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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】抗IL-23p19抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20240709BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240709BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/24
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
G01N33/53 P
G01N33/531 A
A61K39/395 L
A61K39/395 U
A61K45/00
A61K47/68
A61P1/00
A61P1/04
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/06
A61P43/00 121
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2020572469
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2019121261
(87)【国際公開番号】W WO2020108530
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】201811424552.X
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ、リー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ショアイシアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、エンクン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-518856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、
HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、およびLCDR3は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または
HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、およびLCDR3は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、HCDR3は配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、LCDR1は配列番号5に示されるアミノ酸配列からなり、LCDR2は配列番号6に示されるアミノ酸配列からなり、およびLCDR3は配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるか、または
HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、HCDR2は配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、HCDR3は配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、LCDR1は配列番号5に示されるアミノ酸配列からなり、LCDR2は配列番号6に示されるアミノ酸配列からなり、およびLCDR3は配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
前記重鎖可変領域が、配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなる、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記重鎖可変領域が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
前記重鎖可変領域が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなる、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記重鎖が、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖が、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
前記重鎖が、配列番号14または15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖が、配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなる、請求項1、2または4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記重鎖可変領域が、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
前記重鎖可変領域が、配列番号14または15に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、かつ
前記軽鎖可変領域が、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなる、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
(i)1.75nM以下のkでIL-23p19と結合すること、
(ii)表3に示されるいずれかの抗体と比較して、IL-23p19に対して同一もしくは類似の結合親和力および/または特異性を示すこと、
(iii)表3に示されるいずれかの抗体とIL-23p19との結合を抑制(例えば、競合的に抑制)すること、
(iv)表3に示されるいずれかの抗体と同一のまたは重複するエピトープと結合すること、
(v)IL-23p19への結合について表3に示されるいずれかの抗体と競合すること、ならびに/あるいは、
(vi)表3に示されるいずれかの抗体の1つ以上の生物学的特性を有すること、のうちの1つ以上の特性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体が、IgG1、IgG2、もしくはIgG4の形態の抗体であるか、またはその抗原結合断片である、請求項1~7のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFvまたは(Fab’) 二重特異性抗体(dAb)、および線状抗体から選択される抗体断片である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体が、二重特異性または多重特異性抗体分子であ、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記二重特異性抗体が、IL-23p19、およびTNFα、IL-17AまたはIL-17Fと結合する、請求項12に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項15】
発現ベクターである、請求項14に記載の核酸を含むベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸または請求項15に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
IL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片の製造方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を発現するために適した条件において、請求項16に記載の宿主細胞を培養すること、および所望により前記抗体またはその抗原結合断片を単離することを含、方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片と、追加物質とを含む、免疫複合体。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片または請求項18に記載の免疫複合体と、医薬品添加物と、を含む、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片または請求項18に記載の免疫複合体と、1以上の追加治療剤と、を含む、組み合わせ製品。
【請求項21】
前記追加治療剤が、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される、請求項20に記載の組み合わせ製品
【請求項22】
対象においてADCCを介在するか、エフェクターT細胞もしくはNF-kappaBシグナル経路を活性化するか、または調節性T細胞を解消するための、請求項19に記載の医薬組成物または請求項20もしくは21に記載の組み合わせ製品。
【請求項23】
対象のIL-23関連疾患を予防または治療する方法に使用するための請求項19に記載の医薬組成物
【請求項24】
前記IL-23関連疾患が、免疫系疾患である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記IL-23関連疾患が、自己免疫疾患または炎症である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
IL-23関連疾患が、乾癬、炎症性腸疾患、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、Sjogren症候群、多発性硬化症、炎症、喘息、特発性血小板減少性紫斑病、または乾癬性関節炎である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、1種以上の併用療法と組み合わせて前記対象に投与される、請求項23~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記療法が、治療法および/または追加治療剤から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記治療法が手術治療および/または放射線治療を含むか、または、前記追加治療剤が化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
対象においてADCCを介在するか、エフェクターT細胞もしくはNF-kappaBシグナル経路を活性化するか、または調節性T細胞を解消するための薬剤の製造における、請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片、請求項18に記載の免疫複合体、または請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項32】
前記IL-23関連疾患が、免疫系疾患である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記IL-23関連疾患が、自己免疫疾患または炎症である、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
IL-23関連疾患が、乾癬、炎症性腸疾患、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、Sjogren症候群、多発性硬化症、炎症、喘息、特発性血小板減少性紫斑病、または乾癬性関節炎である、請求項31に記載の使用
【請求項35】
前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記抗体またはその抗原結合断片、前記免疫複合体、または前記医薬組成物が、1種以上の併用療法と組み合わせて前記対象に投与され、請求項31~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記療法が、治療法および/または追加治療剤から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記治療法が手術治療および/または放射線治療を含むか、または、前記追加治療剤が化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤から選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
試料中のIL-23p19を検出する方法であって、
(a)試料と、請求項1~13のいずれか一項に記載のIL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片とを接触させること、および
(b)IL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片とIL-23p19により形成される複合体を検出することを含みIL-23p19抗体と結合する抗体が検出可能に標識される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-23p19と特異的に結合する新規な抗体、抗体断片、前記抗体または抗体断片を含有する組成物に関する。また、本発明は、前記抗体またはその抗体断片をコードする核酸、前記核酸を含む宿主細胞、および関連の使用に関する。また、本発明は、これらの抗体および抗体断片の治療・診断のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン(IL)-12は、2つのジスルフィド結合グリコシル化タンパク質サブユニットからなる分泌されたヘテロ二量体サイトカインであり、この2つのサブユニットは、それらの近似分子量のためにp35およびp40と命名されている。IL-12のp40タンパク質サブユニットは、p19と命名された単離されたタンパク質サブユニットにも結合して、新しいサイトカイン、すなわちインターロイキン-23(IL-23)を形成することが見出されている(Oppman et al.、2000)。
【0003】
インターロイキン-23(IL-23)は、IL-23特有のp19(Il-23p19)と、IL-12(IL-12)に共通のp40(IL-12p40)の2つのサブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびIL-12のp35サブユニットと構造的に関連している。IL-23は、IL-23受容体特有のIL-23RおよびIL-12受容体に共通のIL-12Rb1である2つのサブユニットを含むヘテロ二量体受容体への結合によってシグナル伝達を介在する。
【0004】
多くの初期の研究は、p40における遺伝的欠損(p40ノックアウトマウス、p40KOマウス)の結果が、p35欠損マウス(例えばp35KO)で観察されたものよりも深刻であることを示している。これらの結果は、一般に、p40ノックアウトがIL-12の発現だけでなくIL-23の発現も阻害すると解釈される。例えば、Oppmann et al.(2000)Immunity 13:715-725; Wiekowski et al.(2001)J.Immunol.166:7563-7570;Parham et al.(2002)J.Immunol. 168:5699-708;Frucht(2002) Sci STKE 2002,E1-E3;Elkins et al.(2002)Infection Immunity 70:1936-1948)を参照されたい。IL-23の抑制は、IL-23p19欠損マウスまたはIL-23の特異的抗体の中和によって、抗IL-12p40戦略に匹敵する利益を提供することが、最新の研究により実証されている(Cua et al.、2003、Murphy et al.、2003、Benson et al.2004)。したがって、免疫介在性疾患におけるIL-23の特異的作用の増加の証拠が存在する。IL-23の中和は、IL-12経路を抑制せず、したがって、免疫介在性疾患の効果的な治療を提供する一方で、重要な宿主防御免疫機構に限定された効果を有する。これは、現在の治療選択の顕著な改善を表すであろう。
【0005】
したがって、当技術分野では新規なIL-23p19抗体の必要性が存在し、本発明は既存の抗体と同等以上の特性を有する新規なIL-23p19抗体の開発に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、IL-23p19と結合する新規な抗体、およびその抗原結合断片を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体は、以下の1つ以上の特性を有する。
(i)高親和力でIL-23p19と結合する特性、
(ii)IL-23シグナル経路の阻害、例えばIL-23阻害による細胞からのIL-17分泌の誘導特性、
(iii)IL-23関連疾患の治療または予防特性。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号9または10に示される配列の3つの重鎖CDR(HCDR)、および/または配列番号11または12に示される配列の3つの軽鎖CDR(LCDR)を含む、IL-23p19と結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体またはその断片をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体またはその断片の製造方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体を含む免疫複合体、医薬組成物および組み合わせた製品を提供する。
【0012】
本発明はまた、本発明の抗体を用いて対象においてIL-23介在シグナル経路を阻害する方法、ならびにIL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)を予防または治療する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、試料中のIL-23p19を検出する方法に関する。
【0014】
以下、本発明を、図面および実施形態を参照してさらに説明する。しかし、これらの図面および実施形態は、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではなく、当業者が容易に思いつく変更は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、17D1ヒト化抗体、17D1-YTEがIL-23を抑制することによって、マウス脾臓リンパ球からIL-17の分泌を誘導する能力を示す。
図2図2は、各群におけるマウスの右耳の平均厚さの経時変化を示す。
図3図3は、各群のマウスの耳腫脹抑制率の経時変化を示す。
図4図4は、各群のマウスの体重の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.定義
本発明の詳細な説明を行う前に、本明細書で説明されている特定の方法、方式または試薬に変更がある可能性があるため、本発明はこれらに限定されるものではないことが理解されたい。なお、本発明で使用されている用語は特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれらによって限定されることは意図されず、特許請求の範囲によって限定される。別途定義が行われる場合を除き、本発明で使用されている技術用語または科学用語はそのいずれも当業者の通常の理解と同じ意味を有する。
【0017】
本明細書で解釈のために以下の定義を使用し、しかも矛盾がなければ、単数形で使用される用語は複数の場合をも含み、逆の場合については同様である。なお、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を加えるものではない。
【0018】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「および/または」は選択可能オプションのうちのいずれか1項または選択可能オプションの2項または複数項を指す。
【0020】
本明細書で使用される用語「包含する」または「含む」とは、前記要素、整数またはステップを含むが、他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、用語「包含する」または「含む」を用いる場合、特記しない限り、述べられた要素、整数またはステップからなる場合を含む必要がある。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「包含する」ことを言及する場合、当該配列からなる抗体可変領域を含むことを指す。
【0021】
IL-23のp19サブユニット(本明細書では「IL-23p19」および「p19サブユニット」とも呼ばれる)は、21アミノ酸を有するリーダー配列を含む189アミノ酸を有するポリペプチドであり(Oppmann et al.,Immunity 13:715(2000),配列番号181)、A、B、C、およびDと呼ばれる4つの圧縮された(packed)αヘリックスを含み、上-上-下-下トポロジーを有する。4つのヘリックスは3つのポリペプチドループによって連結されている。A-BおよびC-Dループは、平行ヘリックスを連結するので、比較的長く作られている。短いB-Cループは、逆平行のBおよびCヘリックスを連結する。IL-23のp19サブユニットは、らせん状サイトカインのIL-6ファミリーのメンバーである。当該サイトカインのファミリーは、3つの保存エピトープ(部位I、IIおよびIII、BravoおよびHeath(2000)EMBO J.19:2399-2411)を介してその同族受容体と結合する。p19サブユニットは、3つのサイトカイン受容体サブユニットと相互作用して、コンピテントシグナル伝達複合体を形成する。細胞内で発現される場合、p19サブユニットはまずp40サブユニットと複合体を形成し、p19サブユニットはIL-12とp40サブユニットを共有する。p19p40複合体は、ヘテロ二量体タンパク質として細胞から分泌され、IL-23と呼ばれる。1つの実施形態において、本発明のIL-23p19は、ヒト(NCBI:AAG37232)またはカニクイザル(NCBI:AEY84629)に由来する。
【0022】
本発明で使用される用語「抗IL-23p19抗体」、「抗IL-23p19」、「IL-23p19抗体」または「IL-23p19と結合する抗体」とは、(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19を標的とする診断剤および/または治療剤として使用できるように、十分な親和性で(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19サブユニットまたはその断片と結合できる抗体を指す。1つの実施形態において、抗IL-23p19抗体の非(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19タンパク質と結合する程度は、例えば、放射免疫測定(RIA)または光干渉による生体測定法またはMSD測定により測定された結果、前記抗体の(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19と結合する程度の約10%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満、約50%未満、約60%未満、約70%未満、約80%未満、または約90%以上未満である。
【0023】
「抗体断片」とは、完全抗体の一部を含みかつ完全抗体によって結合された抗原と結合する、完全抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の非限定的な例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価抗体もしくは二重特異性抗体もしくはその断片、ラクダ科由来の抗体、抗体断片により形成された二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、抗原(例えば、IL-23p19)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。
【0025】
参照抗体と「同一のまたは重複するエピトープと結合する抗体」とは、競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を阻害する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の当該抗体とその抗原の結合を阻害する。
【0026】
参照抗体に対してその抗原と競合的に結合する抗体とは、競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を阻害する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の当該抗体とその抗原の結合を阻害する。1種の抗体が別の抗体と競合関係にあるかどうかを決定するためには様々な競合的結合測定を用いることができる。これらの測定の例としては、固相直接放射免疫測定または間接放射免疫測定(RIA)、固相直接酵素免疫測定または間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合測定(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 9:242-253)が挙げられる。
【0027】
参照抗体とその抗原の結合を抑制(例えば、競合的抑制)する抗体とは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を抑制する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の当該抗体とその抗原の結合を抑制する。抗体とその抗原の結合は親和力(例えば、平衡解離定数)として計測できる。親和力の測定方法は、本分野で既知の内容である。
【0028】
参照抗体と同じもしくは類似の結合親和力および/または特異性を示す抗体とは、参照抗体の少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の結合親和力および/または特異性を有する抗体を指す。これに関しては、本分野の既知の任意の結合親和力および/または特異性の測定方法で測定できる。
【0029】
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」は、抗体可変ドメインでは、配列において超可変でありかつ構造上に形成された所定のループ(「超可変ループ」)および/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合する役割を果たす。重鎖と軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2とCDR3と呼ばれ、N-末端から順に番号付ける。抗体の重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。1つの特定の軽鎖可変領域または重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRにおけるアミノ酸配列の境界は、公知の各種の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1種またはその組み合わせにより正確に決定できる。前記割り当てシステムの例は、抗体の三次元的構造とCDRリングのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883,Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際的ImMunoGeneTics database(IMGT)(www.imgt.cines.fr/にて利用可能)、大量の結晶構造が利用されるアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0030】
例えば、CDRの決定方式によって、各CDRの残基はそれぞれ以下に記載のとおりである。
【0031】
【表1】
【0032】
また、参照CDR配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか)と同じKabat番号位置を有することでCDRを決定することもできる。
【0033】
別途説明が行われる場合を除き、本発明で用語「CDR」または「CDR配列」は、上記のいずれかの方式で決定されるCDR配列を含む。
【0034】
特記しない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)を言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))に基づいた番号付け位置を指す。
【0035】
1つの実施形態において、本発明の抗体のCDRの境界はAbM規則により決定され、例えば、その配列は表1に示されるとおりである。
【0036】
ただし、異なる割り当てシステムから得られた同一抗体の可変領域のCDRの境界には、差異がある可能性があることを認識すべきである。即ち、異なる割り当てシステムで定義された同一抗体の可変領域のCDR配列には違いがある。したがって、本発明で定義された具体的なCDR配列により抗体が限定される場合、前記抗体の範囲には、可変領域配列が前記した具体的なCDR配列を含むが、異なる手段(例えば、異なる割り当てシステムのルールまたは組み合わせ)が使用されることにより、かかるCDR境界が本発明で定義された具体的なCDR境界と異なるような抗体も含まれる。
【0037】
異なる特異性を有する(即ち、異なる抗原の異なる結合部位を対象とする)抗体は、(同一の割り当てシステムにおいて)異なるCDRを有する。しかし、抗体と抗体との間にあるCDRが異なるにもかかわらず、CDRには限られた数のアミノ酸位置のみを抗原との結合に直接参与する。Kabat、Chothia、AbM、ContactおよびNorth方法のうちの少なくとも2種を用いて、最小重複領域を決定し、それによって抗原結合用の「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であることができる。当業者が明らかにしたように、抗体の構造とタンパク質のフォールディングによって、CDR配列の残り部分の残基を確定することができる。従って、本発明は、本出願に提供される如何なるCDRの変異体も考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基はそのまま保持することができ、KabatまたはChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は保守的なアミノ酸残基で置換されることができる。
【0038】
本明細書で使用される用語「IL-23関連病的状態」または「IL-23関連疾患」とは、IL-23活性によって促進され、通常、IL-23が異常に発現する状態を指す。IL-23関連病的状態には、自己免疫疾患および炎症性病的状態などの免疫系疾患が含まれる。前記疾患としては、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、Sjogren症候群、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、炎症、喘息、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)および強直性脊椎炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される用語「免疫系疾患」は、免疫系障害に関連する疾患を含む。用語「自己免疫疾患」とは、生体が自己抗原に免疫反応して自己組織を損傷することによって引き起こされる疾患を指す。本明細書で使用される用語「炎症性病的状態」とは、病態が例えば免疫系細胞の数の変化、移動度の変化、または活性化の変化に全体的または部分的に起因する病的状態を指す。免疫系の細胞には、例えば、T細胞、B細胞、単球またはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ミクログリア、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫学的特異性に関連する任意の他の細胞、例えばサイトカイン産生内皮細胞または上皮細胞が含まれる。
【0040】
本明細書に記載の用語「治療剤」は、IL-23関連疾患の予防または治療に有効な任意の物質を包含し、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤(例えば、抗炎症薬または免疫抑制剤)が含まれる。
【0041】
本明細書で使用される用語「細胞傷害剤」とは、細胞機能を抑制または阻止しおよび/または細胞死または破壊を引き起こす物質を指す。
【0042】
「化学療法剤」には、免疫系疾患の治療に有用な化学化合物が含まれ、限定されないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、抗生物質、酵素、ヘテロ剤、ホルモンおよびアンタゴニスト、抗エストロゲン、抗アンドロゲン、ならびに非ステロイド性抗アンドロゲンなどが含まれる。
【0043】
用語「小分子薬物」とは、生物学的プロセスを調節できる低分子量の有機化合物を指す。「小分子」は、10kD未満、典型的には2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有する分子として定義される。小分子には、無機分子、有機分子、無機成分含有有機分子、放射性原子含有分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が含まれるが、これらに限定されない。治療剤として、小分子は、大分子よりも細胞透過性が高く、分解に対して感受性が高く、免疫応答を誘発しにくい。小分子、例えば抗体およびサイトカインのペプチド模倣物、および小分子毒素の記述については、例えばCasset et al.,(2003) Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198-205;Muyldermans(2001)J. Biotechnol.74:277-302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251-1256; Apostolopoulos et al.,(2002)Curr.Med.Chem.9:411-420;Monfardini et al., (2002)Curr.Pharm.Des.8:2185-2199;Domingues et al.,(1999)Nat.Struct. Biol.6:652-656;SatoおよびSone(2003)Biochem.J.371:603-608;米国特許第6,326,482号を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用される用語「免疫調節剤」とは、免疫応答を抑制または調節する天然または合成の活性薬剤または薬剤を指す。免疫応答は、体液応答または細胞応答であってもよい。免疫調節剤は、免疫抑制剤または抗炎症剤を含む。
【0045】
本明細書で使用される「免疫抑制剤」、「免疫抑制薬」または「免疫抑制物」は、免疫抑制治療において免疫系の活性を抑制または阻止するために使用される治療剤である。臨床的には、それらは、移植された臓器および組織(例えば、骨髄、心臓、腎臓、肝臓)の拒絶反応を阻止するために使用され、および/または自己免疫疾患、または自己免疫の起源である可能性が最も高い疾患(例えば、関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症)の治療に有用である。免疫抑制薬には、グルココルチコイド系細胞抑制剤、抗体(生体応答調節剤やDMARDを含む)、イムノアビジンに作用する薬剤、増殖性病的状態の治療に使用される公知の化学療法剤が含まれるその他の薬剤などの4つのタイプがある。特に、多発性硬化症の場合、本発明の抗体は、コパキソン(copaxone)と呼ばれる新しいタイプの髄鞘結合タンパク質様治療剤と組み合わせて投与することができる。
【0046】
「抗炎症剤」または「消炎剤」とは、ステロイドまたは非ステロイド治療剤を指す。ステロイドはコルチコステロイドとも呼ばれ、副腎から天然に産生されるホルモンであるコルチゾールに非常に類似した薬剤である。ステロイドは、主に、全身性血管炎(血管炎症)および筋炎(筋肉炎症)などの特定の炎症性病的状態の治療に使用される。ステロイドはまた、関節リウマチ(体の両側の関節に生じる慢性炎症性関節炎)、全身性エリテマトーデス(異常な免疫系の機能によって引き起こされる全身性疾患)、Sjogren症候群(眼の乾きおよび口の渇きを引き起こす慢性病的状態)などの炎症性病的状態の治療に選択的に使用することができる。
【0047】
非ステロイド性消炎薬は、一般にNSAIDと略され、痛み、発熱および炎症を軽減する鎮痛、解熱および抗炎症作用を有する薬剤である。用語「非ステロイド」は、(広範な他の作用において)類似のエイコサノイド抑制、抗炎症作用を有するこれらの薬剤をステロイドと区別するために使用される。一般に、NSAIDは関節リウマチ、骨関節炎、炎症性関節症(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、Reiter症候群)、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛と片頭痛、術後疼痛、炎症と組織損傷による軽度から中程度の疼痛、発熱、および腎狭痛などの病的状態の症状の緩和に使用される。NSAIDは、サリチル酸、アリールアルカン酸、2-アリールプロピオン酸、N-アリールアントラニル酸(クエン酸)、オキシカム(oxicams)、コキシブ(coxibs)、およびN-スルホンアニリド(sulphonanilides)を含む。
【0048】
本明細書に記載のTNF(腫瘍壊死因子)は、好ましくは、CD4+およびCD8+末梢血Tリンパ球によって産生されることも知られている、単球およびマクロファージによって主に分泌される多重作用性ホモ三量体サイトカインであるTNFαを含む。TNFαは、可溶性形態および膜貫通形態で発現される(膜結合前駆体形態は、メタロプロテアーゼTNFα変換酵素(TACE)によってタンパク質分解的に切断されて可溶性ホモ三量体となる)。TNFαは免疫細胞の調節に役割を果たし、全身性炎症、特に急性期炎症反応において重要であると考えられている。過剰なTNFαは、様々な形態の自己免疫疾患(RA、CDおよび乾癬を含む)に関連する。
【0049】
本明細書に記載の「IL-17」、例えばIL-17A、IL-17Fは、炎症に関与するサイトカインである。IL-17Aは、滑膜線維芽細胞、単球およびマクロファージによるIL-1β、TNF-α、IL-6およびIL-23などの炎症性サイトカインの産生を誘導し、これらの因子は全て炎症およびTh17の産生を促進する。IL-17Aはまた、大量のケモカイン(CXCL-1、CXCL-2、CXCL-5、CXCL-8、CCL-2およびCCL-20を含む)を誘導し、T細胞、B細胞、単球および好中球の動員を引き起こす。Lundy,S.K.,Arthritis Res.Ther.,9:202(2007)。IL-17Fは、IL-17Aと最大相同性(55%)を有し、炎症促進性サイトカインでもある。IL-17AおよびIL-17FはいずれもTh17細胞により産生され、他のIL-17ファミリーメンバーであるIL-17B、IL-17CおよびIL-17Dは非T細胞源により産生される。IL-17AおよびIL-17Fは、IL-17Aホモ二量体およびIL-17Fホモ二量体またはIL-17A/Fヘテロ二量体の形態で存在し得る。Liang,S.C.et al.,J.Immunol.,179:7791-7799(2007)。IL-17Aは関節リウマチ血清および滑液中で増加し、滑膜のT細胞富化領域に存在する。Shahrara,S.,Arthritis Res.Ther.,10:R93(2005)。IL-17Aは骨および軟骨損傷を協調させることもできる。IL-17の有効阻害には、IL-17Aホモ二量体、IL-17Fホモ二量体およびIL-17A/Fヘテロ二量体の中和が必要である。
【0050】
「機能性Fc領域」は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節などを含む。かかるエフェクター機能には一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)の関連が求められ、それに例えば、本発明に開示されている複数種の測定手法を用いて評価できる。
【0051】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義しており、前記領域は少なくとも一部の定常領域を含む。該用語は、天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域がCys226またはPro230から重鎖のカルボニル基末端に延長している。一方、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし、または存在しなくてもよい。別途説明が行われる場合を除き、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号が、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載のEU番号付けシステム(別称EUインデックス)に準じる。
【0052】
「IgG形態の抗体」とは、抗体の重鎖定常領域がIgG形態を有することを指す。全ての同一のアイソタイプの抗体はその重鎖定常領域が同じであり、異なるアイソタイプの抗体において、その重鎖定常領域が異なる。例えば、IgG1形態の抗体とは、その重鎖定常領域のIgドメインがIgG1のIgドメインであることを指す。
【0053】
用語「有効量」とは、本発明の抗体もしくは断片または複合体または組成物の1回分または複数回分の量を患者に投与した後、治療または予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量または投与量を指す。有効量は、当業者である主治医が、例えば、哺乳類の生物種、投与対象の大きさ、年齢、健康状態と、適用される疾患、疾患の程度または重症度、個体患者における応答、投与される抗体、投与方式、投与製剤の生物学的利用能の特徴、選択される投与計画、併用療法の適用の複数種の要因を考慮して容易に決定することができる。
【0054】
「治療的有効量」とは、所定の期間に亘って所定の用量で所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。抗体もしくは抗体断片またはその複合体または組成物の治療有効量は、例えば、疾患の状態、個体の年齢、性別、重量、抗体または抗体の部分が個体に所望の反応を起こす能力の複数種の要因によって変化する可能性がある。また治療有効量は、抗体もしくは抗体断片またはその複合体または組成物の任意の毒性または有害作用が有益な治療効果に及ばないという量であってもよい。治療を受けていない対象に比べて、「治療有効量」により計測可能なパラメータ(例えば、腫脹率など)の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%または少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約80%または90%が抑制されることが好ましい。ヒトの自己免疫疾患または炎症における効能を予測する動物モデルシステムにおいて、計測可能なパラメータ(例えば、腫脹率)に対する化合物の抑制能力を評価できる。
【0055】
「予防的有効量」は、所定の期間に亘って所定の用量で所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。一般に、予防目的の投与量は対象における疾患の早期段階よりも前にまたは疾患の早期段階に適用されるため、予防有効量が治療有効量を下回る。
【0056】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、「宿主細胞培養物」は、外因性核酸が導入された細胞、かかる細胞の子孫を指すように入れ替えて使用される。宿主細胞は、「形質転換体」、「形質転換細胞」を含み、初代形質転換細胞、および継代数に関係なくそれに由来する子孫を含む。子孫は、突然変異が含まれる可能性があるため、核酸の内容において親細胞と同じではない。本発明では、初代の形質転換細胞からスクリーニングまたは選択された同じ機能または生理活性を有する突然変異体子孫が含まれる。
【0057】
「ヒト抗体」とは、ヒトまたはヒト細胞より生成されたまたはヒト以外に由来するものであって、ヒト抗体ライブラリーまたはヒト抗体をコードする他の配列を利用する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものを指す。ヒト抗体に対する当該定義において、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0058】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ほぼ全ての可変ドメインの少なくとも1つ、一般に2つを含む。なお、全てのまたはほぼ全てのCDR(例えば、CDR)が非ヒト抗体に由来する部分に対応し、全てのまたはほぼ全てのFRがヒト抗体に由来する部分に対応する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含むことが好ましい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化形態」とは、ヒト化が行われている抗体を指す。
【0059】
「免疫複合体」は、1種以上の追加物質(その非限定的な例は細胞傷害剤または標識を含む)と複合した抗体である。
【0060】
本明細書で使用される用語「標識」とは、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブもしくは抗体)に直接的または間接的に複合または融合され、かつ、複合または融合の対象試薬による検出を促進する化合物または組成物を指す。前記標識はそれ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であるか、または、酵素触媒によって標識されると検出可能な基質化合物または組成物の化学的改変を触媒できる。用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(即ち、物理的連結)させることによってプローブもしくは抗体を直接標識すること、直接標識されている別の試薬との反応によりプローブもしくは抗体を間接的に標識することを含む。間接的な標識の例は、蛍光標識されている二次抗体による一次抗体の検出、蛍光標識されているストレプトアビジンで検出可能な、ビオチンを有するDNAプローブの末端標識の使用を含む。
【0061】
「個体」または「対象」は、哺乳類を含む。哺乳類の非限定的な例は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ(ヒツジ)、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)を含む。いくつかの実施形態において、前記個体または前記対象はヒトである。
【0062】
「単離された」抗体とは、その存在する自然環境の成分と単離している抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される純度が95%以上または99%以上であるように精製される。抗体純度の評価方法の概要は、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)が参照される。
【0063】
「単離された抗IL-23p19抗体またはその断片をコードする核酸」とは、抗体重鎖または軽鎖(またはその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別々のベクター内における当該核酸分子、宿主細胞内の1つの以上の位置に存在する当該核酸分子を含む。
【0064】
以下のとおりに配列間の配列同一性を算出する。
【0065】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列における同一性パーセンテージを決定するために、前記配列を最適化した上で比較を行ってもよい(例えば、比較の最適化のために第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列または核酸配列のいずれかもしくは両者にギャップを導入するか、または比較の便宜上、非相同配列を捨ててもよい)。1つの好ましい実施形態において、比較の便宜上、比較配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列の対象位置は第2配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、当該分子は当該位置において同一である。
【0066】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列間において配列比較と同一性パーセンテージの算出を実現できる。1つの好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されているNeedlema&Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comにて利用可能)に、Blossum 62行列もしくはPAM250行列、ギャップ重み16、14、12、10、8、6もしくは4と長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて決定される。別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム(http://www.gcg.comにて利用可能)に、NWSgapdna.CMP行列、ギャップ重み40、50、60、70もしくは80、長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて決定される。特に好ましくは、パラメータセット(別途説明が行われる場合を除き、1つのパラメータセットを使用する)には、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリング行列を採用する。
【0067】
また、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージは、ALIGNプログラム(2.0版)に統合されているE.MeyersとW.Millerによるアルゴリズム((1989)CABIOS,4:11-17)にPAM120加重残基表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて決定されてもよい。
【0068】
より好ましくは、さらに例えば、本発明に記載の核酸配列とタンパク質配列を「参照配列」としてパブリックデータベースにおいて検索を実行することによって、他のメンバー配列または関連の配列を同定することもできる。
【0069】
用語「医薬品添加物」とは、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全もしくは不完全))、賦形剤、ベクターまたは安定剤などを指す。
【0070】
用語「医薬組成物」とは、それに含まれる活性成分の生理活性が有効な形態で存在し、しかも前記組成物が投与される対象に許容されない毒性がある別の成分を含まない組成物を指す。
【0071】
用語「組み合わせ製品」は、2つ以上の治療剤が、特に、組み合わせパートナーが相乗効果などの相乗効果を示すことを可能にする時間間隔内で、独立して同じ時間または時間間隔内で別々に投与され得る、投与量単位形態の固定組み合わせまたは非固定組み合わせ、または組み合わせて投与される部分のためのキットを指す。用語「固定組み合わせ」とは、本発明の抗体および組み合わせパートナー(例えば、免疫抑制剤または抗炎症剤などの免疫調節剤などの追加治療剤)が、単一の実体または投与量で患者に同時に投与されることを指す。用語「非固定組み合わせ」とは、本発明の抗体および組み合わせパートナー(例えば、免疫抑制剤または抗炎症剤などの免疫調節剤などの追加治療剤)が、特定の期間制限なく、別々の実体として同時に、並行して、または連続して患者に投与されることを意味し、そのような投与は、患者における2つの化合物の治療上有効なレベルを提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば3つ以上の治療剤の投与にも適している。好ましい実施形態において、薬物の組み合わせは、非固定組み合わせである。
【0072】
用語「組み合わせ療法」とは、本開示に記載のIL-23関連疾患を治療するための2つ以上の治療剤または治療法(例えば、放射線治療または手術)の投与を指す。そのような投与は、活性成分の一定の割合を有する単一のカプセルのような、実質的に同時にこれらの治療剤を同時投与することを含む。あるいは、そのような投与は、複数のまたは別個の容器中での各活性成分(例えば、錠剤、カプセル、粉末および液体)の同時投与を含む。粉末および/または液体は、投与前に所望の投与量に再構成または希釈することができる。さらに、そのような投与は、各タイプの治療剤を実質的に同じ時間または異なる時間に連続的に使用することを含む。いずれの場合においても、治療案は、本明細書に記載の病的状態または病状の治療における医薬の組み合わせの有益な効果を提供するであろう。
【0073】
本明細書で使用される用語「治療」とは、出現している症状、病的状態、病状または疾患の進行または重症度に対する軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、または逆転を指す。
【0074】
本明細書で使用される用語「予防」は、疾患、病的状態、特定の疾患もしくは病的状態に係る症状の発生または進行に対する抑制を含む。いくつかの実施形態において、免疫系疾患(自己免疫疾患または炎症)家族歴がある対象は、予防性計画対象の候補である。一般に、免疫系疾患(自己免疫疾患または炎症)が言及される文脈では、用語「予防」とは免疫系疾患(自己免疫疾患または炎症)に係る障害または症状が生じる前に、特に、免疫系疾患(自己免疫疾患または炎症)に罹患するリスクのある対象に生じる前の薬物投与を指す。
【0075】
本明細書で使用される用語「ベクター」とは、それに連結された別の核酸を増殖させる核酸分子を指す。当該用語は、核酸の自己複製が可能な構造としてのベクター、それを導入していた宿主細胞のゲノムに結合されたベクターを含む。一部のベクターは、それに操作可能に連結された核酸の発現をガイドすることができる。本明細書で、かかるベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0076】
「対象/患者試料」とは、患者または対象より得た細胞または液体の集まりである。組織または細胞試料の由来としては、新鮮な、冷凍されたおよび/または保存された器官、組織試料、生検試料もしくは穿刺試料などの固形組織、血液もしくは任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹腔内液(腹水)もしくは間質液などの体液、対象における妊娠もしくは発育の任意の段階に由来する細胞が挙げられる。組織試料は、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などの自然界に存在する組織に溶けない化合物を含んでもよい。
【0077】
II.抗体
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその断片は、IL-23p19(例えば、ヒトIL-23におけるヒトIL-23p19またはカニクイザルIL-23におけるカニクイザルIL-23p19)と高い親和力で結合し、例えば、約10nM未満、好ましくは約5nM以下、約4nM以下、または約3nM以下、最も好ましくは約2nM以下、約1.9nM以下、約1.8nM以下、約1.79nM以下、約1.78nM以下、約1.77nM以下、約1.76nM以下、約1.75nM以下、約1.74nM以下、約1.73nM以下、約1.72nM以下、約1.71nM以下、約1.7nM以下、約1.69nM以下、約1.68nM以下、約1.67nM以下、約1.66nM以下、約1.65nM以下、約1.64nM以下、約1.63nM以下、約1.62nM以下、約1.61nM以下、約1.6nM以下、約1.55nM以下、約1.5nM以下、約1.45nM以下、約1.4nM以下、約1.35nM以下、約1.3nM以下、約1.25nM以下、約1.2nM以下、約1.15nM以下、約1.1nM以下、約1.05nM以下、約1nM以下、約0.95nM以下、約0.9nM以下、約0.85nM以下、約0.8nM以下、約0.75nM以下、約0.7nM以下、約0.69nM以下、約0.68nM以下、約0.67nM以下、約0.66nM以下、約0.65nM以下、約0.64nM以下、約0.63nM以下、約0.62nM以下、約0.61nM以下、約0.6nM以下、約0.59nM以下、約0.58nM以下、約0.57nM以下、約0.56nM以下、約0.55nM以下、約0.54nM以下、約0.53nM以下、約0.52nM以下、約0.51nM以下、約0.5nM以下、約0.49nM以下、約0.48nM以下、約0.47nM以下、約0.46nM以下、約0.45nM以下、約0.44nM以下、約0.43nM以下、約0.42nM以下、約0.41nM以下、約0.4nM以下、約0.39nM以下、約0.38nM以下、約0.37nM以下の平衡解離定数(K)でIL-23p19と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体は、0.1nM-3nM、好ましくは0.2nM-2nM、0.2nM-1.9nM、0.2nM-1.8nM、0.3nM-2nM、0.3nM-1.9nM、0.3nM-1.8nM、0.4nM-2nM、0.4nM-1.9nM、0.4nM-1.8nM、0.5nM-2nM、0.5nM-1.9nM、0.5nM-1.8nM、0.6nM-2nM、0.6nM-1.9nM、0.6nM-1.8nMのKでIL-23p19と結合する。いくつかの実施形態において、IL-23p19はヒトIL-23p19である。いくつかの実施形態において、IL-23p19はカニクイザルIL-23p19である。いくつかの実施形態において、抗体の結合親和力が光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和力計測)により測定される。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその断片は、IL-23p19分子と結合することによって、細胞(例えば、脾細胞)によるIL-17の分泌を抑制し、例えば、本発明の抗体またはその断片は、細胞によるIL-17の分泌を50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%まで抑制する。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその断片(場合により、治療法および/または追加治療剤、例えば免疫調節剤と組み合わせ)は、IL-23関連疾患、例えば、免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)を予防または治療することができる。いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患として、例えば乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)を含む。前記VHは、
(i)配列番号9または10に示されるVHにおける3つの相補性決定領域(CDR)、または
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(VL)を含む。前記VLは、
(i)配列番号11または12に示されるVLにおける3つの相補性決定領域(CDR)、または
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域VHおよび軽鎖可変領域VLを含む。
(a)前記VHは、
(i)配列番号9または10に示されるVHにおける3つの相補性決定領域(CDR)、または
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる配列を含み、ならびに/または
(b)前記VLは、
(i)配列番号11または12に示されるVLにおける3つの相補性決定領域(CDR)、または
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる配列を含む。
【0083】
好ましい実施形態において、VHは、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列より構成される。
【0084】
好ましい実施形態において、VLは、配列番号11または12に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列より構成される。
【0085】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号9または10に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR)と、配列番号11または12に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDR)と、を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含み、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはHCDR1は配列番号1のアミノ酸配列に対して、1個、2個もしくは3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号2または3または23から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはHCDR2は配列番号2または3または23から選択されるアミノ酸配列に対して、1個、2個または3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号4のアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはHCDR3は配列番号4のアミノ酸配列に対して、1個、2個または3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含み、
ならびに/または、
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、LCDR1は配列番号5のアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはLCDR1は配列番号5のアミノ酸配列に対して、1個、2個もしくは3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号6のアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはLCDR2は配列番号6のアミノ酸配列に対して、1個、2個もしくは3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号7または8または24から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは前記アミノ酸配列からなり、またはLCDR3は配列番号7または8または24から選択されるアミノ酸配列に対して、1個、2個もしくは3個の変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0087】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは、
(i)表Aに示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3の組み合わせ、または
(ii)前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる(i)のHCDRの組み合わせの変異体を含み、
ならびに/または、
(b)前記VLは、
(i)表Aに示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3の組み合わせ、または
(ii)前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個であり、かつ、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれる(i)のLCDRの組み合わせの変異体を含む。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)とを含み、前記VHは相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、かつ、前記VLは(CDR)のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記抗体またはその抗原結合断片に含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2とLCDR3の組み合わせは下表(表A)に示されるとおりである。
【0089】
【表2】
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域VHおよび/または軽鎖可変領域VLを含み、
(a)重鎖可変領域VHは、
(i)配列番号9または10から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
(ii)配列番号9または10から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
(iii)配列番号9または10から選択されるアミノ酸配列に対して、1個以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域に生じなく、
ならびに/または、
(b)軽鎖可変領域VLは、
(i)配列番号11または12から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号11または12から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
(iii)配列番号11または12から選択されるアミノ酸配列に対して、1個以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域に生じない。
【0091】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)とを含む。前記抗体またはその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLの組み合わせは、下表(表B)に示されるとおりである。
【0092】
【表3】
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖および/または軽鎖を含み、
(a)重鎖が、
(i)配列番号13、14および15から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号13、14および15から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、または
(iii)配列番号13、14および15から選択されるアミノ酸配列に対して、1個以上(好ましくは20個以下もしくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸変異は重鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸変異は重鎖可変領域に生じなく、
ならびに/あるいは、
(b)軽鎖が、
(i)配列番号16および17から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号16および17から選択されるアミノ酸配列を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなり、あるいは
(iii)配列番号16および17から選択されるアミノ酸配列に対して、1個以上(好ましくは20個以下もしくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸変異は軽鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸変異は軽鎖可変領域に生じない。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、重鎖と、軽鎖とを含む。前記抗体またはその抗原結合断片に含まれる重鎖と軽鎖の組み合わせは下表(表C)に示されるとおりである。
【0095】
【表4】
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその断片の重鎖および/または軽鎖は、シグナルペプチド配列、例えば、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号25)をさらに含む。
【0097】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸の置換、挿入または欠失を含む。好ましくは、本発明において前記アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的な置換であることが好ましい。
【0098】
好ましい実施形態において、本発明において前記アミノ酸変異はCDR外の領域(例えば、FR)に生じる。より好ましくは、本発明において前記アミノ酸変異は重鎖可変領域外および/または軽鎖可変領域外の領域に生じる。
【0099】
いくつかの実施形態において、置換は保存的な置換である。前記保存的な置換とは、1つのアミノ酸が同種の別のアミノ酸によって置換されたことを指す。例えば、1つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸によって置換されたこと、1つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸によって置換されたこと、または1つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸によって置換されたことを指す。例示的な置換は次の表Dに示されるとおりである。
【0100】
【表5】
【0101】
一部の実施形態において、置換は抗体のCDR領域に生じる。一般に、得られた変異体は、親抗体に対して特定の生物学的特性(例えば、親和力の増加)において修飾(例えば、改善)を有し、および/または親抗体の実質的に保持された特定の生物学的特性を有する。例示的な置換変異体は、親和力成熟抗体である。
【0102】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度が増大または低減するように改変される。抗体のグリコシル化部位の追加または欠失は、アミノ酸配列を改変させて1つ以上のグリコシル化部位を生成または除去することによって容易に実現できる。抗体がFc領域を含む場合、それに付着する糖類を改変させることができる。いくつかの使用では、抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能を向上させるためにフコースモジュールを除去するなど、望ましくないグリコシル化部位を除去する修飾が有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC277:26733参照)。他の使用では、ガラクトシド化修飾を行って補体依存性細胞毒性(CDC)を修飾することができる。
【0103】
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸修飾を導入してFc領域変異体を生成することによって、抗体の親和力または疾患治療の有効性などを増強させることができる。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgGl、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域)を含み得る。Fc変異体の例については、米国特許第7,332,581号、米国特許第6,737,056号、米国特許第6,737,056号、WO 2004/056312およびShields et al.,J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604(2001)、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642およびIdusogie et al.J. Immunol. 164:4178-4184(2000)、米国特許第7,371,826号、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、およびWO 94/29351を参照されたい。
【0104】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒトFcRnへの結合能を増加させてインビボでの半減期の延長を期すために、Fc領域に置換変異(M252Y/S254T/T256E)を導入する。
【0105】
一部の実施形態において、システイン操作された抗体、例えば、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換された「チオMAb」の産生が望ましい場合がある。例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように、システイン操作された抗体を生成することができる。
【0106】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、本分野で既知の事項として容易に得られる他の非タンパク質の部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導作用に適した部分の非限定的な例は、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコール、これらの混合物を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、以下の1つ以上の特性を有する。
(i)IL-23p19に対して、本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)と同一または類似の結合親和力および/または特異性を示す。
(ii)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)とIL-23p19の結合を抑制(例えば、競合的に抑制)する。
(iii)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)と同一のまたは重複するエピトープと結合する。
(iv)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)に対してIL-23p19と競合的に結合する。
(v)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)の1つ以上の生物学的特性を有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体は、IgG1、IgG2、もしくはIgG4の形態の抗体である。
【0109】
いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体は、モノクローナル抗体である。
【0110】
いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体はヒト化されたものである。抗体のヒト化のための各種の方法は、例えば、Almagro&Franssonに記載の当該方法の概要は当業者が知っている内容であり、当該内容の全体が引用によって本明細書に組み込まれる(Almagro JC&Fransson J(2008)Frontiers inBioscience13:1619-1633)。
【0111】
いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体はヒト抗体である。本分野で既知の様々な技術を利用してヒト抗体を製造できる。ヒト抗体に関しては、van Dijk&van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol 5 :368-74(2001)、およびLonberg,Curr.Opin.Immunol 20 :450-459(2008)の説明が参照される。
【0112】
いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体はキメラ抗体である。
【0113】
いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトに共有するフレームワーク配列である。1つの実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体は、その抗体断片、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)もしくは(Fab’)、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)および線状抗体から選択される抗体断片をさらに含む。
【0114】
一部の実施形態において、抗IL-23p19抗体分子は、二重特異性抗体分子の形態、または多重特異性抗体分子の形態である。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、IL-23p19に対する第1結合特異性と、TNF(例えばTNFα)またはIL-17(例えばIL17AまたはIL17F)に対する第2結合特異性とを有する。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子はIL-23p19およびTNFまたはIL-17と結合する。多重特異性抗体分子は、前記分子に対する結合特異性の任意の組み合わせを有することができる。
【0115】
II.本発明の核酸とそれを含む宿主細胞
一態様において、本発明は、上記の任意の抗IL-23p19抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。1つの実施形態において、前記核酸を含むベクターを提供する。1つの実施形態において、ベクターは発現ベクターである。1つの実施形態において、前記核酸または前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。1つの実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、前記宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)または抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適した他の細胞から選択される。別の実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。
【0116】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の任意の抗IL-23p19抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。前記核酸は、抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸、または抗体の軽鎖および/または重鎖のアミノ酸配列をコードする核酸を含むことができる。抗体の重鎖をコードする例示的な核酸配列は、配列番号18、19または20から選択される核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含み、または配列番号18、19または20から選択される核酸配列を含む。抗体の軽鎖をコードする例示的な核酸配列は、配列番号21または22から選択される核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含み、または配列番号21または22から選択される核酸配列を含む。
【0117】
1つの実施形態において、前記核酸を含む1つ以上のベクターを提供する。1つの実施形態において、ベクターは発現ベクターで、例えば、真核発現ベクターである。ベクターの非限定的な例は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含む。1つの実施形態において、ベクターはpTT5ベクターである。
【0118】
1つの実施形態において、前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体をコードするベクターをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞は、本出願で説明されている原核または真核細胞を含む。例えば、抗体が細菌において生成され、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が不要な場合はそうである。細菌における抗体断片とポリペプチドの発現に関しては、例えば、米国特許第5,648,237号,第5,789,199号、第5,840,523号、およびCharlton,Methods in Molecular Biology,vol 248(edited by B.K.C.Lo,Humana Press,Totowa,NJ,2003),p245-254,大腸菌における抗体断片の発現)が参照される。抗体が発現された後、可溶性画分における細菌細胞のペースト状物からそれを単離して、さらに精製することができる。
【0119】
1つの実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞または抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適した他の細胞から選択される。例えば、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。例えば、グリコシル化経路が既に「ヒト化」された真菌と酵母菌株は、一部または完全のヒトグリコシル化の形態を有する抗体の生成を引き起こす。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、Li et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)が参照される。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物、脊椎動物)から誘導されてもよい。脊椎動物の細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁化成長に適したように改変された哺乳類由来の細胞株を使用できる。使用可能な哺乳類由来の宿主細胞株の他の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓由来CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(293HEKもしくは293Fもしくは293細胞、例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)の説明)などが挙げられる。使用可能な他の哺乳類由来の宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:216(1980)、CHO-S細胞などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞や、Y0、NS0、Sp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体の生成に適した一部の哺乳類由来の宿主細胞株は、例えば、Yazaki&Wu,Methods in Molecular Biology,vol 248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),p255-268(2003)で概略的に説明されている。
【0120】
1つの実施形態において、本発明は、抗IL-23p19抗体またはその断片(好ましくは、抗原結合断片)の製造方法を提供する。前記方法は、前記抗体またはその断片(好ましくは、抗原結合断片)をコードする核酸の発現に適した条件において前記宿主細胞を培養することと、所望により前記抗体またはその断片(好ましくは、抗原結合断片)を単離することとを含む。1つの実施形態において、前記方法は、前記宿主細胞から抗IL-23p19抗体またはその断片(好ましくは、抗原結合断片)を単離することをさらに含む。
【0121】
1つの実施形態において、抗IL-23p19抗体の製造方法を提供する。前記方法は、抗体の発現に適した条件において、前述したように、前記抗体をコードする核酸を含む上記の宿主細胞を培養することと、所望により前記宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記抗体を単離することとを含む。組換えにより抗IL-23p19抗体を生成するために、抗体(例えば、上記の抗体)をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために、それを1つ以上のベクターに挿入する。かかる核酸は、通常のプロセスにより単離しシークエンシングすることが容易である(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって行う)。
【0122】
III.測定手法
本分野において既知の様々な測定手法を利用して、本明細書で提供される抗IL-23p19抗体に対して同定、スクリーニング、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性の特性評価を行うことができる。一態様において、本発明の抗体に対する抗原結合活性の測定は、例えば、ELISA、Westernブロッティングなどの既知の方法により行われる。本分野において既知の方法を利用してIL-23p19の結合を測定でき、本明細書にはその方法が例示的に開示されている。いくつかの実施形態において、光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性計測)またはMSD測定手法が利用される。
【0123】
別の態様において、競合測定手法を利用して、本明細書で開示されている任意の抗IL-23p19抗体に対してIL-23p19と競合的に結合する抗体を同定することができる。一部の実施形態において、かかる競合的結合において抗体は、本明細書で開示されている任意の抗IL-23p19抗体が結合するエピトープと同じまたは重複するエピトープ(例えば、線状エピトープまたは立体配座エピトープ)と結合する。抗体が結合するエピトープの特定のための例示的な方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」,Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)で詳細に記載されている。
【0124】
本発明は、生物学的活性を有する抗IL-23p19抗体を同定するための測定手法をさらに提供する。生物学的活性は、例えば、IL-23p19の結合(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルIL-23p19の結合)、IL-23によるIL-17分泌の誘導の抑制、IL-23シグナル経路の阻害などを含み得る。インビボおよび/またはインビトロにおいて、上記の生理活性を有する抗体をさらに提供する。
【0125】
一部の実施形態において、本発明の抗体に対してかかる生物学的活性を測定する。
【0126】
任意の上記インビトロ測定手法に使用される細胞は、天然的にIL-23p19を発現しもしくはIL-23p19を発現するように改変された細胞株を含む。かかる細胞は、IL-23p19を発現する細胞株、通常の状態においてIL-23p19が発現されないがIL-23p19をコードするDNAによりトランスフェクションされた細胞株をさらに含む。
【0127】
なお、本発明の免疫複合体を利用して抗IL-23p19抗体を置き換えまたはそれを補足して、任意の上記の測定手法を実現できる。
【0128】
なお、抗IL-23p19抗体と他の活性剤を利用して、任意の上記の測定手法を実現できる。
【0129】
IV.免疫複合体
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に提供される任意の抗IL-23p19抗体と、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤(例えば、抗炎症剤または免疫抑制剤)が含まれる治療剤などの追加物質とを含む免疫複合体を提供する。1つの実施形態において、前記追加物質は、例えば、細胞に対して傷害性を有する任意の薬剤を含む細胞傷害剤である。免疫複合体の生成に適した細胞傷害剤の例は、本分野で既知の内容である。例えば、細胞傷害剤としては、放射性同位体、成長抑制剤、核酸加水分解酵素などの酵素およびその断片、抗生物質、小分子毒素または細菌、真菌、植物または動物起源の酵素活性毒素などの毒素(その断片および/または変異体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体と免疫複合体を形成することができる他の例は、US61642032も参照されたい。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記免疫複合体は、IL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば自己免疫疾患または炎症)の予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患として、例えば乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられる。
【0131】
V.医薬組成物と薬物製剤
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の任意の抗IL-23p19抗体またはその断片(好ましくは、その抗原結合断片)またはその免疫複合体を含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物である。1つの実施形態において、前記組成物は、医薬品添加物をさらに含む。1つの実施形態において、組成物、例えば、医薬組成物は、本発明の抗IL-23p19抗体またはその断片またはその免疫複合体と、1以上の追加治療剤の組み合わせとを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、IL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば自己免疫疾患または炎症)の予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患として、例えば乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられる。
【0133】
本発明は、抗IL-23p19抗体またはその免疫複合体を含む組成物(医薬組成物または薬物製剤を含む)、または抗IL-23p19抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物(医薬組成物または薬物製剤を含む)をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、IL-23p19と結合する1種以上の抗体またはその断片、または1種以上の抗IL-23p19の抗体またはその断片をコードする1種以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物はまた、本分野で既知の薬学的に許容可能な担体、緩衝剤を含む薬用賦形剤などの適切な医薬品添加物を含んでもよい。
【0134】
本発明に適した薬学的に許容可能な担体は、石油、動物もしくは植物に由来するまたは合成された、ピーナッツオイル、大豆油、鉱油、ごま油など、水、油などの滅菌液体であってもよい。医薬組成物を静脉内に投与する場合、水はベクターとして好ましい。さらに、生理塩水溶液、水性デキストロースとグリセリン溶液を液体ベクターとして、特に注射溶液に用いることができる。適切な薬用賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、ジオール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用およびその用途に関しては、「Handbook of PharmaceuticalExcipients」,5th editon,R.C.Rowe,P.J.Seskey、S.C.Owen,PharmaceuticalPress,London,Chicagoが参照される。必要があれば、前記組成物は湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに少量に含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、持続性放出製剤などの形態を採用できる。経口製剤は、薬用マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的なベクターを含んでもよい。
【0135】
所定の純度を有する本発明の抗IL-23p19抗体を1種以上の好ましい医薬品添加物(Remington′ s Pharmaceutical Sciences,16th edition,edited by Osol,A.(1980))と混合することによって、本明細書に記載の抗IL-23p19抗体を含む薬物製剤、好ましくは凍結乾燥製剤または水性製剤を製造できる。
【0136】
例示的な凍結乾燥抗体製剤に関する説明は、米国特許第6,267,958号が参照される。水性抗体製剤に関しては、米国特許第6,171,586号、世界特許WO2006/044908が参照され、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝剤を含む。
【0137】
本発明の医薬組成物または製剤は、1種以上の他の活性成分をさらに含んでもよく、前記活性成分は、特定の適応症の治療に必要であり、好ましくは互いにマイナスの影響を与えない活性的に相補な活性成分を含む。前記活性成分は、目的用途において有効な量で適切に組み合わせた形で存在する。例示的な活性成分としては、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤などが挙げられる。
【0138】
持続性放出製剤として製造できる。持続性放出製剤の適切な例は、抗体を含有する疎水性固体ポリマーによる半透性マトリックスを含み、前記マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどのように一定の形態を有する。
【0139】
本発明の抗体を含む薬物製剤/医薬組成物の他の成分については、WO2008103473A1またはWO2007076524A2またはWO2008103432A1に開示されているものを参照することもできる。
【0140】
VI.組み合わせ製品
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片、またはその免疫複合体、および1以上の追加治療剤(例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤など)を含む組み合わせ製品をさらに提供する。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、例えば、免疫抑制剤または抗炎症薬である。いくつかの実施形態において、他の抗体は、例えば、抗TNF抗体または抗IL-17抗体である。
【0141】
本発明の抗体と組み合わせて使用できる適切な追加治療剤は、WO2008103473A1またはWO2007076524A2またはWO2008103432A1に開示されているものを参照することもできる。
【0142】
いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品は、IL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば自己免疫疾患または炎症)の予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患として、例えば乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられる。
【0143】
VII.使用
一態様において、本発明は、対象に有效量の本発明の抗IL-23p19の抗体またはその抗原結合断片、免疫複合体、医薬組成物または組み合わせ製品を投与することを含む、対象においてIL-23関連疾患を治療する方法を提供する。
【0144】
前記対象は、霊長類などの哺乳類であってもよい。好ましくは、人間(例えば、本明細書に記載の疾患に罹患しているかまたは本明細書に記載の疾患に罹患するリスクのある患者)などの高等霊長類である。1つの実施形態において、前記対象は本明細書に記載の疾患(例えば、本明細書に記載のIL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば自己免疫疾患または炎症))に罹患しており、または本明細書に記載の疾患に罹患するリスクがある。一部の実施形態において、前記対象は抗炎症薬または免疫抑制剤治療および/または放射線治療などの他の治療を受けるか、または既に前記治療を受けている。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のIL-23関連疾患は、自己免疫疾患および炎症性疾患などの免疫系疾患を含む。前記疾患としては、乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
1つの実施形態において、免疫系疾患は、IL-23p19の発現レベルが高い疾患である。
【0147】
他の態様において、本発明は、上記の関連の疾患または病的状態の治療に用いられる薬物の生産または製造における抗IL-23p19抗体またはその断片の使用を提供する。
【0148】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗体断片または免疫複合体または組成物または製品は、病的状態および/または病的状態に関連する症状の出現を遅延することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予防または治療方法は、本明細書に開示される抗体分子または医薬組成物または免疫複合体、および1種以上の他の療法、例えば、治療法および/または追加治療剤を前記対象または個体に組み合わせて適用することをさらに含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、治療法は、外科的手術、放射線治療(例えば、照射領域が設定された三次元原体放射線治療などの外部粒子ビーム療法)、局所照射(例えば、所定の標的もしくは器官に対する照射)または集中的照射などを含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される。
【0152】
例示的な他の抗体としては、抗TNF抗体または抗IL-17抗体、例えば抗TNFα抗体または抗IL-17A抗体または抗IL-17F抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
例示的な免疫調節剤としては、免疫抑制剤または抗炎症剤が挙げられる。
【0154】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されている抗体の組み合わせは、別々に投与されてもよく、例えば、単独の抗体としてそれぞれ投与され、または連結させた後に(例えば、二重特異性のまたは三重特異性の抗体分子として)投与される。
【0155】
抗IL-23p19抗体またはその断片と組み合わせることができるさらなる療法または治療剤は、WO2008103473A1またはWO2007076524A2またはWO2008103432A1を参照されたい。
【0156】
このような療法の組み合わせは、併用投与(例えば、2種以上の治療剤が同一の製剤に含まれ、または別々の製剤に含まれる)、別々の投与を含み、後者の場合は、本発明の抗体の投与は、別の治療剤および/または薬剤の投与の前に、それと同時に、および/またはその後に行われる。1つの実施形態において、抗IL-23p19抗体の投与と追加治療剤の投与は約1か月間以内、または約1週間以内、2週間以内もしくは3週間以内、または約1日間以内、2日間以内、3日間以内、4日間以内、5日間以内、もしくは6日間以内に行われる。
【0157】
使用される抗IL-23p19抗体を含む医薬組成物の治療的有効量は、例えば、治療的背景および標的に依存するであろう。当業者であれば、治療のための適切な投与量レベルは、部分的に、送達される分子、使用される適応症、投与経路、および患者の体重、体の表面積または器官の大きさおよび/または状態(年齢および一般的な健康状態)に依存して変化することを理解するであろう。一部の実施形態において、臨床医は、投与量を滴定し、投与経路を変更して、最適な治療効果を得ることができる。
【0158】
投与頻度は、使用される製剤中の特定の抗IL-23p19抗体の薬物動態パラメーターに依存するであろう。一般に、臨床医は、所望の効果が得られる投与量に達するまで組成物を投与する。したがって、本発明の抗体は、単一投与量で投与されてもよく、または一定時間内で2回以上の投与量(同じまたは異なる量の所望の分子を含んでもよい)で投与されてもよく、またはインプラント装置またはカテーテルの連続注入によって投与されてもよい。適切な投与量は、適切な投与量反応データを使用して決定することができる。一部の実施形態において、抗体は、延長された期間にわたって患者に投与され得る。一部の実施形態において、抗体は、毎週、2週間毎、毎月、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、または6か月毎に投与される。
【0159】
医薬組成物の投与経路は、既知の方法、例えば、経口、静脈内注射、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内経路により、持続放出系により、またはインプラント装置によるものである。一部の実施形態において、組成物は、ボーラス注射によって、または連続注入によって、またはインプラント装置によって投与することができる。
【0160】
組成物は、インプラント膜、スポンジ、または所望の分子を吸収またはカプセル化する別の適切な材料を介して局所的に適用することもできる。一部の実施形態において、インプラント装置が使用される場合、前記装置は、任意の適切な組織または器官にインプラントすることができ、拡散、時限放出ボーラス、または連続投与によって所望の分子を送達することができる。
【0161】
なお、本発明の免疫複合体で抗IL-23p19抗体を置き換えまたはそれを補足して任意の治療を行うことができる。
【0162】
VIII.診断と検出のための方法と組成物
一部の実施形態において、本明細書に提供される任意の抗IL-23p19抗体またはその抗原結合断片は、生体試料におけるIL-23p19の存在を検出するために用いることができる。本明細書で使用される用語「検出」は、定量的検出または定性的検出を含み、例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISA測定手法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。一部の実施形態において、生体試料は、血、血清または生物に由来するその他の液体試料である。一部の実施形態において、生体試料は細胞または組織を含む。いくつかの実施形態において、生体試料は免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)に関連する病巣に由来する。
【0163】
1つの実施形態において、診断または検出方法に用いる抗IL-23p19抗体を提供する。別の態様において、生体試料におけるIL-23p19の存在を検出する方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、生体試料におけるIL-23p19タンパク質の存在の検出を含む。一部の実施形態において、IL-23p19はヒトIL-23p19またはカニクイザルIL-23p19である。一部の実施形態において、前記方法は、生体試料を本明細書に記載の抗IL-23p19抗体と、抗IL-23p19抗体とIL-23p19が結合できる条件において接触させることと、抗IL-23p19抗体とIL-23p19が複合体を形成しているか否かを検出することとを含む。複合体を形成している場合は、IL-23p19の存在が示される。当該方法は、インビトロで行われてもよいし、またはインビボで行われてもよい。1つの実施形態において、抗IL-23p19抗体が抗IL-23p19抗体による治療に適した対象の選択に用いられ、例えば、IL-23p19は前記対象を選択するバイオマーカーである。
【0164】
1つの実施形態において、本発明の抗体を利用して免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)などのIL-23関連疾患の診断を行い、例えば、対象における本明細書に記載の疾患(免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)などのIL-23関連疾患)の治療または進行、その診断および/または病期の評価(例えば、監視)を行うことができる。一部の実施形態において、標識された抗IL-23p19抗体を提供する。標識の非限定的な例は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識)と、酵素触媒反応または分子間の相互作用などにより間接的に検出される部分(例えば、酵素またはリガンド)とを含む。標識の非限定的な例は、放射性同位体、例えば、32P、14C、125I、H、131Iなど、フルオロフォア、例えば、希土類キレートもしくはフルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル(dansyl)、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ルシフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタル由来ルシフェラーゼ、細菌由来ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、フルオレセイン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、炭水化物オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環オキシダーゼ、例えば、尿酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、過酸化水素染料前駆体からなる酵素、例えば、HR、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定的なフリーラジカルなどを含む。
【0165】
本明細書に記載の任意の発明のいくつかの実施形態において、試料が抗IL-23p19抗体による治療前に取得される。いくつかの実施形態において、試料はIL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)の薬物による治療前に取得される。いくつかの実施形態において、試料はホルマリンで固定され、パラフィン包埋(FFPE)されている。いくつかの実施形態において、前記試料は生検(例えば、コア生検)検体、手術標本(例えば、手術切除による標本)、または吸引物である。
【0166】
いくつかの実施形態において、治療前に、例えば、治療の開始前にまたは治療間隔後のある治療前にIL-23p19を検出する。
【0167】
いくつかの実施形態において、IL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)の治療方法を提供する。前記方法は、対象(例えば、試料)(例えば、対象の試料)にIL-23p19の存在を検出することによって、IL-23p19値を決定することと、IL-23p19値を対照値と比較し、IL-23p19値が対照値を上回る場合、対象に対し、治療有効量の、好ましくは1種以上の他の療法と組み合わせて、抗IL-23p19抗体(例えば、本明細書に記載の抗IL-23p19抗体)を投与することによって、IL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)を治療することとを含む。
【0168】
IX 本発明の例示的な抗IL-23p19抗体
【表6】
【0169】
【表7】
【0170】
【表8】
【0171】
本発明に係る上記の態様、他の態様および実施形態は、図面(図面の簡単な説明が添えられる)、以下の発明の詳細な記載の部分において説明されており、次の実施例においてその例が挙げられる。本発明の上述した特徴、本明細書で説明されているいずれの特徴または全ての特徴は本発明の様々な実施形態において組み合わせることができる。次に、実施例を用いて本発明のさらなる説明を行うが、これらの実施例は説明目的のものに過ぎず、限定を加えるためのものではない。したがって、当業者は適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0172】
実施例1、ハイブリドーマ細胞の製造
本発明は、ハイブリドーマ技術を用い、マウスIL-12p40とヒトIL-23p19の融合タンパク質でマウスを免疫し、その後マウスの脾細胞と骨髄腫細胞の融合を取得し、陽性抗体を発現できるハイブリドーマ細胞を得る。
【0173】
ハイブリドーマ融合
【表9】
【0174】
マウスIL-12p40とヒトIL-23p19の融合タンパク質、カニクイザルIL23タンパク質、ヒトIL23タンパク質の製造
ヒトIL23 p19のみに結合する抗体をスクリーニングするために、マウスIL-12p40とヒトIL-23p19の融合タンパク質を設計し、マウスIL12 p40(NCBI: P43432, Met23-Ser335)とヒトIL-23 p19(NCBI: AAG37232, Ala21-Pro189)の中央にLinker(GSGSSRGGSGSGGSGGGGSKL)が連結され、C末端にHis Tag(HHHHHH)が連結されている。
【0175】
カニクイザルIL23タンパク質の設計案:カニクイザルIL12 p40(NCBI: AEY84628, Ile23-Ser328)とカニクイザルIL23 p19(NCBI: AEY84629, Ala21-Pro189)がLinker(GSGSSRGGSGSGGSGGGGSKL)を介して連結され、C末端にHis Tag(HHHHHH)が連結されている。
【0176】
ヒトIL23タンパク質の設計案:ヒトIL12 p40(NCBI: P29460, Ile23-Ser328)とヒト IL23 p19(NCBI: AAG37232, Ala21-Pro189)がLinker(GSGSSRGGSGSGGSGGGGSKL)を介して連結され、C末端にHis Tag(HHHHHH)が連結されている。
【0177】
三者はいずれもExpi293細胞(Thermo,A14527)の過渡発現を用いて得られ、過渡発現キットExpiFectamineTM 293(Theomo,A14524)の手順に従ってタンパク質を大量に発現させ、細胞上清を集めて、最終的にタンパク質の純度が90%を上回るようにHisTrap Excel(GE,17-3712-06)でカラムにアプライして上清液を精製した。
【0178】
対照抗体guselkumab(Gmab)の製造
対照抗体guselkumab配列はWHO INNサイト由来である(Jassen社guselkumab、アミノ酸配列は特許US20160237151も参照、以下Gmabと略す)。抗体はExpi293細胞(Thermo,A14527)の過渡発現を用いて得られ、過渡発現キットExpiFectamineTM 293(Theomo,A14524)の手順に従って抗体を大量に発現させ、細胞上清を集めて、抗体の純度が95%を上回るようにHiTrap MabSelect SuRe(GE,11003495)で上清液を精製した。
【0179】
電気融合ディッシュの準備:70%エタノールで電気融合ディッシュを徹底的に浸漬し、クリーンベンチでブローして準備する。
【0180】
脾細胞の単離:頸脱位でマウスを屠殺し、75%アルコールで体表を5min消毒した後、クリーンベンチ内のマウス解剖板に置き、左側を臥位にし、7番針で四肢を固定した。無菌的に腹腔を開けて脾臓を取り出し、基礎培地(調製方法は以下の表5のとおり)で洗浄し、周囲に付着している結合組織を注意深く取り除いた。その後、脾臓を基本培地の入った別のプレートに移した。エルボ針で脾臓を押さえ、小さな針で脾臓に穴を開け、ピンセットで押圧し、脾細胞を十分に放出させ、脾細胞懸濁液とした。細胞懸濁液を70μM細胞篩で濾過した後、基本培地30mlで1回洗浄し、1200rpmで6min遠心分離した。
【0181】
【表10】
【0182】
赤血球の溶解:上清を除去し、細胞をRBC溶解緩衝液(GIBCO)10mlで再懸濁した。その後、さらにRBC溶解緩衝液20mlを加えた。懸濁液を5min静置した後、1100rpmで6min遠心分離した。上清を除去した後、細胞を10mlの基本培地で再懸濁し、次いで30mlの基本培地を加え、1100rpmで6min遠心分離した。上清を除去した後、細胞を20mlの基本培地に再懸濁し、計数した。
【0183】
電気融合:20mlの基本培地でマウス骨髄腫細胞SP2/0細胞(ATCC)を再懸濁し、計数した。SP2/0と赤血球溶解後の脾細胞を1:2~1:1の割合で混合し、1000rpmで6min遠心分離した。上清を除去した後、混合した細胞を10mlの融合緩衝液(BTXpress)に再懸濁した。さらに融合緩衝液15mlを加え、1000rpmで5min遠心分離して上清を除去した。上記の手順を繰り返した後、適当量の体積の融合緩衝液を加えて細胞を再懸濁し、混合細胞密度を1×10細胞/mlに調整した。電気融合器のパラメータ設定を以下の表6に示す。各電気融合ディッシュに上記の細胞懸濁液2mlを加えて電気融合を行った。
【0184】
【表11】
【0185】
電気融合後の播種:細胞を電気融合ディッシュに室温で5min静置した。細胞を遠心管に移し、スクリーニング培地(配置方法は以下の表7のとおり)で1~2×10細胞/mlに希釈した。96ウェルプレートに1ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加えた。融合後7日目にスクリーニング培地を交換した。特異的抗IL-23p19抗体を発現し、分泌された抗体がIL-12p40に結合しないハイブリドーマ細胞を、培養10日目(またはそれ以上、細胞増殖状態に応じて)にELISAアッセイでスクリーニングした。
【0186】
【表12】
【0187】
陽性ハイブリドーマ細胞サブクローニング
サブクローニング工程:96ウェルプレートを準備し、2列目から8列目の各ウェルに上記の基本培地200μlを添加した。上記融合によってスクリーニングされた陽性ウェルの細胞を、約1×10個/mlの密度で、それぞれ300ulずつ1列目の各ウェルに添加した。列で奪い取り、1列目の細胞懸濁液100μlを2列目に加え、十分に混ぜた後に100μlを次の列に加えた。最後の列の体積が300μlになるまで上記の手順を繰り返し、96ウェルプレートを15min静置し、顕微鏡下で計数を観察した。100個の細胞に対応する体積を上記の基本培地20mlに添加し、1ウェル当たり200μlで混練して播種した。1週間後、顕微鏡下で観察し、モノクローナルウェルを判定、標識し、陽性ウェルを検出した。
【0188】
細胞の凍結保存:細胞の状態を観察し、細胞の成長が良好で、活力が>90%の時、1000rpmで5min遠心分離し、上清を除去した。細胞を凍結保存液(45.5%FBS(Hyclone),44.5%RPMI-1640(Hyclone),10%DMSO)で1×10細胞/mlに再懸濁し、凍結保存チューブに分注し、プログラム冷却カセットに入れ、-80℃で凍結保存した。
【0189】
実施例2、ハイブリドーマ細胞の活性スクリーニング
本発明は機能性実験を採用し、原理は抗IL-23p19抗体がIL-23によるマウス脾臓リンパ球のIL-17分泌の誘導を抑制でき、IL-23によるマウス脾臓リンパ球のIL-17分泌の誘導を抑制する抗IL-23p19抗体を発現するハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることである。
【0190】
マウス脾臓リンパ球の単離
頸椎脱臼法により空白のBal b/cマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司)を屠殺し、マウスの脾臓を取り出して清潔なPBS溶液に浸し、1つの培養皿に適量のPBS溶液を加え、細胞篩を1つ置き、脾臓を取り出して細胞篩に入れ、清潔な注射器を取り、その押圧箇所の末端で組織を転圧すると、膜内の細胞が徐々に遊離し、細胞篩を通過した後、培養皿溶液に懸濁し、マウス脾臓リンパ球を含むPBS400gを収集し、10min遠心分離し、上清を除去し、赤血球溶解液(ACK溶解緩衝液(GIBCO))5mLを加えて細胞を再懸濁し、2min溶解し、400g、10min遠心分離し、30mLのPBSを加えて1回洗浄し、400gを遠心分離し、上清を除去し、5mLの完全培地(RPMI-1640培地に10%FBSを加えた)を加えて細胞を再懸濁し、細胞懸濁液を得た。
【0191】
播種
上記で得られた細胞懸濁液10μlを計数し、細胞密度を完全培地で4*10/mLに希釈した後、96ウェルプレートに播種し、1ウェル当たり100uL、1ウェル当たり細胞総数4*10個とした。
【0192】
IL-23またはIL-23とハイブリドーマ上清との混合物は、マウス脾細胞からIL-17の分泌を誘導する
IL-23(R&D Systems、品番1290-IL-500/CF)を完全培地で120ng/mLに希釈し、120uLのIL-23を120uLの実施例1で得られたハイブリドーマ細胞培養上清と混合した後、37度で30minインキュベートし、30min後、マウス脾臓リンパ球を播種した96ウェルプレート上に播種したマウス脾臓リンパ球に100uLの混合物を加え、混練し、37度で4日間インキュベートし、120uLのIL-23と120uLの完全培地(RPMI-1640培地に10%FBSを添加)との混合物を陰性対照とした。
【0193】
IL-17含有量を測定し、ハイブリドーマ上清の抑制率を算出した。
本発明はMouse IL-17DuoSet ELISAキット(R&D Systems、品番DY421)を用いてIL-17含有量を測定し、ハイブリドーマ上清の抑制率の計算式は以下のとおりである。
抑制率(%)=(IL-17陰性対照-IL-17測定対象試料)/IL-17陰性対照*100%
【0194】
本発明は、この機能性実験において、17D1のクローン番号で、対照抗体よりも活性の高いハイブリドーマ細胞をスクリーニングした。結果を以下の表8に示す。
【0195】
【表13】
【0196】
実施例3、キメラ抗体の製造
実施例1においてハイブリドーマ細胞から産生された抗IL-23p19抗体の抗体配列を分子生物学的技術を用いて得、これを用いてヒトマウスキメラ抗体を構築した。
【0197】
ハイブリドーマ配列決定
RNA抽出:新鮮に培養した17D1クローン番号の細胞約5×10個を採取し、300gを5min遠心分離し、上清を除去し、沈殿物に500μlのLY緩衝液(Biomiga)(使用前に1ml当たり20μlのβメルカプトエタノール)を加え、清澄になるまで混練した。DNA除去チューブに添加し、13000rpmで2min遠心分離し、フロースルーを収集した。100%エタノールを1/2の割合でフロースルーに添加し、5回上下逆にして清澄になるまで混練した。清澄な溶液をRNA収集チューブに添加し、13000rpmで1min遠心分離して液体を除去し、500μlのRB(Recovery Buffer、単離バッファー)(Takara)を加え、13000rpmで30s遠心分離し、さらに500μlのRNA洗浄緩衝液(Biomiga)(使用前に適量のエタノールを加える)を加え、30s遠心分離し、上記の過程を繰り返した後、遠心分離して徹底的にエタノールを揮発除去した後、収集カラム(PrimeScript II 1st Strand cDNA Synthesis Kitより)にDEPC水30μlを加え、12000gを2min遠心分離し、溶離液を収集した。RNA濃度を測定した。
【0198】
PrimeScript II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Takara)の逆転写を利用してcDNAを獲得し、手順は以下のとおりである(言及した試薬は全てこのキットから得た)。
反応系Iを下記表9のように調製した。
【0199】
【表14】
【0200】
65℃で5minインキュベートした後、速やかに氷上に置いて冷却した。反応系Iを以下の逆転写系(表10)に合計20μl添加した。
【0201】
【表15】
【0202】
ゆっくりと混練した後、42℃ 60 min→95℃ 5 minという条件で逆転写翻訳を行い、その後氷上に置いて冷却し、cDNAを得た。
【0203】
cDNAをTベクターに連結し、Mighty TA-cloning Kitキット(Takara)を用いた。
PCRは重鎖可変領域と軽鎖可変領域をそれぞれ増幅し、PCR反応系は下記表11のとおりである。
【0204】
【表16】
【0205】
PCR反応条件は下記表12のとおりである。
【0206】
【表17】
【0207】
上記PCR反応で得られたPCR産物4.5μlに、0.5μl pMD20-Tベクター(Takara)、5μl Ligation Mighty Mix(Takara)を加え、軽く混練し、37℃で2h反応させて連結産物を得た。
【0208】
形質転換細胞:-80℃でTOP10受容体(天根生化科技(北京)有限公司)を取り出し、氷上で融解し、上記で得られた連結産物5μlを融解したTOP10受容体に加え、混練した後、氷上で30minインキュベートした。42℃で90s熱刺激した後、迅速に氷上で2min冷却し、EPチューブに900μlのLB培地(生工生物工程(上海)株式会社)を補充し、37℃、220rpmで、振とう機で1h培養した。3000gを2min遠心分離し、上清800μlを吸引除去し、残りの培地を用いて菌体を再懸濁し、アンピシリン耐性プレート上にコーティングした。37℃で一晩培養し、クローンを選んで配列決定した。
【0209】
キメラ抗体の構築
配列決定された実施例1のハイブリドーマ細胞によって産生された抗IL-23p19抗体VHおよびVL領域のPCR増幅:上下流プライマー配列を表13および表14に示す。
【0210】
【表18】
【0211】
上記の割合で混合した後、後のVHのPCR増幅のためにPrimer Mix 1を得た。
【0212】
【表19】
【0213】
上記の割合で混合した後、後のVLのPCR増幅のためにPrimer Mix 2を得た。
PCR系を下記表15に示す。
【0214】
【表20】
【0215】
ゲルカットによりPCR増幅産物を単離した。
【0216】
相同組換え反応
相同組換え系を下記表16に示す。
【表21】
【0217】
37℃で30min反応させ、組換え産物を得た。組換え産物をTOP10受容体に形質転換し、モノクローナルを選んで配列決定し、挿入方向が正しいプラスミドを含むクローンを陽性クローンとして選択し、陽性クローンを保存した。
【0218】
本発明の例示的なキメラ抗体(17D1キメラ抗体)のCDR、軽鎖可変領域と重鎖可変領域、軽鎖と重鎖のアミノ酸配列、並びに対応するヌクレオチド配列を本出願の表1~表3および配列表の部分に示している。
【0219】
実施例4、キメラ抗体のヒト化
実施例3で得られたキメラ抗体をヒト化した。以下の手順でヒト化を行った。
(1)CDRループ構造を確定する。
(2)ヒト生殖系列配列データベースに重鎖と軽鎖の各V/J領域に最も近い相同配列を見つける。
(3)重鎖軽鎖と最もマッチングするヒト生殖系列および最低量の復帰突然変異をスクリーニングする。
(4)キメラ抗体のCDR領域をヒトの骨格領域に構築する。
(5)配列と構造特徴を使用して、骨格領域においてCDRを維持する機能を果たすアミノ酸位置を決定する。
(6)重要であると決定された配列位置で復帰突然変異を行う(入力アミノ酸タイプに戻す)。
(7)リスク部位のアミノ酸を最適化する。
【0220】
本発明の例示的なキメラ抗体(17D1ヒト化抗体)のCDR、軽鎖可変領域と重鎖可変領域、軽鎖と重鎖のアミノ酸配列、並びに対応するヌクレオチド配列を本出願の表1~表3および配列表の部分に示している。
【0221】
実施例5、ヒト化抗体の発現および精製
本発明は、CHO-S細胞におけるヒト化抗体の発現および精製を使用する。
Freedom(登録商標) CHO-S(登録商標)キット(Invitrogen)を使用して、製造者の指示に従い、抗体を発現するCHO-S細胞株を作製した。まず、17D1ヒト化抗体分子の重鎖および軽鎖のDNA配列を、重鎖が軽鎖の上流にある同一のpCHO1.0プラスミドに挿入した。その後、構築したpCHO1.0プラスミドを化学トランスフェクション法およびエレクトロトランスフェクション法を用いてCHO細胞株(Life Technology)に移し、48時間トランスフェクションした後にForteBioを用いて抗体産生量を検出し、トランスフェクション効率を判定した。トランスフェクション後の細胞を2回加圧スクリーニングして高発現抗体の細胞プール(pool)を得た。その後細胞プールを増幅し、抗体を大量に発現させ、細胞上清を集めて、抗体の純度が95%を上回るようにProtein Aで上清液を精製した。
【0222】
YTE抗体の製造
17D1ヒト化抗体のFc断片の3つの部位を部位特異的に変異させ(M252Y/S254T/T256E)、ヒトFcRnとの結合能を高め、インビボでの半減期の延長を図った。17D1ヒト化抗体の製造と同様に、Freedom(登録商標) CHO-S(登録商標)キット(Invitrogen)を使用して、抗体を発現するCHO-S細胞株を作製した。トランスフェクション後の細胞を2回加圧スクリーニングして高発現抗体の細胞プール(pool)を得た。その後細胞プールを増幅し、抗体を大量に発現させ、細胞上清を集めて、抗体の純度が95%を上回るようにProtein Aで上清液を精製した。得られた抗体を17D1-YTEと命名した。
【0223】
実施例6、ヒト化抗体の親和力測定
光干渉による生体測定法(ForteBio)の測定手法を用いて、ヒトIL-23p19に対する本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTEの結合の平衡解離定数(KD)を測定した。
【0224】
ForteBio親和力測定は従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8)で行った。簡単に説明すると、分析緩衝液においてオフラインでセンサーを30分間平衡化し、次にオンラインで60秒間検出して基線を作成し、オンラインで上述したように精製された抗体をAHQセンサー(ForteBio)にロードしてForteBio親和性計測を行った。抗体がロードされたセンサーを100nMのXX抗原に曝露させて5分間作用させた後、センサーを分析緩衝液に移して5分間解離させることで解離速度を計測した。1:1結合モデルを利用して動力学的分析を行った。
【0225】
上記測定手法により実施された実験において、ヒトIL-23(実施例1に記載のように得られ、100mM)に対する本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTEおよび対照抗体Gmabの親和力は下記表17に示されるとおりである。
【0226】
【表22】
【0227】
上記表17の結果から、本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTEは極めて高い親和力を示し、17D1と対照抗体Gmabは類似の親和力を有し、17D1-YTEと対照抗体Gmabはより高い親和力を有することがわかる。
【0228】
光干渉による生体測定法(ForteBio)の測定手法を用いて、同族ヒトインターロイキンヒトIL-12(ACRO Biosystems,Cat# IL2-H4210)またはヒトIL-12p40(ACRO Biosystems,Cat# NK2-H52H7)に対する本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTE抗体の結合の平衡解離定数(KD)を測定した(表18)。
【0229】
【表23】
【0230】
上記表18の結果から、17D1ヒト化抗体、17D1-YTE抗体は、ヒトIL-12、ヒトIL-12p40に結合しないことが明らかとなった。
【0231】
光干渉による生体測定法(ForteBio)の測定手法を用いて、カニクイザルIL-23(実施例1に記載のように得られ、100mM)に対する本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTEの結合の平衡解離定数(KD)を測定した(表19)。
【0232】
【表24】
【0233】
以上のグラフの結果から、本発明の上記17D1ヒト化抗体、17D1-YTEは極めて高い親和力を示し、17D1-YTEと対照抗体Gmabは類似の親和力を示すことが明らかとなった。
【0234】
ForteBioはヒトFcRnに対する候補抗体の親和力を検出した
本研究はForteBio Octet RED96 Systemを利用して17D1ヒト化抗体および17D1-YTEとヒトFcRn(Acro、品番FCM-H5286)の結合動力学定数(K)を測定した。結果は表20に示されるように、ヒトFcRnに対する17D1-YTEの親和力は、17D1ヒト化抗体および対照抗体Gmabの3倍であった。
【0235】
先に上述のように製造した17D1ヒト化抗体、17D1-YTEとGmab(guselkumab)をそれぞれビオチン(Biotin)でインキュベートして標識し、抗体とビオチンのモル比を1:3とし、脱塩カラムで標識していないビオチンを除去し、標識した試料に対して改めて濃度を測定し、保存して使用に備える。
【0236】
適量のSAセンサー(Fortebio、品番18-5019)を分析緩衝液に30分間浸漬した。ビオチン化17D1ヒト化抗体、17D1-YTEおよびGmabを100nMに希釈し、ヒトFcRn(Acro、品番FCM-H5286)を5つの濃度点(5、2.5、1.25、0.625、0.3125μg/ml)に2倍勾配で希釈した。実験プログラムを設定し、センサーをまず分析緩衝液で120s平衡化し、次にビオチン化抗体をSAセンサーにロードし、硬化時間は100sであり、硬化後120sの平衡を継続した。ベースラインを安定化させた後、勾配希釈したFcRnを抗体硬化レベルが一致するセンサーにそれぞれ結合し、結合時間を100sに設定した後、分析緩衝液で120s解離させ、それぞれ結合と解離を測定した。実験データは1:1モデルを用いて解析し、親和力データを表20に示す。
【0237】
【表25】
【0238】
実施例7、ヒト化抗体の活性同定
機能性実験を用いて、本発明で得られた17D1ヒト化抗体、17D1-YTEがIL-23によるマウス脾臓リンパ球からのIL-17分泌の誘導を抑制する活性を測定した。試験方法は、4μg/mlの17D1ヒト化抗体および17D1-YTEのPBS溶液(対照Gmab)を使用したことを除いて、実施例2と同じであった。検出結果は図1に示される。
【0239】
以上の実験において、17D1ヒト化抗体、17D1-YTEは、IL-23によるマウス脾臓リンパ球からのIL-17の分泌の誘導を抑制し、対照抗体と比較して同様の活性を示した。
【0240】
実施例8、動物のインビボ薬効試験
本実験では、C57BL/6雄マウスを用いて本発明のIL-23抗体の予防的抗炎症作用を測定した。
C57BL/6雄マウス:C57Bl/6雄マウス(42~62日齢)は、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入される。ランクSPFクラス、数量48匹、合格証番号NO.11400700260631、到着後7日間馴養飼育し、試験を開始した。
【0241】
投与:48匹のマウスを無作為に6匹ずつ8群に分けた(h-IgG+PBS群の雄マウス1匹は、殴打されて損傷が重すぎたため、群から除外した)。抗体のPBS溶液を1日前に腹腔内注射し、投与量は、h-IgG 5mg/kg、17D1ヒト化抗体(後に17D1と略称する)-1mg/kg、17D1-5mg/kg、17D1-YTE-1mg/kg、17D1-YTE-5mg/kg、Gmab-1mg/kg、Gmab-5mg/kgであり、翌日、第1群のh-IgG 5mg/kg右耳にPBSを皮下注射し、残りの群の右耳にIL-23抗原(実施例1に記載のようにして得られたヒトIL-23タンパク質)1ug(PBS中)を各マウスに皮下注射し、9日間、右耳皮下注射を続けた。投与量および方式は表21に示されるように、マウスの右耳の厚さおよび体重を1~2日おきにモニターし、9日目の終わりまでモニターした。ノギスを用いてマウスの右耳の厚さを測定した(図2)。電子天びんを用いて体重を測定した。
【0242】
【表26】
【0243】
【表27】
【0244】
耳腫脹抑制率を図3に示し、7日間連続してIL-23抗原を右耳に皮下注射した後、17D1-1mg/kg、17D1-5mg/kg、17D1-YTE-1mg/kg、17D1-YTE-5mg/kg、Gmab-1mg/kg、Gmab-5mg/kgは、いずれも良好な耳腫脹抑制効果を有する。H-IgGと比べ、17D1-1mg/kgの腫脹抑制率は71%、17D1-5mg/kgの腫脹抑制率は54%、17D1-YTE-1mg/kgの腫脹抑制率は67%、17D1-YTE-5mg/kgの腫脹抑制率は86%、Gmab-1mg/kgの腫脹抑制率は74%、Gmab-5mg/kgの腫脹抑制率は88%である。同時に、マウス体重をモニターしたが、図4に示されるように、マウス体重に有意差はなかった。したがって、本研究ではIL-23抗体が明らかな予防的抗炎症作用を示した。
【0245】
【表28】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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