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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アナログ入出力回路
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/02 20060101AFI20240709BHJP
   G08C 25/00 20060101ALI20240709BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G08C19/02 A
G08C25/00 D
H02H7/00 B
H02J1/00 309W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021033299
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134268
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】田島 良一
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3152324(JP,U)
【文献】特開平11-86177(JP,A)
【文献】特開2000-329799(JP,A)
【文献】特開2008-131731(JP,A)
【文献】特開平11-98822(JP,A)
【文献】特開2011-147285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 19/00-19/48
G08C 25/00-25/04
H02H 7/00- 7/30
H02J 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測機器で用いられて、4-20mA信号または1-5V信号からなるアナログ信号を入出力するアナログ入出力回路であって、
外部機器と電気的に接続することにより、信号入力端子から入力された前記アナログ信号を出力するアナログ出力端子と、
一端が前記信号入力端子に接続されるとともに、他端が接地電位に接続されて、前記信号入力端子から前記アナログ信号として入力された前記4-20mA信号を前記1-5V信号に変換して、前記アナログ出力端子から出力するシャント抵抗と、
入力された遮断制御信号が一定の負電位以下の電位を示す場合には、前記信号入力端子と前記シャント抵抗の一端との間を短絡し、前記遮断制御信号が前記一定の負電位より高い電位を示す場合には、前記信号入力端子と前記シャント抵抗の一端との間を開放して、前記シャント抵抗に流れる過電流を抑止するように構成された遮断回路と、
前記アナログ出力端子に前記外部機器が正常に接続されている正常接続時には、前記一定の負電位以下の電位を示す前記遮断制御信号を前記遮断回路へ出力し、前記アナログ出力端子に直流電源が誤接続された誤接続時には、前記一定の負電位より高い電位を示す前記遮断制御信号を前記遮断回路へ出力するように構成された遮断制御回路と
を備えることを特徴とするアナログ入出力回路。
【請求項2】
請求項1に記載のアナログ入出力回路において、
前記遮断制御回路は、前記正常接続時には入力され前記誤接続時には停止される周期信号を充放電することにより、前記遮断制御信号を生成して前記遮断回路へ出力する、負電圧チャージポンプ回路からなることを特徴とするアナログ入出力回路。
【請求項3】
請求項2に記載のアナログ入出力回路において、
前記遮断制御回路は、一端に前記周期信号が印加される第1の容量素子と、カソード端子が前記第1の容量素子の他端に接続され、アノード端子から前記遮断制御信号が出力される第1のダイオード素子と、カソード端子が前記接地電位に接続され、アノード端子が前記第1のダイオード素子のカソード端子に接続された第2のダイオード素子と、一端が前記第1のダイオード素子のアノード端子に接続され、他端が前記接地電位に接続された第2の容量素子と、一端が前記第1のダイオード素子のアノード端子に接続され、他端が前記接地電位に接続された抵抗素子とを備えることを特徴とするアナログ入出力回路。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載のアナログ入出力回路において、
前記遮断回路は、ドレイン端子が前記信号入力端子に接続され、ソース端子が前記シャント抵抗の一端に接続され、ゲート端子に前記遮断制御信号が印加されるPMOSFETを備えることを特徴とするアナログ入出力回路。
【請求項5】
請求項4に記載のアナログ入出力回路において、
前記一定の負電位は、前記正常接続時において前記PMOSFETのソース電位が示す最低電位から、前記PMOSFETの閾値電圧分以上低い電位からなることを特徴とするアナログ入出力回路。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載のアナログ入出力回路において、
前記シャント抵抗の他端と前記接地電位との間に接続されて、入力された切替信号に基づいて、前記シャント抵抗の他端と前記接地電位との短絡/開放を制御することにより、前記アナログ出力端子から出力する信号形式を、4-20mA信号もしくは1-5V信号のいずれかを切り替えるように構成された切替回路をさらに備えることを特徴とするアナログ入出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ出力端子への直流電源の誤接続から保護するための誤接続保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、プラント、ビル建物などの施設では、マスフローメータおよびマスフローコントローラなどをはじめとして、各種の計測機器が用いられている。これら計測機器では、他の機器との間で計測データなどの各種データを伝送する場合、一般には、4-20mA信号もしくは1-5V信号からなる2種類のアナログ伝送信号が用いられている(例えば、特許文献1-2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-132812号公報
【文献】特開2019-158582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、4-20mA信号と1-5V信号の両方に対応できる回路として、図3に示すような、アナログ入出力回路50が用いられている。図3は、従来のアナログ入出力回路を示す回路図である。
このアナログ入出力回路50は、4-20mA信号を1-5V信号に電流電圧変換するためのシャント抵抗Rsと、切替信号SELによりオンオフするNMOSFETQsを有する切替回路51とから構成されている。
【0005】
これにより、SELをハイレベルに制御するとQsがオンして、Rsが信号入力端子SIG(アナログ出力端子AO)と接地電位GNDとの間に接続されるため、信号入力端子SIGから入力された4-20mA信号がRsにより1-5V信号に電流電圧変換されて、AOから出力される。また、SELをローレベルに制御するとQsがオフして、Rsが切り離されるため、SIGから入力された4-20mA信号がそのままAOから出力される。
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、アナログ出力端子AOに、例えば24Vなどの直流電源PWを誤って逆接続した場合、Qsの内部ダイオードDを介して過大電流Iが流れ、Rsが発熱するという問題点があった。
一般に、4-20mA信号と1-5V信号とを相互に変換するアナログ入出力回路では、Rsとして250Ωが用いられる。これは、4-20mA信号を1-5V信号に電流電圧変換するためである。したがって、Rsとして比較的安価で低許容損失で高精度の抵抗素子が用いられるが、前述したような誤接続により過大電流Iが流れるとRsが発熱し、場合によっては発煙や故障の原因となる。
【0007】
このような誤接続への対策として、Rsにヒューズやポリスイッチなどの保護素子を直列接続する構成が考えられる。しかし、高精度な電流電圧変換が要求される場合、保護素子の抵抗成分が変換誤差となるため、望ましくない。また、Rsとして許容損失が大きい抵抗素子を用いる構成も考えられるが、回路実装面積が増大するため、望ましくない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、アナログ出力端子に電源が誤接続された場合でも、シャント抵抗に流れる過電流を抑止できる誤接続保護技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかるアナログ入出力回路は、計測機器で用いられて、4-20mA信号または1-5V信号からなるアナログ信号を入出力するアナログ入出力回路であって、外部機器と電気的に接続することにより、信号入力端子から入力された前記アナログ信号を出力するアナログ出力端子と、一端が前記信号入力端子に接続されるとともに、他端が接地電位に接続されて、前記信号入力端子から前記アナログ信号として入力された前記4-20mA信号を前記1-5V信号に変換して、前記アナログ出力端子から出力するシャント抵抗と、入力された遮断制御信号が一定の負電位以下の電位を示す場合には、前記信号入力端子と前記シャント抵抗の一端との間を短絡し、前記遮断制御信号が前記一定の負電位より高い電位を示す場合には、前記信号入力端子と前記シャント抵抗の一端との間を開放して、前記シャント抵抗に流れる過電流を抑止するように構成された遮断回路と、前記アナログ出力端子に前記外部機器が正常に接続されている正常接続時には、前記一定の負電位以下の電位を示す前記遮断制御信号を前記遮断回路へ出力し、前記アナログ出力端子に直流電源が誤接続された誤接続時には、前記一定の負電位より高い電位を示す前記遮断制御信号を前記遮断回路へ出力するように構成された遮断制御回路とを備えている。
【0010】
また、本発明にかかる上記アナログ入出力回路の一構成例は、前記遮断制御回路が、前記正常接続時には入力され前記誤接続時には停止される周期信号を充放電することにより、前記遮断制御信号を生成して前記遮断回路へ出力する、負電圧チャージポンプ回路からなるものである。
【0011】
また、本発明にかかる上記アナログ入出力回路の一構成例は、前記遮断制御回路が、一端に前記周期信号が印加される第1の容量素子と、カソード端子が前記第1の容量素子の他端に接続され、アノード端子から前記遮断制御信号が出力される第1のダイオード素子と、カソード端子が前記接地電位に接続され、アノード端子が前記第1のダイオード素子のカソード端子に接続された第2のダイオード素子と、一端が前記第1のダイオード素子のアノード端子に接続され、他端が前記接地電位に接続された第2の容量素子と、一端が前記第1のダイオード素子のアノード端子に接続され、他端が前記接地電位に接続された抵抗素子とを備えている。
【0012】
また、本発明にかかる上記アナログ入出力回路の一構成例は、前記遮断回路が、ドレイン端子が前記信号入力端子に接続され、ソース端子が前記シャント抵抗の一端に接続され、ゲート端子に前記遮断制御信号が印加されるPMOSFETを備えている。
【0013】
また、本発明にかかる上記アナログ入出力回路の一構成例は、前記一定の負電位が、前記正常接続時において前記PMOSFETのソース電位が示す最低電位から、前記PMOSFETの閾値電圧分以上低い電位からなるものである。
【0014】
また、本発明にかかる上記アナログ入出力回路の一構成例は、前記シャント抵抗の他端と前記接地電位との間に接続されて、入力された切替信号に基づいて、前記シャント抵抗の他端と前記接地電位との短絡/開放を制御することにより、前記アナログ出力端子から出力する信号形式を、4-20mA信号もしくは1-5V信号のいずれかを切り替えるように構成された切替回路をさらに備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アナログ出力端子に電源が誤接続された場合でも、シャント抵抗に流れる過電流を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、アナログ入出力回路の構成を示す回路図である。
図2図2は、遮断制御回路の動作を示すタイミングチャートである。
図3図3は、従来のアナログ入出力回路を示す回路図である。
図4図4は、図3のアナログ入出力回路の改変を示す回路図である。
図5図5は、図3のアナログ入出力回路の他の改変を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[アナログ入出力回路]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかるアナログ入出力回路10について説明する。図1は、アナログ入出力回路の構成を示す回路図である。
このアナログ入出力回路10は、4-20mA信号もしくは1-5V信号からなる2種類のアナログ信号を入出力するための、入出力インターフェス回路である。アナログ入出力回路10は、工場、プラント、ビル建物などの施設で用いられる、マスフローメータおよびマスフローコントローラなどをはじめとして、各種の計測機器で用いられる。
【0018】
本実施の形態にかかるアナログ入出力回路10は、アナログ出力端子AOに対して直流電源が誤って逆接続された場合、シャント抵抗(Shunt Resistor)Rsを経由する過電流経路の一部を遮断することにより、シャント抵抗Rsに流れる過電流を抑止するように構成したものである。
図1に示すように、このアナログ入出力回路10は、主な回路部として、アナログ出力端子AO、シャント抵抗Rs、切替回路11、遮断回路12、および遮断制御回路13を備えている。
【0019】
[アナログ出力端子]
アナログ出力端子AO(Analog Out)は、外部機器(図示せず)と電気的に接続することにより、信号入力端子SIGから入力された、計測データなどの各種データを示すアナログ信号を外部機器に出力する出力端子である。
【0020】
[シャント抵抗]
シャント抵抗Rsは、一端が遮断回路12を介して信号入力端子SIG(アナログ出力端子AO)に接続され、他端が切替回路11を介して接地電位GNDに接続されて、信号入力端子SIGから入力された4-20mA信号を1-5V信号に電流電圧変換して、アナログ出力端子AOから出力するための抵抗素子である。Rsは、抵抗値250Ωを有し、比較的安価で許容損失の低い一般的な高精度抵抗が用いられる。
【0021】
[切替回路]
切替回路11は、シャント抵抗Rsの他端と接地電位GNDとの間に接続されて、切替信号SELに基づいて、シャント抵抗Rsの他端と接地電位GNDとの短絡/開放を制御することにより、アナログ出力端子AOから出力する信号形式を、4-20mA信号もしくは1-5V信号のいずれかを切り替えるように構成されている。
具体的には、切替回路11は、ドレイン端子がRsの他端に接続され、ソース端子がGNDに接続され、ゲート端子にSELが印加される、NMOSFETQsから構成されている。
【0022】
[遮断回路]
遮断回路12は、信号入力端子SIG(アナログ出力端子AO)とシャント抵抗Rsの一端との間に接続されて、遮断制御回路13から出力される遮断制御信号Vpに基づいて、Rsを経由する過電流経路の一部、例えば、SIG(AO)とRsとの接続経路を遮断することにより、アナログ出力端子AOと接地電位GNDとの間に誤接続(逆接続)された直流電源からのRsへの過電流を抑止するように構成されている。
具体的には、遮断回路12は、ドレイン端子がSIG(AO)に接続され、ソース端子がGNDに接続され、ゲート端子にVpが印加される、PMOSFETQpから構成されている。
【0023】
[遮断制御回路]
遮断制御回路13は、アナログ出力端子AOに外部機器が正常に接続されている正常接続時には、一定の負電位以下の電位を示す遮断制御信号Vpを遮断回路12へ出力し、AOに直流電源が誤って逆接続された誤接続時には、一定の負電位より高い電位を示す遮断制御信号Vpを遮断回路12へ出力するように構成されている。
この際、遮断制御回路13は、正常接続時には入力され誤接続時には停止される周期信号Spを所定のRC時定数回路で充放電することにより、遮断制御信号Vpを生成して遮断回路12へ出力する、負電圧チャージポンプ回路から構成してもよい。
【0024】
具体的には、図1に示すように、遮断制御回路13は、一端に周期信号Spが印加される第1の容量素子C1と、カソード端子がC1の他端に接続され、アノード端子から遮断制御信号Vpが出力される第1のダイオード素子D1と、カソード端子が接地電位GNDに接続され、アノード端子がD1のカソード端子に接続された第2のダイオード素子D2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された第2の容量素子C2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された抵抗素子Rpとを備えている。
【0025】
一定の負電位は、正常接続時においてQpのソース電位Vsが示す最低電位から、Qpの閾値電圧Vth分以上低い電位からなる。これにより、正常接続時においてQpを確実に短絡状態に維持することができる。
【0026】
また、周期信号Spは、アナログ入出力回路10の制御回路を構成するCPU(図示せず)で用いている既存のクロック信号であってもよく、CPUから出力される周期的なパルス列からなる同期信号を用いてもよい。一般には、アナログ出力端子AOと接地電位GNDとの間に、例えば24Vなどの直流電源が誤って逆接続された場合、CPUなどの制御回路に異常が発生して動作が停止し、クロック信号や同期信号などの周期信号Spの出力が停止する。なお、誤接続時に周期信号Spの出力停止が保証できない場合には、誤接続(逆接続)を検出して遮断制御回路13に対する周期信号Spの入力を停止するようにしてもよい。
【0027】
[発明の原理]
ここで、図4および図5を参照して、本発明の原理について説明する。図4は、図3のアナログ入出力回路の改変を示す回路図である。図5は、図3のアナログ入出力回路の他の改変を示す回路図である。
前述の図3で示したように、アナログ出力端子AOと接地電位GNDとに対する直流電源(例えば24V)の逆接続に起因して、シャント抵抗Rsに過電流Iが流れる。この過電流Iを抑止する構成として、正常接続時は短絡状態であり、逆接続時に開放状態となるような、例えばMOSFETなどのスイッチ素子を用いた遮断回路を、Rsを経由する過電流経路上に、例えばRsと直列に、挿入する構成が考えられる。
【0028】
図4には、信号入力端子SIG(アナログ出力端子AO)とシャント抵抗Rsとの間に、NMOSFETQnを用いた遮断回路52を接続した例が示されている。Qnは、ドレイン端子がSIG(AO)に接続され、ソース端子がシャント抵抗Rsの他端に接続され、ゲート端子に抵抗素子Rnを介して正常接続電位Vggが印加されている。Vggは、アナログ出力端子AOが正常接続されている時のみ、正電圧を示す電位であり、正常接続時のみ出力されるゲート供給電圧などの直流電源を用いてもよく、アナログ入出力回路50の制御回路を構成するCPU(図示せず)から出力される制御信号を用いてもよい。
【0029】
これにより、誤接続によりアナログ入出力回路50の制御回路で異常が発生した場合、Vggの電圧が低下してQnのゲート-ソース間電圧Vgsが、Qnの閾値電圧Vthを下回ってQnが開放状態となり、SIG(AO)とRsとの間の接続経路が遮断されるため、過電流が抑止される。
【0030】
しかし、図4の回路構成の場合、誤接続時には、アナログ入出力回路50を取り巻くいずれかの回路を伝って、Qnのゲート端子に比較的高い電圧が印加されてQnのVgsがQnのVthを超える可能性が高い。例えば、信号安定化のため、Qnのゲート端子に接地電位GNDへのプルダウン抵抗(図示せず)が接続されている場合、逆接続された直流電源に起因する正電位がGNDを介してQnのゲート端子に印加される可能性がある。この他、過電圧防止のために接続されているダイオード素子(図示せず)を伝って、Qnのゲート端子に誤電位が印加される可能性もある。
【0031】
このような場合には、Qnが短絡状態となるため、シャント抵抗Rsに流れる過電流を抑止することができない。これを阻止するには、計測機器の回路全体にわたってQnのゲート端子への誤電位の印加経路がないか確認する必要があるため、このようなNMOSFETQnを用いた遮断回路52の導入は難しい。
【0032】
一方、図5に示すように、信号入力端子SIG(アナログ出力端子AO)とシャント抵抗Rsとの間に、PMOSFETQpを用いた遮断回路52を接続する構成も考えられる。Qpは、ドレイン端子がSIG(AO)に接続され、ソース端子がシャント抵抗Rsの他端に接続され、ゲート端子が抵抗素子Rpを介して接地電位GNDに接続され、ゲート端子に一定の負電位以下の電位からなる遮断制御信号Vpが印加されている。この構成によれば、誤接続時、Qpのゲート-ソース間電圧Vgsが、Qpの閾値電圧Vth以上に維持される。
【0033】
しかしながら、アナログ出力端子AOが正常接続されている際、例えばアナログ出力端子AOから4-20mA信号における8mA以下(1-5V信号における2V以下)などの、比較的低い電圧を出力する場合、QpのVgsが、QpのVthを下回ってしまうことになる。この場合には、正常接続時であるにも関わらずQpが開放状態となって、シャント抵抗Rsに流れる電流が遮断されるため、正常なアナログ信号をアナログ出力端子AOから出力できない。
【0034】
前述した図5の回路構成によれば、直流電源の誤接続時にはQpが開放状態に制御されるため、過電流経路を確実に遮断できる。したがって、正常接続時、アナログ出力端子AOから出力されるアナログ信号に影響を受けることなく、QpのVgsをQpのVth以上に維持することが重要となる。
【0035】
本発明は、QpのVgsをQpのVth以上に維持するには、正常接続時、Qpのソース電位Vsが最低電圧を示す場合でも、Qpのゲート端子の電位Vgを、Vs-Vthより低く維持すればよい点、また、アナログ入出力回路50の制御回路を構成するCPU(図示せず)では、一定周期で極性が切り替えられる、クロック信号や周期的なパルス列からなる同期信号などの周期信号を、回路制御に広く用いている点に着目し、このような既存の周期信号Spから負電位を示す遮断制御信号Vpを生成する遮断制御回路13を設けて、生成したVpを遮断回路12のQpのゲート端子へ印可するようにしたものである。
【0036】
[遮断制御回路の構成および動作]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる遮断制御回路13の構成および動作について詳細に説明する。
図1に示すように、遮断制御回路13は、全体として負電圧チャージポンプ回路からなり、主な回路部品として、一端に周期信号Spが印加される第1の容量素子C1と、カソード端子がC1の他端に接続され、アノード端子から遮断制御信号Vpが出力される第1のダイオード素子D1と、カソード端子が接地電位GNDに接続され、アノード端子がD1のカソード端子に接続された第2のダイオード素子D2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された第2の容量素子C2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された抵抗素子Rpとを備えている。
【0037】
図2は、遮断制御回路の動作を示すタイミングチャートである。図2に示すように、アナログ出力端子AOが正常接続されている状態で、時刻T1において、遮断制御回路13に対する周期信号Spの印加が開始されたものとする。図2の例では、周期信号Spは正電圧のパルス列から構成されているが、C1により直流バイアス成分がカットされてD1のカソード端子に印加されるため、D1のカソード端子の電位Vkは、GNDを中心とした正負電位のパルス列となる。
【0038】
ここで、VkがGNDより低い負電圧を示す場合、D2がオフとなるが、D1のアノード端子からカソード端子に電流が流れて、C2に負電圧が充電される。一方、VkがGNDより高い正電圧を示す場合、D2のアノード端子からカソード端子に電流が流れるが、D1がオフとなるため、C2の負電圧が保持される。このようにして、周期信号Spのパルスが入力されるごとに、C2の充電電圧すなわち遮断制御信号Vpの電位が負方向に大きくなり、周期信号Spの振幅からD1の電圧降下分だけ低い負電圧まで低下する。
【0039】
一方、遮断制御信号Vpの電位が低下してQpのVgsがQpの閾値電圧Vthより大きくなった時刻T2において、Qpが短絡状態となる。この際、切替信号SELにより切替回路11のNMOSFETQsが短絡状態にある場合、シャント抵抗RsがQpおよびQsを介してアナログ出力端子AOと接地電位GNDとの間に接続されていることになる。これにより、信号入力端子SIGから入力された4-20mA信号は、Rsにより1-5V信号に電流電圧変換されてアナログ出力端子AOから出力される。
【0040】
この際、図2に示すように、信号入力端子SIGから入力された4-20mA信号が時刻T2以降、20mAから4mAまで徐々に低下した場合、遮断制御信号Vpは周期信号Spにより負電位に維持されている。このため、遮断回路12のQpは短絡状態のままとなり、前述した図5のような、正常接続時であるにも関わらずQpが開放状態となって、シャント抵抗Rsに流れる電流が遮断されることはない。したがって、アナログ出力端子AOから出力される1-5V信号が、時刻T2以降、5Vから1Vまで徐々に低下し、アナログ信号が安定して出力されていることがわかる。なお、図2の破線は、図5の構成におけるアナログ信号の推移を示しており、途中から意図しない電圧が出力されていることが分かる。
【0041】
この後、時刻T3において、アナログ出力端子AOに直流電源が誤接続されて、周期信号Spが停止した場合、遮断制御回路13の第2の容量素子C2の充電電圧が抵抗素子Rpを介して放電される。これにより、遮断制御信号Vpの電位、すなわち遮断回路12のQpのゲート電位Vsは接地電位GNDと等しくなり、Qpが開放状態となる。この際、直流電源の逆接続により、GNDが正電位となった場合も、Qpが開放状態となる。これにより、Qpとアナログ出力端子AOとの接続経路が遮断されるため、Rsを流れる過電流が抑止される。
【0042】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、遮断回路12が、入力された遮断制御信号Vpが一定の負電位以下の電位を示す場合には、信号入力端子SIGとシャント抵抗Rsの一端との間を短絡し、Vpが一定の負電位より高い電位を示す場合には、SIGとRsの一端との間を開放して、Rsに流れる過電流を抑止し、遮断制御回路13が、アナログ出力端子AOに外部機器が正常に接続されている正常接続時には、一定の負電位以下の電位を示す遮断制御信号Vpを遮断回路12へ出力し、AOに直流電源が誤接続された誤接続時には、一定の負電位より高い電位を示す遮断制御信号Vpを遮断回路12へ出力するように構成したものである。
【0043】
これにより、正常接続時には、比較的低い電圧をアナログ出力端子AOから出力する場合でも、遮断制御回路13からの遮断制御信号Vpにより遮断回路12が短絡状態に維持される。このため、正常接続時には、正常なアナログ信号をアナログ出力端子AOから安定して出力することができる。また、誤接続時には、遮断制御信号Vpにより遮断回路12が開放状態となる。このため、誤接続時には、シャント抵抗Rsを経由する過電流経路を確実に遮断でき、シャント抵抗Rsに流れる過電流を抑止することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態において、遮断制御回路13が、正常接続時には入力され誤接続時には停止される周期信号Spを充放電することにより、遮断制御信号Vpを生成して遮断回路12へ出力する、負電圧チャージポンプ回路から構成してもよい。
【0045】
具体的には、遮断制御回路13として、一端に周期信号Spが印加される第1の容量素子C1と、カソード端子がC1の他端に接続され、アノード端子から遮断制御信号Vpが出力される第1のダイオード素子D1と、カソード端子が接地電位GNDに接続され、アノード端子がD1のカソード端子に接続された第2のダイオード素子D2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された第2の容量素子C2と、一端がD1のアノード端子に接続され、他端がGNDに接続された抵抗素子Rpとから構成してもよい。
【0046】
これにより、比較的簡素な回路構成で、遮断制御回路13を実現することができる。また、周期信号Spは、アナログ入出力回路10の制御回路を構成するCPU(図示せず)で用いている既存のクロック信号であってもよく、CPUから出力される周期的なパルス列からなる同期信号を用いてもよい。これにより、アナログ入出力回路10の回路制御に広く用いている既存の制御信号を周期信号Spとして利用でき、周期信号Spを生成するための新たな回路の追加を回避できる。
【0047】
また、本実施の形態において、遮断回路12を、ドレイン端子が信号入力端子SIGに接続され、ソース端子がシャント抵抗Rsの一端に接続され、ゲート端子に遮断制御信号Vpが印加されるPMOSFETにより構成してもよい。この際、一定の負電位は、正常接続時においてPMOSFETのソース電位が示す最低電位から、PMOSFETの閾値電圧分以上低い電位を用いてもよい。これにより、極めて回路簡素な構成で、遮断回路12を実現することができる。
【0048】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0049】
10…アナログ入出力回路、11…切替回路、12…遮断回路、13…遮断制御回路、Rs…シャント抵抗、AO…アナログ出力端子、SIG…信号入力端子、GND…接地電位、Sp…周期信号、Vp…遮断制御信号、SEL…切替信号、Qp…PMOSFET、Qs…NMOSFET。
図1
図2
図3
図4
図5