部がより一層好ましく、10~50質量部が特に好ましい。
【0085】
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、軟化剤を含むことが好ましい。ゴム組成物が軟化剤を含有することで、ゴム組成物の作業性が更に向上する。
前記軟化剤としては、鉱物由来のミネラルオイル、石油由来のアロマチックオイル、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、天然物由来のパームオイル等が挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物の耐摩耗性の観点から、鉱物由来の軟化剤及び石油由来の軟化剤が好ましい。
前記軟化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1~150質量部が好ましく、1~130質量部が更に好ましく、5~110質量部がより一層好ましい。
【0086】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤等の公知の添加剤を、その使用目的に応じて使用することができる。
【0087】
本発明のゴム組成物は、後述するタイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベヤベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホース等に用いることができる。
【0088】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上述の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明の樹脂組成物は、耐久性に優れる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、上述の共重合体を含み、更に必要に応じて、その他の樹脂成分、及び各種添加剤を含むことができる。
なお、本発明においては、樹脂組成物が上記の共重合体を含む場合は、該共重合体は、樹脂成分として扱い、樹脂成分中の上記共重合体の含有率は10質量%以上が好ましい。
【0089】
ここで、他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル等が挙げられる。他の樹脂成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
また、添加剤としては、帯電防止剤、滑剤、結晶核剤、粘着性付与剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、香料、難燃剤等が挙げられる。
【0090】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を含むことを特徴とする。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を加硫してなる加硫ゴムを具えるとも言える。かかる本発明のタイヤは、耐久性に優れる。
タイヤにおける本発明のゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラー等が挙げられるが、トレッドに用いることが好ましい。本発明のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、製造時の作業性及び耐久性に優れたタイヤとなる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外、特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、本発明のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、該空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0091】
<樹脂製品>
本発明の樹脂製品は、上述の樹脂組成物を含むことを特徴とする。かかる本発明の樹脂製品は、耐久性に優れる。
なお、本発明の樹脂製品の用途は、特に限定されず、少なくとも一部に樹脂部分を有する種々の物品に適用できる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
(比較例1)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン80gを含むトルエン溶液369gと、トルエン21gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、ビス(1-ベンジルインデニル)モノ(ビス(ジメチルシリル)アミド)ネオジム錯体{[1-PhCH2C9H5]2Nd[N(SiHMe2)2]}12μmol、トリイソブチルアルミニウム0.24mmol、水素化ジイソブチルアルミニウム0.60mmol、トルエン5mLを仕込んだ後、30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]を12μmol仕込み、更に30分間熟成を行った。
その後、グローブボックスから反応器を取り出し、前記1L耐圧ガラス反応器に加え、室温で900分反応させた。
重合後、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、50℃で真空乾燥し重合体(ポリイソプレン)を得た。得られた重合体の収量は60gであった。
【0094】
(比較例2)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン80gを含むトルエン溶液369gと、トルエン21gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、ビス(1-ベンジルインデニル)モノ(ビス(ジメチルシリル)アミド)ネオジム錯体{[1-PhCH2C9H5]2Nd[N(SiHMe2)2]12μmol、トリイソブチルアルミニウム0.24mmol、水素化ジイソブチルアルミニウム0.36mmol、トルエン5mLを仕込んだ後、30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]を12μmol仕込み、更に30分間熟成を行った。
その後、グローブボックスから反応器を取り出し、前記1L耐圧ガラス反応器に加え、室温で900分反応させた。
重合後、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、50℃で真空乾燥し重合体(ポリイソプレン)を得た。得られた重合体の収量は72gであった。
【0095】
(比較例3)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン100gを含むトルエン溶液460gと、トルエン31gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、モノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}10μmol、トリイソブチルアルミニウム0.20mmol、水素化ジイソブチルアルミニウム1.50mmol、トルエン5mLを仕込んだ後、30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]を10μmol仕込み、更に30分間熟成を行った。
その後、グローブボックスから反応器を取り出し、前記1L耐圧ガラス反応器に加え、室温で240分反応させた。
重合後、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、50℃で真空乾燥し重合体(ポリイソプレン)を得た。得られた重合体の収量は95gであった。
【0096】
(比較例4)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン100gを含むトルエン溶液460gと、トルエン35gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、モノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}5.0μmol、トリイソブチルアルミニウム0.20mmol、水素化ジイソブチルアルミニウム0.90mmol、トルエン5mLを仕込んだ後、30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]を5μmol仕込み、更に30分間熟成を行った。
その後、グローブボックスから反応器を取り出し、前記1L耐圧ガラス反応器に加え、室温で900分反応させた。
重合後、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、50℃で真空乾燥し重合体(ポリイソプレン)を得た。得られた重合体の収量は95gであった。
【0097】
(比較例5)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン100gを含むトルエン溶液461gと、トルエン31gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ホルミウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Ho[N(SiHMe2)2]2}0.010mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]0.010mmol、トリイソブチルアルミニウム0.20mmol及び水素化ジイソブチルアルミニウム1.8mmolを仕込み、トルエン5mLを加えて触媒溶液とした。その触媒溶液を前記1L耐圧ガラス反応器に加え、50℃で900分反応させた。
2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその1L耐圧ガラス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、重合体を90g得た。
【0098】
(比較例6)
十分に乾燥した1L耐圧ガラス反応器に、イソプレン80gを含むトルエン溶液368gと、トルエン25gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ホルミウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Ho[N(SiHMe2)2]2}0.008mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]0.010mmol、トリイソブチルアルミニウム0.16mmol及び水素化ジイソブチルアルミニウム2.4mmolを仕込み、トルエン5mLを加えて触媒溶液とした。その触媒溶液を前記1L耐圧ガラス反応器に加え、室温で900分反応させた。
2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその1L耐圧ガラス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、重合体を65g得た。
【0099】
(実施例1)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、イソプレン150gを含むトルエン溶液691gと、トルエン59gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}5.0μmol、トリイソブチルアルミニウム0.1mmol及び水素化ジイソブチルアルミニウム2.50mmolを仕込み、トルエン5.0mLを加えて触媒溶液とした。該触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.0MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、85℃で計180分共重合を行った。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体(エチレン-イソプレン共重合体)118gを得た。
【0100】
(実施例2)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、イソプレン82gを含むトルエン溶液380gと、トルエン370gと、を加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ((1-tert-ブチルジメチルシリル-3-ベンジル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1-[(t-Bu)Me2Si]-3-BnC9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}0.010mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]0.010mmol、トリイソブチルアルミニウム0.020mmol及び水素化ジイソブチルアルミニウム2.5mmolを仕込み、トルエン5mLを加えて触媒溶液とした。該触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、85℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.0MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、85℃で計2時間5分共重合を行った。なお、エチレンの投入開始から30分後、エチレンの供給を停止したところ、エチレンの圧力は1.0MPaから0.5MPaに変化した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体(エチレン-イソプレン共重合体)80gを得た。
【0101】
<(共)重合体の分析>
得られた(共)重合体について、以下の方法で、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、エチレン単位、イソプレン単位の含有量、ビニル結合量(1,2-ビニル結合量、3,4-ビニル結合量)、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶量を測定し、更に、主鎖構造及び連鎖構造を確認した。結果を表1に示す。
【0102】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)
(1-1)比較例の重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)については、以下のようにして測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8320GPC、カラム:東ソー社製GMHHL×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、得られた各重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃、測定流速は1mL/min、移動相はテトラヒドロフラン(THF)、溶液濃度は1mg/mL、注入量は100μLである。
【0103】
(1-2)実施例の共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)については、以下のようにして測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー(株)製HLC-8220GPC/HT、カラム:東ソー(株)製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃、測定流速は1mL/min、移動相はテトラヒドロフラン(THF)、溶液濃度は1mg/mL、注入量は100μLである。
【0104】
(2)エチレン単位、イソプレン単位の含有量
共重合体中のエチレン単位、イソプレン単位の含有量を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)における、各ピークの積分比より求めた。
【0105】
(3)ビニル結合量(1,2-ビニル結合量、3,4-ビニル結合量)
得られた各(共)重合体について、NMR(Bruker社製、AVANCE 600)を用いてNMRスペクトルを得た。1H-NMR及び13C-NMRの測定により得られたピーク(1H-NMR:δ 4.6-4.8(3,4-ビニルユニットの=CH2)、5.0-5.2(1,4-ユニットの-CH=)、5.6-5.8(1,2-ユニットの-CH=)、4.8-4.9(1,2-ユニットの=CH2)、13C-NMR:δ 23.4(1,4-シスユニット)、15.9(1,4-トランスユニット、18.6(3,4-ユニット))の積分比から、1,2-ビニル結合量、3,4-ビニル結合量を算出し、その合計からビニル結合量を算出した。
【0106】
(4)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、(共)重合体のガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0107】
(5)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、(共)重合体の融点(Tm)を測定した。
【0108】
(6)結晶量
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用いて、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温し、(共)重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH)と、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)とを測定し、(共)重合体とポリエチレンとのエネルギー比率(ΔH/ΔH0)から、結晶量(%)を算出した。
【0109】
(7)主鎖構造の確認
得られた(共)重合体について、13C-NMRスペクトルを測定した。いずれの(共)重合体についても、13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されないことから、(共)重合体の主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
【0110】
(8)連鎖構造の確認
実施例の共重合体について、NMRスペクトルを測定した。いずれの共重合体についても、1H-NMRの場合、1,4結合は5.1ppm、3,4結合は4.7ppm(CDCl3)に観測され、13C-NMRの場合、1,4-シスは23ppm、1,4-トランスは16ppm、3,4-ビニルは18ppm(CDCl3)にそれぞれ観測されることから、イソプレン単位(置換ブタジエン単位)が連鎖していることを確認した。
【0111】
【0112】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表2に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を製造した。該ゴム組成物に対して、下記の方法で、耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0113】
(9)耐久性
得られたゴム組成物を、常法で加硫して、加硫ゴムを作製し、厚さ2mmの加硫ゴムのシートをリング状に加工して、加硫ゴム試験片を作製した。該試験片に対して、25℃で引張試験を行い、破断させるのに要した最大の引張応力(Tb、MPa)を測定し、比較例1の破断時引張応力(Tb)を100として、それぞれ指数表示した。指数値が大きい程、破断時引張応力(Tb)が大きく、耐久性に優れることを示す。
【0114】
【0115】
*1 シリカ: 東ソー・シリカ工業社製、商品名「Nipsil AQ」
*2 シランカップリング剤: ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、(平均硫黄鎖長:2.35)、Evonik社製、商品名「Si75」(登録商標)
*3 ワックス: マイクロクリスタリンワックス、精工化学社製、商品名「サンタイト」
*4 老化防止剤6C: N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
*5 加硫促進剤DPG: 1,3-ジフェニルグアニジン、三新化学工業社製、商品名「サンセラーD」
*6 加硫促進剤DM: ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、三新化学工業社製、商品名「サンセラーDM」
*7 加硫促進剤NS: N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業社製、商品名「サンセラーNS」
*8 亜鉛華: 酸化亜鉛、ハクスイテック社製
【0116】
表2から、実施例1~2の共重合体を含む、実施例3~4のゴム組成物は、耐久性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の共重合体は、ゴム組成物のゴム成分や、樹脂組成物の樹脂成分として利用できる。また、本発明のゴム組成物は、タイヤを始め、各種ゴム製品に利用できる。更に、本発明の樹脂組成物は、各種樹脂製品に利用できる。