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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】路面電車用トロリ線ハンガ
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/23 20060101AFI20240709BHJP
   H02G 7/05 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60M1/23 H
H02G7/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021018117
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121007
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591048830
【氏名又は名称】日本電設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】大宮 佑介
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 貴規
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116418(JP,A)
【文献】特開2002-370563(JP,A)
【文献】実公昭34-006703(JP,Y1)
【文献】実開昭48-055612(JP,U)
【文献】実公昭49-033772(JP,Y1)
【文献】特開昭55-020943(JP,A)
【文献】特開2009-255804(JP,A)
【文献】登録実用新案第24251(JP,Z1)
【文献】実公昭52-37926(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/20 - 1/24
F16B 7/04
F16L 3/10 - 3/11
F16L 3/16
H02G 7/05 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる平行一対のねじ棒部を具備する本体と、
当該本体の下部に設けられ、路面電車線路のトロリ線を把持するトロリ線把持部材と、
前記トロリ線把持部材の上方に位置して前記本体に上下位置を調整可能に設けられ、前記トロリ線の上方に、これと直交方向に渡されたスパン線を把持するスパン線把持部材とを具備し、
前記スパン線把持部材は、前記一対のねじ棒部の相互間に渡され、これに螺合するナットにより、ねじ棒部上の上下位置を調整自在に設けられることを特徴とする路面電車用トロリ線ハンガ。
【請求項2】
前記スパン線把持部材は、前記スパン線を把持する上下一対のクランプ部材と、当該クランプ部材を上下方向に締め付けるように前記ねじ棒部に螺合される上下各一対のナットとを具備し、
前記下クランプ部材は、前記ねじ棒部を貫通させる一対の挿通部を具備し、
前記上クランプ部材は、一方の前記ねじ棒部を軸周り相対回転自在に貫通させる挿通孔と、他方の前記ねじ棒部を側方から受け入れるように側方へ開放する切欠部を具備することを特徴とする請求項1に記載の路面電車用トロリ線ハンガ。
【請求項3】
前記下クランプ部材と前記上クランプ部材は、互いに上下方向に嵌合して、前記上クランプ部材の一方の前記ねじ棒部に対する軸周り相対回転を阻止する回転止め係合部を具備することを特徴とする請求項2に記載の路面電車用トロリ線ハンガ。
【請求項4】
前記本体は、上部に前記一対のねじ棒部を具備し、下部に当該一対のねじ棒部間を接続する湾曲部を有するU字状ボルトからなり、
前記トロリ線把持部材は、下部において相互間に前記トロリ線を把持し、上部において前記U字状ボルトの湾曲部に挿通される枢ピンで枢支されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の路面電車用トロリ線ハンガ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面電車の線路において、その両側部の支柱間に渡されたスパン線に、トロリ線を、上下位置調整自在に吊り止めるためのハンガに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、路面電車の軌道の上方に架設されるトロリ線Tは、軌道Rの両側方の支柱P,P間にトロリ線Tと直交方向に渡されたスパン線Sに所定距離毎にハンガ1で吊支される。図6に示す従来のハンガ11は、スパン線Sを把持する本体12と、それの下方に支持されるトロリ線把持部材13とを具備する。本体12は、上部の一対のスパン線把持部12a,12bにおいてボルトナット12c,12dでスパン線Sを把持する。トロリ線把持部材3は、上部において本体12の下部に枢ピン13dで枢支され、下部において一対のイヤ片13a,13b間にボルト13cでトロリ線Tを把持する。
他に、ハンガの長さ調整手段としてターンバックル機構を備える微調整用ハンガが提案されている(特許文献1参照)が、トロリ線と吊架線とが平行に延線される線路用であり、長さ調整代もが小さく、路面電車の軌道には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-26623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電車線路においては、エアセクション、エアジョイント、わたり線と呼ばれる電車線が輻輳する箇所では、輻輳する各トロリ線の上下位置を精度よく設定する必要がある。上記従来の路面電車用の架線方式においては、ハンガ11が、スパン線Sとトロリ線Tを把持する間隔が固定されているため、トロリ線Tの吊り位置を上下に変更するためには、スパン線Sを支柱Pから取り外す等して固定位置を上下に調整する必要がある。この作業は効率が悪く、また細かな調整が困難である。
この発明は、路面電車の軌道においてスパン線に吊られたトロリ線の吊り位置を上下に容易に微調整することができる施工作業性が良好な路面電車用のトロリ線ハンガを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明のハンガ1は、路面電車線路においてトロリ線Tを、その上方にこれと直交方向に渡されたスパン線Sの下に吊り止めるものであって、本体2と、本体2の下部に設けられるトロリ線把持部材3と、本体2の上部に設けられるスパン線把持部材4とを具備する。本体2は、上下方向に延びる平行一対のねじ棒部2a,2bを具備する。トロリ線把持部材3は、本体2の下部に設けられ、トロリ線Tを把持する。スパン線把持部材4は、本体2におけるトロリ線把持部材3の上方に上下位置を調整可能に設けられ、スパン線Sを把持する。スパン線把持部材4は、一対のねじ棒部2a,2bの相互間に渡され、これに螺合するナット5,6により、ねじ棒部2a,2bに対する上下位置を調整自在に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
この発明のハンガ1によれば、支柱Pに対するスパン線Sの吊り位置を変更する大がかりな作業を行うことなく、トロリ線Tの高さを微細かつ容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のハンガの斜視図である。
図2図1のハンガの正面図である。
図3図1のハンガの側面図である。
図4図1のハンガの平面図である。
図5】路面電車線路の概略的構成図である。
図6】従来のハンガを示すもので、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の一形態を説明する。
図1ないし図4において、ハンガ1は、本体2、トロリ線把持部材3、スパン線把持部材4を具備し、スパン線Sの下にトロリ線Tを吊り止める。図5に示すように、路面電車線路におけるスパン線Sは、トロリ線Tの上方に、これと直交方向に渡され、両側の支柱Pにバンド金具Bによって係止される。
【0009】
本体2は、上下方向に延びる平行一対のねじ棒部2a,2bを具備する。トロリ線把持部材3は、本体2の下部に設けられ、トロリ線Tを把持する。スパン線把持部材4は、本体2の上部に、上下位置を調整可能に設けられ、スパン線Sを把持する。
【0010】
スパン線把持部材4は、ねじ棒部2a,2bの相互間に渡され、これに螺合するナット5,6により、ねじ棒部2a,2bに対する上下位置を調整自在に設けられる。
【0011】
本体2は、上部に一対のねじ棒部2a,2bを具備し、下部にねじ棒部2a,2b間を接続する湾曲部2cを有する縦長のU字状ボルトからなる。
【0012】
スパン線把持部材4は、スパン線Sを把持する上下一対のクランプ部材7,8と、当該クランプ部材7,8を上下方向に締め付けるようにねじ棒部2a,2bに螺合される上下各一対のナット5(5a,5b),6(6a,6b)とを具備する。
【0013】
下クランプ部材8は、ねじ棒部2a,2bを貫通させる一対の挿通部8a,8b、これらの中間部上面に設けられる、スパン線Sを受け入れる把持凹部8c、一方の挿通部8bの側方端部に位置して上方へ突出するように設けられる係合突起8dを備える。なお、図示の実施形態において挿通部8a,8bは、ボルト挿通孔で構成されるが、いずれか一方は側方に開放する切欠として構成することができる。
【0014】
上クランプ部材7は、一方のねじ棒部2aを軸周り相対回転自在に貫通させる挿通孔7aと、他方のねじ棒部2bを側方から受け入れるように側方へ開放する切欠部7bと、中間部下面に設けられ、スパン線Sを受け入れる把持凹部7cと、下クランプ部材8の係合突起8dに上下方向に嵌合する嵌合凹部7dを具備する。嵌合凹部7dと係合突起8dは、上下方向に嵌合して、上クランプ部材7がねじ棒部2aに対して軸周りに相対回転するのを阻止する回転止め係合部を構成する。
【0015】
トロリ線把持部材3は、下部において相互間にトロリ線Tを把持する一対のイヤ片3a,3bと、これらを締め付けるボルト3cと、イヤ片3a,3bの上部を本体2の湾曲部2cに枢支する枢ピン3dを具備する。
【0016】
ハンガ1をスパン線Sとトロリ線Tの間に装着する場合には、トロリ線把持部材3でトロリ線Tを把持した後、トロリ線Tの高さ位置を考慮して、上ナット5の高さを調整することにより、上クランプ部材7の位置を決定する。これにより、トロリ線Tの高さ位置が定まる。次に、下ナット6を下降させて上ナット5との間隔を広げ、上クランプ部材7を引き上げることで、係合突起8dと嵌合凹部7dとの係合を解く。次いで、図4に仮想線で示すように、上クランプ部材7を一方のねじ棒部2aを中心に回転させ、下クランプ部材8との間を開放する。この状態で、ねじ棒部2a,2b間にスパン線Sを受け入れ、下クランプ部材8の把持凹部8cに載せ、上クランプ部材7を回転させて下クランプ部材8上に戻し、係合突起8dと嵌合凹部7dとを上下方向に嵌合させる。下ナット6を下クランプ部材8と共に上昇させて、上下クランプ部材7,8間にスパン線Sを把持する。
【0017】
スパン線Sの高さ位置は一定で、本体2に対してスパン線把持部4を上昇させれば、スパン線Sに対してトロリ線把持部材3が下がり、トロリ線Tの吊り位置が下がる。逆にすれば、トロリ線Tの吊り位置は上がる。
【0018】
トロリ線Tの上下位置の調整のために支柱Pに対するスパン線Sの支持位置を変更する必要がない。調整作業にあたって、取り外す部品がないので、紛失のおそれがなく管理が容易である。
【符号の説明】
【0019】
1 ハンガ
2 本体
2a ねじ棒部
2b ねじ棒部
2c 湾曲部
3 トロリ線把持部
3a イヤ片
3b イヤ片
3c ボルト
3d 枢ピン
4 スパン線把持部材
5 上ナット
6 下ナット
7 上クランプ部材
7a 挿通孔
7b 切欠部
7c 把持凹部
7d 嵌合凹部
8 下クランプ部材
8a 挿通部
8b 挿通部
8c 把持凹部
8d 係合突起
B バンド金具
P 支柱
R 軌道
S スパン線
T トロリ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6