(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよび印字システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/20 20060101ALI20240709BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/175 167
B41J2/175 175
B41J2/20
B41J2/175 201
B41J2/17 101
(21)【出願番号】P 2020214669
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】音羽 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 綾香
(72)【発明者】
【氏名】高田 公則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-7834(JP,A)
【文献】特開2007-190728(JP,A)
【文献】特開2002-240320(JP,A)
【文献】特開2004-130574(JP,A)
【文献】特開平10-180999(JP,A)
【文献】特開2017-7189(JP,A)
【文献】米国特許第06375301(US,B1)
【文献】特開2013-1053(JP,A)
【文献】特開2001-219579(JP,A)
【文献】特開平11-179929(JP,A)
【文献】特開2002-192750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドと、
前記印字ヘッドと本体とを繋ぐケーブルと、
インク流路と、
制御部と、
インクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されたデータを読み取る読取部と、
記憶部と、
表示部と、を備え、
前記データは、インク情報及びソフトウェアパラメータを含み、
前記記憶部は、少なくとも直前に用いたインクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていた前記インク情報を保持し、
前記制御部は、前記直前に用いたインクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていた前記インク情報及び交換用の前記インクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていた前記データに基づいて、前記インク流路の洗浄工程、及び前記交換用のインクカートリッジに充填されたインクの印字工程のソフトウェアパラメータを設定
し、
前記表示部は、前記洗浄工程に関する情報を表示し、
前記洗浄工程に関する前記情報は、洗浄液の種類及び使用順序を含む、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インク流路には、前記インクをろ過するためのフィルタが設けられ、
前記表示部は、前記フィルタの交換の必要性及び手順に関する情報を出力する、請求項
1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インク情報は、前記インクカートリッジに充填されたインクの型式名又は溶剤情報を含み、
前記ソフトウェアパラメータは、前記印字工程に用いる励振電圧情報、周波数情報、ポンプ圧力情報、帯電電圧情報、偏向電圧情報及びインク粘度情報のうち少なくとも一つを含む、請求項1
又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記洗浄工程に使用する洗浄液の容器には、前記洗浄液の型式又は溶剤情報が記録された情報記録媒体が設けられ、
前記読取部は、前記洗浄液の前記容器に設けられた前記情報記録媒体に記録された前記洗浄液の前記型式又は前記溶剤情報を読み取る、請求項1~
3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記読取部により取得された前記洗浄液の前記型式又は前記溶剤情報に基づき、前記洗浄工程に即した洗浄液が用いられているか判定する、請求項
4記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記情報記録媒体は、ICタグ、バーコード又はQRコード(登録商標)である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
コンティニュアス型である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記洗浄工程は、補力液を用いて行う、請求項1~
7のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク情報及び前記ソフトウェアパラメータを、外部に設置されたサーバーに送信する機能又は前記サーバーから受信する機能を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
請求項
9に記載されたインクジェットプリンタと、前記サーバーと、を備える印字システムであって、
前記サーバーは、前記インクジェットプリンタから送信された前記インク情報及び前記ソフトウェアパラメータを記録することを特徴とする印字システム。
【請求項11】
請求項
10に記載の印字システムであって、
前記インクジェットプリンタを複数含み、
前記サーバーには、前記複数のインクジェットプリンタのうちの少なくとも一つの前記インクジェットプリンタのインクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていた情報及びソフトウェアパラメータが記録されており、前記サーバーに記録されている前記インク情報及び前記ソフトウェアパラメータを、前記複数のインクジェットプリンタのうちの他の前記インクジェットプリンタの少なくともいずれか一つに送信する、ことを特徴とする印字システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよび印字システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのうち、帯電制御式インクジェットプリンタは、インクタンクに蓄えられた液体(インク)をポンプなどで加圧し、微細なノズルから連続的にインク柱として吐出するものである。吐出の際には、圧電素子等による周期的な振動がインクに与えられることで、吐出されたインク柱が切断され、インク粒子が周期的に形成される。
【0003】
インク粒子が形成される位置に帯電電極を配置し、電界を発生させることにより、各インク粒子を帯電させることができる。その電界の強さを制御することにより、各インク粒子の帯電量を制御できる。帯電電極の下流位置には、一定の電圧が印加された偏向電極が配置されており、各インク粒子は、付与された帯電量に応じて飛行方向が制御される。この飛行方向が制御されたインク粒子を被印字物に着弾させることにより、印字を行う。
【0004】
印字環境や被印字物は多様であり、インクジェットプリンタに使用可能なインクは複数種ある。インク毎に最適な印字制御のためのソフトウェアの設定(励振電圧、周波数、ポンプ圧力、帯電電圧、偏向電圧、インク粘度等の値)は異なる。インクジェットプリンタには、既存インク各種の印字制御に最適なソフトウェアパラメータが予めインクジェットプリンタに記録されており、インクジェットプリンタの操作画面で該当するインクのソフトウェアパラメータを呼び出して使用することができる。
【0005】
特許文献1には、インクカートリッジに設けられた無線ICタグに書き込まれた吐出波形等の制御情報を、カートリッジ装着部の読み出し手段で読み出して、印刷媒体へのインクの吐出を制御する、インクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発売して間もない新型インクを既設のインクジェットプリンタでユーザーが使用しようとすると、既設のインクジェットプリンタにインストールされたソフトウェアのバージョンが古く、新型インクの印字制御に最適なソフトウェアパラメータが記録されていない場合があり得る。このため、業務用のインクジェットプリンタの場合、専門知識を有するサービスマンが手作業で新型インクへの交換作業を行うのが通例である。
【0008】
インクジェットプリンタで使用されるインクの溶剤には、その用途に応じて、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、3-メチル-2-ブタノン、2-ブタノンなどのケトン系溶剤、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどのエステル系溶剤など、多種多様な溶剤が使用される。また、メタノール及びエタノールを混合したもの、エタノール及び2-ブタノンを混合したもの等の混合溶媒も使用される。
【0009】
インクには、溶剤のほか、溶剤に可溶な色材や樹脂などが添加されている。異なる型式のインク同士の相溶性が低いことが考えられるため、直前にプリンタに充填されていたインク(以下「過去インク」という。)から新型インクに切り替える際には、過去インクを排出し、プリンタ内の配管及びタンクを適切な洗浄液で洗浄し、洗浄液を排出してから新型インクを充填する工程を経る必要がある。過去インクを排出しないで新型インクを充填したり、洗浄工程で誤った洗浄液を使用したりすると、インクジェットプリンタ内の配管及びタンクの内部で析出が発生するなどして、最悪の場合、インクジェットプリンタが使用不能になるおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、専門知識を有するサービスマンに限らず、専門知識を有していないユーザーであっても、インクジェットプリンタのインクの切り替え作業を、容易かつ適切に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインクジェットプリンタは、印字ヘッドと、インク流路と、制御部と、インクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されたデータを読み取る読取部と、記憶部と、を備え、データは、インク情報及びソフトウェアパラメータを含み、記憶部は、少なくとも直前に用いたインクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていたインク情報を保持し、制御部は、直前に用いたインクカートリッジに設けられた情報記録媒体に記録されていたインク情報及び交換用のインクカートリッジのデータに基づいて、インク流路の洗浄工程、及び交換用のインクカートリッジに充填されたインクの印字工程のソフトウェアパラメータを設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、専門知識を有するサービスマンに限らず、専門知識を有していないユーザーであっても、インクジェットプリンタのインクの容易かつ適切な切り替えが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例のインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【
図2A】実施例のインクジェットプリンタの内部の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2B】インクジェットプリンタの本体に内蔵されたインクサブタンク及び補力液サブタンクを示す正面図である。
【
図3】実施例のICタグ付きインクカートリッジを示す正面図である。
【
図4】実施例のインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジの交換に伴う処理を示すフロー図である。
【
図5】実施例のインクジェットプリンタを電気通信回線によりサーバー等に接続した構成を示す模式図である。
【
図6】実施例のインクジェットプリンタを複数台接続した構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、ICタグ等を利用するインクジェットプリンタへのソフトウェアパラメータ入力機構及びインク切替機構に関する。ここで、ICタグは、RFID(radio frequency identifier)の技術を利用する非接触式の電子機器である。
【0015】
以下、本開示に係る実施形態について説明する。以下に述べる実施形態は、本開示に係るインクジェットプリンタ等を具体化した例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
1.インクジェットプリンタ
図1は、実施例のインクジェットプリンタの全体を示す斜視図である。
【0017】
本図において、インクジェットプリンタ100は、本体1と、印字ヘッド2と、を備えている。本体1と印字ヘッド2とは、ケーブル4で繋がれている。本体1の正面部には、表示部5及び読取部7が設けられている。
【0018】
表示部5は、ユーザーが行うべき操作、インクカートリッジ等に関する情報等を表示するものである。また、表示部5は、タッチパネルとしてユーザーが入力することができるようになっていることが望ましい。
【0019】
読取部7は、インクカートリッジの情報記録媒体に記録された情報を読み取るものである。情報記録媒体とは、例えば、ICタグ、バーコード又はQRコード(登録商標)である。ユーザーが表示部5を介して入力等の操作を行う際に、読取部7にインクカートリッジのICタグを近づける操作も並行して行う場合もあるため、読取部7は、表示部5の近くに設けることが望ましい。
【0020】
なお、読取部7は、ユーザー等がICタグを近づける作業を敢えてしなくても、インクカートリッジの装着等の作業する際にインクカートリッジが読取部7に接近した段階で、所定の距離(例えば1~2メートル)で、ICタグに記録された情報を検出するような構成であることが望ましい。
【0021】
図2Aは、インクジェットプリンタの内部の構成を模式的に示したものである。
【0022】
本図において、インクジェットプリンタ100は、印字ヘッド2と、制御部200と、を含む。また、インクジェットプリンタ100の外部には、印字物検出器3が設置されている。
【0023】
印字ヘッド2は、インク柱221を吐出するノズル211と、ノズル211を振動させる圧電素子212(加振器)と、インク柱221から生じたインク粒子222に帯電を発生させる電界を形成する帯電電極213と、帯電したインク粒子222の帯電量に応じてその軌道を変化させる偏向電極214と、印字に寄与しなかったインク粒子を回収するガター215と、を備えている。印字ヘッド2は、生産ラインなどのコンベア260で搬送される印字対象物である被印字物261に向かってインク粒子222を噴射して印字する。コンベア260は、ロータリーエンコーダ262で動きが監視されている。インク柱221は、一対の帯電電極213の間を通過する際に粒子化され、インク粒子222となる。インク粒子222には、電圧が制御される帯電電極213により、印字する文字の形状に応じた電荷が付与される。
【0024】
すなわち、インクジェットプリンタ100は、稼働中は、印字していないときも、インク粒子222が連続的に噴射されるように操作されるものであり、いわゆる帯電制御方式(コンティニュアス型又は連続吐出型とも呼ばれる。)である。このため、インクジェットプリンタ100は、「CIJ」とも呼ばれる。
【0025】
制御部200は、インクジェットプリンタ100全体を制御するMPU201(マイクロプロセシングユニット)と、MPU201が動作するのに必要な制御用プログラム及びデータを記憶するROM202(リードオンリーメモリ)と、プログラム実行中に必要となるデータを一時的に記憶するRAM203(ランダムアクセスメモリ)と、を備えている。制御部200は、印字内容や設定値等を入力する入力パネル204と、表示制御部205と、を更に備えている。表示制御部205は、入力されたデータ、印字内容等の表示部5に表示する内容を制御する。MPU201、ROM202、RAM203、入力パネル204及び表示制御部205は、バスライン206を介して接続され、信号の送受信をすることができるようになっている。具体的には、バスライン206は、MPU201のデータ信号、アドレス信号及びコントロール信号を伝送する機能も有する。
【0026】
制御部200は、プログラムや印字データなどを記憶する記憶装置209(記憶部)と接続可能である。記憶装置209の代表例としては、USBメモリなどがある。
【0027】
制御部200は、設定されたソフトウェアパラメータに従って、励振電圧、周波数、ポンプ圧力、帯電電圧、偏向電圧等を制御する。
【0028】
また、制御部200は、帯電電圧発生回路207と、励振電圧発生回路208と、を備えている。帯電電圧発生回路207は、インク粒子222に付与される電荷が文字信号に応じた量となるような帯電電極213の電圧を発生させる。励振電圧発生回路208は、ノズル211に接続された圧電素子212に付与する電圧を発生させる。励振電圧発生回路208の電圧は、高周波であり、ノズル211から発射された直後のインク柱221を振動させて粒子化する作用を有する。帯電電圧発生回路207及び励振電圧発生回路208も、バスライン206に接続されている。
【0029】
ロータリーエンコーダ262は、コンベア260の移動速度に応じてパルス信号を発生する。ロータリーエンコーダ262は、インクジェットプリンタ100に内蔵されているものではなく、コンベア260に設置されるものである。ロータリーエンコーダ262は、既存のものを使用してもよいし、ユーザーが新たに準備してもよい。使用されるロータリーエンコーダ262の種類は、多岐にわたる。
【0030】
次に、インクによる印字を行うための構成及びインクを回収し循環する経路の構成について説明する。
【0031】
インクジェットプリンタ100の本体1(
図1)の側には、使用中のインク241(第一のインク)が注入されているインクタンク240が設置されている。
【0032】
図2Aに示すように、インクタンク240は、配管232aによりノズル211に接続されている。一方、ガター215は、配管232bによりインクタンク240に接続されている。配管232a、232bは、インク流路を構成する。配管232aには、循環ポンプ245及び減圧弁246が設置されている。循環ポンプ245と減圧弁246との間には、フィルタ250が設置されている。
【0033】
なお、フィルタの配置は、上記の位置に限定されるものではない。フィルタは、主として配管232a及びノズル211の目詰まりを防止することを目的とするものであるため、この目的を達成する位置であれば配管232aの任意の位置に設置することができる。
【0034】
インクタンク240には、インクサブタンク251及び補力液サブタンク252が接続され、それぞれの液を補給することができるようになっている。ここで、補力液は、インクに含まれる揮発性の高い成分を補充する液体である。
【0035】
インク241は、循環ポンプ245により吸い上げられ、減圧弁246で圧力が調整された状態でノズル211に供給される。ノズル211に供給されたインクは、ノズル211から噴出し、インク柱221となる。そして、インク柱221は、励振電圧発生回路208で生成される励振電圧で駆動される圧電素子212の高周波振動により粒子化され、インク粒子222となる。
【0036】
インク粒子222は、帯電電極213の一対の電極の間を通過するときに帯電電極213が形成する電界により帯電する。帯電電極213には、帯電電圧発生回路207により被印字物261に印刷する文字に対応する文字信号に応じた電圧が印加される。これにより、インク粒子222は、文字信号に応じた電荷の蓄積により帯電する。帯電されたインク粒子222は、偏向電極214への電圧印加により発生する電界中を飛行し、その帯電量に応じて方向を変え、搬送用のコンベア260により移動する被印字物261に到達し、文字を形成する。印字に使用されないインク粒子は、インク回収用のガター215により回収され、配管232bを通って回収ポンプ233によりインクタンク240へ回収される。
【0037】
ROM202には、インク241のインク情報及び制御に最適なソフトウェアパラメータ値が記録されている。インク情報には、例えば、インク241のインク型式名又は溶剤情報が含まれる。インク241の印字制御及びインクジェットプリンタの稼動制御に使用されるソフトウェアでは、印字制御のために各種パラメータ値を設定する。このソフトウェアパラメータには、励振電圧、周波数、ポンプ圧力、帯電電圧、偏向電圧及びインク粘度のうち少なくとも一つが含まれる。ソフトウェアパラメータは、切り替え後のインクの印字制御に用いられる。
【0038】
図2Bは、インクジェットプリンタの本体に内蔵されたインクサブタンク及び補力液サブタンクを示したものである。
【0039】
本図においては、インクサブタンク251及び補力液サブタンク252は、並べて設置されている。インクサブタンク251の上方には、破線で示すインクカートリッジ装着部255が設けられ、インクカートリッジを装着してインクをインクサブタンク251に追加することができるようになっている。インクサブタンク251の上部には、インクカートリッジ接続部257が設けられている。インクカートリッジ接続部257は、インクカートリッジを接続可能な形状を有している。
【0040】
一方、補力液サブタンク252の上方には、破線で示す補力液カートリッジ装着部256が設けられ、補力液カートリッジを装着して補力液を補力液サブタンク252に追加することができるようになっている。補力液サブタンク252の上部には、補力液カートリッジ接続部258が設けられている。補力液カートリッジ接続部258は、補力液カートリッジを接続可能な形状を有している。
【0041】
インクカートリッジ接続部257と補力液カートリッジ接続部258とは、異なる形状を有するものとし、カートリッジの装着ミスを防止するようにしてある。
【0042】
2.インクカートリッジ
図3は、ICタグ付きインクカートリッジの構成を示したものである。
【0043】
インクカートリッジ300は、容器本体301と、容器キャップ302と、容器本体301の外側に貼り付けられたICタグ303と、容器本体301に充填された交換用のインク242(第二のインク)と、から構成されている。
【0044】
ICタグ303は、非接触式でかつICタグ内のメモリが記録・読取りができるものであれば特に限定されない。ICタグ303には、少なくともインク242のインク情報並びに制御に最適なソフトウェアパラメータ及びその値が含まれる。ICタグ303には、ICタグのシリアル番号、インクのロット番号、生産日、開封期限等が記録されていることが望ましい。
【0045】
つぎに、使用中のインク(交換前のインク、すなわち直前に用いたインク)である第一のインクと、交換用のインク(交換後のインク)である第二のインクとが異なる場合に、第二のインクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンタの本体に装着する前に行う洗浄工程について説明する。
【0046】
なお、第一のインクを充填したインクカートリッジは、「第一のインクを有するインクカートリッジ」又は単に「第一のインクカートリッジ」と呼ぶことにする。また、第二のインクを充填したインクカートリッジは、「第二のインクを有するインクカートリッジ」又は単に「第二のインクカートリッジ」と呼ぶことにする。なお、本明細書では、交換前後のインクの型式や種類が異なる場合を、インクの切り替えという。
【0047】
以下では、第一のインクを「インクA」、第二のインクを「インクB」と呼ぶことにする。
【0048】
3.洗浄液
洗浄工程は、インクAのインクカートリッジを取り外し、インクAの排出操作を行った後に行う。洗浄工程を行った後、インクBのインクカートリッジを装着する。
【0049】
洗浄液は、洗浄工程において使用する。
【0050】
洗浄工程で使用する洗浄液の種類は、インクA及びインクBの溶剤情報から、インクジェットプリンタの制御部が判定する。
【0051】
洗浄液の組成は、インクの溶剤と同じ組成であることが望ましいが、インクを構成する各種成分が溶解可能であれば特に限定されない。また、インクAの洗浄が可能な洗浄Aで洗浄した後に、インクBの洗浄が可能な洗浄液Bで洗浄する二段階の洗浄工程が望ましいが、インクA及びインクBの溶剤組成が類似している場合、あるいはインクA及びインクBを構成する各種成分が全て溶解可能な洗浄液がある場合は、1種類の洗浄液で洗浄工程を実施してもよい。また、洗浄工程で使用する洗浄液の種類や投入の順番を間違えないように、ICタグを取り付けた容器に入った洗浄液を用い、洗浄液の投入前にICタグのデータを読み込む手順にしてもよい。
【実施例1】
【0052】
図3に示すように、インクカートリッジ300(ICタグ付きインクカートリッジ)には、容器本体301の外側にICタグ303が貼り付けられている。ICタグ303には、容器本体301に充填されたインクBのインク情報、印字制御に最適なソフトウェアパラメータ及びその値、ICタグのシリアル番号が記録されている。インクBのインク情報には、インクBのインク型式名及び溶剤情報が記録されている。インクBのソフトウェアパラメータは、インクBの印字・稼動の制御に最適な励振電圧、周波数、ポンプ圧力、帯電電圧、偏向電圧、インク粘度等の情報である。
【0053】
図1のインクジェットプリンタ100において、インクAをインクBに切り替えるための作業を実施する。
【0054】
ここで、インクBのインク情報及び制御に最適なソフトウェアパラメータがROM202(
図2A)に記録されていない場合は、次の処理が必要となる。
【0055】
図4は、実施例1のインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジの交換に伴う処理を示すフロー図である。本実施例では、インクカートリッジの交換前後でインクの種類が異なる場合について、インクカートリッジの交換に伴う処理を説明する。
【0056】
本図に示すように、まず、インクBのインクカートリッジを装着する際に、読取部7(
図1)により、そのインクカートリッジのICタグに記録された情報を読み取る(S410)。そして、読み取り可能なICタグであることを確認する(S420)。確認が完了したら、そのICタグに記録されているインク情報、ソフトウェアパラメータ等の所定の情報を表示部5に表示する(S430)。この例においては、インクの制御に使用するかについて、はい/いいえを選択するポップアップを表示部5に表示する(S450)。
【0057】
「はい」を選択すると、ICタグに記録されたインク情報、ソフトウェアパラメータ及びICタグのシリアル番号がROM202(
図2A)に記録され、インクAのインク情報、ソフトウェアパラメータ等に代えて、インクBのインク情報、ソフトウェアパラメータ等を使用する設定となる(S460)。一方、「いいえ」を選択した場合は、処理を終了する。
【0058】
ROM202に記録されたインクAのインク情報に含まれる溶剤情報から、インク切り替えの洗浄工程においては、インクAの洗浄に使用可能な洗浄液Aと、インクBの洗浄に使用可能な洗浄液Bとを、洗浄液A、洗浄液Bの順で用いることが判定される(S470)。これにより、表示部5にインク入替作業を指示する内容が表示される。具体的には、表示部5に洗浄液の種類及び洗浄液の使用順序が表示される。なお、インクAのインク情報は、ROM202以外の記憶部に保存しておいてもよい。本明細書においては、ROM、RAMその他の記憶装置を「記憶部」と総称することにする。
【0059】
以下は、工程S480における一連の処理である。
【0060】
表示部5の指示に従い、インクタンク240(
図2A)及び循環経路内に残っているインク241(インクA)を外部に排出する。この操作は、インクジェットプリンタが自動で行ってもよい。
【0061】
さらに、表示部5の指示に従い、洗浄液Aをインクジェットプリンタに装着されているインクAのインクカートリッジを取り外し、洗浄液Aのカートリッジを装着し、洗浄液Aをインクタンク240に充填する。これにより、インクタンク240(
図2A)及び循環経路内が洗浄液Aにより洗浄される。
【0062】
つぎに、表示部5の指示に従い、洗浄液Aのカートリッジを取り外し、洗浄液Bのカートリッジを装着し、洗浄液Bをインクタンク240に充填する。これにより、インクタンク240及び循環経路内が洗浄液Bにより洗浄される。
【0063】
最後に、表示部5の指示に従い、洗浄液Bのインクカートリッジを取り外し、インクBのインクカートリッジを装着する。これにより、インクBがインクタンク240に充填され、インク切替作業が完了する(S480)。
【0064】
一方、工程S420において、ICタグの情報の読み取りができない場合は、その旨を表示部5(
図1)に表示し、処理を終了する(S440)。
【0065】
なお、本実施例の変形例として、洗浄液Aの代わりに、インクAの補力液Aを洗浄工程に使用してもよい。補力液Aは、洗浄液Aと同様の溶剤を含むからである。また、洗浄液Bの代わりに、インクBの補力液Bを洗浄工程に使用してもよい。補力液Bは、洗浄液Bと同様の溶剤を含むからである。
【0066】
まとめると、インクA及びインクBのインクカートリッジのICタグのデータに基づいて、インク流路の洗浄工程及びインクBによる印字工程のプログラムが設定される。インクA及びインクBのデータには、それぞれのインクの情報及びソフトウェアパラメータが含まれている。インクA及びインクBの情報及びソフトウェアパラメータを用いて、洗浄工程及び印字工程のプログラムが設定される。
【0067】
本実施例によれば、インクカートリッジの切り替え後においても、インクジェットプリンタの安定的な印字・稼動が可能となる。
【実施例2】
【0068】
本実施例において実施例1と異なる点は、次のとおりである。
【0069】
表示部5の指示に従い、洗浄液Bによる処理を行い、洗浄液Bを排出した後、必要な場合は、表示部5には、フィルタ交換の指示が表示される。この指示に従い、インクジェットプリンタ内のフィルタを交換する。
【0070】
その後、表示部5の指示に従い、インクBのカートリッジをインクジェットプリンタに装着し、インク切り替え作業が完了する。
【0071】
以上のように、表示部がフィルタの交換の必要性及び手順に関する情報を出力することによって、インク切り替えだけでなくフィルタの交換もユーザー側で実施することができる。なお、インク流路の洗浄後でインクカートリッジ装着前、フィルタ交換の必要性を表示部が表示することが好ましい。
【実施例3】
【0072】
本実施例において実施例1と異なる点は、次のとおりである。
【0073】
洗浄液の容器に洗浄液の型式情報を予め記録したICタグを貼り付けておく。言い換えると、洗浄液のカートリッジとして、洗浄液の容器に洗浄液の型式情報または洗浄液の溶剤情報を予め記録したICタグを貼り付けたものをインクジェットプリンタのユーザーに提供することが望ましい。
【0074】
洗浄工程で洗浄液のカートリッジを装着する前に、表示部5の指示に従い、洗浄液容器のICタグの情報を読取部7で読み込ませる。投入すべき洗浄液の型式情報とICタグの洗浄液の型式情報とが一致する場合は、表示部5の指示に従い、洗浄液のカートリッジを装着する。
【0075】
ユーザーが洗浄液の容器を装着前に、ICタグから洗浄液の型式情報を読み込み、インクジェットプリンタが洗浄液の適否を判定することにより、ユーザーの装着ミスを防止することができる。
【0076】
本実施例では、ユーザーが洗浄液の適否を確認する例を説明したが、制御部が、読取部により取得された洗浄液の型式または溶剤情報に基づき、洗浄工程に即した洗浄液が用いられているか判定してもよい。
【実施例4】
【0077】
図5は、実施例のインクジェットプリンタを電気通信回線によりサーバー等に接続した構成を示す模式図である。
【0078】
本図においては、インクジェットプリンタ100がサーバー502に接続され、サーバー502は、コンピュータ501に接続されている。
【0079】
インクジェットプリンタ100のROM202(
図2A)に記録されたインクBの情報及びソフトウェアパラメータ、インクジェットプリンタ100のシリアル番号、ICタグのシリアル番号等をサーバー502に送信し、記録する。サーバー502に記録されたインクジェットプリンタ100に関する情報は、コンピュータ501で参照することができるようになっている。
【0080】
このように所定の情報をサーバー502に記録することにより、例えばサービス提供者側でのインクカートリッジの在庫管理を容易とすることが可能となる。
【実施例5】
【0081】
図6は、実施例のインクジェットプリンタを複数台接続した構成を示す模式図である。
【0082】
本図においては、実施例1のインクジェットプリンタ100及び他のインクジェットプリンタ101がサーバー502に接続されている。
【0083】
インクジェットプリンタ100のROM202(
図2A)に記録されたインクBの情報及びソフトウェアパラメータ、インクジェットプリンタ100のシリアル番号、インクカートリッジに設けられたICタグのシリアル番号等をサーバー502に送信し、記録する。具体的には、ICタグのシリアル番号(例)として313がサーバー502に記録される。
【0084】
続いて、インクジェットプリンタ101でインクカートリッジに設けられたICタグをかざして読み取りを行う。ICタグのシリアル番号として313が読みとられる。サーバー502に記録されたデータから、ICタグのシリアル番号313がすでにインクジェットプリンタ100で使用されているため、インクジェットプリンタ101での読み取りが不可の旨、インクジェットプリンタ101の表示部5に表示される。
【0085】
複数のインクジェットプリンタの連携において用いる情報機器は、インクジェットプリンタと情報を送受信・記録できるものであれば特に限定されない。情報機器の具体例としては、サーバー、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等が挙げられる。情報機器とインクジェットプリンタとの接続方式は、情報が送受信可能であるならば、有線方式であっても、無線方式であってもよい。
【0086】
なお、上記の例においては、ICタグを用いる場合について説明しているが、本開示は、これに限定されるものではなく、ICタグの代わりに、バーコード、QRコード(登録商標)等を用いてもよい。本開示においては、これらを「情報記録媒体」と総称する。
【符号の説明】
【0087】
1:本体、2:印字ヘッド、5:表示部、7:読取部、100:インクジェットプリンタ、101:他のインクジェットプリンタ、200:制御部、201:MPU、202:ROM、203:RAM、204:入力パネル、205:表示制御部、206:バスライン、207:帯電電圧発生回路、208:励振電圧発生回路、209:記憶装置、211:ノズル、213:帯電電極、214:偏向電極、215:ガター、221:インク柱、232a、232b:配管、233:回収ポンプ、240:インクタンク、241、242:インク、245:循環ポンプ、246:減圧弁、250:フィルタ、251:インクサブタンク、252:補力液サブタンク、255:インクカートリッジ装着部、256:補力液カートリッジ装着部、257:インクカートリッジ接続部、258:補力液カートリッジ接続部、260:コンベア、261:被印字物、262:ロータリーエンコーダ、301:容器本体、302:容器キャップ、303:ICタグ、501:コンピュータ、502:サーバー。