(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】テレスコピックカバー
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
(21)【出願番号】P 2021008368
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石川 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】角 剛
(72)【発明者】
【氏名】遠山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】國司 拓也
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 祐
(72)【発明者】
【氏名】竹野 翔兵
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-243046(JP,A)
【文献】特開2002-321136(JP,A)
【文献】特開2013-302780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の可動部を案内する案内部を覆うように配置され、前記可動部の移動に応じて前記案内部の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材を有するテレスコピックカバーであって、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向の一端の開口が他端の開口より狭くなるように前記カバー部材を構成する少なくとも1つの壁部が、前記一端の開口から前記他端の開口に向かって前記案内方向に対して傾斜し、
複数の前記カバー部材の各々の傾斜した前記壁部は、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部と対向し、
少なくとも1つの前記カバー部材の一方の端部側に設けられ、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部との間の隙間に配置される制動部材を備え
、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向に沿って前記可動部から離れる隔離方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部を有し、
前記制動部材は、少なくとも1つの前記カバー部材の前記隔離方向側の端部の内表面側、または、少なくとも1つの前記カバー部材の前記隔離方向に対して逆の接近方向側の端部の外表面側に設けられる、テレスコピックカバー。
【請求項2】
請求項
1に記載のテレスコピックカバーであって、
前記隔離方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部は、前記案内部が固定される側とは反対側に配置され、前記案内部を挟んで配置される一対の側方の前記壁部と繋がる上方の前記壁部である、テレスコピックカバー。
【請求項3】
請求項
2に記載のテレスコピックカバーであって、
前記制動部材は、少なくとも1つの前記カバー部材の前記隔離方向側の端部の内表面側に設けられ、前記隔離方向側の前記開口から外部に露出し、下段の前記カバー部材の外表面と接触する、テレスコピックカバー。
【請求項4】
工作機械の可動部を案内する案内部を覆うように配置され、前記可動部の移動に応じて前記案内部の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材を有するテレスコピックカバーであって、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向の一端の開口が他端の開口より狭くなるように前記カバー部材を構成する少なくとも1つの壁部が、前記一端の開口から前記他端の開口に向かって前記案内方向に対して傾斜し、
複数の前記カバー部材の各々の傾斜した前記壁部は、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部と対向し、
少なくとも1つの前記カバー部材の一方の端部側に設けられ、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部との間の隙間に配置される制動部材を備え、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向に沿って前記可動部に近づく接近方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部を有し、
前記制動部材は、少なくとも1つの前記カバー部材の前記接近方向側の端部の外表面側、または、少なくとも1つの前記カバー部材の前記接近方向に対して逆の隔離方向側の端部の内表面側に設けられる、テレスコピックカバー。
【請求項5】
請求項
4に記載のテレスコピックカバーであって、
前記接近方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部は、前記案内部を挟んで配置される一対の側方の前記壁部の少なくとも一方である、テレスコピックカバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のテレスコピックカバーであって、
前記制動部材を前記カバー部材側に付勢する弾性部材を備える、テレスコピックカバー。
【請求項7】
工作機械の可動部を案内する案内部を覆うように配置され、前記可動部の移動に応じて前記案内部の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材を有するテレスコピックカバーであって、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向の一端の開口が他端の開口より狭くなるように前記カバー部材を構成する少なくとも1つの壁部が、前記一端の開口から前記他端の開口に向かって前記案内方向に対して傾斜し、
複数の前記カバー部材の各々の傾斜した前記壁部は、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部と対向し、
少なくとも1つの前記カバー部材の一方の端部側に設けられ、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部との間の隙間に配置される制動部材を備え、
複数の前記カバー部材の各々は、前記案内方向に沿って前記可動部から離れる隔離方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部、および、接近方向に向かうほど前記案内部に近づくように傾斜する前記壁部の少なくとも一方を有し、
少なくとも1つの前記カバー部材の接近方向側の端部に設けられ、前記カバー部材から前記隙間に突出する突起部材を備え、
前記制動部材は、前記突起部材の先端に設けられる、テレスコピックカバー。
【請求項8】
請求項
7に記載のテレスコピックカバーであって、
前記制動部材は、前記突起部材と一体に形成される、テレスコピックカバー。
【請求項9】
請求項
7に記載のテレスコピックカバーであって、
前記突起部材に設けられ、前記制動部材を前記カバー部材側に付勢する弾性部材を備える、テレスコピックカバー。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の、テレスコピックカバーであって、
前記制動部材は、衝撃吸収性を有する樹脂である、テレスコピックカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコピックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、テレスコピックカバーが開示されている。テレスコピックカバーは、工作機械の可動部を案内する案内部を覆うように配置され、可動部の移動に応じて案内部の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材を有している。複数のカバー部材の各々にはストッパ(ステー)が設けられ、当該カバー部材のストッパを介して、複数のカバー部材の隣り合うカバー部材が衝突することで、可動部が最大移動可能量だけ移動しても過度に伸縮することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のテレスコピックカバーでは、可動部の移動速度が速くなるほど、複数のカバー部材の隣り合うカバー部材が衝突したときの衝撃が大きくなるため、カバー部材の破損等が懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、カバー部材の衝撃を緩和し得るテレスコピックカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、
工作機械の可動部を案内する案内部を覆うように配置され、前記可動部の移動に応じて前記案内部の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材を有するテレスコピックカバーであって、
複数のカバー部材の各々は、前記案内方向の一端の開口が他端の開口より狭くなるように前記カバー部材を構成する少なくとも1つの壁部が、一端の前記開口が他端の前記開口に向かって前記案内方向に対して傾斜し、
複数の前記カバー部材の各々の傾斜した前記壁部は、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部と対向し、
少なくとも1つの前記カバー部材の一方の端部側に設けられ、隣り合う前記カバー部材の傾斜した前記壁部との間の隙間に配置される制動部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、制動部材により隣り合うカバー部材の相対速度を減速させることができ、この結果、当該カバー部材が衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、直動装置を側方からみた模式図である。
【
図2】
図2は、直動方向に沿って直動装置をみた模式図である。
【
図3】
図3は、テレスコピックカバーを上方からみた模式図である。
【
図4】
図4は、テレスコピックカバーを側方からみた概念図である。
【
図5】
図5は、変形例1のテレスコピックカバーを
図4と同じ視点で示す概念図である。
【
図6】
図6は、変形例2のテレスコピックカバーを
図4と同じ視点で示す概念図である。
【
図7】
図7は、変形例3のテレスコピックカバーを
図4と同じ視点で示す概念図である。
【
図8】
図8は、変形例4のテレスコピックカバーを
図4と同じ視点で示す概念図である。
【
図9】
図9Aは、変形例5のテレスコピックカバーが伸長した状態を上方からみた概念図であり、
図9Bは、変形例5のテレスコピックカバーが伸長した状態を側方からみた概念図である。
【
図10】
図10Aは、変形例5のテレスコピックカバーが圧縮した状態を上方からみた概念図であり、
図10Bは、変形例5のテレスコピックカバーが圧縮した状態を側方からみた概念図である。
【
図11】
図11は、変形例6の直動装置を側方からみた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0010】
図1は、直動装置10を側方からみた模式図であり、
図2は、直動方向に沿って直動装置10をみた模式図である。直動装置10は、旋盤、フライス盤、マシニングセンタ、ターニングセンタまたは放電加工機等の工作機械に搭載される。直動装置10には、工作機械の可動部12と、モータ14と、動力変換部16と、案内部18と、テレスコピックカバー20とが備えられる。なお、
図1では案内部18が省略されている。
【0011】
動力変換部16は、モータ14の回転運動を直進運動に変換して可動部12に伝達するものである。動力変換部16として、ボールねじ16Aと、ボールねじ16Aに螺合するナット16Bとが備えられてもよい。本実施形態では、動力変換部16としてボールねじ16Aおよびナット16Bが備えられるものとする。ボールねじ16Aは、台座22の載置面22F等の基準面に対して水平となるように一対の支柱部材24に支持される。ボールねじ16Aの一端には継手26(
図1)を介してモータ14のモータ軸14A(
図1)が接続され、ボールねじ16Aはモータ14と一緒に回転する。ナット16Bは、可動部12に固定され、ボールねじ16Aの回転に応じて、可動部12をボールねじ16Aに沿って直動させる。
【0012】
案内部18は、可動部12を案内するものである。案内部18として、台座22に固定される一対のガイドレール18Aと、ガイドレール18Aをスライド可能にガイドレール18Aに嵌合する一対のスライダ18Bとが備えられてもよい。本実施形態では、案内部18として一対のガイドレール18Aおよび一対のスライダ18Bが備えられるものとする。一対のガイドレール18Aは、ボールねじ16Aを挟んで配置され、当該ガイドレール18Aの各々は、ボールねじ16Aが延びる方向に沿って延びている。一対のスライダ18Bは、ボールねじ16Aに沿って可動部12を案内する。
【0013】
図3は、テレスコピックカバー20を上方からみた模式図である。テレスコピックカバー20は、可動部12を挟んで、案内部18が案内する案内方向の一方側と他方側とに配置される。一方側に配置されるテレスコピックカバー20と、他方側に配置されるテレスコピックカバー20とは、複数のカバー部材28を有する。
【0014】
複数のカバー部材28は、案内部18を覆うように配置され、可動部12の移動に応じて案内部18の案内方向に沿って伸縮可能に連結される。一方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28が伸長する場合、他方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28は圧縮する。これに対し、一方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28が圧縮する場合、他方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28は伸長する。つまり、一方側に配置されるテレスコピックカバー20と、他方側に配置されるテレスコピックカバー20とでは、伸縮関係が相反する。
【0015】
一方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28と、他方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28とは同じ構成である。以下は、一方側に配置されるテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28のみを説明する。なお、本実施形態は、説明を簡単にするために、カバー部材28の数は3つとする。
【0016】
3つのカバー部材28は、伸縮可能に入れ子式に重なり合う。3つのカバー部材28のうち、最上段のカバー部材28は、可動部12に固定され、最下段のカバー部材28は、台座22の載置面22Fから立設する工作機械の固定部30に固定される。なお、最上段のカバー部材28は、固定部30に固定され、最下段のカバー部材28は、可動部12に固定されてもよい。
【0017】
3つのカバー部材28の重なり度合いは、伸縮に応じて可変する。すなわち、隣り合う最上段のカバー部材28と、中段のカバー部材28との重なり度合い、および、隣り合う中段のカバー部材28と、最下段のカバー部材28との重なり度合いは、伸長(または圧縮)の程度が大きくなるほど小さくなる(または大きくなる)。
【0018】
3つのカバー部材28の各々は、案内部18を挟んで配置される一対の側方の壁部28SWと、案内部18が固定される台座22側とは反対側に配置され、一対の側方の壁部28SWと繋がる上方の壁部28UWとを構成要素として有する箱状である。3つのカバー部材28の各々は、案内方向の両端に開口を有し、当該開口を通るように案内部18が配置される。
【0019】
3つのカバー部材28の各々にはストッパ(ステー)が設けられ、当該カバー部材28のストッパを介して、複数のカバー部材28の隣り合うカバー部材28が衝突することで、可動部12が最大移動可能量だけ移動しても過度に伸縮することが抑制される。
【0020】
図4は、テレスコピックカバー20を側方からみた概念図である。テレスコピックカバー20が有する各々のカバー部材28の上方の壁部28UWは、案内部18の案内方向に沿って可動部12から離れる隔離方向D1に向かうほど案内部18に近づくように、当該案内部18に対して傾斜している。したがって、各々のカバー部材28では、隔離方向D1側の開口が、接近方向D2側の開口より狭くなる。なお、接近方向D2は、隔離方向D1に対して逆の方向であり、案内部18の案内方向に沿って可動部12に近づく方向である。
【0021】
複数のカバー部材28の各々の傾斜した上方の壁部28UWは、隣り合うカバー部材28の傾斜した上方の壁部28UWと対向する。すなわち、最上段のカバー部材28の上方の壁部28UWと、中段のカバー部材28の上方の壁部28UWとが対向し、中段のカバー部材28の上方の壁部28UWと、最下段のカバー部材28の上方の壁部28UWとが対向する。
【0022】
隣り合うカバー部材28の上段側の上方の壁部28UWと、隣り合うカバー部材28の下段側の上方の壁部28UWとの間の隙間には、制動部材32が配置される。なお、制動部材32は、最上段のカバー部材28の壁部28UWと中段のカバー部材28の壁部28UWとの隙間、および、中段のカバー部材28の壁部28UWと最下段のカバー部材28の壁部28UWとの隙間の少なくとも一方に配置される。
図4では、最上段のカバー部材28の壁部28UWと中段のカバー部材28の壁部28UWとの隙間、および、中段のカバー部材28の壁部28UWと最下段のカバー部材28の壁部28UWとの隙間の双方に制動部材32が配置される場合が示されている。
【0023】
制動部材32は、例えばゴム等のように、衝撃吸収性を有する樹脂である。制動部材32は、隣り合うカバー部材28のうち、上段側のカバー部材28の壁部28UWの内表面、または、下段側のカバー部材28の壁部28UWの外表面に設けられる。なお、上段側のカバー部材28の壁部28UWの内表面が設置対象である場合、制動部材32は、当該壁部28UWの隔離方向D1側の端部の内表面に設けられる。一方、下段側のカバー部材28の壁部28UWの外表面が設置対象である場合、制動部材32は、当該壁部28UWの接近方向D2側の端部の外表面に設けられる。
【0024】
本実施形態では、隣り合うカバー部材28における上段側の上方の壁部28UWと下段側の上方の壁部28UWとが傾斜しているため、隣り合うカバー部材28の伸長の程度が大きくなるほど、傾斜した上方の壁部28UWの間の隙間が狭くなる。この隙間には制動部材32が配置されるため、隣り合うカバー部材28の伸長に応じて、隣り合うカバー部材28の上段側の壁部28UWと下段側の壁部28UWとに制動部材32が挟まる。制動部材32が上段側の壁部28UWと下段側の壁部28UWとに挟まると、当該壁部28UWと制動部材32との摩擦により隣り合うカバー部材28の相対速度が減速する。このように本実施形態によれば、制動部材32により隣り合うカバー部材28の相対速度を減速させることができ、この結果、隣り合うカバー部材28が衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【0025】
なお、隣り合うカバー部材28の圧縮の伸長の程度が大きくなるほど、傾斜した上方の壁部28UWの間の隙間が広くなるため、制動部材32による、隣り合うカバー部材28の相対移動の妨害を抑制することができる。
【0026】
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0027】
(変形例1)
図5は、変形例1のテレスコピックカバー20を
図4と同じ視点で示す概念図である。
図5では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0028】
本変形例では、複数のカバー部材28のうち、隣り合うカバー部材28の下段側のカバー部材28の少なくとも1つに、突起部材34が設けられる。なお、
図5では、複数のカバー部材28のうち、隣り合うカバー部材28の下段側のカバー部材28(中段のカバー部材28および下段のカバー部材28)の各々に突起部材34が設けられる場合が示されている。
【0029】
突起部材34は、下段側のカバー部材28の接近方向D2側の端部に設けられ、当該カバー部材28から、上段側のカバー部材28との間の隙間に突出する。突起部材34は、制動部材32と同じ素材であってもよく、制動部材32とは異なる素材であってもよい。突起部材34の先端には制動部材32が設けられる。
【0030】
本変形例であっても、実施形態と同様に、制動部材32により隣り合うカバー部材28の相対速度を減速させることができ、この結果、当該カバー部材28が衝突したときの衝撃を緩和することができる。また、実施形態のようにカバー部材28の壁面に設ける場合に比べて設置スペースが広くなり、設計自由度を高め易くなる。
【0031】
なお、本変形例は、実施形態と組み合わせることができる。すなわち、本変形例のように制動部材32が設けられることに加えて、実施形態のように制動部材32が設けられてもよい。
【0032】
(変形例2)
図6は、変形例2のテレスコピックカバー20を
図4と同じ視点で示す概念図である。
図6では、実施形態および変形例1において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態および変形例1と重複する説明は省略する。
【0033】
本変形例では、制動部材32は、変形例1の制動部材32と、突起部材34とが一体に成形されて棒状に形成される。変形例1のように、制動部材32と突起部材34とが別体である場合に比べて、制動部材32と突起部材34とを接続する部品等を削減することができる。
【0034】
(変形例3)
図7は、変形例3のテレスコピックカバー20を
図4と同じ視点で示す概念図である。
図7では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0035】
本変形例では、複数のカバー部材28のうち、隣り合うカバー部材28の下段側のカバー部材28(中段のカバー部材28および最下段のカバー部材28)の少なくとも1つの接近方向D2側の端部に、支持部材36が設けられる。支持部材36には、上段側のカバー部材28の上方の壁部28UW側に凹部36Aが形成され、凹部36Aには、弾性部材38が収容される。
【0036】
弾性部材38は、本変形例ではコイルばねであり、伸縮方向の一端が凹部36Aの底面に固定され、伸縮方向の他端が制動部材32に固定される。弾性部材38は、制動部材32を上段側のカバー部材28側に付勢する。これにより、制動部材32が摩耗する等の要因があっても制動部材32とカバー部材28との摩擦力が変化することを抑制することができる。
【0037】
なお、本変形例は、実施形態と組み合わせることができる。すなわち、本変形例のように制動部材32が設けられることに加えて、実施形態のように制動部材32が設けられてもよい。また、変形例1の突起部材34と制動部材32との間に本変形例の弾性部材38が設けられてもよい。
【0038】
(変形例4)
図8は、変形例4のテレスコピックカバー20を
図4と同じ視点で示す概念図である。
図8では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0039】
本変形例では、複数のカバー部材28のうち、隣り合うカバー部材28の上段側のカバー部材28(最上段のカバー部材28および中段のカバー部材28)の少なくとも1つに、弾性部材40が設けられる。
【0040】
弾性部材40は、本変形例では板ばねである。弾性部材40の伸縮方向の一面は、上段側のカバー部材28の壁部28UWのうち、隔離方向D1の端部の内周面に固定され、当該伸縮方向の他面は、制動部材32に固定される。これにより、制動部材32が摩耗する等の要因があっても制動部材32とカバー部材28との摩擦力が変化することを抑制することができる。
【0041】
また本変形例では、制動部材32および弾性部材40は、上段側のカバー部材28における隔離方向D1側の開口から外部に露出し、下段のカバー部材28の上方の壁部28UWの外表面と接触する。これにより、カバー部材28が衝突したときの衝撃を緩和しながら、伸長時に上方の壁部28UWに落ちた切粉または切削液が圧縮時にカバー部材28の内側に入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0042】
(変形例5)
図9Aは、変形例5のテレスコピックカバー20が伸長した状態を上方からみた概念図であり、
図9Bは、変形例5のテレスコピックカバー20が伸長した状態を側方からみた概念図である。
図10Aは、変形例5のテレスコピックカバー20が圧縮した状態を上方からみた概念図であり、
図10Bは、変形例5のテレスコピックカバー20が圧縮した状態を側方からみた概念図である。
図9A、
図9B、
図10Aおよび
図10Bでは、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0043】
本変形例では、複数のカバー部材28の各々の上方の壁部28UWは、隔離方向D1に向かうほど案内部18に近づくように、当該案内部18に対して傾斜している。複数のカバー部材28の各々の傾斜した上方の壁部28UWは、隣り合うカバー部材28の傾斜した上方の壁部28UWと対向する。隣り合うカバー部材28の上段側の上方の壁部28UWと、隣り合うカバー部材28の下段側の上方の壁部28UWとの間の隙間の少なくとも1つには、制動部材32が配置される。この制動部材32は、本変形例では制動部材32Aと称する。
【0044】
制動部材32Aは、隣り合うカバー部材28の上段側のカバー部材28を構成する上方の壁部28UWにおいて隔離方向D1側の端部の内表面に設けられる。なお、制動部材32Aは、隣り合うカバー部材28の下段側のカバー部材28を構成する上方の壁部28UWにおいて接近方向D2側の端部の外表面に設けられてもよい。
【0045】
また、本変形例では、複数のカバー部材28の各々の一対の側方の壁部28SWの各々は、接近方向D2に向かうほど案内部18に近づくように、当該案内部18に対して傾斜している。なお、一対の側方の壁部28SWの一方のみが案内部18に対して傾斜してもよい。複数のカバー部材28の各々の傾斜した側方の壁部28SWは、隣り合うカバー部材28の傾斜した側方の壁部28SWと対向する。隣り合うカバー部材28の上段側の側方の壁部28SWと、隣り合うカバー部材28の下段側の側方の壁部28SWとの間の隙間の少なくとも1つには、制動部材32が配置される。この制動部材32は、本変形例では制動部材32Bと称する。
【0046】
制動部材32Bは、隣り合うカバー部材28の下段側のカバー部材28を構成する一対の側方の壁部28SWの各々において接近方向D2側の端部の外表面に設けられる。なお、制動部材32Bは、隣り合うカバー部材28の上段側のカバー部材28を構成する一対の側方の壁部28SWの各々において隔離方向D1側の端部の内表面に設けられてもよい。また、制動部材32Bは、一対の側方の壁部28SWの一方にのみ設けられてもよい。
【0047】
本変形例では、隣り合うカバー部材28における上段側の上方の壁部28UWと下段側の上方の壁部28UWとが傾斜しているため、隣り合うカバー部材28の伸長の程度が大きくなるほど、傾斜した上方の壁部28UWの間の隙間が狭くなる(
図9B、
図10B参照)。この隙間には制動部材32Aが配置されるため、隣り合うカバー部材28の伸長に応じて、隣り合うカバー部材28の上段側の壁部28UWと下段側の壁部28UWとに制動部材32Aが挟まって隣り合うカバー部材28の相対速度が減速する(
図9B参照)。
【0048】
一方、隣り合うカバー部材28における上段側の側方の壁部28SWと下段側の側方の壁部28SWとが傾斜しているため、隣り合うカバー部材28の圧縮の程度が大きくなるほど、傾斜した側方の壁部28SWの間の隙間が狭くなる(
図9A、
図10A参照)。この隙間には制動部材32Bが配置されるため、隣り合うカバー部材28の圧縮に応じて、隣り合うカバー部材28の上段側の壁部28SWと下段側の壁部28SWとに制動部材32Bが挟まって隣り合うカバー部材28の相対速度が減速する(
図10A参照)。
【0049】
このように本変形例によれば、複数のカバー部材28が伸長するときと圧縮するときの双方において、制動部材32(32A、32B)により隣り合うカバー部材28の相対速度を減速させることができる。
【0050】
なお、複数のカバー部材28の各々の上方の壁部28UWは案内部18に対して傾斜せず、制動部材32Aが省かれてもよい。このようにした場合、複数のカバー部材28が圧縮するときに、制動部材32Bにより隣り合うカバー部材28の相対速度を減速させることができる。したがって、複数のカバー部材28の各々の上方の壁部28UWは案内部18に対して傾斜せず、制動部材32Aが省かれても、隣り合うカバー部材28が衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【0051】
また、制動部材32Aおよび制動部材32Bの少なくとも一方は、変形例1を適用してもよい。すなわち、制動部材32Aおよび制動部材32Bの少なくとも一方は、突起部材34に設けられてもよい。あるいは、本変形例のように制動部材32Aおよび制動部材32Bが設けられることに加えて、変形例1のように制動部材32が設けられてもよい。
【0052】
また、制動部材32Aおよび制動部材32Bの少なくとも一方は、変形例3を適用してもよい。すなわち、制動部材32Aおよび制動部材32Bの少なくとも一方は、支持部材36の凹部36Aに収容される弾性部材38に設けられてもよい。あるいは、本変形例のように制動部材32Aおよび制動部材32Bが設けられることに加えて、変形例3のように制動部材32が設けられてもよい。
【0053】
また、制動部材32Aは、変形例4を適用してもよい。すなわち、制動部材32Aは、上段側のカバー部材28における隔離方向D1側の開口から外部に露出し、下段のカバー部材28の上方の壁部28UWの外表面と接触してもよい。また、制動部材32Aとカバー部材28との間に弾性部材40が設けられてもよい。
【0054】
(変形例6)
図11は、変形例6の直動装置10を側方からみた模式図である。
図11では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0055】
本変形例の直動装置10では、可動部12を挟んで一方側に配置されるテレスコピックカバー20と、当該可動部12を挟んで他方側に配置されるテレスコピックカバー20とを連結する連結バー42が備えられる。
【0056】
連結バー42は、一方側に配置されるテレスコピックカバー20の中段のカバー部材28と、他方側に配置されるテレスコピックカバー20の中段のカバー部材28とを連結する。なお、カバー部材28の数が4つ以上である場合、最上段のカバー部材28および最下段のカバー部材28以外の2以上の中段のカバー部材28のなかで、一方側と他方側とで同じ段数の中段のカバー部材28同士を連結バー42が連結する。
【0057】
本変形例では、一方側のテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28が伸長して制動部材32がカバー部材28の相対速度を減速させると、連結バー42を通じて、他方側のテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28の圧縮が制動される。
【0058】
これに対し、他方側のテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28が伸長して制動部材32がカバー部材28の相対速度を減速させると、連結バー42を通じて、一方側のテレスコピックカバー20の複数のカバー部材28の圧縮が制動される。
【0059】
このように本変形例によれば、可動部12の一方側の制動部材32が伸縮を制動したときに、連結バー42が可動部12の他方側の圧縮を制動することができる。
【0060】
(変形例7)
上記の実施形態および変形例1~変形例6は、上述した場合以外で、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0061】
以下は、上記の実施形態および変形例1~変形例7から把握し得る発明について記載する。
【0062】
本発明は、工作機械の可動部(12)を案内する案内部(18)を覆うように配置され、可動部(12)の移動に応じて案内部(18)の案内方向に沿って伸縮可能に連結される複数のカバー部材(28)を有するテレスコピックカバー(20)である。複数のカバー部材(28)の各々は、案内方向の一端の開口が他端の開口より狭くなるようにカバー部材(28)を構成する少なくとも1つの壁部(28UW、28SW)が、一端の開口から他端の開口に向かって案内方向に対して傾斜し、複数のカバー部材(28)の各々の傾斜した壁部(28UW、28SW)は、隣り合うカバー部材(28)の傾斜した壁部(28UW、28SW)と対向する。テレスコピックカバー(20)は、少なくとも1つのカバー部材(28)の一方の端部側に設けられ、隣り合うカバー部材(28)の傾斜した壁部(28UW、28SW)との間の隙間に配置される制動部材(32)を備える。これにより、制動部材(32)により隣り合うカバー部材(28)の相対速度を減速させることができ、この結果、当該カバー部材(28)が衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【0063】
複数のカバー部材(28)の各々は、案内方向に沿って可動部(12)から離れる隔離方向(D1)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28UW)を有し、制動部材(32)は、少なくとも1つのカバー部材(28)の隔離方向(D1)側の端部の内表面側、または、少なくとも1つのカバー部材(28)の隔離方向(D1)に対して逆の接近方向(D2)側の端部の外表面側に設けられてもよい。これにより、隣り合うカバー部材(28)の互いに対向する壁部(28UW)の僅かな空間に制動部材(32)を配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0064】
隔離方向(D1)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28UW)は、案内部(18)が固定される側とは反対側に配置され、案内部(18)を挟んで配置される一対の側方の壁部(28SW)と繋がる上方の壁部(28UW)であってもよい。これにより、テレスコピックカバー(20)の上方向に制動部材(32)を配置することができる。
【0065】
制動部材(32)は、少なくとも1つのカバー部材(28)の隔離方向(D1)側の端部の内表面側に設けられ、隔離方向(D1)側の開口から外部に露出し、下段のカバー部材(28)の外表面と接触してもよい。これにより、カバー部材(28)が衝突したときの衝撃を緩和しながら、伸長時に上方の壁部(28UW)に落ちた切粉または切削液が圧縮時にカバー部材(28)の内側に入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0066】
複数のカバー部材(28)の各々は、案内方向に沿って可動部(12)に近づく接近方向(D2)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28SW)を有し、制動部材(32)は、少なくとも1つのカバー部材(28)の接近方向(D2)側の端部の外表面側、または、少なくとも1つのカバー部材(28)の接近方向(D2)に対して逆の隔離方向(D1)側の端部の内表面側に設けられてもよい。これにより、隣り合うカバー部材(28)の互いに対向する壁部(28SW)の僅かな空間に制動部材(32)を配置することができ、省スペース化を図ることができる。なお、隔離方向(D1)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜して対向する壁部(28UW)の間の隙間と、接近方向(D2)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜して対向する壁部(28SW)の間の隙間との双方に制動部材(32A、32B)が設けられる場合には、複数のカバー部材(28)が伸長するときと圧縮するときの双方における相対速度を減速させることができる。
【0067】
接近方向(D2)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28SW)は、案内部(18)を挟んで配置される一対の側方の壁部(28SW)の少なくとも一方であってもよい。これにより、テレスコピックカバー(20)の側方向に制動部材(32)を配置することができる。
【0068】
テレスコピックカバー(20)は、制動部材(32)をカバー部材(28)側に付勢する弾性部材(38、40)を備えてもよい。これにより、制動部材(32)が摩耗する等の要因があっても制動部材(32)とカバー部材(28)との摩擦力が変化することを抑制することができる。
【0069】
複数のカバー部材(28)の各々は、案内方向に沿って可動部(12)から離れる隔離方向(D1)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28UW)、および、接近方向(D2)に向かうほど案内部(18)に近づくように傾斜する壁部(28SW)の少なくとも一方を有し、テレスコピックカバー(20)は、少なくとも1つのカバー部材(28)の接近方向(D2)側の端部に設けられ、カバー部材(28)から隙間に突出する突起部材(34)を備え、制動部材(32)は、突起部材(34)の先端に設けられてもよい。これにより、カバー部材(28)の壁面に制動部材(32)を設ける場合に比べて設置スペースが広くなり、設計自由度を高め易くなる。
【0070】
制動部材(32)は、突起部材(34)と一体に形成されてもよい。これにより、制動部材(32)が突起部材(34)と別体である場合に比べて、制動部材(32)と突起部材(34)とを接続する部品等を削減することができる。
【0071】
テレスコピックカバー(20)は、突起部材(34)に設けられ、制動部材(32)をカバー部材(28)側に付勢する弾性部材(38)を備えてもよい。これにより、制動部材(32)が摩耗する等の要因があっても制動部材(32)とカバー部材(28)との摩擦力が変化することを抑制することができる。
【0072】
制動部材(32)は、衝撃吸収性を有する樹脂であってもよい。これにより、カバー部材(28)と制動部材(32)との摩擦によりカバー部材(28)が損傷することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
10…直動装置 12…可動部
14…モータ 16…動力変換部
18…案内部 20…テレスコピックカバー
22…台座 24…支柱部材
26…継手 28…カバー部材
30…固定部 32…制動部材
34…突起部材 36…支持部材
38、40…弾性部材 42…連結バー