(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】送達デバイスおよび吸着剤
(51)【国際特許分類】
A61M 5/165 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
A61M5/165 500J
A61M5/165 500X
(21)【出願番号】P 2020560209
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 US2019028248
(87)【国際公開番号】W WO2019209644
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ノヴァック
(72)【発明者】
【氏名】エミリー マインツ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リニ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ロバーツ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0354542(US,A1)
【文献】国際公開第2017/184985(WO,A1)
【文献】米国特許第05531683(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0271319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンを患者に送達するための送達ペンを有する送達デバイスであって、
インスリンを包含する貯蔵容器、
前記送達ペンに接続された近位端部と、ペンニードルの遠位端部に接続され、かつ患者に前記インスリンを注射するための流体経路によって前記貯蔵容器と流体連通したカニューレと、を有するペンニードルであって、
前記ペンニードルは、フィルタカートリッジを含み、前記フィルタカートリッジは、前記フィルタカートリッジの近位端部でカップリングにより前記送達ペンと接続するための入口端部と、前記カニューレと流体連通する出口端部と、内部空洞とを有するペンニードル、
前記貯蔵容器と前記カニューレとの間の前記フィルタカートリッジの前記内部空洞内に配置され、分配する前に前記インスリンから選択された化合物を除去するための活性炭吸着剤、
を備えることを特徴とする送達デバイス。
【請求項2】
カニューレは、前記送達ペンの遠位端部で隔壁を貫通するための近位端部と、前記インスリンを送達するための遠位端部とを有することを特徴とする請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記送達デバイスは、ペンニードルアセンブリであることを特徴とする請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記インスリンは、フェノール安定剤を含み、前記活性炭吸着剤は、前記カニューレから分配する前に、前記インスリン製剤から前記フェノール安定剤を除去するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記活性炭吸着剤は、前記活性炭吸着剤を通過する前記インスリン製剤が、前記カニューレから分配する前に、実質的に変性または効力の喪失を得ないように、前記送達デバイス内において滞留時間を有する場合、前記送達デバイスに対して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記活性炭吸着剤は、活性炭をpH6.7でリン酸により処理することによって得られるリン酸処理された活性炭吸着剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記内部空洞は前記フィルタカートリッジ内にあり、かつインスリンから所定量のフェノールおよび/またはm-クレゾールを除去するべく、インスリンと前記活性炭との接触時間を提供するための構成を有していることを特徴とする請求項6に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記送達デバイスは、
インスリンを包含し前記貯蔵容器を画定するインスリンカートリッジ、を備えることを特徴とする請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記送達デバイスは、前記流体経路を介して前記インスリン製剤を導くことを特徴とする請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記活性炭吸着剤は、未処理のインスリンと比較して、少なくとも7日後に93%のインスリン効力を維持しながら少なくとも4日の期間にわたって、前記インスリン製剤から少なくとも60重量%のフェノール安定剤を除去する量で含まれていることを特徴とする請求項9に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記送達デバイスは、所定の期間、前記インスリン製剤の連続的かつ制御された送達を提供し、および
前記活性炭吸着剤は、前記インスリン製剤からフェノール安定剤の少なくとも60重量%を除去する量で含まれており、および
前記インスリン製剤は、7日後に少なくとも93%のインスリン効力を示す前記ペンニードルから送達されることを特徴とする請求項9に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記フェノール安定剤は、フェノール、m-クレゾール、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項13】
インスリン製剤を患者に送達するための送達デバイスであって、前記送達デバイスは、
インスリン製剤を包含する貯蔵容器であって、前記インスリン製剤は、前記インスリン製剤を安定化する量のフェノール安定剤を含んでいる貯蔵容器、
制御された基本流速で貯蔵容器から患者にインスリン製剤を送達するためのポンプ機構、
前記送達デバイスはベースと、接続要素を有する上面とを有する注入セットを備え、前記ベースは前記ベースの底面から延在するカニューレを有し、
内部空洞、前記ポンプ機構に接続するためのカップリングを有する入口端部、および前記ベースの前記接続要素に接続するためのくぼみを有する出口端部と、を有し、前記入口端部は第1の多孔質膜を有し、前記出口端部は第2の多孔質膜を有するフィルタカートリッジ、
前記フィルタカートリッジの前記内部空洞
内に配置され、患者への送達の前に、インスリン製剤からフェノール安定剤の少なくとも一部分を除去する活性炭吸着剤、
を備え、
前記活性炭吸着剤は、活性炭をpH6.7でリン酸により処理することによって得られるリン酸処理された活性炭吸着剤であることを特徴とする送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年4月27日に出願された米国仮特許出願第62/663,605号の優先権を主張し、その全範囲が参照によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に、物質を患者に送達し、および患者に送達する前に物質から選択された化合物を濾過または除去する送達デバイスに関する。送達デバイスは、患者に注射する直前に物質から選択された化合物を除去するために、カニューレまたはカテーテルなどの送達部材の上流に配置された吸着材料を含んでいる。一実施形態における送達デバイスは、デバイスが、患者に導入する前に安定剤および/または選択された化合物をインスリン製剤から除去するための吸着剤と関連する場合、制御された用量のインスリン製剤を送達するのに適している。
【背景技術】
【0003】
インスリンおよび他の注射可能な薬物は、一般に、薬物送達ペンでもって送達され、そのために、薬物容器へのアクセスを容易にし、容器からニードルを通っての患者への流体の流出を許容するべく、使い捨てのペンニードルハブがペンに取り付けられている。
【0004】
薬物および薬剤には、薬物または薬剤の貯蔵寿命を延ばすために防腐剤および/または安定剤が含まれていることがよくある。例えば、インスリンには、安定剤としてフェノールおよび/またはm-クレゾールが含まれていることがよくある。これらの安定剤は、注射部位に、刺激、炎症、瘢痕、脂肪肥大などの副作用を引き起こすことがよくある。
【0005】
物質を患者に分配する様々なペンニードル送達デバイスが当該技術分野で知られている。送達デバイスは、患者に挿入するためのハブの患者端から延びているカニューレまたはニードルを有する使い捨てニードルハブを、しばしば、使用している。ハブの非患者端は、物質を患者に送達するためのペン送達デバイスに結合されている。
【0006】
ニードルハブアセンブリは、多くの場合、いくつかの緩いニードルハブを包含する容器にパッケージされている。ニードルハブは、パッケージから選択され、患者に注射するためにペンニードル送達デバイスに取り付けられ、その後、廃棄されるべく取り外される。ニードルハブのパッケージは、ニードルハブを囲む外側カバーと、ニードルハブが取り外され得るようにキャビティを開くべく、外側カバーから剥がされる取り外し可能なシールとを含んでいる。ニードルハブは、送達デバイスにねじ込まれるねじ付きの非患者端を有してもよい。ニードルハブが取り付けられた送達デバイスは、その後、外側カバーから取り外される。内側のニードルシールドは、デバイスが使用できるようになるまでカニューレを覆うべく、ニードルハブに取り付けられている。シールドは、物質を患者に送達するために使用するカニューレを露出させるべく取り外される。使用後、ニードルハブは、露出されたカニューレを囲むべく外側カバーに挿入して戻されてもよい。ペン送達デバイスは、ニードルハブから分離し、ニードルハブを外側カバーに残している。以前の送達デバイスは、一般に、貯蔵容器または供給物から直接にインスリンを送達するのに適している。
【0007】
既存のペンニードルアセンブリは、マーシュらへの特許文献1およびR.マーシュへの特許文献2に開示されており、その両方の内容全体が、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2006/0229562号
【文献】米国特許出願公開第2007/0149924号
【文献】米国特許出願公開第2017/0028128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以前のデバイスは、意図された用途に適していたが、注射部位での刺激と炎症を軽減するために、改善された送達デバイスに対する業界の継続的なニーズが存している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、薬物または薬剤を患者に送達するための送達デバイスに関する。送達デバイスは、物質を患者に送達するためのカニューレまたはカテーテルを有する注射または注入デバイスであってもよい。送達デバイスは、インスリンを患者に導入する直前に、インスリン製剤を処理するのに特に適している。
【0011】
送達デバイスは、薬剤、薬物、または調剤を患者に送達する前に、選択された物質または化合物を、薬剤、薬物、または調剤から除去することができるフィルターおよび/または吸着剤と組み合わせて使用される。一実施形態では、フィルターまたは吸着剤は、送達デバイスに取り付けられ、および/または薬剤を患者に導入する前に薬剤の流路に配置される別個のユニットである。他の実施形態では、吸着剤は、薬剤が患者への送達時に吸着剤を通過するデバイスに組み込まれている。
【0012】
一実施形態では、送達デバイスは、インスリン、薬剤、薬物または調剤などの物質を、制御された速度および投与量で患者に注射することができ、これは、数日の長期間にわたって行うことができる。送達デバイスの例は、ペンニードル、注入セット、パッチポンプ、カテーテル、または薬物、特にインスリンを単位用量または持続的連続送達で患者に導入するのに適した他の送達デバイスを含んでいる。送達デバイスは、物質がフィルターおよび/または吸着剤を通過して、患者に導入される直前に、物質から選択された化合物または材料を除去するように構成されている。一実施形態では、送達デバイスは、ニードル、カニューレ、またはカテーテルなどの注射部材を含み、吸着剤またはフィルターは、注射部材の上流に方向付けられて、インスリン、薬剤、薬物、または調剤を、注射部材に送達する前、および患者に注射する前に、濾過および処理する。
【0013】
送達デバイスの一態様は、患者への使用および送達前に、選択された容量の物質を貯蔵することができる貯蔵容器を提供する。送達デバイスは、患者に導入する前に、物質の投与量から選択された物質および化合物を除去することができる。一実施形態における送達デバイスは、貯蔵容器に貯蔵されている物質が患者への送達の準備ができるまで、吸着剤と接触しないように、貯蔵容器とは別のユニットであるフィルターまたは吸着剤を含んでいる。
【0014】
一実施形態における送達デバイスは、物質が数日の長期間にわたって貯蔵容器から分配されるとき、および患者に導入される前に、物質を処理するために、フィルターまたは吸着部材に接続されている。物質は、選択された化合物を物質から除去するため、貯蔵容器から分配された後、および物質を送達部材に供給する前に、吸着剤と接触する。
【0015】
一実施形態において、送達デバイスは、貯蔵容器と注射部材との間に配置された吸着剤を含んでいる。送達デバイスは、ポンプまたは他の分配機構、インスリンの貯蔵容器、およびインスリンを患者に送達するためのカテーテルまたはカニューレを有するインスリン送達用の注入セットであってもよい。吸着剤は、カテーテルに供給して患者に送達する直前にインスリンを処理するために、カテーテルの上流の流体経路に配置されている。吸収剤は、選択された化合物がインスリンから除去される流路内の点とインスリンが患者に導入される時間との間の時間を制限するために、カテーテルの可能な限り近くに配置されてもよい。吸着剤をカテーテルの近くに配置することは、アセンブリに残っている処理済みインスリンの量を制限する。
【0016】
別の実施形態では、送達デバイスは、インスリンおよび分配機構を包含するカートリッジを有するペンニードルアセンブリである。ニードルハブおよびニードルを有するペンニードルは、インスリンを患者に注射するためのペンニードルアセンブリに取り付けられる。吸着剤は、インスリンが患者に送達されるときにインスリンを処理するために、カートリッジとペンニードルとの間の流路に設けられている。
【0017】
一実施形態における送達デバイスは、注入セット、ペンニードルアセンブリ、パッチポンプ、カテーテル、または制御された投与量で患者にインスリンを送達するための他の送達機構などのインスリン送達デバイスである。吸着剤を含んでいるカートリッジは、患者に送達される物質の流路内の送達デバイスに接続されている。カートリッジは、送達デバイス用のカニューレまたはカテーテルの上流のインスリン流体の流路内に配置されている。代替として、吸着剤を包含するカートリッジは、カートリッジから分配されたインスリンが吸着剤を通過し、その後、患者に送達する前にペンニードルを通るペンニードルアセンブリに設けられてもよい。他の実施形態において、吸着剤は、インスリンがカートリッジからペンニードルに分配されるときに、インスリンが吸着剤を通過するカートリッジまたはカートリッジの出口に組み込まれてもよい。
【0018】
別の実施形態における送達デバイスは、制御された且つ連続する送達でインスリンを患者に送達するために、ポンプ機構から患者に配置するためのカテーテルまたはカニューレにまで延在する供給チューブ、または他の流体接続を有する注入ポンプであってもよい。吸着剤を包含するカートリッジは、インスリンが、送達および患者への注入中に吸着剤を通過するように、カテーテルの上流でカテーテルまたはカニューレのすぐ近くに配置されている。
【0019】
一実施形態において、送達される薬物は、インスリンの貯蔵寿命を延ばすために存在する安定剤および/または保存剤を包含する速効型インスリン製剤などのインスリン製剤である。防腐剤の例は、フェノール、m-クレゾール、およびそれらの混合物などの安定化フェノール化合物である。吸着剤は、インスリン製剤を吸着剤の床または吸着剤を包含しているカートリッジを通過させることにより、インスリン溶液からフェノールおよびm-クレゾールの少なくとも一部分を除去することができる。吸収剤は、インスリン中のフェノール安定剤の存在によって通常引き起こされる注射部位での刺激を低減するのに十分な量のフェノール安定剤を除去する量で使用される。吸着剤は、インスリンの有効性や効力を低下させることなく、フェノール安定剤、特にm-クレゾールに対して選択的である。送達部位で組織に接触するインスリン中のフェノール安定剤の濃度または量を減らすことは、注入部位でのインスリンの吸収を改善し、そして炎症を減少させる。
【0020】
一実施形態では、吸着剤は、患者への送達時のインスリン溶液の有効性または効力を低下させることなく、インスリン溶液を吸着剤と接触させることによって、フェノールおよびm-クレゾールを効果的に吸着することができる活性炭(activated carbon)または活性炭(activated charcoal)である。リン酸処理活性炭などの酸活性炭は、インスリンの効力を大幅に低下させることなく、インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを吸着して除去するのに特に適している。pH 6.7のリン酸によって化学的に活性化される活性炭は、インスリンからフェノールおよび/またはm-クレゾールを選択的に除去するのに効果的である。
【0021】
吸着剤は、患者への導入時または導入直前にインスリン製剤に接触するべく、送達または注射デバイスに対して配置されている。吸着剤は、インスリンの有効性を低下させることなく、インスリンから所望の量のフェノール安定剤を除去するのに十分なインスリンとの接触時間を提供する量で含まれている。一実施形態では、吸着剤は、カテーテルまたはカニューレなどの注射部材またはその近くに配置され、その結果、吸着剤の下流で得られる処理済みインスリンの滞留時間は、患者に送達されるインスリンの劣化、変性、または効力の喪失を最小限に抑えるべく十分に短い。吸収剤は、ある量のフェノール化合物を除去して、送達部位での炎症または刺激を軽減または抑制し、患者による吸収を改善する。
【0022】
使用の準備ができるまで薬物を貯蔵するための貯蔵容器または区画を有する送達デバイスを提供することによって、インスリン溶液などの薬物を患者に送達するための方法もまた提供されている。送達デバイスは、インスリンを分配するための分配機構と、インスリンを患者に導入するための注射部材とを含んでいる。活性炭などの吸着剤は、貯蔵容器と注入部材の間に配置されている。インスリンは、注射部材に導入され、患者への注射の直前にインスリンを吸着剤に通してインスリンから安定剤を除去することにより、貯蔵容器から患者に送達される。
【0023】
デバイスの目的、利点、および特徴は、添付の図面と併せて、本発明の例示的な実施形態を開示する以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の様々な実施形態の上記の利点および他の利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付の図からより明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、一実施形態におけるペンニードルアセンブリの立面図である。
【
図4】
図4は、吸着剤を含んでいる。ペンニードルの断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態におけるカテーテルアセンブリの頂面図である。
【
図8】
図8は、さらなる実施形態における注入セットの斜視図である。
【
図9】
図9は、さらなる実施形態における注入セットの分解図である。
【
図11】
図11は、別の実施形態におけるパッチポンプの分解図である。
【
図12】
図12は、基本サンプルの吸着剤15mgで処理した後に残っているm-クレゾールの量を示す図表である。
【
図13】
図13は、ボーラスサンプルの吸着剤で処理した後に残っているm-クレゾールの量を示す図表である。
【
図14】
図14は、基本サンプルの吸着剤2.5mgで処理した後に残っているm-クレゾールの量を示す図表である。
【
図15】
図15は、ボーラスサンプルの吸着剤で処理した後に残っているm-クレゾールの量を示す図表である。
【
図16】
図16は、サンプルからのフェノールとm-クレゾールの除去およびサンプル中のインスリンの量を示す図表である。
【0025】
図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の部品、構成要素、および構造を指していると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、インスリン、薬剤、または薬物などの物質を患者に送達し、選択された化合物または物質を、患者に送達する前にインスリン、薬剤、または薬物から除去する送達デバイスおよび方法に関する。
【0027】
送達デバイスおよび方法は、安定剤または防腐剤の少なくとも一部が患者に送達する前にインスリンから除去される場合、安定剤または防腐剤を含んでいるインスリンを送達する際に使用するのに特に適している。インスリン製剤を患者に導入するための送達デバイスは、患者に導入する前にインスリン製剤と接触する吸着材料と関連して使用される。一実施形態において、送達または注射部位での刺激および炎症を低減または最小化する方法は、インスリン製剤中のフェノールおよび/またはm-クレゾールなどの安定剤の量を、患者に導入する前に低減することによって達成される。処理されたインスリンが、変性またはインスリン効力の喪失を防ぐために一定期間内に患者に導入される場合、インスリンは吸着剤で処理され、フェノールおよび/またはm-クレゾールの少なくとも一部が除去される。
【0028】
同様の参照番号が、全体を通して同様の要素を指している添付の図面に示されている、本発明の実施形態が参照される。本明細書に記載の実施形態は、図面を参照することにより、本発明を例示するが、これに限定されない。例示的な実施形態は、別個の説明で図示されているが、これらの実施形態の個々の特徴および構造は、使用者の治療上の必要性を満たすために、任意の数の方法で組み合わせることができる。
【0029】
この開示は、その適用において、以下の説明に記載されているか、または図面に示されている構成要素の詳細および構成に限定されない。本明細書の実施形態は、様々な方法で修正、実施、または実行することができる。また、本明細書で使用される言葉遣いおよび用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではないことが理解されよう。本明細書において「含んでいる」、「備えている」、または「有している」およびそれらの変形の使用は、その後に記載される項目およびそれらの同等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。他に限定されていない限り、「接続された」、「結合された」および「取り付けられた」という用語、およびその変形は広く使用され、直接および間接の接続、結合、および取り付けを包含する。さらに、「接続された」および「結合された」という用語およびそれらの変形は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。さらに、上方、下方、底および頂などの用語は相対的なものであり、図解を助けるためのものであるが、限定するものではない。実施形態は、相互に排他的であることを意図していないので、一実施形態の特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。「実質的に」、「約」および「ほぼ」などの程度の用語は、当業者によって、所与の値の周囲および所与の値外の範囲を含んでいる合理的な範囲、例えば、製造、組み立て、および実施形態の使用に関連する一般的な公差を指すと理解される。構造または特性を指す場合の「実質的に」という用語は、大部分または全体の特性を含んでいる。
【0030】
送達デバイスおよび方法は、ボーラス流れ送達または基本送達によって、インスリン、薬物、薬剤または他の物質などの物質を、患者に送達するために提供されている。一実施形態では、薬物は、インスリン製剤または溶液であり、注射または注入部位で選択され且つ制御された投与量で患者に送達される。
【0031】
インスリン製剤は、通常、使用の準備ができるまで、インスリン溶液の貯蔵寿命を延ばすための防腐剤および安定剤を含む溶液である。一実施形態における安定剤は、フェノール、m-クレゾールおよびそれらの混合物である。1型糖尿病患者の大多数は、インスリンを毎日複数回注射することで状態を管理している。毎日の注射は、刺激、炎症、瘢痕および脂肪肥大症、ならびにインスリン注射部位または注入部位での、皮下脂肪の蓄積を含む副作用をもたらす。インスリン製剤中のフェノールおよびm-クレゾールの存在は、静菌剤として、およびインスリン製剤を安定化させるために効果的である。しかしながら、注射部位または注入部位での反復または持続注射によるインスリン中のフェノールおよびm-クレゾールの存在は、患者に炎症および刺激を引き起こし、且つその部位でのインスリン吸収を低下させる可能性がある。
【0032】
静菌性および安定化因子としてインスリン類似製剤に存在するフェノール賦形剤のm-クレゾールおよびフェノールは、インビトロ(in vitro)システムで細胞毒性があり、製剤濃度で局所的に送達されると、有害な組織反応に寄与する。有害な組織反応は、炎症誘発性サイトカインレベルの上昇、および皮下インスリンの薬物動態の変化をもたらす。有害な反応は用量依存的であるため、その結果、インスリン注入デバイスなどでより多くの賦形剤が送達されると、薬物動態は初期値と比較して、ますます変化する。 試験データは、賦形剤によって誘発される炎症のモデルが、インスリンの投与および吸収の経路に悪影響を与えることを示唆している。これは、不十分な順守の問題につながる可能性がある。
【0033】
送達デバイスおよび方法の1つの特徴は、患者への送達時のインスリンの有効性を妨げることなく、インスリン製剤からフェノール賦形剤を選択的に除去することである。吸着剤として活性炭を使用した実験は、流出するインスリンを製剤濃度に維持しながら、インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを効果的に除去することを示している。フェノール賦形剤の低下された濃度を有し得られた処理済みインスリンは、インスリンの変性または効力の喪失が実質的に起こらない時間内に、患者に送達される。一実施形態では、吸着剤は、フェノール性賦形剤のみを除去するように選択されている。
【0034】
吸着剤は、安定剤の少なくとも一部分を除去するために、そして特に、患者に導入する前にインスリン製剤からフェノール安定剤の少なくとも一部分を除去するために、送達デバイスと共に使用される。一実施形態における吸着剤は、製剤が送達または注射デバイスに供給されているときに、インスリン製剤の流路に接続された、またはその中に配置されたチャンバー、容器、またはカートリッジ内に設けられている。他の実施形態では、吸着剤は、送達デバイス内に組み込まれ、インスリン製剤が患者に送達されているときに、インスリン製剤が吸着剤と接触する場所に配置されている。
【0035】
一実施形態では、吸着剤は、患者への送達時にインスリンの変性または効力の喪失なく送達部位での炎症を抑制するために、選択された量のフェノール安定剤を除去するのに十分な、インスリンへの接触表面積を提供する、顆粒、押し出し、または粉末の形態であってもよい活性炭である。デバイスの現在の説明において、活性炭(activated charcoal)と活性炭(activated carbon))という用語は、意味の区別なく使用されている。リン酸活性炭などの酸処理活性炭は、インスリン製剤から、フェノールとm-クレゾールを除去するのに特に適している。一実施形態では、活性炭(activated charcoal)は、リン酸で処理することによって得られる化学的に活性な炭素である。活性化は、pH6.7のリン酸によるものであってもよい。市販のリン酸処理活性炭は、インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを除去するために使用されてもよい。市販の酸処理活性炭の例は、Cabot Corporation(キャボット社)から商品名「CN5-20」の下に入手できる。活性炭は、注射部位での刺激および炎症を最小限に抑えるのに十分なフェノール化合物の量を除去するために、インスリンとの十分な接触を提供する表面積を有している。
【0036】
活性炭は、例えば、木材、ココナッツ殻、オリーブピット、泥炭、亜炭、石炭、または他の適切な炭素源、を含む様々な炭素源から得られてもよい。一実施形態における活性化は、有益な多孔性、細孔容積、表面積、表面化学、および細孔サイズ分布を提供するためのリン酸による、化学的活性化によるものである。活性炭は、通常、1,000 m 2/ gを超える表面積を有している。活性炭は、約0.26~1.16 cm3 / g、および一般に、約0.40~0.70 cm3 / gの細孔容積を有することができる。他の実施形態では、活性炭は、1500 m2 / g以上の表面積を有することができる。さらなる実施形態では、活性炭は、活性化の方法に応じて、2300 m2 / gを超える表面積、および場合によっては、3000 m2 / gを超える表面積を有することができる。
【0037】
吸着剤は、変性することなく且つインスリンの効力を低下させることなく、注射部位での刺激および炎症を低減するために、インスリン製剤に含まれるフェノール、m-クレゾールまたは他の安定剤の所望の量を除去するのに十分な、インスリン製剤との接触時間を提供する量で存在している。吸着剤は、患者に導入する前のインスリン製剤の劣化を制限するために、注射部材または送達部位にできるだけ近い、インスリン製剤の流路に配置されている。
【0038】
アセンブリ中の活性炭の量は、投与量およびフェノール安定剤の所望の吸着速度をもたらす基本流れまたはボーラス流送達による送達に応じた、インスリンの流速を補完する。一実施形態では、吸着剤の量は、基本流れ速度で、4日後に約95%のm-クレゾールおよび7日後に約60%の除去を提供する。
【0039】
図示されている実施形態では、吸着剤は、送達または注射デバイスとは別の容器またはカートリッジに封入されていてもよい。他の実施形態において、吸着剤は、送達デバイス内またはその構要素としてのチャンバー内、または製剤が供給容器から分配されるときにインスリン製剤を処理する供給容器またはカートリッジ内に封入されていてもよい。
【0040】
一実施形態において、送達デバイスは、
図1に図示されているように、ペンニードル送達デバイス10であり、これは、典型的には、用量ノブ/ボタン、外側スリーブ12、およびキャップを含んでいる。用量ノブ/ボタンは、使用者が注射されるべき薬剤の投与量を設定することを許容する。外側スリーブ12は、薬剤を注射するときに使用者によって把持される。キャップは、ペンニードル装置10をシャツのポケットまたは他の適切な場所にしっかりと保持し、偶発的なニードル損傷からカバー/保護を提供するために、使用者によって使用される。
【0041】
標準的なペンニードル装置において、投薬および送達機構は、外側スリーブ12内に見出され、当該技術分野に精通している人々によって理解されているので、ここではより詳細には説明されない。薬剤カートリッジは、通常、既知の取り付け機構によって標準のペンインジェクターハウジングに取り付けられる。薬剤カートリッジ内のプランジャーまたはストッパーの遠位方向への動きにより、薬剤がリザーバーハウジングに押し込まれる。薬剤カートリッジは、隔壁によって密封され、リザーバーまたはハウジング内に配置された隔壁貫通ニードルカニューレによって穿刺される。他の取り付け機構が使用されてもよいが、リザーバーハウジングは、好ましくは薬剤カートリッジにねじ込まれている。ペンニードル送達デバイスは、業界で知られている標準的なペン送達デバイスであってもよく、その結果として、ペンニードル送達デバイスは詳細には示されていない。
図2に図示されているようなペンニードルアセンブリ18は、カニューレ20を支持するニードルハブ16、外側カバー22、および内側シールド24を含んでいる。保護シール26は、
図2に示すように、ニードルハブおよびカニューレを囲み、清潔で無菌の状態を維持するべく、外側カバーの開放端部に取り付けられている。当該シール26は、使用中、ニードルハブにアクセスするために、外側カバーから容易に剥がすことができるラベルまたは他の閉鎖部材であってもよい。
【0042】
図示されている実施形態において、ペンニードル送達デバイス10には、患者に送達される前にインスリンを処理するべく、活性炭などの吸着剤が備えられている。一実施形態では、フィルタカートリッジ30が、
図1に図示されているように、ペンニードル送達デバイスの中または出口に設けられている。フィルタカートリッジ30は、送達ペン10に接続するための入口端部32を有し、それにより、インスリン製剤が、カートリッジ30を通過して出口端部34に至る。カートリッジ30の入口端部32は、
図3に図示されている送達ペンと接続するための雌ねじ31を備えた開放端部を有している。出口端部34は、処理されたインスリンを患者に導入するためのペンニードルハブ16と結合する雄ねじ41を備えて構成されている。図示されている実施形態では、出口端部34は、ニードルハブ16の雌ねじと螺合するためのねじ付きカップリングを有している。
【0043】
図3に図示されているように、カートリッジ30は、所望の量の安定剤、特にフェノール安定剤化合物を除去するのに十分なインスリンとの接触時間を提供する量の吸着剤35を包含する内部空洞33を有している。カートリッジは、安定剤化合物を除去しおよびカートリッジ内に残っているインスリンの変性を最小限に抑えるため、注射後の保持容量を制限するべく、インスリンに対する滞留時間を提供するための形状および内部容量を有している。内部空洞33は、底壁37と頂壁39とによって形成されている。底壁37は、供給リザーバまたは送達ペンのカートリッジから吸着剤35を包含している空洞にインスリンを運ぶべく、送達ペン内の隔壁を貫通するカニューレ43を支持している。図示されている実施形態における頂壁39は、カートリッジを通過するインスリンと患者へ送達するペンニードル16との間の流体連絡を提供するために、ペンニードル16のニードル20の非患者端部を受け入れる隔壁47を備えた開口部45を有している。図示されている実施形態では、カートリッジの底壁および頂壁は、カートリッジの本体と一体的に形成されている。他の実施形態において、底壁および頂壁は、別個の構成要素として形成され、カートリッジの本体に取り付けられている。カートリッジは、使用後の廃棄のための単一使用のため、または吸着剤がインスリンの変性または効力の喪失なしにインスリンから安定剤を除去するのに効果的である間の所定の時間の複数使用のために、構築されてもよい。
【0044】
一実施形態では、カートリッジは、透明であるか、または使用者が使用の前後にカートリッジの内容物を観察することを可能にするのに十分な、透明性を有する観察部分または窓を有している。カートリッジの透明部分は、安定剤が吸着剤によって吸着および除去された後に、変性によって引き起こされるインスリンのフィブリル化または変化を、使用者が視覚化できる位置に配置されている。
【0045】
カートリッジ30は、インスリン製剤の投与量と接触し、患者に導入する前に、インスリン製剤から選択された量のフェノール、m-クレゾールまたは他の安定剤を除去するために、一定量の吸着剤を有している。カートリッジ30は、典型的には、注射部位での炎症および刺激を抑制するために、ペンニードル送達アセンブリ10の典型的な流速において、インスリン製剤からある量のフェノールおよび/またはm-クレゾールを除去する量の活性炭を有している。他の実施形態では、吸着剤は、インスリンがペンニードル18に供給されるときに、カートリッジからのインスリン製剤が吸着剤を通過する場合、ペンニードル送達デバイスのスリーブ12内に配置されたカートリッジのチャンバーに含まれる。
【0046】
図示されている実施形態において、カートリッジ30は、インスリンの劣化または変性によるインスリン効力の喪失を最小化すべく、フェノールおよび/またはm-クレゾール濃度が低減された状態の処理されたインスリンが、患者に導入される前の時間を最小化するために、ペンニードルに対して配置されている。
【0047】
図3の実施形態におけるカートリッジ30は、ペンニードル16および送達ペン10に結合される別個のユニットである。
図4に示されている別の実施形態では、ペンニードル16は、吸着剤51を包含している内部のチャンバーすなわち空洞49を含んでいる。ニードル20は遠位端部から延在し、空洞49と連通している。ねじ付き近位端部は、典型的なペンニードルと同様の方法で、送達ペンの隔壁を貫通するニードルを有している。
【0048】
図5~7の実施形態においては、送達デバイスは、カテーテルアダプタ44に接続されたカテーテル42を含んでいる静脈内カテーテルアセンブリ40である。カテーテルアダプタ44は、流体供給チューブ48に接続するための近位端部46を有している。
【0049】
流体供給チューブ48は、注入ポンプなどの分配部材84に接続するための、ルアーフィッティングまたは他のねじ式カップリングなどのカップリング50を含んでいる。他の実施形態において、カップリング50は、流体密封の嵌め合いを提供する摩擦嵌めまたは干渉嵌めであってもよい。分配部材84は、インスリン供給体に接続されているか、またはインスリン供給体を含んでいる。
【0050】
図示されている実施形態では、カテーテルアダプタ44は、カテーテルアダプタ44の本体から外向きに突出する翼付き延長部54を含んでいる。翼付き延長部54は、カテーテル挿入後にカテーテルアダプタの所望の位置を維持するために、カテーテルアダプタを患者に取り付けるための接着剤を含んでいる。
【0051】
図5~7に図示されているように、カートリッジ52は、カテーテルアダプタ44の上流およびインスリン供給体の下流の供給チューブ48に配置されている。カートリッジ52は、活性炭などの吸着剤を含み、その結果、供給チューブ48を通して分配される処理されたインスリン製剤は、カテーテル42に供給されて患者に導入される前に、吸着剤と接触する。図示されている実施形態におけるカートリッジ52は、処理されたインスリン製剤がカートリッジ52を出る時と処理されたインスリン製剤が患者に送達される時との間の、処理されたインスリン製剤の滞留時間を最小にするために、カテーテルアダプタ44に対してできるだけ近くに配置されている。カートリッジ52は、透明または不透明であってもよい、適切なガラスまたはプラスチックで作られてもよい。一実施形態において、容器は、目視検査によってインスリンのフィブリル化の発生を検出および観察するのに十分な透明である。
【0052】
図7に図示されているように、カートリッジ52は、供給チューブ48に接続される開口部を備える端壁53および吸着剤57を取り囲む内部空洞55を備える本体を有している。図示されている実施形態では、フィルターすなわち多孔質部材59が、カートリッジ52内に吸着剤57を保持するために、カートリッジの開放端部に配置されている。多孔質部材59は、吸着剤を通るインスリンの流れを抑制し、吸着剤をカテーテル42に送達する範囲内に吸着剤をカートリッジ内に保持するべく、吸着剤の粒子サイズに対応する細孔サイズを有している。カテーテルアセンブリは、一般に、単一使用のためのユニットとして構築されているので、その結果、使用後にアセンブリ全体が廃棄される。あるいは、カートリッジ52は、カテーテルが患者に配置されている間に吸着剤の交換または補充を許容するべく、使用後の交換のために、チューブ48の補完カップリングと結合するために、両端部に適切なカップリングを有することができる。
【0053】
図8~10に図示されているような別の実施形態の送達デバイスは、当該技術分野で知られている注入セット56である。注入セット56は、ベース58と、注入セットを患者に取り付けるための接着剤を有している可撓性パッド60とを含んでいる。ベース58は、インスリン製剤を長期間患者に送達するための、当該技術分野で知られているような可撓性カニューレまたは可撓性カテーテルおよび挿入ニードルを支持している。挿入ニードルおよびカテーテルの例は、この目的のために組み込まれている特許文献3に開示されている。注入セットは、典型的には、患者に基本的な流れを提供するべく、同じ注入部位において、数日間インスリンを投与する。当該技術分野で知られているカニューレまたはカテーテルは、一般に、患者へのインスリンの制御された送達を提供するために患者に配置される、解決可能な可撓性のカニューレまたはカテーテルである。
【0054】
流体供給チューブ62は、インスリン製剤をカテーテルに供給するために、ベース58に接続するための取り外し可能な流体カップリング64に接続されている。カートリッジ66は、インスリン製剤が注入セット56に送達する前にカートリッジを通過するように、供給チューブ62に接続されている。カートリッジ66は、インスリン製剤を供給およびポンプ機構から受け取る入口68と、処理されたインスリン製剤をカテーテルに向けるための出口70とを有している。
【0055】
カートリッジ66は、カートリッジの出口70を通って排出する前に、インスリン製剤と接触し、インスリン製剤からフェノール、m-クレゾールまたは他の安定剤の少なくとも一部分を除去するために、ある量の活性炭などの吸着剤を含んでいる。カートリッジ66は、吸着剤がその耐用年数の終わりに達したときに、カートリッジ66が取り外され得るように、カップリングによって供給チューブ62に接続され得る単一の構成要素であってもよい。交換用カートリッジは、その後、処理されたインスリンを患者に継続的に送達するための供給チューブ62に接続される。
【0056】
図9に図示されているさらなる実施形態では、流体カップリング74を有する注入セット72が吸着剤カートリッジ76に接続されている。前の実施形態のように、注入セットは、流体カップリング94を支持するベース88、および可撓性接着パッド92を含んでいる。カテーテルまたはカニューレは、インスリンを患者に送達するために、ベース88から延びている。注入セット内のカテーテルまたはカニューレは、一般に、注入セットで一般的に使用されるような柔らかくて柔軟なカニューレである。図示されている実施形態におけるカートリッジ76は、流体カップリング74に接続し、液密シールを提供する適切な結合機構を有している。カートリッジ76の入口端部は、インスリン製剤を注入セットに供給するための分配装置またはポンプ機構の流体カップリング82に接続するためのカップリング80を含んでいる。
【0057】
図10に図示されているように、カートリッジ76は、側壁77、開いた底端部79、および頂壁81を有している。頂壁81は、カップリング80を支持している。カップリング80は、吸着剤87を包含するカートリッジの空洞85と流体連通するための内部通路83を有している。開いた底端部は、注入セットのカップリング94と結合するためのくぼみ89を有している。
【0058】
通路83は、多孔質膜、スクリーン、またはフィルター91を含み、開いた底端部は、空洞85を形成し、そして空洞85内に吸着剤87を保持するために、多孔質膜、スクリーン、またはフィルター93を含んでいる。多孔質膜は、カートリッジを通って注入セットのカテーテルへの十分なインスリンの流れを許容しながら、空洞内に吸着剤を保持するためのポアサイズ(孔径)を有している。
【0059】
吸着剤としての活性炭は、「Humalog」の商品名で販売されているような、インスリンリスプロ(insulin lispro)から、7日間にわたってフェノールを濾過して除去するのに効果的であることが判明している。活性炭はまた、「Novolog」の商品名で販売されているようなインスリンアスパルト(insulin aspart)から、フェノールとm-クレゾールを除去するのにも効果的であることが判明している。活性炭との7日間にわたる接触中、または接触後において、これらの製剤のいずれについても、インスリンの凝集またはフィブリル化は観察されなかった。
【0060】
活性化された吸着剤は、インスリン製剤の継続的および/または制御された送達を提供するために、カテーテルが患者に数日間配置される場合に、
図8-10の注入デバイスなどの注入デバイスにおいて、インスリンを処理するのに特に適している。患者に導入する直前に、インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを除去するためのインスリン製剤の処理は、注入部位での刺激と痛みを効果的に軽減または抑制し、注入部位における数日の期間にわたるインスリンの吸収を改善する。
【0061】
図11は、送達デバイスがパッチポンプ100であるデバイスの別の実施形態を示している。
図11は、パッチポンプ100の例示的な実施形態である。パッチポンプ100は、明確にするためにシースルーカバーを備えて示され、パッチポンプ100を形成するために組み立てられる様々な構成要素を示している。
図11は、中実のカバー102を備えて示されるパッチポンプの様々な構成要素の分解図である。パッチポンプ100の様々な構成要素は、インスリンを貯蔵するためのリザーバ104、リザーバ104からインスリンを排出するためのポンプ103、1つまたは複数の電池の形態の電源105、およびカテーテルを備える挿入ニードルを使用者の皮膚に挿入するための挿入機構107を含み得る。制御電子機器108は、スマートフォンを含む、リモートコントローラおよびコンピュータなどの外部デバイスへのオプションの通信機能を備えた回路基板の形態で、含まれている。カバー102の用量ボタン106が、ボーラス投与を含むインスリン投与を作動させるために、含まれている。ベース109には上記の様々な構成要素が留め具110によって取り付けられてもよい。パッチポンプ100はまた、リザーバ104から汲み上げられたインスリンを注入部位に移送する様々な流体コネクタラインを含んでいる。カテーテルおよび挿入機構を有するパッチポンプの例は、この目的のために組み込まれている特許文献3に開示されている。
【0062】
図示されている実施形態では、パッチポンプ100は、リザーバ104からの流体供給チューブに接続されたカートリッジ112を含み、その結果、リザーバからのインスリンは、カテーテルの前にカートリッジ112を通過する。図示されている実施形態では、カートリッジ112は、
図7の実施形態と同様の方法で構築され、単一使用のためのパッチポンプのアセンブリの単一部品である。他の実施形態におけるリザーバおよびカートリッジは、パッチポンプで交換するための取り外し可能なユニットであってもよい。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを除去するための活性炭の有効性が、既知の注入製剤を使用してテストされた。安定剤として、m-クレゾールを含んでいる商品名「Humalog」で得られたインスリン製剤が、15mgの酸処理活性炭床に7日の期間にわたり通過された。酸処理された活性炭は、Cabot Corporation(キャボット社)から商品名CN5-20の下に入手された。インスリン製剤は、インスリンの基本流れ送達およびインスリンのボーラス流れ送達に対応する速度で活性炭を通過した。基本流れを表す
図12の図表に示されるように、活性炭は4日目までに約95重量%、7日目までに約60重量%のm-クレゾールを除去するのに効果的であった。インスリン効力は、7日目まで93%以上に維持された。
図12の図表に図示されているボーラス流れは、7日後に除去された約60%のm-クレゾールを示し、これは、
図12の基本的な流れに類似するインスリン効力の実質的にわずかな損失を伴う、7日後に残っている約40重量%のm-クレゾールに相当する。
図12および13の図表は、m-クレゾールを除去するのに、基本流れ速度がボーラス流量速度よりも約20%効果的であることを示している。
【0064】
(実施例2)
実施例2は、同様のインスリン量を伴う2.5mgの酸処理活性炭を使用することを除けば、実施例1と同様の方法で実施された。
図13の図表の基本流れに示されているように、活性炭の量は、同じ流速と量でインスリン製剤からm-クレゾールを除去するのにあまり効果的ではなかった。
図13の図表は、7日目以降、活性炭がインスリンに存在するm-クレゾールの約80重量%を除去するのに効果的であることを示している。
図10の図表は、ボーラス流れに対するm-クレゾールの除去の有効性を示している。
図14に示されるように、7日目以降に、活性炭の量はm-クレゾールの約25重量%を除去した。実施例1および実施例2の結果は、インスリン製剤の容量、活性炭の量、およびインスリンと活性炭との接触時間の長さ、およびインスリン製剤からのm-クレゾールの効果的な除去の間の相関関係を示している。
【0065】
(実施例3)
この実施例では、インスリン製剤は、商品名「Novolog」の下に得られ、商品名「CN5‐20」の15mgの酸処理活性炭で試験された。活性炭は、
図15の図表に示されているように、インスリンの効力を低下させることなく、インスリン製剤からm-クレゾールとフェノールを効果的に除去することが示された。
【0066】
活性炭は、患者に導入する直前に、インスリン製剤からフェノールとm-クレゾールを除去するのに効果的であることがわかった。活性炭は、制御されたおよび/または継続的なインスリン送達を提供する注入デバイスの典型的な流速において、インスリンの効力を失うことなく、インスリン製剤からフェノールおよびm-クレゾールを除去するのに効果的である。インスリン製剤から、フェノールとm-クレゾールの含有量が減少されると、注射部位での刺激と炎症を減少させ、長期間にわたって注射部位でのインスリンの吸着を改善する。
【0067】
前述の実施形態および利点は、単に「例示的」であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態の説明は、例示を意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。様々な修正、代替、および変形は、当業者には明らかであり、本発明の範囲内に入ることが意図されている。
【0068】
異なる実施形態および特許請求の範囲の特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができることに特に留意されたい。したがって、そのようなすべての変更は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物で定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。