(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】コネクタ付き電線の製造方法、及び、コネクタ付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 43/01 20060101AFI20240709BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20240709BHJP
H01R 4/2433 20180101ALI20240709BHJP
【FI】
H01R43/01 Z
H01R43/20 Z
H01R4/2433
(21)【出願番号】P 2021025298
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋人
(72)【発明者】
【氏名】原 涼介
(72)【発明者】
【氏名】河辺 一仁
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-58131(JP,A)
【文献】特開平8-7968(JP,A)
【文献】特開2021-57345(JP,A)
【文献】特開平10-172621(JP,A)
【文献】特開平8-37044(JP,A)
【文献】特開2011-146332(JP,A)
【文献】特開2004-71417(JP,A)
【文献】特開平1-225084(JP,A)
【文献】米国特許第4291935(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00-43/02
H01R 43/027-43/28
H01R 4/00-4/22
H01R 4/24-4/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に取り付けられた端子がコネクタに収容されたコネクタ付き電線を製造するための、コネクタ付き電線の製造方法であって、
前記電線は、導電性の複数の素線を有する導体芯線を有し、
前記端子は、前記導体芯線の端末部が位置する箇所に設けられる貫通孔と、前記導体芯線の前記端末部から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃と、を有し、
前記コネクタは、
前記端子の前記貫通孔が位置する箇所に設けられる開口部を有する第1壁部と、前記第1壁部に対して相対移動可能な第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部とが前記端子を取り囲むように配置されて画成される端子収容室と、を有し、
当該製造方法は、
前記コネクタの前記開口部と前記端子の前記貫通孔とが連通するように、前記端子と前記第1壁部とを位置合わせしながら、前記端子を前記コネクタに配置する工程と、
前記電線の前記端末部が前記貫通孔上に配置されるように、前記電線と前記端子とを位置合わせしながら、前記端末部から離れた箇所を前記圧接刃の間に圧入して前記導体芯線と前記圧接刃とを圧接する工程と、
前記開口部及び前記貫通孔を挿通する第1治具と、前記第1治具に向かい合う第2治具と、によって前記電線の前記端末部を挟んで、前記端末部を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部を互いに接合する工程と、
前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記端子を取り囲むように前記第2壁部を移動させて、前記端子を前記端子収容室に収容する工程と、を備える、
コネクタ付き電線の製造方法。
【請求項2】
電線と、前記電線に取り付けられる端子と、前記端子を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付き電線であって、
前記電線は、
導電性の複数の素線を有する導体芯線と、前記導体芯線の端末部を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部が互いに接合される接合部と、を有し、
前記端子は、
前記導体芯線の前記接合部が位置する箇所に設けられる貫通孔と、前記導体芯線の前記端末部から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃と、を有し、
前記コネクタは、
前記端子の前記貫通孔が位置する箇所に設けられる開口部を有する、
コネクタ付き電線。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタ付き電線において、
前記コネクタは、
前記開口部を有する第1壁部と、前記第1壁部に対して相対移動可能な第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部とが前記端子を取り囲むように配置されて画成される端子収容室と、を有する、
コネクタ付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に取り付けられた端子がコネクタに収容されたコネクタ付き電線、及び、コネクタ付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子に設けた圧接刃で電線の導体芯線を挟みながら押圧接触する(即ち、圧接する)ことで端子と電線とを導通接続した端子付き電線が提案されている。この種の端子付き電線は、典型的には、導体芯線が絶縁被覆に覆われた状態の電線をそのまま圧接刃の間に押し込んで、圧接刃によって絶縁被覆を切り裂きながら圧接刃を導体芯線に接触させることで、導通接続の作業性を高めるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。このように製造された端子付き電線は、例えば、コネクタの端子収容室に収容されて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の導体芯線が複数本の素線から構成されている場合(例えば、複数本の素線が束ねられている場合)、圧接刃は、その構造上、一部の素線には直接的に接触するものの、他の素線には直接的には接触できない。そこで、この種の端子付き電線では、素線の側面同士を密着させて素線間の導通を図ることで、圧接刃が直接的には接触できない素線と、圧接刃と、の間の導通(即ち、間接的な接続)を図るようになっている。しかし、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等で素線が構成される場合、素線の表面に自然生成する絶縁性の酸化皮膜に起因して素線間の導通性が低いため、圧接刃が直接的に接触する一部の素線のみが端子と電線との間の導通に寄与し、圧接刃が直接的には接触できない他の素線は実質的にその導通に寄与しないことになる。端子と電線との間の電気的接続の信頼性を高める観点から、複数の素線の全体と圧接刃との間の良好な導通を実現することが望ましい。更に、そのように電線に取り付けられた端子がコネクタに収容されたコネクタ付き電線の生産性を向上することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つ生産性に優れたコネクタ付き電線の製造方法、及び、コネクタ付き電線の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ付き電線の製造方法、及び、コネクタ付き電線は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
電線に取り付けられた端子がコネクタに収容されたコネクタ付き電線を製造するための、コネクタ付き電線の製造方法であって、
前記電線は、導電性の複数の素線を有する導体芯線を有し、
前記端子は、前記導体芯線の端末部が位置する箇所に設けられる貫通孔と、前記導体芯線の前記端末部から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃と、を有し、
前記コネクタは、
前記端子の前記貫通孔が位置する箇所に設けられる開口部を有する第1壁部と、前記第1壁部に対して相対移動可能な第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部とが前記端子を取り囲むように配置されて画成される端子収容室と、を有し、
当該製造方法は、
前記コネクタの前記開口部と前記端子の前記貫通孔とが連通するように、前記端子と前記第1壁部とを位置合わせしながら、前記端子を前記コネクタに配置する工程と、
前記電線の前記端末部が前記貫通孔上に配置されるように、前記電線と前記端子とを位置合わせしながら、前記端末部から離れた箇所を前記圧接刃の間に圧入して前記導体芯線と前記圧接刃とを圧接する工程と、
前記開口部及び前記貫通孔を挿通する第1治具と、前記第1治具に向かい合う第2治具と、によって前記電線の前記端末部を挟んで、前記端末部を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部を互いに接合する工程と、
前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記端子を取り囲むように前記第2壁部を移動させて、前記端子を前記端子収容室に収容する工程と、を備える、
コネクタ付き電線の製造方法であること。
[2]
電線と、前記電線に取り付けられる端子と、前記端子を収容するコネクタと、を備えるコネクタ付き電線であって、
前記電線は、
導電性の複数の素線を有する導体芯線と、前記導体芯線の端末部を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部が互いに接合される接合部と、を有し、
前記端子は、
前記導体芯線の前記接合部が位置する箇所に設けられる貫通孔と、前記導体芯線の前記端末部から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃と、を有し、
前記コネクタは、
前記端子の前記貫通孔が位置する箇所に設けられる開口部を有する、
コネクタ付き電線であること。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ付き電線において、
前記コネクタは、
前記開口部を有する第1壁部と、前記第1壁部に対して相対移動可能な第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部とが前記端子を取り囲むように配置されて画成される端子収容室と、を有する、
コネクタ付き電線であること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタ付き電線の製造方法によれば、連通するように配置されたコネクタの開口部と端子の貫通孔とを通じて挿通される第1治具と、第1治具に向かい合う第2治具とで、導体芯線の端末部を挟んで、端末部を構成する複数の素線の少なくとも一部が互いに接合される。そして、第1壁部と前記第2壁部とによって前記端子を取り囲むように第2壁部を移動させて、端子を端子収容室に収容する。電線の端末部の素線が接合されることで、素線間の導通性が向上するため、端子の圧接刃が直接的に接触する導体芯線の外側に位置する素線だけでなく、圧接刃が直接的には接触できない導体芯線の内側に位置する素線も、端子と導体芯線との間の導通に寄与することになる。よって、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上できる。更に、この接合をコネクタ上に端子を配置した状態で行うため、別途準備した端子付き電線をコネクタに収容する場合に比べ、コネクタ付き電線の生産性を向上できる。したがって、本構成の製造方法は、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つコネクタ付き電線の生産性に優れている。
【0008】
上記[2]の構成のコネクタ付き電線によれば、電線は、複数の素線を有する導体芯線を有する。導体芯線が、端子の圧接刃に圧接されるとともに、導体芯線の端末部を構成する複数の素線の少なくとも一部が、互いに接合される。電線の端末部の素線が接合されることで、素線間の導通性が向上するため、端子の圧接刃が直接的に接触する導体芯線の外側に位置する素線だけでなく、圧接刃が直接的には接触できない導体芯線の内側に位置する素線も、端子と導体芯線との間の導通に寄与することになる。よって、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上できる。更に、端子の貫通孔とコネクタの開口部とが連通するように配置されているため、貫通孔及び開口部を通じて接合用の治具を挿入することで、端子をコネクタ上に配置した状態で、導体芯線の端末部の接合を行うことができる。したがって、本構成のコネクタ付き電線は、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つコネクタ付き電線の生産性に優れている。
【0009】
上記[3]の構成のコネクタ付き電線によれば、開口部を有する第1壁部と、第1壁部に対して相対移動可能な第2壁部とで、端子を取り囲むことで、端子収容室が画成される。よって、開口部を通じた導体芯線の端末部の接合の際には、接合作業を妨げない位置に第2壁部を退避させることで、接合作業の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つ生産性に優れたコネクタ付き電線の製造方法、及び、コネクタ付き電線を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ付き電線の斜視図であり、
図1(a)は、カバー部が閉じた状態を示し、
図1(b)は、カバー部が開いた状態を示す。
【
図2】
図2(a)は、
図1(b)に示す端子の斜視図であり、
図2(b)は、
図1(b)に示す電線及び端子の側面図である。
【
図3】
図3(a)は、カバー部が開いた状態にあるコネクタに端子が配置された状態を示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA部の拡大図であり、
図3(c)は、
図3(a)に示す端子に電線が配置された状態を示す平面図であり、
図3(d)は、
図3(c)のB部の拡大図である。
【
図4】
図4は、圧接パンチによる電線の導体圧接部(圧接刃)への押し込み、クリンパによる被覆加締部の電線への圧着、及び、上下一対の圧縮ピンによる導体芯線の端末部の押し潰し、が一括して行われる様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、圧接パンチによる電線の導体圧接部(圧接刃)への押し込み、クリンパによる被覆加締部の電線への圧着、及び、上下一対の圧縮ピンによる導体芯線の端末部の押し潰し、が一括して行われる様子を示す側面図であり、
図5(b)は、導体芯線の端末部の押し潰し前の状態における
図5(a)のC部の拡大図であり、
図5(c)は、導体芯線の端末部の押し潰しにより接合部が形成された状態における
図5(b)に対応する図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るコネクタ付き電線の斜視図であり、
図6(a)は、本体部とカバー部とが分離した状態を示し、
図6(b)は、本体部にカバー部が取り付けられた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図5を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ付き電線1について説明する。
図1等に示すように、コネクタ付き電線1では、電線10に取り付けられた端子20がコネクタ60に収容されている。電線10は、端子20に設けられた後述する複数の圧接刃42で電線10の導体芯線11を挟みながら押圧接触することで、端子20と導通接続されている。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、端子20の延在方向と一致し、前側及び後側はそれぞれ、端子20の先端側及び基端側に対応している。以下、コネクタ付き電線1を構成する各部材について順に説明する。
【0015】
まず、電線10について説明する。
図2(b)に示すように、電線10は、導体芯線11と、導体芯線11の外周を覆う絶縁被覆12と、からなる。導体芯線11は、本例では、複数本の素線の集合体である。各素線は、アルミニウム又はアルミニウム合金などの導電性を有する金属によって形成されている。絶縁被覆12は、絶縁性を有する樹脂により構成されている。本例では、電線10の先端部分にて、絶縁被覆12が除去されて導体芯線11が所定の長さだけ露出している。
【0016】
露出した導体芯線11における端末部11a(
図5(b)等参照)は、後に、後述する上下一対の圧縮ピン130a,130b(
図5(a)等参照)によって押し潰されて、端末部11aを構成する複数の素線(の少なくとも一部)が互いに接合(一体化)されることになる。
【0017】
次いで、端子20について説明する。端子20は、本例では、母材としての導電性の金属板(例えば、銅板、銅合金)の表面がメッキ材(メッキ層)で覆われた金属板材に対して、プレス加工及び曲げ加工等が施されることで、形成されている。端子20は、
図2に示すように、端子接続部30、連結部35、導体圧接部40、及び被覆加締部50を一体に備えている。端子接続部30、連結部35、導体圧接部40、及び被覆加締部50は、この順で、前側から後側に向けて前後方向に沿って一列に並んでいる。
【0018】
端子接続部30は、端子20のうち、相手側端子と接続される部分であり、本例では、前後方向に延びる矩形筒状の形状を有する。導体圧接部40は、電線10の先端部における絶縁被覆12に覆われた導体芯線11が圧接により接続される部分である。導体圧接部40は、前後方向に延びる底板部及び一対の側板部からなる板状部41を有する。板状部41には、複数(本例では3つ)の圧接刃42が、前後方向に間隔を空けて並ぶように設けられている。
【0019】
複数の圧接刃42の各々は、幅方向に隙間(スロット幅)を空けて幅方向に対向配置された一対の平板状の刃部43で構成されている。各刃部43は、本例では、板状部41の側板部から幅方向内側(他方の側板)に向けて切り起こされた切り起し片である。圧接刃42(一対の刃部43)のスロット幅は、導体芯線11の外径より小さい。
【0020】
被覆加締部50は、電線10における、導体芯線11が導体圧接部40(圧接刃42)により圧接される箇所より後側の絶縁被覆12に、加締めにより圧着される部分であり、底板部51と、底板部51の幅方向両側縁から上方に延びる一対の加締片52と、を備える。
【0021】
連結部35は、端子接続部30と導体圧接部40とを前後方向に繋ぐ部分である。連結部35は、導体圧接部40の板状部41と同様、前後方向に延びる底板部及び一対の側板部により構成されている。連結部35の底板部には、上下方向に貫通する貫通孔36が形成されている(
図2(a)参照)。
【0022】
次いで、コネクタ60について説明する。樹脂成形品であるコネクタ60は、
図1に示すように、本体部70と、本体部70にヒンジ90(
図1(a)参照)によって開閉可能に連結されたカバー部80と、を備える。
【0023】
本体部70は、
図1(b)に示すように、矩形平板状の底板部71を備える。底板部71の上面には、上方に突出し且つ前後方向に延びる複数の壁部72が、所定のパターンにて幅方向に間隔を空けて並ぶように一体に設けられている。この結果、上方に開口し且つ前後方向に延びる複数(本例では、6つ)の端子収容室73が、底板部71及び複数の壁部72によって、幅方向に並ぶように画成されている。
【0024】
複数の端子収容室73の前側領域は、矩形平板状の天板部74によって、上方開口が塞がれている。天板部74は、複数の壁部72と一体に設けられ且つ底板部71と上下方向に対向配置されている。よって、本例では、各端子収容室73は、前側領域では、周囲が全周に亘って囲まれた前後方向に延びる矩形状の孔(貫通孔)であり、前側領域の後側の領域(後側領域)では、上方が開口し且つ前後方向に延びる矩形状の凹部である。
【0025】
図3に示すように、底板部71における、複数の端子収容室73の後側領域の前端近傍の部分(前側領域との境界近傍の部分)に対応する箇所にはそれぞれ、上下方向に貫通する開口部75が形成されている。
図1(b)に示すように、底板部71における、幅方向両側の端面の後端部には、一対の係止爪76が一体で形成されている。
【0026】
カバー部80は、
図1に示すように、矩形平板状のカバー本体部81を備える。カバー本体部81は、ヒンジ90によって、本体部70の天板部74に開閉可能に連結されている(
図1(a)参照)。カバー本体部81が開いた状態では、
図1(b)に示すように、複数の端子収容室73の後側領域が上方に開口した状態となり、カバー本体部81が閉じた状態では、
図1(a)に示すように、複数の端子収容室73の後側領域の上方開口がカバー本体部81によって塞がれる。
【0027】
以下、説明の便宜上、カバー部80についての「前」、「後」、「上」、及び「下」は、カバー本体部81が閉じた状態における「前」、「後」、「上」、及び「下」を意味するものとする。
【0028】
カバー本体部81の下面には、本体部70の複数の壁部72に対応して、下方に突出し且つ前後方向に延びる複数の壁部82が、幅方向に間隔を空けて並ぶように一体に設けられている。カバー本体部81における、幅方向両側の端面の後端部には、本体部70の一対の係止爪76に対応して、一対の係止片83が一体で形成されている。以上、コネクタ付き電線1を構成する各部材について説明した。
【0029】
次いで、
図3~
図5を参照しながら、コネクタ付き電線1の組み付け手順について説明する。まず、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、カバー部80(カバー本体部81)が開いた状態にあるコネクタ60の本体部70の端子収容室73に、端子20が配置される。より具体的には、端子20は、端子接続部30が端子収容室73の前側領域(貫通孔)に後側から挿入され、且つ、本体部70の開口部75と端子20の貫通孔36とが上下方向に連通するように、且つ、導体圧接部40及び被覆加締部50が端子収容室73の後側領域(上方が開口する凹部)に載置されるように、端子収容室73に配置される。
【0030】
次いで、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、端子収容室73に配置された端子20に、電線10が配置される。より具体的には、電線10は、導体芯線11の端末部11aが端子20の貫通孔36の上に位置するように(
図5(b)参照)、且つ、絶縁被覆12が導体圧接部40及び被覆加締部50に載置されるように、端子20に配置される。
【0031】
次いで、電線10の導体圧接部40(圧接刃42)への押し込み、被覆加締部50の電線10への圧着、及び、導体芯線11の端末部11aの押し潰し、が一括して行われる。
図4及び
図5に示すように、電線10の導体圧接部40(圧接刃42)への押し込みは、圧接パンチ110を用いて行われ、被覆加締部50の電線10への圧着は、クリンパ120を用いて行われ、導体芯線11の端末部11aの押し潰しは、上下一対の圧縮ピン130a,130bを用いて行われる。
【0032】
具体的には、上述したようにコネクタ60(端子収容室73)の上に端子20及び電線10が配置された状態で、
図4に示すように、導体圧接部40に対応する箇所に位置する電線10が、圧接パンチ110を用いて上方から押し込まれる。これにより、複数の圧接刃42の各々について、一対の刃部43によって絶縁被覆12が切り裂かれると共に、導体芯線11が一対の刃部43によって幅方向に挟まれた状態で一対の刃部43と押圧接触する。これにより、電線10の導体芯線11と、複数の圧接刃42(即ち、導体圧接部40)とが、導通接続する。ただし、導体芯線11を構成する複数の素線のうち、導体芯線11の外側に位置する一部の素線のみが圧接刃42と直接的に接触し、残りの素線は圧接刃42と直接的に接触できない。
【0033】
更に、
図4に示すように、被覆加締部50の一対の加締片52が、クリンパ120を用いて上方から押し込まれる。これにより、被覆加締部50に対応する箇所に位置する電線10の絶縁被覆12に対して被覆加締部50が圧着される。
【0034】
更に、
図4、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、電線10の導体芯線11の端末部11aが、本体部70の開口部75及び端子20の貫通孔36の双方に下側から挿通され且つ端末部11aの下側に位置する圧縮ピン130bと、圧縮ピン130bと対向配置され且つ端末部11aの上側に位置する圧縮ピン130aとを用いて、上下方向に押し潰される。これにより、
図5(c)に示すように、端末部11aを構成する複数の素線(の少なくとも一部)が互いに接合されて、接合部11bが得られる。このように、電線10の端末部11aの素線が接合されて接合部11bが得られることで、接合部11bにおいて素線同士が金属間結合するため、素線間の導通性が向上する。このため、端子20の圧接刃42が直接的に接触する導体芯線11の外側に位置する一部の素線と、圧接刃42が直接的には接触できない導体芯線11の残りの素線とが、接合部11bを介して確実に導通接続する。この結果、端子20の圧接刃42が直接的に接触する導体芯線11の外側に位置する一部の素線だけでなく、圧接刃42が直接的には接触できない導体芯線11の残りの素線も、端子20と導体芯線11との間の導通に寄与することになる。
【0035】
以上説明した、圧接パンチ110による電線10の導体圧接部40(圧接刃42)への押し込み、クリンパ120による被覆加締部50の電線10への圧着、及び、上下一対の圧縮ピン130a,130bによる導体芯線11の端末部11aの押し潰しは、複数の端子収容室73の各々に対して順に、一括して行われていく。
【0036】
その後、
図1(a)に示すように、カバー部80(カバー本体部81)が閉じられて、本体部70の一対の係止爪76とカバー部80の一対の係止片83とが係合する。この係合により、カバー部80が閉じた状態が維持される。これにより、コネクタ付き電線1の組み付けが完了する。
【0037】
カバー部80が閉じた状態では、
図1(a)に示すように、本体部70の複数の壁部72とカバー部80の複数の壁部82とが上下方向に互いに突き合わされるように、複数の端子収容室73の後側領域の上方開口が、カバー本体部81によって塞がれる。これにより、各端子収容室73の後側領域も、前側領域と同様、周囲が全周に亘って囲まれた前後方向に延びる矩形状の孔(貫通孔)となる。換言すれば、各端子収容室73が、前後方向の全域に亘って、端子20を取り囲むように前後方向に連続して延びる矩形状の孔(貫通孔)となる。
【0038】
(作用・効果)
以上、本実施形態に係るコネクタ付き電線1の製造方法によれば、連通するように配置されたコネクタ60の開口部75と端子20の貫通孔36とを通じて挿通される圧縮ピン130bと、圧縮ピン130bに向かい合う圧縮ピン130aとで、導体芯線11の端末部11aを挟んで、端末部11aを構成する複数の素線の少なくとも一部が互いに接合される。そして、本体部70とカバー部80とによって端子20を取り囲むようにカバー部80を閉じて、端子20を端子収容室73に収容する。電線10の端末部11aの素線が接合されることで、素線間の導通性が向上するため、端子20の圧接刃42が直接的に接触する導体芯線11の外側に位置する素線だけでなく、圧接刃42が直接的には接触できない導体芯線11の内側に位置する素線も、端子20と導体芯線11との間の導通に寄与することになる。よって、端子20と電線10との間の電気的接続の信頼性を向上できる。更に、この接合をコネクタ60上に端子20を配置した状態で行うため、別途準備した端子付き電線をコネクタに収容する場合に比べ、コネクタ付き電線1の生産性を向上できる。したがって、本実施形態に係る製造方法は、端子20と電線10との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つコネクタ付き電線1の生産性に優れている。
【0039】
更に、本実施形態に係るコネクタ付き電線1によれば、電線10は、複数の素線を有する導体芯線11を有する。導体芯線11が、端子の圧接刃42に圧接されるとともに、導体芯線11の端末部11aを構成する複数の素線の少なくとも一部が、互いに接合される。電線10の端末部11aの素線が接合されることで、素線間の導通性が向上するため、端子20の圧接刃42が直接的に接触する導体芯線11の外側に位置する素線だけでなく、圧接刃42が直接的には接触できない導体芯線11の内側に位置する素線も、端子20と導体芯線11との間の導通に寄与することになる。よって、端子20と電線10との間の電気的接続の信頼性を向上できる。更に、端子20の貫通孔36とコネクタ60の開口部75とが連通するように配置されているため、貫通孔36及び開口部75を通じて接合用の治具(圧縮ピン130b)を挿入することで、端子20をコネクタ60上に配置した状態で、導体芯線11の端末部11aの接合を行うことができる。したがって、本実施形態に係るコネクタ付き電線1は、端子20と電線10との間の電気的接続の信頼性を向上させながら且つコネクタ付き電線1の生産性に優れている。
【0040】
更に、本実施形態に係るコネクタ付き電線1によれば、開口部75を有する本体部70と、本体部70に対して相対移動可能なカバー部80とで、端子20を取り囲むことで、端子収容室73が画成される。よって、開口部75を通じた導体芯線11の端末部11aの接合の際には、接合作業を妨げない位置にカバー部80を退避させることで、接合作業の作業性を向上できる。
【0041】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、コネクタ60を構成する本体部70とカバー部80とがヒンジ90を介して連結されている。これに対し、
図6(a)に示すように、コネクタ60を構成する本体部70とカバー部80とが互いに独立していてもよい。
【0043】
図6に示す変形例では、本体部70において、天板部74が省略されて、各端子収容室73は、前後方向全域に亘って、上方が開口し且つ前後方向に延びる矩形状の凹部となっている。上記実施形態と同様、圧接パンチ110による電線10の導体圧接部40への押し込み、クリンパ120による被覆加締部50の電線10への圧着、及び、上下一対の圧縮ピン130a,130bによる導体芯線11の端末部11aの押し潰しが、複数の端子収容室73の各々に対して順に、一括して行われた後、
図6(b)に示すように、カバー部80(カバー本体部81)が、本体部70の上に積層されるように本体部70に組み付けられて、本体部70の一対の係止爪76とカバー部80の一対の係止片83とが係合する。この係合により、カバー部80が積層された状態が維持される。これにより、コネクタ付き電線1の組み付けが完了する。
【0044】
カバー部80が積層された状態では、
図6(b)に示すように、本体部70の複数の壁部72とカバー部80の複数の壁部82とが上下方向に互いに突き合わされるように、複数の端子収容室73の上方開口が、前後方向全域に亘ってカバー本体部81によって塞がれる。これにより、各端子収容室73が、前後方向の全域に亘って、端子20を取り囲むように前後方向に連続して延びる矩形状の孔(貫通孔)となる。
【0045】
更に、上記実施形態、及び、
図6に示す変形例において、上下一対の圧縮ピン130a,130bを用いて電線10の導体芯線11の端末部11aを押し潰して接合部11bを形成する際、上下一対の圧縮ピン130a,130bの少なくとも一方(好ましくは、圧縮ピン130a)に超音波振動を印加して、接合部11bにおける接合の冗長性を向上させてもよい。
【0046】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ付き電線1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(10)に取り付けられた端子(20)がコネクタ(60)に収容されたコネクタ付き電線1を製造するための、コネクタ付き電線の製造方法であって、
前記電線(10)は、導電性の複数の素線を有する導体芯線(11)を有し、
前記端子(20)は、前記導体芯線(11)の端末部(11a)が位置する箇所に設けられる貫通孔(36)と、前記導体芯線(11)の前記端末部(11a)から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃(42)と、を有し、
前記コネクタ(60)は、
前記端子(20)の前記貫通孔(36)が位置する箇所に設けられる開口部(75)を有する第1壁部(70)と、前記第1壁部(70)に対して相対移動可能な第2壁部(80)と、前記第1壁部(70)と前記第2壁部(80)とが前記端子(20)を取り囲むように配置されて画成される端子収容室(73)と、を有し、
当該製造方法は、
前記コネクタ(60)の前記開口部(75)と前記端子(20)の前記貫通孔(36)とが連通するように、前記端子(20)と前記第1壁部(70)とを位置合わせしながら、前記端子(20)を前記コネクタ(60)に配置する工程と、
前記電線(10)の前記端末部(11a)が前記貫通孔(36)上に配置されるように、前記電線(10)と前記端子(20)とを位置合わせしながら、前記端末部(11a)から離れた箇所を前記圧接刃(42)の間に圧入して前記導体芯線(11)と前記圧接刃(42)とを圧接する工程と、
前記開口部(75)及び前記貫通孔(36)を挿通する第1治具(130b)と、前記第1治具(130b)に向かい合う第2治具(130a)と、によって前記電線(10)の前記端末部(11a)を挟んで、前記端末部(11a)を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部を互いに接合する工程と、
前記第1壁部(70)と前記第2壁部(80)とによって前記端子(20)を取り囲むように前記第2壁部(80)を移動させて、前記端子(20)を前記端子収容室(73)に収容する工程と、を備える、
コネクタ付き電線の製造方法。
[2]
電線(10)と、前記電線(10)に取り付けられる端子(20)と、前記端子(20)を収容するコネクタ(60)と、を備えるコネクタ付き電線(1)であって、
前記電線(10)は、
導電性の複数の素線を有する導体芯線(11)と、前記導体芯線(11)の端末部(11a)を構成する前記複数の前記素線の少なくとも一部が互いに接合される接合部(11b)と、を有し、
前記端子(20)は、
前記導体芯線(11)の前記接合部(11b)が位置する箇所に設けられる貫通孔(36)と、前記導体芯線(11)の前記端末部(11a)から離れた箇所を挟んで圧接する圧接刃(42)と、を有し、
前記コネクタ(60)は、
前記端子(20)の前記貫通孔(36)が位置する箇所に設けられる開口部(75)を有する、
コネクタ付き電線(1)。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ付き電線(1)において、
前記コネクタ(60)は、
前記開口部(75)を有する第1壁部(70)と、前記第1壁部(70)に対して相対移動可能な第2壁部(80)と、前記第1壁部(70)と前記第2壁部(80)とが前記端子(20)を取り囲むように配置されて画成される端子収容室(73)と、を有する、
コネクタ付き電線(1)。
【符号の説明】
【0047】
1 コネクタ付き電線
10 電線
11 導体芯線
11a 端末部
11b 接合部
20 端子
36 貫通孔
42 圧接刃
60 コネクタ
70 本体部(第1壁部)
73 端子収容室
75 開口部
80 カバー部(第2壁部)
130a 圧縮ピン(第2治具)
130b 圧縮ピン(第1治具)